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英国のナーシングホームとケアホーム経営者の団体である
The English Community Care Associationのトップ Martin Green氏が

Daily Telegraph紙の取材に対して、

ターミナルで自分で自殺することのできない高齢者に
自殺幇助が違法行為として禁じられていることは
「選択」と「自己決定」を奪っている、として
国民投票又は議会での自由投票によって
法改正が必要との見方を示し、

Green氏がソーシャルケアの専門家として保健省にも関与していることから
あちこちで話題になっている。

(「保健省のアドバイザー」と書いてある記事もあるので
日本なら厚労省の審議会委員のような立場の人に当たるのかも)

Assisted suicide law reform urged
Press Association, August 29, 2011


私は読んでいませんが、
Daily Telegraphの記事はこちら。


ちなみに、英国議会は09年に合法化法案を否決しています。 ↓
英国医師会、自殺幇助に関する法改正支持動議を否決(2009/7/2)
英国上院、自殺幇助に関する改正法案を否決(2009/7/8)


その後、今年の初めまで各国で法案が提出されては否決されており、
当ブログが拾った限りでは、↓

NH州議会、自殺幇助合法化法案を否決(2010/1/14)
カナダ議会、自殺幇助合法化法案を否決(2010/4/22)
スコットランドの自殺幇助合法化法案、否決(2010/12/2)
フランス上院が自殺幇助合法化法案を否決(2011/1/27)
ハワイ州上院保健委員会が自殺幇助合法化法案を否決(2011/2/8)
2011.08.30 / Top↑
ニュー・ジャージー州の議会に提出されたPhysician Orders for Life-Sustaining Treatment(POLST)法案に知事が否決権を行使。医師の判断が患者の意思を凌駕する力を持つことに懸念があるとして、患者の意思が生かされるよう修正を求めた。
http://medicalfutility.blogspot.com/2011/08/governor-vetoes-new-jersey-polst-bill.html

ここしばらく米国で論争になっている問題で、命にかかわるほどの肥満児については州が介入し親から引き離して治療することの是非。支持論者としてNorman Fostが「少数のいのちに関わるほどの肥満児では州の介入が命を救うことになる」、反対論は法学者から「そういうケースで州が介入することが結果を出すとは証明されていない。親元に置いたまま親を指導することは可能」。Norman Fostは結局メディカル・コントロール論者なのでは、と思う。
http://www.latimes.com/health/la-he-childhood-obesity-custody-20110829,0,3696579.story

ビル・ゲイツ個人の投資会社 Cascadeもゲイツ財団もEcolabという清掃グッズ製造会社の株を取得し、それぞれ2200万株、440万株を所有することに。:ゲイツ財団がゲイツ氏個人とほとんど同一といってもよい組織であることは周知の事実なのだから、こういう記事を読んで今やゲイツ氏、ゲイツ財団共に世界有数の投資家であることを考えると、結局のところゲイツ財団って、単に慈善のための組織というほど単純なものじゃないのでは……? と考えてしまう。
http://www.bizjournals.com/twincities/news/2011/08/27/bill-gates-microsoft-ecolab-investment.html

GPS追跡装置によって認知症患者がより大きな自立を手にする。オーストラリア。:これは日本でも言われているけど、こういう手段を使うことが当たり前になることによって、こういう「介護の力」の工夫や努力がされなくなるような気も。
http://news.xinhuanet.com/english2010/sci/2011-08/29/c_131081655.htm

カナダで医師の往診制度を復活させようとの声。:日本の地域包括支援制度というのは本当に先駆的な試みなんだと、改めて思う。
http://www.montrealgazette.com/news/Liberals+bring+back+doctor+house+calls/5320516/story.html
2011.08.30 / Top↑
1年おきに世界大会を開催している死ぬ権利協会世界連合(WFRDS)が
2012年には、EXIT Switzlandの創設30周年を祝して
“自殺ツーリズム”のメッカ、チューリッヒで開催されることに。

2012年6月13―18日。
WFRDS 2012 Congressの公式サイトはこちら

公式サイトによれば、
世界45カ国に55以上の死ぬ権利協会が存在するとか。

Congressの目的は
「世界中で人が(死を)自己決定する権利が認められるよう
コミットメントを深めていく方法を議論する」こと。

当ブログの「尊厳死」書庫のエントリーで諸々追いかけているように、
ここで言われている「死の自己決定権」とは消極的安楽死に留まるものではなく、
積極的安楽死や医師による自殺幇助を受ける権利を含め「自己決定能力のある成人であれば、
いつどのような死に方をするかは個人に決定権がある」とするもの。

それなのに、とても不思議なことに、
消極的安楽死のみを説いているはずの日本尊厳死協会は、
この世界連合のメンバーとなっており、役員まで勤めていたりする ↓

尊厳死協会の世界連合(2008/3/13)
死ぬ権利協会世界連合がFENについて声明を発表(2009/3/10)


当時、世界連合の理事を務めていた荒川迪生氏と小松義彦氏の対談については ↓

「尊厳死を巡る闘争:医療機器の時代に」1(2008/3/2)
「尊厳死を巡る闘争:医療機器の時代に」2(2008/3/3)
「尊厳死を巡る闘争:医療機器の時代に」3(2008/3/3)


その他、日本の尊厳死議論については ↓

日本尊厳死協会・井形理事長の「ダンディな死」発言(2010/3/2)
「『尊厳死法制化』を考える」報告書を読む(2010/5/6)
安楽死に関するシンポを聞いてきました(2010/10/4)
在宅医療における終末期の胃ろうとセデーション(2010/10/6)
朝日新聞の「どうせ治らないなら延命はしませんよね、あなた?」(2010/11/5)
日本の尊厳死合法化議論を巡る4つの疑問(2010/10/28)
「功利主義はとらない」……南アフリカの人工透析患者選別委員会の模索(2010/12/17)
(後半、NHKクローズアップ現代「ある少女の選択~“延命”生と死のはざまで~」について)
2011.08.28 / Top↑
うぇぇっ? と思わずのけぞってしまいそうな
薬がらみの前代未聞の訴訟が米国で起こっている。

その背景にある米国社会の実情にも、すさまじいものがあって、
記事の冒頭のセンテンスをそのまま訳してみると、

処方麻薬の利用が劇的に増加しているため
(それにつれてオーバードースでの死者も増加していることから)、
全国で医療過誤やpill mill(カネ儲けのために診察もせず薬を売ってショーバイする医師や診療所)で
医師を訴える訴訟が続発している。



pill mill は「薬の販売所」とでもいったニュアンスでしょうか。
日本でも時々見聞するこうした医師のことについてspitzibara個人的には
何年も前から「薬の自動販売機みたいな医師」と称しています。

で、この記事の中には
pill mill事件を”専門”にする弁護士も登場する。

それほどpill mill事件の訴訟が増えているというのもすごい話なのだけれど、
でも、この記事が話題にしているのは、そちらの問題ではなく、
ある女性のオーバードース死を巡る医療過誤で訴えられた医師が、訴えた両親を
「私を苦しめるためだけに法制度を悪用し医療過誤訴訟を起こした」と
逆に損害賠償を求めて訴えた、という風変わりな訴訟。

もっとも、
05年の娘の死の責任を問うてDeBauns夫妻が09年に起こした訴訟は
既に時効が来ているとして裁判所に却下されたのだけれど、

DeBauns夫妻に訴えられたKevin Buckwalter医師というのが
なにしろ並みの経歴の持ち主じゃない。

2008年あたりから、あまりにお粗末な医療で名を馳せてきた人物で、

処方麻薬中毒の治療のために離脱したいと受診した10代の女性に
更に麻薬を飲ませて2007年に自殺に追い込んだり、

大量の麻薬を処方された69歳の女性が
あまりにひどい便秘から腸が破れ腹膜炎で死亡したり。

Debauns夫妻の娘Andrea Duncanさんについても
初診時に「時間がなかったので」診察もせずに
ソラナックスと合成オピオイド合わせて300錠を処方したことを
Buckwalter医師自身が証言している。

Andreaさんは2005年にオーバードースで死亡。
その4日前には同じくBuckwalter医師の患者だったAndreaさんの夫も
処方麻薬のオーバードースで死亡している。

翌2006年には米国 Drug Enforcement Administrationが
少なくとも8件のオーバードース死に同医師が関与しているとし、
Buckwalter医師から規制薬物の処方ライセンスを剥奪。

これについても同医師は、
ライセンスを取り戻すべく訴訟を起こし、敗訴している。

法学者らは今回のDeBauns夫妻の法制度悪用の訴えを「前代未聞だ」と言い、
「いや、法制度を悪用しているのはBuckwalter医師の方だろう」と言い、
またBuckwalter医師の主張は法的に正当化できないだろうと見ているものの、

イヤ~な気分にさせられるのは、ある法学者が
こういう訴訟が相次ぐことになれば患者が医療過誤の訴訟を起こしづらくなるのでは、と
言っていること。

Doctor’s Lawsuit Targets Parents of Patient Who Overdosed
ProPublica, August 26, 2011


イヤ~な気分になったのは、
ちょうど26日朝の新聞で、大阪の石綿訴訟の逆転判決で、
控訴審判決の以下の指摘を読んだばかりだったからかもしれない。

「工業製品の製造や加工の際に新たな化学物質の排出を避けることは不可能であり、」
規制を厳しくすれば工業技術の発達や産業社会の発展を大きく阻害する」

朝日新聞では早稲田大学法科大学院の淡路剛久教授が
「流れが逆行したようだ」とコメントしているけれど、

この控訴審判決の論理でいけば
「大規模災害の際に原子力発電所の安全を完全に保障することは不可能であり
規制を厳しくすれば工業技術の発達や産業社会の発展を大きく阻害する」も

「新たなワクチンや新薬開発の際に予測不能の副作用被害を避けることは不可能であり、
規制を厳しくすれば予防医療の発達や、激しい国際競争に晒される科学とテクノの分野で
日本の産業の発展・生き残りを大きく阻害する」も
十分に言えることになりそうな気がするから、

原発事故の被害を国が保障する必要も、
ワクチン被害を補償する必要も、
人体実験での被験者の安全と人権を慎重に守る必要も
否定されかねないのでは?

そして、もちろん、この「流れの逆行」は
そのまま日本だけではなくグローバルな流れの逆行とも重なって

弱い立場にある人々を守るべく、歴史の失敗に学びつつ
人類が長い年月をかけて築き上げてきた人権という装置や、
それを通して機能する法や倫理の理念や制度(つまりは法の歴史性というもの)が、
強者に都合よく、いつのまにか、なし崩しにされていく……

そういう形での「逆行」と重なって感じられることを思えば、

Buckwalter医師の起こした訴訟そのものは
多くの医師にとって「なんて無茶苦茶な奴なんだ」と呆れるほどの低次元であり、

実際、少数であるにせよ、こうしたトンデモ医師が存在することも、
pill mill 医師たちが現実に存在することも、
周知していて個人的には憂うべき事態だと考えてはいても

それはそれとして、
医療における患者の権利の否定や弱体化という「逆行」の1つの顕れとして、
この記事の最後に法学者が述べている懸念にも
十分なリアリティがあるように感じられることが、
なにやら、そら恐ろしい。

           -----

このところ危うくなりつつある「人権」という概念については、
カナダ・アルベルタ大学のSobseyが、なかなかいいことを言っている ↓

Dick Sobsey: もう一人、障害のある子どもを持つ学者からのシンガー批判(後)(2010/10/14)


また「法の歴史性」は09年に人に教えてもらった概念で、
人権と共にそちらも危うくなっていることについては
以下のエントリーなどで関連したことを書いています ↓

科学とテクノは法の束縛から自由になろうと、駄々をこね始めている?(2009/7/11)
科学とテクノ・倫理委員会・法をぐるぐる考えてみる(2009/7/28)


私は上のエントリーを書いた09年の頃には
科学とテクノという限定でこうしたことを考えていたのですが、
その後、科学とテクノはすでにグローバル経済と直結していることに気づいてきました。

人権や法の歴史性の否定や、上記の「逆行」は
こういう構造変化を起こしつつある社会の要請から起こっていることとして
最近の私には意識されています ↓

巨大ファーマがかつてのゼネコンなのだとしたら……(2009/9/29)
事業仕分けの科学研究予算問題から考えること(2009/12/12)
「必要を創り出すプロセスがショーバイのキモ」時代と「次世代ワクチン・カンファ」(2010/5/29)
“プロザック時代”の終焉からグローバル慈善ネオリベ資本主義を考える(2011/6/15)
2011.08.28 / Top↑
NYTの元記者Jane Grossさんが、ナーシング・ホームの理解を得て88歳の母親の餓死による自殺をサポートした経験をつづった本を出版。ターミナルではなく、部分マヒの状態に「屈辱を感じていた」ため。:Rudolph夫妻の事件を機に、高齢者が高齢や障害を理由に自らの意思で食と水分を断つという手段で自殺することが国民的な議論となったばかり。そんなタイミングで、こうした本が出版される。世の中の空気がそうさせるのか、単なる偶然か、それとも何か大きな企みが蠢いてでもいるのか……?
http://online.worldmag.com/2011/08/26/helping-mom-starve-to-death/

the Bulletin of the History of Medicineの“American Hospitals and Dying Patients before World War Ⅱ“という論文で、戦前の米国の病院は「不治の病」の患者は入院させていなかったと語られている。
http://medicalfutility.blogspot.com/2011/08/hospitals-exclude-patients-with.html

米国科学アカデミーから「ワクチンは大半の人にとっては、だいたい安全」という調査報告書。:日本の「ワクチン産業ビジョンの要点」の怪のエントリーで書いたのと全く同じ疑問が頭に浮かんだ。
http://www.washingtonpost.com/national/health-science/vaccines-are-generally-safe-national-academy-of-sciences-says/2011/08/25/gIQA7XAjdJ_story.html?wpisrc=nl_cuzheads

Lancetに中国の男女比アンバランスの問題。
http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736%2811%2961357-3/fulltext?elsca1=ETOC-LANCET&elsca2=email&elsca3=segment

2030年までに米国成人の半数が肥満に。
http://www.washingtonpost.com/national/health-science/half-of-us-adults-will-be-obese-by-2030-report-says/2011/08/25/gIQAYthweJ_story.html?wpisrc=nl_cuzheads

ハリケーン・カトリーナ直後の混乱の中で警察官に殺されて、証拠隠しのために仲間の警察官によって遺体を焼かれたHenry Gloverさんの事件で、当時の州警察のトップの対応を含めて、これまで考えられていた以上に警察内部の腐敗が進んでいたことが明らかに。ProPublica。:警察が犯罪組織と化すというのはハリウッド映画の定番ストーリーだけど、現実の定番ストーリーでもある? 警察も検察も?
http://www.propublica.org/nola/story/report-slams-former-new-orleans-police-honcho-for-mishandling-probe-of-post/

ナイジェリアの国連施設に爆弾。
http://www.bbc.co.uk/news/world-africa-14677957
2011.08.28 / Top↑
アシスティッド・リビング施設で夫婦そろって餓死しようとしたら民間住宅に追い出されたRudolph夫妻の事件を受け、NYTに記事。「終末期の選択肢を広げる活動をしている」C&Cから、餓死は合法的で“良い死に方”ができる自殺方法であり、要介護状態になって施設に入るくらいなら、こちらを選ぶのが尊厳を守る選択だと言わんばかりの解説がされている。
http://newoldage.blogs.nytimes.com/2011/08/24/deciding-to-die-then-shown-the-door/

Wesley Smithが上記NYTの記事が施設は餓死自殺を認めろという論調になっていることに対して反論している。
http://www.firstthings.com/blogs/secondhandsmoke/2011/08/24/assisted-living-facilities-should-not-be-forced-to-allow-suicide-by-self-starvation/

オランダでカトリックの司教が自発的安楽死で死んだ人の葬儀を執り行うことを拒否し、安楽死議論が再燃。
http://www.irishtimes.com/newspaper/world/2011/0825/1224302935334.html

ナーシング・ホームの過剰投薬問題。
http://newoldage.blogs.nytimes.com/2010/01/11/study-nursing-home-residents-overmedicated-undertreated/

ナーシング・ホームの人手不足問題。:トイレ介助希望でコールを押しても押しても来てもらえない状態が40分。電話で母親に窮状を訴えられた娘が詰め所に電話すると「今は忙しくて人がいないので待ってもらわないと」「じゃぁ、あなたが行けば? それとも私が今から車を運転して行かないといけないんですか」。この会話はすごいと思うのだけど、考えてみれば日本だったら、とっくにオムツになっている?
http://newoldage.blogs.nytimes.com/2009/10/07/the-nursing-home-as-battle-zone/

NIHが政府資金の研究における利益の相反とディスクロージャーのルールを最終的に固めた。去年暫定的に発表されたものよりも数段、後退したらしい。製薬会社または医療機器会社から年間5000ドル以上の収入がある研究者については、大学や研究機関がその詳細を把握しておくことが義務付けられるが、その情報はオンラインで公開の必要はなく、求められた場合に公表すればよい。公費による研究に携わる研究者を雇っている機関には、利益の相反に関する方針を策定することが義務付けられるが、この方針も公開する必要はない、など。NIHのトップはたいていの研究者の倫理感が高いことを称賛しているけど、ProPublicaの調査によると今なお実態はこんな感じ。そういえばGrassley議員の頑張りでできた Sunshine法との関係はどうなんだろう……?
http://www.washingtonpost.com/national/health-science/nih-finalizes-financial-conflict-of-interest-rules/2011/08/23/gIQAxX3QZJ_story.html?wpisrc=nl_cuzheads

上記の記事で言及されているNemeroff医師のスキャンダルについては以下に ↓
著名精神科医ら製薬会社からのコンサル料を過小報告(2008/10/6)

インドの農業ビジネスが東アフリカの土地を買い占めにかかっている。エチオピア、タンザニア、ウガンダなど。:この話、この話と繋がっているような気がする。
http://www.guardian.co.uk/global-development/2011/aug/24/indian-agribusiness-land-east-africa?CMP=EMCGT_250811&

米国でもウォーレン・バフェット氏が富裕層に増税しろと提言していたけど、フランスでも超富裕層の間から「もっと税金を払おう」という声。:ごく一部の富裕層に富が過剰に集中したためにカネが流れなくなって世界の経済が成り立たなくなっているなら、その仕組みを変えていかなければどうにもならない、ということなんじゃないかと前から漠然と考えていて、詳しく勉強したわけではないけど、ベーシック・インカムもそういう世の中の構造変化の中で位置付けて考えるべき一方策なんじゃないかという気がしている。なんとなく……でいつもえらそーにものを言ってスミマセン。
http://www.guardian.co.uk/world/2011/aug/24/wealthiest-french-citizens-ask-to-pay-more-tax?CMP=EMCGT_250811&

「大売れするか、さっさと潰れるか」と、NYTに激化するスマホ業界の酷薄な競争について。でもこれ、実はスマホだけじゃなくて、すべての業界にそういうルールが浸透しつつあるような、でもって、それによって世界の経済活動の大半が実はどんどん成り立たなくなっていっているんじゃないのかなぁ……。
Sell Big or Die Fast: These days, large technology companies – particularly those in hypercompetitive smartphone and tablet industries – are cutting their losses with increasing speed.

スイス政府が英国政府との間で、英国で支払われるべき税金を脱税している人の口座からスイス銀行がその金額を引き落として英国政府に渡す、との合意。2013年から。:スイス銀行の歴史的転換?
http://www.guardian.co.uk/business/2011/aug/24/switzerland-does-tax-deal-with-treasury?CMP=EMCGT_250811&

新たな研究で見つかった犯罪抑止策とは、幸福。「ハッピーになりなさい! 前向きな気持ち、ウツ、青少年犯罪」という論文。:ハッピーになりなさい!と個人の責任に帰するタイトルが気に食わない。弱肉強食のグローバル強欲ひとでなし金融ネオリベ資本主義で、世界中が虐待的な親のようになっていることを根本的に考え直さないと、若者がハッピーに生きていけるような社会が地球上からどんどん失われていっているというのに。
http://www.medicalnewstoday.com/releases/233130.php

がん研究の黄金時代に向け、自ら進んで被験者となる「人間モルモット」たち。:「ワクチンの10年」と並行して、では「抗がん剤の黄金時代」も? でも、NHSも抗がん剤は高価だから対象外にしたり、米国のメディケアでも抗がん剤によって給付対象外とする州が増えているはずなので(OR州は「抗がん剤はダメだけど自殺幇助はOK」だし)、じゃぁ、抗がん剤黄金時代のマーケットはひたすら富裕層狙いってことでしょうか? 読めていないので何とも言えませんが、この記事は英国なので、NHSで抗がん剤を使えない患者が、新薬研究の被験者となることで治療を受けようと「人間モルモット」に?
http://www.guardian.co.uk/science/2011/aug/22/human-guinea-pigs-cancer-research?CMP=EMCGT_230811&

こちらの記事によると、ガンという病気が解明されることが期待されているという意味での「がん研究の黄金時代」なんだとか。解明されれば治療法に革命が起こり、治療薬のコストが下がる、とのこと。
http://www.guardian.co.uk/science/2011/aug/22/cancer-research-golden-era?CMP=EMCGT_230811&

外来の抗がん剤治療部門で働く看護師の17%が皮膚や目を通して抗がん剤の毒性に晒されている。
http://www.medicalnewstoday.com/releases/233158.php

リビア保管の核物質に流出の恐れ、武器転用の可能性も。日本語。:原子力の安全性という点では、こういう事態も想定しなければ。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110825-00000624-reu-int

大豆サプリメントは更年期の症状緩和にならない。
http://www.washingtonpost.com/national/health-science/study-finds-that-soy-supplements-may-not-be-the-answer-to-menopausal-distress/2011/08/09/gIQA9HsDXJ_story.html?wpisrc=nl_cuzheads

英国で人種差別感情から中国人男性が若者に殺された事件で、ヘイト・クライムとして扱わなかった捜査ミスを警察が認めた。:緊縮政策から暴動が起こるような空気の中ではヘイト・クライムは起こりやすくなっているだろうことが懸念される。
http://www.guardian.co.uk/uk/2011/aug/23/police-admit-failures-murder-racist?CMP=EMCGT_240811&
2011.08.28 / Top↑
英国のシンク・タンクDEMOSの調査報告書で
自殺幇助が疑われる事件を検死官がスル―しているという
とんでもない実態が明らかになっている。

報告書は以下のDEMOSのサイトから無料でダウンロードできますが、
私はまだ読んでいません。

The Truth About Suicide
DEMOS

とり急ぎ、以下の長短2つの記事から、その衝撃の実態とは、

15人に2人の検死官が、
自殺幇助の可能性があるケースで意図的にスル―したことがある、と。

理由は多くの場合
「残された友人や家族のためにことを荒立てたくなかったから」

今回の調査対象で出てきた検死官の衝撃の発言とは、

疑いがあると思ったケースは沢山ありましたが、
それを詳細に調べることが特に私の仕事というわけではないし、
どうしてもやらざるを得ない立場ならやりますが、
まぁ、(真実を)知りたくなかったということですね。




絶対に間違いないというケースなら、警察に通報したでしょうね。
自殺幇助は犯罪ですから。

でもたいていは誰かがパートナーや友人に対して、
苦痛や苦悩を終わらせたいと頼んだケースです。

そういう話を、死んだ人の親族から聞かされれば
その人たちに対して、本人がその時に自殺するのを知っていたかどうかまで
突っ込んで聞いたりはしないようにしています。



報告書の著者らは、これらの結果は
「検死官が自殺幇助が疑われるケースに対して時に目をつぶっているとのエビデンス」だとし、

現在、英国の自殺者の1割が
慢性病または病気でターミナルな状態にある人によるものとされているが、

自殺者も、自殺幇助も実際の件数は
表に出てきているよりもはるかに多いのではないか、と分析。

上記DEMOSの当該サイトによれば、
連立政権の自殺防止に関する意見募集に呼応する形で、

自殺の本当の原因の調査・究明の必要に加えて、
地域ごとに自殺の調査や検死官の情報共有の義務付けを提言している。

Coroners ‘turning a blind eye’ to assisted suicide
The Telegraph, August 23, 2011

Coroners turn blind eye to assisted suicides, report claims
Mirror, August 25, 2011


公訴局長のガイドラインが出て以来、
英国で「近親者による自殺幇助は事実上、合法化された」という空気が広がっていることは
かねて当ブログが懸念してきた通りで、

ガイドラインは「自殺幇助事件は全て警察が捜査する。
その上で自殺幇助の証拠が揃っている場合の起訴判断については
ガイドラインのファクターを検討し、結論には公訴局長の同意が必要である」
としているものでありながら、

先月も、以下のエントリーで取り上げたように、
警察レベルで「近親者の自殺幇助だからOK」との判断が行われるという
ガイドライン違反が起こっていることを指摘したばかり。

警察が「捜査しない」と判断する、英国「自殺幇助起訴ガイドライン」の“すべり坂”(2011/7/15)


そして、今回、DEMOSの報告書が明らかにしているのは、
さらに、その警察以前に、検死官の段階で
「近親者による自殺幇助だからOK」との判断が
恣意的に行われているという実態――。

しかし、「どうしてもやらざるを得ない立場ならやりますが」って……
検死官って、死の真実を突きとめることが仕事なのでは?

その検死官が「真実を知りたくなかった」と言うのであれば、
自殺幇助を装った殺人だって、やりたい放題ということでは……?

いや、そもそも法改正は行われていないし
ガイドラインでも自殺幇助は今だに違法行為であると明記されているというのに?

なにやら、英国の司法制度そのものが暗黙のうちに
重病や重い障害のある人だったら、死のうが殺そうが、
みんなで目をつぶりましょう、という空気に転じているような……?

こういうことを考えるにつけ、
やはり2008年のGilderdale事件と、2年後の
「よくぞ殺した」と言わんばかりの判決、世論の狂騒は
本当に象徴的だったと、改めてつくづく痛感します。↓

【Gilderdale事件関連エントリー】
Gilderdale事件:「慈悲殺」を「自殺幇助」希望の代理決定として正当化する論理(2008/4/18)
慢性疲労症候群の娘を看護師の母親がモルヒネで殺したGilderdale事件(2010/1/19)
Gilderdale事件から、自殺幇助議論の落とし穴について(2010/1/22)
Gilderdale事件で母親に執行猶予(2010/1/26)
Gilderdale事件:こんな「無私で献身的な」母親は訴追すべきではなかった、と判事(2010/1/26)
2011.08.25 / Top↑
24日の補遺で簡単に拾った
MA州での自殺幇助合法化に向けた動きの詳細。

来年の住民投票に向けて
署名集めの文言に対して州検察局の許可を求めているのは
The Massachusetts Death with Dignity Coalition。

以下の記事を読む限り、
余命6カ月と診断されたターミナルな人が対象、
障害と年齢によって一定の規制がかけられる、
うつ病など精神障害が疑われる場合には精神科に紹介する、

2人の医師による説明、意思確認と、
15日間の間を置いた本人の明示的な意思表示など、

合法化案の内容や手続きは OR州、WA州の尊厳死法とほぼ同じものと思われます。

Coalitionでは、検察局からの許可が下り次第、
住民投票に向けて必要な数の署名集めに入り、
来年の住民投票の実現を目指す、とのこと。

この動きとは別に、民主党議員のLouis Kafka氏が
議会に合法化法案を提出する予定。

これらに対して出ている批判と懸念も
これまでと同じで、

緩和ケアの専門家からは
医療職は支援し、苦痛を取り除く方向で終末期の患者に対するべきであり、
痛みを取り除く技術も向上している。

また宗教界からも、
医療が死を早めることに手を染めることへの懸念の声。

Mass. Petition aims to OK doctor-assisted suicide
Boston Herald, August 24, 2011


この記事で触れられていない重要な論点として、
余命6カ月以内のターミナルな人のみとか精神障害者は専門家に紹介するなど、
自殺幇助を合法化した国や州で規定されているセーフガードが
実際には機能していないという問題があります。

去年から今年にかけて明らかになっている実態については、
以下の「介護保険情報」での連載記事と、
当ブログエントリーなどに取りまとめています。

「セーフガード崩れる尊厳死法の実態が明らかに」
「介護保険情報」2010年10月号 「世界の介護と医療の情報を読む」

ベルギーにおける安楽死、自殺幇助の実態調査(2010/5/19)
英国の医療教育機関が自殺幇助合法化反対を確認(2010/7/7):ベルギーの実態調査情報あり

オランダで安楽死が増加し保健省が調査。緩和ケアの崩壊も(2010/6/21)
幇助自殺者が毎年1割ずつ増えるオランダで「安楽死クリニック」求める声(2010/8/12)

オレゴン州の尊厳死法、セーフガードは機能せず(2010/8/17)
「抗がん剤も放射線もダメだけど自殺幇助はOK」というOR州メディケアのガイドライン(2011/1/17)

WA州の尊厳死法、殺人の可能性あっても「問わず語らず」で(2010/9/16)
WA尊厳死法の「すべり坂」、エビデンスがまた1つ(2010/11/2)

スイスで精神障害者への自殺幇助容認議論(2011/3/1)


なお、法改正ではなく公訴局のガイドラインで
医師ではなく近親者の自殺幇助を事実上合法化し、独自の道をいくと見える英国からも
検死官が自殺幇助を黙認しているとの気になるニュースが出てきており、
これについては次のエントリーで紹介するつもりです。
2011.08.25 / Top↑
今すぐ読めないけど、これは重要。脳性マヒ児への新しいリハビリの考え方で、本人の機能だけでなく環境へもアプローチする方法論。
http://www.medicalnewstoday.com/releases/232974.php

19日に「ウチの責任になるから」と餓死希望の老夫婦を施設から民間住宅へのエントリーで拾ったRudolph夫妻の事件で、自発的安楽死合法化への声。
http://www.bioedge.org/index.php/bioethics/bioethics_article/9690

マサチューセッツ州で来年にも尊厳死法を巡る住民投票の可能性。:ここは州独自の施策として、いち早く皆保険に取り組んでいたところ。
http://www.patriotledger.com/news/state_news/x1510868140/Massachusetts-voters-facing-right-to-die-showdown

米国で、抗がん剤を含め、ごく一般的な薬の不足が深刻化している。:製薬業界のショーバイのあり方が、あまりにもブロックバスターでの勝負への依存構造になってしまったから……ってことは?
http://www.nytimes.com/2011/08/20/health/policy/20drug.html?_r=2&nl=todaysheadlines&emc=tha2

この前のウォーレン・バフェットの富裕層への増税提言への反論。「金持ちもホームレスも同じ税率というのが平等」。:そういうの、悪平等っていうんでは……?
http://www.tcpalm.com/news/2011/aug/20/letter-our-equality-demands-same-percent-tax-for/

社会保障いろいろブログから「個人の思いだけでなく制度としての社会保障が」:ここで書かれていること、米国社会から今のグローバル社会に広げても、そのまま言えることのような気がする。
http://ameblo.jp/kaze194/entry-10992114896.html

製薬会社の広告の多くがFDAのガイドライン違反。
http://www.medicalnewstoday.com/releases/233011.php
2011.08.21 / Top↑
米国ケンタッキー州在住のPhilip Seatonさんは2007年10月9日
陰茎の包皮切除術という、なんてことない手術を受けるために病院へ行った。

そして麻酔から覚めたら、ペニスそのものがなくなっていた。

医師は、術中にガンが見つかったので、
ペニスを切り取ったのは必要な措置だった、と主張。

しかし service, love and affection の喪失に対して損害賠償を求めて
訴訟を起こしたSeaton夫妻の弁護士は

事態は緊急を要するものではなかったし、
一家にはセカンドオピニオンを受ける機会が与えられるべきだった、と主張。

医師は2008年のプレスリリースで
「彼が癌になったことは気の毒だが、
その病状に適切かつ必要な治療を提供したことで
医師が責められるのは不当であり不合理である」。

面白いのは、包皮切除の手術となると、やっぱり、この人、
Diekema医師がコメントを求められたらしくて、

医師にこうした外科手術を行う権利があるかどうかは「難しい問題だ」。

「本当に命の危機が差し迫っている事態だったら、
医師は行動することができるし、また行動すべきです」

しかし

「患者を起こして、状況を患者と相談する時間があるなら、
一般にはそれが望ましいですね。とくに、ガンみたいな病気が分かって
臓器や四肢の切除が必要だということになる場合には」

Man goes in for circumcision, wakes up without penis: What happened?
Health Pop, August 19, 2011


この事件、すごくいろんな問題をはらんでいて、
考えていると芋づる式にあれこれ頭がいろんな方向に飛んでいくのだけど、

まず頭に浮かんだのは、
こういう場合に、日本だと、
患者は麻酔で眠らせたまま医師から家族に説明があって

「このまま切除するのがいいと思いますが?」
「じゃぁ、お願いします。おとーさんの命には代えられません」

家族は患者本人の自己決定権なんて、あまり考えずに、
むしろ患者と家族は一心同体みたいな感覚で
平気で代理決定してしまいそうな気がするんだけど、違うかな。

で、目が覚めて、患者は医師ではなくて家族を責める――。

患者が意思決定能力を失っているのは麻酔による一時的な状態であり、
患者が侵襲に同意したのも包皮切除術の範囲でしかないのだから、
これは家族が代理決定できることではない、と考えるのが
たぶん理屈で言えば正しいんだろうな、と思う。

もちろん、差し迫って命にかかわる緊急事態とかでは
また話は別なんだろうけど。

そういえば、この人の手術の時、奥さんは病院にいなかったんだろうか。
いたけど奥さんに代理決定権はないと思った医師が説明しなかったのか……。

ここには、患者本人が了承していない医療的侵襲は
患者の知らないガンヘの治療だった場合にも暴行に当たるのかどうかという一般的な問いと、

それが、たまたま別の外科手術の最中だったという状況ではどうか、という問いと、

無断で切除されてしまったのがペニスという
セクシュアリティとかアイデンティティと繋がった臓器だったことの問題と、
いくつか別種の問題が絡まり合っているような気がする。

最後の点では、
ペニスの切除というのは一般的な臓器の摘出というよりも、
むしろDiekema医師が触れている四肢の切断のほうに近いような……。

でもって、そういうことを考えていると、
「重症障害者には子宮なんか、どうせ用がないのだから」という理由で
QOL維持向上のために、または介護者の便宜のために摘出しても構わない……という論理に
いかにセンシティビティが欠けているか……ということを、また考えるし、

そして、もしかしたら、この事件、どこかで
Seatonさんが思いがけない形で突然にペニスを失ったことの意味とか衝撃の大きさに対して、
「ガンになった臓器なら切除するのが当たり前」としか受け止めない外科医の
センシティビティの欠落した対応が、実は裁判にまでなった要因の1つだったとか、

医療過誤の裁判って、一旦裁判になってしまえば
セカンドオピニオンを取りたかったとか、
その権利を侵害されたとか、自己決定権だとか、
論理で正当性を主張する以外になくなるけど、

案外、本当の問題は結果ではなく、
その結果を巡っての対応のプロセスで「誠意のない対応、心ない言動に傷つけられた」という
論理では主張しきれない、患者の痛みや傷つきの問題だったりするんじゃないのかなぁ……とか、

いろんなことが次々に脈絡もなく頭に浮かんでくる事件。
はたして、どういう議論になっていくのか。

裁判は月曜日から。
2011.08.20 / Top↑
パキスタンのポリオ撲滅で
ゲイツ財団と提携した円借款が検討されているとのニュースは
7月12日の補遺で拾っており、

これは、その続報――。

JICAの緒方貞子理事長とゲイツ財団の共同代表のビル・ゲイツ氏が
ポリオ撲滅で「戦略的パートナーシップ」を発表。

その手始めとして、
JICAはパキスタン政府に対して49億の円借款を行う。
ポリオ撲滅活動資金として、2013年まで。

ポリオは世界的には過去20年間で99%も減少しているが、
未だ感染が止められていない国が4カ国あり、パキスタンはその1つ。

今年1月、the National Emergency Action Plan 2011 for Polio Eradicationが開始され、
パキスタン政府あげてポリオ撲滅に取り組むことが約束されている。
(記事に、ゲイツ財団によって約束させられたという匂いが漂っていないでもない)

日本からのODAを資金に、世界銀行やユニセフ、WHOも一緒になって、取り組む。

成功裏にプロジェクトが実施された暁には
ゲイツ財団が償還を肩代わりするという革新的なシステムが採用された。

The Japan International Cooperation Agency(JICA) and the Bill & Melinda Gates Foundation Announce Partnership on Polio Eradication
PR Newswire, August 17


この記事を読んで思ったこととして、

① 特に注目したいのは、
この円借款が、“革新的な”「肩代わり」制度によるものだということ。

今回の「借金肩代わり制度」とは、
JICAの円借款をパキスタン政府に替わって返す、
つまりゲイツ財団が借金返済を肩代わりするもの。
もちろん、そこには条件がくっついていて、

if the project is successfully implemented

この successfully implemented って、
具体的には何を求められているんだろう?

目標通りのポリオ撲滅の実効が数値で示されること?
ポリオ撲滅には成功しなくとも、プロジェクトが予定通りに実施されること?
どこまでの実施で「予定通りに」とか「成功裏に」とみなされるのか?
その successfully が実際には「ビルを満足させるように」を意味することはないのか?

そうして 
子どもに銃を突きつけワクチン接種に見られるような
Bill Chill 現象は広がっていく……なんてことは?


②4月にこちらのエントリーで紹介した記事で
誰かが、ゲイツ財団による途上国でのワクチン推進はビッグ・ファーマを儲けさせ、
「慈善の名目で途上国政府が自己負担分を体よく吐き出させられているだけ」と
批判していたけれど、

これ、その自己負担分すら吐き出せない国に
その自己負担分や活動費用の部分を他国のODAで補わせるための”革新的なシステム”では?

実際、以下の2つのエントリーで眺めたように
6月13日のワクチンカンファで世界中から400億ドルが集まり、
「ワクチンの10年」の資金は既にめでたく揃っている。

日本も13日のカンファでGAVIに8億3000万円を約束(2011/6/17)
各国政府がワクチンだけで財布を閉じるなど「許されてはならない」……とGuardianがゲイツ財団の代弁(2011/6/17)

後者のGuardianの記事を書いた人などは、
「ワクチンの10年」資金はめでたく確保されたにしても、という前提で
「次にエイズがあるのだから財布を閉じるのはまだ早いぞ」と各国に警告を発しているくらいだ。

そうすると、パキスタンのポリオ撲滅のためのワクチン資金そのものは
既に確保されているわけだから、

それなら、ゲイツ財団による肩代わりを前提にしてまで円借款の必要が出てくるというのも、
なにやら不思議な話で、

今回の記事を雑駁に読むと、
つい「ワクチンへの国際援助」というだけでひとくくりして理解してしまうけど、
本当は私たちがつい思いこんでしまうワクチン費用ではなく、

パキスタンの自己負担分や推進活動資金を日本が肩代わりし、
それをさらにゲイツ財団が肩代わりして日本に償還する、ということなのでは?

せっかくゲイツ財団がワクチン代は世界中からかき集めてやったのに
自己負担分も担えず、推進活動費も出せない国は
いくらお尻を叩いてもワクチンに積極的にならないから
そこを他の国に補わせて、なにがなんでもワクチン推進に向かわせるためのシステム……?


③ 武田製薬にゲイツ財団から医療支援分野トップが送り込まれてきたのは5月。
それ以降、みるみる日本とゲイツ財団の関係が親密になっていくような気がするんだけど?


④ 6月18日の補遺から以下にコピペ。

ビル・ゲイツ氏がパキスタンの首相に電話をして、ワクチンによるポリオ絶滅について相談した。:ビン・ラディンの殺害を巡って米国とパキスタンの関係がこじれている時でも、“慈善家”ビル・ゲイツはこういうことが易々とできる。ということは、ビル・ゲイツは外交の上でも各国間に多大な影響力を持つというこ と。
http://www.thenews.com.pk/TodaysPrintDetail.aspx?ID=6824&Cat=13&dt=6/18/2011
http://app.com.pk/en_/index.php?option=com_content&task=view&id=142576&Itemid=2


【追記】
以下に続報があり、ゲイツ財団が肩代わり償還する条件は
「13年までにパキスタンのポリオが撲滅されること」。
http://www.thenews.com.pk/TodaysPrintDetail.aspx?ID=63652&Cat=4



【最近、続々と出ているゲイツ財団の慈善資本主義への批判を巡るエントリー】
ゲイツ財団のメディア・コントロール(2010/10/21)
ゲイツ財団がコークとマックに投資することの怪、そこから見えてくるもの(2011/3/9)
ゲイツ財団がインドで目論んでいるのはワクチン普及だけでなくGM農業改革も(2011/4/16)
やっと出た、ワクチンのため世界中からかき集められる資金に疑問の声(2011/6/16)
ゲイツ財団肝いり“HIV感染予防ゼリー”は「新たなタスキギ実験」?(2011/6/24)
「ゲイツ財団(の連携機関)が途上国の子どもに銃を突きつけワクチン接種」(2011/7/29)
公衆衛生でマラリア死8割減のエリトリアから「製薬会社株主ビル・ゲイツのワクチン開発」批判(2011/8/2)
2011.08.20 / Top↑
補遺でずっと追いかけているカナダのFarewell Foundationの集団訴訟を、裁判所が却下。ものすごい数のニュースが出ていて、それなりに衝撃を伴って流れている様子なのだけど、ただ「匿名の原告を含む集団訴訟はできない」という理由で、「もう1つの訴訟と合流してはどうか」と提案された、というもの。ちょっと興味深いのは、合流先の訴訟が求めているのは医師による自殺幇助の合法化、Farewell Foundationの求めていたのは仲間同士の自殺幇助の合法化だという違いがあること。
http://www.thestar.com/news/canada/article/1040977--b-c-right-to-die-group-has-case-tossed-competing-lawsuit-still-underway
http://www.vancouversun.com/news/Supreme+Court+throws+lawsuit+launched+right+group/5269257/story.html
http://www.ctvbc.ctv.ca/servlet/an/local/CTVNews/20110817/bc_assisted_suicide_farewell_lawsuit_110817/20110817/?hub=BritishColumbiaHome

NY市が障害者の虐待への積極的な対応に乗り出す。
http://www.nytimes.com/2011/08/18/nyregion/ny-moves-to-crack-down-on-abuse-of-developmentally-disabled.html?src=recg

カナダのナイアガラ地区で、ナーシング・ホームでネグレクトや虐待が頻発しているので、解決策の一環としてビデオカメラの設置を提案する声。入所者の保護のためにも、虐待を疑われる職員の保護のためにも。
http://www.610cktb.com/news/local/Story.aspx?ID=1523917

いろいろあった妊娠と、早産で生まれた子どもの状態などが影響しているのか、理屈抜きに可愛くてならないっ……みたいな母性的な愛情の高まりを感じない、新米お母さんの記事。
http://www.guardian.co.uk/lifeandstyle/2011/aug/18/baby-pregnancy-premature-birth?CMP=EMCGT_190811&

英国で6歳児向けのダイエット本。
http://www.guardian.co.uk/lifeandstyle/the-womens-blog-with-jane-martinson/2011/aug/17/diet-book-for-girls?CMP=EMCGT_180811&

米国老化研究所の研究で、肥満のマウスの寿命を44%アップする薬SRT-1720の開発に成功。肝脂肪を減少させ、インシュリンへの感度を上げる。現在、人で実験が進んでいるところ。病気予防に活用できると期待されるが、肥満するような生活を改善せず薬で対処できるということには道徳的な懸念も。
http://www.nytimes.com/2011/08/19/science/19fat.html?_r=1&nl=todaysheadlines&emc=tha23

英国の失業率が急増。
http://www.guardian.co.uk/society/2011/aug/17/unemployment-rises-sharply-figures?CMP=EMCGT_180811&

経済に疎いので、昨日の「株式市場のメルトダウン」って、知らなかった……。:これを書いている5分前に地元銀行の営業さんが来て、玄関先で「ウチは大丈夫です。○○市が倒れない限りだいじょうぶだと思います」って力強く言った。○○市が倒れない保証もない時代だよねって、そういう話してたつもりだったんだけど。だってギリシャって「倒れた」んだよね?
http://www.guardian.co.uk/business/2011/aug/19/world-markets-turmoil-live-blog?CMP=EMCGT_190811&
2011.08.19 / Top↑
英国で厄介な訴訟が起きたなぁ……と思っていたら、
米国ニュー・メキシコ州でも、なんともゲンナリな事件が起こっていた。

夫のArmondさん、92歳、妻のDorothyさん、90歳の
Rudolph夫妻は、それぞれ、いくつもの慢性病を持ち、そろそろ認知症気味でもあって、
一緒にAssisted Living施設(ナーシング・ホームよりも自立度の高い人向け)で暮らしてきたが、

いろんな病気と付き合いながら、このまま弱っていって人の世話になるのは耐え難い、
自分で死ぬ権利があると考えるに至って、夫婦そろって断食に入った。

今年1月のことらしい。

ところが断食3日目に施設の職員に自分たちの考えていることを話してしまったために、
慌てふためいた施設側は911に入所者の自殺企図として通報。
夫婦はその翌日には施設から退所させられ、民間住宅に移されてしまう。

夫婦はその住宅で計画を続行し、
1週間後に夫が、その翌日に妻が亡くなったという。

「終末期についての本人の意思を施設の運営者みたいな他者の意思が超えるなんて
そんなの、非人道的だ」、施設で暮らす高齢者は自分の終末期の権利が侵されるなんて
ちっとも知らないまま暮らしている、と

息子のRudolphさんは C&Cと一緒に
Peace at Life’s Endキャンペーンに乗り出す、とのこと。

施設側はコメントを拒んでいるが、
もしも夫婦の言う通りにさせた場合に
施設側にはネグレクトを問われる可能性があったので
「法的な懸念もあって退所という手段に出たのだろう、
夫婦のどちらにも経管栄養を正当化できるような病気がなかったことも
施設側としては苦しい判断になったのだろう」と専門家。

Elderly Couple Who Refused Nourishment Evicted From Retirement Home
International Business Times, August 18, 2011


いや、しかし……自分の施設で餓死自殺されても困るといって、
食べず飲まずで死のうとしているのが分かっている人を民間住宅に連れて行って、
「ここなら誰の責任にもならないから、どうぞ」って、そんな……。

でもって、そんなの酷い話だから、そういう目に遭う人がなくなるように、
誰でも年をとって死にたい人には、死んでもいい権利を認めて
さぁ、やっぱり安楽死の合法化を……って、そんな……。

んでもって、こういうことが起こると、必ずそこにはC&Cがいる……ときて、

もう、いったい、何をどう考えたらいいのか、ワケが分からなくなってきた。
ただ、もう、わちゃくちゃでござりますがな……って感じがして。


それにしても、実際に連れ出したのは一体だれなんだろう?

911は通報を受けて、どのように対応したんだろう?
まさか、911が夫婦の自殺企図を知りながら民間住宅へ運んじゃいけないのでは?
かといって、施設にだって夫婦を力づくで民間住宅へ移す権限があるとも思えないけど?
その民間住宅って、誰が見つけてきた、どういう性格の住宅?
息子はこの一連の事件の展開にどういう役回りだったのか?

「どうしても食べないというならウチには置いておけません。出て行って下さい」
「わかりました。出て行きます」

そういうやりとりがあれば、退所も民間住宅への引っ越しも
一応は本人意思ということにはなるのだろうし、
たぶん施設側はちゃんと書類も揃えているのだろうけど、
でも、これって、そういう問題なの?

なんだか不思議なことだらけの事件――。

じわ~っと不気味に感じられてくるのは、
「死の自己決定権」が長々と議論されることで、多くの人の頭の中で、
一定の年齢だとか一定の障害像の人の場合には「死は自己決定権」……という考えが
暗黙の了解として既に広がってきているんじゃないかなぁ……ということ。

どうしても死にたいと言うなら
あなたのような年齢と状態では、まぁ、理解できないわけでもなく
そりゃ、死ぬのは本人の勝手です。どーぞ、どーぞ。

ただ、それはあくまでも自己責任で、他人に迷惑をかけずにやってね。

そういう空気――。
2011.08.19 / Top↑
英国で、また大きな自殺幇助合法化訴訟が起きた。

脳卒中で全身マヒ状態に陥った男性(46)が
死ぬ権利を主張し、提訴。

仮名でMartinと称する男性は、3年前に脳幹出血で倒れた。
動かせるのは目とわずかに頭のみ。

コミュニケーションはNimbus3という意思疎通機器が
文字を見つめるMartinさんの視線によって
ゆっくりと単語を形成し読み上げ、文章にしていく。

脳卒中の6カ月後からずっと本人は死にたいと望んでいるが、
自分では自殺することもDignitasに赴くこともできない。

妻のFelicityさん(仮名)は
夫の気持ちは理解できるし、もしも死ぬのなら傍にいたいとは言うものの、
夫を愛しているし、自分は人として誰かの自殺に手を貸すことはできない、と。

そこで、訴訟によって死ぬ権利を訴え、
人を雇ってDignitasへ連れて行ってもらう、もしくは
英国内で栄養と水分を拒む決断をし
医師にその苦痛を取り除くケアをしてもらうことの
いずれかを可能に、と望んでいる。

英国のこれまでの自殺幇助合法化議論の流れでは
Debbie Purdy訴訟に次いで大きな節目となりそうな裁判であるため

非常に多くの記事が出てきている。

中には以下のGuardianのように、
早々と「この訴訟で英国でも自殺幇助が合法化されることも」などと
先走ったタイトルを打っているものも。

Guardianは、この事件を機に
DPPのガイドラインの非常に偏った個所だけを紹介する記事を書いたり、
さっそくに記者を送って本人にインタビューさせるなど、
BBCなみの合法化ロビーになったのかというくらい
なにやら力が入っている。

Assisted suicide could be ‘legalised’ in groundbreaking case
The Guardian, August 18, 2011

Martinさんへの取材ビデオはこちら ↓
Assisted suicide: why I want the right to die - video
The Guardian, August 18, 2011

09年のDPPのガイドラインについて、
「美しい夫婦愛」の写真つきでPurdyさんと一緒に取り上げているのが、こちらの記事 ↓
The law on assisted suicide
The Guardian, August 18, 2011


その、もはや合法化ロビーであることを多くの人が疑うことのないBBCは
Martinさんの弁護士の解釈を用いるという非常に微妙な表現で、
現在のDPPのガイドラインは家族の手助けを得られない人への「差別」だと書き、

たったそれだけのことで
「自殺幇助ガイドラインめぐる“平等”を求める男性の闘い」とタイトルを打つ。

一応、最後に障害者アドボケイトScopeの
これが認められたら現在の弱者への法的保護が弱まってしまうとの
懸念のコメントを引用してはいるけれども、

それを否定して見せるかのように、締めくくりはMartinさんが
Guardianの取材時に一文字一文字目で見つめることで語った以下の言葉。

「(批判する人たちは)自分のような暮らしをしてみればいい。
何も分かっていないくせに。
こんな人生は生きるに値しないんだ」

Man’s fight for ‘equality’ over assisted suicide guidelines
BBC, August 18, 2011


もともと英国の現状については
「自殺幇助がDignitasへ行ける財力のある人だけの特権になっており
差別だ」という議論は、ずいぶん前からありました。

合法化ロビーの次のステップの論法は、
「ガイドラインでは幇助してくれる人を自力で見つけられる人しか
自殺幇助を受けることができない。これは自力で探せない人に対する差別である。
この差別を解消するためには、ガイドラインみたいな小手先ではなく
やはり合法化に踏み切るしかない」のようですね。


【ガイドライン関連エントリー】
DPPの自殺幇助に関する起訴判断のガイドラインを読む 1(2010/3/8)
DPPの自殺幇助に関する起訴判断のガイドラインを読む 2(2010/3/8)
英国の自殺幇助ガイドライン後、初の判断は不起訴(2010/3/26)
英国DPP、家族による自殺幇助すでに20件も不起訴に(2010/12/15)
警察が「捜査しない」と判断する英国の「自殺幇助ガイドライン」の“すべり坂”(2011/7/15)

【これまでのまとめエントリー】
2009年を振り返る: 英国の自殺幇助合法化議論(2009/12/26)
2010年のまとめ: 安楽死・自殺幇助関連のデータ・資料(2010/12/27)

【Purdyさん関連エントリー】
MS女性、自殺幇助に法の明確化求める(2008/6/27)
親族の自殺協力に裁判所は法の明確化を拒む(2008/10/29)
自殺幇助希望のMS女性が求めた法の明確化、裁判所が却下(2009/2/20)
Debby PurdyさんのBBCインタビュー(2009/6/2)
自殺法改正案提出 Falconer議員 Timesに(2009/6/3)
MSの教育学者がヘリウム自殺、協力者を逮捕(英)(2009/6/26)
作家 Terry Pratchett ”自殺幇助法案”を支持(2009/7/1)
英国医師会、自殺幇助に関する法改正案支持動議を否決(2009/7/2)
英国上院、自殺幇助に関する改正法案を否決(2009/7/8)
Purdyさんの訴え認め、最高裁が自殺幇助で法の明確化を求める(2009/7/31)
Purdy判決受け、医師らも身を守るために方の明確化を求める(2009/8/15)
法曹関係者らの自殺幇助ガイダンス批判にDebbie Purdyさんが反論(2009/11/17)
Debbie Purdyさんが本を出版(2010/3/22) 
2011.08.19 / Top↑
フランスの安楽死事件で、Nicolas Bonnemaison医師に対する支持の声が医師の間に広がっている。
http://www.thelocal.fr/856/20110816/

この四半期のゲイツ財団のポートフォリオ。1位はバフェット氏から提供されたBerkshire Hathaway、3位、4位は例によってマックにコーク。それから5位が見るたびに象牙海岸の悲劇を思わせるWaste Management。
http://www.gurufocus.com/news/142698/bill--melinda-gates-foundation-reports-q2-portfolio

世界銀行のFood Price Watchから報告書。8月15日付。食糧が記録的な価格高騰ぶりを見せ、最も貧しい国々を直撃している。
http://web.worldbank.org/WBSITE/EXTERNAL/NEWS/0,,contentMDK:22982095~pagePK:34370~piPK:34424~theSitePK:4607,00.html

USAid、日本政府、クウェート政府からソマリアへの支援食糧の一部が盗まれ、売りに出されていたらしい。UNは、大した量じゃない、と問題視しない構え?
http://www.guardian.co.uk/global-development/2011/aug/16/somalia-food-aid-thefts-rejected?CMP=EMCGT_170811&

みやきち日記というブログの4月の記事。「人間って不安だと、他者をコントロールしたくなるものなのね」
http://d.hatena.ne.jp/miyakichi/20110405/p1

上記関連で、「世の中がどんどん虐待的な親のような場所になっていく」ということを去年のある時期から今年のどこかまで、しきりに書いていたような気がします。例えば以下のエントリーなど。
ACからEva Kittayそして「障害児の介護者でもある親」における問題の連環(2010/12/1)
「現代思想2月号 特集 うつ病新論」を読む 1: 社会の病理と精神医療の変容(2011/2/23)
2011年3月21日の補遺(「八日目の蝉」関連の項目)

15分でもいいから毎日運動すると寿命が伸びますよ。:一方では「長生きの努力をせよ」と尻を叩かれ、もう一方では「長生きせず、適当なところで自ら望んで死ね」と言われ……。
http://guardianmail.co.uk/go.asp?/bGUA005/x5VJ4G4/qYCE3G4

うつ病の母親を持った子どもは脳がその他の子どもとは違う。
http://www.medicalnewstoday.com/releases/232762.php
2011.08.19 / Top↑
だいぶ前からカタツムリの速度で読んでいる
Quelletteの“BIOETHICS AND DISABILITY  Toward a Disability-Conscious Bioethics”の
大まかな構成が見えてきたので、それについて。


① イントロダクション
冒頭で、Quelletteが本書を書く契機となった出来事が紹介されていて、
これがなかなか興味深い。その部分の概要は ↓

10年ほど前、QuelletteはNY州の上訴検察官として、重症障害がある女性患者の延命治療停止の決定を巡る訴訟を担当した。

当時のNY州では、その生涯に一度も自己決定能力を有したことのない患者の場合、延命治療の中止または差し控えの決定を医師にも家族にも認めていなかったが、その女性は既に明らかに末期で、栄養も水分も身体がもはや受け付けない状態だったので、経管栄養が患者の負担でしかないことは誰にとっても自明なことであり、誰が考えても中止が本人の最善の利益だと判断されるだろうと思い込んでいた。

ところが公判の当日、裁判所の前にやってきて、まるで日本の右翼の街宣車のような物々しい抗議行動を繰り広げたNot Dead Yetに心底たまげたのだという。(その時に自分が受けた攻撃や非難に比べれば、シャイボ事件の際の障害者運動の抵抗だって霞むほどだ……と書いているのは、ちょっと微笑ましい。よほど青天の霹靂で、理解の外だったのだろう)
Quelletteは、それを機に、障害学や障害者運動の主張するところに、とりあえず耳を傾ける努力を始める。(ここがQuelletteという人が並ではない、すごいところだと思う。)

そして10年――。

今なおQuelletteは、あのNYのケースの女性にとっては栄養と水分の停止が本人の最善の利益だったとする考えそのものは変わっていないが、障害学や障害者運動の歴史や理論を学び、またその後に起きた事件をそちらの視点からも検討するうちに、生命倫理学には障害学や障害者運動から学ぶべきことがある、と感じるようになった。(そういうあからさまな表現は避けて、あくまで中立的に書かれてはいるけれど)




で、この10年間に自分が考えてきたことの総括として本書を書き、
障害者に配慮ある生命倫理学というものに向かって
双方が歩み寄ろうと提言するというのが著者の意図。

② 生命倫理学と障害学のこれまでの概要
イントロダクションに続く章で
生命倫理学と障害学・障害者運動それぞれの議論や主張の変遷を概観。

同時に、どういう点で両者が際立って異なっているのか、
どこに対立点があるのかを簡単に眺めていく。

③ ケース・スタディ
3章から7章がいよいよ中心部分のケース・スタディ。

ここでは、
人の生涯を「乳児期」「児童期」「生殖期」「成人期」「終末期」に分け、
それぞれの時期の障害者の医療判断を巡って両者が対立した事件をとりあげ、
生命倫理学と障害学・障害者運動から出た議論を振り返り、考察する。

幼児期では Miller事件と Gonzalez事件。
児童期では Lee Larson’s Boys事件とAshley事件。
生殖期では Valevie N.事件と、Bob and Julie Egan事件。
成人期では Mary 事件、Larry McAfee事件、Scott Matthews事件。
終末期では Schiavo事件、Sheila Pouliot事件。

私が知っているのは4つだけで、
Miller事件はどこかで何度か読みかじった程度。
Schiavo事件については「知っている」という程度だけど
エントリーだけは結構あるかもしれない。(以下のエントリーの最後に関連をリンク)
Terry Shiavoさんの命日の寄せて(2010/3/3)

Gonzalez事件は私が初めて遭遇した「無益な治療」事件だったので、
ものすごく印象が強く、いくつかのエントリーで触れている。
テキサスの“無益なケア”法 Emilio Gonzales事件(2007/8/28)
ゴンザレス事件の裏話
生命倫理カンファレンス(Fost講演2)
TruogのGonzales事件批判

Ashley事件はご存知のように、当ブログのテーマそのもの。

Shiavo事件とAshley事件くらいしか日本語インターネットで見かけた記憶がないので
日本ではまだあまり広く知られていない事件が多いのかもしれない。

④ 和解に向けての提言
これらのケース・スタディを踏まえて、
最終第8章では、まず「和解に向けて」
互いの言い分に耳を傾け、共通のグラウンドを模索することの必要を説き、

実際に障害者に配慮した生命倫理学の構築に向けて何ができるか、
原理原則の点からの考察に続いて
濫用に対するセーフガードとしてプロセス重視を提言。

この「プロセス重視」というのは
Ashley事件を教訓にしてデュー・プロセスを構築せよという
Quelletteの成長抑制批判論文の主張を思い起こさせる。

その上で、ケース・スタディで取り上げた事件を
「障害者に配慮ある生命倫理」で考えるとどうなるか、
再考察の試みが展開されている。

              ――――――


私は系統立てて勉強していないので
②の概要は入門的な内容で、とても勉強になったけど、

「生命倫理学は、個別のケースでの判断を巡って
患者の利益と自己決定とを重視・考察する姿勢であるのに対して
障害学は、社会の出来事や在り方が障害者全般に及ぼす影響を中心的な問題とする」
という、括り方を始めとして、

いくつか、著者は生命倫理学の方にずいぶん甘いのではないかという印象を受ける個所も。

甘い、というよりも、ナイーブという方が正しいのか……。

Ashley事件の成長抑制批判論文にも強く感じたことなのだけど、
私はQuelletteの「学者的世間知らずの純情」に時々イラッとさせられることがある。

まるで
アカデミズムが政治的配慮や意図とは無縁なものであるかのように、
学問や学者が権力や利権からの要請でチョーチンを振ったことなど皆無であるかのように……。

2010年1月の成長抑制シンポでWilfondが使い、
その後のHCRの成長抑制WGの論文でも使われている
「共通のグラウンド」という言葉がどれだけ胡散臭いものかを考えると
もともと一部倫理学者は“承知”でやっていることではないか……と、
私はとてもQuelletteのように素直になれないし、

「無益な治療」論や臓器不足解消を巡る、
一部の非常にラディカルな生命倫理学者の発言に触れ、
その学問的な誠実を全く感じさせない強引な論理に呆れると、
医療コスト削減の社会的要請と「科学とテクノの簡単解決文化」の利権という
社会権力の御用学問としての生命倫理学の徒でしかない人たちの存在を疑わないではいられない。

私には
生命倫理学という学問の、学問的な誠実というものを
Quelletteが素直に本気で信じているように見えることが不思議でもあるのだけれど、

Quelletteが Miller事件の節で Peter Singer に言及した際のトーンから推測すると、
そうしたラディカルな生命倫理学者の主張はほとんどの学者には相手にされていない、
今なお異端に過ぎないと考えているのかもしれないし、

Quelletteは「和解への道 a path toward reconciliation」などという表現も、
もしかしたら、本気で信じて使っているのかもしれないし、

あるいは、生命倫理学という学問に対して、
障害への捉え方への再考を正面から求めるとしたら、
こういう姿勢が最も有効だということなのかも。

この辺りは、最後の章での
Quellette版「障害者に配慮ある生命倫理」による具体的な考察を読んでみたら
著者の意図がもう少しはっきりと見えてくるのだろうと思う。


いずれにせよ、
当ブログ周知のゴンザレス事件やアシュリー事件が
どのように考察されているのか非常に興味深いので、
まずはこれらの事件について楽しみに読んでみようと思います。



【Quellette“Bioethics and Disability”関連エントリー】
Alicia Quelletteの新刊「生命倫理と障害: 障害者に配慮ある生命倫理を目指して」(2011/6/22)
エリザベス・ブーヴィア事件: Quellette「生命倫理と障害」から(2011/8/9)
Sidney Miller事件: 障害新生児の救命と親の選択権(2011/8/16)

【Quelletteの論文関連エントリー】
09年のAshley事件批判論文については以下から4本。
「倫理委の検討は欠陥」とQuellette論文 1(2010/1/15)

10年の、子の身体改造をめぐる親の決定権批判論文については以下から4本。
Quellette論文(09)「子どもの身体に及ぶ親の権限を造り替える」 1: 概要
2011.08.17 / Top↑
昨日の補遺で拾ったイスラエルのジャーナリストのDignitas死の続報。
http://worldradio.ch/wrs/news/switzerland/tv-hosts-assisted-suicide-in-zurich-shines-light-o.shtml?26001

中国で精神障害のある友人の自殺を幇助した男性が禁固2年に処せられ、自殺幇助合法化議論が起こっている。一人っ子政策を進めてきた中国では、高齢者の介護を子ども世代が担うことに限界があり、その解決策として自殺幇助が議論されそうな雰囲気。
http://www.chinahearsay.com/assisted-suicide-in-china-a-new-case-and-a-new-debate/

フランスのNicolas Bonnemaison医師による安楽死事件。Bayonne病院救急病棟で複数の高齢患者にhelping to die。
http://www.connexionfrance.com/euthanasia-debate-physician-assisted-suicide-debate-france-illegal-doctor-bayonne-charged-12954-view-article.html

日本語記事でウォーレン・バフェット師がNYTに寄稿し富裕層への増税を提言。:http://blogs.yahoo.co.jp/spitzibara/63666851.htmlオバマ大統領が先月バフェット、ゲイツ両氏と会談していたし。そういえば、あの時「途上国じゃなくて米国政府にゼニ出せって言えば?」という声があったけど、「金持ち代表から金持ちに政府にゼニ出せって声を上げて」ってお願いしたのかな。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110816-00000010-jij-int

上記関連……と思う、たまたま目についた4月の日本語記事。「財政赤字334兆円削減=米大統領が包括案―共和党は富裕層増税に反発」
http://www.jiji.com/jc/zc?k=201104/2011041400018&rel=y&g=int

ゲイツ財団がComcastの株を取得。
http://blogs.wsj.com/deals/2011/08/15/bill-gatess-foundation-buys-comcast-stock/

老後の資金の準備意識が足りない「ベビー・ブーマーズ時限爆弾」についてLAT社説。
http://www.latimes.com/news/opinion/opinionla/la-ed-longterm-20110815,0,4855506.story

CTによる肺がん検診の是非が米国で論争になっている。:CTスキャンでの被ばくは前にもNYTなどで議論になっていた。医療機器を巡るスキャンダルも。
http://www.washingtonpost.com/national/health-science/ct-scans-for-lung-cancer-triggers-debate/2011/08/10/gIQASTbhHJ_story.html?wpisrc=nl_cuzheads
2011.08.17 / Top↑
気が付いたら、その節を結構マジに一気に読んでしまったので、
これまで何度か見聞きしたことがあるという程度だったMiller事件について
Quellette“Bioethics and Disability”から取りまとめておきたい。


Signey Millerは1990年8月17日にテキサス州で生まれた。

妊娠23週で陣痛が起こって母親が入院。
胎児は629グラムで余りに未熟なため陣痛を薬で止めたが、
母体の方に感染があることが分かり、陣痛の抑制も帝王切開も中絶も無理な状態に。

そこで産ませるしかないことになるのだけれど、

その際、両親は医師らから23週の超未熟児は生まれても助からないこと、
助かっても人工呼吸器をつけること、将来重い障害を負うことなどを聞かされて
救命も新生児専門医の立ち会いも望まず、緩和ケアのみを希望した。
それについてはカルテにも記載。

ところが、父親が葬儀の手配で病院を出た後、
スタッフの一人から事情が伝わり、病院側は会議を開く。

病院には、500グラムを超えた新生児の場合には
出産に新生児科医師を立ち合せ、救命することが方針があったため
その会議で病院は両親との話し合いを撤回し、救命へと方針転換する。

戻ってきて方針変更を聞かされた父親はショックを受けるが
止めるすべはなく、そうこうするうちにSidneyが生まれる。

両親が「英雄的な措置」は望まないと回答して11時間後のことだった。

産声を上げ、特に障害も目につかなかった。
待機していた新生児科医師によって手動で呼吸補助の上、保育器に入れて人工呼吸器が繋がれた。
当初の治療の経過は良好でNICUに入れられるが、
4日目には当初両親に説明された通りの合併症が起きる。

脳出血。それが原因となる血栓症。そして水頭症。
両親は次々に求められる治療への同意書にサインをする。
手術への同意書にもサインした。誰からも治療差し控えの話など出なかったという。

NICUに2カ月いた後、SidneyはTexas子ども病院へ転院。
生後6カ月で退院し、以来、定期的に脳のシャントの交換手術を受けるなど
入退院を繰り返しながら、両親が家でケアしているが
7歳児のSidneyには重症障害があり、全介助。

Could not walk, talk, feed herself, or sit up on her own…..[She]was legally blind, suffered from severe mental retardation, cerebral palsy, seizures, and spastic quadriparesis in her limbs. She could not be toilet-trained and required a shunt in her brain to drain fluids that accumulate that and needed care twenty-four hours a day.

14歳に当たる2004年の報告でも状態は変わっていない。

両親は自分たちの同意なしに救命したとして病院を訴え、
1998年1月の最初の判決では陪審員が両親の訴えを認めて
2940万ドルの医療費とその利息として1750万ドル、賠償金として1350万ドルの支払いを
病院側に命じた。

ところが上訴裁判所は、それを覆し、一切の支払いを認めなかった。

テキサスで認められているのは、
ターミナルな子どもの場合に親が治療を差し控えることのみであり、
Sidneyのようなターミナルでない子どもに緊急に必要な生命維持治療を差し控える権限は親にはなく、
そうした緊急時に医療職が親の希望に従う義務はない。

損傷された命と完全に失われた命(impaired life and no life at all)の
どちらかに決めることは裁判所にもできないので、緊急時には
医師は親の判断を超えて救命することができる、と。

テキサス州の最高裁の判断も、概ね、そうした路線のもので

親は一般的に子どもの最善の利益によって決定するとされているものの
常に親が子どもの利益で行動するとは限らないのだから親の決定権は絶対ではなく、
必要に応じて州が介入することとされる、

また同意なしに治療することは一般には暴行とされるが、
緊急時には親の反対を押し切って治療することが認められる、

よって出産以前の予測に基づいての親の判断は
実際に生まれてきたSidneyの状態を医師がアセスメントしてからの判断に及ばず、
緊急事態で親の同意なく救命治療を行ったことは暴行には当たらない、など。


この事件は障害学や障害者運動家らからは勝利として捉えられた。

治療の中止や差し控えが、障害のある生に対する医療の側の
ステレオタイプや偏見に基づいていると主張し、
障害者にも平等な医療を求める障害学・障害者運動の言説を引き、
Quelletteは、6ページばかりを割いて解説している。

引用されているのは Joseph P. Shapiro, Adrienne Asch, Sam Bagenstos。

一方、生命倫理の側では反応が非常に複雑で、12ページ。

特に興味深い点では
Miller裁判が進行していた5年間、テキサスの医師の間には
親の意思を無視して救命すると訴えられるかもしれないという危機感があった。
しかし判決が、障害新生児のQOLを両親がどのように捉えていようと
治療を提供する判断を医師に与えるものだったために、
では、子どもの苦しみと、QOL判断からの子どもの最善の利益についてはどうなるのだ、
というのが生命倫理学の議論の中心課題となった、という下り。

もともと生命倫理には、
治療をしないことが最善の利益になりうる、との考えが定着していたので、
その点が問題となった。

障害のある子どもに治療可能な病気がある場合、という捉え方では
レーガンの過剰防衛的な施策に結び付いたBaby Doe事件に続く事件となったが、
その間に、社会の姿勢も変化していたことも大きい。

この辺りのことは、個人的には
この事件がテキサス州で起きていることが特に興味深い感じがしました。

同州で「無益な治療」法ができたのは1999年のこと。それはすなわち
ミラー裁判の上訴審と並行して「無益な治療」法制定の議論が行われていたことになるのでは?


ただQuelletteが引いている複雑な議論を
一読で正確に把握するのは私には無理なので
以下に言及されている学者の名前のみ。

引用されているのは George Annas, John Robertson,
William Winslade(Miller事件の担当倫理学者。後に事件の詳細を論文にまとめた)Loretta Kopelman,
Robert McCormick, Arthur Caplan, Cynthia Cohen,
(この3人はおおむね医師と親との間で個別に諸々を踏まえて判断すべき、との見解)
Hilde Lindrermann, Marian Verkerk,
(この2人はグローニンゲン・プロトコルを持ちだして家族の決定権を全面的に支持)

最後にQuelletteは
重症障害児は殺してもよいとするPeter Singerを“Practical Ethics”から引用し、
QOLについてどう考えるかが全くそれぞれの主観にゆだねられていると指摘している。


【Quellette“Bioethics and Disability”関連エントリー】
Alicia Quelletteの新刊「生命倫理と障害: 障害者に配慮ある生命倫理を目指して」(2011/6/22)
エリザベス・ブーヴィア事件: Quellette「生命倫理と障害」から(2011/8/9)

【Quelletteの論文関連エントリー】
09年のAshley事件批判論文については以下から4本。
「倫理委の検討は欠陥」とQuellette論文 1(2010/1/15)

子の身体改造をめぐる親の決定権批判論文については以下から4本。
Quellette論文(09)「子どもの身体に及ぶ親の権限を造り替える」 1: 概要


なお、Caplan、Lindermann、Singerについては、
当ブログでもいくつかエントリ―がありますが、
結構な数になるのでリンクは控えました。
2011.08.17 / Top↑
3月に以下のエントリーで紹介した件で、

NC州で、かつての強制不妊事業の犠牲者への補償に向け知事命令(2011/3/21)

知事の命令を受けたタスク・フォースから中間報告が出たらしい。

What Sorts of PeopleのWilson氏がエントリーで紹介している
最終委員会でのLarry Womble議員のスピーチが胸を打つ。

和訳するだけの余裕はないので、とりあず英文のまま。

……と思ったのだけど、
コピペしているうちに、あまりにも熱くて、またも感動してしまったので
どうしても……というところだけ、日本語に。

Eugenics [is] a fancy name for sterilization. I am very compassionate about this issue and have worked on it for 10 years. If I’ve been involved for 10 years, what do you think about the victims themselves and it is a shame and disgrace what has happened to them. I thank the Task Force for all their work. But at the same time, I cannot be timid about this, I can’t be Mille mouthed. I cannot be cute about this because it’s not a cute and nice subject. We did to humans what we do to animals, we spade and neuter animals not people. And we did this to children 10 and 11 and 12 years old, they were not criminals, they did nothing wrong. We talk about we are the land the free and the home of the brave and when we do this to children and I’m wondering how sincere we really are.
And whatever term we want to call it to make it seem nice, it is compensation. That’s what I’ve been calling it in my bills and in my legislation. You compensate people for something you’ve done to them that they do not deserve. And I understand being on a committee and being on a Task Force, I’ve been on one myself. Some things you may not say and you don’t want to say, something you may feel are inappropriate. But when you have those live human beings come before you like they did at the last meeting how in the world can you stand to dismiss them?
How do you have victims come forward and speak before you and you don’t stand aggressively for them? I don’t care how much it hurts the State, the State did it. The State should have to pay for it! I’m here to represent the state of NC and not for anyone to like me. This is horrendous. It almost borders on genocide. We talk about the communist countries, Osama Bin Laden, third world counties. Well we have done things just as bad, if not worse. To children!
I come just a little frustrated when I see people try to skip around it. Dance around it, rather than face an issue for what it is. It’s an ungodly thing that we have done to these children. I’m here because right is right and right won’t wrong nobody. It is no amount of money that you can give to somebody. But it can’t be something that will be a double whammy to them. You’re victimizing them again! What is $10,000? What is $20,000? What is $50,000? It is really nothing, that you have destroyed your family. And this was done forcibly, by the welfare department, county departments, and you talking about private rights and citizens rights. They didn’t have any rights and if they did you violated them! I’m not talking about you personally on the panel or the staff. I’m talking about the state of North Carolina, the government. And yes I’m talking about the legislature, I serve in the legislature and it’s a wrong thing what the legislature did.

優生思想とは、うわべはきれいな名前が付いていますが、不妊術のことです。

私にはこれをきれいな言葉で語ることはできません。きれいではない醜い問題だからです。我々は動物にすることを人間に対して行ったのです。……それを10歳や11歳や12歳という子どもたちに行ったのです。犯罪者でもなければ、何の罪もない子どもたちに。アメリカは自由の国だとか勇者の祖国だとか言いながら、子どもたちにこんなことをする。なにが自由の国なのだ勇者の祖国なのだと私は思います。

どんなにきれいごとの名前で誤魔化そうとしても、これは償いです。だから私は提出した法案でも法文でも、そう称してきました。不当な理由で誰かにやってしまったことには、償いをするものです。

それが州にとってどれほど手痛い出費になろうと、州がやったことなのだから、州が償うのが筋というものでしょう!……行われたのはむごいことです。ほとんど大量殺戮に近いほどの。共産圏がどうの、オサマ・ビンラディンがどうの、第三世界がどうのと言いながら、でも我々がやったことだって彼らとちっとも変らない。しかも、子どもたちに対して!

カネをいくら払おうと、そんなものは何にもならない。家族を崩壊させたのですよ! 強制的に、福祉局が、郡の機関が。それで、よくも個人の権利だの市民権だのと言えるものだ。この人たちには何の権利もなかったではないか。あっても踏みにじったではないか。……(略)



North Carolina Eugenics Task Force, Preliminary Report
What Sorts of People, August 2, 2011

州の担当部局
NC Justice for Sterilization Victims Foundationのサイトはこちら
2011.08.17 / Top↑
イスラエルのジャーナリストがDignitasで自殺して、イスラエルで自殺幇助が議論になっているらしい。
http://www.worldcrunch.com/journalists-swiss-suicide-sparks-euthanasia-debate-israel/3597

米国で「逆・無益な治療」訴訟2つ。つまり、本人の意思に反して蘇生した、と訴えたもの。
http://medicalfutility.blogspot.com/2011/08/resuscitation-over-patient-objections.html

製薬会社はFacebookでも特別扱いを受けていたらしい。Wallに一般人の書き込みができないようにしてあったとか。その優遇策を中止された途端に、Facebookのページをたたむビッグ・ファーマが相次いでいるとか。
http://www.washingtonpost.com/national/health-science/pharmaceutical-companies-lose-protections-on-facebook-decide-to-close-pages/2011/07/22/gIQATQGFBJ_story.html?wpisrc=nl_cuzheads

米国の医療改革法が国民に健康保険への加入を義務付けていることについて、憲法違反だとの判決が相次いでいる。
http://www.washingtonpost.com/national/health-science/appeals-court-strikes-down-health-care-laws-insurance-mandate/2011/08/12/gIQAAml1BJ_story.html?wpisrc=nl_cuzheads
http://www.washingtonpost.com/blogs/ezra-klein/post/health-care-law-individual-mandate-ruled-unconstitutional-by-11th-circuit-federal-appeals-court/2011/08/12/gIQAq1OSBJ_blog.html?wpisrc=nl_cuzheads

上記関連。共和党が同法のメディケア経費削減委員会を攻撃。
http://www.washingtonpost.com/national/health-science/medicare-cost-cutting-board-is-under-fire/2011/08/09/gIQAyDP8AJ_story.html?wpisrc=nl_cuzheads

高齢者の精神障害での入院は減少傾向にある一方で、若年層での短期入院は増加している。米の報告。
http://www.medicalnewstoday.com/releases/232642.php

入所施設には空きがあるというのに、高齢者が病院のベッドを占領している、と豪で。
http://www.canberratimes.com.au/news/local/news/general/elderly-in-hospital-despite-agedcare-spaces/2257426.aspx?src=enews

このところ続いている、無用な実験に類人猿を使うな、という話題またも。
http://www.washingtonpost.com/national/health-science/chimpanzee-research-an-endangered-species-as-experts-debate-usefulness-ethics/2011/08/12/gIQAGt0xDJ_story.html?wpisrc=nl_cuzheads

ガウタマ・シンラン・ソリドゥスさんのブログ記事で「予算委員会公聴会 菊池英博『こうすれば日本は甦る!現在でも財政危機ではない、消費税は0%にできる』」。:日本だけじゃなくて、世界中がこういうところに向かっているような気が私はする。国ごとの経済は、どの国でも、もう、もたなくなっているんじゃないか、と。各国経済を破たんさせてでも、グローバル人でなしネオリベ金融(慈善)資本主義経済によってさらに肥え太る人たちがいるから? あ、もちろん私はただの無知な素人なので根拠はないけど。
http://blogs.yahoo.co.jp/solidussolidarity/34988180.html

若年ALSの遺伝子変異がわかった。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/232682.php


2011.08.17 / Top↑
カナダのRasouli訴訟、最高裁へ。
http://medicalfutility.blogspot.com/2011/08/cuthbertson-v-rasouli-going-to-supreme.html

【Rasouli裁判のエントリー】
「“治療停止”も“治療”だから同意は必要」とOntario上位裁判所(2011/5/17)
「患者に選択や同意させてて医療がやってられるか」Razouli裁判続報(2011/5/19)

カリフォルニア州の財政難から、倫理問題を起こして病院から懲罰を受けた医師を取り締まる機能が働かず、そうした医師が放置されている。
http://www.propublica.org/blog/item/side-effect-of-fiscal-constraints-dangerous-docs-undiscplined-in-california

NYT。先日からあちこちで出ている、類人猿を安易に実験に使うな、という声。:一部のトランスヒューマ二ストやラディカルなパーソン論者の感覚から行くと、知的レベルが高い大型類人猿の代わりに脳死者や植物状態の人など、“パーソン”ではない人間を実験利用しようという声が起こってきても不思議ではないような気がする。考えるだけでも吐き気がしそうだけども。
Stop Using Chimps as Guinea Pigs: Experiments involving great apes do not make sense scientifically, financially or ethically.

日本の、いってみれば“慈悲殺”の事件報道なのだけど、「承諾得て妻を殺害」というタイトルになっている。:英国で「よくぞ殺した」と言わんばかりの時期があったから、こういうのを見ると、日本の感覚のまっとうさに、ちょっとほっとする。
http://sankei.jp.msn.com/region/news/110812/kyt11081202040001-n1.htm

「私の中のあなた」のレビュー以来、どうもニセモノ臭いなぁと思っていた沢木光太郎の「深夜特急3」についての、まー、胸がすく読後感。このブログに書かれていること、私は団塊の世代の左翼男性の密かな(屈折した?)権威主義に通じていくような気がして、快哉を叫びつつ読んだ。
http://keiko5.blog108.fc2.com/blog-entry-55.html

2014年から2015年にかけて、NHSの費用が英国の歳出の30%くらいに上る。
http://www.sterilizationvictims.nc.gov/

英国で喘息とか糖尿病などに気付かずに、新生児が死亡するケースが増えている。:かなり気になるニュース。
http://www.guardian.co.uk/society/2011/aug/09/uk-childbirth-deaths-underlying-illness

MRIとかCTなどの検査を13週間以上待っている患者が英国で9倍に。6週間以上待っている患者は4倍に。
http://www.guardian.co.uk/society/2011/aug/10/nhs-waiting-times?CMP=EMCGT_110811&

アルツハイマー病を予防する薬、5年以内に。:治療薬よりも予防薬の方が早く?
http://www.medicalnewstoday.com/releases/232507.php
2011.08.13 / Top↑
この衝撃的なNYTの記事を書いているのはMinnesota大学の生命倫理学者。
こういう生命倫理学者もいると知ると、ほっとしますが、
それにしてもショッキングな「タネまき治験」の実態――。

「タネまき治験」とは表向きは通常の治験を装いつつ、
その実、既に認可されていて、さらに治験を行う必要もない薬を
ただ医師らに周知させるためのマーケッティング戦略として行われるもので、

通常、数百人の医師を選んで参加させ、
リクルートした患者一人当たりで報酬が支払われる。
研究期間が長くなれば、それだけ医師はその薬に馴染んで、
研究終了後にも処方する確率が上がる。それが狙い。

しかし、
科学的な必要もメリットもほとんどない研究に参加させられる患者の中には
犠牲になる人もある。

例えば先月、内科学会誌に報告された
Pfizerによるてんかんの治療薬 Neurontinの「タネまき実験」では、
研究者らが未熟だったことに加えて研究デザインにも問題があり、
2700人の被験者の内、11人が死に、73人以上が「深刻な副作用」を経験したという。

それでも大きなニュースになることもなく、懲罰も謝罪もなく
国の生命倫理委員会が調査に入るという動きもない。

その理由1つは「タネまき治験」に過ぎないから。

そんな「タネまき治験」がこのところ急増しているという。
しかし、DFAが「タネまき治験」は研究とみなさないので、
恐ろしいことに、どの程度行われているか実態は誰にも分からない。

例えば、2004年度の抗うつ薬Lexaproの「マーケティング計画」では、
「マーケティング戦略」の項目に102件のフェーズ4治験が挙げられている。
(「タネまき治験」は登録上はフェーズ4として扱われる)

また、メルク社のやった悪名高いAdvantage実験なるものもある。

訴訟の文書によると
メルク社のマーケッティング部門が行った鎮痛剤Vioxxの「タネまき治験」Advantageは
考案も運用もメルク社のマーケティング部によるものだった。

3人の被験者が死に、5人が心臓マヒをおこした。
それでもVioxxが認可済みであり違法な治験ではないことから、
DFAはこれを研究スキャンダルとはみなさず、
タネまき治験の憂慮すべき実態が明らかになっても懲罰も行っていない。

私はぜんぜん読めていないけど、
Advantage実験についてはこちら。
どうやら、あれこれ曰くつきの骨粗鬆症がらみ?

かつて、治験は研究機関が行うものだったが、
1990年代から製薬会社は民間に請け負わせてコスト削減を図り始めた。
そこで、治験を進める動機が知見から利益へと移っていく。

それにつれて、被験者の人権を守るための機関であるはずの組織内審査委員会IRBまでが
それ自体が営利団体となり、果ては研究のスポンサーによって雇われる始末。
あるIRBの審査が厳しければ、別のIRBの審査を受ければよい、というのが実情。

連邦政府が被験者保護のための規制を見直すといっているが
IRBには膨大なカネが絡んだグローバルな民間企業の研究を監督する力がないことを
そろそろ正面から認めて、金銭的にも政治的にも独立した監査システムを作るべきだ、と
著者は提言している。

記事タイトルは「何の役にも立たない研究、リアルな害」。

Useless Studies, Real Harm
The New York Times, July 28, 2011



IRBが既に民間企業の営利事業になって、
研究対象になる薬や技術の販売元が直接雇っていたり、
カネによってどうにでも影響・操作できる存在に堕している実態の詳細は
2007年に以下の事件で読み、衝撃を受けた記憶があります ↓

遺伝子治療で死者(2007/8/6)
遺伝子治療で死者 続報(審査委員会は民間企業?)(2007/8/7)
死者出た遺伝子治療実験に再開許可(2007/1126)


以下は、関係があるかもしれないエントリー ↓
GSKが日本で7~17歳を対象にパキシルの臨床実験、現在“参加者をリクルート”中(2010/6/12)
ゲイツ財団がコークとマックに投資することの怪、そこから見えてくるもの(2011/3/9)
(ビッグ・ファーマが途上国を人体実験場にしている実態が、ここに少し)

“エレファントマン薬物実験”の怪(2008/6/30)
ファイザー製薬ナイジェリアの子どもに違法な治験、11人が死亡(2009/2/1)
2011.08.13 / Top↑
先週、ミュウを迎えに行ったら、
重心施設に向かう廊下でスタッフの一人とばったり出くわした。

「この前、プールで遊んだんですよ」
「えっ?」

いきなり聞かされたものだから、心底、仰天した。

「夏にプール」で仰天するなんて、大げさな……と思われるかもしれないけど、
寝たきりの大人サイズの体がねじれていたり、ねじれたなりに硬直していたりする
重い障害のある人と介護者にとって、プールに入る(入れる)というのが、どれだけ大変なことか……。

ミュウが小さなうちは、我が家でも夏になれば海にも連れて行ったし、
家の前に親子3人が余裕で遊べるほど大きなプールを組み立てもした。

おむすびをいっぱい作っておいて、プールで遊んだ後は
濡れたままの身体で、ビーチパラソルの下で、おむすびを頬張る。
そういうのが我が家の夏の定番だった。

6歳の頃だったか、
どうしても上がらないと言い張るので、ついつい遊ばせていたら
唇が青ざめてきたので、ついに強制退去に及び、
プールから引きあげて玄関のタオルの上に下ろしたとたんに、
近所中に響き渡るどでかい抗議の泣き声を放ち、
そのまま長い間盛大に泣き続けた年があった。

言葉を持たない子が
「まだ、やるんだぁぁぁぁ!!!」
「なんで、勝手にやめるんだぁぁぁぁ!!」
「こんなの許せないぃぃぃぃぃ!!!」と
仰向けで空中に地団太踏みながら猛烈に怒りまくっていた。

本人に聞くと「覚えていない」フリをしているけど
夏になると父と母の間で必ず出てくる思い出話だ。

学校に上がってからは、
毎年、授業で何回かスポーツセンターの温水プールに入れてもらって、
そのたびにミュウはホンモノのプールでごきげんだった。

小学校時代には、夏休みに家でプールを出す時に、
担任が水着を持ってきて一緒に遊んだこともあった。

でも、中学校、高校と体が大きくなるにつれ、
家の前にプールを出すことは少なくなっていった。

準備もそれなりに大変なのだけれど、これは元気なうちにルンルンとやるからいい。
水に入った後、どっと重たく疲れた体での後片付けが、実はものすごくしんどい。

それから、ここは実際に障害のある子どもと生活している人でなければ
なかなか分かってもらえないところだろうけど、
プール遊びの後にも、子どもの介護は常と同じく続くので、
着替え、オムツ交換、車イスへのトランスファー、食事作り、食事介助、
食事の後片付けと並行して薬を飲ませて、歯を磨いて顔を拭いて、
トランスファー、オムツ交換、着替えて、トランスファー、本を読んで、寝かせて、
一緒に寝て、夜の間、何度か寝がえりをさせて、喉が乾いたと言えば
夜中に起きだして冷蔵庫に取りに行って飲ませて、またオムツを替えて、
寝てくれるかと思ったら2時や3時にキャピキャピされて
虐待に及びそうな自分を必死で抑制し、そのことにさらにぐったりとし……と

非日常的なことをやって非日常的な疲れ方をしてしまったからといって
省略できることはないし(さすがにプールに入った日はシャワーだけはパス)
誰か替わってくれる人がいるわけでもなく、
重く疲れた体を娘の幸せそうな笑顔で励ましながら
父と母とでいつもと同じようにこなしていくしかない。

で、学校でホンモノのプールに入れてもらうのをいいことに、
だんだんと我が家のプールには出番がなくなっていった。

高等部を卒業するころには、
親の方も通常の介護で腰やひざをやられることが増えて来て、
もうプールなんて考えられなかった。

高等部を卒業した次の年だったか、その次だったか、
施設の方で何人かずつ順番に室内プールへ連れて行ってくださったけれど、

コイズミ政権の露骨な福祉切り捨てからこっち
年々ジリジリと職員の数は減り、残った職員の半数以上がいつのまにか非正規となって、
どうかすると、みんな、目の下にクマを作って働いておられる。

そんな姿を見ていると、
ミュウの人生で、夏にプール遊びができる季節そのものが
もう終わったんだなぁ……と、なんとなく思っていた。

2年前に
「たぶん親も本人も体力的に最後のチャンスだから」とUSJ旅行を敢行したのと同じような意味合いで、
「夏にプールで遊ぶ」という時間も、もうミュウにはないのだろうな、と漠然と思っていた。

そして、そんなことを思うたびに、
大事な宝物を手のひらで転がしていとおしむみたいに
玄関で抗議の爆泣きを続けた、あのミュウの姿を思い出しては夫婦で懐かしんでみたりする。

だから、この夏のはじめに、
園の駐車場の一角に、真新しい大きな組み立て式プールが出現した時にも、
療育園の隣にある肢体不自由児施設が設置したプールだというのはすぐに分かったし、
それは我が子とは無関係なものとして、特に意識して目を止めることもなかった。

なので、廊下で出会いがしらに「プールで遊びました」と聞かされて、
本当に、心底、仰天してしまった、というわけなのです。

「もう何年も、園ではそういうことをしていないし、
こういう言い方もナンですけど、もうちょっと年をとってくると
入りたくても体力的に入れなくなったりもするから、
若い人たちだけでも、今の内に入れてあげたいということになって……」

思わず、じん、と涙ぐんでしまった。

この人たちだって、過酷な労働環境で、
日常の普通の仕事をこなすだけでも疲れ果てているのに、
こんな猛暑の夏に、そこに追加して、そんなハードな計画を……と
思うと、心の底からありがたくて、

そして、そのおかげで、
もう二度とプールに入ることなどないだろうと諦めていたウチの子が
また、そういう経験ができたんだ、楽しかったんだ、と思うと
じん……と嬉しさが心に沁みてきて。

「ミュウさん、大喜びで、キャーキャー言ってました。
金魚すくいのポイが気に入って、頑として放さないんですよ」

そこで、また我々夫婦は「あれは、たしか6歳の夏に……」
例の抗議の大号泣の思い出話をひとくさり。
大笑いしつつ、喋りながらまた涙ぐみつつ、
ひょいっと抱き上げれば、どこへでも行け
何でもさせてやれた昔のヒトコマを披露する。

療育園に行くと、いつもの連絡ノートにプール遊びの写真が3枚はさんであった。

オシャレな水着を着せてもらい、浮き輪に入って職員さんに支えられているミュウ。
口をとがらせて、ポイでプラスチックの金魚を掬いにいくのに熱中している。

水をバシャバシャさせながら顔全体で「ギャッハー」と喜ぶミュウと、
ミュウの隣で大きな浮き輪に入ってくつろぐ、40代のヨーコさん。
その向こうで、何が気に入らないのか、ぶすっとふくれ面になっている、みっちゃん。

そして、最後の写真は、
和やかな表情で、ゆらゆら水を楽しんでいるミュウ。
そこにいるウチの娘は、親にはあまり見せることのない23歳の「女性」の顔をしていた。

穏やかな時間、ゆらぐ水面に夏の陽がキラキラして……。


もちろん目の前にいるミュウの笑顔は
いつだって母を一番ハッピーにしてくれるマジックなのだけれど、
いつからか、親の知らないミュウの時間の中で、この子が見せる笑顔やくつろいだ表情に
何よりもかけがえのない嬉しいものを母は感じるようになった。

その写真を何度も繰り返し眺めながら、つくづく思う。

QOLを決めるのは、その人の障害の種類や程度じゃない。
QOLは、周りにいる人たちの、その人への思いが決める――。

そして、たぶん、その思いを実現可能にする社会資源とが――。


その後、父と母はお盆休みに向けて、町に家庭用のプールを探しに行きました。

ミュウが体を伸ばして入れるサイズでは売れ残りの最後の一つだったため、
ラッキーなことに半額でゲット。

昨夜も腰に湿布を貼って寝たことを思えば、
あはは。もう、ほとんど「決死の覚悟」です。

加えて、これだけ酷暑だと、
本当に外で遊べるかどうかも分からない。

でもね。

昔のようにプールを用意して、
梅干しと昆布と海苔と沢庵もそろえて、
お盆にいつもよりちょっとだけゆっくり家に帰ってくるミュウを待ちたかったんだ。今年は――。
2011.08.13 / Top↑
恐らく世界で初めてではないか、と言われているらしい、イスラエルの判決で、

交通事故で死んだ17歳の少女から、
卵子を採取、冷凍保存することが家族に認められた。

凍結胚の方が凍結卵子よりも着床率がよいため、
家族はドナーの精子を使って胚にした上で冷凍保存することを望んだが、

そちらの望みは認められなかった。

すでに採取と冷凍保存は終わっているとのこと。


少女の名前は Chen Aida Ayashさん。
「事故から1週間後に亡くなった」後で、
家族は臓器提供に同意し、

さらに卵子の採取などへの許可を裁判所に求めたもの。

今回、家族の要望の理由や動機は一切公表されていないが、

イスラエルで New Family という家族の権利アドボケイト団体を
立ち上げた弁護士 Irit Rosenblum氏は
問題は本人の同意だろう、と。

たとえ17歳であっても、
子どもを産んで子孫を残したいという望みを口にしていたとすれば、
そして「それを家族が事実として証明できれば、
特に許可しない理由は見当たりません」

男性の精子が死後に採取された前例は沢山あり、

イスラエルでも2007年に代理母を利用して孫がほしいと
望んだ両親の願いがかなえられたケースもあるし、

今年初めにも、さらに1家族から
亡くなった息子の精子で孫がほしいと訴訟が起きている。

Rosenblum氏は Ayashさんの卵子で子どもを作るには
生物学上の父親が育てることが条件になる必要がある、
子どもにとっては匿名のドナーの生殖子よりも
自分の生物学上のつながりが分かる方が望ましいから、と。

最近あったケースで、
IVFで複数の胚を作ったところで妻の方にがんが分かった夫婦がおり、
妻の死後2年経って、子どもを作ろうとした妻との約束を果たそうとしたが
イスラエルの法律は代理母を認めず、男性は米国へ。

Rosenblum氏によれば、この子どもは
生物学上の母親の死後長い時間が経ってから生まれた世界で初めての子どもだとのこと。

Israeli family can freeze eggs of daughter killed in road accident
Guardian, August 8, 2011


「事故から1週間後に亡くなった」という表現に続いて
「水曜日に脳死と診断された」という表現が使われており、
その両者がどういう関係にあるのか、は不明。

また、提供された臓器は複数形になっているけれど、
どの臓器が提供されたのかも不明。


【関連エントリー】
「死んだ息子の精子で代理母たのみ孫がほしい」認められず(2009/3/5)
「死んだ息子の子どもがほしい」母に裁判所が遺体からの精子採取を認める(TX州)(2009/4/17)

亡き夫の精子は妻の“財産”(2011/5/24)

ドナーカード保持者に臓器移植の優先権(イスラエル)(2009/12/17)
映画「ジェニンのココロ」: イスラエル兵に殺されたパレスチナの少年の臓器をイスラエルの子どもに移植(2011/4/14)
2011.08.13 / Top↑
これはAshley事件との関連で重要な事件なので、spitzibara以外に関心のある人はないかもしれないけど、トップに。避妊薬のピルが原因で血栓症を起こし、35歳の女性が死亡。英国。:女性ホルモンを6歳の女児に「大量投与」しておいて、「そのリスクは、成人女性が避妊薬を飲む際に喜んで引き受ける程度のものに過ぎません」とCNNで放言したのがDiekema。
http://www.dailymail.co.uk/health/article-2024068/Carer-35-dies-blood-clot-caused-birth-control-pill.html?ito=feeds-newsxml

[解説]「5大疾病」に位置づけ(yomiDr.)「大阪市で先月開かれた日本うつ病学会総会で、講演した複数の精神科医が『抗うつ薬の販路拡大を目指す製薬会社のキャンペーンに影響され、診断が過剰になった側面がある』と語った。「今回のうつ病学会総会で製薬会社がPRに最も力を入れたのは、そうとうつ状態を繰り返す『双極性障害』だった。ある精神科医は、会場でこう皮肉った。『製薬会社の活動で、今度は双極性障害の“患者”が急増するだろう』:この問題に限らず、日本のお医者さんたちの多くは米国で起こってきた醜いスキャンダルの数々、その背景にビッグ・ファーマの人命軽視の利益至上主義があることについて、知らないわけではないだろうと思うのだけど、なぜ、こういう声がもっと早くに上がってこないのだろう。英語圏で報道されている内容をこのブログでそのまま流しただけでも、それに逆上して「じゃぁ、オマエが解決策を示してみろ」とか「患者の分際で余計な情報を流すな」とばかりに怒鳴りこんでこられる医師の方があるけれど、現場の医師にとって、ご自身の臨床のエビデンスが操作されていたり信頼できない可能性があるという話ならば、腹を立てなければならない相手が違うのではないか、といつも思う。
http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=45254

上の記事を読んでから、もう一度、こういうの読んでみて ↓
子宮頸がんワクチンの失神は「ドキドキするから」?(2011/8/5)
日本でもガーダシル導入へ、厚労省当該部会の議論の怪 1(2011/8/5)
日本でもガーダシル導入へ、厚労省当該部会の議論の怪 2(2011/8/5)

この流れで、どうしてもイヤ~な予感がする記事なので、昨日の補遺から以下に再掲 ↓

時間差で phentermine と topiramateが効いていくQNEXAというカプセル薬を飲むと、食欲が減退して、肥満や糖尿病、睡眠時無呼吸症候群の人でQOLが有意に上がった……って。:あの~、フェンタミンって向精神薬だったんでは……? 【追記】検索してみたらトピラマートも、抗てんかん薬だった!:ビッグ・ファーマ、今度はこういう路線の企みを???? それ、ものすごく恐ろしい話なのでは? まるで医療はビッグ・ファーマによるマーケット創出のフィールドに過ぎないかのように……。
http://www.medicalnewstoday.com/releases/232383.php

子どものねむり見直して 専門医が解説書(神戸新聞):これも、あれこれ、上記の関連その他、気になる表現が……。
http://www.kobe-np.co.jp/news/kurashi/0004345403.shtml

ソマリアの飢饉への英国内の支援の呼び掛けに反応が鈍い。犠牲者の数はソマリアの方がはるかに多いにもかかわらず、アジアの津波被害への募金ほども集まっていないとか。:これ読んで、ふっと思ったんだけど、ゲイツ財団って災害の被災地へは興味を示さないなぁ……。私が知らないだけかしら。
http://www.guardian.co.uk/world/2011/aug/08/somalia-famine-appeal-raises-less?CMP=EMCGT_100811&

誰に聞かされるまでもなく、ビル・ゲイツがウォーレン・バフェットだけでなくメディア王のルパート・マードックとも親しい仲だろうというのは想像はついていたけれど、ゲイツ氏、ニューズ社と連携して米国の教育改革の一端として、新たな教育アプリの開発に乗り出す。:これまでの発言から推測するに(詳細は以下のリンクに)、たぶん、どんな教師が教えても理論的には同じだけの成果が上がることになるデジタル教育アプリがイメージされているのだろうと思う。だから、このアプリを使って成果が出せなければ、それはダメ教師の烙印 → 減給 → クビ。教師も介護士もロボットでいいのよ。もう。たぶん、そのうちには、お医者さんも?
http://www.huffingtonpost.com/leonie-haimson/bill-gates-rupert-murdoch-impatient-optimists_b_920000.html

【関連エントリー】
ゲイツ財団の米国公教育コントロール 1(2011/5/2)
ゲイツ財団の米国公教育コントロール 2(2011/5/2)
ゲイツ財団、ゴージャスな新本部をオープン(2011/6/6):ここにもゲイツ教育改革への批判が少々。
その他、最近の動きは補遺に多数拾っています。

つるたさんのブログに『根本(もと)から変えよう! ――もうひとつの日本社会への12の提言』の案内。某MLへの投稿によると、障害者政策についてつるたさんが執筆されているとか。以下の部分にとても共感する。

「障害者」の課題は多様性の承認の問題としてだけあるのか。確かにそういう側面もある。しかし、それだけでは決定的に欠落しているように思う。障害者政策を考えることは近代と決別するオルタナティブな社会を考える一つの機軸になえるはずだというのは冒頭に書いた話でもある。そこで重要だと思えるのが「生存権の無条件の承認」。これを「存在の無条件の承認」と呼んでもいいだろう。「何かをすること」とりわけ「生産」「開発」することに意味があるとされた資本主義近代から、ただ存在すること、「あること」「生きていること」が大切にされる社会への転換が問われているように思う。
http://tu-ta.at.webry.info/201108/article_5.html

BLOGOS【新聞チェック】“原爆の日”に全く触れなかった産経、特集満載の朝日・毎日とは対照的。
http://news.livedoor.com/article/detail/5765934/?p=2

同じくBLOGOS 原子力をめぐる新聞論調の二極分化 - 柴田鉄治
http://news.livedoor.com/article/detail/5759246/

IVFで作った受精卵の内部の動きによって、どの受精卵を子宮に入れるかを判断できる技術のブレークスルー。これによって多胎児のリスクを軽減できる、と。
http://www.guardian.co.uk/science/2011/aug/09/pulsations-embryos-success-ivf?CMP=EMCGT_100811&
2011.08.13 / Top↑
野田聖子さんインタビュー全文 (1)障害持った子、命の重み教えてくれる  から3本:イチイチの言葉に、な~んとなく引っかかっるものを感じてしまう。
http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=44984
http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=45056
http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=45093

ネブラスカ州で永続的植物状態の男性を巡って無益な治療事件。Irvin Madridさん。22歳。1年と5カ月、植物状態とされ「回復の見込みなし」として病院が人工呼吸器の取り外しを決定。両親の抗議にもかかわらず一方的に取り外し。7月12日に死亡。
http://medicalfutility.blogspot.com/2011/08/irvin-madrid-hospital-unilaterally.html?utm_source=feedburner&utm_medium=feed&utm_campaign=Feed%3A+MedicalFutilityBlog+%28Medical+Futility+Blog%29
http://www.livewellnebraska.com/article/20110807/LIVEWELL01/708079908/1161
http://www.omaha.com/article/20110807/LIVEWELL01/708079906

英国で、移植用腎臓不足解消のため、売買を認めよう、という声。
http://www.guardian.co.uk/commentisfree/2011/aug/04/cash-for-kidney-rules
http://www.telegraph.co.uk/health/healthnews/8677153/Students-could-pay-off-debts-by-donating-kidneys-says-academic.html

【関連エントリー】
Harris「臓器不足排除が最優先」の売買容認論は「わたしを離さないで」にあと一歩(2011/4/8)

8月9日にロンドンでGAVIのワクチン国際カンファ。
http://www.maximsnews.com/news20110808GAVIALLINNCEUKPMLONDON11108080101.htm

「医薬品業界における2010年問題と展望 」という日本語のアナリストの論文。そのポイントの1は「1990年代後半に販売された大型医薬品が、2010年前後に次々と特許切れを迎え、世界の新薬メーカーにとっては、厳しい経営環境となることが予想される」。
http://www.fukoku-life.co.jp/economic-information/report/download/analyst_VOL192.pdf#search=%27%E8%A3%BD%E8%96%AC%E6%A5%AD%E7%95%8C%E3%81%AE2010%E5%B9%B4%E5%95%8F%E9%A1%8C%27

こちらも医薬品業界の「2010年問題」に関するニッケイの記事。:そういえば7月28日の補遺でも、近くブロックバスター7薬の特許が消れて、ジェネリックが使われると値段がぐっと下がるとのニュースを拾った。……もしかして「ワクチンの10年」というのは、この「2010年問題」への対応策だったとか……? 今頃になって気付くのって、遅すぎ?
http://www.nikkei4946.com/zenzukai/index.asp?BackNumber=64

時間差で phentermine と topiramateが効いていくQNEXAというカプセル薬を飲むと、食欲が減退して、肥満や糖尿病、睡眠時無呼吸症候群の人でQOLが有意に上がった……って。:あの~、フェンタミンって向精神薬だったんでは……? 【追記】検索してみたらトピラマートって、抗てんかん薬だった!
http://www.medicalnewstoday.com/releases/232383.php

【関連エントリー】
NHS新たにヤセ薬を解禁(2008/7/9)
6月解禁のヤセ薬、精神障害起こすと早くも販売中止(英)(2008/10/25)
EUがヤセ薬を解禁、「誰の最善の利益」?(2009/1/31)

英国人の4人に3人までが、ナーシングホームは家族を安心して預けられる場所ではないと感じている。
http://www.dailymail.co.uk/news/article-2023595/Three-dont-trust-care-homes-look-relatives-properly.html?ito=feeds-newsxml

今まで非公開を旨としていた英国の保護裁判所で、初めて公開に踏み切ったケース。認知症の高齢の父親が一方的に施設に入所させられ、面会も許されないと訴える息子と、息子からの虐待を疑っての措置だとする当局側の対立。
http://b.hatena.ne.jp/spitzibara/?with_favorites=1&of=0

理化学研究所からプレスリリース「床から車いすへの抱きあげ移乗が出来る介護支援ロボット -抱き上げ重量80kgを達成した「RIBA―Ⅱ」を開発― :この前から英語圏のニュースに出ていたのがこれね。抱き上げ重量80キロを達成……って、なんか、これ、「UFOキャッチャーと洗車機能があればオムツ交換ロボットはできる」という工学者の感覚に近いものはないでしょうか? 
http://www.riken.go.jp/r-world/info/release/press/2011/110802_2/detail.html

NYT。読む余裕がないので、タイトルのみ。デジタル時代に合わせて教育内容をアップデイトしなければ。:世界中の教育が、デジタル思考の皮相的な成果主義に急傾斜していくのでは? そういえば米国の教育制度改革にも、最も大きな影響力を持って発言し続けているのはビル・ゲイツ。文学とか音楽とか美術とか、そういうものは価値のないものとして失われていくのかなぁ。あー、そうだ、きっと「UFOキャッチャーと洗車機能でオムツ交換ロボットできる」って、寝たきりの人を見たことなくても疑いなく断言できるような手合いが増えていくんだろうな。
Education Needs a Digital Age Upgrade: It’s time to stop preparing students for a world that no longer exists, writes Virginia Hefferman.

南アフリカの妊産婦への医療機関スタッフによる、あまりにも酷い仕打ち。:こういう問題を放置して、科学とテクノで子どもと女性のいのちを救えという母子保健の話もなかろう、と。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/232413.php

RAD51Dという遺伝子の変異があると子宮がんリスクがあがる。
http://www.guardian.co.uk/science/2011/aug/08/ovarian-cancer-gene?CMP=EMCGT_090811&

男性も乳がんになる。でも、男性だというだけでメディケア給付が受けられない。
http://www.cbsnews.com/8301-504763_162-20089665-10391704.html

                  ―――――

昨日の Metro Access の話を某MLに投稿したら、障害者のエンターテインメントへのアクセスという問題を投げかけてもらった。ざっと検索したら、米国のADAでも英国のDDAでも姿勢はMetroの記事と同じで、平等なアクセス保障が法的に義務付けられているわけだから、その中にはエンターテインメントも当然含まれる、ということのよう。出てきたものをとりあえずのメモとして以下に。

ニュージャージー州の検察が、アトランティック市内11のカジノにADA法違反はないかと査察。
http://www.northjersey.com/arts_entertainment/atlantic_city_gaming/033011_Feds_review_NJ_casinos_disability_access.html

英国(上2つがDDAとアクセス保障、下はケンブリッジのアクセス情報)
http://www.chiltern.gov.uk/site/scripts/documents_info.php?documentID=122&pageNumber=19
http://www.sess-surveying.co.uk/DDA_disability_access.html
http://www.accesscambridge.co.uk/entertainer.html

英国の啓発ウィークエンド
http://www.bbc.co.uk/lancashire/content/articles/2006/10/11/november_disability_awareness_feature.shtml

カナダ
Access 2 Entertainmentカード(2005年から)劇場で介助者無料
http://www.asic.bc.cx/releases/access2faq.shtml
http://www.caregiversns.org/userfiles/file/AccessEntertainment.pdf
Access2Entertainmentカード、対象を劇場から拡大 
http://www.abilities.ca/organizations/2009/08/10/easter_seals_access2_forum/

Disability Access in Action(星マークで建物や施設のアクセス評価:P星マークは駐車場とか)
http://disabilityaccessinaction.com/index.html
2011.08.10 / Top↑
だいぶ前からカタツムリの速度で読んでいる
Quelletteの“BIOETHICS AND DISABILITY  Toward a Disability-Conscious Bioethics”に
生命倫理の界隈でよく耳にする Elizabeth Bouvia事件が取り上げられていたので、
その個所のみ、とりあえずのメモとして。(Quelletteについては文末にリンク)

非常に興味深いのは、まず、この事件が紹介されている文脈。

Quelletteはここで
生命倫理という学問のこれまでの概要を解説しており、
直前でとりまとめていることとして、

ある段階で生命倫理には以下のような、
いくつかのコンセンサスができていた、と。

・意思決定能力のある成人は治療を拒否する権利を有する。
・患者は自分の治療に関する決定権を有する。
・また、こうした決定にまつわる入手可能なすべての情報を提供される権利を有する。
・医学的に提供される栄養と水分は治療の一形態である。



これらすべてが関わっている事件として紹介されているのがBouvia事件。

Elizabeth Bouviaさんは脳性まひと関節炎があり(つまりターミナルではなかった)
28歳の時にカリフォルニア州の裁判所に対して、
鼻から通した管による経管栄養を医師に中止させる命令を求めて訴訟を起こした。

医師は中止に反対。
栄養と水分の引き上げは一種の自殺行為だと反論したが、
裁判所は、Bouviaさんの意思決定能力を確認したうえで、
栄養と水分が医療である以上、その拒否権はBouviaさんの自己決定権の範囲だと判決した。

1986年。

Elizabeth Bouvia’s decision to forego medical treatment or life-support through a mechanical means belongs to her. It is not a medical decision for her physicians to make. neither is it a legal question whose soundness is to be resolved by lawyers or judges. It is not a conditional right subject to approval by ethics committees or courts of law. It is a moral and philosophical decision that, being a competent adult, is hers alone.

意思決定能力が明らかである以上、
機械的な方法での生命維持または治療の中止の決定は、

医師による医学的な決定でもなければ
その精神の健全性を巡る法的問題でもない。
倫理委員会や裁判所の承認が必要な条件つきの権利でもない。

意思決定能力のある成人として、
それは本人のみが有する道徳的哲学的決定権である。
(p.55に引用)



以来、Bouvia判決は、生命倫理の界隈では
ターミナルでなくとも生命維持を拒否することができるとした
自己決定権の画期的な勝利として称揚されていく。

問題となる治療が救命または延命するものであるとしても
患者には拒否権がある、と認められたのだ。

もちろん、この判決のキモはブーヴィアさんの自己決定能力にあり、
この判断をそのまま自己決定能力の低い患者に当てはめることはできない。

そこで、自己決定能力が低いまたはないとみなされる患者のケースで
自己決定に極力近い形での医療判断を保障するための工夫として
生命倫理学は事前指示書と代理決定を検討していく。

で、それを踏まえて生命倫理学の一般的な共通認識として、

・代理決定者には基本的にどのような決定も行う権限があり、そこには治療の拒否や中止の決定も含まれる。
・代理決定者は、可能な限り、本人がかつて有していた自己決定能力に基づいて決定したであろう通りの決定を行うべきである。
・本人が行ったであろう自己決定を見極めることが困難な場合には、代理決定者は本人の最善の利益にかなった決定を行うべきである。



ちなみに、この論理のステップは、
まさにイリノイ州の知的障害女性の強制不妊手術を巡るK.E.J.判決で
用いられたものと全く同じ。(詳細は文末にリンク)

この3つが合流した先に
生命維持治療の中止や差し控えが当人の最善の利益であるという
代理決定もありうる、との生命倫理学の考え方がある、とQuellette。

なるほど~。

しかし、時は流れ、今では病院や医師の側が
本人や家族、代理決定者の意思を無視して、中止させろと裁判所に訴え出る時代。
これほど絶対的であったはずの自己決定権は、今はいったいどこへ――?


【ブーヴィア事件に関する日本語情報】
ブーヴィア事件の解説を含む研究者の方のサイトは以下に ↓
http://www.let.kumamoto-u.ac.jp/ihs/soc/ethics/takahashi/tyousa/2syou.html
http://d.hatena.ne.jp/uumin3/20060327

香川知晶「死ぬ権利 ――カレンクインラン事件と生命倫理の転回」での
ブーヴィア事件に関する記述は以下の中ほどに ↓
http://www.arsvi.com/d/et-usa.htm

【イリノイのK.E.J.ケースに関するエントリー】
イリノイの上訴裁判所 知的障害助成の不妊術認めず(2008/4/19)
IL不妊手術却下の上訴裁判所意見書(2008/5/1)
ILの裁判からAshley事件を振り返る(2008/5/1)
ILの裁判から後見制度とお金の素朴な疑問(2008/5/1)
IL州、障害者への不妊手術で裁判所の命令を必須に(2009/5/29)

【その他、障害者の医療における代理決定原則に関するエントリー】
知的障害者不妊手術に関するD医師の公式見解
女性の不妊手術に関する意見書(米国産婦人科学会)
不妊手術に関する小児科学会指針
末期でも植物状態でもない知的障害者の医療拒否、後見人に「並々ならぬ証明責任」
Syracuse大学から「障害のある人の延命ケアと治療に関する一般原則声明

英医師会の後見法ガイダンス

【Quellette関連エントリー】
今回の新刊
Alicia Quelletteの新刊「生命倫理と障害: 障害者に配慮ある生命倫理を目指して」(2011/6/22)
09年のAshley事件批判論文
「倫理委の検討は欠陥」とQuellette論文 1(2010/1/15)
子の身体改造をめぐる親の決定権批判論文
Quellette論文(09)「子どもの身体に及ぶ親の権限を造り替える」 1: 概要
(論文については、それぞれ、ここから4つエントリーのシリーズで)
2011.08.10 / Top↑
米国の障害者への支援サービスは、ひどい、ひどいと言われるけれども、
それでもそのベースラインは日本よりもはるかに高いのでは、という具体的な情報に触れると、
それを記録として拾っておく……といったエントリーは
これまでに何度か書いてきたけれど(文末にリンク)

でも。
今回ほど、
びっくりしたことは、なかった。

ワシントンD.C.で地下鉄とバスを運行しているMetroには、
障害のために公共の交通機関を利用できない人のために
一人一人または乗用車や小型バスを乗り合わせる形で
目的地まで送迎するMetro Access Paratransitというサービスがある。

最初に読んだ時には、「え? そんなサービスが本当に?」と
すぐには信じられなかった。

まぁ、実際には予約しても来てくれなかったり、
目的地とぜんぜん違う場所で下ろされたり、
あんまり信頼できるサービスでもないらしいけれど、
実際に1日に7000人以上が利用しているとのこと。

2011年度は2400万人へのサービスが見込まれ、予算は1億370万ドル。

地下鉄やバスだと3ドルとか4ドルで済むところに
一人あたり40ドルもかかる移動サービスを行っている。

すべては、米国障害者法によって
Metroには障害者に対して平等なアクセスを保証することが求められているため。

今までは私は、あまり突き詰めて考えていなかったこともあって、
国連障害者人権条約の求める「合理的配慮」について
今いち具体的なイメージに乏しいままだったのですが、
ああ、なるほど、こういうことなんだぁ……と、

現実にやっている場所があるとなると、
俄かに「実現可能な配慮」の形としてくっきりとイメージされてくる感じがする。

もちろん、このご時世に記事になっているのは、
高齢化と障害人口の増加に加えて、
メディケアの給付抑制で移動サービスがカットされた影響などで、
今後のMetro Accessの費用負担増加が見込まれるため、
Metroが様々な対策を講じて、障害者にメトロやバスの利用を促している、という内容。

MetroがMetro Accessの持続可能性を模索する中で
収入増加策として、まず試みたのが利用料金の値上げ。

前は一律で片道3ドルだったのを
距離と時間性を導入した。ただし上限7ドルまで。
(分かりにくい、フェアじゃないと、評判は悪い)

次に、利用抑制策として、資格審査を加え、
地下鉄やバスを利用できる人には利用してもらうように
安全な乗り方の講習会などを開催。去年は5800人に指導した。

資格審査では「条件付きで利用OK」も。

記事に出てくる車イス利用者の「条件」は
股関節の痛みが来ている時とか吹雪や炎天下での
この人の最長時間の移動の場合にはMetro Accessを利用することができる、というもの。

ただ、この人は高校時代に親が電車に乗る練習をさせてくれて慣れているし、
Metro Accessは前もって予約が必要、あまりアテにならない、
ラッシュ時には乗り合う人のルートによっては10分の距離に2時間かかることもある、
など不便なので、地下鉄やバスを乗り継いで通勤している。

困るのは、駅のエレベーターがしょっちゅう故障していることだという。

この辺り、いかにもアメリカだなぁ……と思いながら読んでいたら、
しかし、ここでもまた目を見張ってしまうのは、

Metroがエレベーター故障やバスの故障に備えて、
障害のある人たち向けに代替え輸送専用のバスを用意していること。

この女性も故障したエレベーターの前で困っていると、
専用バスの運転手に職場まで運んであげると言われて
「こんなの初めて」と驚く。

これもMetroが
障害のある人にバスや地下鉄を利用しようという気になってもらうために
導入した新制度だという。

また利用者に、Metro Accessのサービス・カーの運行状況や
駅のエレベーターやエスカレーターの故障状況をメールで通知するサービスも始めた。

もちろん障害当事者に言わせれば、
まだ駅の照明が暗いとか、エレベーターの修理、見えやすいサインの工夫、
Metro Accessの連絡不足や不確実性など、まだ改善の余地は沢山ある。

実際、視覚障害者や車イス利用者の転落事故や死亡事故も起きており、
ラッシュ時の混雑が怖くて地下鉄もバスも利用できないという人も多い。
車内放送は聴覚障害者には聞こえないし、
エレベーターやエスカレーターは2回に1回は止まっている、とも。

でも、記事を読んでいて、一番「すごいっ」と思ったのは
agency officialなのか、そうだとしてどういうagencyなのか、はたまた障害当事者なのか、
この人の立場がちょっと判然としないんだけど、
Silver Spring在住だという人が言った以下の言葉。

「私たちはMetroと話し合いながら、
利用者の助けになるものを導入してもらってきました」

もちろん、そういう努力を求めてきた「私たち」もだけれど、
その話し合いに応じて、それなりに努力してきたMetroの姿勢も――。

だって、そういう姿勢って、
日本じゃ「どう考えても、あり得ない」範疇のような――?

Frustrating, dangerous Metro problems for the disabled
WP, August 7, 2011


Metro Accessのリンクは上記本文中に張ったものの、
まだトップページをちょっと眺めただけなので、
いずれ、ちゃんと読んでみたいと思っています。


【英国のベースラインについて具体的な情報を含んでいるエントリー】
レスパイト増を断れた重症児の母の嘆きの書き込みがネット世論動かす(英)(2011/1/21)
介護者の10の心得 by the Royal Princess Trust for Cares(2011/5/12)
英国の障害者らが介護サービス削減に抗議して訴訟、大規模デモ(2011/5/11)

【米国のベースラインについて具体的な情報を含んでいるエントリー】
Ashleyケース、やはり支援不足とは無関係かも(2008/12/8)
Obama大統領、在宅生活支援でスタンスを微調整?(2009/6/25)
米国IDEAが保障する重症重複障害児の教育、ベースラインはこんなに高い(2010/6/22)
2011.08.10 / Top↑
英国で09年5月に多量のモルヒネを注射して患者の死を早めたとして、GPのWilliam Lloyd Bassett医師をGeneral Medical Councilの懲罰委員会に報告。前半をざっと読んだところでは、どうやら訪問診療で家族と相談の上でやったことみたい。訪問で家族と語らってこういうことをやられると、恐ろしくて在宅療養なんかしていられない……。
http://www.independent.co.uk/news/uk/crime/gp-injected-man-to-hasten-death-2331132.html

カナダの自殺幇助合法化ロビーの訴訟を受け、メディアに質問された法相は去年のカナダ議会の合法化法案否決に触れて、当面この問題に戻ることはない、と。
http://www.nationalrighttolifenews.org/news/2011/08/ottawa-will-not-legalize-euthanasia-or-assisted-suicide/

2005年ころ、中国の山間部で、家族計画担当者がやってきては赤ん坊をひったくって連れ去る、ということが頻発していた、という証言。
http://www.nytimes.com/2011/08/05/world/asia/05kidnapping.html?_r=1&nl=todaysheadlines&emc=tha2

医療機器がさほどの安全性の検証もなしに認可されている、という問題が米で指摘されている。:この問題は以下にリンクしたように、09年から指摘されていたけど、最近ずっとProPublicaが追いかけていたりする。
http://www.nytimes.com/2011/08/05/opinion/how-safe-are-medical-devices.html?_r=1&nl=todaysheadlines&emc=tha211

FDAの科学者ら「認可審査あまりにも杜撰」と内部告発(2009/1/15)
学会が関連企業相手にショーバイする米国の医療界(2011/5/11)
「学会が関連企業相手にショーバイする米国の医療界」から医療費高騰を考えてみる(2011/5/11)
1つの病院で141人に無用な心臓ステント、500人に入れた医師も(2011/5/15)


4日の補遺でもMcNightの記事を拾ったけど、それとはまた別にMNTも「介護ロボットが日本の高齢者に明るい未来を約束」。
http://www.medicalnewstoday.com/releases/232182.php

ホワイト・ハウスのOffice of Management and Budgetの中の、the Office of Electronic Government and Information Technology部門のトップに、ビル・ゲイツの元アシスタントが任命されている。:もしかして、先日のオバマ大統領とゲイツ・バフェット会談で? まぁ、ITに関してはそうなのかもしれないけど、ちなみに途上国への支援を扱うUSAIDのトップも元ゲイツ財団の職員。たぶん他にも、カネだけではなく、人も、あまねく浸透していることでしょう。
http://www.govinfosecurity.com/articles.php?art_id=3926

ソマリアの飢餓が広がっている。WPの記事の冒頭で、食糧や点滴を届ける努力について触れられて、その直後にゲイツ財団とクリントン・グローバル・イニシアチブの名前があったので、この両者が食糧と点滴を届けているのかと思ったら、全然違った。両者が力を入れているのは、「こういう支援が無用になるようなイノベーション」。ちゃんと読んでいないけど、どうやら例の農業改革(つまりGM化)のことみたい。
http://www.washingtonpost.com/blogs/innovations/post/innovations-in-the-fight-against-famine/2011/08/02/gIQAQ7HNqI_blog.html?wpisrc=nl_cuzheads

アルツハイマーを調べる血液検査、症状が出る前からほぼ100%正確になった、と。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/232361.php

過程医が簡単にできる発達の遅れのスクリーニング検査2種は正確に遅れを予測する、との調査結果。
http://www.medicalnewstoday.com/releases/232249.php

子どもの時に病気したり出生時の体重が低かった人は、将来、出世しにくい、との調査結果。:調査研究とは、AとBという2つのファクターの間に何らかの相関関係があるはずだと研究者が頭に思い浮かべることからスタートする。そして、それはAとB以外に無限にあるその他ファクターとの関係を無視する、またはBほど重要視しない研究者の姿勢を、何よりも意味している。本当は結果よりも、注目すべきはその研究者の姿勢というか価値意識の方であり、Aと無数にあるファクターの中からBとの相関をわざわざカネとエネルギーを注いで調べたい人がいるということの現在的な意味の方なのではないか、と私はいつも思う。特にこういう調査研究のニュースを見ると。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/232317.php

スポーツ選手の中には遺伝的に脳しんとうを起こしやすい人がいる、という研究。:こういう研究の資金って、「お子サマに最適なスポーツと最適な訓練方法を」と“DNA霊感商法”みたいなところから出ているのでは?
http://www.medicalnewstoday.com/releases/232304.php
2011.08.06 / Top↑
前のエントリーから続く

○池田委員 この2つのワクチンは2価と4価で、基本的に受ける側の方にとってもわかりやすい違いがあるわけです。これをどこまで同一の目的のものだと説 明するかは注意しないといけないと思っています。例えばイギリスのJCVAという評価機関では、この2つのワクチンは違うものであって、どちらを国として 推奨するかに関しては、もしも価格が同じであれば4価のほうを推奨するという書き方、これは費用対効果の点から当然ですが、そういうことが明確に書かれて います。この部会あるいは小委員会でまとめた報告の中では、まだ4価のワクチンについては十分な検討なりデータが含まれていませんで、費用対効果の分析も 2価のワクチンのみ結果が示されています。先ほど市町村でどちらをと決めていくという話がありましたが、この両ワクチンの違いに関する臨床的、経済的、両 方のエビデンスが示されない限り、市町村としても選びようがないのではないかと思いましたので、その分についてはさらに小委員会等で議論あるいは検討をし ていく、データを提供していくことが必要ではないかと考えています。以上です。
○加藤部会長 ありがとうございました。北澤委員どうぞ。



(この直前の倉田委員の指摘にあったように、
子宮頸がんそのものの予防効果については不透明だとすると、
どのようにして「費用対効果」が弾き出されるんだろう……?)

○北澤委員 先ほどの倉田先生のご意見、コメントに私も同感で、実際に今日見せていただいた実施要綱にも、「ヒトパピローマウイルスワクチン」と書いて、 「以下、子宮頸がん予防ワクチン」と書かれています。一般の人がパッと見たときに、子宮頸がんがこれで予防できるのだと思いますが、それは期待されている とはいえ、まだ実証はされていないので、そのあたりの言葉の使い方についてどうかなと個人的には考えています。ヒブワクチンは微生物の名前+ワクチンとい う名前なので、HPVワクチンとかヒトパピローマウイルスワクチンで良いのではないかと思います。
○加藤部会長 ご意見ありがとうございます。岡部委員どうぞ。
○岡部委員 2価、4価の区別ではないですが、分科会およびワーキンググループのほうではHPVワクチンのときにアナウンスとして注意すべき点として、こ のワクチンはがん予防に100%の効果があるものではないということと、臨床的な効果、倉田先生のおっしゃった子宮頸がんそのものの効果については接種か らの年数から見てデータとして不十分であるということを明記してあるので、Q&Aを作成されるときに、そういったようなことをおそらく考慮される と思いますがよろしくお願いしたい。加えて子宮頸がんに対する検診の重要性についても改めて強調していただきたいと思います。
○加藤部会長 ありがとうございます。ほかにご意見はありますか。



加藤部会長 貴重なご意見をありがとうございました。ほかにご意見はありますか。よろしいですか。効果等のご意見はいろいろありましたが、事務局において はガーダシルを作っているMSD社に対して、さらなる供給量の確保を要請することが1点。それとともに、円滑な事業の実施のために、国としても十分に策を 講じることが必要ですので、それを前提としてガーダシルを子宮頸がん等ワクチン接種緊急促進事業の対象疾病に追加することとして、この部会として了承して いただきたいと考えています。これについて大体議論が出たと思いますので、ご了承いただきたいと思いますがよろしいですか。ご意見はありますか。
○保坂委員 いまの皆さんの言ったことが確保されるという確認がないと、と思います。
○加藤部会長 その確認ができるかどうかということは、いま私が話した中に入っていますが、事務局としてはお答えになれますか。
○大臣官房審議官 今いろいろご意見をいただいて、実行が着実に行われないと駄目ですよと。現場が混乱することのないようにということだと思いますので、その点については私どもも十分に注意した上で、実施をしたいと思います。
○加藤部会長 よろしいですか。なかなか不信感があるとは思いますが、この辺のところは国として十分策を講じることが前提にという前提が入っていますの で、それを前提として、このガーダシルを子宮頸がん等ワクチン接種緊急促進事業の対象疾病に追加することについてご異議がないというふうに部会長としては 認めますので、そのようにさせていただきたいと考えますが。
○宮崎委員 細かいですが、「対象疾病」ではなくて「対象ワクチン」ですか。まとめの文章の最後に緊急事業の対象疾病に追加すると言われましたが、疾病は子宮頸がんということで変わらないと思います。
○加藤部会長 事業というのは、子宮頸がん予防ワクチンです。
○宮崎委員 ですね。ですから、対象疾病に加えるという言い方を今されたのですが。
○加藤部会長 対象ワクチンです。よろしいですか。そのように訂正します。ありがとうございました。
 続きまして、議題(3)に移ります。前回の部会で議論いただいた不活化ポリオワクチンの円滑な導入に向けました対応についてです。事務局よりご説明願います。



部会長から出てくるのは
ブッシュ政権がいつかFDAとつるんで薬害訴訟つぶしを図った時の
「FDAが認可した以上、安全性はそこで確立されている」というpre-emption論で、

厚労省が認可した以上は、
あなたが指摘している安全性を含めた効果への疑問はすでに解消されていると受け止めよ、

あなたが指摘している現場での混乱(”実害”も含め)の可能性も、
公費助成事業である以上、問題なく対応されるのが前提であると受け止めよ、

はたまた欧米で広く使われている以上、問題はないと認識せよ。

で、そういう論理が使えない指摘に対しては
「ここで議論することではない」とつっぱねる。
または「ありがとうございました」で丸無視する。

これって、科学的な検証の必要そのものを否定する姿勢だし
その筋の専門家が集まって議論する意味が全くないのでは?

こんな、どうみても最初から結論ありきの議論で
ガーダシルを公費助成の対象に含めることを強引に決めておいて、
「子宮頸がん制圧を目指す専門家会議」の新聞広告のように
「国が推奨するんだから効果も安全性も保障されている」という姿勢で
国民に向けてHPVワクチン、もとい「子宮頸がんワクチン」が推奨されていくというのは、

やっぱり、おかしくないですか?
2011.08.06 / Top↑