米国の学校にスクール・ポリスが常駐し、
ささいな問題行動を犯罪視されて逮捕されたり犯罪歴となったりしている、という実態は
去年、以下のエントリーで紹介しました。
授業中にケンカをすればスクール・ポリスがやってくる。そして逮捕(TX)(2012/1/12)
昨今の銃規制をめぐるライフル協会を中心とした抵抗の動きで、
頻発する学校での銃乱射事件の予防策として
学校へのスクール・ポリス増加の方向に向かっていることに
NYTの論説委員会から、批判の論説が出ています。
それによると、70年代には聞いたことのなかったスクール・ポリスは
80年代の若者の犯罪の増加によって置かれるようになり、
99年のコロンバイン高校事件から急速に広がったとのこと。
70年代には1パーセントの学校に過ぎなかったのが、
2008年には40%の学校に拡大。
しかし、2011年に発表された調査報告では
スクール・ポリスの存在は犯罪の減少には結びついていない。
むしろ、それまでなら校長が対応していた些細な問題行動まで
警察が介入して、犯罪視されることとなり、
特に黒人とヒスパニックの生徒では白人に比べて
些細な行動で逮捕される確率が4倍も高い。
授業妨害や汚い言葉を使ったとして
500ドルの罰金や、時には刑務所に入れられることも。
NY市議会ではこうした傾向を問題して、
2010年に the Student Safety Actができた。
生徒が逮捕された場合には警察に詳細な報告を義務付けるもの。
ここでも2011年から2012年年度で、黒人の学生の逮捕率、停学率が圧倒的に高い。
教育関係者の間で
「学校―刑務所パイプライン」を懸念する声が広がりつつある。
NYTの社説は、
未だスクール・ポリスを導入していないスクール・ディスとリクトに対して、
慎重を呼び掛けている。
Criminalizing Children at School
NYT, April 18, 2013
ささいな問題行動を犯罪視されて逮捕されたり犯罪歴となったりしている、という実態は
去年、以下のエントリーで紹介しました。
授業中にケンカをすればスクール・ポリスがやってくる。そして逮捕(TX)(2012/1/12)
昨今の銃規制をめぐるライフル協会を中心とした抵抗の動きで、
頻発する学校での銃乱射事件の予防策として
学校へのスクール・ポリス増加の方向に向かっていることに
NYTの論説委員会から、批判の論説が出ています。
それによると、70年代には聞いたことのなかったスクール・ポリスは
80年代の若者の犯罪の増加によって置かれるようになり、
99年のコロンバイン高校事件から急速に広がったとのこと。
70年代には1パーセントの学校に過ぎなかったのが、
2008年には40%の学校に拡大。
しかし、2011年に発表された調査報告では
スクール・ポリスの存在は犯罪の減少には結びついていない。
むしろ、それまでなら校長が対応していた些細な問題行動まで
警察が介入して、犯罪視されることとなり、
特に黒人とヒスパニックの生徒では白人に比べて
些細な行動で逮捕される確率が4倍も高い。
授業妨害や汚い言葉を使ったとして
500ドルの罰金や、時には刑務所に入れられることも。
NY市議会ではこうした傾向を問題して、
2010年に the Student Safety Actができた。
生徒が逮捕された場合には警察に詳細な報告を義務付けるもの。
ここでも2011年から2012年年度で、黒人の学生の逮捕率、停学率が圧倒的に高い。
教育関係者の間で
「学校―刑務所パイプライン」を懸念する声が広がりつつある。
NYTの社説は、
未だスクール・ポリスを導入していないスクール・ディスとリクトに対して、
慎重を呼び掛けている。
Criminalizing Children at School
NYT, April 18, 2013
2013.04.20 / Top↑
特にこの話題を追いかけているというわけでもないのだけど、
気の滅入る情報ばっかり流してしまう当ブログも、
たまにはこういう風を入れて空気の入れ替えをしたいものだと、常々思っているので――。
NZ議会で同性婚を認める法案の投票が行われ、
賛成 77 vs 反対 44 で、可決。
同性婚を合法化した13番目、
アジア太平洋では最初の国に。
投票結果が分かった直後、
議場に傍聴に来ていた人たちが
マウイ族のラブ・ソングを歌い始め、
しだいに皆が加わり大きな声となって議場に広がっていく―――。
New Zealand parliament breaks into song after legalizing gay marriage ― video
The Guardian, April 18, 2013
毎日毎日毎日毎日イヤなニュースばっかり読んでいる中で、
ふっとこういう映像に出くわすと、うっかり、ウルウルさせられてしまう。
そして、やっぱり心を洗われる思いになる。
穏やかで美しいメロディと歌声です。
一つの国で、差別が一つ、終わりました。
気の滅入る情報ばっかり流してしまう当ブログも、
たまにはこういう風を入れて空気の入れ替えをしたいものだと、常々思っているので――。
NZ議会で同性婚を認める法案の投票が行われ、
賛成 77 vs 反対 44 で、可決。
同性婚を合法化した13番目、
アジア太平洋では最初の国に。
投票結果が分かった直後、
議場に傍聴に来ていた人たちが
マウイ族のラブ・ソングを歌い始め、
しだいに皆が加わり大きな声となって議場に広がっていく―――。
New Zealand parliament breaks into song after legalizing gay marriage ― video
The Guardian, April 18, 2013
毎日毎日毎日毎日イヤなニュースばっかり読んでいる中で、
ふっとこういう映像に出くわすと、うっかり、ウルウルさせられてしまう。
そして、やっぱり心を洗われる思いになる。
穏やかで美しいメロディと歌声です。
一つの国で、差別が一つ、終わりました。
2013.04.20 / Top↑
しばらく前に、どこかのエントリーのコメント欄で
話題になった新聞の話――。
我が家はかなり長くA新聞を読んでいたのだけれど、
1年くらい前にやめて、とりあえず今はM新聞を読んでいる。
去年、次の契約をとりに来たA新聞の
パパイヤ鈴木そっくりな兄ちゃんに
「A新聞が気に入らなくなってきたから
今度はM新聞にしてみようかと思ってるんだ」と話したら、
田舎のこととて
M新聞をとっている家が少ないために
なんと「ウチ(A新聞の販売店)が代行みたいな形で一緒に扱っている」という。
「じゃぁ、話が早くて助かるから、そうするわ」
即決すると、
“パパイヤ鈴木”は
いろいろぐずぐず言っては翻意させようとする。
なるほどA新聞の代理店としては
A新聞をとってくれる方がウマミは大きいわけよね。
でも、言うことがイチイチ気に食わない。
「サービスは断然Aの方が大きいですよ」
「奥さん、チラシが入る数が全然違いますよ。
Mだとスーパーの安売り情報とかクーポンみたいの、
Aほどちゃんと手に入らなくなりますよ」
……アンタ、いくらオバサンだって、
中身をちゃんと読むために新聞とってるかもしれんとは思いもよらんのん……。
余計にムカつきつつ、
「ともかくAは辞める。Aきらい。当面Mを読む」と宣言した。
まぁ、正直、Mの薄さには、最初ちょっと面くらった。
でも、特集記事にじっくり読ませる面白いのがあるし、
もともと毎日必ず隅から隅まで読むようなタイプではないから
今のところ特に不満だというわけでもない。
でも“パパイヤ”はその後も時々、
「やっぱりAの方が良くないですかぁ?」と未練がましくやってくる。
最初につい「薄いねー」と言ってしまったので
脈があると思わせてしまったらしい。
で、年末ごろだったか、またやってきて、
4月にキャンペーンか何かあるので、その1か月だけ
A新聞も一緒に入れさせてもらえんだろうか、
それで読み比べてから、再検討してほしい、と言う。
じゃ、ま、いいよ、それでも。
……と返事をして、すっかり忘れていた。
そのA新聞が、少し早く一昨日から入っている。
昨日、退屈しのぎに思いついて、、
2つの新聞を並べて置いて眺めてみた。
どははっ。笑ってしまった……。
まず1面トップ・ニュース扱いは
A新聞:2040年 都市も高齢者3割 総人口は全都道府県で減少
M新聞:原子力政策 公聴会 九電が8割動員
佐賀で05年 発言者7人 社員
その他、以下の2つは両紙1面とも共通。
・関電値上げ9.7%
・JR福知山線脱線 歴代3社長 禁錮3年求刑
で、1面の4つ目の話題は、
A新聞: 北陸新幹線 広域連合案
「米原ルート」国に提示へ
M新聞: 後見人訴訟 政府が控訴
選挙権喪失 混乱回避を理由に
(このニュース、A新聞では4面にあった)
次に1枚めくって、2,3面を開いて並べてみたならば――。
まず目についたのは、
それぞれ3面で大きく取り上げられている以下の記事。
A新聞: がんリスク 遺伝子診断に道
配列の差、一部特定
国際チーム、10万人ずつ比較
M新聞: 降圧剤 撤回された京都府立医大臨床論文
製薬社員も名連ね
1億円の寄付金/製品のPRに利用
研究責任者と密接な関係
(質問コラム 利益相反って何?)
明日パパイヤに電話したろかな。
ありがとう、
再検討、終わったよー。
話題になった新聞の話――。
我が家はかなり長くA新聞を読んでいたのだけれど、
1年くらい前にやめて、とりあえず今はM新聞を読んでいる。
去年、次の契約をとりに来たA新聞の
パパイヤ鈴木そっくりな兄ちゃんに
「A新聞が気に入らなくなってきたから
今度はM新聞にしてみようかと思ってるんだ」と話したら、
田舎のこととて
M新聞をとっている家が少ないために
なんと「ウチ(A新聞の販売店)が代行みたいな形で一緒に扱っている」という。
「じゃぁ、話が早くて助かるから、そうするわ」
即決すると、
“パパイヤ鈴木”は
いろいろぐずぐず言っては翻意させようとする。
なるほどA新聞の代理店としては
A新聞をとってくれる方がウマミは大きいわけよね。
でも、言うことがイチイチ気に食わない。
「サービスは断然Aの方が大きいですよ」
「奥さん、チラシが入る数が全然違いますよ。
Mだとスーパーの安売り情報とかクーポンみたいの、
Aほどちゃんと手に入らなくなりますよ」
……アンタ、いくらオバサンだって、
中身をちゃんと読むために新聞とってるかもしれんとは思いもよらんのん……。
余計にムカつきつつ、
「ともかくAは辞める。Aきらい。当面Mを読む」と宣言した。
まぁ、正直、Mの薄さには、最初ちょっと面くらった。
でも、特集記事にじっくり読ませる面白いのがあるし、
もともと毎日必ず隅から隅まで読むようなタイプではないから
今のところ特に不満だというわけでもない。
でも“パパイヤ”はその後も時々、
「やっぱりAの方が良くないですかぁ?」と未練がましくやってくる。
最初につい「薄いねー」と言ってしまったので
脈があると思わせてしまったらしい。
で、年末ごろだったか、またやってきて、
4月にキャンペーンか何かあるので、その1か月だけ
A新聞も一緒に入れさせてもらえんだろうか、
それで読み比べてから、再検討してほしい、と言う。
じゃ、ま、いいよ、それでも。
……と返事をして、すっかり忘れていた。
そのA新聞が、少し早く一昨日から入っている。
昨日、退屈しのぎに思いついて、、
2つの新聞を並べて置いて眺めてみた。
どははっ。笑ってしまった……。
まず1面トップ・ニュース扱いは
A新聞:2040年 都市も高齢者3割 総人口は全都道府県で減少
M新聞:原子力政策 公聴会 九電が8割動員
佐賀で05年 発言者7人 社員
その他、以下の2つは両紙1面とも共通。
・関電値上げ9.7%
・JR福知山線脱線 歴代3社長 禁錮3年求刑
で、1面の4つ目の話題は、
A新聞: 北陸新幹線 広域連合案
「米原ルート」国に提示へ
M新聞: 後見人訴訟 政府が控訴
選挙権喪失 混乱回避を理由に
(このニュース、A新聞では4面にあった)
次に1枚めくって、2,3面を開いて並べてみたならば――。
まず目についたのは、
それぞれ3面で大きく取り上げられている以下の記事。
A新聞: がんリスク 遺伝子診断に道
配列の差、一部特定
国際チーム、10万人ずつ比較
M新聞: 降圧剤 撤回された京都府立医大臨床論文
製薬社員も名連ね
1億円の寄付金/製品のPRに利用
研究責任者と密接な関係
(質問コラム 利益相反って何?)
明日パパイヤに電話したろかな。
ありがとう、
再検討、終わったよー。
2013.04.07 / Top↑
マルカーノ修道僧に案内され、我々は僧院長のオーテンシオと対面した。
「ようこそ、パチョレック。あなたが数々の難事件を解決してきていることは、よくきいておりますぞ」とオーテンシオは言った。
「因果の糸はおだまきの、みちのくなれば白松ガモナカ」
師には時々わけのわからないことを言う癖があった。
「ライオン丸の碩学シピンは」と僧院長が遠回しに言った。「至高者の存在を証明するにさいして、ひたすら理性だけを頼りに、後年は髭を剃り落として真実へと到達されました」
「私ごとき者がどうして」とパチョレックがへりくだって言った。「シピン博士に異議を唱えましょうか。神は、すでにボブホーナーが熟知していたように、私たちの魂の内部から語りかけてきます。だからデモドリのフィルダーはブライアントよりも偉大なのです」
この二人の会話は無意味である。
「バラバラの名前」 『バラバラの名前』(清水義範 新潮文庫 p.12-13)
(タイトルの「バラバラの名前」は1986年のショーン・コネリー主演の映画薔薇の名前から。映画の元になったのは、なんだかよく知らないけど難解で有名な小説「薔薇の名前」)
因果の糸はおだまきの、みちのくなれば白松ガモナカ――。
いいなぁ、これ。
何度も何度も繰り返し、しっかり暗証しておこう。
そして、今度、誰かと話をしていて、
相手の言葉や態度に思わずカッと頭に血がのぼった瞬間に、
まるで車酔いでもして汚物を吐く時みたいに
腹の底から激しい言葉がものすごい勢いで込みあげてきて
あやうく口からほとばしり出しそうになったら、
それをぐっと飲み込んで、言うんだ。
できるだけ、ゆっくりと重々しい口調で。
「うん。そうだね。
だって、因果の糸はおだまきの……」
そして、
「白松ガモナカ」のところで、ニッと笑って見せる。
それができたら……あはは。
そんなの、もう即身仏じゃないか。
できるか、んなこと。
「ようこそ、パチョレック。あなたが数々の難事件を解決してきていることは、よくきいておりますぞ」とオーテンシオは言った。
「因果の糸はおだまきの、みちのくなれば白松ガモナカ」
師には時々わけのわからないことを言う癖があった。
「ライオン丸の碩学シピンは」と僧院長が遠回しに言った。「至高者の存在を証明するにさいして、ひたすら理性だけを頼りに、後年は髭を剃り落として真実へと到達されました」
「私ごとき者がどうして」とパチョレックがへりくだって言った。「シピン博士に異議を唱えましょうか。神は、すでにボブホーナーが熟知していたように、私たちの魂の内部から語りかけてきます。だからデモドリのフィルダーはブライアントよりも偉大なのです」
この二人の会話は無意味である。
「バラバラの名前」 『バラバラの名前』(清水義範 新潮文庫 p.12-13)
(タイトルの「バラバラの名前」は1986年のショーン・コネリー主演の映画薔薇の名前から。映画の元になったのは、なんだかよく知らないけど難解で有名な小説「薔薇の名前」)
因果の糸はおだまきの、みちのくなれば白松ガモナカ――。
いいなぁ、これ。
何度も何度も繰り返し、しっかり暗証しておこう。
そして、今度、誰かと話をしていて、
相手の言葉や態度に思わずカッと頭に血がのぼった瞬間に、
まるで車酔いでもして汚物を吐く時みたいに
腹の底から激しい言葉がものすごい勢いで込みあげてきて
あやうく口からほとばしり出しそうになったら、
それをぐっと飲み込んで、言うんだ。
できるだけ、ゆっくりと重々しい口調で。
「うん。そうだね。
だって、因果の糸はおだまきの……」
そして、
「白松ガモナカ」のところで、ニッと笑って見せる。
それができたら……あはは。
そんなの、もう即身仏じゃないか。
できるか、んなこと。
2013.03.29 / Top↑
失業者にバスを無料で(英国)
2013年の年明け早々、イングランド、ウェールズ、スコットランドを走るバス路線の70%で失業者には運賃を無料とするサービスが始まることになった。バス運行企業の大手6社とローカル5社が新たにスタートするサービス。3か月以上失業状態が続いている人に電車の運賃を半額に割り引くカードが支給される既存の制度を利用し、求職者手当、就労不能手当、雇用と補助手当、所得補助の受給者を対象とする。この新サービスの恩恵を受ける失業者は80万人に上るとされる。
ガーディアン紙の報道などによると、バス会社がこのような思い切ったサービスに踏み切った背景には、労働年金大臣イアン・ダンカン氏と労働党議員のデイヴィッド・ミリバンド氏(党首のミリバンド氏の兄)の呼びかけがあったという。
ダンカン氏は2010年10月にテレビ出演した際に、1時間もバスに乗れば別の町に求人があっても若者が行動しなくなったと批判。「待っていても仕事の方からやってくることはない」「仕事があるなら、それを手に入れるためにそれなりの努力をし、できる限り一生懸命に働くべき」などと語り、バスに乗って職を探しに行くよう促した。その発言には失業者に対する非難と蔑視だと反発する労働組合や野党から、1980年代に自分の父親は30年代に自転車で職探しをしたと言って貧困層の暴動を非難したサッチャー首相の側近、ノーマン・テビット貿易産業相のようだと猛批判が起こった。
その後、昨年7月に発表されたのが、ミリバンド氏が委員長を務めた若者の失業に関するコミッションからの報告書である。報告書は求職者手当を申請する若者が全国平均の2倍に達する“ホット・スポット”を600か所特定。そのほとんどが都市部である一方、コーンウォールやデヴォンなど貧しい地方の州も含まれている。
報告書は一昨年の教育維持手当の廃止によって、そうした州の低所得層の大学生の約2万人が週30ポンドの支給を失ったことなど、政府の支援を「不十分」であるとし、特に交通費の負担について以下のように書いた。「コミッションに寄せられた声には、特に地方に住む若者らが交通費に触れたものが多く、移動コストが教育や雇用への意欲を失わせている可能性がある。例えば、最低賃金で暮らす若者の場合は高い運賃が収入に占める割合は大きく、長期に渡って研修を続けたり無償で働いてみようとする意欲につながりにくい」
ミリバンド氏は「バス会社は大きな利益を出している。地方自治体にも中央政府にも権力がある。それらが力を合わせなければ。競争の激しい労働市場だというのに面接に行こうとすれば、運賃が大問題になるのだから」「英国は若者の失業という危機に直面している。この危機を放置しておく経済的余裕はない。長期的な若者の失業をなくすという政府の目標設定は正しいが、それを実現するためには大きな変革が必要となる」と語った。
またメディアから若者の勤労意欲について問われた同氏は以下のように応えた。「機会はあるのに働く意欲がない若者よりも、意欲はあるのに働く機会がない若者の問題の方がはるかに大きいと思います。働く気がないけど生活はできて当たり前と考えている若者がいるか、と問われれば、そういう若者だって探せばいますよ。でも、そういう問題ではありません」
果たして若者たちは「働かない」のか「働けない」のか――。いずれにせよ、働きやすくするための小さくとも具体的な方策を打ち出していくことが大切な社会的包摂の一環なのだな、と改めて考えさせられるニュースだった。
障害者を手厚くケアしていた古代人たち
胎児のように身体を丸めたまま埋葬されていた遺骨の発掘写真に目を引かれた(12月17日のニューヨークタイムズ)。2007年に南ベトナムのマンバック遺跡から発掘された、4000年前の若い男性だという。遺骨の調査から重症障害のために生前からそういう姿勢で暮らしていたものと推測された。子どもの頃に下半身がマヒし、腕もほとんど使えない状態だったが、マヒしてからも10年ほど生きたとされる。当時の集落はまだ金属を持たず、釣りと狩りで暮らしていた。そういう人々が、この若者をケアしていたのである。
その他にも、イラクで複合的な障害のあるネアンデルタール人(死亡推定年齢50歳)、米国フロリダ州で二分脊椎の少年(同15歳)、イタリアで重症小人症の少年(同10代)、アラビア半島でポリオで24時間介護を要したと思われる少女(同18歳)など、狩猟採集の過酷な生活環境にあった古代人が障害のある人たちを手厚くケアしていたエビデンスが次々に報告されている。という。
これもまた、「包摂」という言葉が頭に温かく浮かぶ記事だった。
「世界の介護と医療の情報を読む」第80回
「介護保険情報」2013年2月号
【関連エントリー】
古代の人たちが重症障害者を手厚くケアしたエビデンス(2012/12/25)
2013年の年明け早々、イングランド、ウェールズ、スコットランドを走るバス路線の70%で失業者には運賃を無料とするサービスが始まることになった。バス運行企業の大手6社とローカル5社が新たにスタートするサービス。3か月以上失業状態が続いている人に電車の運賃を半額に割り引くカードが支給される既存の制度を利用し、求職者手当、就労不能手当、雇用と補助手当、所得補助の受給者を対象とする。この新サービスの恩恵を受ける失業者は80万人に上るとされる。
ガーディアン紙の報道などによると、バス会社がこのような思い切ったサービスに踏み切った背景には、労働年金大臣イアン・ダンカン氏と労働党議員のデイヴィッド・ミリバンド氏(党首のミリバンド氏の兄)の呼びかけがあったという。
ダンカン氏は2010年10月にテレビ出演した際に、1時間もバスに乗れば別の町に求人があっても若者が行動しなくなったと批判。「待っていても仕事の方からやってくることはない」「仕事があるなら、それを手に入れるためにそれなりの努力をし、できる限り一生懸命に働くべき」などと語り、バスに乗って職を探しに行くよう促した。その発言には失業者に対する非難と蔑視だと反発する労働組合や野党から、1980年代に自分の父親は30年代に自転車で職探しをしたと言って貧困層の暴動を非難したサッチャー首相の側近、ノーマン・テビット貿易産業相のようだと猛批判が起こった。
その後、昨年7月に発表されたのが、ミリバンド氏が委員長を務めた若者の失業に関するコミッションからの報告書である。報告書は求職者手当を申請する若者が全国平均の2倍に達する“ホット・スポット”を600か所特定。そのほとんどが都市部である一方、コーンウォールやデヴォンなど貧しい地方の州も含まれている。
報告書は一昨年の教育維持手当の廃止によって、そうした州の低所得層の大学生の約2万人が週30ポンドの支給を失ったことなど、政府の支援を「不十分」であるとし、特に交通費の負担について以下のように書いた。「コミッションに寄せられた声には、特に地方に住む若者らが交通費に触れたものが多く、移動コストが教育や雇用への意欲を失わせている可能性がある。例えば、最低賃金で暮らす若者の場合は高い運賃が収入に占める割合は大きく、長期に渡って研修を続けたり無償で働いてみようとする意欲につながりにくい」
ミリバンド氏は「バス会社は大きな利益を出している。地方自治体にも中央政府にも権力がある。それらが力を合わせなければ。競争の激しい労働市場だというのに面接に行こうとすれば、運賃が大問題になるのだから」「英国は若者の失業という危機に直面している。この危機を放置しておく経済的余裕はない。長期的な若者の失業をなくすという政府の目標設定は正しいが、それを実現するためには大きな変革が必要となる」と語った。
またメディアから若者の勤労意欲について問われた同氏は以下のように応えた。「機会はあるのに働く意欲がない若者よりも、意欲はあるのに働く機会がない若者の問題の方がはるかに大きいと思います。働く気がないけど生活はできて当たり前と考えている若者がいるか、と問われれば、そういう若者だって探せばいますよ。でも、そういう問題ではありません」
果たして若者たちは「働かない」のか「働けない」のか――。いずれにせよ、働きやすくするための小さくとも具体的な方策を打ち出していくことが大切な社会的包摂の一環なのだな、と改めて考えさせられるニュースだった。
障害者を手厚くケアしていた古代人たち
胎児のように身体を丸めたまま埋葬されていた遺骨の発掘写真に目を引かれた(12月17日のニューヨークタイムズ)。2007年に南ベトナムのマンバック遺跡から発掘された、4000年前の若い男性だという。遺骨の調査から重症障害のために生前からそういう姿勢で暮らしていたものと推測された。子どもの頃に下半身がマヒし、腕もほとんど使えない状態だったが、マヒしてからも10年ほど生きたとされる。当時の集落はまだ金属を持たず、釣りと狩りで暮らしていた。そういう人々が、この若者をケアしていたのである。
その他にも、イラクで複合的な障害のあるネアンデルタール人(死亡推定年齢50歳)、米国フロリダ州で二分脊椎の少年(同15歳)、イタリアで重症小人症の少年(同10代)、アラビア半島でポリオで24時間介護を要したと思われる少女(同18歳)など、狩猟採集の過酷な生活環境にあった古代人が障害のある人たちを手厚くケアしていたエビデンスが次々に報告されている。という。
これもまた、「包摂」という言葉が頭に温かく浮かぶ記事だった。
「世界の介護と医療の情報を読む」第80回
「介護保険情報」2013年2月号
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2013.03.07 / Top↑