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CA州の無料介護紹介サービス。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/186836.php

アメリカの女性が養子にもらった少年が手に負えないと一人で飛行機に乗せてロシアに送り返した事件で、ロシア政府がアメリカへの養子縁組を停止しているが、両国間で協議が始まるらしい。:しかし、一方に、[http://blogs.yahoo.co.jp/spitzibara/60203607.html ロシアのアル中などの社会問題が子どもたちに影響しているという問題も]あるらしいし。
http://news.bbc.co.uk/2/hi/europe/8650894.stm

中国で2日続けて、小学校、幼稚園にナイフを持った男が乱入し、障害、殺傷事件が起きている。先月も8人の子どもが殺された事件があって、犯人が昨日死刑になったとのこと。
http://www.guardian.co.uk/world/2010/apr/29/man-stabs-children-china-kindergarten

英国NHSで、経費節減のため、救急と小児科を閉鎖しようとの動き。
http://www.guardian.co.uk/politics/2010/apr/28/doctors-nhs-cuts-guardian-letter

パーキンソン病の人にDBS(脳深部刺激療法)が有効だ、と。
http://news.bbc.co.uk/2/hi/health/8649344.stm

障害児の増加で、NY市が特別教育の学校は重症児に限定し、一般校に障害児の受け入れを求めることに。
http://www.nytimes.com/2010/04/29/education/29schools.html?th&emc=th
2010.04.29 / Top↑
スイス、チューリッヒのZurich湖の湖底に
人の遺灰の入った壺が大量に捨てられているのを
落としたサングラスを探していたレスキュー・ダイバーが発見。

通報を受けて警察がダイバーを投入したところ、出てくるわ出てくるわ。
ダイバーの一人は、あまりに多いので50からカウントをやめたと語ったほど。

壺にはDignitasが使っていると思われる火葬サービスのロゴが入っており、
捨てられていた場所もDignitasの近くだという。

Dignitasの元職員のSoraya Wernliさん(52)は
少なくとも300個はあるのではないか、と推測。

「だいたい3個に1個くらいはZurich湖に沈めます。
最初は Minelli(Dignitasの創設者・責任者)が自分でやっていましたが、
その後は娘とか他のスタッフにやらせるようになりました」と。

2008年にDignitasの職員2人がチューリッヒ湖に遺灰を捨てているのを見つかった際にも
元職員の一人が「あの会社(Dignitasのこと)は、ずっと、やっていた」と語ったとのこと。

Ludwig Minelli氏は今のところコメントを拒否。

チューリッヒ市の市長は
「数にショックを受けている。システマチックに捨てていたとしか思えない。
警察の捜査の結果を待っているところだ」と。

Fury as ‘up to 300 urns containing human remains from Dignitas suicide clinic are at bottom of Lake Zurich’
The Daily Mail, April 28, 2010


Dialy Mailって、この記事に限らず、
ちょっとセンセーショナルな書き方が好みみたい。

捨てられていた壺の数は公表されていません。
300以上というのも、元職員の推測です。

Dignitasがやったと確定したわけでもありませんが
状況から、Dignitasと思われる、という話。


それにしても、ものすごく不思議なのですが、

Dignitasで自殺する人は多いし、
そういう人に家族が付き添って、最後のお別れもして……と
自殺に付き添う家族の愛をメディアは美しく持ち上げたりもするのだけれど、

そんな家族が、愛する人の遺灰を持ち帰らないというのでしょうか。


ちなみにSoraya Wernliさんは05年にDignitasを退職した後、
Dignitasでの虐待を暴き、閉鎖に追い込むために活動している女性。

これまでも、以下のニュースなどでコメントしていますが、退職の経緯などは不明で、Minelli氏からは在職時の恨みでやっていることだとの批判があったような記憶も。

「病気の夫と一緒に死にたい」健康な妻の自殺をDignitasが検討中(2009/4/2)
http://blogs.yahoo.co.jp/spitzibara/50993822.html
ウツ病患者の自殺幇助でDignitasにスイス当局の捜査(2009/5/27)
http://blogs.yahoo.co.jp/spitzibara/52607018.html
2010.04.28 / Top↑
前のエントリーで取り上げたClaire Royさんの成長抑制批判を大きな共感を持って読み、
しかしAshleyの親への批判が最後に向かってしまう方向性に2点ばかり危惧を覚えた。

まず、
「重症児は多くのことを教えてくれる存在なのだ」というのは、
ちょっと、余分なことがくっついちゃったな、と言う感じ。

なにか世の中の役に立てる証拠が、人として尊重してもらうために必要だという前提を
最初から受け入れてしまって、いわば”存在意義”の証明をしようとしているように聞こえる。

これは、日本でも重症児の親の発言にありがちな言い方で、
私はいつも抵抗を覚えるのだけど、

そこには、重症児の親や支援関係者が、
「こんな子が生きていて何になるのか」と社会から問われているかのように
無意識のうちに感じさせられていて、それに対して、
子らの”存在意義”の証明を試みなければならないような心理が
自動的に働いているのかもしれないのだけれど、

そこは、「なんになるのか」という問いそのものを否定すべきなんじゃないのだろうか。

そもそも人は何かのためにならなければ生きて存在してはならないものなのか。
その問いを向けられる人と向けられない人があるとしたら、それはなぜか。
その問いは、どういう人にだけ向けられるのか。
その問いに答えを出せなかったら、待機している次の問いは何なのか。
――と、問い返さなければならないんじゃないだろうか。

そして、そういうふうに問い返しつつ、
別に何のためにもならなくたって人は人として尊重されてよいはずだ、
というところから本当は動かないでいるべきなんじゃないだろうか。

次に、
子どもの命を託された親が子どものケアをするのは「義務であり幸運」という言い方は
子どもの身体を侵襲して介護負担を軽減する点だけを批判して終わってしまうと思う。

"Ashley療法"には負担軽減によって介護を親に背負いこませる論理が隠れているけれど、
「義務であり幸運」という言い方もまた、親は負担は負担のまま黙って抱え込んで然りと主張する。

Claireさんが同じ重症児の親である立場から批判しようとして、
そっちに行ってしまったのは気持ちとして分からないではないのだけれど、
そのために、「社会が変わらなければならない」という障害当事者らからの批判の声が
ここに入り込む余地がなくなってしまうことの危険に気付いてほしかった。

そこに気づけないのは、
私たち障害児の親が無意識のうちに規範として内在化させてしまっている
「子どもに障害があったら、その子どもは親が生涯に渡ってケアするもの」という
「障害児の親のステレオタイプ」が、それだけ根深いからじゃないだろうか。

Claireさんの頭の中にある自分と娘のSophieさんとの関係が
「延長された育児・子育て」としてしかイメージされておらず、
成人し、大人になっていくSophieさんがイメージされていないのだと思う。

でも、それは、実はClaireさん自身が
知的障害の重さに基づいて、娘との関係をいつまでも親と子の育児関係でとらえているわけで、

障害の重い娘は親から自立することはあり得ないという意識があるのだとしたら、
それは「障害はあっても、その子なりに成長する」というClaireさん自身の主張と矛盾している。

もしも、どんなに重症の知的障害のある子どもでも、
その子どもなりに成長していくと主張し、その言葉を信じるのであれば、
重症障害のある子どもだからといって、いつまでも親にケアされ
親との密接な関係の中にだけ抱え込まれて暮らすことが本当に幸せかどうか……と
親もどこかで疑問を抱いてもいいのではなかろうか。

(Claireさんは聡明な人なので、単にまだ時期が来ていないだけなのかもしれないけど)

そもそも、知的障害のない障害者の場合、
それは「幸せかどうか」の問題ですらなく
親から自立して暮らす「権利」の問題と捉えられるのに、
重症重複障害者の場合には(と言うよりも、おそらく重症知的障害者の場合には)
なぜ自動的に「権利」の問題ではなくなってしまうのだろう。

”Ashley療法”論争を巡って個人的にやり取りをした際に、
障害者の権利擁護の運動や研究をしている人ですら
「なにがAshleyにとって幸福なのか」という問いの立て方をすることに、

「Ashleyに必要なのは家族という小さな世界」と言ったDiekema医師の言葉を、
それは批判する側も共有しているということではないのか、という疑問と苛立ちとを、
私はずっと感じてきた。

それは、Ashleyには選択できないから、だろうか。

でも、自立生活の権利を主張する身障者たちだって選択できないと思いこまれていたからこそ
そのパターナリズムと闘わなければならなかったのではないんだろうか。



Sophieさんは彼女なりに人として成長する。
したがって、現在Claireさんが「義務であり幸運」と呼ぶ「子育て」は
今後は徐々に、親による子の「介護」へと変っていく。
Sophieさんには、親とだけの小さな世界よりも、もっと広い世界で生きていく権利があるはずだ。

そして、Claireさんは人として老いる。
それは「義務」や「幸運」や麗しい「親のステレオタイプ」では越えることのできない、
どんなに愛情のある親にも訪れる、人としての現実だ。

だからこそ、障害のある子供と親の権利が
どちらかがどちらかをほとんど全否定することによってしか成り立たないような
不幸な事態を生まないためには、

「義務」や「幸運」と胸を張って抱え込むよりも
Sophieさんなりの「親からの自立」を自然に考えることができるように
それだけの受け皿とサービスがある社会へと、目を向けてほしかった。

少なくとも、
「社会の方が変わらなければならない」という主張は落とさないでほしかったと思う。

その主張を落としたまま、重症児の親だからこその“Ashley療法”批判が
「愛情あるまっとうな親なら成長抑制などせずとも立派に介護してみせます」という方向に向かってしまうと、
また論争当初のように親の愛情の問題や、親の評価の問題へと問題がすり替えられてしまう。

成長抑制やAshley療法を批判する人は、そこのところの危険性に自覚的でありたい。

最初から、これは親の愛や評価の問題なのではなかったのだけれど、
”Ashley療法”の倫理問題を親の愛の問題にすり替えたのはDiekema医師らのマヤカシの戦術であり、

また、どこの国の社会でも、その方が社会にとって都合が良ければ
コトが美しい「親の愛」や「家族の愛」の問題に情緒的にすり替えられて、
権利の要求や現実への抗議の口封じや、または
ある方向への世論誘導に利用されているのだから。




【関連エントリー】
[http://blogs.yahoo.co.jp/spitzibara/29660632.html 重症児ケアの負担と親の意識について](2008/1/6)
[http://blogs.yahoo.co.jp/spitzibara/29773105.html 重症児ケアの負担と親の意識について 2](2008/1/6)
[http://blogs.yahoo.co.jp/spitzibara/33829274.html 「障害児の母親」というステレオタイプも](2008/3/4)
[http://blogs.yahoo.co.jp/spitzibara/44536404.html “A療法”には「親が抱え込め」とのメッセージ](2008/10/3)
[http://blogs.yahoo.co.jp/spitzibara/44794248.html 子どものケア、何歳から「子育て」ではなく「介護」?](2008/10/18)
[http://blogs.yahoo.co.jp/spitzibara/45440730.html 介護を巡るダブルスタンダード・美意識](2008/10/27)

[http://blogs.yahoo.co.jp/spitzibara/48844713.html 成長抑制を巡って障害学や障害者運動の人たちに問うてみたいこと](2010/1/28)
[http://blogs.yahoo.co.jp/spitzibara/59289641.html 親の立場から、障害学や障害者運動の人たちにお願いしてみたいこと](2010/3/12)
2010.04.28 / Top↑
今日のMaryland 大学のカンファレンスのAshley事件の分科会で
ビデオ講演を行う 重症児の母親 Claire Royさんが
[http://saynoga.blogspot.com/2010/04/conference-presentation.htmlという自身のブログで
講演内容を公開しています。

今までAshleyと同じような重症児の親から
こんなにまとまった、説得力のある批判が出たことはなかったように思います。

まず最初に娘Sophieさんのことが語られますが
脳死や植物状態の人も含めて、いかに認知機能が医療によって把握しにくいか
Ashley療法のみでなく移植医療を含めて、いかに医療が過ちを犯すリスクが大きいか
深く考えさせるケースです。


Sophieさんは6歳までは正常な子どもでした。
6歳の時に脳幹梗塞をおこして重症重複障害を負います。
MRIをとり、小児神経科医と神経外科医がアセスメントを行ったところ、
その日のうちに脳死状態になると言われて、臓器提供を求められたと言います。

現在Sophieさんは15歳。
医師はそんなことはあり得ないと言うけれど、
通常の会話は無理にしても、話したり質問に答えることはできます。
小学校2年生程度の読み書きもゆっくりとならできます。
数も認識はしていますが、計算はできません。男の子が大好きです。

生涯、胃ろう依存になると言われましたが、
現在は3食、おやつを口から食べて、胃ろうは水分補給と薬のみに使用。

側わんや手足の拘縮があり、寝たきりで
排せつも含めて生活全般が全介助。
けいれん発作があり、呼吸が突然止まることがあるので
常時見守りが必要で、夜はClaireさんが隣のベッドで寝ています。

感覚が過敏なので、外出が耐え難い刺激になることも。
身長は現在、約153センチ、体重約27キロ。



Ashleyとほぼ同じ障害像の娘について説明し、
だから「重症児の介護を知らないから批判する」との否定は
自分については言えないはずだと語り、また同時に、
自分の身近では重症児の親の中でも批判する人だって少なくない、とも。

これらを前置きとして、
Claireさんは「もしも自分がAshleyの親の要望を検討する倫理委の
メンバーだったとしたら、親に何と言うだろうか」と問い、
「やめなさい」と言う、と繰り返し答えます。

その主な理由が2つ述べられていて、

結局のところ、全てが認知機能のレベルの問題になっているということ

脳死、よくても植物状態になると言われた自分の娘は
そうならずに、様々なことができる子どもに成長している。
身体機能が限られた人の知的機能が低く見誤られてきた事例は
Christy BrownやAnne McDonaldなど、少なくない。
また最近は、脳機能の可塑性も言われるようになってきた。

それに、知的機能の正常な子どもに行われた場合には
Ashley療法は「ショッキングなほど不適切」だと
Ashleyの親自身がブログで書いている。

すなわち身体の統合性への侵害を正当化するのは
知的機能の低さ以外の何でもない。

本人の利益というのは表向きで、本当の理由は
成長抑制を推進している主要人物たちの発言の行間ににじんでいる


ここでClaireさんが引用するのは以下の3つ。

・06年Gunther&Diekema論文の一節が
成長抑制の利点として介護負担軽減を言っている個所。

・すっかり有名になった[http://blogs.yahoo.co.jp/spitzibara/7769852.html Dvorskyの「グロテスク」発言]。

・そして、 [http://blogs.yahoo.co.jp/spitzibara/16960775.html Norman Fostの「フリーク」「シボレーのエンジンを搭載したキャデラック」発言]。

そして、
これらのどこにも倫理的なものはなく、あるのは差別だけだ、と指摘。

その後の要旨は、以下。


かつては普通の子どもだった娘は重症障害を持つ子どもとなったけれど、
それでもSophieの成長は親にとっては喜びであり、
それは障害のない子どもの親と変わらない。

確かに重症児のケアをする生活は大変で
親は疲れたり、苦しかったりフラストレーションを感じることもあるけれど、
弱い子どもを守り育てることも、我が子が一人の人として成長し発達していくために
力を尽くすのも価値のあることである。

健康な子どもを託された親と同じように
我々も親として子どもの命を託されたのであり、一日一日、守り、ケアし、
社会が望むようにではなく、ありのままのその子として尊重することが
我々の義務であり、幸運でもある。

重症児は多くのことを我々にも、社会にも教えてくれる。

成長抑制は子どもへの利益でもなければ、解決策でもない。
子どもたちは「問題」でもなければ「ジレンマ」でもない。
子どもたちは、尊重すべき人なのだから。



Claireさんに日本からスタンディング・オベーションを。
2010.04.28 / Top↑
3月にオーストラリアQueensland州Brisbaneの家庭裁判所が
重症児Angelaちゃんの子宮摘出を認めた件について、
以下のエントリーで取り上げてきました。

豪で11歳重症児の子宮摘出、裁判所が認める(2010/3/10)
Angela事件(豪):事実関係の整理(2010/3/10)
Angela事件の判決文を読む 1(2010/3/11)
Angela事件の判決文を読む 2(2010/3/11)
重症児の子宮摘出承認でダウン症協会前会長・上院議員が検察に行動を求める(豪)(2010/3/13)

そして、その判決文を読んでみたところ、
一見、理由として挙げられていると見える、けいれん発作や貧血は現在は収まっており、
侵襲度の高い手段によって早急に対処する必要のあるような「健康問題」も
まして「命の危険」に当たる事実もなく、

むしろ判決文の書き方には多くのマヤカシや隠ぺいのトリックが仕掛けられていること、
その「文章のサブリミナル」とでも呼びたいトリックが
Ashley事件の主治医らの06年論文と同じヤリクチと思えることを
以下の2つのエントリーで指摘しました。

Angela事件の判決文は、Ashley論文(06)と同じ戦略で書かれている 1(2010/3/17)
Angela事件の判決文は、Ashley論文(06)と同じ戦略で書かれている 2(2010/3/17)

すなわち、
Ashley事件がSeattleで起こったことに必然性があったように、
Angela事件がQueenslandで起きたことにも訳があるのでは
……と考えていたのですが、

まさか、こんなに早く行き当たるとは思っていませんでした。
今日、以下のLancetの論文を見つけました。

Maternal mortality for 181 countries, 1980-2008: a systematic analysis of progress towards Millennium Development Goal 5
The Lancet, April 12, 2010

1980年から2008年まで181カ国の出産時の死亡件数の統計を分析した研究。

大きく改善が見られるという結果の公表については、
改善が報告されると、先進国から途上国への援助が鈍るとして
Lancetに掲載を見合わせるよう圧力がかかったとNYTimesが報じたことから、
ガーナの母子保健関係者がIHMEのディレクターMurray医師の発言に反発し、
今度はMurray医師が誤解だと反論するなど、
現在ちょっとした騒ぎを巻き起こしている論文です。

しかし、ここで目を引かれるのは、その騒ぎではなく、
上記リンクのNY Timesの記事の、以下の一節。


The new report comes from the University of Washington and the University of Queensland in Brisbane, Australia, and was paid for by the Bill and Melinda Gates Foundation.


(ゴチックはspitzibara)

この論文、
Washington大学とQueensland大学との共同研究で、資金元はゲイツ財団。

論文の著者はWashington大学IHMEの所長Murray医師を含む9人で、
一人を覗いて全員IHMEの所属。

残る一人がQueensland大学のAlan D. Lopez医師。

それで思い出して、
[http://blogs.yahoo.co.jp/spitzibara/36964869.html Murray医師が考案したDALYに関するエントリー]を覗いてみたところ、
IHME所長としての招聘されたばかりのMurray医師に関するSeattle Post-intelligencer紙の記事内容を
私自身が08年に以下のようにまとめていました。


SP-I紙が焦点を当てるのは
Murray氏の「爆弾言動」をめぐる“過激さ”と
彼の爆弾発言の洗礼をかつてのWHOの職員時代に浴びて以来
一緒に世界の医療データの見直しを行ってきた
豪のクイーンズランド大教授Alan Lopezとの関係。




Queensland 大学のLopez医師は、なんと、
Murray医師の長年のパートナーだったのです。

3月にAngela事件を聞いた時に思い出せなかったのが迂闊でした。

ついでに、
IHMEの[http://blogs.yahoo.co.jp/spitzibara/37136110.html Global Burden of Diseaseプロジェクトについて書いたエントリー]を覗いてみたところ、
このGBDプロジェクトに参加しているのはWHOの他、
米国のWashington、Harvard、Johns Hopkinsと、豪のQueenslandの4大学――。


もしかしたら、
Angelaちゃんの主治医のDr.Tって、
Queensland大学(Brisbane)の人だったりして……?


【関連エントリー】
[http://blogs.yahoo.co.jp/spitzibara/60091004.html Ashley事件が示唆する3つの重大な事実](2010/4/21)
2010.04.28 / Top↑
[http://blogs.yahoo.co.jp/spitzibara/59745450.html 4月3日のエントリー]で紹介したMaryland大学のカンファレンス 
Disability, Health Care & Ethics - What Really Matters が
いよいよ明日に迫りました。

このカンファでAshley事件についての分科会で講演するWilliam Peace氏が
自身のブログで講演内容を公開しています。

http://badcripple.blogspot.com/2010/04/conference-paper-on-ashley-treatment.html

全文は上記リンクから読めますが、
個人的に特に印象的だった末尾の部分を以下に抜いてみます。

{{{:
Thus at a fundamental level there is an us and them―those with a disability and those without. This is a false dichotomy but is a part of the American social structure and dare I say medical establishment. The degree of disability is not important nor is the type of disability. We people with a perceived disability are simply the other. Given this, I do not consider myself one iota different from Ashley in spite of the great difference in our cognitive ability. In coining the term the Ashley Treatment doctors have not only over reached the bounds of ethics in medicine but sent a shot across the bow of every disabled person in American society. The message is very clear: disabled people are not human―they are profoundly flawed beings and extreme measures will be taken to transform their bodies. Consent is not necessary as the mere presence of people with a disability, particularly those like Ashley with a profound cognitive disability, is inherently unacceptable. Modern science however has come to the rescue and doctors have the technology to save us. The problem with this line of thinking is that it is inherently dehumanizing.

このように、基本的なところでは我々対彼ら、つまり障害のある人対ない人である。
こういう二分法は間違っているけれども、ある意味で米国社会の構造でもあり、
敢えて言えば医療の体制である。障害の重さや種類は重要ではない。
それとわかる障害のある我々は、ただそれだけで別枠として外されるのだ。

これを思うと、認知能力が大きく違うとしても、私は自分のことをAshleyと少しも違うとは思えない。

Ashley 療法という用語を編み出すことによって、医師らは医療倫理の境界を超えただけでなく、
米国社会の障害者一人一人に矢を射たのだ。そのメッセージは非常に明確だ:
障害者は人ではない――障害者は大きく損なわれた存在だから、
その身体に変更を加えるためには極端な手段が用いられることになるだろう、というもの。

障害者、特にAshleyのような重症の認知障害のある者の場合には同意は無用との考えは、
根本的に間違っている。

それでも現代の科学は助けてやろうとやってくるし
医師らはテクノロジーを使って助けてくれようとする。

この考え方の問題は、
それが根本的に障害者を健常者と同じ人とみなしていない(dehumanizing)ことだ。
}}}

William Peace氏は、07年の論争当初に「Ashleyは私だ」と書いた身障者。
今回の彼の講演の基本線も、そこがくっきりと立っていることがとても清々しい。

彼ほど、論争の当初から一貫して強く批判し続けてくれた障害当事者はいません。

緊張しているそうですが、
明日は、がんばってください。
2010.04.27 / Top↑
これまで、以下のエントリーやいくつかの補遺で追いかけてきた
Jack Kevorkian医師の伝記映画(アル・パチーノ主演)ですが、
私はハリウッド映画だとばかり思い込んでいたのですが、
HBOというケーブルテレビ局がオリジナル映画として作成したもののようです。
(ハリウッド映画でなくて良かった。日本で公開されたら……と気が気じゃなかった)

[http://blogs.yahoo.co.jp/spitzibara/52610262.html アル・パチーノ主演でKevorkian医師の伝記映画作成か](2009/5/27)
[http://blogs.yahoo.co.jp/spitzibara/59551584.html Dr. Deathをヒーローに祭り上げ、シャイボさんをヘイトスピーチで笑い物にするハリウッド](2010/3/25)

24日土曜日に最初の放送があり、
メディアにはその前後から関連記事がわんさと登場しています。

[http://www.ianyanmag.com/?p=2409 こちら]の雑誌記事によると
今後5月16日までの間に13回、放送予定。

この記事は「客観的で正確な描写でDr. Deathに息吹を吹き込むと同時に
3つの州でのみ合法とされているだけで何年も議論が低迷してきた
医師による自殺幇助(PAS)を一気に国民的課題として表面化させた
」と。

また、Kevorkian医師自身が
法律が道徳できでないと感じるなら、その法律には従わないことだ」と。

あちこちの記事に寄せられるコメントを見ても、
だいたい、こういう路線の捉え方が多く、
米国での医師による自殺幇助合法化に向けて
世論が一気に傾いて行くことが懸念されます。

HBOのYou Don’t Know Jackのサイトは[http://www.hbo.com/index.html#/index.html/eNrjcmbOYM5nLtQsy0xJzXfMS8ypLMlMds7PK0mtKFHPz0mBCQUkpqf6JeamcjIysskng+TzSmwNDSyMLCwt2BjZGAF98hZ8 こちら]。

作品の一部や撮影風景、出演者へのインタビュー、
Kevorkian医師自身へのインタビューなどが見られます。

HBOに寄せられた映画へのコメントは[http://www.hbo.com/index.html#/movies/talk/forums/item.html/eNrjcmbOYM5nLtQsy0xJzXfMS8ypLMlMds7PK0mtKFHPz0mBCQUkpqf6JeamcjIysqmWZqbYpmQWJxenpqaoGrkYm5qwMbIxAgDNUxfQ こちら]。

ざっと最初のあたりを読んだ限りでは、
みんな安楽死に大賛成。

         ------

上記、HBOのサイトのプロモを見て、私が一番強烈な印象を受けたのは、
Kevorkian医師の「これは医療の問題なんだ。政治も法律も関係ない」という言葉。

これは、Ashley事件の立役者だと当ブログが考える倫理学者のNorman Fostの
無益な治療論やAshley療法、成長抑制療法についてのスタンスと、まったく同じ。

[http://blogs.yahoo.co.jp/spitzibara/54315706.html こちらのエントリー]でも、ちょっと書いているのだけど、
私は前から、医療を含む科学とテクノロジーの世界の人には、往々にして、
自分たちのいる世界と、その外の世界の大きさについて大きな誤解があるんじゃないか
という気がしてならない。

つまり、医療の世界とか、科学とテクノロジーのそれぞれの専門の世界は
政治や経済や法律を含む「文化」や「社会」よりも大きいと
どこかで勘違いしていないだろうか、ということ。

「専門性が高い」ということが、「その他の分野よりも上位にある」という認識に繋がり、
それは1つの専門性においての優位であるにもかかわらず
勝手にそれを普遍的な優位と勘違いしてしまって

いくら専門性が高くとも、その分野は文化の一部であって、
文化がその分野の一部に内包されているわけではない
」という単純な事実、
つまり、文化や社会の方が大きいという至極当たり前の事実が
見えなくなっているんじゃないだろうか。

それが[http://blogs.yahoo.co.jp/spitzibara/59745450.html 障害者の権利に対する医療と倫理委の無理解]にも、
[http://blogs.yahoo.co.jp/spitzibara/59781646.html 介護に関する無知を自覚できない工学者の無邪気]にも
重なっているんじゃないんだろうか。

そして、その誤解が、急速な科学とテクノの発展で、さらに助長されているんじゃないのだろうか。

もしかしたら、無自覚なだけではなくて、
Fost医師みたいに、どう考えても自覚的にやっているとしか思えない人もいる点では
[http://blogs.yahoo.co.jp/spitzibara/53873948.html 科学とテクノは法の束縛から自由になろうと、駄々をこね始めている]ことも
個々の問題を考える際に背景として念頭に置いておかなければならないとも思うし。
2010.04.26 / Top↑
裁判の資料によると、
今年2月28日、Florida州Naplesの5つ星ホテルRitz-Carltonで
Rodney Morgan氏ら英国人一家がチェックインした際に
「有色人種」と「外国なまり」のあるスタッフのサービスは受けたくないと要望。

ホテルの副支配人の名前でコンピューター・システムに
その旨が書き込まれた。

一家がホテルのレストランで食事をした3月12日
ハイチ生まれの米国人Wadner Tranchant氏(40)が給仕しようとしたところ、
一家が黒人ウエイターはいやだと言っているとの理由で上司から止められた。

Tranchant氏は「侮辱され、恥をかかされ、恐ろしい思いをし、脅され、
不当な辱めを受けて強い精神的なストレスを受けた。
そのストレスは今も続いており、医師の治療と心理療法を受けている」として
米国市民権法違反でホテルに懲罰と賠償金を請求する訴訟を起こした。

他のスタッフも何度も同様の扱いを受けたとされ、
裁判では9人のウエイトレスが証言する予定とのこと。

[http://www.timesonline.co.uk/tol/news/world/us_and_americas/article7105776.ece British family ‘asked not to be served by hotel’s black waiters’]
The Times, April 23, 2010


これまで解消の努力が積み重ねられてきた、あらゆる差別で
一気に揺り戻しが起こっているように感じられる今の世の中の空気を
象徴するかのような事件だと考えながら読んで、

記事の内容もさることながら、もっと気がかりに思えたのは
記事に寄せられている読者のコメントの数々で、

こういう希望は「客の好みとか選択の問題に過ぎない」と主張する人
つまり「客には自分の好みとしてこういう要求をする権利がある」と考える人が少なくないこと。

もう1つ目に付くのは
英国社会では人種間の分離は自主的に行われていて(self-segregation)、
誰もあからさまに言わないにせよ、この一家の姿勢は英国社会の現実そのものだと
指摘する人が複数あること。

それを問題視するよりも、むしろ、それが現実というものだと
半ば肯定するようなトーンで。
2010.04.25 / Top↑
英国の元GP、Michael Irwin医師については、
以下のエントリーで取り上げてきました。

[http://blogs.yahoo.co.jp/spitzibara/54074776.html スイスで自殺幇助に付き添ったパートナー逮捕(英)](2009/7/19)
[http://blogs.yahoo.co.jp/spitzibara/54314012.html 英国で患者の自殺を幇助した医師が「証拠出すから逮捕に来い」と](2009/7/28)
[http://blogs.yahoo.co.jp/spitzibara/55777528.html 英国で自殺幇助容疑で元GP逮捕へ](2009/9/28)

Irwin医師は、英国の自殺幇助を巡る現行法の扱いは偽善以外の何でもないと主張している
自殺幇助合法化アドボケイト Friends at the End の創設者。

富裕な人だけがスイスで自殺できるのはおかしいと
2007年に末期がんの患者Cutkelvin(58)氏が自殺した際に
Dignitasまで付き添ったばかりではなく渡航費用の一部(4500ポンドのうち1500ポンド)を負担し、
そのことを公開して問題提起を試み、去年9月に逮捕されました。

現在、保釈中。

以下の記事によると、
公訴局長DPPに2度までも手紙を送ったとのこと。

2月に最終的に出たDPPのガイドラインでは起訴ファクターとして
「容疑者が犠牲者と知り合いではなく、特定の情報を与えて
自殺や自殺を企てることをそそのかしたり、または幇助した」
「互いに知り合いではない複数の犠牲者に自殺をそそのかしたり
または幇助した」
が挙げられており、Irwin医師の行為がこれらの当たると判断されれば、
ガイドライン策定以降、初めて起訴に至るケースとなるかも。

[http://www.telegraph.co.uk/news/uknews/crime/7628786/Dignitas-British-doctor-first-to-face-charges-under-new-assisted-suicide-guidelines.html Dignitas: British doctor first to face charges under new assisted suicide guidelines]
The Telegraph, April 25, 2010


【関連エントリー】
[http://blogs.yahoo.co.jp/spitzibara/59215948.html DPPの自殺幇助に関する起訴判断のガイドラインを読む 1](2010/3/8)
[http://blogs.yahoo.co.jp/spitzibara/59215973.html DPPの自殺幇助に関する起訴判断のガイドラインを読む 2](2010/3/8)
[http://blogs.yahoo.co.jp/spitzibara/59573429.html 英国の自殺幇助ガイドライン後、初の判断は不起訴](2010/3/26)
2010.04.25 / Top↑


かなり前にニュースになっていた事件で、Minnesota州の元看護士の男性William Melchert-Dinkel, (47)がインターネットでウツ病の人たちに自殺をするよう働きかけ、方法を教えるなど幇助したとされていたが、金曜日に起訴された。直接の容疑はカナダ人女性と英国人男性の自殺幇助。しかし、ネットを通じて幇助した人は数10人と言われる。
http://www.google.com/hostednews/ap/article/ALeqM5gQJO3cHmuYbUTstiXGkZE2lviZ9wD9F91QI00

製薬会社と並んで、ここ数年米国で問題になっているのが医療機器の会社のデータ改ざんや政治家との癒着。5年間に、そうした機器の不具合による死亡ケースが710例報告されて、FDAが認可の条件を厳格化。特に輸液ポンプなど。:2009年1月には[http://blogs.yahoo.co.jp/spitzibara/48380012.html FDAの科学者らから認可審査のずさんさについて内部告発]もあった。
http://www.nytimes.com/2010/04/24/business/24pump.html?th&emc=th

豚インフル・ワクチンの反作用に関する調査でマヒや死亡に至る可能性のある症候群が増えている可能性。しかし、米政府の関係者はまだ分からない、とも。
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2010/04/23/AR2010042304965.html?wpisrc=nl_cuzhead

ここ数年、ヨーロッパ、ロシア、日本、アメリカなどから金属製品のスクラップを買い込んできたインドで、その加工を行う小さな工場で働く人たちが立て続けに7人が入院する事態となり、警察がその地域を閉鎖。有害ITゴミによる環境汚染や人的被害の恐れ。:[http://blogs.yahoo.co.jp/spitzibara/60000283.html 4月16日の補遺]に関連記事。もちろん07年の[http://blogs.yahoo.co.jp/spitzibara/56696920.html 象牙海岸の悲劇]は忘れられないし、現在もまだ続いている。
http://www.nytimes.com/2010/04/24/world/asia/24india.html?th&emc=th

米国のボーイスカウトに、70年以上も前から性的虐待に関する苦情処理のファイルがある。それほど多発していたということ。80年代にリーダーの男性から性的虐待を受けたという男性の訴訟で、米国ボーイスカウトは賠償金185万ドルの支払いを命じられた。
http://www.nytimes.com/2010/04/24/us/24scouts.html?th&emc=th

2010.04.24 / Top↑
You Don’t Know Jackのプロモで、アル・パチーノとキボーキアン医師が2ショット。:こういう形で世論誘導が一気に進むと思うと、本当に気分が悪い。ちなみにこの記事によると、Kevorkian医師が94年に裁判に敗れたミシガン州では98年に自殺幇助合法化の住民投票(と思われる)が71%対29%で否決されたとのこと。
http://www.examiner.com/x-29099-Grand-Rapids-Public-Health-Examiner~y2010m4d22-HBOs-Jack-Kevorkian-film-spotlights-assisted-suicide
http://www.google.com/hostednews/ap/article/ALeqM5hT9vOTc-PV_bpyXxDgy2uJI4zkYgD9F872GO1

フロリダのリッツ・カールトンホテルに宿泊した英国人一家が、チェックインの際に「有色人種スタッフや外国なまりのあるスタッフのサービスは受けたくない」と要望し、黒人ウエイターが差別されたとして提訴。
http://www.timesonline.co.uk/tol/news/world/us_and_americas/article7105776.ece

スペインで世界初のフル・フェイス移植。近く英国のチームが世界初で行う予定にしていたところ、スペインに先を越された格好。患者は30代の農夫で、銃の暴発で口、あご、鼻を失い、自力での呼吸も食事もできなくなっていた。胃ろうと、首からチューブを入れての呼吸になっていたとのこと。顔の移植については、これまで、フランス、アメリカ、中国、スペインで行われてきたが、すべて顔面の部分移植で、フル・フェイスは今回が初めて。ただ、顔の移植には、強い免疫抑制剤を障害に渡って飲み続けることから重大な副作用のリスクがあり、倫理問題がとり沙汰されている。:顔の移植については2008年8月にフランスと中国の2例を[http://blogs.yahoo.co.jp/spitzibara/42876328.html こちらのエントリー]で取り上げた際に、すでに「次はフルフェイスで」という話が出ていて、つまりは世界初のフルフェイスをどこの国がやるかの国際競争だった。顔面移植の倫理問題も、この時の記事には免疫抑制剤の副作用以外にも、いろいろ触れられていたのだけど。
http://www.timesonline.co.uk/tol/news/world/europe/article7105588.ece

サウジアラビアで80歳の男性と結婚させられていた12歳の少女の離婚の申し立てが認められ、結婚年齢の見直しの必要が言われている。
http://www.timesonline.co.uk/tol/news/world/middle_east/article7104248.ece

性犯罪者が登録されて、生涯、見直しなしで監視の対象とされるのは人権侵害だとの2人の性犯罪者が訴えを、英国最高裁は部分的に認めた。:米国では確か、足首にGPSの発信機をつけさせるんじゃなかったっけか。
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/8634239.stm

カトリック教会が教会として初めて、長年の児童虐待について正式に謝罪。
http://www.timesonline.co.uk/tol/comment/faith/article7104305.ece

病院ごとの患者の死亡率だけを問題に調査に入るのは不当、と英国の病院。:まったく、その通りだと思う。医療とか教育には成果主義はなじまないような気がする。
http://news.bbc.co.uk/2/hi/health/8633214.stm

前立腺がんの患者のうち、貧困な地域の患者は裕福な患者ほど放射線治療や手術を受けられていない。
http://news.bbc.co.uk/2/hi/health/8637584.stm

重い自閉症の子どもを持つ父親が、言葉を持たない自閉症の人向けにコミュニケーション機器 Speas4Meを作成。
http://news.bbc.co.uk/2/hi/technology/8634607.stm

日焼けマシーンの中毒になる人たち。皮膚がんのリスクがあるという問題と、日焼け中毒の人たちは薬やアルコールの中毒リスクも高いという問題と。:摂食障害に共通する自尊感情の問題とか……?
http://news.bbc.co.uk/2/hi/health/8625840.stm

英国保守党のCameron党首が、宙ぶらりん議会(hung Parliament)になったら経済危機だと。:日本でも、そういう方向に向かっているみたいだし。
http://www.timesonline.co.uk/tol/news/politics/article7104332.ece
2010.04.23 / Top↑
国際的な免疫学者で、脳梗塞で倒れた後には
リハビリ打ち切りへの動きと激烈な戦いを続けてこられた
多田富雄氏が21日に亡くなったとのこと。

昨日の朝日新聞の記事では
国際的な免疫学者としての氏の功績が非常に詳しく述べられて、
新作能の作者であったことにも触れられているのだけれど、
その後のことについては

{{{:
01年に脳梗塞で倒れ、重い右半身まひや言語障害といった後遺症を抱えたが、リハビリを続けて左手でパソコンを打ち、朝日新聞文化欄に能をテーマに寄稿するなど、意欲的な文筆活動を続けていた。
}}}

そのリハビリを、医療費削減のために続けさせてくれない国と
多田氏は「それは死ねということだ」と闘ったはずなのだけれど
そのことには触れられていない。

この記事の書き方への抗議と多田氏への哀悼の意を込めて、
これまで多田氏のことを書かせてもらったエントリーを以下に。

[http://blogs.yahoo.co.jp/spitzibara/36517682.html 「私のリハビリ闘争」に思うこと](2008/4/14)
[http://blogs.yahoo.co.jp/spitzibara/45117290.html 重度のマヒあれば免疫学者も講釈されるステレオタイプ](200810/18)
[http://blogs.yahoo.co.jp/spitzibara/47573536.html “師長の王国”](2008/12/24)
2010.04.23 / Top↑
90年代に自殺マシーンを作り130人もの自殺を幇助し、
有罪判決を受けて2008年に出獄したDr. DeathことDr. Kevorkianが
患者の苦しみに共感し「死の自己決定権」を求めて闘う姿を描く映画
You Don’t Know Jack(アル・パチーノ主演)が24日に公開とあって、
英語圏のメディアがしきりにこの映画を取り上げていますが、

幹部4人が闇の自殺幇助で逮捕され現在裁判が進行中のFinal Exit Networkが
リリースを出して「みんなでこの映画を見て死の自己決定権を考えよう」と
呼びかけています。

(FENについては文末にリンク。
FEN事件の概要をまとめた「介護保険情報」の記事はこちら

医学の進歩のおかげで、
死病の診断を受けているにもかかわらずターミナルではないとされる患者が
最も辛い目に遭わなければならない状況になっている、

何が何でも患者を生かそうとする医師によって
引き伸ばされているのは命ではなく、むしろ死が引き伸ばされているのだとして、

「無力感と絶え間のない苦痛、社会的孤立と精神的な荒廃という悪夢のうちに
命が永続させられることは、拷問に等しい」と。



ちょうど、昨日、
第4回宗教と生命倫理シンポジウム
「尊厳死法制化の問題点を考える」の報告書を読んで
(3月2日のエントリーで一部について書いています)

日本尊厳死協会理事長の井形昭弘氏の似たような発言に
赤線を引っ張ったところだった。

我が国は世界一の長寿国になりました。……(略)……健康寿命と寿命が一致すればピンピンコロリになりますが、それは非常にまれです。多くの場合健康寿命と本当の寿命の間には数年のギャップがあって、その間に病気になり、苦しみ、絶望し、そして最後に死が待っています。

無力感と絶え間のない苦痛と社会的孤立と精神的荒廃……。
病気になり、苦しみ、絶望し、そして最後に死……。

ピンピンコロリ以外の死に方は、苦しみと絶望ですよ……。

これ、私たちを、脅している……んでは?

それに、ピンピンコロリを持ち出して
その対極に「病気、苦しみ、絶望、死」を置いてみせるということは
やっぱり尊厳死は 「老いは自己責任で予防しろ」というメッセージとセットになっている……。

   ―――――――

日本尊厳死協会って、こんなふうに国民を脅してかかるんだぁ……とショックを受けて、、
ふと思い出したこと。

数ヶ月前にNHKで、膀胱がんを患う立花隆氏が
世界中の癌治療研究の最先端を次々に取材して歩く番組があった。
取材が進むにつれ、治療法が進めば癌の方がさらに進化していく実態と直面し、
結局、科学がいずれ癌に勝利するという希望を発見できずに帰ってきた立花氏が
最後に訪れたのは、鳥取県の「野の花診療所」。
徳永進医師のホスピスだった。

90年代の脳死・臓器移植議論の後で転向して
すっかり科学とテクノの信奉者になっていた立花氏が
自分が癌患者となり、科学はおそらく癌を制圧しきれないという事実を受け入れて
番組の最後に語った言葉がとても印象的だった。

立花氏は「野の花診療所」へ行って分かったのだという。
「人間には、ちゃんと死んでいく力が備わっている」のだということを。




2010.04.22 / Top↑
去年からカナダ議会に提出されていた
自殺幇助法案(Francine Lalonde議員提出)は20日夜、否決されました。

228 対 59 の大差。

投票後、5人の議員が、
「法案を廃案にして終わるのではなく
この問題について対策を考えなければならない」
「ウツ状態で生きる気力を無くしている人に必要なのは
取り返しのつかない簡単解決を勧めることではない」と語り、
今後、緩和ケアや高齢者ケアについて研究する委員会を立ち上げて
党派を超えて参加を呼び掛けていく、と表明。



【追記】
もうちょっと詳しい記事。
Lalonde議員は癌の闘病生活からターミナルな人への自殺幇助を考えたのだとか。



2010.04.22 / Top↑
鼻の粘膜細胞(OEC)を移植することによって、中枢神経系の損傷を修復することができるとして、MS、脊損、ALSが治療可能といわれているが、脳性まひの子どもにも治療の可能性がある、と中国の研究者。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/186039.php

この記事からは分かりにくいのだけど、この問題は実は以下の問題に繋がっているものらしい。

中絶胎児組織の研究利用 ― アメリカでのモラトリアム時代 玉井真理子(2003)
http://square.umin.ac.jp/~mtamai/taizireview.htm

神経再生研究における胎児組織利用に関する見解(2005年4月5日 日本せきずい基金)
http://www.jscf.org/jscf/SIRYOU/igaku-1/saiboisyoku/jscf050405.html

死亡胎児の組織利用を巡る倫理的問題 森芳周 大阪大学大学院文学研究科博士後期課程 臨床哲学
http://www.med.osaka-u.ac.jp/pub/eth/OJ2-2/mori.htm

「捨てられるいのち、利用されるいのち ― 胎児組織の研究利用と生命倫理」玉井真理子・平塚志保(2009)
http://www.arsvi.com/b2000/0902tm.htm

どこで見たのだったか、もう思い出せないし、
もしかしたら上記リンク以外でのことだったかもしれないけど、
臨床現場で医師は患者に対して「医の倫理」を持っており、
一方で科学を発展させる「科学者の倫理」との板挟みになる時代だという話と、
その相克の中で胎児組織の利用においては、
医師は「医の倫理」を捨てて「科学者の倫理」をとった
という分析が印象的だった。

         ―――――――

文系頭には、一体どういうものなのか想像もつかないけど、これまでのワクチンと違ってDNAワクチンなるものが開発されつつあって、それがまたビジネス・ポテンシャルの大きな新分野ということらしい。この記事でC型肝炎のDNAワクチンと開発中とされているのは、スウェーデンのカロリンスカ研究所。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/186032.php

Massachusetts州の医療保険改革、5年かけて州民の97%が医療保険に加入。
http://www.nytimes.com/2010/04/21/opinion/21wed1.html?th&emc=th

Kansas Cityの都市部の小学生の7%が白癬菌に感染している。:そういえば、英米で頭に虱がいる子どもが多いという話もずいぶん前に聞いた。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/185898.php

日本語のニュースにもなっていたけど、BBCの番組がケンブリッジ大の科学者と11000人のボランティアで検証実験を行ったところ、脳トレ・ゲームそのものは練習によって上達するものの、それが認知機能の向上には影響しないことが判明。Nature誌に論文掲載。:この番組の名前はBang Goes The Theory。通説が一瞬にして覆される感じが良く出ていて面白い。もともと「○○は必ずできる!」とか「○○すれば、こうなる!」と簡単に断言するような人は大した学者ではないし、そういう断言で提示される内容は眉唾だというのが通り相場だろうと思うのだけど、なにしろ、そういうエセ科学は多いので、日本でも検証番組を作ったら面白いのに。ちょうど昨日だったか、朝日新聞に「脳科学はまだ発展途上で応用には十分な注意が必要」とする研究者らの考えと、脳神経科学学会が1月に研究成果を発表する際には科学的根拠を示すようにと声明を出したという記事が載っていた。こういう批判や反省が、もっと専門家の間から出てきてもいいと思う。
http://www.guardian.co.uk/commentisfree/2010/apr/20/brain-training-games-iq
2010.04.21 / Top↑
16日の補遺で今度は肺炎ウィルスのワクチンかという話題を拾ったと思ったら、昨日は、そのウィルスRSVが如何に子供の命を奪っているかという研究が報告されている。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/185815.php

英国の主要3党はそれぞれマニフェストで精神障害者向けのカウンセリング要員を増員すると公約しているが、一方でNHSの予算が大幅にカットされれば、最終的に精神障害者がカウンセリングを受けられなくなるのは必至、とチャリティから懸念。
http://www.timesonline.co.uk/tol/life_and_style/health/mental_health/article7101411.ece

英国の高齢者の多くは、社会から尊重されていないと感じている反面、歳をとることそのものは祝福されるべきことだと感じている。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/185862.php

脳卒中の患者のリハビリにロボット:日本でもこの分野の研究は進んでいるはずで。
http://news.bbc.co.uk/2/hi/health/8626056.stm

今年に入ってロンドンでティーンエジャー同士の衝突で出た死者、すでに8人。
http://www.timesonline.co.uk/tol/news/uk/crime/article7101283.ece

テネシー州の病院で乱射事件。女性1人死亡。ほか2人が重傷。犯人は自殺。
http://www.nytimes.com/2010/04/20/us/20tennessee.html?th&emc=th

イランの挑発行為に米国防省からイランの核施設攻撃について言及。
http://www.timesonline.co.uk/tol/news/world/us_and_americas/article7101161.ece

カリフォルニア州最高裁がマリファナの鎮痛剤使用を認めたものの、職場での薬物チェック義務との制度の整合性に問題が指摘されている。
http://www.usatoday.com/money/industries/health/2010-04-20-medical-marijuana-side_N.htm?csp=DailyBriefing

コロラド州では医療用マリファナの患者も店も、この半年で急増。
http://www.usatoday.com/money/industries/health/2010-04-20-medical-marijuana_N.htm?csp=DailyBriefing
2010.04.20 / Top↑
ちょっと遅ればせの記事になりますが、

Diekema、Fost両医師他が去年6月に小児科学会誌に成長抑制に関する論文を書き、
早々と一般化する場合のスタンダードを設定しようと試みたことは、
既にいくつかのエントリーにまとめました(詳細は文末にリンク)が、

それに対して、去年6,7月のうちに
AARP誌のサイトに反論が3つ寄せられていました。


それぞれの主要な論点について、簡単に以下に。

①Garey Noritz医師:Case Western Univ. School of Med.

・著者らが主張する成長抑制療法の安全性についても効果についても証明されていない。

・3歳段階で選択肢として親に提示せよとの提案は早すぎる。
 3歳では障害が将来どういう状態で固まるかを正確に予測することは不能。
 
・成長抑制目的での小児に対するエストロゲンの大量投与は
著者らが書いているよりもはるかに、これまでの一般的な医療と距離がある。

・新しく過激な医療として、ダウン症児への心臓や腸の手術と
知的障害女性に対するルーティーンとしての不妊手術があったが、
時を経て前者はスタンダードな医療となり後者はすたれることとなった。
成長抑制がどちらになるかはまだ分からない。

②Miriam A. Kalichman医師:Division of Specialised Care for Children, Univ. of Illinois

・親は老いていくという事実を考えると、いつまでも介護可能な身長も体重もあり得ず、
 可能な選択肢は障害のある成人への集団介護以外にはない。
 
・この治療は、正常な身体に手を加えるものであり、
それは自分の知る限り他には不妊手術以外に存在しない。
ロボトミーや、障害があることを理由に髄膜瘤をしなかったり
ダウン症児の心臓病を治療しなかったり、など
これまで医師と親とは、偏見やサービスに対する無知から
発達障害のある人たちへの医療について不幸な決断を行ってきたのである。

・著者らの「重症認知障害」の定義はあまりにも曖昧であり、
特に3歳段階でコミュニケーション能力について断定的な診断が可能と考えることは
明らかな誤りで、その後の育て方によって変ってくる。
また仮に診断が可能であるとしても、3歳段階で将来のことまで決めるには
親がまだ混乱している。

・ケアについて言えば、歩かない全介助の重症児よりも、
飛び出して行って攻撃的な行動をとる子どもの方が手がかかる。
そういう子どもこそ10歳になっても成人しても親がケアするためには
成長抑制が有効なのでは?

③Michelle Kuperminc医師: Univ. of Virginia

・この療法によって実際に子どものQOLが向上するというエビデンスはない一方、
 重症身体障害のある子どもは遺伝的最終身長まで伸びないというエビデンスはあり、
 障害像に応じて、その子の成長を予測することも可能となりつつある。
 ただ遺伝的に背が高くなりそうだからと将来に不安を感じる親には
 こうした予測も情報提供すべきである。

・次のステップは治験であろうが、十分なエビデンスもないまま、
将来を予測したうえでの療法として親に提示するのは時期尚早である。

      ------
 
Noritz医師とKuperminc医師の批判には、
効果があるとのエビデンスがあれば、また知的障害の重さが正確に診断可能なのであれば
許容されるが……との前提があること、

そのため、Noritz医師の「時代と経験によって、いずれに振り分けられるか」にしろ
Kuperminc医師の「次のステップはランダムな実験」にしろ
この段階で広く一般化して推奨するのは賛成しないものの
個別に行われるケースはデータ化して効果を検証すべきだとの姿勢になっていることも
成長抑制療法そのものの倫理的検討の必要が認識されていないという点で気になります。

親が老いるという事実が成長抑制正当化の論理からは排除されているというのは
当ブログが以前から指摘してきたことの1つですが
英文での批判としてはKalichman医師の指摘が初めてではないかと思います。

もっとも、その解決には集団介護以外の解決策はないという個所については
議論が分かれるところでしょうが、敢えて施設と言っていないことには含みもあるのかもしれせん。

しかし、何よりもほっとするのは、やはり
医師と親の障害者に対する偏見によって間違った医療上の判断がされてきた歴史を
ちゃんと自覚している医師もいるのだ、という事実――。


2010.04.20 / Top↑
ニュースそのものは、モンタナ州の72歳の元獣医で、
手術不能の脳の癌を患うSteve Johnsonさんが医師による自殺幇助を望んでいる、
というものなのだけれど、

この記事の中で重要だと思う内容が2点あって、

1つはJohnsonさんがC&Cのテレビ・コマーシャルに出演している、という事実。
というか、むしろ、C&CがTVコマーシャルまで流している、という事実。

それから、Monatana州では
去年の大みそかに最高裁が現行法のままでターミナルな病状の人が
医師による自殺幇助を求めることは違法ではないとの判断を下したものの、
その直後から、来年にもPASを違法とする法案を提出するとの声が
州議員らから続出しており、まだまだ先行き不透明である、との記述。

こちらは、ちょっと、ほっとする内容ではあるけど。

Dying man, 72, wants doctor-assisted suicide
Msstandard.com., April 9, 2010


2010.04.19 / Top↑
2008年9月 
Stonybrook 大学における認知障害に関するシンポでPeter SingerがA事件に言及
http://www.stonybrook.edu/sb/cdconference/podcasts.shtml(シンポ・サイト)
http://www.youtube.com/watch?gl=JP&hl=ja&v=ncppXrGFCBA(YouTube)


2009年1月13日 
Ashleyの父親がブログに3周年のアップデイトを追加
http://ashleytreatment.spaces.live.com/mmm2007-10-25_18.59/mmm2007-10-25_18.59/blog/cns!E25811FD0AF7C45C!1827.entry




1月29日 
Diekema医師ボストン子ども病院でAshley事件について講演
http://www.seattlechildrens.org/research/initiatives/bioethics/events/faculty-and-staff-speaking-engagements/

4月 
Bioethics誌がDiekema&FostのAshley論文に対してコメンタリーを募集
http://blogs.yahoo.co.jp/spitzibara/55859613.html

6月
Pediatrics誌にDiekema、Fostらが成長抑制論文
http://pediatrics.aappublications.org/cgi/content/abstract/123/6/1556


9月 
オーストラリアの法律事務所が成長抑制の法的手続きについて医師らに警告
http://hwlebsworth.ensoconsultancy.com.au/health_sept09/growth-attenuation-therapy.html

10月9日 
WA大学が「優生学と障害」シンポ(WPASのCarlson氏がモデレーターとして参加)
http://eugenics.washington.edu/index.htm

11月 
Journal of Medical EthicsにAmy Tanが批判論文
http://jme.bmj.com/content/35/11/658.abstract



2010.04.19 / Top↑
The Mental Health Foundationが患者本人に行った調査をもとに英国アルツハイマー病協会から報告書「私の名前は認知症ではありません」自殺幇助合法化を説いている作家のPratchette氏も加わっているらしい。話し相手がいたり、信仰があることなどによって、認知症の人は一般に考えられている以上に高いQOLを維持することができる。また、環境や人種によっても、QOLで何を重視するかは違っている。認知症だからといってQOLが低いとは限らないし、QOLが下がらないようなケアがされるべきである。:報告書のタイトルがいい。「最先端の技術でどういう支援ができるかの議論を急ぐのではなく、認知症の本人たちはどういう体験をしているのか、まず本人を理解してほしい」と、つい先日、私も認知症ケアの専門家の訴えを聞いたばかりだ。
http://www.alzheimers.org.uk/mynameisnotdementia
http://www.alzheimers.org.uk/site/scripts/download_info.php?downloadID=418

世界のワクチン製造企業が9月に中国に集結し、ワクチン開発サミットVacChina201を開催するとのこと。ビッグ・ファーマがこぞって「中国における医療の改善」に乗り出しているらしい。もちろん「予防医学」によって。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/185778.php

まだワクチンを打てない新生児の百日咳予防のため、周囲の大人にワクチンを接種することによって予防するCocooning(繭に入れる)という戦略が提唱され始めている。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/185618.php

新しい法律により2013年から製薬会社には医師らへの金銭支払いの詳細を明らかにすることが求められるが、すでに会社ごとに独自にディスクロージャーの動きが出ている。それによると、Pfizerは去年6月から12月の間に450人の医師と250の研究機関に3500万ドルを支払っている。ただし個々の医師への支払金額は非常に分かりにくい形態のディスクロージャーとなっている。NYTが詳細な分析を行った結果、最高額は麻酔医で痛みの専門家、Dr. Gerald M. Sacksへの146,500ドル。
http://www.nytimes.com/2010/04/13/business/13docpay.html

しかし、上院の調査では未だに大学の規定に反して、製薬会社からの金銭の授受をちゃんと報告していない研究者がいる、とのこと。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/185381.php

もう1つ、製薬会社と研究者の癒着を巡るNYTの記事。糖尿病の治療薬Avandiaについて2007年以降に書かれた論文を分析したところ、その効果を肯定的に書いた論文の著者らの87%にAvandiaの製造元であるGlaxoSmithKline社から資金提供を受けるなど、利益の衝突があった。論文に偏向の疑いがある、との指摘。
http://www.nytimes.com/2010/04/13/health/13diab.html

ホルムアルデヒドの発がん性を巡る調査に、妨害工作をした上院議員と企業の癒着。先日、ネットメディアとして初めてピューリッツァを受賞したPropublicaの記事。:Propublicaは米国での調査ジャーナリズムの危機を憂いた有志が集まって始めた、調査報道を旨とするネットメディアで、かなり前に知って以来ずっと覗いているのだけど、1つ1つの記事が長いので、なかなか読み切れない。ピューリッツァを受賞した記事も、ハリケーン・カトリーナの際の高齢障害患者の安楽死を扱ったもので、当時、この事件はちょっと調べたので興味があってブクマしたのだけど、それきりになってしまった。
http://www.propublica.org/feature/how-senator-david-vitter-battled-formaldehyde-link-to-cancer

DNAシークエンスの全体像を分析するテクニックから考えると、個別の遺伝子に特許が設定されることは患者の不利益になる。:こちらのエントリーで取り上げたように、乳がん関連遺伝子を巡って進行中の訴訟もある。この訴訟の続報は、こちらこちらに。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/185662.php

CBSの60 minutes、アル・パチーノのYou Don’t Know Jack インタビュー。
http://www.cbsnews.com/video/watch/?id=6402812n

英国の障害児、特に黒人や少数民族の親の場合には、他の子どもたちよりも貧困率が高く、社会的にも個人的にも不利な環境にあることが多い。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/185716.php

英国NHSの看護師、助産師に全国統一ユニフォーム?
http://www.medicalnewstoday.com/articles/185318.php
2010.04.18 / Top↑
1997年に消費者直結の薬のコマーシャルが登場して以来、
「薬のあるところ、病気は(そして患者も)出てくる」を信条としてきたビッグ・ファーマは、
このところ「次はワクチンが儲かりまっせぇ」と当て込んでいたものの、

米国人のワクチン不信と、
去年の暮れにはCDCの前センター長Julie Gerberding氏が
Merck社のワクチン部門の責任者に就任したことで
国際的なワクチンを巡る陰謀説への疑念ぬぐいがたく、

またもや、せっせと新たな病気を作り、患者を作り、啓発にいそしむ、
かつての戦略に逆戻りしている、というのが以下の記事の要旨。



で、その記事が挙げている「8つのでっちあげ病」とは、

1. SERM(選択的エストロゲン受容体モジュレータ)不足

薬が売れるための「マジック3」とは「不安、永続、盲信」で
更年期後の骨粗鬆症予防薬には、その3つがそろっている。

効いているのやら、そもそも自分に飲む必要があるのやら分からなくても
飲んでいればとりあえず不安が消えるから。

これまで治療に使われてきたbisphosphonatesには
顎の骨が溶けたり発がん性があったり、
予防するはずの骨折を引き起こすなど
副作用が指摘されてきたので、
新たにSERM薬の売り込みが狙われている。

2.スタチン不足

FDAは去年、10歳の子どもにアストラゼネカのCrestorを認可。
今年3月にはコレステロールにも心臓にも問題のない650万人への使用も認め、
世の中を上げてスタチンを飲ませよう、という風潮。
しかも、ここでも「不安、永続、盲信」が有効。

3.Circadian Dysrhythmia(24時間リズムの乱れ)

サーカディアン・ディスリズミア……なんて書くと
恐ろしげな病気のようにも見えるけど
検索してみたら、なんのことはなく、


こちらのテキサス在住の学生さんのブログの解説が絶妙で、
要は24時間のサイクル・リズムが狂うことなんだとか。

この記事の説明では、
不眠症では、製薬会社はもう儲けられるだけ儲けたから、
不眠症マーケットには、これ以上の伸びしろはなく、そこで考えついたのが
夢遊病だとか寝汗だとか、夜勤でリズムを崩して寝つきが悪い人とか、睡眠時無呼吸とか
眠りにまつわるリズムの乱れを病気として扱うこと。

4.成人における自閉症、ADHD、扱いにくい人であること

かのBiederman医師が2004年にJAMAに書いた成人ADHDの症状は
多動や衝動性や、組織に不向きだったり、時間の管理ができなかったり、
そんな人間なら誰の結婚相手の兄弟にでもいそうなのだけれど、
それでもB医師によれば生涯、薬を飲むべき病気らしい。

B医師は2008年に議会で指弾されたが、
それでも同年の精神科ニュースには
社交性が乏しく、極端に柔軟性を欠き、癇癪を起こしやすい、
光や熱や痛みに過敏であるなどの症状があれば、
成人自閉症の可能性があり、しかし幸いなことにSSRIで症状を緩和できる……と
書かれている、とのこと。

5.2剤併用が必要なぜんそく

特に黒人ではぜんそくでの死亡率が3倍に跳ね上がるぜんそくの治療薬が
死者が(特に子どもで)沢山出たために中止になった治験データに基づいて
FDAに認可された。

しかもFDAは最後の手段として認可したにもかかわらず、
製薬会社は吸引ステロイドとセットで売りまくろうとしている。

6.薬が効かないウツ状態

抗うつ薬を飲んでも効果がない患者向けに
追加薬が認可されている。

しかし、それは「薬が効かない病気」なのではなく、
「効かない薬である」または「診断が間違っている」という方が正しいのでは?
と、この記事は疑問を投げかける。

7.男性ホルモン低下症

禿げたり、しわができたり、性欲や視力が低下したり、というのは
老化ではなく、ホルモン低下症。


8.ウツ病スペクトラム障害

ウツ病と双極性障害の啓発と同じように
「繊維筋痛症はほんものの病気」啓発が盛んに行われているが
全ての症状に当てはまらない人を治療の対象にすべく
製薬会社は「ウツ病スペクトラム障害」という用語を編み出してきたらしい。

さらにJAMA1月号には、「てんかんスペクトラム障害」なるものも。

        ―――――――

このエントリーを書くための日本語検索で、
たまたま引っかかってきた市場分析レポートが以下。


米国の骨粗鬆症治療市場:新しい治療薬が市場成長を刺激
Global Information, Inc. 世界の市場調査資料 総合サイト、2005年1月発刊



これらは、いずれも高価な売り物で、
この分野のマーケットのポテンシャルが如何に重視されてきたかが感じられます。

骨減少症は"作られた"病気?でも同じ問題を取り上げましたが、

例えば、最初のレポートのタイトルの
不十分な認識と患者特定不足による市場成長の阻害」を易しい日本語に翻訳すると、

骨粗鬆症は恐ろしい病気ですよという情報を周知徹底させて
骨粗鬆症や予備軍の患者をどんどん見つけないと市場が伸びない」ということでは?


それにしても、この記事の内容は、当ブログが追いかけてきた情報と、
それによって描いてきた「大きな絵」(世界で進行していること)に、ぴたりと符合します。


日本でも、最近、あちこちでワクチン、ワクチンと騒がしくなってきた。

去年、朝日のワクチン記事が胡散臭いと思ったら、
今年に入って立て続けに「日本の子どもを守るためにワクチンを」の記事を打っているし
「健康ギャップ」なくても「ワクチン・ギャップ」埋めないと「世界に恥じ」る……と説くワクチン論文
先日読んで、それは保健施策ではなく経済施策なんですね……と了解したばかり。

そういえば、この前、日本のどこかの自治体が
HPVワクチンに公費助成し学校で集団接種すると決めていたけど、
なんだか、たいそう不思議なことで、

感染力が強くて学級閉鎖にもなろうかという季節性インフルエンザも、
豚インフルエンザですら集団接種になっていないのに、

緊急性も万能性も高くないHPVのワクチンだけを、
どうして、それほど熱心に打ちたいのだろう……?

ゲイツ財団と大の仲良しでワクチン推進論者のDiekema医師ですら
「学校へ行ったらHPVに感染するというわけじゃないのだから」といって
州ごとに義務付けるワクチンの対象としては
HPVワクチンの優先順位は低いと考えているというのに。

あ、まぁ、あの発言は2008年段階の話で、
「これからはワクチンが儲かりまっせぇ」の前のことだから
今ではDiekema医師の言うことも変わっているとは思いますが。
2010.04.17 / Top↑
グレイズ・アナトミーにWA州の尊厳死法を利用して医師による幇助を受けて自殺する末期の肺がん患者のエピソードがあった件で、LA Timesがリアリティチェックを行っている。おおむね、法律通りのエピソードだった模様。2009年に同法を利用して自殺した36人のうち、6人のケースでは番組が語っていた45分よりも長く、バルビツレート服用後、息を引き取るまでに90分以上かかったとのこと。
http://articles.latimes.com/2010/apr/12/health/la-he-unreal-20100412

今度は子どもの肺炎ウイルスRSVのワクチンだそうな。
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/scotland/edinburgh_and_east/8623153.stm

医療職には肥満した患者に対する差別意識がある。医学教育で配慮する必要がある。:それをいうなら、障害児・者に対する差別意識の方が、もっと命にかかわるほど深刻なんだけど。
http://news.bbc.co.uk/2/hi/health/8622751.stm

ゲイのパートナーに医療における代理決定が認められる方向でObama大統領が指示。
http://www.nytimes.com/2010/04/16/us/politics/16webhosp.html?th&emc=th

今まで米国の有害ITゴミは中国やインドに持って行って、安全性など無視して廃棄されていたのだけれど、そういう行いを摘発してきたSeattleのNPOが初めて安全な廃棄処分に向けてプログラムをスタート。
http://www.usatoday.com/money/industries/environment/2010-04-15-electronic-waste_N.htm?csp=Daily%20Briefing

英国のトップクラスの大学は、まだまだ恵まれない環境にある学生をとっていない、との統計。全学生数の5%以下。
http://www.guardian.co.uk/education/2010/apr/15/elite-universities-underprivileged-intake-struggle
2010.04.16 / Top↑
3月25日の補遺で拾ったニュージーランドのニュースで、
死にたいと望んで栄養と水分を拒否していた女性 Margaret Pageさんは
その後、3月30日に亡くなっていました。

(3月25日のニュースではPageさんは20歳となっていたのですが、
こちらの記事では20年前に脳出血を起こしたとのことなので、いずれかの情報が誤りと思われます)

そのPageさんのケースが安楽死ロビーの Lesley Martinによって利用されていることに
疑問を呈するカトリック系のサイトの記事。

Pageさんのケースで起こったメディアの論争は
犯罪法が強制的な自殺防止を認めている反面、
権利章典法(? the Bill of Rights Act)は医療を拒否する権利を認めている点を巡るもの。

カトリックの教えでは、
栄養と水分の供給は治療ではなく、基本的なケアとみなされるため、
患者自身が拒んだとしても、供給し続けるのが医療の義務となる。

そこで、この記事でMcCabe神父が指摘するのは、
Pageさんは20年前に起こした脳出血の後遺症で重度の障害があったものの
栄養と水分を拒否すると決めた際にターミナルな状態ではなかった事実。

続いて、この度の安楽死議論でコメントしている多くの人が、
その事実を見過ごしていることも指摘する。

Pageさんの生前、Pageさんの家族から連絡を受けたとMartinさんは言うが、
これまでは、ターミナルな状態の人が尊厳のある死を望む場合に
安楽死を合法化しようと運動してきたはずのMartinさんは、
いまでは事実上「死にたければ誰でも」と運動しているではないか、

これこそ安楽死の合法化で「すべり坂」が起こる証拠である。

Martinさんは「高齢者が自殺しやすいようにしましょう」というが、
高齢者チャリティによると、高齢者の自殺の背景には、
診断されず治療されていないウツ病が多く潜んでいるということであり、

合法化されれば、それは高齢者を攻撃するものとなる、
高齢者に対して「あなたたちは人生をもう生き終えて価値がない」というようなものだ、

必要なのは、そういう人たちが自殺しやすくすることではなく、
終末期のニーズにきちんと応えていくこと、
孤立している高齢者に手を差し伸べることだ、と。


これは、7日に米国のカトリック系の病院が主張していた
「ターミナルでなければ栄養と水分停止は自殺幇助」と同じ主張のようですね。

ターミナルな人に限っては栄養と水分の供給を拒否する自己決定を認めるけれども、
そうでない人の場合には基本的なケアとして中止はしない、できない、と。

ちなみに、Lesley Martinさんとは、
1999年に末期がんの母親に致死量のモルヒネを投与して安楽死させ、
有罪判決を受けて服役した後に、その体験を本に書いて
自ら選ぶ安楽死の合法化を提唱している女性。

詳細はこちらのエントリーの後半に。


2010.04.16 / Top↑
09年7月23日の補遺今年2月25日の補遺で拾ってきたNYの自己啓発セミナー講師の殺人事件で、保険金目当てで自殺したいので、強盗を装って殺してほしいと頼まれた見ず知らずの男が、金をもらって刺殺した事件は、本人が死にたいと望んでいたとしても殺人だとの判断。
http://www.longislandpress.com/2010/04/14/judge-upholds-murder-charge-in-l-i-speakers-death/

映画 You Don’t Know Jackのレビュー。
http://www.ew.com/ew/article/0,,20360859,00.html

年間100人がかかる病気を予防するために、2つの卵子のDNAを結合させる技術がまもなく現実のものとなる。遺伝的に3人の親を持つ子どもが生まれてくることに。:また1つ、倫理問題や法的問題の検討が追い付かないまま、「できることはすべて正しい」の科学とテクノロジーの論理で規制事実が作られていくジャンルが増える。
http://www.timesonline.co.uk/tol/news/science/genetics/article7097547.ece

今日のNHK「クローズアップ現代」でやっていた「ティーパーティ」の人たちは、一般国民よりも裕福で高学歴、共和党支持者、白人、既婚、男性が多い、とNYTの調査。
http://www.nytimes.com/2010/04/15/us/politics/15poll.html?th&emc=th
2010.04.15 / Top↑
3月9日の補遺で拾いましたが、Connecticut州で自殺幇助合法化を求める訴訟が起きています。

2人の医師とC&Cとが起こしたもので、
ターミナルで死を望む患者に致死薬を投与する医師の行為を罪に問わないように求めているもの。

その訴訟で、
同州の障害者の保護・アドボカシー局
Office of Protection and Advocacy for Persons with Disabilities(OPA)が
障害者アドボケイト、 Catherine D. Ludlum、Claude Holcombの2氏と共に
最高裁に動議を提出し、この訴訟に障害者の視点が含まれるよう介入を求めています。

具体的には

1)障害によって失われたものに適応する過程にある人や、
施設に入らずに自立生活を送るために必要な支援を見つけることが出来ずに失望してしまった人が、
くじけそうになったり希望を失いそうになるのは人間なら当たり前の気持ちなのだが、

人として当たり前の、その気持ちが、時として
打ち勝ちがたいほどに強くなることがあるのだということ。

2)医師を含む、医療職側に、
QOLについて、また障害と「不治の病」の区別について
予見や無意識の偏見があること。

動議は、
死に瀕してもいない患者からの治療の差し控えや中止が医師らによって決められてしまったために
障害者の生命を保護するためにOPAが行動を起こさざるを得なかった事例をいくつか挙げている。

またLudlum、Holcomb両氏も、これまでの医療職とのやり取りの中で、
本人確認や病歴などにおいて基本的な事柄で誤解が起きたり「苦しんでいる」と決めつけられたり、
誤ったQOLについての思い込みに基づく医療決定が行われた体験を述べている。

OPAの局長James D. McGaughey氏は

医師による自殺幇助(PAS)が合法化されれば、
障害者には致命的な影響が出ることになるのは間違いない。

この訴訟は公序良俗に大きな影響を持っている。

ヨーロッパその他でのこれまでの事例を見ても、
医師による自殺幇助が合法化されると
真に思いやりのある終末期ケアの選択肢は減っていき
法の適用範囲を規制する試みも濫用を防ぐには至っていない。

また、医療コストの削減がしきりに強調されている現在、
“お荷物”とみなされる人にPASが期待されるだろうことも
懸念しなければならない。

Disability Rights Advocates Move to Intervene in Assisted Suicide Case
Office of Protection and Advocacy for Persons with Disabilities(OPA), April 8, 2010


これまでの英米での自殺幇助合法化議論において
行政サイドの障害者権利擁護の立場から、ここまで大きな動きがあったのは初めてではないでしょうか。


以下のNot Dead Yetのエントリーに
動議の具体的な文章が紹介されています。
http://notdeadyetnewscommentary.blogspot.com/2010/04/connecticut-affidavit-of-james-d.html

また、お馴染みBac CrippleことWilliam Peaceさんも、
この問題を取り上げています。
http://badcripple.blogspot.com/2010/04/assisted-suicide-some-get-inherent.html


これらの論点は、すべて当ブログで何度も繰り返し考えてきた点でもあります。

1)については、

思いがけない障害や病気に見舞われた人や家族は、
誰でも当初は天と地がひっくり返るほどの衝撃を受け、
その衝撃の中で絶望したり死を考えたりするものであるとしても、
多くの人は時を経て、その絶望から這い上がり、
新しい生活パターンと新しい価値観や
これまでとは違った生きる喜びや希望を
見いだしていく強さをも、また持っている。

また、その後も、おそらく私たち障害児の親がそうであるのと同じように
一度乗り越えたら、それで受容が完全に行われて終わりというものではなく、
本人や周囲の変化によって、受容とは、らせん状に繰り返されていくものであり、

だからこそ、ある時に「死にたい」という人の言葉には、常に
状況がほんのわずかに変わったり、らせんを、ほんの少し登ることさえできれば、
それが「生きていてよかった」に転じていく可能性が伴っているのだということを、
決して忘れてはならない……と思う。

2)については、

「無益な治療」論や“Ashley療法”での議論でもつくづく感じるのは、
医師は「障害について」知識は持っていても「障害を」知ってはいないのだ、ということ。

障害があるというのがどういうことか、
障害と共に暮らすというのがどういうことかについては、何も分かっていない。

だからAshleyを見て、単純に「赤ちゃんと同じで、どうせ何も分からない」と思いこむ。
それは医学的なアセスメントでもエビデンスでもなく、ただの個人的な偏見でしかないにもかかわらず。

「分かっていると証明できない」ことは「分からないと証明された」ことと断じて同じではないのに、
「分かっていると証明できないから分かっていない」と、平気で非科学的な論理を振りかざして
自分たちの偏見を正当化し、「治療の無益」論を「患者の無益」論へと巧妙にすり替えて、
QOLや知能の低い患者には人権など認めなくてもいい、死なせてもいいのだと主張する。

人間を能力と機能の総和としか捉えられない偏狭さに他の分野からの批判が出ても、
謙虚に耳を傾けたり、自らの無知や偏見を謙虚に振り返ってみる姿勢を欠いている。

”Ashley療法”を正当化するDiekema医師やFost医師の傲慢はまさにそういうものだし、
彼らが無益な治療論や、重症障害児の栄養と水分の停止にも積極的である事実にも
その傲慢が通じている。

生命や能力の操作が可能となったことによって
能力があること、能力が高いことに対する価値意識だけが突出してきて、
逆に、能力が低いこと、機能を失っていることは「悲惨」や「生きるに値しない生」と無価値とされて
それが尊厳や人権の否定、命の切り捨てに繋がっていこうとしている。

Ashley論争の当時は、それでもまだコストまでが言われることはなかったけれど、
その後3年間で社会の空気はさらに冷え込み、

”科学とテクノの簡単解決文化”と”医療と介護のコスト削減”とは
ほとんど直線的に繋がってしまった観がある。

この繋がりからは今後も様々に形を変えた”Ashley療法”すなわち
本来は社会で解決すべき問題に対するtechnical fix(科学とテクノによる簡単解決)が
いろいろと出現してくるのだろうし、

そこに「死の自己決定権」が寄り添ってくると、
「社会的または医療的に無益な患者が自己決定として選択させられる死」というものが立ち現れてくる。

つまり、McGaughey氏の言う「"お荷物”とみなされる人に期待されるPAS」――。



【コネチカット州自殺幇助議論関連エントリー】
Connecticut州議会、自殺幇助法案を棚上げ(2009/3/18)
2010年3月9日の補遺(医師2人とC&Cによる訴訟の公判開始)
2010.04.15 / Top↑
選挙に伴う国民との公開ディベイトで
「死の自己決定権」アドボケイトの広告塔 Debbie PurdyさんがBrown首相に質問。

質問の要旨は、
オレゴンやワシントン州、オランダ、スイスで問題なく行われていることが
英国民には行うことができないとでもいうのか、
自国民を信頼しないというのか、というもの。

Brown首相はPurdyさんの勇気と行動力をたたえ、
病気や障害を持った人や家族の苦境に理解を示した後に
自分自身の家族との経験から法は変えるべきではないと確信している、

今回のガイドラインによって、
動機が良いものである限り行為はその動機に照らして判断されることになった、

我々の義務はできる限り苦痛を和らげることである、と。



Purdyさんの、このところの戦略は、だいたいこういう路線で

合法化に反対する人は英国民に対する信頼を欠いている、
オレゴンやワシントンで問題が起きていないのに、
英国人だけはうまく法律を使えないとでもいうのか、と言い続けている。

でも、
Oregon州の自殺幇助の96%にC&Cが関わっていること
C&Cがホスピスに入り込んで患者を誘導している可能性まで指摘されていることは
問題ではないとでもいうのか。
2010.04.15 / Top↑
Kevorkian医師の半生を描いた映画 You Don’t Know Jackは24日に公開らしい。主演のPacinoはリサーチはしたけど本人には敢えて会わなかったとのこと。
http://www.orilliapacket.com/ArticleDisplay.aspx?e=2531347

CNNのAnderson CooperがJack Kevorkian医師に出獄後初のインタビューをしたとか。:映画のプロモ。
http://www.hollywoodnews.com/2010/04/13/anderson-cooper-giving-1st-post-prison-interview-to-dr-jack-kevorkian/

Nebraska州で妊娠20週以降の中絶を禁じる法律が成立。それ以降の胎児は苦痛を感じる能力を有するため、という理由は米国初で、法律的にも科学的にも論議を呼びそうだ、と。
http://www.nytimes.com/2010/04/14/us/14abortion.html?th&emc=th

2歳で双極性障害を診断されて、強い薬を複数処方され、その薬を親が子どもを大人しくさせるための簡単解決に使ったオーバードースで亡くなったRebecca Rileyちゃん事件の日本語続報。Kebichan55さんのブログで。記事タイトルは「日本のBiederman博士?」。
http://blogs.yahoo.co.jp/kebichan55/50500046.html

遺伝性の聾の遺伝子が見つかった。
http://news.bbc.co.uk/2/hi/health/8610136.stm

Baby P事件の後、英国ではソーシャルワーカーの怠慢が批判され、逆に保身のために子どもを親から引き離して施設に入れることにばかり熱心になっている、と新たに家裁の責任者となった判事が批判。
http://business.timesonline.co.uk/tol/business/law/article7095791.ece

英国労働党のマニフェスト。増税はせず改革を進める、と。
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/politics/election_2010/8614661.stm

ヴァチカンの児童虐待スキャンダル。枢機卿が虐待の原因は僧侶の禁欲生活ではなく同性愛だと語って、非難が巻き起こっている。
http://www.guardian.co.uk/world/2010/apr/12/vatican-guidance-abuse-police
http://link.timesonline.co.uk/r/0GE68UO/65D3/EHVVM/75RA/C43TS/OS/h
http://www.guardian.co.uk/world/2010/apr/13/vatican-homosexuality-paedophilia-claim-condemned

空港の身体スキャナーに英国人の8割は賛成
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/8617144.stm

Googleの子どもの健康サイトで、子どもの症状を入力して出てくるアドバイスは適切ではない、と科学者。
http://news.bbc.co.uk/2/hi/health/8611045.stm
2010.04.14 / Top↑
2008年9月にDignitasで自殺した英国の裕福な未亡人
Kathleen Dobsonさん(74)の死を巡って、

Dignitasには親族一同の同意文書が提出されているが
自分は母親の意図については全く知らなかったし、同意もしていない、
文書は母親の死後になって初めて送られてきたものだ、

母親はターミナルな病気ではなく、リューマチでウツ状態だっただけなのだから
知っていたら止めていた、と3男の Robert Carlton氏が疑問を呈し、警察が捜査を開始。

氏は
母親は介護を賄うだけの資金を十分持っていたし、
年齢相応の痛みがあっただけでQOLもそれほど低くはなかった、
08年6月にバンガローを弟に残すと遺書を書き変えたのもおかしい、
死の直前に母親と話した時にも遺書の話もスイスへの旅行の話も出なかった、と
暗に、母親はみずからの意思とは別に自殺に導かれたとほのめかしている模様。

またDobsonさんの10年来の友人も、
Dobsonさん自身がスイスへの旅行については何も知らなかったと
Telegraphのインタビューに答え、同様の疑念がある様子。



こういう事件は、不可避のような気がする。
警察の捜査の行方に注目しておきたい。


2010.04.14 / Top↑
NHSの官僚は患者を放っておいて自分たちのケアばかりだ、と。
http://www.telegraph.co.uk/health/7569995/NHS-bureaucrats-care-for-themselves-not-the-patients.html

テネシー州の女性が養子にしたロシア人の7歳の男児が、一人で飛行機に乗せられてロシアに送り返された。男児に情緒上の問題があり、家族の安全が脅かされるので、もう一切のかかわりを持ちたくない、とのメモを持って。ロシア政府は、セーフガードが作られるまで米国人によるロシア人の養子縁組を中止する、と。:2年くらい前に、確かオーストラリア(だったと思うけど?)の外交官夫妻がアジアから養子にした子どもを「返却」したいと言いだして、家政婦から「育児も差別的だった」などと暴露されたり、非難ごうごう浴びた事件を連載で書いたことがあった。
http://www.nytimes.com/2010/04/10/world/europe/10russia.html?th&emc=th
2010.04.10 / Top↑
Compassion & Choiceの発表で、
モンタナ州最高裁の去年の判決からこちら、
少なくとも1人が、医師による自殺幇助(PAS)を受けて死亡。

これまでに致死薬を処方された人の人数は公表しない、と。

OregonやWashington州のように
尊厳死法による所定の手続きを定めているわけではなく、
現行法のままで特に違法と認めないという判決だったので、
州当局が実態を把握することが難しい。

しかし一方で、最高裁によって起訴が否定されたわけでもない、とも。



なんで州当局が把握できない実態をC&Cが掴んでいるのか。

また、致死薬を処方された人の人数を
公開するかしないかが、なんでC&Cの勝手な判断になるのか。

C&Cの活動実態とは、一体どういうものなのか。

自殺幇助の情報提供・窓口・仲介・あっせんを一手に引き受けているのでもなければ、
そんな実態をどうして把握できるというのか。



2010.04.10 / Top↑