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オーストラリア健康高齢化省(DoHA)が2012年8月に制定した「全国介護者レスパイト・プログラム」
(National Respite for Carers Program:NRCP)の概要について、

同局から出ているNRCPガイドラインのイントロダクションから。


・NRCPとは、
全国介護者アクションプランの1996-97年度の予算措置で導入された
オーストラリア政府のプログラム。

・2056年までに国民4人に1人が65歳以上となる高齢化予測を受け
首相とマーク・バトラー健康高齢化大臣は2012年4月20日、
高齢者ケアの改革10年計画 the Living Longer Living Betterを発表し、
5年間で37億ドルの予算を付けた。

・優先課題は、
在宅への支援とケアの強化、入所施設へのアクセス改善、認知症対策と介護職の強化。

・2010年3月17日に介護者法案(the Carer Recognition Act 2010)が通過し、
NRCPの資金を受けるサービス機関や提供者は従業員に
「オーストラリア介護者声明」の理念を尊重・実行するよう徹底することが義務付けられた。

・その中には
介護者が自分が介護している人が十分なケアを受けられるという安心のもとに、
自分自身の健康とウェルビーイングを守るべく、休息をとれるよう
レスパイトサービスにも予算措置が行われた。
その対象者は以下の人々を介護するケアラー。

認知症の人。
認知症で介護の困難な行動のある人。
虚弱高齢のオーストラリア人(65歳以上の人、病気であれば50歳以上)
在宅で生活している中等度・重度・重症障害のある若年者
(65歳未満、病気であれば50歳未満)
緩和ケアを必要とする終末期の人。

・介護者支援の新規予算は
レスパイトその他のサービス提供事業者にグラントとして提供され、
それらが継続されることによって地域資源として定着することを狙うもの。
NRCPのグラントは3年間の給付を基本とする。

・2012-13年度予算で5年間で3200万ドルの予算がつけられており、
NRCPプログラムのもとで分配される。


このプログラムの大変興味深い点として、

① レスパイトサービスの形態が多様であること。

デイセンターや施設、コミュニティセンターでの一時預かりのほかに、
介護者の自宅で提供されるレスパイトも含まれている。

12-13年度ではNRCP下で全国500の地域ベースのレスパイト・サービスに
グラントが提供される。

②NRCPの一環としての「全国介護者カウンセリング・プログラム:NCCP」。

全国的な介護者支援組織、Carers Australiaへの委託により、
介護者に特有のうつ状態やストレス、グリーフと喪失、コーピングといった問題について
カウンセリング提供体制を整備。

NCCPの詳細については、たとえば以下の情報に ↓
NATIONAL CARER COUNSELLING PROGRAM

Cares Australiaが介護者向けに出しているNCCPのパンフレットは以下 ↓
http://carersqld.asn.au/wp-content/uploads/Talking+it+over+brochure.pdf


【注記】
DoHAから出ているNRCPのレスパイサービス提供者向けマニュアルの
10.2 Charging Fees (利用料金)の項目(p.47)に以下のように書かれていることから、
レスパイトもカウンセリングも利用は原則として応能負担のようです。

Consistent with the Government’s policy support for ‘user pay’ arrangements, all carers using Australian Government funded respite services are encouraged to contribute to the cost of Respite Care when they can afford to. While no carer should be refused services due to an inability to contribute to the cost of those services, it is important that those carers who can afford to pay all or some of the costs are required to do so, as this may result in the provision of Respite Careto more carers.
2013.08.05 / Top↑
Statement of Australia’s Carers(オーストラリア介護者声明)

オーストラリア政府が2010年に制定した介護者法
The Carer Recognition Act 2010のセクション12として挙げられているもの。
(日本で『介護者憲章』と訳され紹介されているのがこれかも?)

1. All carers should have the same rights, choices and opportunities as other Australians, regardless of age, race, sex, disability, sexuality, religious or political beliefs, Aboriginal or Torres Strait Islander heritage, cultural or linguistic differences, socioeconomic status or locality.

すべての介護者は、年齢、民族、性別、障害の有無、セクシュアリティ、宗教また政治的信条、アボリジニまたはトレス海峡諸島民の子孫であること、文化的言語的な違い、社会経済的な地位やローカリティを問わず、他のオーストラリア人と同じ権利、選択と機会を与えられなければならない。

2. Children and young people who are carers should have the same rights as all children and young people and should be supported to reach their full potential.

介護者である児童と青少年は他の児童と青少年と同じ権利を有すべきであり、その潜在的な可能性に十全に達することができるよう支援されなければならない。

3. The valuable social and economic contribution that carers make to society should be recognised and supported.

介護者が社会に対して行っている価値ある社会的また経済的な貢献が認められ、支援されなければならない。

4. Carers should be supported to enjoy optimum health and social wellbeing and to participate in family, social and community life.

介護者は最も健康な状態と社会的なウェルビーイングを楽しみ、家族生活、社会生活、地域生活に参加できるよう、支援されなければならない。

5. Carers should be acknowledged as individuals with their own needs within and beyond the caring role.

介護者は介護役割の中にも、またその役割の外にも自分自身のニーズのある、一人の人であることが認められなければならない。

6. The relationship between carers and the persons for whom they care should be recognised and respected.

介護者と介護者が介護している人との関係性が認められ、尊重されなければならない。

7. Carers should be considered as partners with other care providers in the provision of care, acknowledging the unique knowledge and experience of carers.

介護者はケアの提供において、介護者ならではの知識と経験を尊重され、他のケア提供者のパートナーとして位置づけられなければならない。

8. Carers should be treated with dignity and respect.

介護者は尊厳と敬意をもって遇されなければならない。

9. Carers should be supported to achieve greater economic wellbeing and sustainability and, where appropriate, should have opportunities to participate in employment and education.

介護者は経済的なウェルビーイングと持続可能性を増大させる支援を受けると同時に、可能であれば雇用と教育に参加する機会を与えられなければならない。

10. Support for carers should be timely, responsive, appropriate and accessible.

介護者への支援はタイムリーで、ニーズに沿っており、的確で、アクセス可能なものでなければならない。

Appendix 5 – Statement of Australia’s Carers
Section 12 of the Carer Recognition Act 2010



なお、英語圏に伝わる読み人知らずの「介護者の権利章典」を訳してみたものはこちら ↓

介護者の権利章典 再改定版(2011/10/23)



【オーストラリアの介護者週間関連エントリー】
今日から豪・介護者週間……because I care(2008/10/19)
56歳の母親が語る息子の介護(豪・介護者週間)(2008/10/20)
2013.08.05 / Top↑
北アイルランドの保健省から2013年第1四半期の介護者統計が発表になっており、
以下の記事に、ケアラー・アセスメントについての概要が取りまとめられている。

今回が8回目ということなので、
2年前から四半期ごとに発表されていることになる。

私は最初、この記事を読み始めた時、
「ケアラー・アセスメントが断られたケース」というのを
HSCトラスト(英国のNHSトラストに当たると思われ)側が
ケアラーのアセスメント申請を断ったケースとしてイメージしてしまったのだけれど、

そうではなくて、
トラスト側が申し出たアセスメントをケアラーが断った、という話だった。

1.2013年1月1日から3月31日までの四半期に
 完了したケアラー・アセスメントは 1353件で、
 前の四半期よりも25%の増加。

 断られたケースは1342件で、
 こちらは前の四半期よりも5%の減少。

2.ケアラー・アセスメントの申し出の50%が断られた。

3.完了したアセスメントのうち、
 95%(1291件)は成人ケアラーのアセスメントで、
 5%(62件)が18歳未満のヤング・ケアラーのアセスメント。

4.アセスメントが完了したヤング・ケアラーは全員が16歳から17歳で、

 1291人の成人ケアラーのうち、
 71%は18歳から64歳、
 18%は65歳から74歳、
 11%が75歳以上。

5.アセスメントを受けたヤング・ケアラーのうち、
 29%は他の子どもの介護をしており、
 83%は成人の介護をしていた。

6.アセスメントを完了した成人ケアラーのうち、
 子どもを介護しているのは17%、
 成人を介護しているのは83%だった。

7.それらケアラーの介護を受けている人のうち、
 最も人数が多かったのはどのトラストでも高齢者。

8.アセスメントを断ったケアラーは1342人で
 ベルファスト・トラストの9%からサウス・イースタン・トラストの35%まで。

9.高齢の成人ケアラーのほうが若年層の成人ケアラーよりもアセスメントを断りがちで
 65歳以上では62%が断ったのに対して、18歳から64歳では断ったのは44%だった。
 断った65歳以上の619人のうち、40%が75歳以上だった。

10.アセスメントを断った理由について問うと、
 42%は、支援の必要はない、または現在の支援に追加は必要ない、
 17%は、アセスメントの時期が適切でない、
 13%は、自分をケアラーだとはみなしていない、
 9%は、受けてもメリットがない、
 7%は、介護者としての諸々はプライバシーにしておきたい、
 4%は、「その他」の理由、を
 それぞれあげた。

 また、1%は、福祉その他の給付への影響を懸念、
 7%は理由を挙げなかった。


高齢のケアラーがアセスメントを断っていること、
断った理由の中の「支援の必要がない」「自分はケアラーではない」
「(家族の)プライベートだから」など、とても興味深い。

断る人が減っているというのは
アセスメントが少しずつ浸透しているということでしょうか。

この後、Carers’ Review と 再アセスメントについてデータが示されているのですが、
その辺りの制度について分からないので、この後は省略しました。

Publication of ‘Carers’ Statistics for Northern Ireland (quarter ending 31 March 2013)
Debate NI, June 21, 2013
2013.07.01 / Top↑
英国のGP学会(RCGP)から、
自分自身のニーズを後回しにし、自分の健康のことを忘れがちなケアラーに
医療資源を回すべき、との声が上がっている。

記事のタイトルと冒頭の1文だけを見ると、
まるで介護者のメンタル・ヘルスの定期チェックだけが言われているみたいで、
なんだ、またも薬への誘導か……? とちょっと警戒心が動くのだけれど、

記事をちゃんと読んでみると
GP学会が言っているのはそういうことでは全然なくて、

ケアラーがストレスから心身の健康を損ないやすく、
介護を続けていれば早晩、自身も病気になる可能性が高いにもかかわらず、
自分がケアしている相手のことで精いっぱいになってしまって、
なかなか健康診断すら受けられずにいる現状と、

それなのにNHSやGPの医療現場では
財政のひっ迫を始め多数の問題が山積していて、
ケアラーの健康管理に目が向けられていないことを
本当に案じての提言。

医療資源は本当に必要とされているところに振り向けられるべきであり、
その「本当に資源を必要としている」中にはケアラーが入っているぞ、と。

「ケアラーが倒れたら、GPは患者を2人失うことになるんですよ。
介護を受けている人も失うし、ケアラーも失うわけだから、
財政の面から言っても、ケアラーには健康でいてもらわないと」と
BBCの番組で、RCGP会長。

財源について問われると、

健康な人をターゲットに、例えば心臓病のような
「起こす確率が低い病気」への検診を実施するなどの

「効果がないことをやるのは、いいかげんにやめて、
時間と資源を最も医療を必要としている人に振り向けなければ。
そして、最も必要としているのはケアラー達です」

GPs say carers neglect their own health and are at greater risk of depression
The Independent, May 11, 2013


高齢者への予防医学はむしろ有害、という指摘は
09年の以下のエントリーその他、いろいろ拾っているし ↓
「現代医学は健康な高齢者を患者にしている」(2009/3/8)

各種健診については
放射線被ばくリスクや誤診リスクの方が
実は検診の利益よりも大きい、という指摘だって、
ここ数年、あちこちから出てきている。
(補遺にいくつも拾っているのですが、
探すのが面倒なのでパス)

要するに、GP学会の会長さんが本当に言いたいのは、
ビッグファーマや医療機器会社に利益がもたらされるようなところばっかりに
限られた資源を無節操に振り向けるのではなく、
ちゃんと本当に患者への利益になるところに使え、ということであり、

経済活性化の問題が保健医療の問題に化けるようなところに
資源を無節操に振り向けるのではなく……ということなんじゃないかしら。
2013.05.14 / Top↑
一般社団法人日本ケアラー連盟から
ヤングケアラー支援ブログが誕生!!

http://youngcarers.carersjapan.com/

病気や障がいをもつ家族をケア(介護、看護、世話など)している、または
そのお手伝いをしている10代~20代のヤングケアラーと元ヤングケアラー(30代~)が
集い、語り合う場にしたいと思います。

身近にヤングケアラーや、ヤングケアラー支援の問題に興味関心のある方がおられたら
どうぞお知らせいただけると幸いです。よろしくお願いいたします。

以下、最初のエントリーからのコピペ。

病気や障がいをもつ家族をケア(介護、看病、世話など)している、またはそのお手伝いをしている10~20代の若いケアラー*(ヤングケアラー)ためのブログを立ち上げました。

心の中にある悩みや思いを話しませんか?
ヤングケアラーの中には、家族やケアに関する悩みを相談したり、思いを語り合ったりできる友達や大人が周りにいないという人が多いのではないでしょうか。
みなさんが気軽に何でも話せるところにしたいと思い、このサイトを立ち上げました。心に中にある思いをお寄せください。みんなで語り合っていきましょう。
もちろん、コメントを非公開にすることもできます。

たとえば、こんなことを話しませんか?
 ・家族のこと
 ・ケアで大変なことや困ったこと
 ・ケアをしていてびっくりしたことや面白かったこと
 ・ケアのために進学や就職などで悩んだこと
 ・学校や友達のこと

また、10~20代をヤングケアラーとして過ごした30代以上の方にとっても、その頃の話ができる場がないのではないでしょうか。
当時のこと、今だから言えることを話しませんか。
そして、今悩んでいる子どもたちへの励ましやアドバイスもお寄せください。


皆さんの生の声をコメントにお寄せください。
どうぞよろしくお願いいたします。


*ケアラーとは:
「介護」「看病」「療育」「世話」「こころや身体に不調のある家族への気づかい」など、ケアの必要な家族や近親者・友人・知人などを無償でケアする人のことです



【ヤング・ケアラー支援関連エントリー】
17歳のヤング・ケアラー、ロンドン5輪の聖火ランナーに(2011/12/9)
統合失調症の母親を持つ子供の回復過程(夏苅郁子論文)(2012/8/9)
あるヤング・ケアラーの語り(2012/10/18)

英国介護者週間
「介護保険情報」2007年8月号 連載「世界の介護と医療の情報を読む」
英国BBCが若年介護者特集
「介護保険情報」2011年1月号 連載「世界の介護と医療の情報を読む」

英「全国介護者戦略」モデル事業の総括報告書 リーズ大から 1(2011/12/28)
英「全国介護者戦略」モデル事業の総括報告書 リーズ大から 2(2011/12/28)


【日本ケアラー連盟関連エントリー】
介護者の権利を守るための「ケアラーズ連盟」、6月7日に発足へ(2010/5/18)(その後、名称変更)
「ケアラー連盟結成宣言」(2010/7/6)
日本のケアラー実態調査(2011/6/14)
ケアラー連盟設立1周年記念フォーラムに参加しました(2011/7/1)
去年こんな「祝・ケアラー連盟設立」記事を書きました(2011/7/8)
2013.03.29 / Top↑