アイルランドの研究で
アルツハイマー病の人をフルタイムで介護する家族介護者を調査したところ、
ストレス、神経障害やパニック発作に苦しむ人が5分の1、
3分の1以上の人が、身体が疲れきっていると感じていた。
また3分の2以上が
他の人に介護を分担してもらうことは難しいと回答。
ほぼ常時フラストレーションを感じているというケアラーが41%。
75%近くが、
近親者がアルツハイマー病になったことが家族の経済的安定に打撃となったと答え、
3分の2以上の人が施設に入れようかと考える理由にそれを挙げた。
あるGPは
「もしあなたがアルツハイマー病の人を介護しているケアラーなら、
あなた自身の健康をまず第一にすることが最重要」
「身体的な健康に加えて、
気持ちの上でいい状態を整えることが大切。
そのためには、
アルツハイマー病について自分で学び、
病気の進行に伴って将来どうなるかということと
自分にできる介護の範囲について現実的に考えること」
Stress of Alzheimer’s for families
The Belfast Telegraph, August 27, 2012
アルツハイマー病の人をフルタイムで介護する家族介護者を調査したところ、
ストレス、神経障害やパニック発作に苦しむ人が5分の1、
3分の1以上の人が、身体が疲れきっていると感じていた。
また3分の2以上が
他の人に介護を分担してもらうことは難しいと回答。
ほぼ常時フラストレーションを感じているというケアラーが41%。
75%近くが、
近親者がアルツハイマー病になったことが家族の経済的安定に打撃となったと答え、
3分の2以上の人が施設に入れようかと考える理由にそれを挙げた。
あるGPは
「もしあなたがアルツハイマー病の人を介護しているケアラーなら、
あなた自身の健康をまず第一にすることが最重要」
「身体的な健康に加えて、
気持ちの上でいい状態を整えることが大切。
そのためには、
アルツハイマー病について自分で学び、
病気の進行に伴って将来どうなるかということと
自分にできる介護の範囲について現実的に考えること」
Stress of Alzheimer’s for families
The Belfast Telegraph, August 27, 2012
2012.08.28 / Top↑
フィジィ政府、Nischke医師の自殺幇助クリニックの提言を却下。
http://www.radioaustralia.net.au/international/2012-08-27/fiji-rejects-proposal-for-assisted-suicide-clinic/1006352
NZの首相が自殺幇助合法化を支持。
http://www.bioedge.org/index.php/bioethics/bioethics_article/10207
医学雑誌が相次いで自殺幇助合法化支持の論文を掲載している、と懸念する声。:BMJが6月号に何本も掲載したらしいのだけれど、BMJは何年も前から合法化ロビーみたいなものだった。⇒BMJの副編が「生きたい障害者が死にたい病人のジャマするな」(2009/9/6)
http://www.lifesitenews.com/news/do-no-harm-medical-journals-show-increasing-support-for-euthanasia/
カナダで注目の無益な治療訴訟Rasouli事件に酷似したケースが英国で起こっている。Mr.L。55歳、イスラム教徒。宗教的信条から家族ができる限りのことを望んでいる。心臓発作からの無酸素脳症。Rasouli氏と同じく、PVSと診断されたのち最少意識状態に診断が変更。しかし、これ以上の回復は見込めないとして病院側は治療中止を主張。
http://medicalfutility.blogspot.jp/2012/08/mr-l-british-hassan-rasouli.html
【Rasouli事件関連エントリー】
「“治療停止”も“治療”だから同意は必要」とOntario上位裁判所(2011/5/17)
「患者に選択や同意させてて医療がやってられるか」Razouli裁判続報(2011/5/19)
カナダのRasouli事件、最高裁へ(2011/12/23)
Hassan Rasouliさん、「植物状態」から「最少意識状態」へ診断変わる(2012/4/26)
日本語の英国ニュース。母の愛が起こした奇跡! もう助からないと人工呼吸器を切られた娘にお別れのキス→娘が息を吹き返した:臓器提供とは無関係ながら、誤診による無益な治療論の誤用事例が「奇跡」ともてはやされる当たり、カナダのKaylee事件その他の回復事例にそっくり。実は無益な治療論適用の危うい事態はここまで深刻だという話なのに、コメント欄は「まるでシンデレラ」など、絶句……。
http://rocketnews24.com/2012/08/24/243028/
米国小児科学会が男児の包皮切除について「利益の方がリスクを上回る」と方針転換。:ビル・ゲイツが途上国でのHIV感染予防に包皮切除が安価な予防策と考え始めた頃から、Diekema医師が中心となって検討していた。結論を急ぎ過ぎて大チョンボをかまして批判を招いたために、しばらく様子見していたらしいけれど、結局は2010年から予想された通りの展開。シアトル・タイムズとLAタイムズと言えばAshley事件で因縁の新聞だけど、ロイターやNYT、ガーディアンまで取り上げる大ニュース。(そういえばA事件でAP通信の報道はかなり妙だったよなぁ……)
http://www.latimes.com/news/science/la-sci-new-circumcision-policy-20120827,0,4263437.story
http://seattletimes.nwsource.com/html/localnews/2018999872_circumcision27.html
http://www.reuters.com/article/2012/08/27/us-usa-circumcision-idUSBRE87Q02720120827
http://www.guardian.co.uk/society/2012/aug/27/circumcision-benefits-risks-doctors?CMP=EMCNEWEML1355
【関連エントリー】
Gatesの一声で、男児包皮切除にエビデンスが出てくるわ、小児科学会もCDCも方針を転換するわ(2010/8/16)
包皮切除件数減少を反対運動のせいだと騒ぐDiekemaのポチ踊り(2010/8/23)
包皮切除でのDiekema発言でNPRラジオに抗議殺到(2010/9/14)
2011年5月20日の補遺
生徒が眠くならないように教室の空気中の二酸化炭素濃度をモニター。:子どもとその周辺への操作主義、コントロールという名のガチガチの管理。そろそろ考え直しましょーよ。こういうこととイジメはどこかでつながっていると思う。
http://www.medicalnewstoday.com/releases/249358.php
高齢者の介護ロボットをめぐる倫理問題を取り上げたハリウッド映画、Robot and Frank。:スーザン・サランドンも。
http://www.bioedge.org/index.php/bioethics/bioethics_article/10204#comments
高齢者への不適切な処方、20,5%も。
http://www.medicalnewstoday.com/releases/249367.php
手足口病に新型ウイルスが出てきたみたい。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/249456.php
自閉症に父親の年齢が関係。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/249454.php
紀伊国屋書店新宿本店3階の月がわりブックフェア「じんぶんや」、今月の選者は立岩真也氏の「身体に良き本――主に運動の方面から」に、「アシュリー事件」が入りました。嬉しい! 立岩先生、ありがとうございます!
http://www.kinokuniya.co.jp/20120825095245.html
http://www.radioaustralia.net.au/international/2012-08-27/fiji-rejects-proposal-for-assisted-suicide-clinic/1006352
NZの首相が自殺幇助合法化を支持。
http://www.bioedge.org/index.php/bioethics/bioethics_article/10207
医学雑誌が相次いで自殺幇助合法化支持の論文を掲載している、と懸念する声。:BMJが6月号に何本も掲載したらしいのだけれど、BMJは何年も前から合法化ロビーみたいなものだった。⇒BMJの副編が「生きたい障害者が死にたい病人のジャマするな」(2009/9/6)
http://www.lifesitenews.com/news/do-no-harm-medical-journals-show-increasing-support-for-euthanasia/
カナダで注目の無益な治療訴訟Rasouli事件に酷似したケースが英国で起こっている。Mr.L。55歳、イスラム教徒。宗教的信条から家族ができる限りのことを望んでいる。心臓発作からの無酸素脳症。Rasouli氏と同じく、PVSと診断されたのち最少意識状態に診断が変更。しかし、これ以上の回復は見込めないとして病院側は治療中止を主張。
http://medicalfutility.blogspot.jp/2012/08/mr-l-british-hassan-rasouli.html
【Rasouli事件関連エントリー】
「“治療停止”も“治療”だから同意は必要」とOntario上位裁判所(2011/5/17)
「患者に選択や同意させてて医療がやってられるか」Razouli裁判続報(2011/5/19)
カナダのRasouli事件、最高裁へ(2011/12/23)
Hassan Rasouliさん、「植物状態」から「最少意識状態」へ診断変わる(2012/4/26)
日本語の英国ニュース。母の愛が起こした奇跡! もう助からないと人工呼吸器を切られた娘にお別れのキス→娘が息を吹き返した:臓器提供とは無関係ながら、誤診による無益な治療論の誤用事例が「奇跡」ともてはやされる当たり、カナダのKaylee事件その他の回復事例にそっくり。実は無益な治療論適用の危うい事態はここまで深刻だという話なのに、コメント欄は「まるでシンデレラ」など、絶句……。
http://rocketnews24.com/2012/08/24/243028/
米国小児科学会が男児の包皮切除について「利益の方がリスクを上回る」と方針転換。:ビル・ゲイツが途上国でのHIV感染予防に包皮切除が安価な予防策と考え始めた頃から、Diekema医師が中心となって検討していた。結論を急ぎ過ぎて大チョンボをかまして批判を招いたために、しばらく様子見していたらしいけれど、結局は2010年から予想された通りの展開。シアトル・タイムズとLAタイムズと言えばAshley事件で因縁の新聞だけど、ロイターやNYT、ガーディアンまで取り上げる大ニュース。(そういえばA事件でAP通信の報道はかなり妙だったよなぁ……)
http://www.latimes.com/news/science/la-sci-new-circumcision-policy-20120827,0,4263437.story
http://seattletimes.nwsource.com/html/localnews/2018999872_circumcision27.html
http://www.reuters.com/article/2012/08/27/us-usa-circumcision-idUSBRE87Q02720120827
http://www.guardian.co.uk/society/2012/aug/27/circumcision-benefits-risks-doctors?CMP=EMCNEWEML1355
【関連エントリー】
Gatesの一声で、男児包皮切除にエビデンスが出てくるわ、小児科学会もCDCも方針を転換するわ(2010/8/16)
包皮切除件数減少を反対運動のせいだと騒ぐDiekemaのポチ踊り(2010/8/23)
包皮切除でのDiekema発言でNPRラジオに抗議殺到(2010/9/14)
2011年5月20日の補遺
生徒が眠くならないように教室の空気中の二酸化炭素濃度をモニター。:子どもとその周辺への操作主義、コントロールという名のガチガチの管理。そろそろ考え直しましょーよ。こういうこととイジメはどこかでつながっていると思う。
http://www.medicalnewstoday.com/releases/249358.php
高齢者の介護ロボットをめぐる倫理問題を取り上げたハリウッド映画、Robot and Frank。:スーザン・サランドンも。
http://www.bioedge.org/index.php/bioethics/bioethics_article/10204#comments
高齢者への不適切な処方、20,5%も。
http://www.medicalnewstoday.com/releases/249367.php
手足口病に新型ウイルスが出てきたみたい。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/249456.php
自閉症に父親の年齢が関係。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/249454.php
紀伊国屋書店新宿本店3階の月がわりブックフェア「じんぶんや」、今月の選者は立岩真也氏の「身体に良き本――主に運動の方面から」に、「アシュリー事件」が入りました。嬉しい! 立岩先生、ありがとうございます!
http://www.kinokuniya.co.jp/20120825095245.html
2012.08.28 / Top↑
豪のDr. DeathことNitschke医師が、フィジィ政府に対してディグニタスと同じようなクリニックを提言。ニュース冒頭には「フィジィ政府が検討中」と書かれているんだけど、本文を読んでいくと、まだN医師が提言したという段階にすぎないような……? どうも国民を死なせたり殺す話になると、どの国のメディアも勇み足が目につくような気がする。
http://www.smh.com.au/world/fiji-eyes-proposal-for-assisted-suicide-20120823-24p16.html
テキサスの無益な治療法の係争ケース。12歳の男児Zach McDaniel君。事件の流れ弾を頭に受けて、外科手術で取り除いたものの、重症の脳損傷を負った。緩和ケアに切り替えるよう病院が説得するも両親は抵抗。Popeが「このところテキサスの無益な治療法の適用ケースをメディアが報じないと思っていたら」という書き方をしているのが、「事件がなったとも思えず、メディアが報じなくなっただけでは」というトーンと聞こえて気になる。
http://medicalfutility.blogspot.jp/2012/08/mcdaniel-v-cook-childrens-medical-center.html?utm_source=feedburner&utm_medium=feed&utm_campaign=Feed:+MedicalFutilityBlog+%28Medical+Futility+Blog%29
日本語。スイスで血液検査による新しいダウン症の出生前診断が認可 人権侵害と批判の声も:スイスですかぁ。記事によるとオーストリア、リヒテンシュタイン、ドイツでも市場に出るとのこと。じゃぁ、オランダ、ベルギー、ルクセンブルグも時間の問題ですね。
http://www.qlifepro.com/news/20120823/diagnosis-of-switzerland-before-the-birth-of-new-down-syndrome-blood-test-sanctioned-voice-of-criticism-and-human-rights-abuses.html
日本語。父高齢だと遺伝子変異増 自閉症と関連も:NYTに遭ったニュースからの日本語版だと思うんだけど、NYTではタイトルに統合失調症も入っていた。別のニュースかしら? 未確認です。
http://www.nikkansports.com/general/news/f-gn-tp1-20120823-1004985.html
日本。特集会の病気腎移植の申請を却下―先進医療会議
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120823-00000008-cbn-soci
英国のシンクタンク King’s Fundの調査で、健康格差拡大。
http://www.guardian.co.uk/society/2012/aug/23/class-divide-health-widens-thinktank?CMP=EMCNEWEML1355
NYT.西アフリカでコレラが蔓延?
Cholera Epidemic Envelops Coastal Slums in West Africa: The spread of the disease that is transmitted through contact with contaminated feces was made worse this year by flooding in the sprawling shantytowns of Sierra Leone and Guinea.
NYT。シリコン・ヴァレーに、IT企業が法の網をかいくぐるための非公式なオフィスがあるんだけど、暗黙の了解で取り締まりを免れているらしい。
Silicon Valley Techies Fight to Save a Popular but Illegal Haven.後は略。
http://www.smh.com.au/world/fiji-eyes-proposal-for-assisted-suicide-20120823-24p16.html
テキサスの無益な治療法の係争ケース。12歳の男児Zach McDaniel君。事件の流れ弾を頭に受けて、外科手術で取り除いたものの、重症の脳損傷を負った。緩和ケアに切り替えるよう病院が説得するも両親は抵抗。Popeが「このところテキサスの無益な治療法の適用ケースをメディアが報じないと思っていたら」という書き方をしているのが、「事件がなったとも思えず、メディアが報じなくなっただけでは」というトーンと聞こえて気になる。
http://medicalfutility.blogspot.jp/2012/08/mcdaniel-v-cook-childrens-medical-center.html?utm_source=feedburner&utm_medium=feed&utm_campaign=Feed:+MedicalFutilityBlog+%28Medical+Futility+Blog%29
日本語。スイスで血液検査による新しいダウン症の出生前診断が認可 人権侵害と批判の声も:スイスですかぁ。記事によるとオーストリア、リヒテンシュタイン、ドイツでも市場に出るとのこと。じゃぁ、オランダ、ベルギー、ルクセンブルグも時間の問題ですね。
http://www.qlifepro.com/news/20120823/diagnosis-of-switzerland-before-the-birth-of-new-down-syndrome-blood-test-sanctioned-voice-of-criticism-and-human-rights-abuses.html
日本語。父高齢だと遺伝子変異増 自閉症と関連も:NYTに遭ったニュースからの日本語版だと思うんだけど、NYTではタイトルに統合失調症も入っていた。別のニュースかしら? 未確認です。
http://www.nikkansports.com/general/news/f-gn-tp1-20120823-1004985.html
日本。特集会の病気腎移植の申請を却下―先進医療会議
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120823-00000008-cbn-soci
英国のシンクタンク King’s Fundの調査で、健康格差拡大。
http://www.guardian.co.uk/society/2012/aug/23/class-divide-health-widens-thinktank?CMP=EMCNEWEML1355
NYT.西アフリカでコレラが蔓延?
Cholera Epidemic Envelops Coastal Slums in West Africa: The spread of the disease that is transmitted through contact with contaminated feces was made worse this year by flooding in the sprawling shantytowns of Sierra Leone and Guinea.
NYT。シリコン・ヴァレーに、IT企業が法の網をかいくぐるための非公式なオフィスがあるんだけど、暗黙の了解で取り締まりを免れているらしい。
Silicon Valley Techies Fight to Save a Popular but Illegal Haven.後は略。
2012.08.28 / Top↑
8月4日、オハイオ州MssillionのJosh Wise(66)は
タクシーで病院に行くと、ICUの一室に入り、
そこに入院中の妻Barbaraさん(65)を銃で撃った。
Barbaraさんは動脈瘤破裂で7月28日に入院していた。
撃たれた翌日に死亡。
Akronの陪審員は aggravated murder(第1級殺人)で起訴。
夫婦の友人知人は
夫の行為は愛情からやったことだと口をそろえ、
Wise夫妻が住む小さな町の周辺では
「生がもはや生きるに値しないものとなった時に、決める権利があるのは誰か」
when life is no longer worth living and who has the right to decide
をめぐる議論が起こっており、
これは「慈悲か、それとも殺人か」と
Independent紙が読者に意見を求めた、という。
病院はBarabaraさんの病状について明らかにしていないし
同士の弁護士もBarbaraさんのカルテをまだ見ていないというのだけど、
Wise氏は医師から予後はよくないと聞かされていたとその弁護士は言い、
カルテをまだ見ていない、その弁護士は、
「一番簡潔に言うとすれば、いつ死んでもおかしくないし、
長くいつまでとも知れず生き続けたかもしれない状態だったと言えるんでは」
「しかし、介護を必要としないところまで回復するというのはありえなかった」とも。
また、
「夫婦はどちらも(数年前にリビング・ウィルを書いており)
生命維持で生かされたくないということは明示していた」
また事件の前日に夫が息子と一緒に見舞った時に、
妻が涙を一筋流した、それで
「何も言ったわけではないけど、
始めて医師が通じた気がした、と言っていいんじゃないでしょうか。
それで彼は奥さんの苦しみ、絶望、苦悩を見たんです。
で、どうにかしてやらないといけない、と知ったんです」
(これも弁護士の弁)
ただし、夫が友人に語っていた妻の病状とは、
自力で呼吸ができ、目も開けることができたし
事件の3日前には医師に向かって「グッドモーニング」とも言った……というもの。
また、夫は友人に、
自分もすぐに後を追おうと思ったけど、銃轍が引っかかって果たせなかったと
語ったらしいのだけど、事件時に駆けつけてセキュリティに引き渡すまでそばにいた医師は
妻がまだ生きていると知って「そんなはずはない」といって
引っかかった銃を必死になっていじくりまわしていた、と証言。
Ohio Man’s Shooting of Ailing Wife Raises Questions About ‘Mercy Killings’
NYT, August 23, 2012
この記事を読んで私が特に引っかかりを覚えるのは2点で、
まず、
① NYTの記事の書き方からして、
自力呼吸もあり意識もあり、まだ急性期を脱したとも言えない病人のことについて
「もはや生が生きるに値しないものとなった時に」という表現を不用意に使っていたり、
地元紙の意見募集にしても、
事件の事実関係も明らかにならない内から「慈悲殺か殺人か」と問うのは
あまりにも軽率な問いの立て方だし、
弁護士がリヴィング・ウィルに言及しているのも
Barbaraさんは少なくとも人工呼吸器に繋がれていたわけでもないし、
7月末に倒れて8月4日ではリビング・ウィルが考慮・適用される段階とも思えないし、
第一リビング・ウィルは医師に対して医療に関する希望を明示するものであって、
家族が射殺する行為を正当化するどころか、持ち出すことそのものが筋違い(irrelevantってヤツ)。
なにやら世の中全体に、委細どうでもよく、
「大きな病気をやっちゃって不自由になったら、もう生きていたくないよね。
家族が殺してあげるのは思いやりというものだよね」という流れに
ただただ乗っかっていこうとしているだけのような……。
② 私がものすごく気になるのは以下のディテール。
Before she was suddenly hospitalized, she had been the healthier one in the couple and had cared for her husband for years as he battled bladder cancer and later diabetes and neuropathy, a nerve disease that left him barely able to walk or drive.
突然入院するまで、夫婦でどっちが元気かと言えば妻の方だったし、夫が膀胱がんになり、その後糖尿病になり、神経障害から歩くのも運転するのもかろうじてこなせる状態になったのを、何年間も介護してきた。
つまり、妻は夫の介護者だったわけです。
その介護者が突然倒れて、要介護者に転じてしまった。
これを弁護士が言っていた
「介護を必要としないところまで回復することはありえなかった」と合わせ読むと、
私はすごく複雑な気分になってしまう。
「慈悲殺」で説明して終われるほど
この事件は、単純な話ではないような気がする。
【関連エントリー】
Cameron党首、自殺幇助合法化に反対を表明(2010/4/9)
シンガポールで末期がん女性が自殺幇助を希望(2010/5/12)
元クリケット選手「ALSの妻が一人で自殺したのは未整備の法のせい」(英)(2010/9/24)
女のエクスタシーと自殺幇助の関係性(2011/3/11)
(友人が使った言葉が『エクスタシー』で会話もそのままで続きましたが、
実際には「オーガズム」の意味だったと思います。
いま気付いたけど、これ書いたの、東北大震災の日の朝だ……)
タクシーで病院に行くと、ICUの一室に入り、
そこに入院中の妻Barbaraさん(65)を銃で撃った。
Barbaraさんは動脈瘤破裂で7月28日に入院していた。
撃たれた翌日に死亡。
Akronの陪審員は aggravated murder(第1級殺人)で起訴。
夫婦の友人知人は
夫の行為は愛情からやったことだと口をそろえ、
Wise夫妻が住む小さな町の周辺では
「生がもはや生きるに値しないものとなった時に、決める権利があるのは誰か」
when life is no longer worth living and who has the right to decide
をめぐる議論が起こっており、
これは「慈悲か、それとも殺人か」と
Independent紙が読者に意見を求めた、という。
病院はBarabaraさんの病状について明らかにしていないし
同士の弁護士もBarbaraさんのカルテをまだ見ていないというのだけど、
Wise氏は医師から予後はよくないと聞かされていたとその弁護士は言い、
カルテをまだ見ていない、その弁護士は、
「一番簡潔に言うとすれば、いつ死んでもおかしくないし、
長くいつまでとも知れず生き続けたかもしれない状態だったと言えるんでは」
「しかし、介護を必要としないところまで回復するというのはありえなかった」とも。
また、
「夫婦はどちらも(数年前にリビング・ウィルを書いており)
生命維持で生かされたくないということは明示していた」
また事件の前日に夫が息子と一緒に見舞った時に、
妻が涙を一筋流した、それで
「何も言ったわけではないけど、
始めて医師が通じた気がした、と言っていいんじゃないでしょうか。
それで彼は奥さんの苦しみ、絶望、苦悩を見たんです。
で、どうにかしてやらないといけない、と知ったんです」
(これも弁護士の弁)
ただし、夫が友人に語っていた妻の病状とは、
自力で呼吸ができ、目も開けることができたし
事件の3日前には医師に向かって「グッドモーニング」とも言った……というもの。
また、夫は友人に、
自分もすぐに後を追おうと思ったけど、銃轍が引っかかって果たせなかったと
語ったらしいのだけど、事件時に駆けつけてセキュリティに引き渡すまでそばにいた医師は
妻がまだ生きていると知って「そんなはずはない」といって
引っかかった銃を必死になっていじくりまわしていた、と証言。
Ohio Man’s Shooting of Ailing Wife Raises Questions About ‘Mercy Killings’
NYT, August 23, 2012
この記事を読んで私が特に引っかかりを覚えるのは2点で、
まず、
① NYTの記事の書き方からして、
自力呼吸もあり意識もあり、まだ急性期を脱したとも言えない病人のことについて
「もはや生が生きるに値しないものとなった時に」という表現を不用意に使っていたり、
地元紙の意見募集にしても、
事件の事実関係も明らかにならない内から「慈悲殺か殺人か」と問うのは
あまりにも軽率な問いの立て方だし、
弁護士がリヴィング・ウィルに言及しているのも
Barbaraさんは少なくとも人工呼吸器に繋がれていたわけでもないし、
7月末に倒れて8月4日ではリビング・ウィルが考慮・適用される段階とも思えないし、
第一リビング・ウィルは医師に対して医療に関する希望を明示するものであって、
家族が射殺する行為を正当化するどころか、持ち出すことそのものが筋違い(irrelevantってヤツ)。
なにやら世の中全体に、委細どうでもよく、
「大きな病気をやっちゃって不自由になったら、もう生きていたくないよね。
家族が殺してあげるのは思いやりというものだよね」という流れに
ただただ乗っかっていこうとしているだけのような……。
② 私がものすごく気になるのは以下のディテール。
Before she was suddenly hospitalized, she had been the healthier one in the couple and had cared for her husband for years as he battled bladder cancer and later diabetes and neuropathy, a nerve disease that left him barely able to walk or drive.
突然入院するまで、夫婦でどっちが元気かと言えば妻の方だったし、夫が膀胱がんになり、その後糖尿病になり、神経障害から歩くのも運転するのもかろうじてこなせる状態になったのを、何年間も介護してきた。
つまり、妻は夫の介護者だったわけです。
その介護者が突然倒れて、要介護者に転じてしまった。
これを弁護士が言っていた
「介護を必要としないところまで回復することはありえなかった」と合わせ読むと、
私はすごく複雑な気分になってしまう。
「慈悲殺」で説明して終われるほど
この事件は、単純な話ではないような気がする。
【関連エントリー】
Cameron党首、自殺幇助合法化に反対を表明(2010/4/9)
シンガポールで末期がん女性が自殺幇助を希望(2010/5/12)
元クリケット選手「ALSの妻が一人で自殺したのは未整備の法のせい」(英)(2010/9/24)
女のエクスタシーと自殺幇助の関係性(2011/3/11)
(友人が使った言葉が『エクスタシー』で会話もそのままで続きましたが、
実際には「オーガズム」の意味だったと思います。
いま気付いたけど、これ書いたの、東北大震災の日の朝だ……)
2012.08.28 / Top↑
今からちょうど10年前に書いた
「海のいる風景 障害のある子と親の座標」という本があります。
この春に絶版が決まったものですが、
「アシュリー事件」の版元の生活書院さんから
このたび新版として復刊してもらえることになりました。
副題も
「重症心身障害のある子どもの親であるということ」と改題しました。
新たに、
この10年間の出来事について
「十年の後――新版刊行によせて」
「ケアラー連盟(現・日本ケアラー連盟)設立1周年記念フォーラムにて」
の2つを書き加えています。
また、既にゲラ段階になってから、
とんでもない出来事が起こってしまったために、
「新版のためのあとがき」も「あとがき」というよりも、
ほとんど追加の小さな1章のようなものになりました。
生活書院のHPの「近刊案内」に書いていただいた案内文はこちら ↓
ある日突然に、なんの予備知識も心構えもなくそういう親となり、困惑や自責や不安や傷つきを抱えてオタオタとさまよいながら、「重い障害のある子どもの親である」ということと少しずつ向き合い、それをわが身に引き受けていく過程と、その中でのヒリヒリと痛い葛藤や危ういクライシス――自身の離職、娘を施設に入れる決断、その施設で上層部を相手に一人で挑んだバトル――を描き切った珠玉の一冊。
誰よりも優秀な娘の代弁者だと信じ疑うことがなかった一方、施設に入れていることの罪悪感を未だに引きずってきた著者が、アシュリー事件と出会うことによって突きつけられた「子の権利と親の権利の相克」を、自分の中の痛みのありかと向き合いながら真摯に論じた「十年の後――新版刊行によせて」を冒頭に加えた、待望の新版刊行。
その他の詳細は ↓
http://www.seikatsushoin.com/bk/097%20uminoirufukei.html
9月中旬に刊行になります。
よかったら読んでいただけると嬉しいです。
よろしくお願いいたします。
「海のいる風景 障害のある子と親の座標」という本があります。
この春に絶版が決まったものですが、
「アシュリー事件」の版元の生活書院さんから
このたび新版として復刊してもらえることになりました。
副題も
「重症心身障害のある子どもの親であるということ」と改題しました。
新たに、
この10年間の出来事について
「十年の後――新版刊行によせて」
「ケアラー連盟(現・日本ケアラー連盟)設立1周年記念フォーラムにて」
の2つを書き加えています。
また、既にゲラ段階になってから、
とんでもない出来事が起こってしまったために、
「新版のためのあとがき」も「あとがき」というよりも、
ほとんど追加の小さな1章のようなものになりました。
生活書院のHPの「近刊案内」に書いていただいた案内文はこちら ↓
ある日突然に、なんの予備知識も心構えもなくそういう親となり、困惑や自責や不安や傷つきを抱えてオタオタとさまよいながら、「重い障害のある子どもの親である」ということと少しずつ向き合い、それをわが身に引き受けていく過程と、その中でのヒリヒリと痛い葛藤や危ういクライシス――自身の離職、娘を施設に入れる決断、その施設で上層部を相手に一人で挑んだバトル――を描き切った珠玉の一冊。
誰よりも優秀な娘の代弁者だと信じ疑うことがなかった一方、施設に入れていることの罪悪感を未だに引きずってきた著者が、アシュリー事件と出会うことによって突きつけられた「子の権利と親の権利の相克」を、自分の中の痛みのありかと向き合いながら真摯に論じた「十年の後――新版刊行によせて」を冒頭に加えた、待望の新版刊行。
その他の詳細は ↓
http://www.seikatsushoin.com/bk/097%20uminoirufukei.html
9月中旬に刊行になります。
よかったら読んでいただけると嬉しいです。
よろしくお願いいたします。
2012.08.28 / Top↑
立岩真也氏が生活書院のHPで
次の『生死本』というタイトルの本の準備として連載をスタート。
現在、以下の2つ。
『生死本』(仮)の準備・1(2012/8/7)
家で死ぬ本――『生死本』(仮)の準備・2(2012/8/21)
この2つ目の中に、『脱施設』をめぐる事実関係で
「ええ――――っ! そっ、そんなぁ。そうだったんですかぁぁぁ??」と
思わず絶叫してしまった話があって、
立岩先生の連載2回目から
私が仰天した部分をメモとして抜いておくと、
ここで一つ押さえておいた方がよいことを加えと、この知的障害者の施設にしても次にあげる精神病院にしても、 ヨーロッパや北米にあったのは本当に巨大な施設・コロニーであったということであり、それは日本で、当初民間で、ぽつりぼつりとようやくできたいった施設 とは──どちらがましだといったことを言いたいのはではないが──様子がだいぶ異なるものだった……
……ただ病院・施設にいたくないとしても、代わりにもっとよい場所がなければ、当たり前のことだが、まだそこにい た方がましである。しかし代わりにいる場所がないまま「脱」が進められたことがあった。一九六〇年代の米国における精神障害者の「脱施設(病院)化」が、 暮らしやすい居場所を見つけられない人たちを大量にを生み出したことはよく知られている。
「アメリカにとって一九六〇年代は力動精神医学が中心でしたが、ケネディ大統領は、精神病院の病床を五十万 床から十五万床に減らすことを一気に三年で行います。大統領の任期が四年ですから二十年計画でやるとういことはアメリカではあり得ません。精神病院を小さ くする代わりに各地に精神保健センターをつくるという計画でした。しかし精神保健センターには患者さんは来ませんでした。カーター夫人が一九七七年に世界 精神保健連盟(WFMH)の総会で、これは失敗であり、患者はセンターに来なかったということを話していました。実際、大部分がホームレスになったり、あ るいはギャングに生活保護費のウワマエをハネられる存在になったといいます。<0129<
現在アメリカではどうなっているかというと、メンタルヘルスセンターはとうとうレーガン大統領の時代には廃止されてしまったということです。」(中井[2004:129-130])
「よく知られている」って……。
じゃぁ、ど~して、私にこれを言ってくれる人は
今までどこにもいなかったのよォォ?
なんか、今まで騙されてたみたいな、
うらみがましい気分になってしまった。
まぁ、そもそも自分がものを知らないんだから
自業自得ではあるんだけれど、
私が聞かされてきたのは
「施設入所はゼッタイ悪」「脱施設だけが善」
「誰もが自立生活を送れる社会だけが目指すべき正しい道」
「地域移行が実現すれば、もろもろの問題は解決」
みたいなトーンの話が多かった。
少なくとも私の個人的な体験では
そういう印象が突出している。
「今はもう時代が違うんだよッ」って
私を怒鳴りつけた『施設解体だけが正しい』だった人は、
この事実を知らなかったのだろうか。
もし知っていたのだとしたら、
じゃぁ、あの人は、たとえ施設解体で居場所を失う人が出ても、
それは正しい運動のためのコラテラルダメージだとでも
思っていたんだろうか……。
が~~~~~~~~~~ん。
この新発見、
私はショックだぁ~~~~~~~~~。
だって、もう何度も何度も言ってきたように、
今回の法改正で「地域移行」が施設からの追い出しのアリバイに使われた時、
真っ先にそのコラテラル・ダメージになるのは私たちの子どもなんですけど――?
立岩先生は「よく知られている」と言うんだけれど、
日本で『脱施設』を言い続けてきた人たちは、
これ、知らなかったの?
それとも知ってたの?
次の『生死本』というタイトルの本の準備として連載をスタート。
現在、以下の2つ。
『生死本』(仮)の準備・1(2012/8/7)
家で死ぬ本――『生死本』(仮)の準備・2(2012/8/21)
この2つ目の中に、『脱施設』をめぐる事実関係で
「ええ――――っ! そっ、そんなぁ。そうだったんですかぁぁぁ??」と
思わず絶叫してしまった話があって、
立岩先生の連載2回目から
私が仰天した部分をメモとして抜いておくと、
ここで一つ押さえておいた方がよいことを加えと、この知的障害者の施設にしても次にあげる精神病院にしても、 ヨーロッパや北米にあったのは本当に巨大な施設・コロニーであったということであり、それは日本で、当初民間で、ぽつりぼつりとようやくできたいった施設 とは──どちらがましだといったことを言いたいのはではないが──様子がだいぶ異なるものだった……
……ただ病院・施設にいたくないとしても、代わりにもっとよい場所がなければ、当たり前のことだが、まだそこにい た方がましである。しかし代わりにいる場所がないまま「脱」が進められたことがあった。一九六〇年代の米国における精神障害者の「脱施設(病院)化」が、 暮らしやすい居場所を見つけられない人たちを大量にを生み出したことはよく知られている。
「アメリカにとって一九六〇年代は力動精神医学が中心でしたが、ケネディ大統領は、精神病院の病床を五十万 床から十五万床に減らすことを一気に三年で行います。大統領の任期が四年ですから二十年計画でやるとういことはアメリカではあり得ません。精神病院を小さ くする代わりに各地に精神保健センターをつくるという計画でした。しかし精神保健センターには患者さんは来ませんでした。カーター夫人が一九七七年に世界 精神保健連盟(WFMH)の総会で、これは失敗であり、患者はセンターに来なかったということを話していました。実際、大部分がホームレスになったり、あ るいはギャングに生活保護費のウワマエをハネられる存在になったといいます。<0129<
現在アメリカではどうなっているかというと、メンタルヘルスセンターはとうとうレーガン大統領の時代には廃止されてしまったということです。」(中井[2004:129-130])
「よく知られている」って……。
じゃぁ、ど~して、私にこれを言ってくれる人は
今までどこにもいなかったのよォォ?
なんか、今まで騙されてたみたいな、
うらみがましい気分になってしまった。
まぁ、そもそも自分がものを知らないんだから
自業自得ではあるんだけれど、
私が聞かされてきたのは
「施設入所はゼッタイ悪」「脱施設だけが善」
「誰もが自立生活を送れる社会だけが目指すべき正しい道」
「地域移行が実現すれば、もろもろの問題は解決」
みたいなトーンの話が多かった。
少なくとも私の個人的な体験では
そういう印象が突出している。
「今はもう時代が違うんだよッ」って
私を怒鳴りつけた『施設解体だけが正しい』だった人は、
この事実を知らなかったのだろうか。
もし知っていたのだとしたら、
じゃぁ、あの人は、たとえ施設解体で居場所を失う人が出ても、
それは正しい運動のためのコラテラルダメージだとでも
思っていたんだろうか……。
が~~~~~~~~~~ん。
この新発見、
私はショックだぁ~~~~~~~~~。
だって、もう何度も何度も言ってきたように、
今回の法改正で「地域移行」が施設からの追い出しのアリバイに使われた時、
真っ先にそのコラテラル・ダメージになるのは私たちの子どもなんですけど――?
立岩先生は「よく知られている」と言うんだけれど、
日本で『脱施設』を言い続けてきた人たちは、
これ、知らなかったの?
それとも知ってたの?
2012.08.28 / Top↑
以下のエントリーで追いかけてきた英国の訴訟で
思いがけない続報。
“ロックト・イン症候群”の男性が「妻に殺してもらう権利」求め提訴(英)(2010/7/20)
自殺幇助希望の“ロックト・イン”患者Nicklinson訴訟で判決(2012/3/13)
自殺幇助訴訟のNicklinsonさん、ツイッターを始める(2012/7/2)
「死ぬ権利」求めるロックト・イン患者Nicklinsonさん、敗訴(2012/8/17)
ツイッターをはじめられたことで、
生きる希望を見いだされますように、と祈る思いでしたが。
Tony Nicklinsonさんのご冥福をお祈りします。
-----
上記17日のエントリーで拾ったように、
Nicklinsonさんの自殺したいとの希望は
自殺ほう助に関する法改正に関わることなので議会が決めることとして
裁判所に退けられました。
それを知らされたNicklinsonさんは、
号泣したと言われます。
以下の記事にも、
無念に顔を大きくゆがめて号泣している当時の写真があります。
(私はこういう写真を見ると、この人が本当にロックト・インなんだろうか、と
今でもやっぱり思ってしまうのですが)
また17日前後の報道でも
それなら餓死も辞さないとの思いも示唆されていました。
それをすぐに実行したのでしょうか、
その後、Nicklinsonさんは食事をとらなくなったとのこと。
そしてこの週末に肺炎を起こし、
そのまま悪化して亡くなったようです。
以下の記事は
……「自然な原因(複数)」で亡くなった;その一つは失望(a broken heart)だったかもしれない。
もう数年来、PAS合法化ロビーと化しているBBCをはじめ、
英国のメディアがこぞって、あの判決がNicklinsonさんを追い詰めて殺した、という
論調で盛り上がるだろうことが予想できるようで……。
そして、この記事にも既に顕著ですが、
自分で薬を飲めない全身性障害者だというだけで、
それ以外の人なら可能な自殺行為が許されないのは差別だ、という論調も。
British Man Who Lost Right To Die Case Is Dead
The TWO=WAY, August 22, 2012
なにしろDPPのガイドラインで
事実上、近親者による自殺ほう助は合法化されたも同然。
自分で致死薬を飲める人なら
近親者にスイスに連れて行ってもらえば自殺できて、
その近親者も罪に問われることはないわけだから、
自分で呑み込めないだけで同じことが認められないのは差別だ、という論理そのものには
一理あるようにも思え、
この記事は
Nicklinsonさんの訴訟は「平等の問題」だったと書いているのですが、
私は
DPPのガイドラインができて
滑り坂が用意されてしまった時に、
ことの必然として起こってくるはずの訴訟だったのであり、
これは実際には平等の問題というよりも
ご都合主義的なDPPのガイドラインがはらんでいる矛盾の問題なんでは、
と思うのだけど。
【DPPのガイドライン関連エントリー】
DPPの自殺幇助に関する起訴判断のガイドラインを読む 1(2010/3/8)
DPPの自殺幇助に関する起訴判断のガイドラインを読む 2(2010/3/8)
英国の自殺幇助ガイドライン後、初の判断は不起訴(2010/3/26)
警察が「捜査しない」と判断する、「英国自殺幇助基礎ガイドライン」の”すべり坂”(2011/7/15)
思いがけない続報。
“ロックト・イン症候群”の男性が「妻に殺してもらう権利」求め提訴(英)(2010/7/20)
自殺幇助希望の“ロックト・イン”患者Nicklinson訴訟で判決(2012/3/13)
自殺幇助訴訟のNicklinsonさん、ツイッターを始める(2012/7/2)
「死ぬ権利」求めるロックト・イン患者Nicklinsonさん、敗訴(2012/8/17)
ツイッターをはじめられたことで、
生きる希望を見いだされますように、と祈る思いでしたが。
Tony Nicklinsonさんのご冥福をお祈りします。
-----
上記17日のエントリーで拾ったように、
Nicklinsonさんの自殺したいとの希望は
自殺ほう助に関する法改正に関わることなので議会が決めることとして
裁判所に退けられました。
それを知らされたNicklinsonさんは、
号泣したと言われます。
以下の記事にも、
無念に顔を大きくゆがめて号泣している当時の写真があります。
(私はこういう写真を見ると、この人が本当にロックト・インなんだろうか、と
今でもやっぱり思ってしまうのですが)
また17日前後の報道でも
それなら餓死も辞さないとの思いも示唆されていました。
それをすぐに実行したのでしょうか、
その後、Nicklinsonさんは食事をとらなくなったとのこと。
そしてこの週末に肺炎を起こし、
そのまま悪化して亡くなったようです。
以下の記事は
……「自然な原因(複数)」で亡くなった;その一つは失望(a broken heart)だったかもしれない。
もう数年来、PAS合法化ロビーと化しているBBCをはじめ、
英国のメディアがこぞって、あの判決がNicklinsonさんを追い詰めて殺した、という
論調で盛り上がるだろうことが予想できるようで……。
そして、この記事にも既に顕著ですが、
自分で薬を飲めない全身性障害者だというだけで、
それ以外の人なら可能な自殺行為が許されないのは差別だ、という論調も。
British Man Who Lost Right To Die Case Is Dead
The TWO=WAY, August 22, 2012
なにしろDPPのガイドラインで
事実上、近親者による自殺ほう助は合法化されたも同然。
自分で致死薬を飲める人なら
近親者にスイスに連れて行ってもらえば自殺できて、
その近親者も罪に問われることはないわけだから、
自分で呑み込めないだけで同じことが認められないのは差別だ、という論理そのものには
一理あるようにも思え、
この記事は
Nicklinsonさんの訴訟は「平等の問題」だったと書いているのですが、
私は
DPPのガイドラインができて
滑り坂が用意されてしまった時に、
ことの必然として起こってくるはずの訴訟だったのであり、
これは実際には平等の問題というよりも
ご都合主義的なDPPのガイドラインがはらんでいる矛盾の問題なんでは、
と思うのだけど。
【DPPのガイドライン関連エントリー】
DPPの自殺幇助に関する起訴判断のガイドラインを読む 1(2010/3/8)
DPPの自殺幇助に関する起訴判断のガイドラインを読む 2(2010/3/8)
英国の自殺幇助ガイドライン後、初の判断は不起訴(2010/3/26)
警察が「捜査しない」と判断する、「英国自殺幇助基礎ガイドライン」の”すべり坂”(2011/7/15)
2012.08.28 / Top↑
豪クイーンズランドで唯一人、自殺幇助で実刑判決を受けたMerin Nielsenさん、釈放。判決は3年間の禁固刑で、そのうち6カ月を務めた。2009年に76歳の男性に致死薬を提供した罪。
http://www.skynews.com.au/local/article.aspx?id=785746
英国でナーシング・ホームの介護者がシフトの際に(自分が)安眠できるよう、認知症の人6人に抗不眠薬、抗ウツ薬、向精神薬を飲ませて徘徊を防止していた、という事件。:職員個人がやると犯罪だけど、組織的にやるとまかり通ってしまうことの不思議……?
http://www.telegraph.co.uk/health/healthnews/9490019/Carer-drugged-elderly-so-she-could-sleep-on-duty-jury-hears.html
【関連エントリー】
佐野洋子「シズコさん」(2008/7/12)
認知症患者への不適切な抗精神病薬投与、教育・意識改革が必要(2009/4/17)
英国のアルツ患者ケアは過剰投与で「まるでビクトリア時代」(2009/6/5)
ナーシング・ホーム入所者に症状もICもなく精神病薬投与(2009/10/31)
不適切な抗精神病薬の投与、15万人の認知症患者に(英)(2009/11/15)
1人でTX州の総量をはるかに越える統合失調治療薬を処方する精神科医が野放し・・・・・・の不思議(2009/11/30)
経済不況と連立政権の社会保障費カットで、英国の障害者運動が曲がり角にきている。
http://www.guardian.co.uk/society/2012/aug/20/paralympics-disabled-people-spending-cuts
日本語。【海外:イギリス】障がい者の女性の強制結婚が発覚、無効へ。:何度か拾ってきたニュースの続報。
http://www.terrafor.net/news_lvYGbJukra.html
【関連エントリー】
知的障害者の強制結婚、相手はビザ目的、親は介護保障で(2008/7/29)
親が知的障害のある子どもに強制国際結婚 介護のため金のため兄弟の結婚のため(2012/8/2)
ビル・ゲイツが「途上国の命を救うために新型トイレを」と言っていたのは前からだけど、いよいよ大枚を研究機関に提供し、大きな声で号令をかけ始めたとなれば、それが一大ニュースとなって世界中を駆け巡って、いまだ止むことがない。15日にはシアトルのゲイツ財団本部でのフェスティバルに、世界中の科学者らが自分たちが開発中のトイレを持って駆けつけ、プレゼンしたそうな。
http://app1.kuhf.org/articles/npr1345068351-Bill-Gates-Crowns-Toilet-Innovators-At-Foundations-Sanitation-Fair.html
Planned Parenthoodが乳がん予防イニシアチブに300万ドル。
http://www.washingtonpost.com/national/health-science/planned-parenthood-sets-breast-health-initiative/2012/08/19/3ef35d44-e874-11e1-936a-b801f1abab19_story.html
ストレスは遺伝子を変化させて病気の原因になる?
http://www.medicalnewstoday.com/articles/249215.php
日本語。ダウン症のキリスト教少女、「コーラン燃やした」と逮捕される パキスタン:これは続報というより、当ブログで20日に拾ったニュースの日本語版。ダウン症だったというのは知らなかった。
http://www.afpbb.com/article/life-culture/religion/2896049/9364379?ctm_campaign=txt_topics
http://www.skynews.com.au/local/article.aspx?id=785746
英国でナーシング・ホームの介護者がシフトの際に(自分が)安眠できるよう、認知症の人6人に抗不眠薬、抗ウツ薬、向精神薬を飲ませて徘徊を防止していた、という事件。:職員個人がやると犯罪だけど、組織的にやるとまかり通ってしまうことの不思議……?
http://www.telegraph.co.uk/health/healthnews/9490019/Carer-drugged-elderly-so-she-could-sleep-on-duty-jury-hears.html
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ナーシング・ホーム入所者に症状もICもなく精神病薬投与(2009/10/31)
不適切な抗精神病薬の投与、15万人の認知症患者に(英)(2009/11/15)
1人でTX州の総量をはるかに越える統合失調治療薬を処方する精神科医が野放し・・・・・・の不思議(2009/11/30)
経済不況と連立政権の社会保障費カットで、英国の障害者運動が曲がり角にきている。
http://www.guardian.co.uk/society/2012/aug/20/paralympics-disabled-people-spending-cuts
日本語。【海外:イギリス】障がい者の女性の強制結婚が発覚、無効へ。:何度か拾ってきたニュースの続報。
http://www.terrafor.net/news_lvYGbJukra.html
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知的障害者の強制結婚、相手はビザ目的、親は介護保障で(2008/7/29)
親が知的障害のある子どもに強制国際結婚 介護のため金のため兄弟の結婚のため(2012/8/2)
ビル・ゲイツが「途上国の命を救うために新型トイレを」と言っていたのは前からだけど、いよいよ大枚を研究機関に提供し、大きな声で号令をかけ始めたとなれば、それが一大ニュースとなって世界中を駆け巡って、いまだ止むことがない。15日にはシアトルのゲイツ財団本部でのフェスティバルに、世界中の科学者らが自分たちが開発中のトイレを持って駆けつけ、プレゼンしたそうな。
http://app1.kuhf.org/articles/npr1345068351-Bill-Gates-Crowns-Toilet-Innovators-At-Foundations-Sanitation-Fair.html
Planned Parenthoodが乳がん予防イニシアチブに300万ドル。
http://www.washingtonpost.com/national/health-science/planned-parenthood-sets-breast-health-initiative/2012/08/19/3ef35d44-e874-11e1-936a-b801f1abab19_story.html
ストレスは遺伝子を変化させて病気の原因になる?
http://www.medicalnewstoday.com/articles/249215.php
日本語。ダウン症のキリスト教少女、「コーラン燃やした」と逮捕される パキスタン:これは続報というより、当ブログで20日に拾ったニュースの日本語版。ダウン症だったというのは知らなかった。
http://www.afpbb.com/article/life-culture/religion/2896049/9364379?ctm_campaign=txt_topics
2012.08.28 / Top↑
Bronwen Hruskaという作家が
息子が8歳から数年間に渡ってリタリンのジェネリック薬を飲まされた体験をNYTに書いている。
きっかけは息子が3年生の時に教師との面談で示唆されたこと。
その時の会話がたいそう興味深い。
「ほんのちょっと薬を飲めば
ウィルにとっていろんなことが楽になりますけどね」
「リタリンのことですか?」
「驚くほど効くのを私たちは見てきてます。
ウィルは先生たちから叱られていますけど、
お行儀がよくなれば先生たちにも誉めてもらえるようになって、
自信も持てるし、学校生活そのものが楽しくなりますよ」
でも著者は、
息子は8歳相応のエネルギーがあるだけだと考えているので
「あの子はADHDじゃありません。薬を飲ませるつもりはありません」
とたんに先生はショックを受けて
「そんなことしなさいなんて一言だって言ってませんよ。(たった今そう言ったくせに)
そんなことをいうのは法律で禁じられているんですから。
ただ、専門家のアセスメントを受けてみられたら、というだけで」
で、著者は息子をクリニックへ連れて行った。
そして驚く。ADHDには臨床検査なんて、ない、ということに。
面接とアンケート(それも学校の先生の捉え方重視)をいくつかやって、
そういうものからの主観的な印象で医師が診断をつける。
なるほど、「問題を探し始めたら、そりゃ問題も見つかるわ」。
なるほど03年から07年の間、毎年5.5%も診断件数が増え、
2010年には3歳から17歳の子どもの8.4%、520万人が診断されているはずだわ。
著者の息子は医師の面接の間はちゃんと集中できた。
すると「他の場面では集中できる子どもでも
気が散る状況になると集中できにくいことがある」として、
結局ADHDを診断されてしまい、リタリンのジェネリック薬が処方される。
ただし、家にいる時や休みの日には飲まなくてもよい。
学校へ行く日の朝に1錠、お昼休みにスクール・ナースのところへ行って、もう1錠。
著者はネットでいろいろ検索して副作用について知って驚いたり、
家庭医に相談したりしながら、不安を抱えながらも
本当にADHDなんだったら治療するしかなかろうと思うようになっていくが、
ある日、学校から帰ってきた息子が
読書の時間に友達と話をするのを忘れてしまった、
すっごく静かになって、本の中に入っちゃったみたいだった、というのを聞いて、
疑問に思う。
いい生徒になるための薬なのか――?
また学校ではほとんど何も食べず、家にいるとおなかをすかせるので
調べて見ると、その薬は食欲抑制剤としても使われていた。
4年生から飲み始めた薬が5年生になったら効かなくなり、
医師は処方量を何度か上げて、さらに薬を2回も替えたが効果はなかった。
で、著者は、ふと気がつく。
4年生の時の担任はウィルのことを気に入ってくれていた。
5年生になってからの担任は、どうも男子の扱いがわかっていないという評判らしい。
もしかして去年、薬が効いたとみんなで思いこんだのは、
あれは実は薬の効果ではなかったのでは……?
5年生の途中で、テレビ番組をきっかけに
本人がきっぱりと薬を飲むことを拒否。
それから5年。
ウィルは現在、成績優秀な高校生として学校生活を満喫している。
……We might remind ourselves that the ability to settle into being focused student is simply a developmental milestone: there’s no magical age at which this happens.
……落ちついて集中して勉強できるようになる能力は、発達の指標にすぎない。この年齢でそれが起こります、みたいな魔法の年齢があるわけじゃない。
著者はまた、教育界では「正常」という言葉が
「平均的」から「飛びぬけている」という意味へとシフトしていないか、と疑問を呈する。
記事の最後は、以下。
If “accelerated” has become the new normal, there’s no choice but to diagnose the kids developing at a normal rate with a disorder. Instead of leveling the playing field for kids who really do suffer from a deficit, we’re ratcheting up the level of competition with performance-enhancing drugs. We’re juicing our kids for school.
We are also ensuring that down the road, when faced with other challenges that high school, college and adult life are sure to bring, our children will use the coping skills we’ve taught them. They’ reach for a pill.
「年齢よりも発達が早い」ということが新たなノーマルになったのだとしたら、正常に発達している子どもたちは障害を診断されることになる。実際に注意欠陥のある子どもたちに配慮して子どもたちの居場所を工夫する代わりに、私たちはパフォーマンス・エンハンスメント薬で競争のハードルをあげている。勉強のために子どもたちを薬漬けにしているのだ。
そして同時に、この先、高校や大学、成人してからの生活で間違いなくやってくる困難に出くわした暁には、必ずや私たちが教えた通りに対処しなさいよ、とそのスキルを教えているのだ。薬に手を伸ばす、というスキルを。
Raising the Ritalin Generation
NYT, August 16, 2012
“Accelerated”という著者の小説が近く刊行されるとか。
読んでみよう、かな……。
【関連エントリー】
子どもへの抗精神病薬でFDAと専門家委員会が責任なすりあい (2008/11/19)
10年間で精神科薬の処方が倍増(米)(2009/5/7)
「12-18歳全員に定期的うつ病スクリーニングを」と専門家が提言(米)(2009/6/3)
BiedermanスキャンダルでADHDの治療ガイドライン案がボツに(2009/11/23)
米国のティーンの間で処方薬の濫用が広がっている(2009/12/1)
中流の子なら行動療法、メディケアの子は抗精神病薬……?(2009/12/13)
双極性障害で抗精神病薬を処方される2-5歳児が倍増(2010/1/16)
2歳で双極性障害診断され3種類もの薬を処方されたRebeccaちゃん死亡事件・続報(2010/2/22)
欧州でADHD治療薬の安全性調査命じられた調査会社が結束して「不能・不要」と回答(2010/3/7)
拘留施設の子どもらの気分障害、攻撃的行動に抗精神病薬?(米)(2010/10/6)
ADHD治療薬の“スマート・ドラッグ”利用を解禁せよ、とNorman Fost(2010/12/28)
「製薬会社に踊らされて子どもの問題行動に薬飲ませ過ぎ」と英国の教育心理学者(2011/1/18)
息子が8歳から数年間に渡ってリタリンのジェネリック薬を飲まされた体験をNYTに書いている。
きっかけは息子が3年生の時に教師との面談で示唆されたこと。
その時の会話がたいそう興味深い。
「ほんのちょっと薬を飲めば
ウィルにとっていろんなことが楽になりますけどね」
「リタリンのことですか?」
「驚くほど効くのを私たちは見てきてます。
ウィルは先生たちから叱られていますけど、
お行儀がよくなれば先生たちにも誉めてもらえるようになって、
自信も持てるし、学校生活そのものが楽しくなりますよ」
でも著者は、
息子は8歳相応のエネルギーがあるだけだと考えているので
「あの子はADHDじゃありません。薬を飲ませるつもりはありません」
とたんに先生はショックを受けて
「そんなことしなさいなんて一言だって言ってませんよ。(たった今そう言ったくせに)
そんなことをいうのは法律で禁じられているんですから。
ただ、専門家のアセスメントを受けてみられたら、というだけで」
で、著者は息子をクリニックへ連れて行った。
そして驚く。ADHDには臨床検査なんて、ない、ということに。
面接とアンケート(それも学校の先生の捉え方重視)をいくつかやって、
そういうものからの主観的な印象で医師が診断をつける。
なるほど、「問題を探し始めたら、そりゃ問題も見つかるわ」。
なるほど03年から07年の間、毎年5.5%も診断件数が増え、
2010年には3歳から17歳の子どもの8.4%、520万人が診断されているはずだわ。
著者の息子は医師の面接の間はちゃんと集中できた。
すると「他の場面では集中できる子どもでも
気が散る状況になると集中できにくいことがある」として、
結局ADHDを診断されてしまい、リタリンのジェネリック薬が処方される。
ただし、家にいる時や休みの日には飲まなくてもよい。
学校へ行く日の朝に1錠、お昼休みにスクール・ナースのところへ行って、もう1錠。
著者はネットでいろいろ検索して副作用について知って驚いたり、
家庭医に相談したりしながら、不安を抱えながらも
本当にADHDなんだったら治療するしかなかろうと思うようになっていくが、
ある日、学校から帰ってきた息子が
読書の時間に友達と話をするのを忘れてしまった、
すっごく静かになって、本の中に入っちゃったみたいだった、というのを聞いて、
疑問に思う。
いい生徒になるための薬なのか――?
また学校ではほとんど何も食べず、家にいるとおなかをすかせるので
調べて見ると、その薬は食欲抑制剤としても使われていた。
4年生から飲み始めた薬が5年生になったら効かなくなり、
医師は処方量を何度か上げて、さらに薬を2回も替えたが効果はなかった。
で、著者は、ふと気がつく。
4年生の時の担任はウィルのことを気に入ってくれていた。
5年生になってからの担任は、どうも男子の扱いがわかっていないという評判らしい。
もしかして去年、薬が効いたとみんなで思いこんだのは、
あれは実は薬の効果ではなかったのでは……?
5年生の途中で、テレビ番組をきっかけに
本人がきっぱりと薬を飲むことを拒否。
それから5年。
ウィルは現在、成績優秀な高校生として学校生活を満喫している。
……We might remind ourselves that the ability to settle into being focused student is simply a developmental milestone: there’s no magical age at which this happens.
……落ちついて集中して勉強できるようになる能力は、発達の指標にすぎない。この年齢でそれが起こります、みたいな魔法の年齢があるわけじゃない。
著者はまた、教育界では「正常」という言葉が
「平均的」から「飛びぬけている」という意味へとシフトしていないか、と疑問を呈する。
記事の最後は、以下。
If “accelerated” has become the new normal, there’s no choice but to diagnose the kids developing at a normal rate with a disorder. Instead of leveling the playing field for kids who really do suffer from a deficit, we’re ratcheting up the level of competition with performance-enhancing drugs. We’re juicing our kids for school.
We are also ensuring that down the road, when faced with other challenges that high school, college and adult life are sure to bring, our children will use the coping skills we’ve taught them. They’ reach for a pill.
「年齢よりも発達が早い」ということが新たなノーマルになったのだとしたら、正常に発達している子どもたちは障害を診断されることになる。実際に注意欠陥のある子どもたちに配慮して子どもたちの居場所を工夫する代わりに、私たちはパフォーマンス・エンハンスメント薬で競争のハードルをあげている。勉強のために子どもたちを薬漬けにしているのだ。
そして同時に、この先、高校や大学、成人してからの生活で間違いなくやってくる困難に出くわした暁には、必ずや私たちが教えた通りに対処しなさいよ、とそのスキルを教えているのだ。薬に手を伸ばす、というスキルを。
Raising the Ritalin Generation
NYT, August 16, 2012
“Accelerated”という著者の小説が近く刊行されるとか。
読んでみよう、かな……。
【関連エントリー】
子どもへの抗精神病薬でFDAと専門家委員会が責任なすりあい (2008/11/19)
10年間で精神科薬の処方が倍増(米)(2009/5/7)
「12-18歳全員に定期的うつ病スクリーニングを」と専門家が提言(米)(2009/6/3)
BiedermanスキャンダルでADHDの治療ガイドライン案がボツに(2009/11/23)
米国のティーンの間で処方薬の濫用が広がっている(2009/12/1)
中流の子なら行動療法、メディケアの子は抗精神病薬……?(2009/12/13)
双極性障害で抗精神病薬を処方される2-5歳児が倍増(2010/1/16)
2歳で双極性障害診断され3種類もの薬を処方されたRebeccaちゃん死亡事件・続報(2010/2/22)
欧州でADHD治療薬の安全性調査命じられた調査会社が結束して「不能・不要」と回答(2010/3/7)
拘留施設の子どもらの気分障害、攻撃的行動に抗精神病薬?(米)(2010/10/6)
ADHD治療薬の“スマート・ドラッグ”利用を解禁せよ、とNorman Fost(2010/12/28)
「製薬会社に踊らされて子どもの問題行動に薬飲ませ過ぎ」と英国の教育心理学者(2011/1/18)
2012.08.28 / Top↑
谷口輝世子さんのブログ・エントリー「アシュリー事件と障害児野球」:私がツイッターでのやりとりで「重症障害児・者のことを云々する学者は彼らが彼らなりに生きている現実の姿を知らないままであることを自覚し、彼らと触れあい出会ってほしい」「いずれ見学に行かなければとは思っている」「見学に行ってほしいとは言っていない。彼らと出会ってほしいと言っている」などと言ったことを記憶してくださっていた模様で、谷口さんご自身の重症障害のある一人の少年との「出会い」の瞬間が見事に描かれている。
http://d.hatena.ne.jp/kiyoko26/20120818
【谷口さんのご著書関連エントリー】
「子どもが一人で遊べない国、アメリカ」から「メディカル・コントロールの世界」へ(2011/12/20)
「子どもがひとりで遊べない」世界から、人が「能力」と「機能」の集合体でしかない未来へ?(2011/12/21)
ビル・ゲイツが韓国の企業と一緒に次世代型原発の開発へ。
http://english.chosun.com/site/data/html_dir/2012/08/20/2012082001106.html
相変わらず世界中のメディアがビル・ゲイツの次世代型トイレの開発について報じている。:ビル・ゲイツが「次はこれをやる」という情報はそのまま世界中の投資家や企業の戦略にとって重要情報なんだと思う。次にグローバルなカネが集まるフィールドはどこかを読むために必要な。
http://www.telegraph.co.uk/technology/bill-gates/9476478/Bill-Gates-challenges-scientists-to-reinvent-toilet.html
http://www.torontosun.com/2012/08/18/bill-gates-potty-talk
ゲイツ夫妻と新・優生思想に関して、何年もの間にネットに流れた情報を取りまとめた記事。09年くらいから7月の優生思想カンファまでのゲイツ夫妻の発言やその周辺でのニュースが参照されているけど、そのほとんどが当ブログで拾ってきたニュース。:6月に某所で「あなたが『アシュリー事件』の副題で優生思想に『新』をくっつけているのは、どういう意味か」と問われて、余りきっちり答えられなかった気がしているのだけど、主として①科学とテクノの発達により生命や身体の操作が可能になったことを背景にしている。②かつての優生施策が国家や州の施策として行われたのに対して、個人の選択として個人が幸福を追求する権利などで正当化されつつ、そうした価値意識が社会に広がり共有されていくという形で行われる……かな。
http://www.wnd.com/2012/08/bill-gates-world-needs-fewer-people/
性交を体験する前にオーラル・セックスを経験する子どもが増えて、10代の子どもの3分の2に。:こういう調査データを見ると、HPVワクチンのプロモに利用される? と頭に浮かんでしまう。
http://www.usatoday.com/news/health/story/2012-08-16/cdc-oral-sex/57079768/1?csp=Dailybriefing
NYTに「リタリン世代の子どもを育てる」という興味深い記事。8歳の我が子は単に年齢相応の行動をとっているだけだと親は思っていたのに、学校と病院とに既に出来上がっていると思われる「早く診断して早く薬を」というシステムに押し流されるかのように、学校生活のためのリタリン服用をさせることになり、一体だれのための服用なのか、と戸惑った親の体験談。後半は読んでいない。
http://www.nytimes.com/2012/08/19/opinion/sunday/raising-the-ritalin-generation.html?_r=2&nl=todaysheadlines&emc=edit_th_20120819
ProPublicaがNursing Home Inspectという新サイトをオープン。全米のナーシング・ホームの監査報告書2万件の検索が可能なほか、そういう報告書には盛り込まれない種類の話題(施設入所者への向精神薬の過剰投与問題、虐待被害者保護の制度上の欠陥など)を取り上げたメディアの記事も。ぱっと覗いて目についたグラフでは、重大な欠陥が突出しているのはテキサス州。頷ける気がする。
http://www.propublica.org/article/the-best-watchdog-journalism-on-elderly-care
MO州で上院選出馬予定の下院議員が「正当なレイプ」の場合には女性の体は望まぬ妊娠を避けるようにできている、みたいなバカな発言をかましたらしい。
Senate Candidate Provokes Ire With “Legitimate Rape“ Comment: In an effort to explain his stance on abortion, Representative Todd Akin of Missouri said women’s bodies can somehow block an unwanted pregnancy in instances of “legitimate rape.”
パキスタンで11歳のクリスチャンの少女が近所の人からイスラム教の聖典をわざと焼いたと告発され、死刑の可能性も?
http://www.guardian.co.uk/world/2012/aug/19/pakistan-christian-tensions-quran-burning-allegations?CMP=EMCNEWEML1355
http://d.hatena.ne.jp/kiyoko26/20120818
【谷口さんのご著書関連エントリー】
「子どもが一人で遊べない国、アメリカ」から「メディカル・コントロールの世界」へ(2011/12/20)
「子どもがひとりで遊べない」世界から、人が「能力」と「機能」の集合体でしかない未来へ?(2011/12/21)
ビル・ゲイツが韓国の企業と一緒に次世代型原発の開発へ。
http://english.chosun.com/site/data/html_dir/2012/08/20/2012082001106.html
相変わらず世界中のメディアがビル・ゲイツの次世代型トイレの開発について報じている。:ビル・ゲイツが「次はこれをやる」という情報はそのまま世界中の投資家や企業の戦略にとって重要情報なんだと思う。次にグローバルなカネが集まるフィールドはどこかを読むために必要な。
http://www.telegraph.co.uk/technology/bill-gates/9476478/Bill-Gates-challenges-scientists-to-reinvent-toilet.html
http://www.torontosun.com/2012/08/18/bill-gates-potty-talk
ゲイツ夫妻と新・優生思想に関して、何年もの間にネットに流れた情報を取りまとめた記事。09年くらいから7月の優生思想カンファまでのゲイツ夫妻の発言やその周辺でのニュースが参照されているけど、そのほとんどが当ブログで拾ってきたニュース。:6月に某所で「あなたが『アシュリー事件』の副題で優生思想に『新』をくっつけているのは、どういう意味か」と問われて、余りきっちり答えられなかった気がしているのだけど、主として①科学とテクノの発達により生命や身体の操作が可能になったことを背景にしている。②かつての優生施策が国家や州の施策として行われたのに対して、個人の選択として個人が幸福を追求する権利などで正当化されつつ、そうした価値意識が社会に広がり共有されていくという形で行われる……かな。
http://www.wnd.com/2012/08/bill-gates-world-needs-fewer-people/
性交を体験する前にオーラル・セックスを経験する子どもが増えて、10代の子どもの3分の2に。:こういう調査データを見ると、HPVワクチンのプロモに利用される? と頭に浮かんでしまう。
http://www.usatoday.com/news/health/story/2012-08-16/cdc-oral-sex/57079768/1?csp=Dailybriefing
NYTに「リタリン世代の子どもを育てる」という興味深い記事。8歳の我が子は単に年齢相応の行動をとっているだけだと親は思っていたのに、学校と病院とに既に出来上がっていると思われる「早く診断して早く薬を」というシステムに押し流されるかのように、学校生活のためのリタリン服用をさせることになり、一体だれのための服用なのか、と戸惑った親の体験談。後半は読んでいない。
http://www.nytimes.com/2012/08/19/opinion/sunday/raising-the-ritalin-generation.html?_r=2&nl=todaysheadlines&emc=edit_th_20120819
ProPublicaがNursing Home Inspectという新サイトをオープン。全米のナーシング・ホームの監査報告書2万件の検索が可能なほか、そういう報告書には盛り込まれない種類の話題(施設入所者への向精神薬の過剰投与問題、虐待被害者保護の制度上の欠陥など)を取り上げたメディアの記事も。ぱっと覗いて目についたグラフでは、重大な欠陥が突出しているのはテキサス州。頷ける気がする。
http://www.propublica.org/article/the-best-watchdog-journalism-on-elderly-care
MO州で上院選出馬予定の下院議員が「正当なレイプ」の場合には女性の体は望まぬ妊娠を避けるようにできている、みたいなバカな発言をかましたらしい。
Senate Candidate Provokes Ire With “Legitimate Rape“ Comment: In an effort to explain his stance on abortion, Representative Todd Akin of Missouri said women’s bodies can somehow block an unwanted pregnancy in instances of “legitimate rape.”
パキスタンで11歳のクリスチャンの少女が近所の人からイスラム教の聖典をわざと焼いたと告発され、死刑の可能性も?
http://www.guardian.co.uk/world/2012/aug/19/pakistan-christian-tensions-quran-burning-allegations?CMP=EMCNEWEML1355
2012.08.28 / Top↑
これ、すごい……と思ったので、
とりあえずメモ。
昔、デカルトが、「我思う故に我有り」といいました。思うから、考えるから私が存在しているのだ、と。でも、そうかしら。なんにも考えなくても私はいるわ。窓から入ってくる風を頬に受けて、「あぁ気持ちいいなぁ」と目を細める時、私は何も考えていないけれど、確かに存在しています。もう身体感覚的にそう。
(p.135)
田中美津
「身体に聴いて、心を癒す」
2004年9月18日 名古屋YWCAにて
「かけがえのない、大したことのない私」(インパクト出版会)
どんなにエラい学者から
「オマエには正しく読めていない」と言われようと、
暗に「オマエみたいな素人に批判する資格はない」と恫喝されようと、
「だって、私は重症障害のある娘と生きてきた親として、
この人には重症障害児・者の現実がわかっていないとしか思えないんだもの」と、
知識や立場や権威に依っかかった言葉ではなく、
自分自身の生きてきた道筋と、自分自身の生身の身体を通過した言葉で
言い続けられる自分でありたい……と
改めて思わせてもらった。
とりあえずメモ。
昔、デカルトが、「我思う故に我有り」といいました。思うから、考えるから私が存在しているのだ、と。でも、そうかしら。なんにも考えなくても私はいるわ。窓から入ってくる風を頬に受けて、「あぁ気持ちいいなぁ」と目を細める時、私は何も考えていないけれど、確かに存在しています。もう身体感覚的にそう。
(p.135)
田中美津
「身体に聴いて、心を癒す」
2004年9月18日 名古屋YWCAにて
「かけがえのない、大したことのない私」(インパクト出版会)
どんなにエラい学者から
「オマエには正しく読めていない」と言われようと、
暗に「オマエみたいな素人に批判する資格はない」と恫喝されようと、
「だって、私は重症障害のある娘と生きてきた親として、
この人には重症障害児・者の現実がわかっていないとしか思えないんだもの」と、
知識や立場や権威に依っかかった言葉ではなく、
自分自身の生きてきた道筋と、自分自身の生身の身体を通過した言葉で
言い続けられる自分でありたい……と
改めて思わせてもらった。
2012.08.28 / Top↑
以下のエントリーで書いたように英国では昨年夏に
介護と支援の財政委員会、通称Dilnot委員会から
公平で持続可能な成人介護制度の財政システム構築に向けた提言が行われました。
英国「介護と支援財政員会」提言(2011/7/5)
それについて「介護保険情報」11年8月号で書いた記事はこちら ↓
http://www.arsvi.com/2010/1108km.htm
この提言の目玉は
国民一人ひとりが障害に支払う介護費用に上限(委員会提言は35000ポンド)を設けて、
それ以上は国が負担する、という点や、資産審査の上限額の引き上げなどで、
連立政権は当初、
コストがかかり過ぎる(見込まれる予算額は20兆ポンド)として
一旦この提言を退けたものの、
ここへ来て方針転換、秋の法案に提言内容導入の方向へ。
だたし、財源がはっきりしないことから
NHS予算が狙われたのでは藪蛇になるとか、
キャメロン首相の単なるパフォーマンスだとか、
いわゆるホテルコストが除外されるために恩恵は小さいのでは、
15年から17年に施行では、今困っている家族は? など
警戒・懸念の声も。
Government to implement Dilnot care cap
Health Insurance and Protection, August 16, 2012
Govt set for U-turn on Dilnot care funding plans
MoneyMarketing, August 16, 2012
介護と支援の財政委員会、通称Dilnot委員会から
公平で持続可能な成人介護制度の財政システム構築に向けた提言が行われました。
英国「介護と支援財政員会」提言(2011/7/5)
それについて「介護保険情報」11年8月号で書いた記事はこちら ↓
http://www.arsvi.com/2010/1108km.htm
この提言の目玉は
国民一人ひとりが障害に支払う介護費用に上限(委員会提言は35000ポンド)を設けて、
それ以上は国が負担する、という点や、資産審査の上限額の引き上げなどで、
連立政権は当初、
コストがかかり過ぎる(見込まれる予算額は20兆ポンド)として
一旦この提言を退けたものの、
ここへ来て方針転換、秋の法案に提言内容導入の方向へ。
だたし、財源がはっきりしないことから
NHS予算が狙われたのでは藪蛇になるとか、
キャメロン首相の単なるパフォーマンスだとか、
いわゆるホテルコストが除外されるために恩恵は小さいのでは、
15年から17年に施行では、今困っている家族は? など
警戒・懸念の声も。
Government to implement Dilnot care cap
Health Insurance and Protection, August 16, 2012
Govt set for U-turn on Dilnot care funding plans
MoneyMarketing, August 16, 2012
2012.08.28 / Top↑
重病の子どもの母親と医師との間のコミュニケーションの問題。:これ、いつも思うけど、医療サイドが思っているよりもはるかに深刻。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/249135.php
カナダ、ブリティッシュ・コロンビア州のALS患者Taylorさんの自殺幇助訴訟で、中央政府の上訴審で上訴裁判所が先の判決を支持。Taylorさんに1年の猶予の後にPAS認める。6月のBC州最高裁の判決についてはこちら ⇒カナダBC州最高裁からPAS禁止に違憲判決(2012/6/18)
http://cnews.canoe.ca/CNEWS/Canada/2012/08/10/20091501.html
http://www.theglobeandmail.com/news/british-columbia/court-upholds-bc-womans-exemption-from-doctor-assisted-suicide-ban/article4474112/
NYTがシアトル在住のALS患者である医師の自殺幇助希望を取り上げて、合法化寄りの記事を書いている。
http://www.nytimes.com/2012/08/12/health/policy/in-ill-doctor-a-surprise-reflection-of-who-picks-assisted-suicide.html?_r=2&hp
オランダで、自殺幇助体験者や希望者が匿名で情報交換できるサイトがオープン。医師による自殺幇助から、近親者への自殺幇助への拡大を意図したもののような気配も?
http://www.rnw.nl/english/article/controversy-over-assisted-suicide-netherlands
Dignitasで致死薬を半分のんで眠り込んでしまった女性を警察が「自殺の失敗例」と判断して病院に運び、Dignitasが警察を訴えると言っている。致死薬を飲んで2時間後に死んでいないケースは失敗とみなすという法律があるとか。この記事では、自殺幇助の現場に当局者が経ち合わなければならないという法律についても言及があるのだけど、今までDignitasって、そうしてきたんだったっけ?
http://www.dailymail.co.uk/news/article-2189303/Assisted-suicide-firm-Dignitas-sue-Swiss-police-reviving-terminally-ill-woman-fell-asleep-procedure.html?ito=feeds-newsxml
保険の加入・支払い状況など金銭的な条件が臨床現場の無益な治療判断に影響している、との実証研究結果が the Journal of Law, Medicine and Ethicsに。
http://papers.ssrn.com/sol3/papers.cfm?abstract_id=2121535
英国の8歳児で、信仰心の高い両親の治療継続希望にも関わらず、裁判所が生命維持の中止を命令。
http://www.telegraph.co.uk/health/children_shealth/9470501/Judge-rules-boys-life-support-can-be-switched-off-despite-parents-hope-of-miracle.html
日本。緊急提言 いま、わたしたちに「死ぬ権利」は必要なのか? 川口有美子
(なぜか記事アドレスを貼ると「登録できない文字列」と表記されてしまいます)
スコットランドのヤング・ケアラーの実態調査。
http://www.google.com/hostednews/ukpress/article/ALeqM5iQ8ZzM_v0sY0MbZW0LsXiF08qPtg?docId=N0011331345120753241A
BBCの潜入ルポ番組Panoramaが暴いた Winterbourne View民間病院でのスタッフによる高齢者虐待で、逮捕者が続々。
http://www.guardian.co.uk/society/2012/aug/06/winterbourne-view-abuse-staff-guilty?CMP=EMCNEWEML1355
http://www.guardian.co.uk/uk/2012/aug/07/winterbourne-view-abuse-report-failures?CMP=EMCNEWEML1355
前にもPanoramaは在宅介護の実態を暴いたことがある ↓
BBCの潜入ルポが在宅介護の実態を暴いてスキャンダルに(2009/4/11)
在宅介護のお粗末を暴いたBBC潜入ルポに反響2つ(2009/4/19)
ゲイツ財団が新世代型トイレの開発に力を入れるというのはずいぶん前に言っていたけど、いよいよ本腰でCA州の研究所にソーラー・トイレの研究助成。同時に研究のため大量の偽ウンコを購入。
http://articles.chicagotribune.com/2012-08-14/business/sns-rt-us-gatesfoundation-toiletsbre87e01k-20120814_1_hygienic-toilet-gates-foundation-bill-gates
http://newsfeed.time.com/2012/08/16/gates-foundation-funding-the-toilets-of-the-future/
http://news.blogs.cnn.com/2012/08/15/bill-gates-seeks-answers-in-the-toilet/
http://www.smh.com.au/technology/sci-tech/why-bill-gates-bought-200-litres-of-fake-poo-20120814-245ri.html
出生前から胎児の全ゲノムの読解が可能となり、倫理問題の議論が必要。:そう言われつつ、そう言われることがあたかも免罪符であるかのように、既成事実がどんどん先行して行くのが科学とテクノで簡単解決文化の常。
http://www.medicalnewstoday.com/releases/248919.php
中国の臓器売買で18人の医師を含む127人を逮捕。
http://www.bioedge.org/index.php/bioethics/bioethics_article/10192
米国のオンラインの卵子ドナー・ブローカーは倫理基準を順守せず。
http://www.bioedge.org/index.php/bioethics/bioethics_article/10189#comments
インターセックスの胎児の性別を“正常化”するために適用外の薬物が処方されている、とthe Journal of Bioethical Inquiryの論文。Alice Dregerさんともう一人が著者、という記事もどこかで見たんだけど、見失ってしまった。同じ論文では?
http://www.bioedge.org/index.php/bioethics/bioethics_article/10190#comments
薬の適用外処方をめぐっては、ジャーナル著者らのディスクロージャーは必ずしも適切に行われていない。
http://www.medicalnewstoday.com/releases/248761.php
サウジアラビアに女性だけのビジネス街。男女の隔離目的で作られた町だったけれど、期せずして女性企業家の育成に繋がっているみたい。
http://www.guardian.co.uk/world/shortcuts/2012/aug/13/saudi-womens-city-what-expect?intcmp=239
http://www.guardian.co.uk/world/2012/aug/12/saudi-arabia-city-women-workers?CMP=EMCNEWEML1355
7月29日に拾った、ミシシッピ州の教会が黒人カップルの結婚式を拒否した問題で、教会が謝罪。
http://content.usatoday.com/communities/ondeadline/post/2012/08/miss-church-apologizes-for-blocking-black-couples-wedding-/1?csp=Dailybriefing#.UCEA1qCFByI
http://www.medicalnewstoday.com/articles/249135.php
カナダ、ブリティッシュ・コロンビア州のALS患者Taylorさんの自殺幇助訴訟で、中央政府の上訴審で上訴裁判所が先の判決を支持。Taylorさんに1年の猶予の後にPAS認める。6月のBC州最高裁の判決についてはこちら ⇒カナダBC州最高裁からPAS禁止に違憲判決(2012/6/18)
http://cnews.canoe.ca/CNEWS/Canada/2012/08/10/20091501.html
http://www.theglobeandmail.com/news/british-columbia/court-upholds-bc-womans-exemption-from-doctor-assisted-suicide-ban/article4474112/
NYTがシアトル在住のALS患者である医師の自殺幇助希望を取り上げて、合法化寄りの記事を書いている。
http://www.nytimes.com/2012/08/12/health/policy/in-ill-doctor-a-surprise-reflection-of-who-picks-assisted-suicide.html?_r=2&hp
オランダで、自殺幇助体験者や希望者が匿名で情報交換できるサイトがオープン。医師による自殺幇助から、近親者への自殺幇助への拡大を意図したもののような気配も?
http://www.rnw.nl/english/article/controversy-over-assisted-suicide-netherlands
Dignitasで致死薬を半分のんで眠り込んでしまった女性を警察が「自殺の失敗例」と判断して病院に運び、Dignitasが警察を訴えると言っている。致死薬を飲んで2時間後に死んでいないケースは失敗とみなすという法律があるとか。この記事では、自殺幇助の現場に当局者が経ち合わなければならないという法律についても言及があるのだけど、今までDignitasって、そうしてきたんだったっけ?
http://www.dailymail.co.uk/news/article-2189303/Assisted-suicide-firm-Dignitas-sue-Swiss-police-reviving-terminally-ill-woman-fell-asleep-procedure.html?ito=feeds-newsxml
保険の加入・支払い状況など金銭的な条件が臨床現場の無益な治療判断に影響している、との実証研究結果が the Journal of Law, Medicine and Ethicsに。
http://papers.ssrn.com/sol3/papers.cfm?abstract_id=2121535
英国の8歳児で、信仰心の高い両親の治療継続希望にも関わらず、裁判所が生命維持の中止を命令。
http://www.telegraph.co.uk/health/children_shealth/9470501/Judge-rules-boys-life-support-can-be-switched-off-despite-parents-hope-of-miracle.html
日本。緊急提言 いま、わたしたちに「死ぬ権利」は必要なのか? 川口有美子
(なぜか記事アドレスを貼ると「登録できない文字列」と表記されてしまいます)
スコットランドのヤング・ケアラーの実態調査。
http://www.google.com/hostednews/ukpress/article/ALeqM5iQ8ZzM_v0sY0MbZW0LsXiF08qPtg?docId=N0011331345120753241A
BBCの潜入ルポ番組Panoramaが暴いた Winterbourne View民間病院でのスタッフによる高齢者虐待で、逮捕者が続々。
http://www.guardian.co.uk/society/2012/aug/06/winterbourne-view-abuse-staff-guilty?CMP=EMCNEWEML1355
http://www.guardian.co.uk/uk/2012/aug/07/winterbourne-view-abuse-report-failures?CMP=EMCNEWEML1355
前にもPanoramaは在宅介護の実態を暴いたことがある ↓
BBCの潜入ルポが在宅介護の実態を暴いてスキャンダルに(2009/4/11)
在宅介護のお粗末を暴いたBBC潜入ルポに反響2つ(2009/4/19)
ゲイツ財団が新世代型トイレの開発に力を入れるというのはずいぶん前に言っていたけど、いよいよ本腰でCA州の研究所にソーラー・トイレの研究助成。同時に研究のため大量の偽ウンコを購入。
http://articles.chicagotribune.com/2012-08-14/business/sns-rt-us-gatesfoundation-toiletsbre87e01k-20120814_1_hygienic-toilet-gates-foundation-bill-gates
http://newsfeed.time.com/2012/08/16/gates-foundation-funding-the-toilets-of-the-future/
http://news.blogs.cnn.com/2012/08/15/bill-gates-seeks-answers-in-the-toilet/
http://www.smh.com.au/technology/sci-tech/why-bill-gates-bought-200-litres-of-fake-poo-20120814-245ri.html
出生前から胎児の全ゲノムの読解が可能となり、倫理問題の議論が必要。:そう言われつつ、そう言われることがあたかも免罪符であるかのように、既成事実がどんどん先行して行くのが科学とテクノで簡単解決文化の常。
http://www.medicalnewstoday.com/releases/248919.php
中国の臓器売買で18人の医師を含む127人を逮捕。
http://www.bioedge.org/index.php/bioethics/bioethics_article/10192
米国のオンラインの卵子ドナー・ブローカーは倫理基準を順守せず。
http://www.bioedge.org/index.php/bioethics/bioethics_article/10189#comments
インターセックスの胎児の性別を“正常化”するために適用外の薬物が処方されている、とthe Journal of Bioethical Inquiryの論文。Alice Dregerさんともう一人が著者、という記事もどこかで見たんだけど、見失ってしまった。同じ論文では?
http://www.bioedge.org/index.php/bioethics/bioethics_article/10190#comments
薬の適用外処方をめぐっては、ジャーナル著者らのディスクロージャーは必ずしも適切に行われていない。
http://www.medicalnewstoday.com/releases/248761.php
サウジアラビアに女性だけのビジネス街。男女の隔離目的で作られた町だったけれど、期せずして女性企業家の育成に繋がっているみたい。
http://www.guardian.co.uk/world/shortcuts/2012/aug/13/saudi-womens-city-what-expect?intcmp=239
http://www.guardian.co.uk/world/2012/aug/12/saudi-arabia-city-women-workers?CMP=EMCNEWEML1355
7月29日に拾った、ミシシッピ州の教会が黒人カップルの結婚式を拒否した問題で、教会が謝罪。
http://content.usatoday.com/communities/ondeadline/post/2012/08/miss-church-apologizes-for-blocking-black-couples-wedding-/1?csp=Dailybriefing#.UCEA1qCFByI
2012.08.17 / Top↑
以下のエントリーで追いかけてきた
英国のロックト・イン症候群の男性がPASを求めているNicklinson訴訟で、
Nicklinsonさん、敗訴。
“ロックト・イン症候群”の男性が「妻に殺してもらう権利」求め提訴(英)(2010/7/20)
自殺幇助希望の“ロックト・イン”患者Nicklinson訴訟で判決(2012/3/13)
自殺幇助訴訟のNicklinsonさん、ツイッターを始める(2012/7/2)
もう一人、同じくロックト・イン症候群の男性 Martinは
ボランティアにDignitasへ連れて行ってもらう権利を求めていたが、
いずれについても裁判所は
判断の影響は個々のケースをはるかに超えるものとなり、
自殺幇助に関する法改正の問題は議会で決すべきこと、として
裁判所としての判断を避けた。
記事から判事2人の発言を抜いてみると、
It is not for the court to decide whether the law about assisted dying should be changed and, if so, what safeguards should be put in place.
Under our system of government these are matters for parliament to decide, representing society as a whole, after parliamentary scrutiny, and not for the court on the facts of an individual case or cases.
No one could fail to be deeply moved by the terrible predicament faced by these men struck down in their prime and facing a future bereft of hope," he said. "Some will say the judges must step in to change the law. Some will be sorely tempted to do so. But the short answer is that to do so here would be to usurp the function of parliament in this classically sensitive area.
今回の判決を
Care Not Killingなどは歓迎している模様ですが、
判事の発言はかなり同情的で、
DPPのガイドラインに繋がったDebbie Purdy 訴訟の流れが
ここでも繰り返されるのか……という気配も?
Nicklinsonさんは上訴するとネット上で表明。
弁護チームは最後までやる覚悟だろうけど、
それは私にとっては身体的な深いと精神的な苦痛が
さらに続くことを意味する。
として、
どうにも耐えきれなかった餓死を選ぶ可能性も示唆。
Assisted suicide profile: Tony Nicklinson
Telegraph, August 16, 2012
Locked-in syndrome victims lose ‘right to die’ case
The Guardian, August 16, 2012
英国のロックト・イン症候群の男性がPASを求めているNicklinson訴訟で、
Nicklinsonさん、敗訴。
“ロックト・イン症候群”の男性が「妻に殺してもらう権利」求め提訴(英)(2010/7/20)
自殺幇助希望の“ロックト・イン”患者Nicklinson訴訟で判決(2012/3/13)
自殺幇助訴訟のNicklinsonさん、ツイッターを始める(2012/7/2)
もう一人、同じくロックト・イン症候群の男性 Martinは
ボランティアにDignitasへ連れて行ってもらう権利を求めていたが、
いずれについても裁判所は
判断の影響は個々のケースをはるかに超えるものとなり、
自殺幇助に関する法改正の問題は議会で決すべきこと、として
裁判所としての判断を避けた。
記事から判事2人の発言を抜いてみると、
It is not for the court to decide whether the law about assisted dying should be changed and, if so, what safeguards should be put in place.
Under our system of government these are matters for parliament to decide, representing society as a whole, after parliamentary scrutiny, and not for the court on the facts of an individual case or cases.
No one could fail to be deeply moved by the terrible predicament faced by these men struck down in their prime and facing a future bereft of hope," he said. "Some will say the judges must step in to change the law. Some will be sorely tempted to do so. But the short answer is that to do so here would be to usurp the function of parliament in this classically sensitive area.
今回の判決を
Care Not Killingなどは歓迎している模様ですが、
判事の発言はかなり同情的で、
DPPのガイドラインに繋がったDebbie Purdy 訴訟の流れが
ここでも繰り返されるのか……という気配も?
Nicklinsonさんは上訴するとネット上で表明。
弁護チームは最後までやる覚悟だろうけど、
それは私にとっては身体的な深いと精神的な苦痛が
さらに続くことを意味する。
として、
どうにも耐えきれなかった餓死を選ぶ可能性も示唆。
Assisted suicide profile: Tony Nicklinson
Telegraph, August 16, 2012
Locked-in syndrome victims lose ‘right to die’ case
The Guardian, August 16, 2012
2012.08.17 / Top↑
イングランドとウェールズにおける障害者へのヘイト・クライムは
2011年に1942件で、
2010年の総数から25%も増加。
情報公開法に基づいて入手された記録によれば
2009年から2011年の間では60%も増加している。
また去年、警察には2000件近くの届けがあったにもかかわらず、
検察局(CPS)が起訴したのはわずかに523件。
その他、詳細なデータは以下の記事に。
Disability hate crime is at its highest level since records began
The Guardian, August 14, 2012
2011年に1942件で、
2010年の総数から25%も増加。
情報公開法に基づいて入手された記録によれば
2009年から2011年の間では60%も増加している。
また去年、警察には2000件近くの届けがあったにもかかわらず、
検察局(CPS)が起訴したのはわずかに523件。
その他、詳細なデータは以下の記事に。
Disability hate crime is at its highest level since records began
The Guardian, August 14, 2012
2012.08.17 / Top↑
娘がお世話になっている療育園は今年で創設20周年を迎え、
今日、記念式典があった。
関係者のあいさつや祝辞があり、その後、
子どもたちの20年間をたどるスライドがあって、
(みんな小さくて可愛くて笑顔がキラキラしていて、スタッフもまだまだ若くて……。
一枚ごとにどよめき笑いながら、通り過ぎた年月を振り返って、それぞれ感慨に浸りました)
最後に、初代園長である前園長が「20年の歩み」を話すために登壇。
一小児科医としてリハセンターに赴任し、やがて重心施設が開設されると、
重心施設の経験もないまま初代園長となり、慣れぬことに苦労しながらも模索と勉強を重ねつつ、
医師としては医療を第一に考えてやっていった……などなどが語られている頃、
私の隣では、非日常的な雰囲気にテンションが上がり気味だったミュウが
遠くに座っているイケメンのドクターに手を振り上げて大声で呼びかけたりし始めたので、
私は彼女をなだめたり、ペンと紙を持たせてみたり、つい話から注意が逸れてしまった。
そこへ、ふと耳に飛び込んできたのは
「保護者の不満が噴出した」「私は針のむしろに座っている気分だった」という話の断片。
え……?
もしかして……あの時の、こと……?
10年以上も前に(今日の前園長の話では平成11年)、私は療育園で
「師長&園長」vs「保護者一人」という激しいバトルを闘ったことがある。
そのことは、以下のエントリーに少し書いているし、
所長室の灰皿(2011/4/20)
ちょうど10年前に書いた『海のいる風景』という本にも
その時のことを書いた「闘い」という章がある。
でも、それは、こんな祝典の場で持ち出すような話ではないはずで……?
しかし、どうやら前園長は、この晴れの日に式典の演台から、
本当に「あの時」のことを詳細に語ろうとしているらしい。
その事件で前園長を「針のむしろ」に座らせた当の「保護者」としては、
にわかに落ち着かない気分となり、
この話、いったいどこへ向かって行くんだろう……。
ちょっと不安になりつつ聞いていると、
その後の前園長の話はおおむね以下のように続いていった。
それまで私は一小児科医として医療のことには尽力してきたけれど
現場のことは看護科と育成課に任せきりにしていた。
保護者から厳しいお叱りを受けて、
私も気が短いから「逆ギレする園長だ」と言われたこともあったけれど、
保護者と話し合い、保護者が望んでいることを理解し、保護者から学ぼうと努めながら、
自分なりに療育委員会その他各種委員会の設置、個人懇談や連絡ノートの創設、
職員研修を保護者にも開放して一緒に学ぶ場を作る、
その研修で年に一度保護者に話してもらい
保護者の言葉から直接職員が学ぶ機会とするなど、
様々な改革を実行した。
十分だったとは思わないが、
保護者から一定のご理解を得ることができたと思っている。
そうして、あの時に自分は一小児科医から園長になれたのだと思う。
療育園の現在の理念も、その時に私が作ったもの。
我が療育園の理念には「保護者とともに療育の向上に努めます」という言葉が入っている。
これは日本の多くの重心施設の中でも珍しいのではないかと思うが、
私は理念の中で、ここの「保護者とともに」の部分が一番大切な個所だと考えている。
保護者との信頼関係なくして、よい療育はあり得ない。
あの時のことは、私の長い療育園人生の中で
どうしても忘れることのできない、最も大きな出来事。
そのおかげで今の療育園がある。
感謝している。
このことは、今日ここにいる若い職員にも
聞いておいてほしい。
途中から、
ありえないことが目の前で起こっている……という思いで聞いた。
園長を退かれる時に挨拶のメールを入れたら、
「あの時は苦しんだけれど、あの時に自分は一小児科医から園長になれた。
あなたのことは恩人だと思っている」と返事をもらったことはある。
だけど、それは前園長と私の間でのこと。
こんな場所で、こんなふうに公言されることとは、ぜんぜん違う。
なんという人なのだ……と、ほとんど呆然とした。
私はなんと稀有な出会いに恵まれたことだろう、
私はなんと幸せな人なのだろう……と、
10年以上前の所長の言葉を今にして知らされた去年4月と同じことを
繰り返し、繰り返し、思った。
式典が終わると、
あのバトルの時に影に日向に私と共闘してくれた当時のミュウの主治医が来てくれた。
まだ心を揺さぶられていたので、よく覚えていないけど、
「前園長はよくあそこまで言われた。あの時のおかあさんのエネルギーがここまで実った」
という意味のことを言ってくださったような記憶がある。
当時のことを知っている保護者も数人、
「すごい話だった。感動して涙が出た」
「あれだけの立場のある人が、あんなに率直に。前園長、すごい」
「spitzibaraさん、本当に頑張ったよね」などと口々に言ってくれた。
でも、そんな思いでみんなが傷つきながら年月をかけて築き上げてきたものも、
失われるのはあっという間だったりする。
そんな中で、改めて信頼関係を築こうとする新体制への働きかけには、
当時のことを何も知らない保護者から、最近は非難を浴びせられていたりもする。
余計なことをするな、園にはただ感謝していろ、
世話になっているのに批判がましいことを言うな、
スタッフは大変なのに分かっているのか、などなど。
今の療育園だって、何もしないでできたわけじゃない――。
それに、裏で不平を鳴らし散々な批判をしながら、
面と向かってはただ「ありがとうございます」「お世話になります」と頭を下げたり
我が子だけを守り、我が子だけはよくしてもらおうと立ちまわったりすることは、
園と保護者の間に、決して本当の信頼関係など作らない――。
非難を受けるたび、そう言いたい思いがこみ上げるけれど、
10年以上も前からの複雑な事情をかみ砕いて説明することの不可能と、
自分のしてきたことを自分で語ることへの抵抗感と
そして何よりも、同じ立場の人の無理解からの傷つきで、
何も言えず、聞き流してきた。
黙って、私なりに新体制に働きかけながら、
また時間をかけてスタッフからも保護者からも理解を得ていくしかない、と考えてきた。
それでも、時に
もともと私が間違っているのだろうか、私は無用に人を傷つけているだけではないのか、と
もの思いにとらわれて苦しむことだって、ないわけではない。
前園長は現在は副所長なので、
私が療育園の新体制に対してそんな小さな働きかけを続けていることは知っているし、
そこで私が訴えていること、やろうとしていることも理解してもらっているけれど、
「あの時」のことがあるからこそ、今度は副所長として上から介入することは自分はしない、
そういうことなのだろうと、私なりに前園長の姿勢を理解してきた。
まさか
リハセンターにお世話になってきた24年間で私が一番手ひどく傷つけたに違いない、その人が、
「ここにいる若い職員」に向けて、今の療育園は何もなくしてできたわけじゃないのだと、
保護者の声を聞き、保護者から学べと、こんな形でメッセージを送ってくれるなんて……。
こんなことが本当に人生に起こって、いいのだろうか……。
それほど、「ありえない」ことが起こった日だった。
私にとって、生涯忘れられない日になった。
そして1日経った今日、
このブログは訪問者カウントが30万を超えました。
みなさん、本当にありがとう。
今日、記念式典があった。
関係者のあいさつや祝辞があり、その後、
子どもたちの20年間をたどるスライドがあって、
(みんな小さくて可愛くて笑顔がキラキラしていて、スタッフもまだまだ若くて……。
一枚ごとにどよめき笑いながら、通り過ぎた年月を振り返って、それぞれ感慨に浸りました)
最後に、初代園長である前園長が「20年の歩み」を話すために登壇。
一小児科医としてリハセンターに赴任し、やがて重心施設が開設されると、
重心施設の経験もないまま初代園長となり、慣れぬことに苦労しながらも模索と勉強を重ねつつ、
医師としては医療を第一に考えてやっていった……などなどが語られている頃、
私の隣では、非日常的な雰囲気にテンションが上がり気味だったミュウが
遠くに座っているイケメンのドクターに手を振り上げて大声で呼びかけたりし始めたので、
私は彼女をなだめたり、ペンと紙を持たせてみたり、つい話から注意が逸れてしまった。
そこへ、ふと耳に飛び込んできたのは
「保護者の不満が噴出した」「私は針のむしろに座っている気分だった」という話の断片。
え……?
もしかして……あの時の、こと……?
10年以上も前に(今日の前園長の話では平成11年)、私は療育園で
「師長&園長」vs「保護者一人」という激しいバトルを闘ったことがある。
そのことは、以下のエントリーに少し書いているし、
所長室の灰皿(2011/4/20)
ちょうど10年前に書いた『海のいる風景』という本にも
その時のことを書いた「闘い」という章がある。
でも、それは、こんな祝典の場で持ち出すような話ではないはずで……?
しかし、どうやら前園長は、この晴れの日に式典の演台から、
本当に「あの時」のことを詳細に語ろうとしているらしい。
その事件で前園長を「針のむしろ」に座らせた当の「保護者」としては、
にわかに落ち着かない気分となり、
この話、いったいどこへ向かって行くんだろう……。
ちょっと不安になりつつ聞いていると、
その後の前園長の話はおおむね以下のように続いていった。
それまで私は一小児科医として医療のことには尽力してきたけれど
現場のことは看護科と育成課に任せきりにしていた。
保護者から厳しいお叱りを受けて、
私も気が短いから「逆ギレする園長だ」と言われたこともあったけれど、
保護者と話し合い、保護者が望んでいることを理解し、保護者から学ぼうと努めながら、
自分なりに療育委員会その他各種委員会の設置、個人懇談や連絡ノートの創設、
職員研修を保護者にも開放して一緒に学ぶ場を作る、
その研修で年に一度保護者に話してもらい
保護者の言葉から直接職員が学ぶ機会とするなど、
様々な改革を実行した。
十分だったとは思わないが、
保護者から一定のご理解を得ることができたと思っている。
そうして、あの時に自分は一小児科医から園長になれたのだと思う。
療育園の現在の理念も、その時に私が作ったもの。
我が療育園の理念には「保護者とともに療育の向上に努めます」という言葉が入っている。
これは日本の多くの重心施設の中でも珍しいのではないかと思うが、
私は理念の中で、ここの「保護者とともに」の部分が一番大切な個所だと考えている。
保護者との信頼関係なくして、よい療育はあり得ない。
あの時のことは、私の長い療育園人生の中で
どうしても忘れることのできない、最も大きな出来事。
そのおかげで今の療育園がある。
感謝している。
このことは、今日ここにいる若い職員にも
聞いておいてほしい。
途中から、
ありえないことが目の前で起こっている……という思いで聞いた。
園長を退かれる時に挨拶のメールを入れたら、
「あの時は苦しんだけれど、あの時に自分は一小児科医から園長になれた。
あなたのことは恩人だと思っている」と返事をもらったことはある。
だけど、それは前園長と私の間でのこと。
こんな場所で、こんなふうに公言されることとは、ぜんぜん違う。
なんという人なのだ……と、ほとんど呆然とした。
私はなんと稀有な出会いに恵まれたことだろう、
私はなんと幸せな人なのだろう……と、
10年以上前の所長の言葉を今にして知らされた去年4月と同じことを
繰り返し、繰り返し、思った。
式典が終わると、
あのバトルの時に影に日向に私と共闘してくれた当時のミュウの主治医が来てくれた。
まだ心を揺さぶられていたので、よく覚えていないけど、
「前園長はよくあそこまで言われた。あの時のおかあさんのエネルギーがここまで実った」
という意味のことを言ってくださったような記憶がある。
当時のことを知っている保護者も数人、
「すごい話だった。感動して涙が出た」
「あれだけの立場のある人が、あんなに率直に。前園長、すごい」
「spitzibaraさん、本当に頑張ったよね」などと口々に言ってくれた。
でも、そんな思いでみんなが傷つきながら年月をかけて築き上げてきたものも、
失われるのはあっという間だったりする。
そんな中で、改めて信頼関係を築こうとする新体制への働きかけには、
当時のことを何も知らない保護者から、最近は非難を浴びせられていたりもする。
余計なことをするな、園にはただ感謝していろ、
世話になっているのに批判がましいことを言うな、
スタッフは大変なのに分かっているのか、などなど。
今の療育園だって、何もしないでできたわけじゃない――。
それに、裏で不平を鳴らし散々な批判をしながら、
面と向かってはただ「ありがとうございます」「お世話になります」と頭を下げたり
我が子だけを守り、我が子だけはよくしてもらおうと立ちまわったりすることは、
園と保護者の間に、決して本当の信頼関係など作らない――。
非難を受けるたび、そう言いたい思いがこみ上げるけれど、
10年以上も前からの複雑な事情をかみ砕いて説明することの不可能と、
自分のしてきたことを自分で語ることへの抵抗感と
そして何よりも、同じ立場の人の無理解からの傷つきで、
何も言えず、聞き流してきた。
黙って、私なりに新体制に働きかけながら、
また時間をかけてスタッフからも保護者からも理解を得ていくしかない、と考えてきた。
それでも、時に
もともと私が間違っているのだろうか、私は無用に人を傷つけているだけではないのか、と
もの思いにとらわれて苦しむことだって、ないわけではない。
前園長は現在は副所長なので、
私が療育園の新体制に対してそんな小さな働きかけを続けていることは知っているし、
そこで私が訴えていること、やろうとしていることも理解してもらっているけれど、
「あの時」のことがあるからこそ、今度は副所長として上から介入することは自分はしない、
そういうことなのだろうと、私なりに前園長の姿勢を理解してきた。
まさか
リハセンターにお世話になってきた24年間で私が一番手ひどく傷つけたに違いない、その人が、
「ここにいる若い職員」に向けて、今の療育園は何もなくしてできたわけじゃないのだと、
保護者の声を聞き、保護者から学べと、こんな形でメッセージを送ってくれるなんて……。
こんなことが本当に人生に起こって、いいのだろうか……。
それほど、「ありえない」ことが起こった日だった。
私にとって、生涯忘れられない日になった。
そして1日経った今日、
このブログは訪問者カウントが30万を超えました。
みなさん、本当にありがとう。
2012.08.17 / Top↑
CA州、ナパ・ヴァレー在住のRichard Marshさんへの
Guardian紙の独占インタビュー。
2009年5月20日に脳卒中で倒れてロックト・イン症候群に。
当時60歳。元警察官・教師。
2日後に意識を回復したが、
瞬き以外には全身のうち自由になるところはなかった。
永続的植物状態で知的機能も身体感覚もないとする医師らが
妻に呼吸器を止めてもよいかと相談するのを
ただ見ているしかなかったが、
命が助かる可能性は2%で、仮に助かっても植物状態になると
妻に向かって説明されているのを聞いた時には
心の中でNO!と叫んだ、という。
身体の感覚はあり触れられると分かったし、
認知能力は十全だったというMarshさんは、
自分は生きたいと望み、呼吸器を外さないでくれと願いつつ
それを誰にも訴えることができないまま煩悶していたと言い、
妻が呼吸器のスイッチは切れないと答えた時のことを思い出すと、
今でもおいおい泣けてくるのだという。
幸いなことに3日目に一人の医師が彼を間近で覗きこんで、
「もしかしたら、意識まだあるかも。様子を見ましょう」と言った。
そして、その医師が、瞬きでコミュニケートできることに気づいてくれた。
Marshさんの回復は指先から少しずつ動かせるようになり、
そこから手へ腕へと広がっていった。
4カ月と9日後、Marshさんは歩いて介護施設を後にし、
現在、機能で言えば95%回復している。
脳卒中を起こした人の1%がロックトイン症候群になり、
そのうち90%は4カ月以内に死ぬという。
なぜMarshさんは回復したのか、わかっていない。
Marshさん自身は
「何で私が回復したのかなんて医師には分からないよ。
そもそも私がなぜロックト・インになったのかも、
それをどう治療するかも医師にはわからなかったんだから。
私が会った医師や医療職には、
ロックト・インが何かすら知らない人だって多かったし、
何か知っていることがあるとすれば、たいてい医学生の時に
何行か説明を読んだことがあるくらいのことだった。
ちゃんと知識のある人は一人もいなかった」
その他、
「私の脳が守ってくれたんだと思う。
状況の深刻さを把握できない状態にしておいてくれた。
妙な話なんだけど、コワいと感じた記憶はないんだよ。
認知能力は100%だというのは分かっていた。
考えることもできたし耳も聞こえたし実際に聞いていたけど、
話すことも動くこともできなかった。
医師はただベッドの足もとに立って、
まるで私が部屋にいないかのように話をした。
大声を出したかったね。みんな、おれはまだここにいるぞ!ってね。
でも、それを知らせる方法がなかったんだ」
「すべてのニーズがケアしてくれる人のされるがままになってしまうのは
信じられないほどのフラストレーションだったけど、
意識が鮮明でなくなったことはなかった。
周りで起きていることはすべて分かっていたし、
それは最初からずっとそうだった。
薬で意識がなくならない限りはね」
「昼間は、本当にラッキーだった。
妻と子供の誰かがずっとそばにいるようにしてくれたから。
でも家族が帰ると寂しかった。
人にいてほしいという寂しさではなくて、
誰も意志疎通の方法を知ってくれている人がいないとわかっている寂しさ」
昼間のケアには問題はなかったが、
夜間は無資格だったり経験の少ないスタッフがいるため、
乱暴に扱われてけがをしたことがあった。
そういうことが起きるのは必ず夜だった。
Marshさんは「死ぬ権利」論争には意見はないという。
ただ、「そういう人の絶望と、
どうしてそういう気持ちになるかというのは分かる」
しかし、ロックト・イン症候群の患者と家族に
希望を感じてもらい、情報を提供すべく
共著を書いているところだという。
「最初にたぶんロックト・インだと言われた時に、
家族はインターネットで情報を探そうとしたのだけれど、なかった。
だから私がやりたい目的の一つは、そういう状況を変えること……」
ロックト・インの時には、まるで時間が止まったように思えたというMarshさんは
「それは身を置くには本当に恐ろしいところだけれど、
希望はいつだってある。希望を持たないと」
Locked-in syndrome: rare survivor Richard Marsh recounts his ordeal
The Guardian, August 7, 2012
これまで当ブログで拾った回復事例については、以下のエントリーにリンク一覧があります ↓
英国で、またも“脳死”からの回復事例(2012/4/30)
また、この記事でも言及されている、
英国で死ぬ権利を求めて訴訟を起こしているロックトイン症候群の患者、
Tony Nicklinsonさんについては、こちら ↓
“ロックト・イン症候群”の男性が「妻に殺してもらう権利」求め提訴(英)(2010/7/20)
自殺幇助希望の“ロックト・イン”患者Nicklinson訴訟で判決(2012/3/13)
自殺幇助訴訟のNicklinsonさん、ツイッターを始める(2012/7/2)
Guardian紙の独占インタビュー。
2009年5月20日に脳卒中で倒れてロックト・イン症候群に。
当時60歳。元警察官・教師。
2日後に意識を回復したが、
瞬き以外には全身のうち自由になるところはなかった。
永続的植物状態で知的機能も身体感覚もないとする医師らが
妻に呼吸器を止めてもよいかと相談するのを
ただ見ているしかなかったが、
命が助かる可能性は2%で、仮に助かっても植物状態になると
妻に向かって説明されているのを聞いた時には
心の中でNO!と叫んだ、という。
身体の感覚はあり触れられると分かったし、
認知能力は十全だったというMarshさんは、
自分は生きたいと望み、呼吸器を外さないでくれと願いつつ
それを誰にも訴えることができないまま煩悶していたと言い、
妻が呼吸器のスイッチは切れないと答えた時のことを思い出すと、
今でもおいおい泣けてくるのだという。
幸いなことに3日目に一人の医師が彼を間近で覗きこんで、
「もしかしたら、意識まだあるかも。様子を見ましょう」と言った。
そして、その医師が、瞬きでコミュニケートできることに気づいてくれた。
Marshさんの回復は指先から少しずつ動かせるようになり、
そこから手へ腕へと広がっていった。
4カ月と9日後、Marshさんは歩いて介護施設を後にし、
現在、機能で言えば95%回復している。
脳卒中を起こした人の1%がロックトイン症候群になり、
そのうち90%は4カ月以内に死ぬという。
なぜMarshさんは回復したのか、わかっていない。
Marshさん自身は
「何で私が回復したのかなんて医師には分からないよ。
そもそも私がなぜロックト・インになったのかも、
それをどう治療するかも医師にはわからなかったんだから。
私が会った医師や医療職には、
ロックト・インが何かすら知らない人だって多かったし、
何か知っていることがあるとすれば、たいてい医学生の時に
何行か説明を読んだことがあるくらいのことだった。
ちゃんと知識のある人は一人もいなかった」
その他、
「私の脳が守ってくれたんだと思う。
状況の深刻さを把握できない状態にしておいてくれた。
妙な話なんだけど、コワいと感じた記憶はないんだよ。
認知能力は100%だというのは分かっていた。
考えることもできたし耳も聞こえたし実際に聞いていたけど、
話すことも動くこともできなかった。
医師はただベッドの足もとに立って、
まるで私が部屋にいないかのように話をした。
大声を出したかったね。みんな、おれはまだここにいるぞ!ってね。
でも、それを知らせる方法がなかったんだ」
「すべてのニーズがケアしてくれる人のされるがままになってしまうのは
信じられないほどのフラストレーションだったけど、
意識が鮮明でなくなったことはなかった。
周りで起きていることはすべて分かっていたし、
それは最初からずっとそうだった。
薬で意識がなくならない限りはね」
「昼間は、本当にラッキーだった。
妻と子供の誰かがずっとそばにいるようにしてくれたから。
でも家族が帰ると寂しかった。
人にいてほしいという寂しさではなくて、
誰も意志疎通の方法を知ってくれている人がいないとわかっている寂しさ」
昼間のケアには問題はなかったが、
夜間は無資格だったり経験の少ないスタッフがいるため、
乱暴に扱われてけがをしたことがあった。
そういうことが起きるのは必ず夜だった。
Marshさんは「死ぬ権利」論争には意見はないという。
ただ、「そういう人の絶望と、
どうしてそういう気持ちになるかというのは分かる」
しかし、ロックト・イン症候群の患者と家族に
希望を感じてもらい、情報を提供すべく
共著を書いているところだという。
「最初にたぶんロックト・インだと言われた時に、
家族はインターネットで情報を探そうとしたのだけれど、なかった。
だから私がやりたい目的の一つは、そういう状況を変えること……」
ロックト・インの時には、まるで時間が止まったように思えたというMarshさんは
「それは身を置くには本当に恐ろしいところだけれど、
希望はいつだってある。希望を持たないと」
Locked-in syndrome: rare survivor Richard Marsh recounts his ordeal
The Guardian, August 7, 2012
これまで当ブログで拾った回復事例については、以下のエントリーにリンク一覧があります ↓
英国で、またも“脳死”からの回復事例(2012/4/30)
また、この記事でも言及されている、
英国で死ぬ権利を求めて訴訟を起こしているロックトイン症候群の患者、
Tony Nicklinsonさんについては、こちら ↓
“ロックト・イン症候群”の男性が「妻に殺してもらう権利」求め提訴(英)(2010/7/20)
自殺幇助希望の“ロックト・イン”患者Nicklinson訴訟で判決(2012/3/13)
自殺幇助訴訟のNicklinsonさん、ツイッターを始める(2012/7/2)
2012.08.17 / Top↑
いただきもので、
以下の論文を読みました。
「人が回復する」ということについて
――著者と中村ユキさんのレジリエンスの獲得を通しての検討――
夏苅郁子 精神神経学雑誌 第113巻第9号(2011) 845-852頁
アブストラクトは
統合失調症の家族支援は、服薬管理、症状への対応など患者に主体を置いたものが多かったが、患者の家族の心理状態を主体に論じたものは少ない。さらに、統合失調症者を母親に持つ子共達への支援は本邦ではほとんどない。地域の家族会も、患者が子ども、親が家族の場合がほとんどである。精神疾患をわずらう人を親に持つ子供達は、実際は重大なストレスを抱えているにもかかわらずどこへも相談できない状況下にある。
著者の母親は統合失調症であった。またマンガ「わが家の母はビョーキです」の著者で漫画家の中村ユキさんの母も、統合失調症であった。共に子供時代に母親の発症を経験した。その影響は深刻で、実際に著者は慢性的な希死念慮を抱え、ユキさんは性への執着を持たない青年期を過ごした。
本論文は著者とユキさんの数十年をかけて回復した過程を記述し、過酷な状況下にある人がレジリエンス(回復力)を獲得することを論じたものである。さらには現在も「患者の家族」として生育途上にある多くの子供達や、患者の社会復帰を支援する人達への回復のための何らかの示唆ができないかを論じたものである。
また、著者と中村ユキさんが実名で発表することは、「精神病」という世間の先入観の是正になるのではないかと考える。本発表が、今後この分野での啓蒙・活動に寄与することを期待したい。
なお本論文の発表に当たっては、当事者・関係者の同意を得ていることを付記する。
印象的だったのは、
著者とユキさんの回復の過程にあった共通点で、
① 幼児期(母親の発症以前)の愛着体験。
② それで生活していけるだけの資質や才能があったこと。
③ 罪悪感や葛藤を抱えながらも、人生の大事な時期には母親ではなく自分自身を優先することができた。
④ 人との出会い。
私自身が娘の幼児期に陥ったうつ状態からの回復過程を振り返っても、
親との間に抱えていた問題からの回復過程を振り返っても、
(もちろん両者は切り離せないほど密接に繋がっているのだけれど)
ある程度、共通したところがあるような感じを受けるし、
もちろん私には「生活していけるだけの資質や才能」などないのだけど、この点は
「生活そのものは成り立っており、自分なりにやりたいことがあった」と
置きかえられてもよいような気もする。
個人的には、③と④が大きいのだけど、
それぞれから、さらにいろいろなことが考えられそうでもある。
介護者支援にとっても大きな参考になるのでは、と思う。
私自身、ずっと前にヤング・ケアラーの権利や支援を口にした際に、
障害者の権利擁護の立場から反射的な強い反発を受けた経験があり、
その時に感じたのは、
「自分たちは障害者の権利を求めてこんなに尽力してきたのに、
今ここでそれを言われると困る」というニュアンスの抵抗だった。
ここ最近、介護者支援についてものを言おうとして
やはり反射的に向けられてきたのも「でも介護者は加害者だったじゃないか」という抵抗だった。
精神障害者の家族が暴力を受けているというデータを紹介した時にも
反射的に向けられたのは「でも家族の方がより加害者だったじゃないか」という反発だった。
家族の方がより加害者だったという事実を私は否定するつもりはないけれど、
家族の方がより加害者であったことが歴史的事実だからといって、
暴力を受けている家族があるという今ここにある事実が事実でなくなるわけではないし、
そちらの事実には目を向けてはならない、ということにもならないと思う。
現に暴力を受けているのは個々の人であり、
そこで支援を必要としているのも個々の人だ。
その個々の人に向かって「あなたは加害者側の一人だから
あなたは自分が暴力を受ける痛みを語ってはならない」ということにも
「だからあなたが支援を求めてはならない」ということにも、ならないはずだと思う。
抑圧されてきた誰かの権利を主張するために、
他の誰かが権利を求める声を封じることもまた抑圧だろう、と思う。
まだうまく言えないけれど、最近ずっと考えていることの一つは、
介護者支援に限らず、支援というのは個々に対して行われるものだ、ということ。
介護者の抑圧性も介護され介護する関係に潜む支配―被支配の関係の危うさも
私は否定するつもりはないけれど、
その抑圧性や支配性の責が全面的に個々の介護者に負わされてしまうことは
やはり間違いではないのか、ということ。
この論文著者の夏苅さんや漫画家の中村さんが、その子ども時代に、
世の中の精神障害者を自身で直接的に抑圧したり加害したわけではないはずだ。
「ケアの社会学」の
介護者のニーズは二次的なニーズだとの主張は、
その介護者の中に生育過程の子どもも含まれていることを、どう考えるのだろう。
以下の論文を読みました。
「人が回復する」ということについて
――著者と中村ユキさんのレジリエンスの獲得を通しての検討――
夏苅郁子 精神神経学雑誌 第113巻第9号(2011) 845-852頁
アブストラクトは
統合失調症の家族支援は、服薬管理、症状への対応など患者に主体を置いたものが多かったが、患者の家族の心理状態を主体に論じたものは少ない。さらに、統合失調症者を母親に持つ子共達への支援は本邦ではほとんどない。地域の家族会も、患者が子ども、親が家族の場合がほとんどである。精神疾患をわずらう人を親に持つ子供達は、実際は重大なストレスを抱えているにもかかわらずどこへも相談できない状況下にある。
著者の母親は統合失調症であった。またマンガ「わが家の母はビョーキです」の著者で漫画家の中村ユキさんの母も、統合失調症であった。共に子供時代に母親の発症を経験した。その影響は深刻で、実際に著者は慢性的な希死念慮を抱え、ユキさんは性への執着を持たない青年期を過ごした。
本論文は著者とユキさんの数十年をかけて回復した過程を記述し、過酷な状況下にある人がレジリエンス(回復力)を獲得することを論じたものである。さらには現在も「患者の家族」として生育途上にある多くの子供達や、患者の社会復帰を支援する人達への回復のための何らかの示唆ができないかを論じたものである。
また、著者と中村ユキさんが実名で発表することは、「精神病」という世間の先入観の是正になるのではないかと考える。本発表が、今後この分野での啓蒙・活動に寄与することを期待したい。
なお本論文の発表に当たっては、当事者・関係者の同意を得ていることを付記する。
印象的だったのは、
著者とユキさんの回復の過程にあった共通点で、
① 幼児期(母親の発症以前)の愛着体験。
② それで生活していけるだけの資質や才能があったこと。
③ 罪悪感や葛藤を抱えながらも、人生の大事な時期には母親ではなく自分自身を優先することができた。
④ 人との出会い。
私自身が娘の幼児期に陥ったうつ状態からの回復過程を振り返っても、
親との間に抱えていた問題からの回復過程を振り返っても、
(もちろん両者は切り離せないほど密接に繋がっているのだけれど)
ある程度、共通したところがあるような感じを受けるし、
もちろん私には「生活していけるだけの資質や才能」などないのだけど、この点は
「生活そのものは成り立っており、自分なりにやりたいことがあった」と
置きかえられてもよいような気もする。
個人的には、③と④が大きいのだけど、
それぞれから、さらにいろいろなことが考えられそうでもある。
介護者支援にとっても大きな参考になるのでは、と思う。
私自身、ずっと前にヤング・ケアラーの権利や支援を口にした際に、
障害者の権利擁護の立場から反射的な強い反発を受けた経験があり、
その時に感じたのは、
「自分たちは障害者の権利を求めてこんなに尽力してきたのに、
今ここでそれを言われると困る」というニュアンスの抵抗だった。
ここ最近、介護者支援についてものを言おうとして
やはり反射的に向けられてきたのも「でも介護者は加害者だったじゃないか」という抵抗だった。
精神障害者の家族が暴力を受けているというデータを紹介した時にも
反射的に向けられたのは「でも家族の方がより加害者だったじゃないか」という反発だった。
家族の方がより加害者だったという事実を私は否定するつもりはないけれど、
家族の方がより加害者であったことが歴史的事実だからといって、
暴力を受けている家族があるという今ここにある事実が事実でなくなるわけではないし、
そちらの事実には目を向けてはならない、ということにもならないと思う。
現に暴力を受けているのは個々の人であり、
そこで支援を必要としているのも個々の人だ。
その個々の人に向かって「あなたは加害者側の一人だから
あなたは自分が暴力を受ける痛みを語ってはならない」ということにも
「だからあなたが支援を求めてはならない」ということにも、ならないはずだと思う。
抑圧されてきた誰かの権利を主張するために、
他の誰かが権利を求める声を封じることもまた抑圧だろう、と思う。
まだうまく言えないけれど、最近ずっと考えていることの一つは、
介護者支援に限らず、支援というのは個々に対して行われるものだ、ということ。
介護者の抑圧性も介護され介護する関係に潜む支配―被支配の関係の危うさも
私は否定するつもりはないけれど、
その抑圧性や支配性の責が全面的に個々の介護者に負わされてしまうことは
やはり間違いではないのか、ということ。
この論文著者の夏苅さんや漫画家の中村さんが、その子ども時代に、
世の中の精神障害者を自身で直接的に抑圧したり加害したわけではないはずだ。
「ケアの社会学」の
介護者のニーズは二次的なニーズだとの主張は、
その介護者の中に生育過程の子どもも含まれていることを、どう考えるのだろう。
2012.08.17 / Top↑
8月5日のプライムタイムに放送されたTV番組が
安楽死肯定に偏った内容になっていたとして、
オーストラリア・ニュージーランド緩和医学学会(ANZZPM)からプレス・リリース。
安楽死と医師による自殺幇助は非倫理的であるとする
NZ医師会(NZMA)の「安楽死に関する立場表明」と
世界医師会のスタンスを支持する、と。
NZMAは、
仮に合法化されても非倫理的であるとの立場は変えない、としている。
ANZSPMの会長は
「緩和医学は死にゆく人と家族へのケアを高めて行くことに専念します。
患者の命を意図的に終わらせることは医師の役割ではありません。
医師が研修と教育を受けているのは治療するためであって殺すためではありません。
昨夜、TV3の番組60ミニッツは完全に安楽死肯定に変更していました。
NZ中で日々、死が差し迫った人々の苦痛を取り除くために絶え間なく尽力している
ホスピスと緩和ケアの医師と看護師の仕事について描くことをしなかったけれど、
この国の議論も、すべての国民が緩和ケアを受けられるよう、
その達成と維持を目指すべきです」
ANZSPMでは、
患者から安楽死やPASの希望があった場合には
重要なのは多職種それぞれのスキルを活用した症状のコントロールであるとし、
敬意を持って患者の要望を受け止め理解しながら、
そうした希望が起こってくる背景にある困難を考え、
それに対して緩和ケアの目的にあった適切な対応をするよう提言。
患者には生命維持治療を拒否する権利があり、
それが副次的に、意図したわけではなく、死を早める結果を招くとしても、
それは安楽死ではない、と。
Australia & NZ Society of Palliative Medicine on Euthanasia
Scoop, August 6, 2012
安楽死肯定に偏った内容になっていたとして、
オーストラリア・ニュージーランド緩和医学学会(ANZZPM)からプレス・リリース。
安楽死と医師による自殺幇助は非倫理的であるとする
NZ医師会(NZMA)の「安楽死に関する立場表明」と
世界医師会のスタンスを支持する、と。
NZMAは、
仮に合法化されても非倫理的であるとの立場は変えない、としている。
ANZSPMの会長は
「緩和医学は死にゆく人と家族へのケアを高めて行くことに専念します。
患者の命を意図的に終わらせることは医師の役割ではありません。
医師が研修と教育を受けているのは治療するためであって殺すためではありません。
昨夜、TV3の番組60ミニッツは完全に安楽死肯定に変更していました。
NZ中で日々、死が差し迫った人々の苦痛を取り除くために絶え間なく尽力している
ホスピスと緩和ケアの医師と看護師の仕事について描くことをしなかったけれど、
この国の議論も、すべての国民が緩和ケアを受けられるよう、
その達成と維持を目指すべきです」
ANZSPMでは、
患者から安楽死やPASの希望があった場合には
重要なのは多職種それぞれのスキルを活用した症状のコントロールであるとし、
敬意を持って患者の要望を受け止め理解しながら、
そうした希望が起こってくる背景にある困難を考え、
それに対して緩和ケアの目的にあった適切な対応をするよう提言。
患者には生命維持治療を拒否する権利があり、
それが副次的に、意図したわけではなく、死を早める結果を招くとしても、
それは安楽死ではない、と。
Australia & NZ Society of Palliative Medicine on Euthanasia
Scoop, August 6, 2012
2012.08.17 / Top↑
野の花ホスピスだより
徳永進 新潮文庫
四月下旬の夜中、ナースコールが鳴る。当直ナースが尿器で採尿すると「オシメノヒト、ナンニン? ジブンデタベレンヒト、ナンニン?」と東さん。「なんでそんなこと聞く?」と当直ナースは返した。
自分でおしっこの始末もできず、自分で食べられず、すべて人の世話になるのはプライドが許さん、死にたい、と東さんは答えた。ナースは優しい声で言った。
「東さんのプライドも大切にしたいけど、家族や私たちにとって、オシメした東さんでも一日でも長く生きてほしい」
東さん、突然泣き出した。「アリガトウ、イエニカエッテミタイ」
翌朝の申し送りでこの話を知った。医者のぼくの前では起こりえない出来事。
意志は変わる。確固とした意志さえ変わる。考えてみた。おそらく「本人の意志」は自分の所有物と考えやすいが、本来、他の帰属する部分が多い、のではないか。
(p.55)
「医者のぼくの前では起こり得ない」ことがあり、そういうことは、
直接その人の体に触れて日々のケアを担っている人の前でだけ起こっているということに、
どれほどの医師や生命倫理学者やその他、
障害や病気のある人についてなにごとかを論じたり決める立場にいる人たちが
気づいてくれているのだろう。
どんなに専門的な知識があっても、
おのれの体で直接に体験してみなければ分からないこと、
「それについて知っている」のではなく「それそのものを体験として知っている」のでなければ
分からないこと、知りようのないこと、というものがあるのに、
「死にたい」「死んでほしい」をめぐっても、
「分かっている」「分かっていない」をめぐっても、
すれ違ったまま埋めようのない距離は、
結局はそこのところから生じていると思うのに、
強いものが気付かない限り「聞く耳」もなく、
弱いものの言葉も訴えも届かない。
「副作用で抗がん剤、あきらめました。死ぬ覚悟はあります。でも再発したら、と悩むです」
矛盾する心は誰にも生まれる。その心をくまねばなるまい。
「再発を抑える方法、考えましょう」
「ええ」顔に光が差した。
あきらめを強いてはいけないなぁ、とこのごろ思う。患者さんの気持ちをくみ続ける、至難のわざだけど、これしかないのだろう。
(p.86)
臨床で働くと、たくさんのジレンマに出会う。本人の意志か家族の意志か、の中に生まれるジレンマ。在宅か施設かの中でのジレンマ。言う言わないのジレンマ。放ったらかし、かかわり過ぎのジレンマ。なくてさみしい、あってうるさい家族、の中でのジレンマ。生きたい、死にたい、の中でのジレンマ、ジレンマ、ジレンマ。
医療職にとって大切なことは、ジレンマに出会った時、ひと呼吸して「ああ今ここに、新鮮な、ジレンマ、あるよなあ」と思うことだろうか。すぐに結論は出さない。逃げない。するとジレンマは、思いがけないところから、融け出していくことがある。
(p.163-164)
(自分も進行がんを抱え、認知症の妻を抱え、メロンを作りながら自宅で暮らしている九十歳の患者さんのところに往診に行って)
「今一番困っていることは?」と聞いてみた。「作業衣のズボンつりが切れて、ずるですわ」
なるほど。
病気はどこかへ消えていく。参った。
(p.205-206)
ずっと前、ミュウが腸ねん転の手術後に、
痛み止めの座薬は入れてもらえないわ、点滴が漏れたら入れる技術はないわ、
かといって中心静脈にラインを取る決断もないわ、傷は化膿するわ、
けいれんが出ていると訴えても外科スタッフには意味が通じず放置されるわ、
痛み止めを入れてやってほしいと訴えると頭ごなしに怒鳴りつけられたり、
言葉途中でハエでも追い払うような仕草で棄て去っていかれたりしながら、
「医療の無理解と連日24時間ずっと闘い続けている」という気分だった時に、
病棟師長さんがベッドサイドにきて、これとまったく同じ質問をされたことがあった。
「お母さん、いま一番困っていることは、なに?」
困っていること? なんだろう……と考えた次の瞬間、
口から勝手にこぼれ出たのは、
「この子を私は守りきってやることができない……ということ」
師長さんはそれきり黙り、
そのままいなくなった。
大切なことは何だろう。関心、だと思う。関心が消えると道は閉じる。関心が湧くと道は開く。
(p.218)
【関連エントリー】
「どろどろ」と「ぎりぎり」にこそ意味がある(2008/5/14)
なだいなだの「こころ医者」から「心の磁場」とか「尊厳」とか(2010/6/3)
「医師の姿勢で薬の効き方違う」と非科学的なことを言う、緩和ケアの「こころ医者」(2010/6/3)
野の花診療所の徳永医師の「こんなときどうする?」を読んだ(2010/12/9)
徳永進 新潮文庫
四月下旬の夜中、ナースコールが鳴る。当直ナースが尿器で採尿すると「オシメノヒト、ナンニン? ジブンデタベレンヒト、ナンニン?」と東さん。「なんでそんなこと聞く?」と当直ナースは返した。
自分でおしっこの始末もできず、自分で食べられず、すべて人の世話になるのはプライドが許さん、死にたい、と東さんは答えた。ナースは優しい声で言った。
「東さんのプライドも大切にしたいけど、家族や私たちにとって、オシメした東さんでも一日でも長く生きてほしい」
東さん、突然泣き出した。「アリガトウ、イエニカエッテミタイ」
翌朝の申し送りでこの話を知った。医者のぼくの前では起こりえない出来事。
意志は変わる。確固とした意志さえ変わる。考えてみた。おそらく「本人の意志」は自分の所有物と考えやすいが、本来、他の帰属する部分が多い、のではないか。
(p.55)
「医者のぼくの前では起こり得ない」ことがあり、そういうことは、
直接その人の体に触れて日々のケアを担っている人の前でだけ起こっているということに、
どれほどの医師や生命倫理学者やその他、
障害や病気のある人についてなにごとかを論じたり決める立場にいる人たちが
気づいてくれているのだろう。
どんなに専門的な知識があっても、
おのれの体で直接に体験してみなければ分からないこと、
「それについて知っている」のではなく「それそのものを体験として知っている」のでなければ
分からないこと、知りようのないこと、というものがあるのに、
「死にたい」「死んでほしい」をめぐっても、
「分かっている」「分かっていない」をめぐっても、
すれ違ったまま埋めようのない距離は、
結局はそこのところから生じていると思うのに、
強いものが気付かない限り「聞く耳」もなく、
弱いものの言葉も訴えも届かない。
「副作用で抗がん剤、あきらめました。死ぬ覚悟はあります。でも再発したら、と悩むです」
矛盾する心は誰にも生まれる。その心をくまねばなるまい。
「再発を抑える方法、考えましょう」
「ええ」顔に光が差した。
あきらめを強いてはいけないなぁ、とこのごろ思う。患者さんの気持ちをくみ続ける、至難のわざだけど、これしかないのだろう。
(p.86)
臨床で働くと、たくさんのジレンマに出会う。本人の意志か家族の意志か、の中に生まれるジレンマ。在宅か施設かの中でのジレンマ。言う言わないのジレンマ。放ったらかし、かかわり過ぎのジレンマ。なくてさみしい、あってうるさい家族、の中でのジレンマ。生きたい、死にたい、の中でのジレンマ、ジレンマ、ジレンマ。
医療職にとって大切なことは、ジレンマに出会った時、ひと呼吸して「ああ今ここに、新鮮な、ジレンマ、あるよなあ」と思うことだろうか。すぐに結論は出さない。逃げない。するとジレンマは、思いがけないところから、融け出していくことがある。
(p.163-164)
(自分も進行がんを抱え、認知症の妻を抱え、メロンを作りながら自宅で暮らしている九十歳の患者さんのところに往診に行って)
「今一番困っていることは?」と聞いてみた。「作業衣のズボンつりが切れて、ずるですわ」
なるほど。
病気はどこかへ消えていく。参った。
(p.205-206)
ずっと前、ミュウが腸ねん転の手術後に、
痛み止めの座薬は入れてもらえないわ、点滴が漏れたら入れる技術はないわ、
かといって中心静脈にラインを取る決断もないわ、傷は化膿するわ、
けいれんが出ていると訴えても外科スタッフには意味が通じず放置されるわ、
痛み止めを入れてやってほしいと訴えると頭ごなしに怒鳴りつけられたり、
言葉途中でハエでも追い払うような仕草で棄て去っていかれたりしながら、
「医療の無理解と連日24時間ずっと闘い続けている」という気分だった時に、
病棟師長さんがベッドサイドにきて、これとまったく同じ質問をされたことがあった。
「お母さん、いま一番困っていることは、なに?」
困っていること? なんだろう……と考えた次の瞬間、
口から勝手にこぼれ出たのは、
「この子を私は守りきってやることができない……ということ」
師長さんはそれきり黙り、
そのままいなくなった。
大切なことは何だろう。関心、だと思う。関心が消えると道は閉じる。関心が湧くと道は開く。
(p.218)
【関連エントリー】
「どろどろ」と「ぎりぎり」にこそ意味がある(2008/5/14)
なだいなだの「こころ医者」から「心の磁場」とか「尊厳」とか(2010/6/3)
「医師の姿勢で薬の効き方違う」と非科学的なことを言う、緩和ケアの「こころ医者」(2010/6/3)
野の花診療所の徳永医師の「こんなときどうする?」を読んだ(2010/12/9)
2012.08.17 / Top↑
英国のBaby X“無益な治療”訴訟. 事故で重症の脳損傷を負った1歳児。信心深い両親は命ある限り希望があると生命維持の継続を希望したが、ロンドンの高等裁判所が周囲のことも分からず、両親も分かっておらずやりとりもない、笑うこともない、人間としての本能も生きたいと望む気持ちもない、状態が改善するなんて現実的ではない、とする専門家の意見を入れて、緩和ケアへの切り替えが本人の最善の利益だとの判決。:すっごく気になるのは、この記事によると男児は「昏睡」状態であって、脳死だとか植物状態だと診断されているわけではない、と思われること。⇒脳損傷の昏睡は終末期の意識喪失とは別: 臓器提供の勧誘は自制を(2012/7/20)
http://medicalfutility.blogspot.jp/2012/08/nhs-trust-v-baby-x-british-court-orders.html?utm_source=feedburner&utm_medium=feed&utm_campaign=Feed:+MedicalFutilityBlog+%28Medical+Futility+Blog%29
11月にPAS合法化をめぐる住民投票が行われるMA州で、著名医師らの論争。
http://articles.boston.com/2012-08-03/health-wellness/32949970_1_physician-patients-medical-students
ロシアの大富豪Dmitry Itskovの「2045イニシアチブ」とは、脳を人造の肉体に移植することによって不死を実現する研究。:こういう筋の話は当分ご無沙汰になっていますが、「トランスヒューマ二ズム」の書庫にあれこれ。07年のA療法論争の頃にはTH二ストもずいぶんと「突飛な人たち」と思えたものですが、世の中がこの5年で彼らにずいぶん追いついてきた感じ。
http://www.bioedge.org/index.php/bioethics/bioethics_article/10179
マラリア・ワクチンは蚊の進化を促して、むしろ患者には害になると論文。:マラリア蚊は遺伝子変異の速度が速いのでワクチン開発は無理だというのはもう何年も前から指摘されていた、と思う。⇒公衆衛生でマラリア死8割減のエリトリアから「製薬会社株主ビル・ゲイツのワクチン開発」批判(2011/8/2)
http://www.bioedge.org/index.php/bioethics/bioethics_article/10181
【その他、ゲイツ財団とマラリア撲滅関連エントリー】
ゲイツ財団、英政府と並びマラリラ撲滅に資金提供(2008/9/30)
副作用分かっているのに抗マラリア薬で自殺や障害?(2008/10/14)
マラリア撲滅も新興テクノロジーによる合成薬で(2008/11/21)
ゲイツ財団の資金で開発期待されるマラリア・ワクチン(2008/12/14)
ナミビアでHIVに感染した女性が同意なしに不妊手術を行われている。:これも10年に既に明らかになっていた。⇒ナミビアでHIV感染女性への強制不妊手術にデモ(2010/6/2)
http://www.bioedge.org/index.php/bioethics/bioethics_article/10182
強制不妊はウズベキスタン、インドでも。
ウズベキスタンで強制不妊:人口抑制と州産期死亡率を落とす手段として(2012/4/23)
インドの貧困層への不妊プログラム、英国政府の資金で『温暖化防止のため』(2012/6/12)
タイ、日本、ペルーでも。
知的障害・貧困を理由にした強制不妊手術は過去の話ではない(2010/3/23)
その他の関連エントリーは、以下のエントリーにリンク一覧。
世界医師会が『強制不妊は医療の誤用、医療倫理違反、人権侵害(2011/9/12)
米・英政府とゲイツ財団とUNPFにより優生施策、7月には国際会議も?(2012/6/7)
日本語。スペインで売春組織摘発、女性をバーコードの入れ墨で管理
http://www.cnn.co.jp/world/30006025.html
日本語。若者が少女を集団レイプ、携帯で写した動画出回る 南ア
http://www.cnn.co.jp/world/30006304.html
日本語。不定の罪着せられた女性を公開銃殺、映像で回る アフガン
http://www.cnn.co.jp/world/30007273.html
日本語。不倫の男女を石打ちの処刑、マリのイスラム勢力支配地域
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120803-35020022-cnn-int
2010年にイランでも姦淫の疑いで既に鞭打ちの刑を受けた女性に投石処刑が決まり、国際世論の批判が高まったことがあった。↓
http://blogs.yahoo.co.jp/spitzibara/61065951.html
http://blogs.yahoo.co.jp/spitzibara/61356541.html
http://medicalfutility.blogspot.jp/2012/08/nhs-trust-v-baby-x-british-court-orders.html?utm_source=feedburner&utm_medium=feed&utm_campaign=Feed:+MedicalFutilityBlog+%28Medical+Futility+Blog%29
11月にPAS合法化をめぐる住民投票が行われるMA州で、著名医師らの論争。
http://articles.boston.com/2012-08-03/health-wellness/32949970_1_physician-patients-medical-students
ロシアの大富豪Dmitry Itskovの「2045イニシアチブ」とは、脳を人造の肉体に移植することによって不死を実現する研究。:こういう筋の話は当分ご無沙汰になっていますが、「トランスヒューマ二ズム」の書庫にあれこれ。07年のA療法論争の頃にはTH二ストもずいぶんと「突飛な人たち」と思えたものですが、世の中がこの5年で彼らにずいぶん追いついてきた感じ。
http://www.bioedge.org/index.php/bioethics/bioethics_article/10179
マラリア・ワクチンは蚊の進化を促して、むしろ患者には害になると論文。:マラリア蚊は遺伝子変異の速度が速いのでワクチン開発は無理だというのはもう何年も前から指摘されていた、と思う。⇒公衆衛生でマラリア死8割減のエリトリアから「製薬会社株主ビル・ゲイツのワクチン開発」批判(2011/8/2)
http://www.bioedge.org/index.php/bioethics/bioethics_article/10181
【その他、ゲイツ財団とマラリア撲滅関連エントリー】
ゲイツ財団、英政府と並びマラリラ撲滅に資金提供(2008/9/30)
副作用分かっているのに抗マラリア薬で自殺や障害?(2008/10/14)
マラリア撲滅も新興テクノロジーによる合成薬で(2008/11/21)
ゲイツ財団の資金で開発期待されるマラリア・ワクチン(2008/12/14)
ナミビアでHIVに感染した女性が同意なしに不妊手術を行われている。:これも10年に既に明らかになっていた。⇒ナミビアでHIV感染女性への強制不妊手術にデモ(2010/6/2)
http://www.bioedge.org/index.php/bioethics/bioethics_article/10182
強制不妊はウズベキスタン、インドでも。
ウズベキスタンで強制不妊:人口抑制と州産期死亡率を落とす手段として(2012/4/23)
インドの貧困層への不妊プログラム、英国政府の資金で『温暖化防止のため』(2012/6/12)
タイ、日本、ペルーでも。
知的障害・貧困を理由にした強制不妊手術は過去の話ではない(2010/3/23)
その他の関連エントリーは、以下のエントリーにリンク一覧。
世界医師会が『強制不妊は医療の誤用、医療倫理違反、人権侵害(2011/9/12)
米・英政府とゲイツ財団とUNPFにより優生施策、7月には国際会議も?(2012/6/7)
日本語。スペインで売春組織摘発、女性をバーコードの入れ墨で管理
http://www.cnn.co.jp/world/30006025.html
日本語。若者が少女を集団レイプ、携帯で写した動画出回る 南ア
http://www.cnn.co.jp/world/30006304.html
日本語。不定の罪着せられた女性を公開銃殺、映像で回る アフガン
http://www.cnn.co.jp/world/30007273.html
日本語。不倫の男女を石打ちの処刑、マリのイスラム勢力支配地域
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120803-35020022-cnn-int
2010年にイランでも姦淫の疑いで既に鞭打ちの刑を受けた女性に投石処刑が決まり、国際世論の批判が高まったことがあった。↓
http://blogs.yahoo.co.jp/spitzibara/61065951.html
http://blogs.yahoo.co.jp/spitzibara/61356541.html
2012.08.17 / Top↑
米国で貧困層や障害者への支援を打ち切る州が相次いでいる(2012/7/23)のエントリーで
17日のNYTの社説を紹介しましたが、
NYTは引き続き28日にも
メディケイド拡大を拒否する州への懸念の社説を掲載しています。
当ブログでも何度か触れたことのあるオバマ大統領による医療保険制度改革、
いわゆる「オバマ・ケア」が個人に対して健康保険への加入を義務付けている点について
保守層から違憲だとして提訴されていた問題で、
6月28日に米連邦最高裁は合憲と判断。
ただし、
「連邦政府が国民に保険加入を強要する権限はないが、
健康保険に加入していない国民に税を貸す権限はある」と
あくまでも増税と解釈してのもの。
また、メディケイドの対象拡大の規定で
拡大しない州に対する政府の補助金を打ち切るとした部分には撤回を求めた。
【参照】
米最高裁、医療保険改革法に合憲判断 「国民の勝利」とオバマ大統領
CNN jp, June 29, 2012
この点について、上記のNYTの社説は
「メディケイドの拡大がoptionalとなった」という書き方をしている。
このため
貧困層の多い州や現行のメディケア維持にも苦労している州は拡大しないだろう、と
米国議会予算局はこれまでの予測データを見直し、
そうなると、実際には
新法が求める拡大を全州が実施した場合に対象となるはずの人数の
3分の2しか対象にならないのではないか、と予測し、
その予測に基づいて
連邦政府は2022年までに840億ドルの補助金のコストカットとなる一方で、
2022年には無保険者が300万人も増える、と試算。
一方、
The New England Journal of Medicineに報告されたハーバード大の研究で、
既に子どものいない成人と障害のある成人でメディケイドを拡大したNY、AZ、ME3州と、
近隣4州とを比較したところ、
前者では20歳から64歳の死亡件数が年間約1500件であったのに対して、
後者では死亡率が上昇。
また、拡大によって、
費用のために受診が遅れるケースが21%減少。
社説は、
Leaving low-income people uninsured will almost certainly damage their health.
低所得者を無保険のままにしておくことは、ほぼ間違いなく彼らの健康を損なう。
と書き、以下のように結論している。
……State officials who want to save money by not expanding Medicaid will be harming their most vulnerable residents, and will most likely shift the cost of any emergency care they need to safety net institutions, taxpayers and charities.
メディケアを拡大しないことで経費削減を図る州の官僚たちは、自分の州の最も弱い住民を害し、彼らが必要とする救急医療コストのことごとくを、ほぼ間違いなく、安全網機関、納税者とチャリティに付け回すこととなるだろう。
Medicaid After the Supreme Court Decision
NYT, July 28, 2012
【関連エントリー】
「なぜ大国アメリカで?」と医師が憤る無保険者の実態(2008/11/11)
↓
上記の記事を別記事のショッキングな写真と一緒に再掲したものが以下。
http://blogs.yahoo.co.jp/spitzibara/54711663.html
子どもたちに経済不況の影響、深刻(米国)(2009/4/23)
自己決定と選択の自由は米国の国民性DNA?(2009/9/8)
この10年で医療を受けられない米国人が激増(2012/5/31)
17日のNYTの社説を紹介しましたが、
NYTは引き続き28日にも
メディケイド拡大を拒否する州への懸念の社説を掲載しています。
当ブログでも何度か触れたことのあるオバマ大統領による医療保険制度改革、
いわゆる「オバマ・ケア」が個人に対して健康保険への加入を義務付けている点について
保守層から違憲だとして提訴されていた問題で、
6月28日に米連邦最高裁は合憲と判断。
ただし、
「連邦政府が国民に保険加入を強要する権限はないが、
健康保険に加入していない国民に税を貸す権限はある」と
あくまでも増税と解釈してのもの。
また、メディケイドの対象拡大の規定で
拡大しない州に対する政府の補助金を打ち切るとした部分には撤回を求めた。
【参照】
米最高裁、医療保険改革法に合憲判断 「国民の勝利」とオバマ大統領
CNN jp, June 29, 2012
この点について、上記のNYTの社説は
「メディケイドの拡大がoptionalとなった」という書き方をしている。
このため
貧困層の多い州や現行のメディケア維持にも苦労している州は拡大しないだろう、と
米国議会予算局はこれまでの予測データを見直し、
そうなると、実際には
新法が求める拡大を全州が実施した場合に対象となるはずの人数の
3分の2しか対象にならないのではないか、と予測し、
その予測に基づいて
連邦政府は2022年までに840億ドルの補助金のコストカットとなる一方で、
2022年には無保険者が300万人も増える、と試算。
一方、
The New England Journal of Medicineに報告されたハーバード大の研究で、
既に子どものいない成人と障害のある成人でメディケイドを拡大したNY、AZ、ME3州と、
近隣4州とを比較したところ、
前者では20歳から64歳の死亡件数が年間約1500件であったのに対して、
後者では死亡率が上昇。
また、拡大によって、
費用のために受診が遅れるケースが21%減少。
社説は、
Leaving low-income people uninsured will almost certainly damage their health.
低所得者を無保険のままにしておくことは、ほぼ間違いなく彼らの健康を損なう。
と書き、以下のように結論している。
……State officials who want to save money by not expanding Medicaid will be harming their most vulnerable residents, and will most likely shift the cost of any emergency care they need to safety net institutions, taxpayers and charities.
メディケアを拡大しないことで経費削減を図る州の官僚たちは、自分の州の最も弱い住民を害し、彼らが必要とする救急医療コストのことごとくを、ほぼ間違いなく、安全網機関、納税者とチャリティに付け回すこととなるだろう。
Medicaid After the Supreme Court Decision
NYT, July 28, 2012
【関連エントリー】
「なぜ大国アメリカで?」と医師が憤る無保険者の実態(2008/11/11)
↓
上記の記事を別記事のショッキングな写真と一緒に再掲したものが以下。
http://blogs.yahoo.co.jp/spitzibara/54711663.html
子どもたちに経済不況の影響、深刻(米国)(2009/4/23)
自己決定と選択の自由は米国の国民性DNA?(2009/9/8)
この10年で医療を受けられない米国人が激増(2012/5/31)
2012.08.17 / Top↑
7月にLancetに報告されたオランダの安楽死者の発生率のデータを詳細に見直したところ、実際には2003年から73%も増加している、とLifeNews.com。
http://www.lifenews.com/2012/07/31/euthanasia-rate-in-netherlands-has-increased-73-since-2003/
テネシー州で、在宅高齢者に年15000ドルまでの在宅ケアとデイケア・サービスを提供し、ナーシング・ホーム入所を回避する実験的なメディケア・プログラムがスタート。低所得高齢者が入所ケアを受けにくくなるのでは、との懸念も。
http://www.kaiserhealthnews.org/Stories/2012/July/29/tennessee-medicaid-long-term-care.aspx
英国の社会保障費削減で、給付を切られる障害者や高齢者に向けて苦情処理の方法をアドバイスする法務省作成のビデオに対して、雇用大臣が横やりを入れたとして、非難の的に。
http://www.guardian.co.uk/society/2012/jul/31/minister-accused-video-disability-claimants
ダウン症候群の人の知的機能向上のためのピル、開発間近?
http://www.washingtonpost.com/national/health-science/down-syndrome-researchers-see-hope-for-a-pill-to-boost-patients-mental-abilities/2012/07/30/gJQA1ntvKX_story.html
英国NHSで脳神経系の患者の医療が不十分なため、悪化してから救急を受診するケースが続発。
http://www.guardian.co.uk/society/2012/aug/01/nhs-neglect-neurological
「途上国に避妊を」キャンペーンでヴァチカンがメリンダ・ゲイツをmisinformed(状況等が正しくわかっていない)、confused(きちんと理解できておらずわかっていない)などと批判。
http://www.cathnews.com/article.aspx?aeid=32387
英国、専門家の提言受け、インフルエンザ・ワクチンをすべての子どもに。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/248424.php
ウガンダでエボラ熱流行。少なくとも14人死亡。
http://www.guardian.co.uk/world/2012/jul/29/ebola-uganda-outbreak-patients-flee
地球の陸地の音頭は過去250年間で1.5度上昇。人間によって起こされたもの。
http://www.guardian.co.uk/science/2012/jul/29/climate-change-sceptics-change-mind?CMP=EMCNEWEML1355
日本。平日通院できる職場を 時間単位の有給導入要請 厚労省検討会報告書
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120731-00000087-san-pol
喫煙で停職1年「重すぎ」地下鉄運転手が市提訴
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120801-00000773-yom-soci
日本のゲノム創薬スキャンダル。<京大元教授逮捕>「研究の鬼がなぜ」同僚ら困惑
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120731-00000055-mai-soci
http://www.lifenews.com/2012/07/31/euthanasia-rate-in-netherlands-has-increased-73-since-2003/
テネシー州で、在宅高齢者に年15000ドルまでの在宅ケアとデイケア・サービスを提供し、ナーシング・ホーム入所を回避する実験的なメディケア・プログラムがスタート。低所得高齢者が入所ケアを受けにくくなるのでは、との懸念も。
http://www.kaiserhealthnews.org/Stories/2012/July/29/tennessee-medicaid-long-term-care.aspx
英国の社会保障費削減で、給付を切られる障害者や高齢者に向けて苦情処理の方法をアドバイスする法務省作成のビデオに対して、雇用大臣が横やりを入れたとして、非難の的に。
http://www.guardian.co.uk/society/2012/jul/31/minister-accused-video-disability-claimants
ダウン症候群の人の知的機能向上のためのピル、開発間近?
http://www.washingtonpost.com/national/health-science/down-syndrome-researchers-see-hope-for-a-pill-to-boost-patients-mental-abilities/2012/07/30/gJQA1ntvKX_story.html
英国NHSで脳神経系の患者の医療が不十分なため、悪化してから救急を受診するケースが続発。
http://www.guardian.co.uk/society/2012/aug/01/nhs-neglect-neurological
「途上国に避妊を」キャンペーンでヴァチカンがメリンダ・ゲイツをmisinformed(状況等が正しくわかっていない)、confused(きちんと理解できておらずわかっていない)などと批判。
http://www.cathnews.com/article.aspx?aeid=32387
英国、専門家の提言受け、インフルエンザ・ワクチンをすべての子どもに。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/248424.php
ウガンダでエボラ熱流行。少なくとも14人死亡。
http://www.guardian.co.uk/world/2012/jul/29/ebola-uganda-outbreak-patients-flee
地球の陸地の音頭は過去250年間で1.5度上昇。人間によって起こされたもの。
http://www.guardian.co.uk/science/2012/jul/29/climate-change-sceptics-change-mind?CMP=EMCNEWEML1355
日本。平日通院できる職場を 時間単位の有給導入要請 厚労省検討会報告書
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120731-00000087-san-pol
喫煙で停職1年「重すぎ」地下鉄運転手が市提訴
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120801-00000773-yom-soci
日本のゲノム創薬スキャンダル。<京大元教授逮捕>「研究の鬼がなぜ」同僚ら困惑
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120731-00000055-mai-soci
2012.08.02 / Top↑
英国で、知的障害のある子どもが国外で結婚させられるケースが相次いで
Mencapその他のチャリティが問題にしている。
例えば33歳の息子にパキスタン人の妻を見つけたという50代の母親は
「私も歳をとってきたし、
24時間介護が必要な息子のケアはたいへんになってきたけど、
嫁が来てくれれば息子の面倒を見てくれるでしょう。
なにしろ息子は何でもすぐに出てこないと気が済まないのよ。
食べ物だって着るものだって。
でも、息子が婚約したってことはまだ誰にも言ってないの」
知的障害のある子どもを結婚させてしまえば
家族が感じるスティグマは軽減され、
他の子どもたちの結婚に差し支えることもなくなる。
そうした家族は、結婚は本人の最善の利益だと主張するけれど、
専門家からは、破たんした時や、搾取の温床になるなどの懸念も。
実際、知的障害のある娘に、金目当てで
パキスタンの男性3人と次々に結婚させた一家も。
この問題を重視するMencapとFace the Factでは、
一般に知られ考えられている以上に実態は深刻、と対応を呼びかけている。
Fears for those with learning difficulties forced into marriages
Asian Image, August 1, 2012
この問題、英国では2008年から既に報告されていた ↓
知的障害者の強制結婚、相手はビザ目的、親は介護保障で(2008/7/29)
息子の介護のため、パキスタンから妻を迎えるという話に、思いだすのは、これ ↓
“現代の奴隷制“ 輸出入される介護労働(2009/11/12)
アジアの国々から介護労働、育児労働が輸出されているのは
もうずいぶん前からのことなのだけれど、
それが結婚として行われるということは、
介護労働者受け入れプログラムですら十分でない保護が
さらに全くない、密室の奴隷労働、になるのでは?
アジアから英国に迎えられる“妻”たちにせよ、
英国から余所の国に送り出される“妻”たちにせよ、
女性ゆえ、知的障害者ゆえに、
家族や男たちによって、何重にも重なった搾取を受ける。
これもグローバリゼーションの一つの顔……?
暗澹。
Mencapその他のチャリティが問題にしている。
例えば33歳の息子にパキスタン人の妻を見つけたという50代の母親は
「私も歳をとってきたし、
24時間介護が必要な息子のケアはたいへんになってきたけど、
嫁が来てくれれば息子の面倒を見てくれるでしょう。
なにしろ息子は何でもすぐに出てこないと気が済まないのよ。
食べ物だって着るものだって。
でも、息子が婚約したってことはまだ誰にも言ってないの」
知的障害のある子どもを結婚させてしまえば
家族が感じるスティグマは軽減され、
他の子どもたちの結婚に差し支えることもなくなる。
そうした家族は、結婚は本人の最善の利益だと主張するけれど、
専門家からは、破たんした時や、搾取の温床になるなどの懸念も。
実際、知的障害のある娘に、金目当てで
パキスタンの男性3人と次々に結婚させた一家も。
この問題を重視するMencapとFace the Factでは、
一般に知られ考えられている以上に実態は深刻、と対応を呼びかけている。
Fears for those with learning difficulties forced into marriages
Asian Image, August 1, 2012
この問題、英国では2008年から既に報告されていた ↓
知的障害者の強制結婚、相手はビザ目的、親は介護保障で(2008/7/29)
息子の介護のため、パキスタンから妻を迎えるという話に、思いだすのは、これ ↓
“現代の奴隷制“ 輸出入される介護労働(2009/11/12)
アジアの国々から介護労働、育児労働が輸出されているのは
もうずいぶん前からのことなのだけれど、
それが結婚として行われるということは、
介護労働者受け入れプログラムですら十分でない保護が
さらに全くない、密室の奴隷労働、になるのでは?
アジアから英国に迎えられる“妻”たちにせよ、
英国から余所の国に送り出される“妻”たちにせよ、
女性ゆえ、知的障害者ゆえに、
家族や男たちによって、何重にも重なった搾取を受ける。
これもグローバリゼーションの一つの顔……?
暗澹。
2012.08.02 / Top↑
NDRNの報告書の提言要旨を以下に。
(報告書関連エントリーは文末にリンク)
病院、医療機関に対して
倫理委員会と倫理相談だけでは患者の法的権利を守るには不十分。
特に障害者に成長抑制、不妊その他の医学的に不必要な医療が行われる場合には
デュー・プロセスによって権利を保護する手続きが必要。
倫理委員会には最低1名、
障害者または障害者の権利擁護の経験者を加えること。
障害者への成長抑制、不妊、治療の差し控えと中止について互いに助言できるよう、
米国小児科学会、子ども病院協会、米国医師会、米国臨床分泌医学会、米国病院協会、
米国知的・発達障害学会、NDRNその他の障害者セルフ・アドボカシー団体などの
関係団体が集まるワーキング・グループを作ること。
医療評価機構に対して
この提言に反し、現行の障害者の権利保護規定に違反している病院を認定しないこと。
それらの病院をインターネット上で公開すること。
保険会社に対して
本人同意のない成長抑制療法と不妊手術への支払いを拒むこと。
親の要望と障害者本人の市民権・人権との間に衝突がある、
医学的に緊急でも必要でもない医療については、
十分なデュー・プロセスを経るまで認めないこと。
州議会に対して
親やガーディアンの要望と、障害者本人の市民権・人権の間に衝突がある場合に、
障害を理由にした不妊手術、成長抑制療法、その他
医学的に緊急でも必要でもない医療に関して
デュー・プロセス保護を確立すべく法整備を行うこと。
必要な治療の差し控えについても、栄養と水分を含め(しかしそれに限らず)、
同様の法整備を行うこと。
その際、所定の代理決定スタンダードを用いて
障害者本人の利益を代理する法定代理人が
本人の市民権・人権を利益の衝突がある中でもゆるぎなく熱心に訴えることが必要。
法定代理人には障害者の市民権・人権に関する必要な情報アクセスを。
米国保健省に対して
上記に挙げた関連組織や団体によるサミットを開催し、
デュー・プロセス保護を含め、医療の意思決定が障害者に及ぼす影響について検討すること。
本人同意のない成長抑制療法や不妊手術、その他無用な医療が
親または代理人の要望と本人の市民権・人権が章とする状況で行われる場合には
病院その他の医療機関に、デュー・プロセス保護を義務付けること。
その際、義務違反のあった病院や医療機関には
すべての連邦政府の補助金を打ち切ること。
連邦政府の不妊規制を改正し、連邦政府の補助金を受けている機関に対して
本人同意のない不妊手術、障害を理由にした成長抑制を禁じること。
連邦政府の被験者への保護規定を改正し、
人を対象とする実験を行う組織にはIRB(組織内審査委員会)に最低一人、
障害者または障害者の権利擁護の経験者を含めるよう義務付けること。
連邦政府により多機関連携委員会を設定し、
支援テクノロジー、地域生活、医療・リハビリ用具、その他
障害者のニーズに応えることのできるサービスや支援について
障害児の親やガーディアンに提供できる情報を中央に一元化すること。
議会に対して
P&A機関をはじめ法的保護機関への予算を増額し、
病院その他医療機関へのモニター、医療職への研修、
障害者の市民権・人権侵害の可能性がある場合の調査を推進すること。
義務付けられているデュー・プロセス保護その他の市民権規定に従わない
病院その他の医療機関に対して、連邦政府の補助金を打ち切る法整備を行うこと。
【NDRN報告書関連エントリー】
障害者人権擁護ネットから報告書「“A療法”・強制不妊・生命維持停止は人権侵害(2012/6/20)
障害者の人権を侵害する医療への痛烈な批判: NDRNの報告書「まえがき」(2012/6/22)
障害者への医療の切り捨て実態 7例(米)(2012/6/26)
NDRN報告書:概要(2012/7/7)
NDRN報告書:WI州の障害者への医療切り捨て実態 2例(2012/7/9)
NDRN報告書: A療法について 1(2012/7/13)
NDRN報告書: A療法について 2(2012/7/13)
NDRN報告書:カルメンの強制不妊ケース(2012/7/14)
NDRNのCurt Decker、"アシュリー療法“、障害者の権利、医療と生命倫理について語る(2012/7/31)
(報告書関連エントリーは文末にリンク)
病院、医療機関に対して
倫理委員会と倫理相談だけでは患者の法的権利を守るには不十分。
特に障害者に成長抑制、不妊その他の医学的に不必要な医療が行われる場合には
デュー・プロセスによって権利を保護する手続きが必要。
倫理委員会には最低1名、
障害者または障害者の権利擁護の経験者を加えること。
障害者への成長抑制、不妊、治療の差し控えと中止について互いに助言できるよう、
米国小児科学会、子ども病院協会、米国医師会、米国臨床分泌医学会、米国病院協会、
米国知的・発達障害学会、NDRNその他の障害者セルフ・アドボカシー団体などの
関係団体が集まるワーキング・グループを作ること。
医療評価機構に対して
この提言に反し、現行の障害者の権利保護規定に違反している病院を認定しないこと。
それらの病院をインターネット上で公開すること。
保険会社に対して
本人同意のない成長抑制療法と不妊手術への支払いを拒むこと。
親の要望と障害者本人の市民権・人権との間に衝突がある、
医学的に緊急でも必要でもない医療については、
十分なデュー・プロセスを経るまで認めないこと。
州議会に対して
親やガーディアンの要望と、障害者本人の市民権・人権の間に衝突がある場合に、
障害を理由にした不妊手術、成長抑制療法、その他
医学的に緊急でも必要でもない医療に関して
デュー・プロセス保護を確立すべく法整備を行うこと。
必要な治療の差し控えについても、栄養と水分を含め(しかしそれに限らず)、
同様の法整備を行うこと。
その際、所定の代理決定スタンダードを用いて
障害者本人の利益を代理する法定代理人が
本人の市民権・人権を利益の衝突がある中でもゆるぎなく熱心に訴えることが必要。
法定代理人には障害者の市民権・人権に関する必要な情報アクセスを。
米国保健省に対して
上記に挙げた関連組織や団体によるサミットを開催し、
デュー・プロセス保護を含め、医療の意思決定が障害者に及ぼす影響について検討すること。
本人同意のない成長抑制療法や不妊手術、その他無用な医療が
親または代理人の要望と本人の市民権・人権が章とする状況で行われる場合には
病院その他の医療機関に、デュー・プロセス保護を義務付けること。
その際、義務違反のあった病院や医療機関には
すべての連邦政府の補助金を打ち切ること。
連邦政府の不妊規制を改正し、連邦政府の補助金を受けている機関に対して
本人同意のない不妊手術、障害を理由にした成長抑制を禁じること。
連邦政府の被験者への保護規定を改正し、
人を対象とする実験を行う組織にはIRB(組織内審査委員会)に最低一人、
障害者または障害者の権利擁護の経験者を含めるよう義務付けること。
連邦政府により多機関連携委員会を設定し、
支援テクノロジー、地域生活、医療・リハビリ用具、その他
障害者のニーズに応えることのできるサービスや支援について
障害児の親やガーディアンに提供できる情報を中央に一元化すること。
議会に対して
P&A機関をはじめ法的保護機関への予算を増額し、
病院その他医療機関へのモニター、医療職への研修、
障害者の市民権・人権侵害の可能性がある場合の調査を推進すること。
義務付けられているデュー・プロセス保護その他の市民権規定に従わない
病院その他の医療機関に対して、連邦政府の補助金を打ち切る法整備を行うこと。
【NDRN報告書関連エントリー】
障害者人権擁護ネットから報告書「“A療法”・強制不妊・生命維持停止は人権侵害(2012/6/20)
障害者の人権を侵害する医療への痛烈な批判: NDRNの報告書「まえがき」(2012/6/22)
障害者への医療の切り捨て実態 7例(米)(2012/6/26)
NDRN報告書:概要(2012/7/7)
NDRN報告書:WI州の障害者への医療切り捨て実態 2例(2012/7/9)
NDRN報告書: A療法について 1(2012/7/13)
NDRN報告書: A療法について 2(2012/7/13)
NDRN報告書:カルメンの強制不妊ケース(2012/7/14)
NDRNのCurt Decker、"アシュリー療法“、障害者の権利、医療と生命倫理について語る(2012/7/31)
2012.08.02 / Top↑
今年5月に米国の障害者保護と人権擁護ネットNDRNが
障害者への“アシュリー療法”、強制不妊、一方的な治療停止と差し控えについて
強く非難する報告書を刊行しましたが、
07年のアシュリー事件で調査報告書を書いたDRW(NDRNのメンバー)のサイトに、
5月22日付でNDRNトップのCurt Deckerのインタビュー・ビデオが
アップされていました。
NDRN’s Curt Decker on Ashley’s Rights
DISABILITY RIGHTS GALAXY, May 22, 2012
それぞれを要約する形で、全Q&Aを以下に。
Q:障害者にとってはアシュリー療法が選択肢となることそのものが問題なのだということが、生命倫理学者や医師にはどうして理解できにくいのでしょう?
A:一つには一般と同じく、重症障害者にはなんの可能性もないという偏見を彼らも共有していること。それから生命倫理学者、特に医師は、専門性に基づいて自分たちが人のことを決めてよいとする教育の影響があって、それらが無知と傲慢という最悪のコンビネーションとなって意思決定を間違える。
Q:A療法の問題を親にはどのように理解させればよいのでしょう?
A:大事なのは親を悪魔扱いしてはいけないということ。彼らは重症障害のある子どもの親になる準備をしてから親になるわけじゃないし、知るべきこともきちんと知らされていない、カウンセリングも受けていない、医師からの情報も間違っている、そんな中で不安から親は間違った選択をしてしまう。だから、どういう支援があるのか、ちゃんと情報提供をし、重症障害のある子どもがいる家族にも会わせて、重症障害のある子どもも成長して大人になれるし、家族と豊かな生活を送れるということを知らせていけば、親もまた違う選択をするようになる。
Q:なぜA事件は障害者の権利運動の今後にとって大事なのでしょう。
A:我々の社会が重症障害者を価値のないものとして扱っており、それがアシュリー療法の正当化の基盤になっているからだ。さらに身体を切り刻んだり他の形で手を加えることや、成長する権利の制限、DNR指定の問題などの差別につながっていく。これまで我々が闘い続けてきた結果、住居、就業、学校ではバリアがなくなってきたのに、こうしたメインストリーミングに反する動きが出てくるなら、社会の根底にある、障害者を価値の低いものとみなす意識と闘わなければ。
Q: セルフ・アドボカシーにおけるP&Aシステムの役割は? どのように活動を?
A:我々は法的根拠のあるシステムとして、全米で障害者の権利の問題に取り組んできて政策、手続き、法規制の重要性も十分わかっている。こうした医療介入が間違っていることについても子ども病院であれ行政機関であれ、出掛けていって問題を指摘しなればならない。
Q:A事件からの5年で、生命倫理学者や医師や医療界を変えること、重症障害者の権利擁護について学んだこととは?
A:彼らを変えることは難しいが、セルフ・アドボケイトで障害者自身の声をあげて行くことだと思う。障害者自身が自分で声をあげられないという問題ではなく、医療界のシンポや倫理システムそのものが障害者を議論から締め出して聞く耳を持っていないという問題。P&Aシステムと法的アドボケイトが支援して、障害者自身の声をそういう場に持ち込めば、医療の姿勢も変わる。
Q: A療法についてセルフ・アドボカシーには言いたいことが多いが、それが届かないのはなぜか。どうしたら変えられるのか。
A:世の中には障害者のことをよく知らないまま、関わりを避けようとする人が多い。特に性に関する問題は正面から取り組まれるのではなく、問題をないものとすることで回避されてきた。一般には、障害児を育てるのは金銭的にも心理的にも大変だろうと思われていて、一般の人たちはそこに自己同視し親に同情してしまうからでは。現実にはそうではないのだということ、重症障害者にも守るべき基本的人権があることを伝えて行く必要がある。
Q: なぜA事件のフォローアップ報告書が重要だと?
A:議論を続ける機会として。A事件以来の議論はあるが、今なお、アシュリー療法の問題は「家族の権利と負担」vs「本人の権利」のバランスの枠組みでとらえられている。議論を障害者の市民権、人権という基本の本題へとシフトしていく。議論を終わらせず、届くべき人の声を議論に届け、適切な手順と規制を作って医療界がアシュリー療法を重症障害者に押しつけさせないように、できると思う。
Decker氏と言えば、
NDRN報告書の前書きも胸を打つ文章です ↓
障害者の人権を侵害する医療への痛烈な批判: NDRNの報告書「まえがき」(2012/6/22)
障害者への“アシュリー療法”、強制不妊、一方的な治療停止と差し控えについて
強く非難する報告書を刊行しましたが、
07年のアシュリー事件で調査報告書を書いたDRW(NDRNのメンバー)のサイトに、
5月22日付でNDRNトップのCurt Deckerのインタビュー・ビデオが
アップされていました。
NDRN’s Curt Decker on Ashley’s Rights
DISABILITY RIGHTS GALAXY, May 22, 2012
それぞれを要約する形で、全Q&Aを以下に。
Q:障害者にとってはアシュリー療法が選択肢となることそのものが問題なのだということが、生命倫理学者や医師にはどうして理解できにくいのでしょう?
A:一つには一般と同じく、重症障害者にはなんの可能性もないという偏見を彼らも共有していること。それから生命倫理学者、特に医師は、専門性に基づいて自分たちが人のことを決めてよいとする教育の影響があって、それらが無知と傲慢という最悪のコンビネーションとなって意思決定を間違える。
Q:A療法の問題を親にはどのように理解させればよいのでしょう?
A:大事なのは親を悪魔扱いしてはいけないということ。彼らは重症障害のある子どもの親になる準備をしてから親になるわけじゃないし、知るべきこともきちんと知らされていない、カウンセリングも受けていない、医師からの情報も間違っている、そんな中で不安から親は間違った選択をしてしまう。だから、どういう支援があるのか、ちゃんと情報提供をし、重症障害のある子どもがいる家族にも会わせて、重症障害のある子どもも成長して大人になれるし、家族と豊かな生活を送れるということを知らせていけば、親もまた違う選択をするようになる。
Q:なぜA事件は障害者の権利運動の今後にとって大事なのでしょう。
A:我々の社会が重症障害者を価値のないものとして扱っており、それがアシュリー療法の正当化の基盤になっているからだ。さらに身体を切り刻んだり他の形で手を加えることや、成長する権利の制限、DNR指定の問題などの差別につながっていく。これまで我々が闘い続けてきた結果、住居、就業、学校ではバリアがなくなってきたのに、こうしたメインストリーミングに反する動きが出てくるなら、社会の根底にある、障害者を価値の低いものとみなす意識と闘わなければ。
Q: セルフ・アドボカシーにおけるP&Aシステムの役割は? どのように活動を?
A:我々は法的根拠のあるシステムとして、全米で障害者の権利の問題に取り組んできて政策、手続き、法規制の重要性も十分わかっている。こうした医療介入が間違っていることについても子ども病院であれ行政機関であれ、出掛けていって問題を指摘しなればならない。
Q:A事件からの5年で、生命倫理学者や医師や医療界を変えること、重症障害者の権利擁護について学んだこととは?
A:彼らを変えることは難しいが、セルフ・アドボケイトで障害者自身の声をあげて行くことだと思う。障害者自身が自分で声をあげられないという問題ではなく、医療界のシンポや倫理システムそのものが障害者を議論から締め出して聞く耳を持っていないという問題。P&Aシステムと法的アドボケイトが支援して、障害者自身の声をそういう場に持ち込めば、医療の姿勢も変わる。
Q: A療法についてセルフ・アドボカシーには言いたいことが多いが、それが届かないのはなぜか。どうしたら変えられるのか。
A:世の中には障害者のことをよく知らないまま、関わりを避けようとする人が多い。特に性に関する問題は正面から取り組まれるのではなく、問題をないものとすることで回避されてきた。一般には、障害児を育てるのは金銭的にも心理的にも大変だろうと思われていて、一般の人たちはそこに自己同視し親に同情してしまうからでは。現実にはそうではないのだということ、重症障害者にも守るべき基本的人権があることを伝えて行く必要がある。
Q: なぜA事件のフォローアップ報告書が重要だと?
A:議論を続ける機会として。A事件以来の議論はあるが、今なお、アシュリー療法の問題は「家族の権利と負担」vs「本人の権利」のバランスの枠組みでとらえられている。議論を障害者の市民権、人権という基本の本題へとシフトしていく。議論を終わらせず、届くべき人の声を議論に届け、適切な手順と規制を作って医療界がアシュリー療法を重症障害者に押しつけさせないように、できると思う。
Decker氏と言えば、
NDRN報告書の前書きも胸を打つ文章です ↓
障害者の人権を侵害する医療への痛烈な批判: NDRNの報告書「まえがき」(2012/6/22)
2012.08.02 / Top↑
05年にスイスで幇助自殺したドイツ人女性の夫 Ulrich Koch氏が
自殺幇助を違法とするドイツの法律が個人のプライバシーと尊厳のある死の権利を侵していると
2010年に欧州人権裁判所に対して提訴した以下の裁判の続報。
欧州人権裁判所に「死の自己決定権」提訴(独)(2010/11/23)
以下のBBCの記事によれば、欧州人権裁判所は
自殺幇助に関する規定は各国で決めるべきことであるとして
死の自己決定権そのものについての判断は避けた一方で、
ドイツの裁判所がKoch氏の訴えの利点を検討すらしなかったことが
欧州人権条約の第8条(プライベートな家族生活を尊重される権利)違反であるとして、
ドイツ政府に対して、Koch氏に2500ユーロ(2460ドル)の賠償支払いを命じた。
Assisted suicide: Germany loses Strasbourg court case
BBC, July 19, 2012
判決文はこちら ↓
http://www.adfmedia.org/files/GermanyKochDecision.pdf
また、この判決を受けて、
プロ・ライフグループから出た批判を紹介した記事がこちら ↓
http://www.lifenews.com/2012/07/23/german-court-ruling-on-assisted-suicide-request-panned/
ちなみに、欧州人権裁判所はちょうど1年前に以下のような判決を出している。
双極性障害者の自殺希望に欧州人権裁判所「自殺する権利より、生きる権利」(2011/1/28)
自殺幇助を違法とするドイツの法律が個人のプライバシーと尊厳のある死の権利を侵していると
2010年に欧州人権裁判所に対して提訴した以下の裁判の続報。
欧州人権裁判所に「死の自己決定権」提訴(独)(2010/11/23)
以下のBBCの記事によれば、欧州人権裁判所は
自殺幇助に関する規定は各国で決めるべきことであるとして
死の自己決定権そのものについての判断は避けた一方で、
ドイツの裁判所がKoch氏の訴えの利点を検討すらしなかったことが
欧州人権条約の第8条(プライベートな家族生活を尊重される権利)違反であるとして、
ドイツ政府に対して、Koch氏に2500ユーロ(2460ドル)の賠償支払いを命じた。
Assisted suicide: Germany loses Strasbourg court case
BBC, July 19, 2012
判決文はこちら ↓
http://www.adfmedia.org/files/GermanyKochDecision.pdf
また、この判決を受けて、
プロ・ライフグループから出た批判を紹介した記事がこちら ↓
http://www.lifenews.com/2012/07/23/german-court-ruling-on-assisted-suicide-request-panned/
ちなみに、欧州人権裁判所はちょうど1年前に以下のような判決を出している。
双極性障害者の自殺希望に欧州人権裁判所「自殺する権利より、生きる権利」(2011/1/28)
2012.08.02 / Top↑
NDRNの報告書については、まだ最後の提言をエントリーにしたいと思っているのですが、そのNDRNのトップで前書きの著者 Curt Decker が、Ashley療法に関するNDRNの立場を明確に語るビデオがDRWのサイトに。:たいへん良い内容です。なるべくエントリーに取りまとめたいと思います。
http://disabilityrightsgalaxy.com/2012/05/22/ndrns-curt-decker-on-ashleys-rights/
同じくDRWのサイトに、NDRNが報告書を作るに当たって実施した当事者委員会でのA療法をめぐる話し合いの模様のビデオも。
http://disabilityrightsgalaxy.com/2012/05/22/ashleys-rights-2/
Not Dead Yet の会長 Diane Colemanが「自殺幇助法はADA違反」。自殺したいという希望に対して、自殺予防で対応される人と自殺幇助で対応される人とを作るダブルスタンダードが、前者が障害のない場合で後者が障害のある場合だとすることは明らかで、そこに自殺幇助合法化の差別性がある、と。
http://www.notdeadyet.org/2012/07/assisted-suicide-laws-violate-the-ada.html
介護者が仕事をやめなくてもよいための支援を。(英)
http://www.lgcplus.com/briefings/support-carers-to-stay-in-employment/5046665.article?blocktitle=Views-from-the-panel&contentID=2341
インドのJalandhar州で、親がわずかな医療費を払えなかったら、病院が生後3日目の女児の生命維持治療を拒否した、という事件。:無益な治療論が実際には貧しい患者や移民でよく持ち出されていて、実は治療の無益性とは無関係になりつつあることは既に言われていることだけれど、ここではインドという点が目を引く。
http://medicalfutility.blogspot.jp/2012/07/hospital-stops-life-support-after.html
NYTが先週に引き続き、メディケイド拡大を拒否している州に貧困層の無用な害と死に繋がる、と社説で批判。
Medicaid After the Supreme Court Decision: States that refuse to expand the program will cause needless harm and deaths to thousands of low-income people.
Slateの記者がブログでWHOやゲイツ財団がHIVなどの予防策としてアフリカ諸国に成人男性の包皮切除を広めようとしていることに、疑問を呈している。興味深いのは、米国小児科学会が中立を標榜しつつも、そのガイドラインでは利益の方が害よりも強調されている、との指摘。そのガイドラインの辺りについては、面白い情報がいろいろあるし。
http://open.salon.com/blog/judy_mandelbaum/2012/07/27/africas_male_circumcision_crusade_boon_or_boondoggle
【関連エントリー】
Gatesの一声で、男児包皮切除にエビデンスが出てくるわ、小児科学会もCDCも方針を転換するわ(2010/8/16)
包皮切除件数減少を反対運動のせいだと騒ぐDiekemaのポチ踊り(2010/8/23)
包皮切除でのDiekema発言でNPRラジオに抗議殺到(2010/9/14)
7月2日の補遺で拾った、ドイツの包皮切除論争の続報。
http://www.bioedge.org/index.php/bioethics/bioethics_article/10170
CA州で、正当な手続きを経ず脳のがんで死に瀕している患者3人に、頭の傷にバクテリアを入れる実験を行った脳外科医2人が、実験禁止処分に。:功利主義的な人体の資源化が、現在、臓器庫とみなされ始めている脳死者や重症障害者を実験に利用する方向に向かっていくだろうというのは、当然のこととして予想できること。私が知っているだけでも、2006年から既にそういう声は生命倫理学者の間から出ていた。
http://www.bioedge.org/index.php/bioethics/bioethics_article/10173
ドイツの高名な移植医が、自分の患者の待機リストの順位を上げるために書類を偽造していた、とのスキャンダル。
http://www.bioedge.org/index.php/bioethics/bioethics_article/10174
Journal of Medical Ethicsで、生命倫理学者Jessica Flaniganが「処方箋法は患者のセルフ・メディケーションの権利を侵している」から撤廃せよ、との提言。:Norman FostやJulian Savulescuのステロイド解禁論をさらに極論すると、こういうところへ行きつくわな。
http://www.bioedge.org/index.php/bioethics/bioethics_article/10172
久方ぶりに、また「ヤセ薬」が認可されるらしい。以下のエントリーで紹介している orlistat以来のことだとか。
http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736%2812%2961233-1/fulltext?elsca1=ETOC-LANCET&elsca2=email&elsca3=
【関連エントリー】
NHS新たにヤセ薬を解禁(2008/7/9)
6月解禁のヤセ薬、精神障害起こすと早くも販売中止(英)(2008/10/25)
EUがヤセ薬を解禁、「誰の最善の利益?」(2009/1/31)
日本語「黒人だから」と教会が結婚式拒む=米ミシシッピ州
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120729-00000045-jij-ent
日本語。日本人客らに「優先レーン」検討=入管審査短縮、「差別」批判も―英空港:世界中であらゆる差別が公然と行われ始めている、という気がしてならない。
http://www.jiji.com/jc/zc?k=201207/2012071100922&rel=&g=
日本。娘の自殺手伝った両親逮捕…首つるひもを準備
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120728-00000238
http://disabilityrightsgalaxy.com/2012/05/22/ndrns-curt-decker-on-ashleys-rights/
同じくDRWのサイトに、NDRNが報告書を作るに当たって実施した当事者委員会でのA療法をめぐる話し合いの模様のビデオも。
http://disabilityrightsgalaxy.com/2012/05/22/ashleys-rights-2/
Not Dead Yet の会長 Diane Colemanが「自殺幇助法はADA違反」。自殺したいという希望に対して、自殺予防で対応される人と自殺幇助で対応される人とを作るダブルスタンダードが、前者が障害のない場合で後者が障害のある場合だとすることは明らかで、そこに自殺幇助合法化の差別性がある、と。
http://www.notdeadyet.org/2012/07/assisted-suicide-laws-violate-the-ada.html
介護者が仕事をやめなくてもよいための支援を。(英)
http://www.lgcplus.com/briefings/support-carers-to-stay-in-employment/5046665.article?blocktitle=Views-from-the-panel&contentID=2341
インドのJalandhar州で、親がわずかな医療費を払えなかったら、病院が生後3日目の女児の生命維持治療を拒否した、という事件。:無益な治療論が実際には貧しい患者や移民でよく持ち出されていて、実は治療の無益性とは無関係になりつつあることは既に言われていることだけれど、ここではインドという点が目を引く。
http://medicalfutility.blogspot.jp/2012/07/hospital-stops-life-support-after.html
NYTが先週に引き続き、メディケイド拡大を拒否している州に貧困層の無用な害と死に繋がる、と社説で批判。
Medicaid After the Supreme Court Decision: States that refuse to expand the program will cause needless harm and deaths to thousands of low-income people.
Slateの記者がブログでWHOやゲイツ財団がHIVなどの予防策としてアフリカ諸国に成人男性の包皮切除を広めようとしていることに、疑問を呈している。興味深いのは、米国小児科学会が中立を標榜しつつも、そのガイドラインでは利益の方が害よりも強調されている、との指摘。そのガイドラインの辺りについては、面白い情報がいろいろあるし。
http://open.salon.com/blog/judy_mandelbaum/2012/07/27/africas_male_circumcision_crusade_boon_or_boondoggle
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Gatesの一声で、男児包皮切除にエビデンスが出てくるわ、小児科学会もCDCも方針を転換するわ(2010/8/16)
包皮切除件数減少を反対運動のせいだと騒ぐDiekemaのポチ踊り(2010/8/23)
包皮切除でのDiekema発言でNPRラジオに抗議殺到(2010/9/14)
7月2日の補遺で拾った、ドイツの包皮切除論争の続報。
http://www.bioedge.org/index.php/bioethics/bioethics_article/10170
CA州で、正当な手続きを経ず脳のがんで死に瀕している患者3人に、頭の傷にバクテリアを入れる実験を行った脳外科医2人が、実験禁止処分に。:功利主義的な人体の資源化が、現在、臓器庫とみなされ始めている脳死者や重症障害者を実験に利用する方向に向かっていくだろうというのは、当然のこととして予想できること。私が知っているだけでも、2006年から既にそういう声は生命倫理学者の間から出ていた。
http://www.bioedge.org/index.php/bioethics/bioethics_article/10173
ドイツの高名な移植医が、自分の患者の待機リストの順位を上げるために書類を偽造していた、とのスキャンダル。
http://www.bioedge.org/index.php/bioethics/bioethics_article/10174
Journal of Medical Ethicsで、生命倫理学者Jessica Flaniganが「処方箋法は患者のセルフ・メディケーションの権利を侵している」から撤廃せよ、との提言。:Norman FostやJulian Savulescuのステロイド解禁論をさらに極論すると、こういうところへ行きつくわな。
http://www.bioedge.org/index.php/bioethics/bioethics_article/10172
久方ぶりに、また「ヤセ薬」が認可されるらしい。以下のエントリーで紹介している orlistat以来のことだとか。
http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736%2812%2961233-1/fulltext?elsca1=ETOC-LANCET&elsca2=email&elsca3=
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NHS新たにヤセ薬を解禁(2008/7/9)
6月解禁のヤセ薬、精神障害起こすと早くも販売中止(英)(2008/10/25)
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日本語「黒人だから」と教会が結婚式拒む=米ミシシッピ州
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120729-00000045-jij-ent
日本語。日本人客らに「優先レーン」検討=入管審査短縮、「差別」批判も―英空港:世界中であらゆる差別が公然と行われ始めている、という気がしてならない。
http://www.jiji.com/jc/zc?k=201207/2012071100922&rel=&g=
日本。娘の自殺手伝った両親逮捕…首つるひもを準備
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120728-00000238
2012.08.02 / Top↑
2007年にAshley療法に関する調査報告書を書いたWPASは
その後、DRW(Disability Rights Washington)と名前を変えていますが、
最近、障害者の保護と権利擁護(P&A)全国組織NDRNと一緒になって
A療法、強制不妊、治療の一方的な差し控えと中止を糾弾する報告書を出したことは、
これまでにいくつかのエントリーで紹介してきました。
(詳細は文末にリンク)
そのDRWのサイトで、
現在、アシュリー療法に関するインターネット投票が行われています。
問いは、
Do you believe there should be more safeguards to prevent medical discrimination such as in the “Ashley Treatment”?
“アシュリー療法”に見られるような医療差別を防ぐために
今以上のセーフガードが必要だと思いますか?
7月29日21時現在の結果は、以下の通り。
Yes 95.45% (84票)
No 4.55% (4票)
No Opinion 0% (0票)
私は84票目を入れました。
投票は、以下のサイトの左欄中ほど、CURRENT POLLから ↓
http://disabilityrightsgalaxy.com/
【NDRN報告書関連エントリー】
障害者人権擁護ネットから報告書「“A療法”・強制不妊・生命維持停止は人権侵害(2012/6/20)
障害者の人権を侵害する医療への痛烈な批判: NDRNの報告書「まえがき」(2012/6/22)
障害者への医療の切り捨て実態 7例(米)(2012/6/26)
NDRN報告書:概要(2012/7/7)
NDRN報告書:WI州の障害者への医療切り捨て実態 2例(2012/7/9)
NDRN報告書: A療法について 1(2012/7/13)
NDRN報告書: A療法について 2(2012/7/13)
NDRN報告書:カルメンの強制不妊ケース(2012/7/14)
その後、DRW(Disability Rights Washington)と名前を変えていますが、
最近、障害者の保護と権利擁護(P&A)全国組織NDRNと一緒になって
A療法、強制不妊、治療の一方的な差し控えと中止を糾弾する報告書を出したことは、
これまでにいくつかのエントリーで紹介してきました。
(詳細は文末にリンク)
そのDRWのサイトで、
現在、アシュリー療法に関するインターネット投票が行われています。
問いは、
Do you believe there should be more safeguards to prevent medical discrimination such as in the “Ashley Treatment”?
“アシュリー療法”に見られるような医療差別を防ぐために
今以上のセーフガードが必要だと思いますか?
7月29日21時現在の結果は、以下の通り。
Yes 95.45% (84票)
No 4.55% (4票)
No Opinion 0% (0票)
私は84票目を入れました。
投票は、以下のサイトの左欄中ほど、CURRENT POLLから ↓
http://disabilityrightsgalaxy.com/
【NDRN報告書関連エントリー】
障害者人権擁護ネットから報告書「“A療法”・強制不妊・生命維持停止は人権侵害(2012/6/20)
障害者の人権を侵害する医療への痛烈な批判: NDRNの報告書「まえがき」(2012/6/22)
障害者への医療の切り捨て実態 7例(米)(2012/6/26)
NDRN報告書:概要(2012/7/7)
NDRN報告書:WI州の障害者への医療切り捨て実態 2例(2012/7/9)
NDRN報告書: A療法について 1(2012/7/13)
NDRN報告書: A療法について 2(2012/7/13)
NDRN報告書:カルメンの強制不妊ケース(2012/7/14)
2012.08.02 / Top↑
療育園との連絡ノートより
先日、ミュウさんとゆっくりお散歩へ行く時間があり、
売店へ行きました。
そこで雑誌をいろいろ見ながらお話しし、
余暇時間等を利用して、
ミュウさんの気に入ったものや興味あるものを雑誌などから選び、切り抜き、
ノートに貼るような遊びをしてみようかということになりました。
ミュウさんもその際はノリ気で、
「やる!!」と言わんばかりに口をあけたり手を挙げたりされていたので、
ノートと1冊雑誌を買いました。
まだそこまでですが、手箱へ置いて、
これから時々チャレンジしてみたいと思います。
すご~~~ぃ! ミュウに新しい趣味?
ありがとうございますっ!!
(その雑誌って、例の
ジャニーズのイケメン写真が満載のやつ……?)
先日、ミュウさんとゆっくりお散歩へ行く時間があり、
売店へ行きました。
そこで雑誌をいろいろ見ながらお話しし、
余暇時間等を利用して、
ミュウさんの気に入ったものや興味あるものを雑誌などから選び、切り抜き、
ノートに貼るような遊びをしてみようかということになりました。
ミュウさんもその際はノリ気で、
「やる!!」と言わんばかりに口をあけたり手を挙げたりされていたので、
ノートと1冊雑誌を買いました。
まだそこまでですが、手箱へ置いて、
これから時々チャレンジしてみたいと思います。
すご~~~ぃ! ミュウに新しい趣味?
ありがとうございますっ!!
(その雑誌って、例の
ジャニーズのイケメン写真が満載のやつ……?)
2012.08.02 / Top↑