生まれてきたダウン症児を死産だということにした医師と家族の物語
「メモリー・キーパーの娘」について紹介した前のエントリーに追記しようと書き始めたのですが、
長くなったので別エントリーを立てることにしました。
「メモリー・キーパーの娘」について紹介した前のエントリーに追記しようと書き始めたのですが、
長くなったので別エントリーを立てることにしました。
「メモリー・キーパーの娘]」について、
これを言っちゃ身もフタもないとは思うのですが、
これを言っちゃ身もフタもないとは思うのですが、
この、誰も生活にだけは困らないお話の中で
誰かに経済的にであれ生活状況的にであれ
日々生活するのが精一杯という事態が訪れたとしたら、
お話の展開もずいぶんと変わらざるをえなかっただろうか。
誰かに経済的にであれ生活状況的にであれ
日々生活するのが精一杯という事態が訪れたとしたら、
お話の展開もずいぶんと変わらざるをえなかっただろうか。
また生まれた子どもの障害がダウン症よりももっと重い、
もっと日常的なケア負担の大きな障害であったとしても
物語が本質的に同じ結末に至るということは可能だっただろうか。
もっと日常的なケア負担の大きな障害であったとしても
物語が本質的に同じ結末に至るということは可能だっただろうか。
……と、ちょっとシニカルなことを、
この本を読んだあと実はずっと考えているのです。
この本を読んだあと実はずっと考えているのです。
Phoebe の障害がたとえどんなに重いものであったとしても
例えば Phoebe が Ashley のような重症児だったとしても
この小説は同じ結末に至ることができるのかどうか。
例えば Phoebe が Ashley のような重症児だったとしても
この小説は同じ結末に至ることができるのかどうか。
そうであって欲しいと願う気持ちがある反面
それほど単純ではないぞと頭ではどうしても考えてしまうのですが、
それほど単純ではないぞと頭ではどうしても考えてしまうのですが、
じゃぁ、ダウン症児と重症児ではどこがどう違うのか、
Ashley事件で言われているように
社会に福祉サービスさえ整っていれば、
どんなに重い障害を持つ子どもと家族もハッピーに暮らせるのか、
社会に福祉サービスさえ整っていれば、
どんなに重い障害を持つ子どもと家族もハッピーに暮らせるのか、
福祉サービスさえ整っていれば、
障害のある子どもと親の間にある利益の対立や
親の死後への先取り不安の問題は解消するのか
障害のある子どもと親の間にある利益の対立や
親の死後への先取り不安の問題は解消するのか
福祉サービス以外に何があったらその違いが埋められるのか
……といった点になると問題が複雑すぎて手に負えないというか、
……といった点になると問題が複雑すぎて手に負えないというか、
本当のことを正直に白状すると、
あまりにも生々しくて
その先を考えることを頭が拒否してしまう。
あまりにも生々しくて
その先を考えることを頭が拒否してしまう。
ただ、
その辺りの問題を初めてまともに考えてくれる人がここにいるかも……
この「ケアの分有」という考え方にはヒントがあるかもしれない……
と思って読んだのは以下の本。
その辺りの問題を初めてまともに考えてくれる人がここにいるかも……
この「ケアの分有」という考え方にはヒントがあるかもしれない……
と思って読んだのは以下の本。
この本については語りたいことが沢山あるので、
いずれ改めて書くつもりでいます。
いずれ改めて書くつもりでいます。
著者の博士論文をまとめたものだと思われますが、
知的障害児の親への聴き取り調査に基づいてケアのあり方が考察されており
内容はタイトルほど難解ではありません。
知的障害児の親への聴き取り調査に基づいてケアのあり方が考察されており
内容はタイトルほど難解ではありません。
2008.02.29 / Top↑
もうとっくに翻訳が出ているのだとばかり思っていたら
今朝の新聞に「いよいよ刊行」と広告が出ていたので、
ずっと前から一度触れたいと思いつつ
そのままになっていたこの本を思い出して。
今朝の新聞に「いよいよ刊行」と広告が出ていたので、
ずっと前から一度触れたいと思いつつ
そのままになっていたこの本を思い出して。
ひょんなことから妻の出産の際に自分で子どもを取り上げることになった医師が
生まれた娘がダウン症だと見るや、
居合わせた看護師に託して施設にやり
死産だったとウソをつく決断をします。
生まれた娘がダウン症だと見るや、
居合わせた看護師に託して施設にやり
死産だったとウソをつく決断をします。
実際には託された看護師がそのまま町を去り、
誰にも内緒で赤ん坊を自分の娘として育てるのですが、
町が猛吹雪に見舞われたこの一夜のウソは
その後25年間に渡って医師の家族の人生に
微妙な軋みを生み続けます。
誰にも内緒で赤ん坊を自分の娘として育てるのですが、
町が猛吹雪に見舞われたこの一夜のウソは
その後25年間に渡って医師の家族の人生に
微妙な軋みを生み続けます。
医師と看護師それぞれの行為の背景には
医師が重い病気の妹と暮らした少年期のトラウマや
看護師が医師に抱いていた恋心などがあり、
それぞれの人物の単純に割り切れない思いをていねいに描いて、
重厚でリアルな心理ドラマになっています。
医師が重い病気の妹と暮らした少年期のトラウマや
看護師が医師に抱いていた恋心などがあり、
それぞれの人物の単純に割り切れない思いをていねいに描いて、
重厚でリアルな心理ドラマになっています。
その中でダウン症の娘Phoebeだけは素直に成長する姿はすがすがしく、
そのPhoebeも成長するに伴って
自立を求めて母親(看護師)に対決姿勢をとるようになる展開や、
母親の方も成人した娘との関係のとり方に悩みぬくなど
障害のある子どもと親の問題をかなり突っ込んで描いてあると思います。
そのPhoebeも成長するに伴って
自立を求めて母親(看護師)に対決姿勢をとるようになる展開や、
母親の方も成人した娘との関係のとり方に悩みぬくなど
障害のある子どもと親の問題をかなり突っ込んで描いてあると思います。
ただ、心理を描くという面では重層的で成功していると思う反面、
女手ひとつで障害のある子どもを育てる際の現実問題についても、
障害のある子どもの成人期の自立がそう簡単ではない現実問題についても
都合のよいタイミングで都合よく解決されていくという印象はぬぐえず、
「多くの人はこんなに恵まれていない状況で
同じ問題に直面しているんだけどなぁ……」
という不満を抱きつつも、
女手ひとつで障害のある子どもを育てる際の現実問題についても、
障害のある子どもの成人期の自立がそう簡単ではない現実問題についても
都合のよいタイミングで都合よく解決されていくという印象はぬぐえず、
「多くの人はこんなに恵まれていない状況で
同じ問題に直面しているんだけどなぁ……」
という不満を抱きつつも、
出生前診断でダウン症だと分かったら多くの人が堕胎を選んでいる、
障害のある生は生きるに値しない生であるかのように
生命倫理の議論が声を張り上げて言いなそうとする時代に、
障害があることはすなわち不幸なのか
障害のある子どもの親になることはすなわち不幸なのか
と問いかけるいい作品だと思いました。
障害のある生は生きるに値しない生であるかのように
生命倫理の議論が声を張り上げて言いなそうとする時代に、
障害があることはすなわち不幸なのか
障害のある子どもの親になることはすなわち不幸なのか
と問いかけるいい作品だと思いました。
英語版PBはこちら
2008.02.29 / Top↑
2030年、2050年という将来には
自らをアップグレードしていく力を備えたスーパー・スマートな人工知能が世界を支配し、
知能の低い有機人間はペット扱いされているのだろうか。
自らをアップグレードしていく力を備えたスーパー・スマートな人工知能が世界を支配し、
知能の低い有機人間はペット扱いされているのだろうか。
そんな議論が、
世界中からトランスヒューマニストらが集まって開かれた
去年9月の「特異点サミット」で行われたとか。
世界中からトランスヒューマニストらが集まって開かれた
去年9月の「特異点サミット」で行われたとか。
主催はthe Singularity Institute for Artificial Intelligence Inc.(SIAI)。
この問題に関する議論の報告が以下のサイトに。
Will Super Smart Artificial Intelligences Keep Humans Around As Pets? And other questions from the Singularity Summit
reasononline, by Ronald Bailey, September 11, 2007
reasononline, by Ronald Bailey, September 11, 2007
この記事によると
去年SIAIの理事に加わったRay Kurzweilは
「人間もコンピューターと脳を接続して知能をアップデートして
人間自身が人工知能と化すのだから
そんなことは起こらない」
と、何とも安心・安泰な(?)未来予測を行ってくれたとのこと。
去年SIAIの理事に加わったRay Kurzweilは
「人間もコンピューターと脳を接続して知能をアップデートして
人間自身が人工知能と化すのだから
そんなことは起こらない」
と、何とも安心・安泰な(?)未来予測を行ってくれたとのこと。
かのJames Hughesも出てきて、
初期的なAI(これをAIベビーと呼ぶのだそうで)の中に悪い奴が出てきて
ウェブに進入して悪さをしたらどうなるか
という話を語っているのですが、
こちらについては、何を言っているのか私にはさっぱり。
(たぶん日本語で読んでもよく分からないんじゃないか……と。)
初期的なAI(これをAIベビーと呼ぶのだそうで)の中に悪い奴が出てきて
ウェブに進入して悪さをしたらどうなるか
という話を語っているのですが、
こちらについては、何を言っているのか私にはさっぱり。
(たぶん日本語で読んでもよく分からないんじゃないか……と。)
何しろこの2人、それぞれに
「人間とコンピューターの境目がなくなる」
「人間はみんなサイボーグになっていく」
と本を書いている方々ですから。
「人間とコンピューターの境目がなくなる」
「人間はみんなサイボーグになっていく」
と本を書いている方々ですから。
特異点サミット2007の公式サイトはこちら。
ところで、
このサイトにあるJames Hughesの紹介プロフィールを覗いてみると、
Ashley事件に登場した際に紹介されていた
「倫理と新興技術研究所ITTEの創設者の一人であり所長」のほかに、
Trinity大学で医療施策を教える社会学者だとか
The World Academy of Arts and Sciencesのフェローであるとか、
The American Society of Bioethics and Humanitiesの会員であるとか、
Yale大学の the Working Group of Ethics and Technology at Yale Universityに入っているとか、
ズラズラ書かれているのですが、
世界トランスヒューマニスト協会(WTA)でのご活躍については
一切触れられていないことの不思議。
このサイトにあるJames Hughesの紹介プロフィールを覗いてみると、
Ashley事件に登場した際に紹介されていた
「倫理と新興技術研究所ITTEの創設者の一人であり所長」のほかに、
Trinity大学で医療施策を教える社会学者だとか
The World Academy of Arts and Sciencesのフェローであるとか、
The American Society of Bioethics and Humanitiesの会員であるとか、
Yale大学の the Working Group of Ethics and Technology at Yale Universityに入っているとか、
ズラズラ書かれているのですが、
世界トランスヒューマニスト協会(WTA)でのご活躍については
一切触れられていないことの不思議。
―――――――
いつも不思議に思うのですが、
この人たちはメディアに登場する際には
WTAの役員だとは名乗らないし、
そういう紹介もされないのですよ。
この人たちはメディアに登場する際には
WTAの役員だとは名乗らないし、
そういう紹介もされないのですよ。
このサミットを取り上げた以下のAP伝でも、
皆さんfuturist(未来学者? 未来予言者? 未来夢想家?)または
「シリコンバレーの技術者・科学者」などとされていて、
記事を読む限りでは
特異な興味関心を共有している人たちの集まりであるというよりも、
ロボット工学とIT技術を中心にしたフツーの学者の集まりのように感じられてしまうのですが、
まさかAP通信の記者が知らないなんてことは、ないですよね。
皆さんfuturist(未来学者? 未来予言者? 未来夢想家?)または
「シリコンバレーの技術者・科学者」などとされていて、
記事を読む限りでは
特異な興味関心を共有している人たちの集まりであるというよりも、
ロボット工学とIT技術を中心にしたフツーの学者の集まりのように感じられてしまうのですが、
まさかAP通信の記者が知らないなんてことは、ないですよね。
What will happen when machines outthink us? At Singularity Summit, futurists say now is the time to plan our strategy
By Marcus Wohlsen, AP, September 9, 2007
By Marcus Wohlsen, AP, September 9, 2007
James Huges のAshley事件での活躍については以下のエントリーに。
Dr. James J.Hughes その1
Dr. James J. Hughes その2
Dr. James J. Hughes その3
「選手がステロイド使って何が悪い」とHughes
Dr. James J.Hughes その1
Dr. James J. Hughes その2
Dr. James J. Hughes その3
「選手がステロイド使って何が悪い」とHughes
Ashley事件で両親と医師らの擁護に登場したトランスヒューマニスト一覧はこちら
2008.02.29 / Top↑
こちらも「どうせ障害者だから」という若者らの声が聞こえてくるような陰惨な事件。
オハイオで16歳と17歳のアベックが
障害のある女性(18)の家に忍び込んで車を盗もうとしたものの
女性の母親がその車で出かけてしまったものだから
腹いせと面白半分で
その女性を何時間にもわたって暴行。
障害のある女性(18)の家に忍び込んで車を盗もうとしたものの
女性の母親がその車で出かけてしまったものだから
腹いせと面白半分で
その女性を何時間にもわたって暴行。
猿轡をして縛り、
バットで殴る、
髪の毛を切る、
シャワーでずぶぬれにした後で
素足で外で雪の上を歩かせる、なども。
バットで殴る、
髪の毛を切る、
シャワーでずぶぬれにした後で
素足で外で雪の上を歩かせる、なども。
検察官いわく
「胸が悪くなるような犯罪。
どうにも説明がつかない。
こんなことが起こるなんて想像すらできないような。」
「胸が悪くなるような犯罪。
どうにも説明がつかない。
こんなことが起こるなんて想像すらできないような。」
世界中で
障害者や高齢者、子ども、女性など弱い者の
その弱さに付け込む犯罪のニュースが
増えてきているように思えるのがとても気になります。
障害者や高齢者、子ども、女性など弱い者の
その弱さに付け込む犯罪のニュースが
増えてきているように思えるのがとても気になります。
2008.02.28 / Top↑
Ruben Navarroさんは重症の障害がある25歳の男性。
ケアホームで心臓麻痺のために呼吸停止状態で発見され、
病院へ救急搬送されたのですが、
Roozrokh医師はモルヒネとアチバンを過剰に投与。
さらに
通常は移植に備えて臓器を消毒するために患者の死後に投与するベタダインの投与まで早々と命じるなど
明らかに患者の救命よりも早く臓器を摘出することを優先させた行為で
Navarroさんの死を早めた疑い。
ケアホームで心臓麻痺のために呼吸停止状態で発見され、
病院へ救急搬送されたのですが、
Roozrokh医師はモルヒネとアチバンを過剰に投与。
さらに
通常は移植に備えて臓器を消毒するために患者の死後に投与するベタダインの投与まで早々と命じるなど
明らかに患者の救命よりも早く臓器を摘出することを優先させた行為で
Navarroさんの死を早めた疑い。
2001年の報告書にある事例では
同じくカリフォルニアで
救急搬送された患者をオンコールの医師が
「どうせ知的障害があるのだから
死んだって誰も悲しまない」
と診察に来ることすら拒否し、
患者が死んだというケースも。
同じくカリフォルニアで
救急搬送された患者をオンコールの医師が
「どうせ知的障害があるのだから
死んだって誰も悲しまない」
と診察に来ることすら拒否し、
患者が死んだというケースも。
(詳細は知的障害者だからと助けなかった医師のエントリーに。)
世の中にじわじわと「どうせ障害者だから」という声が
低く、しかし着実に広がっているように思えてなりません。
低く、しかし着実に広がっているように思えてなりません。
Ashley事件の背後から聞こえてくるのも
「どうせ重症児」
「どうせ何も分からない」
「どうせ無用の臓器」
という声に他なりません。
「どうせ重症児」
「どうせ何も分からない」
「どうせ無用の臓器」
という声に他なりません。
しかし「どうせ障害者だから」、「どうせ本人には必要ないのだから」と一旦言い始めたら、
この「どうせ」はどこまででも対象を広げていくでしょう。
この「どうせ」はどこまででも対象を広げていくでしょう。
だからこそ、
「どうせ障害児・者だから」という感覚には
くれぐれも警戒しておかなければ、と思うのです。
「どうせ障害児・者だから」という感覚には
くれぐれも警戒しておかなければ、と思うのです。
2008.02.28 / Top↑
WPASの調査報告書を読み返していたら、
ちょうど該当する脚注が目に付きました(P.13)。
ちょうど該当する脚注が目に付きました(P.13)。
報告書の流れとしては
「倫理委は決定を下すのではなくrecommendationを行うだけ。
不妊手術については医学的には倫理問題はないと考えるものの、
法律的に許されるかどうかを決定する権限は倫理委にはないので
両親の方で弁護士を雇って裁判所の判断を仰ぐようにアドバイスした」
といったことを書いた箇所。
脚注53です。
「倫理委は決定を下すのではなくrecommendationを行うだけ。
不妊手術については医学的には倫理問題はないと考えるものの、
法律的に許されるかどうかを決定する権限は倫理委にはないので
両親の方で弁護士を雇って裁判所の判断を仰ぐようにアドバイスした」
といったことを書いた箇所。
脚注53です。
それによると、
米国小児科学会の未成年の不妊手術に関する指針とは
米国小児科学会の未成年の不妊手術に関する指針とは
When the involved parties believe surgical sterilization to be the best option, application to the courts may provide the only lawful means to accomplish that goal. Physicians and surgeons should be familiar with the law that applies to the jurisdictions where they practice.
American Academy of Pediatrics, Committee on Bioethics, Policy Statement, Sterilization of Minors With Developmental Disabilities, 104 Pediatrics 337, P.13(Aug. 1999), reaffirmed Oct. 2006, 119 Pediatrics 405 (Feb. 2007)
外科的不妊術が最良の選択肢であると関係者が考える場合には、その目的を達成する唯一の合法的手段は裁判所に申し立てることとなろう。医師と外科医は自らが医業を行う地域の法律に通じていなければならない。
American Academy of Pediatrics, Committee on Bioethics, Policy Statement, Sterilization of Minors With Developmental Disabilities, 104 Pediatrics 337, P.13(Aug. 1999), reaffirmed Oct. 2006, 119 Pediatrics 405 (Feb. 2007)
外科的不妊術が最良の選択肢であると関係者が考える場合には、その目的を達成する唯一の合法的手段は裁判所に申し立てることとなろう。医師と外科医は自らが医業を行う地域の法律に通じていなければならない。
この文面からすると
裁判所の合意を取り付ける責任は医師にあるように読めるのですが、
彼らは実際にはAshleyの両親の責任であるかのような行動をとったわけで、
その辺が法律的にどうなのかはよく分からず、
誰かに聞いてみたいところです。
裁判所の合意を取り付ける責任は医師にあるように読めるのですが、
彼らは実際にはAshleyの両親の責任であるかのような行動をとったわけで、
その辺が法律的にどうなのかはよく分からず、
誰かに聞いてみたいところです。
しかし、いずれにしても、
実際の手術の前に裁判所の判断を確認する責任は医師らにあったということでしょう。
実際の手術の前に裁判所の判断を確認する責任は医師らにあったということでしょう。
だからこそ、病院は去年5月に記者会見を開いて
子宮摘出についての手続きの違法性を認めざるをえなかったわけですが、
子宮摘出についての手続きの違法性を認めざるをえなかったわけですが、
今となっては時間が経ったからといって
その違法性についてホッカムリを決め込んで
「子宮摘出については小児科学会の指針があったので
倫理委としては検討しやすかった」などと……。
その違法性についてホッカムリを決め込んで
「子宮摘出については小児科学会の指針があったので
倫理委としては検討しやすかった」などと……。
その指針が上記のようなものだということを念頭に考えると、
よくもまぁ言えたものだと……。
――――――
ちなみに、同じくWPASの報告書に添付された
ワシントン大学のインフォームド・コンセント・マニュアル(Exhibit E)から
この小児科学会の指針に匹敵する部分を抜き出すと、
ワシントン大学のインフォームド・コンセント・マニュアル(Exhibit E)から
この小児科学会の指針に匹敵する部分を抜き出すと、
Limitations on the Authority of Surrogate Decision Makers
Washington law limits the authority of legally authorized surrogates to consent to certain types of health care or procedures.
1.Sterilization of Mentally Incompetent Person. Legally authorized surrogates may not consent to the sterilization of a mentally incompetent person. Only the patient may provide informed consent for a medical procedures that would result in sterilization. If the patient cannot give informed consent, then a court order authorization must be obtained.
代理決定権者の権限の制限
ワシントン州の法律は特定のタイプの医療と処置については法律上の代理決定権者の権限を限定している。
1.精神的に同意能力を欠いている人の不妊手術。法律的に代理決定の権限を与えられた人であっても精神的に同意能力を欠いている人の不妊手術に同意することはできない。結果的に不妊手術になるような医療処置に対してインフォームドコンセントを与えることができるのは患者のみである。患者がインフォームド・コンセントを与えられない場合には裁判所の命令による許可を得なければならない。
Washington law limits the authority of legally authorized surrogates to consent to certain types of health care or procedures.
1.Sterilization of Mentally Incompetent Person. Legally authorized surrogates may not consent to the sterilization of a mentally incompetent person. Only the patient may provide informed consent for a medical procedures that would result in sterilization. If the patient cannot give informed consent, then a court order authorization must be obtained.
代理決定権者の権限の制限
ワシントン州の法律は特定のタイプの医療と処置については法律上の代理決定権者の権限を限定している。
1.精神的に同意能力を欠いている人の不妊手術。法律的に代理決定の権限を与えられた人であっても精神的に同意能力を欠いている人の不妊手術に同意することはできない。結果的に不妊手術になるような医療処置に対してインフォームドコンセントを与えることができるのは患者のみである。患者がインフォームド・コンセントを与えられない場合には裁判所の命令による許可を得なければならない。
意図はどうあれ結果的に不妊手術になるものは不可なのだから、
両親の弁護士が主張した「不妊が目的ではないから裁判所に行かなくてOK」という理屈は
成り立たないことになります。
両親の弁護士が主張した「不妊が目的ではないから裁判所に行かなくてOK」という理屈は
成り立たないことになります。
この後には精神科の外科医療と抑制が続いて挙げられているのですが、
その後に付記された部分は非常に重要だと私には思われます。
その後に付記された部分は非常に重要だと私には思われます。
Specific court authorization is required under Washington law for these procedures. The intent of this limitation is to require court approval before a guardian or other legally authorized surrogate may consent to highly intrusive, irreversible medical treatment that may seriously affect the person’s bodily integrity.
ワシントン州の法律ではこれらの処置には明確な裁判所の許可が必要とされる。この制約の意図は、その人の体の全体性(尊厳)に深刻な影響を及ぼしかねない、極めて侵襲度が高く不可逆的な治療に擁護責任者その他の法律上代理決定権を有する者が同意を与える以前に裁判所の同意が必要であるとの意である。
ワシントン州の法律ではこれらの処置には明確な裁判所の許可が必要とされる。この制約の意図は、その人の体の全体性(尊厳)に深刻な影響を及ぼしかねない、極めて侵襲度が高く不可逆的な治療に擁護責任者その他の法律上代理決定権を有する者が同意を与える以前に裁判所の同意が必要であるとの意である。
この付記の部分を真面目に捉えれば、
子宮摘出のみならず、
乳房芽の切除も考え方によってはホルモンによる成長抑制も
「体の全体性に影響を及ぼす
極めて侵襲度が高く不可逆的な治療」に当たるのではないでしょうか。
子宮摘出のみならず、
乳房芽の切除も考え方によってはホルモンによる成長抑制も
「体の全体性に影響を及ぼす
極めて侵襲度が高く不可逆的な治療」に当たるのではないでしょうか。
Ashleyに行われた一連の処置の責任者であったGunther医師は
ワシントン大学の職員でした。
このインフォームド・コンセント・マニュアルを励行する義務があったはずなのです。
ワシントン大学の職員でした。
このインフォームド・コンセント・マニュアルを励行する義務があったはずなのです。
身近なマニュアルがこれほど繰り返している警告を無視して
米国小児科学会の方針に従って検討したなどと、
よくもまぁ言えたものだと……。
米国小児科学会の方針に従って検討したなどと、
よくもまぁ言えたものだと……。
2008.02.28 / Top↑
6週間で5人の売春婦を殺した連続殺人犯が
5年前に窃盗で捕まった際に採取されたDNAのデータによって判明・逮捕、
21日に有罪となったことによって
国民DNAデータベースを賞賛する声が相次ぎ、
それに伴って対象が全国民に拡大される懸念の声も出て、
ここ数年の論争が再燃しているとの英国のニュース。
5年前に窃盗で捕まった際に採取されたDNAのデータによって判明・逮捕、
21日に有罪となったことによって
国民DNAデータベースを賞賛する声が相次ぎ、
それに伴って対象が全国民に拡大される懸念の声も出て、
ここ数年の論争が再燃しているとの英国のニュース。
管轄する内務省の国民DNAデータベースに関するサイトはこちら
このサイトの説明によると
1995年に始まった英国の国民DNAデータベースは世界で最大規模。
データベースに加えられるDNAのサンプルは
犯罪現場で採取したものと収監された個人のもののみで
2005年末に340万人分。
今のところ国民全員に強制する計画はない、と書かれていますが、
1995年に始まった英国の国民DNAデータベースは世界で最大規模。
データベースに加えられるDNAのサンプルは
犯罪現場で採取したものと収監された個人のもののみで
2005年末に340万人分。
今のところ国民全員に強制する計画はない、と書かれていますが、
犯罪解決を迅速にするために、
いっそ国民全体のDNA情報を、
という声が出ているのも事実で、
ここ数年大きな論争になっているのですね。
いっそ国民全体のDNA情報を、
という声が出ているのも事実で、
ここ数年大きな論争になっているのですね。
――――――――
科学と新興テクノロジーの進歩によって
個人レベルで「不可能が可能になったこと」は多く、
トランスヒューマニストはそうしたことをもって
「個人の選択権が飛躍的に拡大する素晴らしい未来」を描いて見せるわけですが、
個人レベルで「不可能が可能になったこと」は多く、
トランスヒューマニストはそうしたことをもって
「個人の選択権が飛躍的に拡大する素晴らしい未来」を描いて見せるわけですが、
しかし、
それは同時に、
個人の集まりである国民を支配する側に可能になったことは
おそらくは個人レベルで可能になったこととは比較にならないほど多いだろうし、
それは同時に、
個人の集まりである国民を支配する側に可能になったことは
おそらくは個人レベルで可能になったこととは比較にならないほど多いだろうし、
しかも、その全てが国民に知らされるという保証もない……ということなのでは?
2008.02.27 / Top↑
……とタイトル通りの名言を吐いたのは
the University of Texas Medical Branch’s Institute for Medical HumanitiesのHoward Brody医師。
the University of Texas Medical Branch’s Institute for Medical HumanitiesのHoward Brody医師。
それほど米国の病院の倫理委員会なるものは
形式も活動内容も効果のほども検証されてもおらず、
案外にお粗末だということなのですね。
形式も活動内容も効果のほども検証されてもおらず、
案外にお粗末だということなのですね。
病院内の倫理相談サービスは形としては整っているものの
その内実はというと一定の基準もなく活動内容はバラバラだとの全国調査の結果が
the America Journal of Bioethicsの2007年2月号で報告されたばかり。
その内実はというと一定の基準もなく活動内容はバラバラだとの全国調査の結果が
the America Journal of Bioethicsの2007年2月号で報告されたばかり。
ここでは
多くの医師らが臨床現場で倫理のジレンマに直面しつつも
なぜ倫理相談を受けようとしないのか、
という点について
様々な倫理学者の見解をもとに考える、
という趣旨の記事です。
多くの医師らが臨床現場で倫理のジレンマに直面しつつも
なぜ倫理相談を受けようとしないのか、
という点について
様々な倫理学者の見解をもとに考える、
という趣旨の記事です。
Ashley事件でお馴染みの顔ぶれとしは、
The University of Pennsylvania’s Center of BioethicsのArthur L. Caplanが
倫理委が病院の危機管理と連携していたりすると
病院弁護士が出てくることになるので医師は気が進まないのでは、
と分析し、
The University of Pennsylvania’s Center of BioethicsのArthur L. Caplanが
倫理委が病院の危機管理と連携していたりすると
病院弁護士が出てくることになるので医師は気が進まないのでは、
と分析し、
次いで、かのDr.Diekemaが登場して、
医師らはなぜ倫理委に相談したがらないのかという点について
「医師のプライドのせい」だとの見方を示しています。
医師らはなぜ倫理委に相談したがらないのかという点について
「医師のプライドのせい」だとの見方を示しています。
例えば自分は心臓外科医だと専門領域を言う場合には
誰でもできることじゃないのだけど、
生命倫理というと誰でもできて誰でもやっていることだから
それが自分には分からないから相談するというのは
医師のプライドが許さないのではないかというのですね。
誰でもできることじゃないのだけど、
生命倫理というと誰でもできて誰でもやっていることだから
それが自分には分からないから相談するというのは
医師のプライドが許さないのではないかというのですね。
なるほど。
小児科の生命倫理を専門にしているDiekema医師らしい推察かもしれません。
小児科の生命倫理を専門にしているDiekema医師らしい推察かもしれません。
Ashley事件を振り返ると、
その小児科の生命倫理の専門家としての彼自身のプライドは
いったいどこに行っていたのだろうと
疑問を持たざるをえないのですが、
その小児科の生命倫理の専門家としての彼自身のプライドは
いったいどこに行っていたのだろうと
疑問を持たざるをえないのですが、
今からでも遅くないから
論文や倫理委のウソやゴマカシを糊塗することに血道をあげるのではなく、
子どもを守るために存在する小児科生命倫理の専門家としてのプライドを
もう一度取り戻して欲しいものです。
論文や倫理委のウソやゴマカシを糊塗することに血道をあげるのではなく、
子どもを守るために存在する小児科生命倫理の専門家としてのプライドを
もう一度取り戻して欲しいものです。
2008.02.27 / Top↑
アメリカとカナダの研究者が
FDAから未公開の情報も含めて治験に関するデータを全て入手して
詳細に検証した結果、
プロザックをはじめとする4種の抗ウツ剤の効果は
実はプラシーボと違っていなかった……という
驚くべき研究結果が報告されたとのこと。
FDAから未公開の情報も含めて治験に関するデータを全て入手して
詳細に検証した結果、
プロザックをはじめとする4種の抗ウツ剤の効果は
実はプラシーボと違っていなかった……という
驚くべき研究結果が報告されたとのこと。
……じゃぁ、FDAの認可って何なの?
2008.02.26 / Top↑
聴き取り能力があやふやな上に音声が小さいことも手伝って
細部までは自信がないので、
以下に引用するDiekema発言は
文字通りというよりも発言の趣旨だと考えてもらいたいのですが、
細部までは自信がないので、
以下に引用するDiekema発言は
文字通りというよりも発言の趣旨だと考えてもらいたいのですが、
このまま言い逃れられるとタカをくくって余裕が出てきたのでしょうか。
時間経過と共に細部までウソを固めつつあるのか、
これまでにはなかった内容も多く、
なかでも「よー言うわ、ったく……」と呆れてしまったのは、
例えば、
これまでにはなかった内容も多く、
なかでも「よー言うわ、ったく……」と呆れてしまったのは、
例えば、
「子宮摘出部分についてはこれまでも行われてきたことであり、
小児科学会など複数のガイドラインがあるので
倫理委員会の検討はやりやすかった」と。
小児科学会など複数のガイドラインがあるので
倫理委員会の検討はやりやすかった」と。
他の選択肢はなかったのかという指摘に対して
「他の選択肢のいずれをとってみてもリスクはある。
それぞれのリスクを検討すると同時に、
それらの選択肢のメリットについて
倫理委員会は細かく検討したのだ」と。
「他の選択肢のいずれをとってみてもリスクはある。
それぞれのリスクを検討すると同時に、
それらの選択肢のメリットについて
倫理委員会は細かく検討したのだ」と。
子どもの知的レベルについて、どこで線を引くのかという疑問に対しては
「その問題を議論してもらいたいというのこそ論文発表の目的だった。
明確な基準が必要だということを論文では訴えたかったのだ」と。
「その問題を議論してもらいたいというのこそ論文発表の目的だった。
明確な基準が必要だということを論文では訴えたかったのだ」と。
(ほう? そんなこと論文に書いてありましたっけ?)
親の便宜のためにやったことだという批判に対しては
「親の便宜のためだという部分があるとしても、
自分たちはそれとは無関係に子ども本人の利益だけを考えたのだ」という彼に、
「親の便宜のためだという部分があるとしても、
自分たちはそれとは無関係に子ども本人の利益だけを考えたのだ」という彼に、
インタビューアーが
「そうですよね。あなた方は子ども本人のアドボケイトだったわけですね」と媚びると、
「その通りです。我々は子どもの立場から検討したのです」と。
「そうですよね。あなた方は子ども本人のアドボケイトだったわけですね」と媚びると、
「その通りです。我々は子どもの立場から検討したのです」と。
(本人の利益を代弁する存在が倫理委にいなかったことが指摘・批判されているのですが、
いつのまにやら倫理委そのものが代弁者であったという話に摩り替わったようですね。)
いつのまにやら倫理委そのものが代弁者であったという話に摩り替わったようですね。)
さらに言うに事欠いて
「障害者のアドボカシー・グループの中には話したくもないと
議論を拒否する態度をとるものもあるが、
この問題には充分にオープンな議論が必要だと思う」のだそうで。
「障害者のアドボカシー・グループの中には話したくもないと
議論を拒否する態度をとるものもあるが、
この問題には充分にオープンな議論が必要だと思う」のだそうで。
しかし、なんとも噴飯モノなのは、
「両親や病院を非難するのではなく、
この事件をこそ、
こうした処置が不要となる社会の必要を
訴える機会にすべきだ」との発言。
「両親や病院を非難するのではなく、
この事件をこそ、
こうした処置が不要となる社会の必要を
訴える機会にすべきだ」との発言。
この期に及んで、なんとも微妙な発言ですこと。
彼の良心が、どこかでチクチクしているということでしょうか???
彼の良心が、どこかでチクチクしているということでしょうか???
2008.02.26 / Top↑
ごく最近、英語の(つまり国語)の授業で
ブログを立ち上げてエッセイを書けという課題が出たもので
ブログを立ち上げてエッセイを書けという課題が出たもので
(ネットを利用したこういう課題の出し方というのは面白いですね。)
仕方がないからブログを立ち上げて
そのエッセイのたたき台の文章をアップし、
そのエッセイのたたき台の文章をアップし、
(この最初の段階で指導教官らしき人からコメントで指導が入っている)
それをまた書き直してはアップし……している(たぶん米国の)学生さんがいて、
この人が書こうとしているエッセイが
“Ashley療法”を取り上げて障害者の人権問題を論じようという勇気ある挑戦。
“Ashley療法”を取り上げて障害者の人権問題を論じようという勇気ある挑戦。
内容はともかく、
今なおこの問題に興味と疑問を持つ若い人がいるということが単純に嬉しくて
激励のコメントを入れてあげたい気もしたけど、
今なおこの問題に興味と疑問を持つ若い人がいるということが単純に嬉しくて
激励のコメントを入れてあげたい気もしたけど、
まず事実関係をきちんと検証・把握してから書きましょう、
みたいな余計なことを書いて混乱させてもいけないので
みたいな余計なことを書いて混乱させてもいけないので
心の中でエールを送っておいた。
2008.02.23 / Top↑
人間の死体にいろんなポーズを取らせて展示する催しが人気で、
それを業務にしている会社までちゃんと存在する……なんて
ウソだと思いますよね。ふつう。
それを業務にしている会社までちゃんと存在する……なんて
ウソだと思いますよね。ふつう。
でも、これ、れっきとした事実のようで。
ニュースそのものは
Cincinnati Museum Centerで展示に使われた“標本”の中に、
中国で処刑されたと思われる死体が混じっていたことから
“標本”の調達経路が問題となって、
展示が中止されると同時に捜査が開始されたという話。
Cincinnati Museum Centerで展示に使われた“標本”の中に、
中国で処刑されたと思われる死体が混じっていたことから
“標本”の調達経路が問題となって、
展示が中止されると同時に捜査が開始されたという話。
そういえば中国って死刑囚の死体から臓器を摘出して
医療ツアーで移植を受けに来る外国人に売っていたことを
去年だったか(一昨年だったかもしれない)正式に認めていましたよね。
これもそれに類する話なのかもしれませんが、
医療ツアーで移植を受けに来る外国人に売っていたことを
去年だったか(一昨年だったかもしれない)正式に認めていましたよね。
これもそれに類する話なのかもしれませんが、
でも、それはそれとして、この展示の話には
死刑囚の死体が混じっていたという以前の問題があると思うのですが?
死刑囚の死体が混じっていたという以前の問題があると思うのですが?
人間であれ動物であれ死体を展示公開することが
どうして許されるのか分からない。
どうして許されるのか分からない。
この展示、2月1日に始まるや、
最初の1週間で美術館創設以来の入館者記録を作ったとのこと。
最初の1週間で美術館創設以来の入館者記録を作ったとのこと。
現実にそういう催しが簡単に出かけていける場所で行われていたら
私自身はどうするだろう……と考えてみると、
ちょっと気分は複雑で、
確かに興味を持ちそうな気はする。
俗に言う“怖いもの見たさ”なのか、
それともタブーがあるから余計に見てみたいのか、
悪趣味だと分かっていながら「ちょっと見てみたい」気持ちが
私の中にもあることは事実。
博物館でインディアンの生首とか
生き仏になった高僧のミイラがあると、
まじまじと見入ってしまうし。
私自身はどうするだろう……と考えてみると、
ちょっと気分は複雑で、
確かに興味を持ちそうな気はする。
俗に言う“怖いもの見たさ”なのか、
それともタブーがあるから余計に見てみたいのか、
悪趣味だと分かっていながら「ちょっと見てみたい」気持ちが
私の中にもあることは事実。
博物館でインディアンの生首とか
生き仏になった高僧のミイラがあると、
まじまじと見入ってしまうし。
でも、その一方で
どこの誰とも分からない死体を「展示」して見世物にしたり、
まして、そのために「死体にポーズをとらせ」たり、
また、そういう展示に乗じて物見遊山に興じるという行為には
博物館の生首や生き仏とは全然違う卑しいものを感じてしまうから
きっと不快感が先に立って行かないんじゃないかなぁ。
どこの誰とも分からない死体を「展示」して見世物にしたり、
まして、そのために「死体にポーズをとらせ」たり、
また、そういう展示に乗じて物見遊山に興じるという行為には
博物館の生首や生き仏とは全然違う卑しいものを感じてしまうから
きっと不快感が先に立って行かないんじゃないかなぁ。
だって、やっぱり、これは死者への冒涜でしょう。
記事にはカトリックの大司教が尊厳を侵す行為だと批判するコメントはありますが、
一般市民の中から疑問視する声はでなかったのでしょうか。
一般市民の中から疑問視する声はでなかったのでしょうか。
そういえば冒涜という言葉は尊厳と表裏。
人間の身体とか命の尊厳がだんだん省みられなくなっていることと
こういう展示が人気を呼ぶこととも表裏なのかもしれませんね。
人間の身体とか命の尊厳がだんだん省みられなくなっていることと
こういう展示が人気を呼ぶこととも表裏なのかもしれませんね。
人を殺すことも
理屈抜きに問答無用でやってはいけないことだったはずのものが
脳死だ・尊厳死だ・安楽死だ・無益な治療だ・ロングフル・ライフ(生まれない方がよかった命)だ
本人の最善の利益だ・選別的中絶だ・最大多数の最大幸福だと
理屈をひねればやってもいいことになりつつあるし……。
理屈抜きに問答無用でやってはいけないことだったはずのものが
脳死だ・尊厳死だ・安楽死だ・無益な治療だ・ロングフル・ライフ(生まれない方がよかった命)だ
本人の最善の利益だ・選別的中絶だ・最大多数の最大幸福だと
理屈をひねればやってもいいことになりつつあるし……。
【追記】
自分が行っていないので気がつかなかったのですが、
日本で話題になった「人体の不思議展」も
行った人のブログ記事からすると実は同じ類のものだったらしいので、
トラックバックさせてもらいました。
自分が行っていないので気がつかなかったのですが、
日本で話題になった「人体の不思議展」も
行った人のブログ記事からすると実は同じ類のものだったらしいので、
トラックバックさせてもらいました。
2008.02.22 / Top↑
Emotivというアメリカ/オーストラリアの神経工学の会社が
脳波から読んだ思考や感情によってゲームにコマンドを送ることができる
ヘッドセットを開発したのだとか。
脳波から読んだ思考や感情によってゲームにコマンドを送ることができる
ヘッドセットを開発したのだとか。
原理としては脳波検査とほぼ同じみたいですが、
頭にべたべたゼリーを塗って電極をあちこちに貼る
脳波検査のような煩雑な手間は不要。
スタイリッシュなヘッドセットをかぶるだけで
ワイヤレスでコンピューターに繋がって、
プレーヤーの約30種類の表情、感情、思考を読み取り
それがゲームをコントロールするんだと。
頭にべたべたゼリーを塗って電極をあちこちに貼る
脳波検査のような煩雑な手間は不要。
スタイリッシュなヘッドセットをかぶるだけで
ワイヤレスでコンピューターに繋がって、
プレーヤーの約30種類の表情、感情、思考を読み取り
それがゲームをコントロールするんだと。
ある動作を頭に浮かべただけでゲームの中の自分がその動作をするってことみたいですが、
この会社の社長さんの言い草で笑ってしまったのは、
「ゲームのキャラクターを殺した後に笑ったり喜んだりしていたら、
ヴァーチャル世界のあなたから
ひどい人間だと叱られることもあります」
ヴァーチャル世界のあなたから
ひどい人間だと叱られることもあります」
アハハ。なんて姑息な小細工。
でもゲーマーがまさか
無表情と無感動を修練するために
沢山殺すことが目的のゲームで遊ぶとも思えないので、
無表情と無感動を修練するために
沢山殺すことが目的のゲームで遊ぶとも思えないので、
もう一度この記事をよく読んでみたら、
ヴァーチャルな自分に叱られたりするのは
「ゲーム・キャラクターの情緒反応のリアリティを向上させる」ためなのだそうで。
ヴァーチャルな自分に叱られたりするのは
「ゲーム・キャラクターの情緒反応のリアリティを向上させる」ためなのだそうで。
つまり
殺して喜ぶ自分をひどい奴だと感じる自分がさらに誰かを殺すことのリアリティですね。
殺して喜ぶ自分をひどい奴だと感じる自分がさらに誰かを殺すことのリアリティですね。
「やったぜい!」と喜んだ瞬間に
敵を倒したばかりの自分がくるっとこちらを振り向いて
「おまえ、いま笑っただろう。人を殺しておいてなんて奴だ」。
それがゲーマーにまた受けて
「ほんとだよねー。キャハハ」などと笑いながら
ヘッドセットの中では既に
次の敵を殺すべく殴る・蹴る・刺すをイメージしている……。
敵を倒したばかりの自分がくるっとこちらを振り向いて
「おまえ、いま笑っただろう。人を殺しておいてなんて奴だ」。
それがゲーマーにまた受けて
「ほんとだよねー。キャハハ」などと笑いながら
ヘッドセットの中では既に
次の敵を殺すべく殴る・蹴る・刺すをイメージしている……。
ぜんぜん笑える話じゃなかった。
2008.02.21 / Top↑
ほんの遊び半分に某SNSで検索してみたら
「トランスヒューマニズム」というコミュニティがちゃんとあるのに驚いて、
とりあえず覗いてみたところ
THニズムについての解釈が
ご本家世界THニズム協会とかなりズレているのはご愛嬌としても
いや、たまげました。
「トランスヒューマニズム」というコミュニティがちゃんとあるのに驚いて、
とりあえず覗いてみたところ
THニズムについての解釈が
ご本家世界THニズム協会とかなりズレているのはご愛嬌としても
いや、たまげました。
このコミュニティの管理者がなんと
ラエリアンムーブメントの日本の支部長さんだった。
ラエリアンムーブメントの日本の支部長さんだった。
ラエリアンムーブメントって、
クローン人間を作ったといつぞやお騒がせ宣言をしたり
宇宙人と交信して宇宙からのメッセージが云々といっている、
あの得体の知れない団体ですよね。
クローン人間を作ったといつぞやお騒がせ宣言をしたり
宇宙人と交信して宇宙からのメッセージが云々といっている、
あの得体の知れない団体ですよね。
確かにクローン人間をつくってしまおうなどという発想は
とてもトランスヒューマニスティックですが、
とてもトランスヒューマニスティックですが、
インテリジェント・デザインというと宗教右派なんだとばかり思っていたので
ラエリアンが科学と技術による人類改造思想であるトランスヒューマニズムと繋がって
それで同時にインテリジェント・デザインを説くというのは
いったいどういうこっちゃ????? 頭が混乱したのですが、
ラエリアンが科学と技術による人類改造思想であるトランスヒューマニズムと繋がって
それで同時にインテリジェント・デザインを説くというのは
いったいどういうこっちゃ????? 頭が混乱したのですが、
アマゾンの読者書評を読んでみると
絶賛する人が「進化論にも神にも飽き足らない人に最適の理論」だと書いているので、
ラエリアンが説くインテリジェント・デザインというのは
宗教右派が説くインテリジェント・デザインとはまた別物なのでしょう。
絶賛する人が「進化論にも神にも飽き足らない人に最適の理論」だと書いているので、
ラエリアンが説くインテリジェント・デザインというのは
宗教右派が説くインテリジェント・デザインとはまた別物なのでしょう。
なるほど「改変」なわけですね。
インテリジェント・デザインもTHニズムも改変して、
いろんな人がラエリアンに入りやすいように入り口を増やしていくってことなのでしょうか。
インテリジェント・デザインもTHニズムも改変して、
いろんな人がラエリアンに入りやすいように入り口を増やしていくってことなのでしょうか。
それは仏教。
ウィキペディアによると仏教はラエリアンに近い考え方だとされているらしいのですが、
(HPで白人教祖が白い着物にちょんまげ姿なのは、そのため?)
トランスヒューマニストらも、なにやら仏教が好きらしい。
インテリジェント・デザインが「これは科学だ」と言い張るときに
合理化のツールに持ち出したのも仏教だったらしい。
(HPで白人教祖が白い着物にちょんまげ姿なのは、そのため?)
トランスヒューマニストらも、なにやら仏教が好きらしい。
インテリジェント・デザインが「これは科学だ」と言い張るときに
合理化のツールに持ち出したのも仏教だったらしい。
ちっとも科学的じゃないのに現代社会において科学と共存しているところが便利だから?
キリスト教の神のように科学と対立しないから?
キリスト教の神のように科学と対立しないから?
でも、THニズムに限って言えば、
彼らの“執着”こそ仏教が追求する理想の対極にあるように私には思えるのですがね
彼らの“執着”こそ仏教が追求する理想の対極にあるように私には思えるのですがね
---- ----
それにしてもこういう思いがけない繋がりがひょいっと目の前に展開したりすると、
自分の頭の構造がいかに単純で
いかに宗教右派とか障害者との2極対立軸でしか
THニズムを捉えていないかを思い知らされますね。
ちょっと世の中が混沌としている現実に直面すると
もう……ワケわかんね。
もう……ワケわかんね。
2008.02.21 / Top↑
Washington University in St. Louisのサイトに
面白いプロジェクトが紹介されています。
面白いプロジェクトが紹介されています。
自身が癌にかかったことがある倫理学者と
癌にかかった配偶者を介護したことがある倫理学者7人とで、
そうした個人的な経験を通して
これまでの倫理学の様々な議論に見直しを加えよう……
というプロジェクトチームが発足したとのこと。
癌にかかった配偶者を介護したことがある倫理学者7人とで、
そうした個人的な経験を通して
これまでの倫理学の様々な議論に見直しを加えよう……
というプロジェクトチームが発足したとのこと。
自分が癌にかかった方なのか
それとも妻を介護した方なのか
はたまた両方(を経験した人が1人いる計算になるので)なのか分かりませんが、
そういう個人的な体験のある人が、
障害児の「無益な治療」にあれほど冷酷なものの言い方ができるものなのか……。
それとも妻を介護した方なのか
はたまた両方(を経験した人が1人いる計算になるので)なのか分かりませんが、
そういう個人的な体験のある人が、
障害児の「無益な治療」にあれほど冷酷なものの言い方ができるものなのか……。
このプロジェクトのおかげで、
今後、どこかでFostが自分の個人的な体験を語ったり、
それからどのような倫理的な考察を行って見せるのかが読めるとしたら、
それは注目したいような気はします。
今後、どこかでFostが自分の個人的な体験を語ったり、
それからどのような倫理的な考察を行って見せるのかが読めるとしたら、
それは注目したいような気はします。
ちなみに、ブッシュ大統領の大統領生命倫理委員会の委員長だったLeon Kassも
このプロジェクトに入っています。
前時代的とでも呼びたい保守のKassと
アンタは隠れトランスヒューマニストだろーぜFost。
顔を合わせたら、どんな議論をするのでしょう……。
このプロジェクトに入っています。
前時代的とでも呼びたい保守のKassと
アンタは隠れトランスヒューマニストだろーぜFost。
顔を合わせたら、どんな議論をするのでしょう……。
2008.02.20 / Top↑
Diekema医師の母校Calvin大学は
Inner Campusという名前のインタビューTV番組を持っており、
毎週日曜日の午後1時からPBS局のWGVU-TVで放送されているのだそうで。
Inner Campusという名前のインタビューTV番組を持っており、
毎週日曜日の午後1時からPBS局のWGVU-TVで放送されているのだそうで。
それでこの2月17日の日曜日のインタビューが
誰あろう、あのDiekema医師だったとか。
誰あろう、あのDiekema医師だったとか。
以下の大学サイトに情報がありますが、
今日の段階では事前の番組予告のままです。
今日の段階では事前の番組予告のままです。
しかし、この番組予告の文章をよく読むと、
なんとも、ものすごいことが書いてある。
なんとも、ものすごいことが書いてある。
全文を以下に。
#812 ALTERING THE DISABLED:
THE ”PILLOW ANGEL” CONTROVERSY
Many severely disabled children are cared for at home until they grow too large for their parents to be able to handle them. But what if a surgery could keep such a child mild-seize forever? Douglas Diekema, a Seattle physician and ethics consultant, tells host Shirley Hoogstra about such a surgery at his hospital and how people have responded to it.
#812障害者(の身体)を作り変える
“枕の天使”論争
多くの重症障害児は家で世話をされますが、いずれ身体が大きくなると親の手には余ることになります。しかし、もしも手術でそういう子どもの身体を永遠にそこそこのサイズに留めることができたらどうでしょうか? シアトルの医師であり倫理相談の専門家Douglas Diekemaが自分の病院で行ったこのような手術と、それに対する人々からの反響について番組ホストに語ります。
THE ”PILLOW ANGEL” CONTROVERSY
Many severely disabled children are cared for at home until they grow too large for their parents to be able to handle them. But what if a surgery could keep such a child mild-seize forever? Douglas Diekema, a Seattle physician and ethics consultant, tells host Shirley Hoogstra about such a surgery at his hospital and how people have responded to it.
#812障害者(の身体)を作り変える
“枕の天使”論争
多くの重症障害児は家で世話をされますが、いずれ身体が大きくなると親の手には余ることになります。しかし、もしも手術でそういう子どもの身体を永遠にそこそこのサイズに留めることができたらどうでしょうか? シアトルの医師であり倫理相談の専門家Douglas Diekemaが自分の病院で行ったこのような手術と、それに対する人々からの反響について番組ホストに語ります。
ちょっと待った! と言いたい。
Ashleyの身長抑制はホルモンの大量投与によって行われました。
手術で行われたのは子宮と乳房芽の摘出であり、
この手術は重症児の身体のサイズには影響しません。
手術で行われたのは子宮と乳房芽の摘出であり、
この手術は重症児の身体のサイズには影響しません。
しかし、ここで語られているのは
実際には行われていない手術によるサイズ抑制。
実際には行われていない手術によるサイズ抑制。
これって具体的には手足の切断のことでしょうか。
それとも骨でも切って身体を無理やりつづめるのでしょうか。
それとも骨でも切って身体を無理やりつづめるのでしょうか。
なぜこんないいかげんな予告文章がアップされているのか。
自分が登場する番組予告だというのに、
まさかDiekema医師はこの間違いに気づいていないのでしょうか。
自分が登場する番組予告だというのに、
まさかDiekema医師はこの間違いに気づいていないのでしょうか。
しかし、これまでにも
一見とるに足りない些細な間違いに見えるものの陰に
悪質な隠蔽や周到な誘導の意図が隠れていたことが多々ありました。
一見とるに足りない些細な間違いに見えるものの陰に
悪質な隠蔽や周到な誘導の意図が隠れていたことが多々ありました。
今回もまた何らかの意図があって、
このように微妙な事実のずらし方をしているということはないのでしょうか。
このように微妙な事実のずらし方をしているということはないのでしょうか。
なぜ彼はこうまでして
重症児の身体に過激な医療で手を加えることを正当化し、
当たり前の医療にしてしまおうと画策するのでしょうか。
重症児の身体に過激な医療で手を加えることを正当化し、
当たり前の医療にしてしまおうと画策するのでしょうか。
多くの人がこの事件に興味を失い忘れてしまった今、
本当は恐ろしいことが進行しているのでは?
本当は恐ろしいことが進行しているのでは?
私は、とても怖い。
2008.02.19 / Top↑
カナダで84歳の男性を巡って、
脳死だから生命維持装置をはずすと主張する医師らと
脳死の証拠はなく、生命維持装置をはずすのは宗教上の信条に反すると拒否する家族とが対立し、
去年の秋から論争になっていたらしいのですが、
このたび裁判所の判断を待つまで維持されることになったとのこと。
脳死だから生命維持装置をはずすと主張する医師らと
脳死の証拠はなく、生命維持装置をはずすのは宗教上の信条に反すると拒否する家族とが対立し、
去年の秋から論争になっていたらしいのですが、
このたび裁判所の判断を待つまで維持されることになったとのこと。
詳しく読む余裕がたちまちないので、
自分のメモとして以下にリンクしておいて
改めてまとめたいと思うのですが、
自分のメモとして以下にリンクしておいて
改めてまとめたいと思うのですが、
「不毛な治療」議論はどちらかというと障害者のケースで読むことが多かったので、
当たり前のことながら高齢者にも当てはめられていくのだという現実に
はっとさせられるようで。
当たり前のことながら高齢者にも当てはめられていくのだという現実に
はっとさせられるようで。
それから医師サイドが医師会の新方針を盾にとって
治療の継続・停止の最終的な決定権は医師にあると主張していることが気になります。
治療の継続・停止の最終的な決定権は医師にあると主張していることが気になります。
Orthodox Jew in Winnipeg hospital stays on life support as dispute goes to trial
CBC News, February 13, 2008
CBC News, February 13, 2008
Ashley療法論争でも激しい批判を繰り広げた
宗教保守の論客(という捉え方でいいと思うのですが?)Wesley Smithが
ブログでこのケースを取り上げていました。
宗教保守の論客(という捉え方でいいと思うのですが?)Wesley Smithが
ブログでこのケースを取り上げていました。
そういえばこの人もT ヒューマニストの天敵のようです。
「Golobchuck事件:不毛な治療論の傲慢:反人道主義、金と死ぬ義務の導入という致死的コンビネーション」
Golobchuck Case: The Arrogance of Futilitarianism: A Deadly Combination of Anti-Humanism, $, and the Imposition of a Duty to Die
SECONDHAND SMOKE, Wesley Smith, February 13, 2008
Golobchuck Case: The Arrogance of Futilitarianism: A Deadly Combination of Anti-Humanism, $, and the Imposition of a Duty to Die
SECONDHAND SMOKE, Wesley Smith, February 13, 2008
(Smithブログのタイトルの患者名はスペリングが誤っているようです。正しくは Golubchuk 。)
2008.02.14 / Top↑
明日イギリスで発表されるらしいのですが、
すべての子どもが14歳になると一人ひとりに番号が振られ
14歳時点の個人情報と試験結果、停学や退学処分などが
その番号でデータベースに記録されて
進学や就職に際して大学や企業がオンラインでアクセスできるように……
それを毎年繰り返していくことで
14歳以上の英国民全員のデータベースを作る……
という計画があるとか。
すべての子どもが14歳になると一人ひとりに番号が振られ
14歳時点の個人情報と試験結果、停学や退学処分などが
その番号でデータベースに記録されて
進学や就職に際して大学や企業がオンラインでアクセスできるように……
それを毎年繰り返していくことで
14歳以上の英国民全員のデータベースを作る……
という計画があるとか。
今でも子どもには「固有生徒番号」という番号が振られてはいるらしいのですが、
そちらは卒業と同時に抹消されるもの。
今度のシステムで生徒に振られる番号は「固有学習者番号」と呼ばれ、
なんとリタイアするまで政府機関が個人を追跡するために使用するとのこと。
そちらは卒業と同時に抹消されるもの。
今度のシステムで生徒に振られる番号は「固有学習者番号」と呼ばれ、
なんとリタイアするまで政府機関が個人を追跡するために使用するとのこと。
反対の声、批判の声が続々と上がっているようですが、
そりゃ、当たり前でしょうよ。
そりゃ、当たり前でしょうよ。
2008.02.13 / Top↑
障害をお持ちの方にも、英語力に自信のない方にも、友人として以上の特別な
配慮はいたしません。事前に開設するMLで友達を作って、自力で会議に
参加してください。展示を見るだけでも充分行く価値があります。
配慮はいたしません。事前に開設するMLで友達を作って、自力で会議に
参加してください。展示を見るだけでも充分行く価値があります。
なるほど、ここには
「障害者だからといってむやみに弱者扱いすることこそ差別」とか
「アメリカの障害者なら、それくらいのことは自力でやって自立生活を実現している」
といったアンダー・トーンがあるのだろうと思われ、
いかにも障害者を人として認め尊重しているかのように聞こえなくもない。
「障害者だからといってむやみに弱者扱いすることこそ差別」とか
「アメリカの障害者なら、それくらいのことは自力でやって自立生活を実現している」
といったアンダー・トーンがあるのだろうと思われ、
いかにも障害者を人として認め尊重しているかのように聞こえなくもない。
でも、これははっきり言って、
「自力で会議に参加」できる障害像の人以外はくるな、と言っているわけですね。
「自力で会議に参加」できる障害像の人以外はくるな、と言っているわけですね。
で、このツアーに受け入れてもらえる障害像というのは結局、
Kurzweilの講演が対象としているらしい
感覚障害と身体障害が中心ということになるのかもしれず、
Kurzweilの講演が対象としているらしい
感覚障害と身体障害が中心ということになるのかもしれず、
技術が人間をパーツでできた機械のように眺めることでサポートを可能にするのだとしたら、
じゃぁ、どこまではサポートなのか、どこからは尊厳の問題になるのか、
という問題は避けがたいはずだろうと思うのだけれど、
サポートを云々しても尊厳の問題に抵触しにくい安全圏が
とりあえず感覚障害と身体障害なのかもしれない。
じゃぁ、どこまではサポートなのか、どこからは尊厳の問題になるのか、
という問題は避けがたいはずだろうと思うのだけれど、
サポートを云々しても尊厳の問題に抵触しにくい安全圏が
とりあえず感覚障害と身体障害なのかもしれない。
これが知的障害だと
脳に電極を埋め込んで云々という話などになってしまうから、
一般向けにはそういうことも書いたりしゃべったりしているKurzweilも
さすがに障害者を対象にした講演では避けておきたかったのかもしれない。
脳に電極を埋め込んで云々という話などになってしまうから、
一般向けにはそういうことも書いたりしゃべったりしているKurzweilも
さすがに障害者を対象にした講演では避けておきたかったのかもしれない。
そうすれば彼らトランスヒューマニストの中にある
知能をはじめとした能力と効率重視の人間観は
本質的に障害者への軽視・蔑視・切捨ての人間観であることを隠して、
新興テクノロジーが描く障害者のバラ色の未来だけを
語って見せることができるのかもしれない。
知能をはじめとした能力と効率重視の人間観は
本質的に障害者への軽視・蔑視・切捨ての人間観であることを隠して、
新興テクノロジーが描く障害者のバラ色の未来だけを
語って見せることができるのかもしれない。
この会議の周辺の情報をぼんやり眺めながら、
それやこれや考えていたら、
頭によみがえってきたのは
Diekema医師が「ラリー・キング・ライブ」で
障害当事者らに向かってしきりに強調していた
「Ashleyはあなた方とは違うのだ」という言葉。
それやこれや考えていたら、
頭によみがえってきたのは
Diekema医師が「ラリー・キング・ライブ」で
障害当事者らに向かってしきりに強調していた
「Ashleyはあなた方とは違うのだ」という言葉。
さらには同じくDiekema医師の
「その人の状態によって尊厳が何かという内容は変わる」
「Ashleyには自分が尊厳ある扱いをされているかどうかすら分からない」
「その人の状態によって尊厳が何かという内容は変わる」
「Ashleyには自分が尊厳ある扱いをされているかどうかすら分からない」
新興技術で障害者をサポートしようと掛け声が行き交う世界を考えていると、
一方の側からはとても熱心にサポートを考えるのだけれど、
その反対側では、まるでそれと一対のセットであるかのように
全否定してばっさりと切り捨てるような動きも起こっていて、
両方の動きが両側からじわじわと進んで出会うところには
くっきりと動かしがたいラインが引かれてしまうのではないか……という
不気味さみたいなものを感じてしまう。
一方の側からはとても熱心にサポートを考えるのだけれど、
その反対側では、まるでそれと一対のセットであるかのように
全否定してばっさりと切り捨てるような動きも起こっていて、
両方の動きが両側からじわじわと進んで出会うところには
くっきりと動かしがたいラインが引かれてしまうのではないか……という
不気味さみたいなものを感じてしまう。
2008.02.13 / Top↑
California State University of Northridgeの障害センターの主催で
毎年3月に障害者とテクノロジー会議なるものが開催されているということを
つい最近知って、
毎年3月に障害者とテクノロジー会議なるものが開催されているということを
つい最近知って、
なるほど障害者支援技術の最先端ってどんなんだろう……と、
ちょっと興味を持ったものだから、
Conference 2008 Technology & Persons with Disabilities Conferenceのサイトを覗いてみたのですが、
ちょっと興味を持ったものだから、
Conference 2008 Technology & Persons with Disabilities Conferenceのサイトを覗いてみたのですが、
スペシャル・イベントの講演のところで
しばらく忘れていた懐かしい名前に遭遇しました。
しばらく忘れていた懐かしい名前に遭遇しました。
Ray Kurzweil。
様々な新興テクノロジーの発展がある一定のレベルに達する“特異点”で
人類と人類社会は飛躍的な変貌を遂げて
ポストヒューマンの素晴らしい時代に一気に突入すると説く、
あのトランスヒューマニスト。
様々な新興テクノロジーの発展がある一定のレベルに達する“特異点”で
人類と人類社会は飛躍的な変貌を遂げて
ポストヒューマンの素晴らしい時代に一気に突入すると説く、
あのトランスヒューマニスト。
トランスヒューマニスト(またの名をトンデモヒューマニスト)と障害者とは
天敵なのだとばかり思っていたので、ものすごく意外な気がして、びっくり。
天敵なのだとばかり思っていたので、ものすごく意外な気がして、びっくり。
ちなみにKurzweil講演の演題は「ハンディキャップの終わり」。
これって、フランシス・フクヤマのもじりでしょうか?
そういえばフランシス・フクヤマもT ヒューマニストらの天敵でしたっけ。
これって、フランシス・フクヤマのもじりでしょうか?
そういえばフランシス・フクヤマもT ヒューマニストらの天敵でしたっけ。
講演について短い解説があり、
Mr. Kurzweil will discuss how emerging technologies will be the great leveler in eliminating the handicaps associated with sensory and physical disabilities. Share the future with one of the field’s most respected visionaries.
新興テクノロジーというのは
障害によって生じるハンディキャップを解消して
健常者との差を埋めるスグレモノだという話をする予定で、
この分野の最も尊敬される預言者つまりKurzweilと一緒に
そういう未来を夢見よう……との特別企画だというわけですが、
障害によって生じるハンディキャップを解消して
健常者との差を埋めるスグレモノだという話をする予定で、
この分野の最も尊敬される預言者つまりKurzweilと一緒に
そういう未来を夢見よう……との特別企画だというわけですが、
ここで障害がさりげなく限定されていることに注目。
感覚障害と身体障害に限定なのですね。
感覚障害と身体障害に限定なのですね。
一部読んでみたものはユーザーではなくメーカーの立場の人の体験談だったので、
専門的過ぎてちんぷんかんぷんではあったものの、
なかなか日頃の自分の生活の中からは想像もつかない先端技術の可能性の匂いがして、
技術が進み、それによってハンディキャップを克服できる人が増えていくことは
やっぱり素晴らしいことだと、それは素直にそう考える。
こんなに多くの人が熱心に研究開発に従事していることにも、
素直に感謝する気持ちにもなる。
実際にそういう展示を目の前にしたら、
あまりの可能性の大きさ素晴らしさに感動して、
キャアキャア言ってしまいそうだ……とも思う。
専門的過ぎてちんぷんかんぷんではあったものの、
なかなか日頃の自分の生活の中からは想像もつかない先端技術の可能性の匂いがして、
技術が進み、それによってハンディキャップを克服できる人が増えていくことは
やっぱり素晴らしいことだと、それは素直にそう考える。
こんなに多くの人が熱心に研究開発に従事していることにも、
素直に感謝する気持ちにもなる。
実際にそういう展示を目の前にしたら、
あまりの可能性の大きさ素晴らしさに感動して、
キャアキャア言ってしまいそうだ……とも思う。
だけど、
その素直に感動したり感謝したりする気持ちの中にも、
どこか保留にしておきたい部分が残ってしまうのは、
あのKurzweilがこんなところで何をしているのだ? という違和感。
その素直に感動したり感謝したりする気持ちの中にも、
どこか保留にしておきたい部分が残ってしまうのは、
あのKurzweilがこんなところで何をしているのだ? という違和感。
研究者や技術者、メーカーや旅行会社の関係者はともかくとして、
世界中から会場に詰め掛ける障害当事者たちは果たして
KurzweilをはじめとするT ヒューマニストらの思想がどういうものか知ったうえで
「障害の終わりというバラ色の未来」の話を聞くのだろうか……というひっかかり。
世界中から会場に詰め掛ける障害当事者たちは果たして
KurzweilをはじめとするT ヒューマニストらの思想がどういうものか知ったうえで
「障害の終わりというバラ色の未来」の話を聞くのだろうか……というひっかかり。
なぜか彼らは主流メディアに登場する際には
自分がT ヒューマニストであるとは名乗らないみたいなのだけど、
(Ashley論争の際にもDvorskyもHughesも、トの字も言わずに涼しい顔でテレビに出ていた。)
自分がT ヒューマニストであるとは名乗らないみたいなのだけど、
(Ashley論争の際にもDvorskyもHughesも、トの字も言わずに涼しい顔でテレビに出ていた。)
やはりKurzweilもこの講演では
トランスヒューマニズムとかポストヒューマンなどという言葉は使わずに
「障害の終わりというバラ色の未来」の話だけをするのでしょうか……。
トランスヒューマニズムとかポストヒューマンなどという言葉は使わずに
「障害の終わりというバラ色の未来」の話だけをするのでしょうか……。
2008.02.13 / Top↑
Microsoftの本拠地がSeattleだというのは知っていましたが、
Amazonもそうだというのはこの記事を読むまで知りませんでした。
Amazonもそうだというのはこの記事を読むまで知りませんでした。
その Microsoft と Amazon の周辺に
ここ12年ばかりの間に関連のベンチャー企業がどんどん生まれたり進出しており、
Microsoftの関連会社はBaby Bill、
Amazonの関連会社はBaby Jeff
(創業者がJeffrey P. Bezosという人なんだそうで)
と呼び習わされているのだとか。
ここ12年ばかりの間に関連のベンチャー企業がどんどん生まれたり進出しており、
Microsoftの関連会社はBaby Bill、
Amazonの関連会社はBaby Jeff
(創業者がJeffrey P. Bezosという人なんだそうで)
と呼び習わされているのだとか。
そうして、どうやらSeattleは第2のシリコンバレーになりつつある、と。
シリコンバレーでのStanford大学のように
企業の進出意欲を掻き立てているのがWashington大学。
企業の進出意欲を掻き立てているのがWashington大学。
そういえば前にAshley事件がらみで検索した際にも
Bill & Melinda Gate 財団の北太平洋地域助成で
Washington大学は助成額の上位でしたっけ。
Seattle子ども病院と並んでね。
Bill & Melinda Gate 財団の北太平洋地域助成で
Washington大学は助成額の上位でしたっけ。
Seattle子ども病院と並んでね。
2008.02.12 / Top↑
ワイヤレス・センサーを使って
従業員の心拍数、体温、動き、顔の表情、血圧などを常時監視し
それらのデーターが管理職のコンピューターに送られることによって、
従業員一人ひとりの生産性がモニターできる。
コンピューターは個々人の体重、年齢、健康状態に関するデーターに照らして
従業員の心拍数の増加や顔の表情から苛立ちとかストレスを感知すると
即座に管理職に知らせて適切な対応を促す。
……といったコンピューターによる労務管理システムの特許を
マイクロソフト社が申請している、とのこと。
聞いただけで勤労意欲を削がれる話ですね。
だれかマイクロソフトの天才たちに教えてやっておくれ。
あんたらね、人間は機械じゃないのよ。
人間には心ってものがあるのよ。
心について大切なことはどれも数値で測れないのよ。
http://technology.timesonline.co.uk/tol/news/tech_and_web/article3193480.ece?&EMC-Bltn=NMZBO4
Microsoft seeks patent for office "spy" software
Times, January 16, 2008
2008.02.12 / Top↑
例えばタテヨコにいろんな動物の絵がずらっと並んだ絵本のページを開いて、
ミュウさんに「犬はどれ?」と聞いてみるとします。
ミュウさんに「犬はどれ?」と聞いてみるとします。
すると、
彼女の指はかなりウロウロした後で
犬または猫あたりを差すこともたまにはあるけど、
キリンやらクマの上を彷徨い続けることも多く、
彼女の指はかなりウロウロした後で
犬または猫あたりを差すこともたまにはあるけど、
キリンやらクマの上を彷徨い続けることも多く、
そこで「ゾウは?」とか「ヘビは?」などと聞くと
人差し指はその日その時の気分によってデタラメに任意のものを指す。
時には動物なんかいない枠外を平然と指差したりもする。
人差し指はその日その時の気分によってデタラメに任意のものを指す。
時には動物なんかいない枠外を平然と指差したりもする。
ではミュウさんには動物を識別する知能がないのか……といえば、
しかし例えば
何世代も前のキャラクターたちが登場する「おかあさんといっしょ」の絵本を開き、
「じゃじゃまるは?」と聞けば、
口が大きくて、いかにも悪ガキふうな山猫のうえに
ミュウさんの指は即座にぴしっと止まる。
何世代も前のキャラクターたちが登場する「おかあさんといっしょ」の絵本を開き、
「じゃじゃまるは?」と聞けば、
口が大きくて、いかにも悪ガキふうな山猫のうえに
ミュウさんの指は即座にぴしっと止まる。
その次の世代のキャラクターたちの「おかあさんといっしょ」絵本で、
「ミドは?」と聞いたらば、
ミドとファドという2匹の犬は男女の一卵性双生児であるにもかかわらず、
ミュウさんはパンツをはいたファドではなく、
赤いスカートのミドを迷わずに指差す。
「ミドは?」と聞いたらば、
ミドとファドという2匹の犬は男女の一卵性双生児であるにもかかわらず、
ミュウさんはパンツをはいたファドではなく、
赤いスカートのミドを迷わずに指差す。
これは要するに、
鼻が長くて灰色の大きな生き物の名前が
「ぞう」であろうと「けしごむ」であろうと「さっぽろびーる」であろうと
ミュウさんには全然影響しないし、
ミュウさんはまったく困らないからであって、
鼻が長くて灰色の大きな生き物の名前が
「ぞう」であろうと「けしごむ」であろうと「さっぽろびーる」であろうと
ミュウさんには全然影響しないし、
ミュウさんはまったく困らないからであって、
だから「ゾウは?」と聞かれても
「知るか、そんなの」と指がテキトーにお付き合いしてあげているだけ。
きっとね。
「知るか、そんなの」と指がテキトーにお付き合いしてあげているだけ。
きっとね。
ミュウさんに動物を識別する能力や
ものには名前があることを知りそれを判別する「能力」がないのではなく、
ものには名前があることを知りそれを判別する「能力」がないのではなく、
自分には興味も関係もないものの名前など知る「必要」がないのでは?
ところが
動物園かジャングルにしかいない動物の絵を正しく指差せなかったり、
マルや四角や三角が判別できなかったら、
「ものの識別能力がない」、「知能が低い」と判断されて終わり──。
動物園かジャングルにしかいない動物の絵を正しく指差せなかったり、
マルや四角や三角が判別できなかったら、
「ものの識別能力がない」、「知能が低い」と判断されて終わり──。
ミュウさんがもしかしたら
15年も前の「じゃじゃまる」を
今なおピシッと指差してみせることができる、
15年も前の「じゃじゃまる」を
今なおピシッと指差してみせることができる、
ミュウさんの目はとても能弁に
いろんなことを語ることができる、
いろんなことを語ることができる、
それでも「どうせ何も分からない重症児」しか見ようとしないから、
ミュウさんの指や目が語っていることにまるで気がつかない人が
世の中には沢山いることも、ちゃんと分かっている、
ミュウさんの指や目が語っていることにまるで気がつかない人が
世の中には沢山いることも、ちゃんと分かっている、
そしてアナタもそういう人だということを
彼女の眼力は一瞬にして見抜いている……
彼女の眼力は一瞬にして見抜いている……
なんて考えてもみないし、
本当はそれはとても大切なことなのだとも気がつかない──。
本当はそれはとても大切なことなのだとも気がつかない──。
いわゆる専門家が云々する「知能」って
そんなところ、ありません?
そんなところ、ありません?
ちょうどAshley事件で
カメラ目線ができて、
自分の好きなオペラ歌手をちゃんと聴き分けることができる少女のことを
「どうせ生涯だれとも意味のある関わりなどもてない」
「どうせ何も分からない」
などと決め付けてかかるように。
カメラ目線ができて、
自分の好きなオペラ歌手をちゃんと聴き分けることができる少女のことを
「どうせ生涯だれとも意味のある関わりなどもてない」
「どうせ何も分からない」
などと決め付けてかかるように。
2008.02.11 / Top↑
ミネソタの豚肉加工工場で奇病が発生した模様。
1300人の工場職員のうち12人に手足の痛み、しびれ、脱力が起こり、
多くの場合、不快を感じる程度で不自由が起こるほどではないが
中には歩行困難をきたした人も。
時間と共に軽快はするが完治した人はいない。
多くの場合、不快を感じる程度で不自由が起こるほどではないが
中には歩行困難をきたした人も。
時間と共に軽快はするが完治した人はいない。
新らたな神経系の病気ではないか、と。
患者はみんな解体後の頭部を処理するテーブルで働いていたヒスパニック系の職員で、
休職すると改善し、また同じセクションの仕事に戻ると悪化することから、
豚の頭蓋骨にホースを突っ込み圧縮空気を使って脳を採取する加工工程で、
空気中に舞う脳の飛まつを吸い込むことが原因とする説が今のところ有力視されている。
休職すると改善し、また同じセクションの仕事に戻ると悪化することから、
豚の頭蓋骨にホースを突っ込み圧縮空気を使って脳を採取する加工工程で、
空気中に舞う脳の飛まつを吸い込むことが原因とする説が今のところ有力視されている。
吸引採取後パックされた脳みそは韓国・中国に食用として輸出される。
他の工場でも類似の症例があるため、
まだ報告されていないケースもあると見て広く調査中とのこと。
まだ報告されていないケースもあると見て広く調査中とのこと。
それにしても、なぜ、今?
という以下の記事の問いが気になるところ。
という以下の記事の問いが気になるところ。
メジャーな英米の新聞はこのニュースをこぞって取り上げている様子。
素人としては、
飼料に混ぜられた成長ホルモンとかその他化学物質が原因ってことは──?
と、どうしても考えてしまいますが。
飼料に混ぜられた成長ホルモンとかその他化学物質が原因ってことは──?
と、どうしても考えてしまいますが。
2008.02.09 / Top↑
射水市民病院の呼吸器外し事件では
事実からかけ離れた“物語”が作られ
それが時代の空気とニーズによって利用されていったのではないか……との
前のエントリーでの考察をAshley事件に転じてみると、
事実からかけ離れた“物語”が作られ
それが時代の空気とニーズによって利用されていったのではないか……との
前のエントリーでの考察をAshley事件に転じてみると、
医師らとAshley父とメディアとが共同で作りあげた“物語”は
「Ashleyから子宮と乳房芽が切除され、
エストロゲンの大量投与によって成長が抑制されたのは、
介護負担がたいへんな重症児のQOL向上のために
親が深い愛情から行った苦渋の決断。
重症児と親の苦悩に同情的な医師らの思いやりから
正当な倫理的検討を経て承認された」というもの。
「Ashleyから子宮と乳房芽が切除され、
エストロゲンの大量投与によって成長が抑制されたのは、
介護負担がたいへんな重症児のQOL向上のために
親が深い愛情から行った苦渋の決断。
重症児と親の苦悩に同情的な医師らの思いやりから
正当な倫理的検討を経て承認された」というもの。
当ブログが検証してきた事件の実相とはかなり違っていますが、
これもまた分かりやすく“美しい物語”です。
これもまた分かりやすく“美しい物語”です。
そしてその物語を巡って、
「権利ばかり主張する障害者団体がこの事件を政治利用している」という
更なる“物語”が作られ固められようとしています。
「権利ばかり主張する障害者団体がこの事件を政治利用している」という
更なる“物語”が作られ固められようとしています。
そこで時代はというと、
さまざまな議論があり懸念や警告の声が上がる中でも、
じわじわ着実にトランスヒューマニストらが望む方向に向かっているように思われます。
バイオ・インフォ・ナノなどの新興テクノロジーをどんどん積極的に利用して、
さらに健康に、さらに頭が良く、さらに優秀に効率的に便利に、さらに長生きに……と。
さまざまな議論があり懸念や警告の声が上がる中でも、
じわじわ着実にトランスヒューマニストらが望む方向に向かっているように思われます。
バイオ・インフォ・ナノなどの新興テクノロジーをどんどん積極的に利用して、
さらに健康に、さらに頭が良く、さらに優秀に効率的に便利に、さらに長生きに……と。
そういう時代、そういう世の中の動向の中で、
社会的に “コストパフォーマンスの悪い”障害者に向けられる目は
明らかに冷たいものに変質しつつある。
社会的に “コストパフォーマンスの悪い”障害者に向けられる目は
明らかに冷たいものに変質しつつある。
時代の力動に乗って政治利用するのに好都合な物語があるとしたら、
彼らが作りつつある親の愛と障害者の権利との対立の構図こそ、まさにうってつけでしょう。
彼らが作りつつある親の愛と障害者の権利との対立の構図こそ、まさにうってつけでしょう。
Ashley事件を
仮に自分たちの望む方向にコトを進めるために利用しようとしている人たちがいるとしたら
彼らは本当はどこにいるのか──。
仮に自分たちの望む方向にコトを進めるために利用しようとしている人たちがいるとしたら
彼らは本当はどこにいるのか──。
時代の空気とニーズによっては、
Ashley事件がもっと大きな動きへの先触れに過ぎなくなる危険も
ありはしないでしょうか。
Ashley事件がもっと大きな動きへの先触れに過ぎなくなる危険も
ありはしないでしょうか。
「QOLを口実に不要な医療で身体に手を加える」ことによって
社会的コストパフォーマンスが改善する存在は
決して重症障害児だけではないのだから。
社会的コストパフォーマンスが改善する存在は
決して重症障害児だけではないのだから。
そしてこの動きは
英国の産婦人科学会で障害新生児の安楽死が云々され、
米国では「無益な治療」が法制化されていくことなどとも
きっと無縁ではないのだから。
英国の産婦人科学会で障害新生児の安楽死が云々され、
米国では「無益な治療」が法制化されていくことなどとも
きっと無縁ではないのだから。
―――――
Diekema医師とAshley父の利害は実は食い違っており、
射水事件に置き換えて考えると、
Diekema医師はN医師の立場。
自分がやってしまったことを隠蔽・正当化する必要から
”物語”に乗っかっているに過ぎないのでは?
Diekema医師はN医師の立場。
自分がやってしまったことを隠蔽・正当化する必要から
”物語”に乗っかっているに過ぎないのでは?
Ashley父は
患者の苦痛を見ていられないから安楽死を望む一家族の立場とも見えますが、
彼を動かしているのは、以前はともかく、2005年のある段階から後は
自分が考案した“Ashley療法”を世に広めようとする強い意志。
患者の苦痛を見ていられないから安楽死を望む一家族の立場とも見えますが、
彼を動かしているのは、以前はともかく、2005年のある段階から後は
自分が考案した“Ashley療法”を世に広めようとする強い意志。
案外に彼の役回りを射水事件に置き換えると、
尊厳死を法制化して移植臓器の不足解消に役立てたい人の代表格の方かも?
尊厳死を法制化して移植臓器の不足解消に役立てたい人の代表格の方かも?
2008.02.08 / Top↑
前に
「尊厳死」に尊厳はあるか─ある呼吸器外し事件から」(岩波新書 中島みち著)
を読んだ時に、
2006年3月に報道された射水市民病院の医師による呼吸器外し事件でも
メディアの報道とそれを受ける側の意識とが事実と全く違う物語を一人歩きさせていった、
という話に「Ashley事件と同じ構図だ……」と驚いたことがあったので、
イラクの市場テロの妙な報道を機に思い出した、その話を。
「尊厳死」に尊厳はあるか─ある呼吸器外し事件から」(岩波新書 中島みち著)
を読んだ時に、
2006年3月に報道された射水市民病院の医師による呼吸器外し事件でも
メディアの報道とそれを受ける側の意識とが事実と全く違う物語を一人歩きさせていった、
という話に「Ashley事件と同じ構図だ……」と驚いたことがあったので、
イラクの市場テロの妙な報道を機に思い出した、その話を。
本質的には尊厳死や終末期医療議論とはあまり関係のない
脳死の定義さえおぼつかない、ただのお粗末な医師が起こしたお粗末な事件が、
脳死の定義さえおぼつかない、ただのお粗末な医師が起こしたお粗末な事件が、
呼吸器をはずした医師を手早くヒーローに仕立て上げる報道と、
受け手の側にある
「自分だって死が差し迫っているのに無駄に苦しみたくない」との思いや
「医療は無意味に過剰医療で患者を苦しめる」という予断や
個人的な体験の記憶などとが絡まりあって、
受け手の側にある
「自分だって死が差し迫っているのに無駄に苦しみたくない」との思いや
「医療は無意味に過剰医療で患者を苦しめる」という予断や
個人的な体験の記憶などとが絡まりあって、
「患者への思いやりから果敢な行動に出た心温かく志の高い医師」
vs
「旧態依然とした医療の側に立ち保身のために彼と対立する病院」
vs
「旧態依然とした医療の側に立ち保身のために彼と対立する病院」
という、真実とはいえない、しかし分かり易く飲み込みやすい“物語”が出来上がってしまう。
また、周囲からヒーロー視され祭り上げられてしまうと、
当人の方も“その気”になってしまうもののようですね。
意識的にやることとは限らないのでしょうけれど、
意識下では自己保身のためにそれが最も有効なテだと、もちろん知っているでしょう。
当人の方も“その気”になってしまうもののようですね。
意識的にやることとは限らないのでしょうけれど、
意識下では自己保身のためにそれが最も有効なテだと、もちろん知っているでしょう。
望まれる方向に向かって言動をあわせているうちに
いつのまにか意識の上では
実際に最初からそれが自分の信念だったように錯覚もするのかもしれません。
いつのまにか意識の上では
実際に最初からそれが自分の信念だったように錯覚もするのかもしれません。
―――
ただ、これはメディアの報道だけで起こることでもないとは思うし、
そういう事件が起こることの必然がまず時代の空気やニーズとして予めあって、
その中で起こるべくして起こっていることなのかもしれない、とも。
いわば“時代の力学”のようなもの──?
その中で起こるべくして起こっていることなのかもしれない、とも。
いわば“時代の力学”のようなもの──?
だからこそメディアに受け手の側も素直に反応をしてしまうし、
そうした“騒ぎ”を自分たちの目的や運動に利用したい人たちも食指を伸ばす。
さらに色んな利害のある方向からその“物語”に都合よく乗っかってくる人たちが
あちこちに問題を拡散し変質させていくから、
事件の真実から人の意識はどんどん遠ざかり、
現実の事件が置き去りにされていく──。
そうした“騒ぎ”を自分たちの目的や運動に利用したい人たちも食指を伸ばす。
さらに色んな利害のある方向からその“物語”に都合よく乗っかってくる人たちが
あちこちに問題を拡散し変質させていくから、
事件の真実から人の意識はどんどん遠ざかり、
現実の事件が置き去りにされていく──。
例えば射水事件の場合だと
「終末期患者の苦しみを見ているのが耐えがたく呼吸器をはずした優しく果敢な医師」という
美しく分かり易い “物語”はさらに
「終末期医療のあり方に問題を提起した事件」という位置づけに繋がっていく。
「終末期患者の苦しみを見ているのが耐えがたく呼吸器をはずした優しく果敢な医師」という
美しく分かり易い “物語”はさらに
「終末期医療のあり方に問題を提起した事件」という位置づけに繋がっていく。
それは事件以前に既にそういう議論が存在していたからだし、
尊厳死法制化を急ぎたい人たちが世の中にはいて、
同時になかなか進まない臓器移植に苛立っている人たちが沢山いることとも
決して無縁ではないわけで、
尊厳死法制化を急ぎたい人たちが世の中にはいて、
同時になかなか進まない臓器移植に苛立っている人たちが沢山いることとも
決して無縁ではないわけで、
(この本の中で一番びっくりしたのは、
長い議論の末に「脳死は人の死」と半ば強引に認めた
いわゆる脳死臨調の答申取りまとめの先導役となった人物が
実は尊厳死協会の理事長だった……という話。)
長い議論の末に「脳死は人の死」と半ば強引に認めた
いわゆる脳死臨調の答申取りまとめの先導役となった人物が
実は尊厳死協会の理事長だった……という話。)
そういう時代の力学の中では
実際にどういう事件だったのかという細部や真実はあまり問われないし、
そこで議論されている「脳死」、「尊厳死」、「臓器移植」が
世間の人がイメージしているものと本当に同じかどうかという
こちらの細部や真実もほとんど確認されることがない。
まるで事件も言葉も、ただアピール力のあるシンボルであればいい……みたいに。
実際にどういう事件だったのかという細部や真実はあまり問われないし、
そこで議論されている「脳死」、「尊厳死」、「臓器移植」が
世間の人がイメージしているものと本当に同じかどうかという
こちらの細部や真実もほとんど確認されることがない。
まるで事件も言葉も、ただアピール力のあるシンボルであればいい……みたいに。
実際はその医師にそれほどの意識も知識もなかったとしても、
この時代のあのタイミングで、
そういう物語になりがちな事件が起こってしまった状況下では
事態がそういう方向に推移してしまったのも、
時代の力学(ニーズの方か?)とでもいうものの起こした必然だったのかも。
この時代のあのタイミングで、
そういう物語になりがちな事件が起こってしまった状況下では
事態がそういう方向に推移してしまったのも、
時代の力学(ニーズの方か?)とでもいうものの起こした必然だったのかも。
……というのがこの本を読みながら
ずっと抱いていた感想で、
ずっと抱いていた感想で、
その辺りがAshley事件の今までの経緯とも、
イラクの市場テロでの“物語”とも同じ構図なのではないか……と。
イラクの市場テロでの“物語”とも同じ構図なのではないか……と。
2008.02.08 / Top↑
これまた少し前の記事になりますが、
製薬会社が薬を作ったり宣伝することで
医師によっては存在そのものを疑う病気が社会的認知を受け、
プロザックのように「薬が病気を作っている」状況があるのではないか……
とNYTimesが疑問視しています。
製薬会社が薬を作ったり宣伝することで
医師によっては存在そのものを疑う病気が社会的認知を受け、
プロザックのように「薬が病気を作っている」状況があるのではないか……
とNYTimesが疑問視しています。
糖尿病の痛み止めとして2005年から使用されてきた薬Lyricaが
去年新たに繊維筋痛症の薬として認可されて
テレビコマーシャルの影響もあって消費量が急増していることを巡り、
(Pfizerの売り上げは去年から50%もアップ)
去年新たに繊維筋痛症の薬として認可されて
テレビコマーシャルの影響もあって消費量が急増していることを巡り、
(Pfizerの売り上げは去年から50%もアップ)
繊維筋痛症そのものの存在を疑問視する医師らを中心に
プロザックがうつ病をそこらじゅうにある病気にしてしまったのと同じことが起こるのではないかと
懸念が広がっている、というニュース。
プロザックがうつ病をそこらじゅうにある病気にしてしまったのと同じことが起こるのではないかと
懸念が広がっている、というニュース。
「おや?」と思うのは、
2004年に糖尿病の痛み止めとしてFDAにLiricaが認可申請されたときには
治験でのイマイチの効果に対して副作用が大きすぎるとして
検査官らから認可の見送りが勧告されたにもかかわらず、
FDA高官が患者の苦しみの大きさを理由に強引に認可に持っていった、と。
2004年に糖尿病の痛み止めとしてFDAにLiricaが認可申請されたときには
治験でのイマイチの効果に対して副作用が大きすぎるとして
検査官らから認可の見送りが勧告されたにもかかわらず、
FDA高官が患者の苦しみの大きさを理由に強引に認可に持っていった、と。
(生殖補助医療と臓器移植の専門医ばかりが
やたら患者の苦しみに共感的であることと同じ?)
やたら患者の苦しみに共感的であることと同じ?)
Lyricaの売れ行き好調で
今年中には他の2社からも類似薬が発売される予定。
今年中には他の2社からも類似薬が発売される予定。
さらに「え?」と思ってしまうのは、
繊維筋痛症の辛さを訴えて対処を求める患者のアドボカシー団体があるのは
現実に苦しんでいる人がいる以上あたりまえのこととしても、
その活動資金が製薬会社からも出ていること。
(これ、私が世間知らずなだけで、
当たり前のことなのでしょうか?)
繊維筋痛症の辛さを訴えて対処を求める患者のアドボカシー団体があるのは
現実に苦しんでいる人がいる以上あたりまえのこととしても、
その活動資金が製薬会社からも出ていること。
(これ、私が世間知らずなだけで、
当たり前のことなのでしょうか?)
現に苦しんでいる患者さんたちを助けるために
病気が正しく認知されて治療法が模索されることは大切だとは思うのです。
病気が正しく認知されて治療法が模索されることは大切だとは思うのです。
ただ、まだ病気としての認知すら曖昧な段階だというのに、
副作用があるのが分かっている一方で、
作用のメカニズムも分かっていない効果の曖昧な薬が
やすやすと認可されてプロザックのようにあっという間に広がるのは
薬で何でもコントロールするのが当たり前の文化を助長することであり、
副作用があるのが分かっている一方で、
作用のメカニズムも分かっていない効果の曖昧な薬が
やすやすと認可されてプロザックのようにあっという間に広がるのは
薬で何でもコントロールするのが当たり前の文化を助長することであり、
本当は巨大な利権が原動力になっているかもしれない
こうした1つ1つの動きが
総体として社会の中にもたらす影響が、
様々な新興テクノロジーで人間の身体に手を加えることに抵抗感をなくし、
身体の尊厳を見失い、
それによって命の尊厳すら見失うことなのだとしたら……?
こうした1つ1つの動きが
総体として社会の中にもたらす影響が、
様々な新興テクノロジーで人間の身体に手を加えることに抵抗感をなくし、
身体の尊厳を見失い、
それによって命の尊厳すら見失うことなのだとしたら……?
日本の薬害肝炎の背景を考えてみても
いや~な気配を感じるニュースです。
いや~な気配を感じるニュースです。
――――
インターネットで薬を買う人が急増していることに
偽薬、違法な売買もあって危険だと懸念の声は
BBCから。
偽薬、違法な売買もあって危険だと懸念の声は
BBCから。
BBCには最近、
「知的障害者への過剰投与に警告」とのニュースもあったのですが、
読もうと思ってマークしていたはずの記事を見失ってしまい、現在捜索中。
本当はこの記事を一番読みたかったのに……。
「知的障害者への過剰投与に警告」とのニュースもあったのですが、
読もうと思ってマークしていたはずの記事を見失ってしまい、現在捜索中。
本当はこの記事を一番読みたかったのに……。
2008.02.07 / Top↑
ちょっと前のニュースですが、
英国でずいぶん前から論争になっていた動物と人間のハイブリッド胚の問題で
いよいよGOサインが出たとのこと。
英国でずいぶん前から論争になっていた動物と人間のハイブリッド胚の問題で
いよいよGOサインが出たとのこと。
日本でいうと政府のパブリック・オピニオンの募集とかヒアリングとか、
そういう国民からの意見聴取を
英国ではどうやらコンサルテーションと呼ぶらしいのですが、
(介護問題でちょっと調べてみた時には
日本のパブリックオピニオンなどより
はるかに本気でやっているように見えました)
そのコンサルテーションの結果
英国民は実験目的でハイブリッド胚を作ることに
「抵抗を感じていない(at ease)」と判明したため、と。
そういう国民からの意見聴取を
英国ではどうやらコンサルテーションと呼ぶらしいのですが、
(介護問題でちょっと調べてみた時には
日本のパブリックオピニオンなどより
はるかに本気でやっているように見えました)
そのコンサルテーションの結果
英国民は実験目的でハイブリッド胚を作ることに
「抵抗を感じていない(at ease)」と判明したため、と。
でもこの話が出た当初は
あまりにも世論の反発が強いためにすぐに政府の腰が引けて
逆に今度は科学界からの大反撃が始まったという推移があったというのに、
1年やそこらで世論がそう簡単に変わるものなのかなぁ……?
あまりにも世論の反発が強いためにすぐに政府の腰が引けて
逆に今度は科学界からの大反撃が始まったという推移があったというのに、
1年やそこらで世論がそう簡単に変わるものなのかなぁ……?
2008.02.07 / Top↑
私が気に入っているのは
サウス・カロライナの市民権(civil rights平等権?)弁護士の指摘。
サウス・カロライナの市民権(civil rights平等権?)弁護士の指摘。
親に決定権があるべきです。が、問題はどこにリミットを設けるべきかという点。
Ashleyの両親は難しい決断ではなかったと言っていますが、難しい決断でなければならないはずでしょう。問題はこんな処置をちゃんと実施していけるプロトコルを作れるほど我々は賢いかということです。
(成人した障害者の移動の問題がこれで解決するという主張について)両親は想像力というものを欠いているか、あるいは次の段階を恐れているかのどちらかのように私には見えます。
Ashleyの両親は難しい決断ではなかったと言っていますが、難しい決断でなければならないはずでしょう。問題はこんな処置をちゃんと実施していけるプロトコルを作れるほど我々は賢いかということです。
(成人した障害者の移動の問題がこれで解決するという主張について)両親は想像力というものを欠いているか、あるいは次の段階を恐れているかのどちらかのように私には見えます。
それからAlberta大学の医療倫理センター所長のDick Sobseyという人も
面白いことを言っていて、
面白いことを言っていて、
身体が小さい方が本人と家族の利益だという理屈が通るならば、極端な場合、
既に障害のある子どもに物乞いをさせるためには
さらに脚も切り落としてしまった方がもっと同情が集まってお金になり、
本人のためにも家族のためにも利益になる
という理屈だって地球上のどこかの国ではありえるかもしれない、と。
既に障害のある子どもに物乞いをさせるためには
さらに脚も切り落としてしまった方がもっと同情が集まってお金になり、
本人のためにも家族のためにも利益になる
という理屈だって地球上のどこかの国ではありえるかもしれない、と。
が、去年読んだ時に真っ直ぐ心に飛び込んできたのは、
実はこの後に続くSobseyの言葉のほう。
実はこの後に続くSobseyの言葉のほう。
しかし、既に障害のある人は失うものが少ないのだという論理は成り立たない。
わずかな金であっても、貧しい人から盗めば、それは全てを奪うことになるのだ。
わずかな金であっても、貧しい人から盗めば、それは全てを奪うことになるのだ。
この言葉に心を突かれるのは、
重症重複障害児の親である私にとって
障害そのものが「奪っていくもの」とイメージされているからかもしれません。
重症重複障害児の親である私にとって
障害そのものが「奪っていくもの」とイメージされているからかもしれません。
(あ、今年無事に成人式を迎えたのですが、
いろいろ複雑・奇怪な事情があって
日本には法律上、重症重複障害児しかいないことになっており、
重症重複障害者という言葉を見聞きする機会がないものだから、
ついついそう表記してしまう……)
いろいろ複雑・奇怪な事情があって
日本には法律上、重症重複障害児しかいないことになっており、
重症重複障害者という言葉を見聞きする機会がないものだから、
ついついそう表記してしまう……)
障害は私にとって、我が子から「奪っていく者」です。
少しでも取り返してやれるものなら、
これ以上奪われることを少しでも防げるものならと願うから
子どもが小さな時期に親は一生懸命になって
リハビリや療育に精を出すのではないかと思うのです。
それでも子どもの成長と共に
障害は容赦なくさらに多くを奪っていきます。
少しでも取り返してやれるものなら、
これ以上奪われることを少しでも防げるものならと願うから
子どもが小さな時期に親は一生懸命になって
リハビリや療育に精を出すのではないかと思うのです。
それでも子どもの成長と共に
障害は容赦なくさらに多くを奪っていきます。
けいれん発作がひどくなった時に医師から
「ひどくなったと言ってもね、
この程度のけいれんは重いうちに入らないんだよ。
もっとひどい子どもは沢山いるんだから」
と言われたことがあります。
「ひどくなったと言ってもね、
この程度のけいれんは重いうちに入らないんだよ。
もっとひどい子どもは沢山いるんだから」
と言われたことがあります。
医師にとっては「この程度」であったとしても、
親にとっては、
これまで我が子からこんなに多くを奪ってきた障害が
さらにまだ奪っていこうとしている事実が、
程度と関わりなく
他の子どもさんとの比較とも関わりなく、
それだけが、それだけとして、やるせないのです。
親にとっては、
これまで我が子からこんなに多くを奪ってきた障害が
さらにまだ奪っていこうとしている事実が、
程度と関わりなく
他の子どもさんとの比較とも関わりなく、
それだけが、それだけとして、やるせないのです。
これまでに奪われてきたものの大きさを思うからでしょうか。
こんなに奪っていったのに、まだ足りないのか。
まだ持っていこうというのか……と。
こんなに奪っていったのに、まだ足りないのか。
まだ持っていこうというのか……と。
すでに多くを奪われた子どもたちだからこそ、
せめて人の手によってさらに奪うようなことは……。
せめて人の手によってさらに奪うようなことは……。
というのは理屈ではなく、
むしろ、内なる生理の声。
むしろ、内なる生理の声。
2008.02.06 / Top↑
前のエントリーで先月1月18日のCalvin大での講演で
講演後の討議にDiekema医師の弟が参加していたことを紹介しましたが、
講演後の討議にDiekema医師の弟が参加していたことを紹介しましたが、
去年の1月、以下のthe Toronto Starの電話インタビューで
Diekema医師は既に弟の存在に触れています。
Diekema医師は既に弟の存在に触れています。
Helen HendersonはToronto Star紙で障害者問題について書く辛口コラムニスト。
障害があり電動車椅子を使用。
ちょっとドライでシャープな文章を書く人のようです。
障害があり電動車椅子を使用。
ちょっとドライでシャープな文章を書く人のようです。
この記事でDiekema医師がどういう流れで弟を持ち出しているかというと、
Hendersonの突っ込みが鋭かったのでしょうか、
「両親には悪しき動機などありませんよ」
「違いますよ。ただ技術的に可能だからやったなんてことはありません」
「そういうことが動機ではないんです」などと
押され気味の抗弁を繰り返した後で
(否定するばかりで何も説明できていないことに注目してください)
「両親には悪しき動機などありませんよ」
「違いますよ。ただ技術的に可能だからやったなんてことはありません」
「そういうことが動機ではないんです」などと
押され気味の抗弁を繰り返した後で
(否定するばかりで何も説明できていないことに注目してください)
医療界以外からこんなに注視されるとは意外だったと語り、
「一番理解できないのは
障害者問題の活動家と親との間がこんなに断絶しているということ。
もう完全に分断されていますよ。
そこで難しい問題は、
障害者の方が親よりもAshleyの代弁者としてふさわしいのか、
ということです」。
障害者問題の活動家と親との間がこんなに断絶しているということ。
もう完全に分断されていますよ。
そこで難しい問題は、
障害者の方が親よりもAshleyの代弁者としてふさわしいのか、
ということです」。
(親が一番の敵だという認識は
アメリカの障害者運動の歴史にはなかったのでしょうか?)
アメリカの障害者運動の歴史にはなかったのでしょうか?)
ここのところで、
障害当事者たちからの批判については
事故で障害を負った弟から直接聞いたと語っているのです。
障害当事者たちからの批判については
事故で障害を負った弟から直接聞いたと語っているのです。
饒舌なしゃべりで誤魔化しつつ論点をずらしていって追及をかわす……
というDiekema医師の常套手段を念頭にこの流れを見ると、
というDiekema医師の常套手段を念頭にこの流れを見ると、
動機と行為のアンバランスを突っ込まれて劣勢に回った彼が
例によってぺらぺらしゃべりつつ、その勢いを利用して
「それにしても医学会以外からの批判がこんなに……」と話をそらせ、
そのままの勢いで「でも障害者だからって親以上に分かるというのか」と
一気に優勢に転じようとしたらしいこと。
例によってぺらぺらしゃべりつつ、その勢いを利用して
「それにしても医学会以外からの批判がこんなに……」と話をそらせ、
そのままの勢いで「でも障害者だからって親以上に分かるというのか」と
一気に優勢に転じようとしたらしいこと。
ただ相手が当事者だという点で弱みを感じていたものだから、
自分にだって障害者の身内がいることを持ち出して
自分の言葉に重みと説得力を付加したかったのだろうということが
見てとれます。
自分にだって障害者の身内がいることを持ち出して
自分の言葉に重みと説得力を付加したかったのだろうということが
見てとれます。
―――――
私も今回ファイルから記事を引っ張り出して初めて気づいたのですが、
これが1月13日の記事だったというのは
実は無視できないタイミングなのです。
これが1月13日の記事だったというのは
実は無視できないタイミングなのです。
Diekema医師がCNNで受けたインタビューが1月11日、
翌12日には同じくCNNの「ラリー・キング・ライブ」に衛星生出演していますが、
同時にこの頃ワシントン大学と子ども病院には
障害者の人権監視団体WPASから調査開始が通告されています。
そして、この辺りを境に病院関係者はメディアとの接触を断ったのでした。
翌12日には同じくCNNの「ラリー・キング・ライブ」に衛星生出演していますが、
同時にこの頃ワシントン大学と子ども病院には
障害者の人権監視団体WPASから調査開始が通告されています。
そして、この辺りを境に病院関係者はメディアとの接触を断ったのでした。
(詳細については「Diekema医師のウソとそこから見えてくるもの」のエントリーに。)
1月13日(土曜日)の記事で電話取材は「今週」とされていますから
いずれにしても病院サイドがメディアとの接触を断つ寸前のもの。
この頃には詭弁もかなり余裕がなくなってきて
それでつい出た話だったのかもしれません。
いずれにしても病院サイドがメディアとの接触を断つ寸前のもの。
この頃には詭弁もかなり余裕がなくなってきて
それでつい出た話だったのかもしれません。
しかし1年たち、今度は話だけではなく、
実際に弟を引っ張り出してきたわけですね。
実際に弟を引っ張り出してきたわけですね。
自分が仕事でやったことを正当化するために、
軽い障害がある家族をただそれだけの理由でひっぱり出す――。
軽い障害がある家族をただそれだけの理由でひっぱり出す――。
Calvin大の討議でその人が何を言ったのか分かりませんが、
これは、その弟にとっても失礼な所業なのでは?
Diekema医師、いちいちの言動が不遜・不快な人です。
これは、その弟にとっても失礼な所業なのでは?
Diekema医師、いちいちの言動が不遜・不快な人です。
もはや正当化のためには手段を選ばない、
なりふり構わないというのでしょうか。
なりふり構わないというのでしょうか。
米国小児科学会倫理委員会のチェアまで務めている倫理学者が
実は力のある親だったから内緒で言う通りにしてあげました……なんて、
いまさら絶対に白状できないわけですから、
なりふり構わず正当化しきる以外には
道もないのでしょうけれど、
実は力のある親だったから内緒で言う通りにしてあげました……なんて、
いまさら絶対に白状できないわけですから、
なりふり構わず正当化しきる以外には
道もないのでしょうけれど、
しかし、これは非常に危険な事態ではないでしょうか。
なぜなら、
彼にとって(子ども病院にとっても)一番有効な正当化とは
どこかで第2例目が何らかの倫理的な判断を経て認められ実施されてしまうこと。
彼にとって(子ども病院にとっても)一番有効な正当化とは
どこかで第2例目が何らかの倫理的な判断を経て認められ実施されてしまうこと。
そしてそれは
“Ashley療法”を重症児にどんどん広めていきたいAshley父の利害とも
ぴたりと一致しているのです。
“Ashley療法”を重症児にどんどん広めていきたいAshley父の利害とも
ぴたりと一致しているのです。
Hendersonさんのコラムが聞けるポドキャストはこちら
2008.02.06 / Top↑