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AJOB成長抑制論文
http://bioethics.net/journal/j_articles.php?aid=2118
http://whatsortsofpeople.wordpress.com/2010/01/12/ashley-revisited-american-journal-of-bioethics/(Sobsey)
http://whatsortsofpeople.wordpress.com/2010/01/13/ashley-effects-of-estrogen-on-weight/ (Sobsey)

アシュリー父が3周年アップデイトで「既に12人に実施」
http://ashleytreatment.spaces.live.com/mmm2009-09-01_09.47/mmm2009-09-01_09.47/mmm2007-10-25_18.59/blog/cns!E25811FD0AF7C45C!1827.entry(親のブログ)
http://severedisabilitykid.blogspot.com/2010/01/ashley-treatment-is-alive-and-wellsadly.html (Clair Roy)
http://badcripple.blogspot.com/2010/01/ashley-treatment-and-parental-update.html (Bill Peace)

Fost & Lantos ディベイト
http://blog.bioethics.net/2010/01/ashley-x-revisited-fost-and-lantos-debate-on-the-b/

Angela事件
判決文
http://www.austlii.edu.au/au/cases/cth/FamCA/2010/98.html

media
http://www.brisbanetimes.com.au/queensland/parents-win-bid-to-sterilise-daughter-20100309-ptlf.html
http://mikiverse.blogspot.com/2010/03/disabled-girl-can-be-sterilised-court.html
http://www.dailymail.co.uk/news/worldnews/article-1256806/Australian-court-allows-parents-sterilise-11-year-old-daughter.html
http://www.telegraph.co.uk/news/worldnews/australiaandthepacific/australia/7405283/Parents-win-right-to-have-disabled-daughter-11-sterilised.html

blog
http://www.alexfieldherself.com/2010/03/parents-on-edge.html
http://thefaithfulpenguin.blogspot.com/2010/03/state-approval-for-bona-fide-medical.html

Conference “Disability, Health Care & Ethics – What Really Matters”
http://www.law.umaryland.edu/faculty/conferences/detail.html?conf=92
http://badcripple.blogspot.com/2010/04/conference-paper-on-ashley-treatment.html
http://www.thehastingscenter.org/Bioethicsforum/Post.aspx?id=4742&blogid=140

成長抑制WGの「妥協点」論文がHCRに
http://www.thehastingscenter.org/Publications/HCR/Detail.aspx?id=4961
http://www.thehastingscenter.org/Publications/HCR/Detail.aspx?id=4963
http://www.thehastingscenter.org/Publications/HCR/Detail.aspx?id=4964
http://www.thehastingscenter.org/Publications/HCR/Detail.aspx?id=4965
http://www.thehastingscenter.org/Publications/HCR/Detail.aspx?id=4950

http://www.molecularstation.com/science-news/2010/11/recommendations-issued-on-controversial-ashley-procedure-for-disabled-children/
http://www.q13fox.com/news/kcpq-ashleys-procedure-is-morally-p-120510,0,4379552.story
http://www.mynorthwest.com/category/local_news_articles/20101202/Ethics-group-says-stunting-disabled-kids%27-growth-is-%22morally-permissible%22/

http://iamabrokenmanyoucantbreakme.blogspot.com/2010/11/500000-seizures-did-not-kill-my-son.html
http://saynoga.blogspot.com/2010/11/there-are-several-ashley-treatment.html
http://saynoga.blogspot.com/2010/11/another-hasting-article-addressed.html
http://saynoga.blogspot.com/2010/11/best-for-last.html
http://bioethics2010bu.blogspot.com/2010/12/disabled-children-is-it-ethical-to.html

YouTubeでの動き
http://www.youtube.com/watch?v=BTLySMgWN84
http://www.youtube.com/watch?v=Vt2R-6jPaI8&feature=share

当ブログの主要な関連エントリーのまとめは以下です
2010年のまとめ: Ashley事件(できごと)
2010年のまとめ: Ashley事件 (資料性のあるエントリー)


なお、事件当初からのリンク集一覧はこちら
2010.12.26 / Top↑
【関連論文】

イリノイ大学法学部ジャーナルで「成長抑制には裁判所の判断が必要」(1/28)
「Ashley療法は身体の統合性を侵すため、親の決定権の外」とHealth Law Week(4/2)
Cambridge医療倫理ジャーナルに“Ashley療法”のケーススタディ?(6/21)
ソーシャルワークの立場からの“A療法”批判(8/21)
「アシュリー事件から考える障害、医療、介護、人権そして『愛』」という文章を書きました(11/13)


【その他、特に資料性のあるエントリー】

故Gunther医師が07年に成長抑制を語る“お宝映像”を発見(12/10)

Diekema医師が今更のようにAshley論文書いて批判に反駁(2009/10/1)
Diekema&Fost論文を読む 1:倫理委に関する新事実(2009/11/1)
Diekema&Fost論文を読む 2:ホルモン療法の期間を修正(2009/11/1)
Diekema&Fost論文を読む 3:政治的判断を否定(2009/11/1)
Diekema&Fost論文を読む 4:窮鼠の反撃? 証明責任の転嫁(2009/11/2)
Diekema&Fost論文を読む 5:「だから、ちゃんと検討したんだってば」(2009/11/3)
Diekema&Fost論文を読む 6:司法の否定(2009/11/3)
(注:この論文はピアコメンタリー募集のため09年4月に公開されました。AJOB掲載は10年1月)

「倫理委の検討は欠陥」とQuellette論文 1(2010/1/15)
(ここから4つシリーズ)

Angela事件の判決文は、Ashley論文(06)と同じ戦略で書かれている 1(2010/3/7)
Angela事件の判決文は、Ashley論文(06)と同じ戦略で書かれている 2(2010/3/17)

P・シンガーの障害新生児安楽死正当化の大タワケ(2010/8/23)
「なぜ人間は動物と違って特別なのか?」州差別批判からの問い 1
(ここから3つシリーズ)

その他シンガー関連エントリーは多数になったので、以下に取りまとめました。
2010年11月9日の補遺&シンガー月間とりまとめ(2010/11/9)

米小児科学会倫理委の「栄養と水分の差し控え」2009年論文 1/5:概要
米小児科学会倫理委の「栄養と水分の差し控え」2009年論文 2/5:前置き部分
米小児科学会倫理委の「栄養と水分の差し控え」2009年論文 3/5:差し控えが適当である例
米小児科学会倫理委の「栄養と水分の差し控え」2009年論文 4/5:倫理的な検討
米小児科学会倫理委の「栄養と水分の差し控え」2009年論文 5/5:法律的な検討       

Quinlan事件からAshley事件を考える 1
Quinlan事件からAshley事件を考える 2
Quinlan事件からAshley事件を考える 3
Quinlan事件からAshley事件を考える 4

米国のプライバシー権を確立したGriswold事件から断種法へ 1
米国のプライバシー権を確立したGriswold事件から断種法へ 2
2010.12.26 / Top↑
2010年のまとめ:Ashley事件 には、
この「できごと」編の他に「資料性のあるエントリー」編を作りました。

また、別途、継続して作っている「Ashley事件関連リンク一覧」の一環として
「Ashley事件リンク集 11: 2010年の動き」を作りました。


1月

AJOBに成長抑制論文&コメンタリー
AJOBがDeikema&Fost論文とコメンタリーを掲載(1/13)
Lantosコメンタリー、Ashley事件の大デタラメを指摘(2/17)
Adrienne Aschの、かなり醜い言い訳(2/17)

Ashley父が3周年アップデイトで「すでに12人に実施」
“A療法”すでに12人の男女児に実施……とAshley父のブログ(1/25)
Ashley父にメールで学会報告をした医師はFostかDiekema(1/25)
Bad CrippleさんがAshley父のアップデイトでエントリー(1/27)

FostとLantosディベイト
Lantos医師「倫理委で何があったか誰にもわからない」(1/29)

2月

Angela事件
豪で11歳重症児の子宮摘出、裁判所が認める(3/10)
Angela事件(豪):事実関係の整理(2010/3/10)
Angela事件の判決文を読む 1(2010/3/11)
Angela事件の判決文を読む 2(2010/3/11)
重症児の子宮摘出承認でダウン症協会前会長・上院議員が検察に行動を求める(豪)(2010/3/13)
Angela事件の判決文はAshley論文と同じ戦略で書かれている 1(2010/3/17)
Angela事件の判決文はAshley論文と同じ戦略で書かれている 22010/3/17)
Ashley事件とAngela事件の接点はここに……?(2010/4/27)

4月

Maryland大学法学部でカンファレンス
障害者の権利に対する医療と倫理委の無理解を考えるカンファレンス:Maryland大法学部(4/3)
Ashley事件について、明日William Peace氏講演(4/27)

8月

“Ashley療法“にオープンな態度を呼び掛けるナースの動画YouTubeに(2010/8/9)

11月

成長抑制WGメンバーEva Kittay来日
哲学者エヴァ・キテイ氏、11月に来日(10/12)

成長抑制WGの論文がHCRに
成長抑制WGの論文がHastings Center Reportに(2010/11/7)
Eva Kittayの成長抑制論文(2010/11/7)
Norman FostもAlice Dregerも成長抑制に関する論文(2010/11/7)
シアトルこども病院は、5年の合意期限が切れるのを待っている?(2010/11/8)
Eva Kittayさんに成長抑制WGのことを聞いた!(2010/11/12)
HCRの重症児の親による成長抑制支持論文にClairさんが見事な反撃(2010/11/17)
Clairさんの文章から、親と障害者運動について考えた(2010/11/17)
Clairさんのブログ、今度は重症児の親の成長抑制批判論文(2010/11/18)
「成長抑制でパンドラの箱あいた」とEva Kittay氏(2010/11/23)
成長抑制の対象はIQ25以下の重症重複障害児、とWG(2010/12/1)
なぜWPASのCarlson弁護士はWGメンバーから消えたのか?(2010/12/6)
Foxのローカル局が「時代が変わり意見も変わって、成長抑制はOKと決定」(2010/12/7)
Norman Fost「成長抑制が気に入らなければ虐待だと通報してみろ」と逆ギレ(2010/12/7)
子ども病院成長抑制WGメンバーの正体(2010/12/8)
成長抑制WGのHCR論文:とりあえず冒頭のウソ3つについて(2010/12/8)
「HCR成長抑制論文に激怒するヒットラー」YouTubeに(2010/2/15)
2010.12.26 / Top↑
これもまた、全文公開されていることに最近気づいた、07年のAshley論文。

シアトルこども病院Truman KatzセンターのDiekemaの同僚で
論争当初から、ちょろちょろしているWilfond医師の書いたものだけに、
ずっと読みたかったものです。

もちろん読んだからといって、予想通りの「身内の援護射撃」でしかないのですが、
ただ、1つ、見逃せない発言があるので、エントリーに。

The Ashley case: the public response and policy implications
Hastings Center Report, the Sept-Oct, 2007 by Benjamin S. Wilfond


基本的には、
治療上の必要がなくても、社会的理由で医療介入が用いられるのは
ADHDの子どもに薬を飲ませたり行動療法を行うことや
口蓋裂の手術、頭の形を整えるためのヘルメットなど、既に行われており、
Ashleyに行われたことも、それと変わらない、との主張。

ただ、非常に興味深いのは、以下の一節で、

……those not directly involved in a case can have difficulty fully appreciating the thought processes of the parents, clinicians, and ethics committee. There is certainly value in reevaluating their choices, but we must appreciate that those looking in from outside may have limited insight into the particulars and nuance of the decision. Further, even those involved in the case may struggle to fully describe their thinking at the time. The medical journal article and the parents' description were published almost three years later. They may be based on fading memories and after-the-fact analysis. These observations point to the need for careful consideration in reaction to public disclosures about difficult cases.




外部の人間が、当時者の気持ちや考えについて云々したところで、
それは所詮、想像の域を出ることはないのだし、

主治医論文にしても親のブログにしても
3年も前の出来事を振り返って、薄れゆく記憶に基づいて書いているのだから
情報公開された困難ケースを批判する際には、そういうことも念頭に置いておけ……

……って、米国医師会雑誌に掲載されるような医学論文てな
「ずっと前の困難事例を、もはや曖昧な記憶に基づいて書き、
あくまでも事後に振り返って分析しているだけなんっすけど」という程度のものなのか?

仮にも、れっきとした医師の、こんな寝言論文を
HCRが、また、なんで、しゃらりんと掲載してるのか?

JAMAにもHCRにも、査読者ってものは、いないのか?

まさか、特定の論文には査読者がいない……とか……?

んっとに、呆れてしまうのだけど、結局のところ、
Wilfondは医師らの論文がマヤカシ・穴ぼこ・矛盾だらけだということも
論文の内容と親のブログの内容とが齟齬をきたしていることも
十分に承知していた……ということでしょう。

この下り、
病院内でGuntherにプレゼンさせた際にも、
冒頭に出てきたWilfondが「当該ケースそのものをretrospectivelyに扱うのではない」と
わざわざ念押しをしていたことと、ぴったりと符合します。


そういえば、今に至ってもなお、DiekemaもAJOBの論文で、
倫理委の検討プロセスに対するQuelletteらの鋭い批判に対して
「でも、その場にいなかった人たちの想像に過ぎないでしょ」と
幼稚な反論をしていましたね。

結局、そういうお粗末な言い訳しかできないほど、
この点については、自分たちの正当化が破たんしているという自覚が
Diekema本人にはもちろん、Wilfondにも07年の初めからあったということなのでしょう。

それこそ、彼らが互いに手を組み、
たくらみを巡らせて一般化の動きを急ぎ作ることによって
Ashley事件の真実から目をそらせ、隠ぺいを図ったことの証拠――。
2010.12.21 / Top↑
前から存在は知っていたけど、是が非でも読みたいほどでもないから、とりあえず放置したり、
そのうちにすっかり忘れてしまっていた論文と、時間が経ってから何かの折にネットで再開してみると、
思いがけず全文公開されていた……という嬉しい発見が、たまにあります。
07年の論争当時に書かれた、これも、その1つ。

Disability and slippery slopes
Anita J. Tarzian, Hastings Center Report, Setp-Oct, 2007


一部の障害者運動の関係者がA療法の問題について
「何がAshleyにとって幸福なのか」という視点で語られるのを見聞したことから、
「障害者運動も無意識に重症児・者は障害者の中でも別、と線を引くのですか」と問い、
Ashleyにとっても他の障害者と同じように「権利の問題」ではないのかと問題提起して、
重症児・者を(後には親をも)置き去りにしない社会モデルを訴えたことがあるのですが、

Tarzianの論文が私にとって非常に興味深いのは、
私と同じ問いを発していながら、その主張は全く反対であること。
私は、別扱いするのは障害者の権利運動の重症児への裏切りだと考えたのに対して、
Tarzianは、別扱いしないのが障害者の権利運動の重症児への裏切りだと主張し、

重症児・者に線引きをせず“A療法”を「権利の問題」として扱う障害者運動は
身障者の利害に基づく社会モデルを優先して重症児の特性や彼らとの違いを無視し、
Ashleyという重症児個人を犠牲にしたのだ、と非難している。

とても印象的なことに、冒頭で著者はTerry Schiavo事件に言及している。

07年の論争時、ネットでは「これはシャイボ事件の再来だ」という懸念の声が結構出ていて、
当時の私はその意味が良く分からなかったのですが、このブログでの作業を通じて、
今は2つの事件に相通じるものがあることも「これはシャイボだ」と思わず口走った人たちの警戒心も
非常によく理解できるようになりました。

しかし著者が考えるSchiavo事件とAshley事件との共通項とは
重症障害児・者に対する軽視や偏見ではもちろんなく、
本来そうではないものを障害者運動が敢えて「人権問題」にした事件であること。

Tarzianの論文要旨は、だいたい、こんな感じ。

身体障害者の利害を中心に考えられた「障害の社会モデル」は、
支援によって社会生活が可能なレベルの知的障害者くらいまでは織り込んでいるものの
Ashleyのような社会生活がありえない重症知的障害児・者のことは念頭にない。

社会モデル・自己決定権を唱えられるような障害者と違って、
Ashleyのように自己決定できない重症児の場合には親が本人の最善の利益を考えてやるしかないのに、

そうした親の愛情ある行為を、自分たちの原則論で人権を持ち出して否定するのは
障害者運動が自分たちのアジェンダのためにAshley個人を犠牲にしたのだ。

“Ashley療法”を重症児に認めれば“すべり坂”が起きるとの彼らの批判は、
重症児・者とその他の障害者の違いを理解すれば起こるはずのない“すべり坂”であり、的外れ。

“すべり坂”の懸念を言うなら、
障害とQOL、医療資源の分配について社会全体で広く議論を推進することこそが肝要。
(と、まさに医学モデルで結論しているわけですね)



Tarzianの批判の背景にあるのは、本当は、
重症児・者はその他の障害児・者と同じ権利には値しないという線引きを
障害者の権利運動も共有すべきであり、それをしないのが怪しからん、という主張でしょう。

それはAshley父やDiekemaらの主張するところと、まったく同じです。
Ashleyの父は08年のCNNのメール・インタビューで以下のように書いています。

We are in the unfortunate situation today where activists with political power and motivated by their ideology have successfully taken a potentially helpful option away from families whose pillow angels might benefit. (See this activism Web site. )
A collective agenda/ideology is being shoved down the throat of all individuals with disabilities, whether it serves them as individuals or not. This is disturbing in a society that believes strongly in the well-being of children and in individual rights. Pillow angels should not be deprived of this treatment when their parents and their doctors have carefully considered the options and concluded that it would be of benefit.



ここにあるのもまた、障害者運動は
障害者全体のイデオロギーのために個々の障害児の幸福や権利を顧みず、
親の愛情ある決断を邪魔し、利益のある治療を子どもたちから奪っている、との非難。

これまでA療法/成長抑制を認める立場の人に共通していると私が思うのは、

① 重症重複(特に知的)障害者はその他の障害者とは別の存在だと考えている。
② 別の存在なのだから、別扱いすべきだと考えている。(「権利」ではなく「最善の利益」)
③ 親の愛情を疑わない。つまり親子の間に利益や権利の衝突があるとは考えない。
④ 親の決定権を絶対視する。
⑤ 重症児は親がずっとケアするものだと考えている。




もちろん、一番根っこにあるのは「別の存在だから別扱いすべきだ」の点で、
A事件の根っこは「重症(特に知的)障害児・者はその他の障害者とは別なのか否か」という問いなのだと
改めて痛感させられます。

別だと考える人にとっては、これは個々の「最善の利益」の問題であり
別ではないと考える人にとっては、万人の「権利」の問題だということになる。

で、ここで大事だと私が思うのは、
後者の人は「別ではない」と考えると同時に「別だと考えるべきではない」と考えてもいること。

言いかえると、それは、
原理原則を守ろう、「守るべき原理原則」というものを捨てまい、という姿勢でもある。

私がずっと疑問に感じているのは、
もともと、これは「権利」か「最善の利益」かという選択の問題ではなく、
本当は検討の位相の違い、順番の問題ではないのか、と。

「利益vsリスク」論は前提がおかしい(2008/2/6)でも書いたのだけど、

論理的な検討の段階として、「利益vsリスク」検討よりも前に
「それは条件によっては許されることか、それとも条件を問わず許されないことか」
という問いの段階が、まず、あるはずなんじゃないだろうか。

まず「条件を問わずに許されないことか、条件次第ではやっても良いことか」が問われ、
そこで後者だと判断された場合にのみ、その「条件」の検討が行われる。
その基準が「最善の利益」――。

「利益vsリスク」の検討というのは、本来そういうものじゃないのだろうか。

上位にある問いだからこそ人権概念が万人にあてはまる原理原則となるのは当たり前で、
むしろ、生命倫理の議論から、その原理原則を外してしまおうとする人たちが、
わらわらと沸いて出てきていることの方が問題なのだと私は思うのだけど、

その動きは、ちょうど、
科学とテクノロジーが可能にしていく多くのことを背景に、
「できるか、できないか」の問いだけがクローズアップされて
「できるとしても、やるべきではないことか」の問いが
時代遅れで無意味な問いであるかのように扱われ、
幼稚で皮相的な功利的な理屈で強引に押しのけられようとしていることと
きれいに並走しているのだと思う。

そうして、それら諸々の勢いを借りて、世の中は、
「殺してもいい人」と「殺してはいけない人」を平然と
線引きして痛痒を感じないような方向に向かっていこうとしている……。

そんなふうに、Ashley事件はShiavo事件と繋がっている――。

         ―――――

Tarzianの非難を受けて、Not Dead Yet のStephen Drakeがブログで反論しています。

「障害者とも呼べないほど重度の人の代弁を障害者がするな」論法は
昔からあった、と面白い表現を使って切り捨てているのですが、
一応、Ashleyの人権侵害はWPASだって認めたじゃないか、とも。

Hastings Ctr Report: Article Claims Ashley X “Sacrificed for the disability rights agenda”
Not Dead Yet News & Commentary, October 19, 2007


【関連エントリー】
成長抑制を巡って障害学や障害者運動の人たちに問うてみたいこと(2009/1/28)
重症心身障害児・者にはアドボケイトがいない、ということ(2009/1/29)
親と障害学の対立の構図で議論から締め出されている他の存在も見えなくなっている(2010/1/30)
親の立場から、障害学や障害者運動の人たちの願いしてみたいこと
2010.12.21 / Top↑