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7月8日から12日の4日間で、なんとグリーンランドの氷の97%が溶けた! NASAの科学者はモニターでこの画像データを見た時に、あまりのことに衛星の解析ミスだと思ったとか。でも現実だった。衝撃画像の写真あり。
http://www.guardian.co.uk/environment/2012/jul/24/greenland-ice-sheet-thaw-nasa

ビル・ゲイツが、ワシントンで開催されているエイズ国際会議で、ワクチンで予防を、と演説。
http://www.washingtonpost.com/national/health-science/scientists-hunting-for-an-aids-vaccine-may-be-getting-close/2012/07/23/gJQA9TJt4W_story.html
http://www.mmail.com.my/story/gates-urges-more-tools-vaccine-end-aids-23757

それに合わせたかのように、エイズワクチンを研究している科学者らから、ワクチン開発もいよいよ見えてきたぞ、とのアナウンス。
http://www.washingtonpost.com/national/health-science/scientists-hunting-for-an-aids-vaccine-may-be-getting-close/2012/07/23/gJQA9TJt4W_story.html

オバマ大統領がそのエイズ会議に欠席して、活動家らを怒らせたらしい。:世界中どこの国に行っても、もしかしたら今やビル・ゲイツの方が米国大統領よりも手厚く迎えられているのかも。なにしろゲイツ氏がどこの国で要人の誰と会談したというニュースは実に頻繁に流れていて、それを見るだけでゲイツ氏の移動状況が把握できるほど。
http://www.bloomberg.com/news/2012-07-25/obama-skipping-aids-conference-for-campaign-draws-activists-ire.html

肥料があまり要らないGM農産物の開発で、ゲイツ財団から英国の科学者グループに1000万ドル。
http://www.thescottishfarmer.co.uk/news/gates-grants-gm-crop-cash.18194217

上記ニュースを受け、「GMO優生学:ビル・ゲイツがアフリカの遺伝子コントロールを狙っている」というカナダの新聞の記事。肥料が要らないから途上国の農業生産量が上がる、と言うが、実際には米国でもGM農業で収穫が増えていないし、最終的にはアフリカでもモンサントの進出で多くの農夫が食い詰めているインドと同じことが起こる、との警告。
http://www.agoracosmopolitan.com/news/nature/2012/07/24/4262.html

【関連エントリー】
ゲイツ財団がインドで目論んでいるのはワクチン普及だけでなくGM農業改革も(2011/4/16)
「アグリビジネス」の後ろにはワクチン推進と同じ構図が見える(2011/10/5)
“大型ハイテクGM強欲ひとでなし農業”を巡る、ゲイツ財団、モンサント、米国政府、AGRAの繋がり(2011/10/27)


日本語。遺伝子組み換え蚊でデング熱に対抗、ブラジルに「蚊」農場。:この研究、たしかゲイツ財団も資金を出していたと思う。
http://www.cnn.co.jp/world/30007332.html?tag=rcol;editorSelect

世界中のスーパー・リッチがグローバルなレベルのあの手この手で税金逃れ。その総額は21兆ドルから、もしかしたら32兆ドルと、米国経済すら超える額が世界中で隠し財産となっている。それらに課税がきちんと行われたとすると、アフリカの一部の経済が自立することも可能だろうし、ヨーロッパの経済危機だって終わらせられるかも。これだから富はいくらあっても下々に流れてはこないわけよ、と。:これ、このまえ朝日新聞が特集を組んでいた話題。経済不況はとっくに各国政府の失策なんていうレベルの話じゃない、というのはずっと前から思ってた。
http://www.guardian.co.uk/business/2012/jul/21/offshore-wealth-global-economy-tax-havens?CMP=EMCNEWEML1355

【関連エントリー】
事業仕分けの科学研究予算問題から考えること(2009/12/12)
「必要を創り出すプロセスがショーバイのキモ」時代と「次世代ワクチン・カンファ」(2010/5/29)
“プロザック時代”の終焉からグローバル慈善ネオリベ資本主義を考える(2011/6/15)


英国で、フード・バンクが増えている。例えば1年半前まで1つもなかったCoventryには現在11も。キリスト教系のチャリティは、食べ物を提供している人の数がこの1年で倍になった、と。要因としては失業者の増加、時短、福祉給付の遅れや削減、食糧や燃料価格の高騰、など。キャメロン首相はこうしたバンクの活躍を歓迎するが、政府がチャリティ頼りでいいのか、との批判も。
http://www.guardian.co.uk/society/2012/jul/18/food-banks-on-hand-outs?CMP=EMCNEWEML1355

最近、Pediatrics誌に、9歳から11歳の子どもにもコレステロール値の検査をするよう勧めるガイドラインが発表されたらしいのだけれど、その論文は利益対害とコストの比較考量をしていないばかりか、ちゃんとしたエビデンスすら示していないまま専門家の意見だけを根拠としていて、著者らのディスクロージャーによっては利益の相克が疑われる、との指摘。:米国小児科学会は、これまでにも子どものうつ病スクリーニングを提唱してみたり、ビタミンDサプリを飲ませろと推奨してみたり……。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/248210.php

英国医学会(? AoMRC)の新会長、NHSの病院は大きな外科手術や集中治療などの機能を中心に淘汰すべき、と。:08年の医療制度改革でERや産科が集約されて、その後さらに手術の機能もGPに移されたりして、そのことへの見直しの必要なども言われているはずなのに。
http://www.guardian.co.uk/society/2012/jul/24/nhs-hospitals-need-to-close?CMP=EMCNEWEML1355

脳卒中の後遺症がある人をケアする介護者の、健康問題と特有のニーズ。
http://www.medicalnewstoday.com/releases/248126.php

【関連エントリー】
大切な人が脳卒中を起こしたら介護者として心得ておきたい15の知恵(2009/6/22)


ジョージア州で死刑執行1時間半前に一時停止が認められたWarren Hill(52)。今回の停止措置は、使用する致死薬が3種類からペントバルビツール単剤に変わった変更を問題としたものだけれど、合衆国最高裁は知的障害者の死刑を感じているため、今後Hillの知的障害の証明を巡って論争にも。
http://www.guardian.co.uk/world/2012/jul/23/warren-hill-execution-stayed-georgia?CMP=EMCNEWEML1355

日本語。ロシア・ウラル山中に胎児の遺体248体 当局が調査へ
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120725-00000005-cnn-int
2012.07.25 / Top↑
何度か補遺で拾ってきたように、先月、
英国のケアサービス大臣が介護者にレスパイトへのアクセス改善を約束しましたが、

それを受けて
Chigwellでレスパイト・サービスを提供している事業者のチャリティVitaliseが
障害者、病気の人、高齢者の家族介護者に調査を行ったところ、

10人のうち7人が
ほんの数日でも介護から離れられるレスパイトは大切または非常に大切、と回答。

その一方で、
57%の介護者はレスパイト・ケアを使わなければならないことに罪悪感を覚える、といい、

それはレスパイト・ケアの質が良くないためで、
そのためにレスパイトが利用しにくくなっている、と。

Vitaliseのトップは

「Burstow大臣のアクセス改善の約束は歓迎するが、
我々の研究では、いま利用できるレスパイト・ケアは家族介護者に信頼されていない。

実際、悲しいことだが介護者の不安は現実でもあって、
単に障害者や高齢者を預かって置いておくだけといったサービスも存在するので、
そのくらいなら自分の健康を犠牲にしてでも家でがんばって介護を続けるがいいと
介護者が考えるのも無理はない。

レスパイト・ケアの質という根本的な問題に対処しなければ
問題は悪化するだけ」。

Guilt prevents carer respite breaks
Bixton Advertiser, July 23, 2012
2012.07.25 / Top↑
中絶反対チャリティの調査によると、

英国で2009年に
IVF技術で妊娠した胎児が人口中絶されたケースが127件あり、

そのうち31件が、ダウン症を理由にしたものだった。

次に多かったのは胎児の異常を理由とするもので、19件。

エドワーズ症候群(18トリソミー)を理由とするものが15件。

理由を挙げることは必須とはなっていないので
不明が22件。

05年から09年の5年間では
IVFで妊娠後にダウン症の可能性があることを理由に123人の胎児が中絶された。
平均すると2週間に1人の割合。

多くの場合、妊娠には何年かかかり、
クリニックに通う費用として1000ポンド単位のお金を使っている。

このチャリティでは
「大人の“ほしい”をここまで重要視する社会の価値意識というものを
我々は疑ってみなければいけない。

生殖医療を通じて子どもを産もうと必死になって、
その挙句にその子がパーフェクトじゃないから中絶するというのは
自分勝手で、ひどい」

Dozens of IVF babies are being aborted because they have Down’s syndrome
Daily Mail, July 15, 2012
2012.07.25 / Top↑
ガーディアン紙の調査によると、
去年の米国の途上国食糧支援プログラム(10億ドル)の3分の2は
米国に本拠を置く多国籍企業3社から買われていた。

2010―2011年度では
契約のほぼ半分がADM社で、支払われた金額は3億ドル。
約16%がCargil 社で、支払われた金額は9600万ドル。
第3位がBunge社で、支払われた金額は7500万ドル。

これら3社から米国政府が買った食料は120万トン、全体の70%に上る。

これまでにもずっと、
米国の食糧支援システムは飢餓に苦しむ国々を助けるよりも
自国の企業を潤すことになっている、との批判があった。

これは
それ以外に安い選択肢があっても米国の企業が買い、加工し、運搬することという
1950年代に作られた海外支援の規制が今だに変更されていないため。

そのため投入された国民の税金で実際に食糧購入に使われるのは4割ほど。
それ以外は、余分にかさむ経費が占めている。

EUやカナダなどOECD諸国はすでにこうした縛りを解いており、

米国でのUSAidのトップ、Raj Shah氏は
「もう巨大企業あてに巨額の小切手を書いて、それを開発だと呼びたくない」といい、
USAidが購入する物品とサービスは途上国での調達に切り替えたが
食糧支援は支援予算よりもむしろ農業に分類されるため、
これらの変更が及んでいない。

また、ガーディアンの今回の調査によれば、
米国内の余剰農産物を輸出するために食糧支援が利用されており、

最近カンボジアとラオスへの支援に学校給食用のサケ缶が加えられたが
それは業界関係者とアラスカ州の官僚とがワシントンでロビー活動の成果だったり、

グアテマラとギニアビサウへの支援にはアイダホの脱水ポテトが追加されたのも
業界挙げてのロビー活動のたまもの、とのこと。

US food aid programme criticized as ‘corporate welfare’ for grain giants
Guardian, July 18, 2012


この記事を読んで、お……? と目を引かれたのが
USAid(US agency of international development)のトップとして名前が挙がっている
Raj Shah氏。

この人は、たぶん、以下のエントリーの記事で
「インド生まれのアメリカ人で、元ゲイツ財団の職員」と説明されている人 ↓

ゲイツ財団がインドでもくろんでいるのはワクチン普及だけでなくGM農業改革も(2011/4/16)

ふむ……。

そう考えると、
余剰農産物を支援食糧と称して途上国へ持っていき、その過程で
公費を投入しカネを回して自国の巨大企業をもうけさせる……という
米国の途上国食糧支援のカラクリって、

どこか途上国へのワクチン推進支援のカラクリと似ている……?

例えば、上記の11年の記事から
途上国ワクチン支援への批判の個所を抜いてみると、

ゲイツ財団が作らせ支援しているthe Advance Market Commitment(AMC)なる組織が買い上げ、慈善と称して様々な国に届けているワクチンは、グラクソとかファイザーなどビッグ・ファーマの製品で、しかも欧米市場で売れまくって既にコストが回収できたワクチンなのだという。
慈善の名目で、インドなどの政府は自己負担分を体よく吐きださせられているだけだ、と。

本当にインドのために慈善でやるのなら、どうしてインド国内でワクチンが製造できるようにさせないのか、と。
2012.07.25 / Top↑
補遺で継続的に追い掛けている、Lancetの「オランダで安楽死は増えていない」論文について、データを詳細に検討してみれば、オランダの死者の14%に安楽死と自殺幇助が関係している可能性。2.8%というデータのマヤカシが、あちこちで指摘され始めている。
http://www.lifenews.com/2012/07/19/14-of-all-dutch-deaths-involve-euthanasia-assisted-suicide/

インドのChhattisgarh州で、病院の保険金狙いで2000人以上の女性が無用な子宮摘出を行われていたとして、調査へ。
http://www.bbc.co.uk/news/world-asia-india-18873716

【関連エントリー】
インドの貧困層への不妊プログラム、英国政府の資金で「温暖化防止のため」(2012/6/12)


イスラエルの貧困層から米国の富裕層へ、腎臓を闇売買(米)(2011/10/29)の続報で、主犯のイスラエル人Rosenbaum医師に2年半の実刑。出所後は強制送還。
http://www.bioedge.org/index.php/bioethics/bioethics_article/10166#comments

貧血の治療薬 Epogen、Procrit、Aranespの3つ(製薬会社はAmgenとJ&J)は年間80億ドルを稼ぎ出す米国の薬のベストセラー。メディケアの公費が毎年この3薬だけで30億ドルつぎ込まれている。しかし、「人生の満足と幸福」まで含めた利益の方がエビデンスがないまま過大に言われてきた一方で、ガンや脳卒中など命にかかわる副作用が見過ごされてきた。
http://www.washingtonpost.com/business/economy/anemia-drug-made-billions-but-at-what-cost/2012/07/19/gJQAX5yqwW_story.html?wpisrc=nl_cuzheads

カリフォルニア州のレズビアンの女性が、ヘテロならセックスさせすれば手に入るものなのだから無料の精子を使って生殖補助技術を利用できる権利があると主張し、規制しているFDAを相手取って提訴。
http://www.reuters.com/article/2012/07/11/tagblogsfindlawcom2012-lawandlife-idUS251215529820120711

乳児の先天性障害と父親の職業に関連性。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/247994.php

日本。障害児を抱える母子家庭に潜む「餓死の危機」、周囲に理解されず
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20120720-00000002-sasahi-soci

日本。「支援必要」は4422人 児童虐待などで横浜市登録
http://www.tokyo-np.co.jp/article/kanagawa/20120720/CK2012072002000125.html
2012.07.25 / Top↑
米国で高価な生殖補助技術を利用して子どもを産みたいと望む人を対象に、
生殖補助技術に詳しい社員を用意して資金を貸し付ける会社が増えている、という。

なにしろIVFの相場は1サイクルで12000ドル以上。
しかも、念願の妊娠までに何サイクルが必要となるか
やってみなければわからない。

そんな資金の問題に不安を抱えつつクリニックを訪れる人たちに
なんとクリニックの医師が、いい会社がありますよ、と紹介するんだそうな。

しかも、この記事に登場する夫婦に生殖補助ファイナンス会社Capex MDを紹介した
Maryland Shady Grove Fertility ClinicのRobert Stillman医師は
そのCapex MDの株主(所有率は2%以下)だというから驚く。

Stillman医師自身は利益の相克はない、
夫婦にとっても医師にとってもwin-winの関係だと断言するけれど、

金利は会社によってマチマチで
会社によっては医師にキックバックを払っているところもあり、

子どもが欲しい夫婦の感情的な弱みにつけ込むハイエナ行為だという声も。

生命倫理学者のArt Caplanは
目の前にやりたいことを実現できるようお金を貸してあげますという人が現れたら
その実現を切望するあまり、成功率と失敗率や、利率や、治療のリスクについて
ちゃんと話を聞かないで乗ってしまう人がいるのではないか、と懸念。

そこは現実的なお金の計算をして高利に手を出さないように、

また子どもが生まれたとしたら、その先にもお金はかかるのだから
自分たちの資金状況には現実的な判断を、と慎重を呼び掛けている。

Growing IVF loan business helps families finance their fertility
Today, July 12, 2012


この報道を受けて、Slateの批判記事がこちら ↓
http://www.slate.com/blogs/xx_factor/2012/07/13/ivf_loans_predatory_lending_hits_the_fertility_market.html



そういえば、前に、
インドやギリシャの貧しい女性を代理母として利用することについても、
自分たちは子どもを持てる、代理母はお金を稼げるからwin-winの関係だと
依頼者の側が言っているのを読んだことがあるのを思い出した ↓

グローバル化が進む“代理母ツーリズム”(2011/1/29)

2012.07.25 / Top↑
テキサス州と言えば、
米国で最もラディカルな“無益な治療”法がある州で、

その他にも施設職員による障害者に対する虐待事件が多発していたり、
親には体罰の権限があると考えられていたり、最近のニュースでは
学校にスクール・ポリスが常駐して些細なことで子どもを逮捕していたり、

文末にリンクした関連エントリーのタイトルをざっと見てもらうだけでも
テキサス州の独特の文化風土が感じられる気がしますが、

そのTX州、州民の健康関連データが全米で最低なんだとか。

なにしろ州民の4分の1に当たる630万人が無保険(100万人以上の子どもを含む)で
これはダントツでトップ。

また出生前のケアのランキングでも、
疾病予防や病死、ガン治療などの要因を含む全体的な健康度のアセスメントでも最低。

それでもRick Perry知事(共和党)は
今回のObama医療制度改革により今後3年間は連邦政府が資金を全額負担し、
その後も9割負担すると言っているメディケイドの対象範囲拡大を
きっぱりと胸を張って断った、とのこと。

実施されれば170万人が対象となったというのに、
ワシントンへの書簡にメディケイド拡大は「州の主権に対する重大な侵害」であり
「テキサスを財政破綻へと脅かす」とまで書いた。

他にも少なくとも5州の知事が同様の選択をしたという。

各州とも経費増大の一方で
共和党の手動する連邦補助のカットが進んでいることから
歳入源を新たに模索する州と、貧困層への支援の打ち切りを打ち出してきた州とに
その対策が分かれることに。

例えば去年、貧困層への福祉給付を減額したり打ち切った州は8州。

Pennsylvania州では先週いきなり障害者と貧困層61000人に対して
月額200ドルの一般支援給付の打ち切りを通告した。

財政難だから、と州の福祉当局は言うが、
それで削減できるのは年間1億5000万ドル。
その一方で知事は今月、3億ドルの企業減税を実施。

オハイオの知事は教育費を大幅にカットする一方で、
財政黒字が2億3500万ドルも出てくれば、緊急時の基金に回す、と公言。

メイン州でも5月に現行のメディケイド対象者のうち21000人の
給付を削減または対象から外すことが決まった。

もっとも
低所得層との保険ギャップを広げることになるので
ワシントンからの資金を断るのは慎重に、と発言する
共和党知事協会の副会長であるヴァージニア州知事のように
共和党知事とはいえ主流は弱者への支援を州の義務と捉えてはいる。

NYTの社説は、
テキサス、フロリダ、サウス・カロライナ、ウィスコンシン、アイオワ、ルイジアナに対して、
ヴァージニアに習って考え直すよう呼びかけている。

The Rush to Abandon the Poor
NYT, July 17, 2012


ふむ。ここでもウィスコンシン州が……。↓
NRDN報告書: WI州の障害者への医療切り捨て実態 2例(2012/7/9)


そういえばNYTの社説は08年にも、
「テキサスの学校教育は障害児切り捨てている」とNYT社説(2008/8/11)と書いたことがありました。



その他、テキサス州関連エントリーはこちら↓

テキサスの“無益なケア”法Emilio Gonzales事件(2007/8/28)
脳死宣告された男性が回復し「気分良好」と(2008/4/3):有名なダンラップ事件はTX州の出来事
TX州、親の虐待で瀕死の乳児に「無益な治療」論適用か?(2009/1/22)
「死んだ息子の子どもが欲しい」母に裁判所が遺体からの精子最終を認める(2009/4/17)
職員が障害のある子どもたちに格闘技やらせて遊んだテキサスの施設(2009/5/18)
テキサス州で知的障害者施設の処遇改善に向け法律が成立(2009/6/13)
米国には体罰を禁止していない州が20もある(2009/8/11)
医療費払えず「無益な治療」(2009/10/20)
1人でTX州の総量をはるかに超える統合失調症治療薬を処方する精神科医が野放し……の不思議(2009/11/30)
生命維持の中止まで免罪する「無益な治療法」はTXのみ(2011/1/21)
TX州の「無益な治療」法改正法案、“死す”(2011/5/25)
テキサス州で14歳の脳腫瘍患者めぐり、あらたな“無益な治療”事件(2011/7/3)
授業中にケンカをすればスクール・ポリスがやってくる。そして逮捕。(2012/1/12)
2012.07.25 / Top↑
18日のエントリーで NDY の Drake らが言及していた
Fins医師の論文を読みました。

タイトルは「重症脳損傷と臓器提供の勧誘:節制の呼びかけ」
今年3月に米国医師会の倫理ジャーナルに掲載されたものです。

Severe Brain Injury and Organ Solicitation: A Call for Temperance
Joseph J. Fins, MD
Virtual Mentor, AMA Journal of Ethics,
March 2012, volume 14, Number 3:221-226


非常に重大な告発と提言だと思います。

本当は全文翻訳したいのですが、
とりあえず概要を以下に。(……と言いつつ、けっこう訳してしまいました)

私は地元の臓器獲得組織(OPO)の理事を数年前に辞任した。
重症脳損傷の患者からの臓器摘出の状況が納得できなかったからだ。

もともと理事になったくらいだから臓器移植そのものは支持しているが、
臓器を必要とする患者の命を救うことだけが善ではない。
意識障害の患者のことを考える善もあるが、
臓器移植界隈の方針によってそうした患者の利益は危うくなっている。

(話の混乱を避けるため、Fins医師はここで昏睡、脳死、植物状態、最少意識状態を
きちんと定義していますが、省略します)

連邦政府の規定は、
ドナー候補者の死が差し迫ってきたらOPOに届けるよう求めているが、
生命維持の差し控えや中止が問題となる患者の場合は、
その決定が死が差し迫った状態に直結するので、
その決断が検討されている段階から臓器刈り取りの可能性ありとしてOPOに連絡がいく。

OPOの理事として私が承服できなかったのは、
こうした重症の脳損傷の患者があたかももう死ぬことが確実に決まっているかのように捉えられ、
身体も脳もまだ生きている内から臓器ドナーと目されてしまうことだった。

大学の医療センターの倫理コンサルタントとしての立場で
OPOの職員たちがICUの中に居座って(hover)いつでも仕事にかかろうと待ち構えているのを目にもしたし、

熱心なOPO職員の中には、
もう私たちのものですからもらっていきますよ、といった表現すらする者もいた。

hoverという表現を敢えて用いたのは
ヘリコプターがホバリングするように付きまとわれた、というのが
Weill Cornell Medical Collegeに検査にやってきた意識障害のある患者40人の
家族や代理人にインタビューを行った結果、多くの家族の印象だったからだ。

よくあるのは、
まだ治療の初期、患者がICUにいるうちから
代理人や家族に接触し、臓器提供を持ちかける、という場面だ。

患者が助かって、程度はさまざまながら回復した後になっても、これらの家族は
OPO職員のふるまいをハゲタカのよう(predatory behavior)だったと言い嫌悪している。

多くの家族は、彼らは臓器を獲得しようと必死のあまり、
病人はもう予後が決まっているかのように言いなした、という。

死は避けられませんよ、
呼吸器は中止すべきです、
臓器は使える人にあげるべきです、と。

でも、助かった人たちの家族は当時を振り返って、
何故あの人たちは断言できたのだろう、といぶかる。
医学的にも、たぶん倫理的にも間違った行為だったはずなのに、
どうしてあんなことができるんだろう、と。

程度はさまざまにせよ回復した人も多数いるのに、
またNicholas Christakisの研究でも診断は間違うことが多いと分かっているのに、
あの人たちは、どうしてあんなふうに「死にます」と断言できたんだろう、と。

脳損傷がこれほど特殊な問題をはらんでいるのは
脳死概念そのものが、臓器移植医療の出現で臓器獲得のニーズが出てきたために作られた
歴史的、社会的背景があるため。

世界初のバーナード移植とビーチャーによるハーバード基準その他が1968年にできたのは
決して偶然ではないし、ビーチャー自身の功利主義的発言からも、既にその段階で
意識喪失状態と意識のある人を救う義務とが繋げられていたことを伺わせる。

しかし、この2者を繋げることには問題がある。

意識喪失そのものは脳損傷では症状として起こっていることなのに、
一般の終末期では意識喪失が死の前触れとして知られているために
脳損傷の昏睡状態でも代理人がDNR指定をしてしまう。

が、脳損傷の患者での昏睡はむしろ
回復が始まる最初の段階に過ぎない可能性がある。

そうした症例で臓器摘出を早まると、
患者が回復して意識があることを表出できるようになる前に摘出が行われてしまう可能性がある。

もちろん昏睡状態にある患者がすべて回復するわけではないが、
昏睡は必ずしも死の前触れとは限らないし、
いまだ実験段階とはいえ脳画像や脳波を通じた研究も続いており、

このような患者の予後に不透明な部分が残る以上、多くのケースでは
治療を差し控えたり中止することを決める前に、待って様子をみて、
患者が回復し意識があることを表明できるチャンスを作るべきでは。

そこで、控え目な提案をしたい。
臓器提供を勧めるに当たって、時を待ってみる、という自制をしてはどうか。

回復にはリズム、タイミングというものがある。

その後どっちに向かうか分からないのに回復のプロセスを途中で止めてしまうのは
ベートーベンの第9で第4楽章があると知らず、コーラスが始まる前に演奏をやめてしまうようなものだ。

アウトカムが不明なら、
臓器提供を勧めるのは一時見合わせモラトリアムということに。

そして臨床医には患者が昏睡状態からどちらに向かうかを見極めるよう勧めたい。

それがわかって初めて、予後が見えてくる。
それで初めて家族も、生命維持について決断するための情報が得られるはずだ。

待つことは家族や代理人にとっては辛く苦しいだろうが、
それだけ意志決定プロセスでの説明や話し合いの機会も増えて、
そのプロセスが患者と家族中心のものとなる。

そういうプロセスを経た上での臓器提供の決断であれば、
誘導されたものでも強要されたものでもないインフォームされた愛他行為として
ドナーの側にとってもレシピエントの側にとっても明明白白となり、
臓器提供にまつわる罪悪感が軽減される。

何よりも、マーケットがドナー側を侵食している昨今、
我々はそうしたスタンダードの確立に向けて努力しなければならない。



ここで指摘されている
「外見的には同じことが起こっているように見えても、
脳損傷の患者の昏睡は、終末期の患者が意識を喪失するのとは別もの。
終末期の患者では死の前触れだが、脳損傷の患者では回復の第一段階の可能性がある」は
非常に重要な指摘と思います。

そして、この論文について生命倫理学者たちは口を開かず黙殺している、と
Not Dead Yetの Comelam と Drake は冒頭でリンクした記事で批判していたのでした。
2012.07.20 / Top↑
今朝の朝日新聞に、
人体組織が闇で売買されている問題が大きく取り上げられていましたが、

2005年段階で既に英語圏では
米国発・世界規模のおぞましいスキャンダルが報じられていたので
「介護保険情報」の連載で書いた記事を紹介した09年7月30日の過去エントリー、
バイオ企業と結託した葬儀屋が遺体から人体組織を取りたい放題を以下に再掲――。

(元エントリーには、足を切断した後で骨盤にパイプを取り付けられた遺体のレントゲン写真を
検察が提示しているUSAToday記事からの写真があります)

             -------


2006年、米国で大きなスキャンダルになった事件。

私が英語ニュースをチェックし始めたのは2006年6月のことでした。
USA Todayのこの記事に気づいたのは、その直後。まだ何も知らなかったので、
この奇妙なレントゲン写真は、一生、鮮明に記憶に残るほどに衝撃的なものでした。

ニューヨークの検察局が、ある事件の記者会見で公開している、
この珍妙なレントゲン写真、一体なんだと思いますか?

バイオ企業と結託した葬儀屋がホールの裏でこっそり脚を切り取り、
その代用でパイプにズボンをはかせて棺に入れていた遺体のレントゲン写真――。

一味にこっそり臓器や組織を抜き取られた遺体が何百もあったというのです。

私は、この異様な写真に目を奪われて、この事件を調べることによって初めて、
世界って実はこんなにも怖い場所になっていたのか……と
ものすごい衝撃とともに発見したような気がします。

このブログを始めたのは、その半年後のAshley事件があってからなので
この事件のことは、うっかりアップしていませんでしたが、
こちらの事件で思い出していたところにたんたんさんのコメントのおかげで
そうだ、この事件もアップしなきゃ、と、その重大性を改めて考えたので、

「介護保険情報」誌2008年6月号に、
まだドキドキしながら書かせてもらった連載第2回目の一部を以下に。

葬儀場で遺体から
人体組織を採りたい放題

最近は自宅での葬儀など滅多になくて、荘厳なセレモニー・ホールを備えた葬儀場で執り行われることが多くなった。あの葬儀場の奥に実は解剖室があって、そこで遺体が密かに切り刻まれていて………などと真顔でいったら、「まさか」と一笑に付されることだろう。しかし、まるで出来の悪いB級ホラーのようなこの話。まぎれもなく現実に起こった事件なのだ。

一連の報道によると、主な舞台はニューヨーク。主犯は、かつてコカインの使用で医師免許を返上した経歴を持つ元口腔外科医である。当時のコネを生かして、その後バイオ企業を設立した元口腔外科医は、葬儀屋と共謀のうえ、葬儀場奥の「解剖室」で親族に無断で遺体から組織を採取していた。

去年の秋に事件が発覚するまで犯行は約5年間にわたり、被害にあった遺体は何百にも及ぶという。採ったのは皮膚、骨、腱、心臓の弁などなど………。心臓死前後に採らなければ使い物にならない臓器と違って、こうした人体組織は死後48時間以内の採取でよいらしい。一体分の組織から7000ドルもの利益を得ていたという報道もある。

事件の発覚で、埋葬された遺体を掘り起こしてみたら、下半身が跡形もなく採り去られたものまで出てきた。棺に入れてもバレないように、脚の代わりの配管パイプがネジで骨盤に取り付けられていたという。検察当局は主犯を含む4人の起訴を発表する記者会見で、この遺体のレントゲン写真を公開している(USATODAY 6月12日)。なんとも奇妙かつ不気味な写真である。

そして問題を深刻にしているのが、元口腔外科医らは親族の同意書を偽造しただけでなく、組織の安全性のスクリーニングを行わなかったことだ。年齢と死因を都合よく偽った書類をつけて、安全が疑わしい人体組織を加工会社に持ち込んだのである。それらの組織から加工された医療製品は、今のところアメリカ国内とカナダに流通したものと見られている。

FDA(食品医薬品局)は事件報道を受けて、汚染の可能性のある医療製品の回収を命じたが、膝や歯のありふれた外科的治療も含め、治療に使用された場合には、梅毒のほか、HIVや肝炎に感染する恐れまである。

カナダでは被害に遭った患者が3月に集団訴訟を起こした(canada.com 3月23日)。また、汚染した医療製品が流入していないとされるオーストラリアでも、疑わしい治療を受けた患者に関係機関が個別に確認をとったり(THE AUSTRALIAN 6月6日)、ニュージーランドでも医師が個人的に購入した商品に不安の声が上がる(ニュージーランドのニュースサイト stuff.com6月23日)など、事件発覚から1年半経って、波紋はなお広がっている。

それにしても、この事件のことを調べていて、あるキーワードで検索をかけたところ、ヒットした中に弁護士事務所のホームページが並んでいたのには、びっくりした。こぞって事件の概要を詳細に語り、「もしもあなたが被害に遭っていたら、訴訟はぜひとも当方で。ご相談、ご連絡はこちらまで」などと呼びかけている。全貌が手軽に分かりやすいので、事件に興味のある方には、むしろこちらの弁護士事務所のサイトをお勧めしたいくらいだ。

そういえば、こういう弁護士のことを英語では ambulance chaser という。「霊柩車の追っかけ」が起こした醜悪事件に、「救急車の追っかけ」が、ヨダレを垂らして群がっていく──。それも、どこやらアメリカン・ホラーではなかろうか。

「介護保険情報」2006年8月号
「世界の介護と医療の情報を読む」 ② 児玉真美
 P.82-83
2012.07.20 / Top↑
昨日以下のエントリーで
HCR掲載のBill Peaceのエッセイを紹介しましたが、

あのBill Peaceが病院で「死の自己決定」を教唆されていた!


このエッセイは公開で意見が募集されて
へースティング・センターのブログを通じてPeace自身もそこに参加するとのこと。

最初の反応として、
Not Dead YetのDiane Coleman とStephen Drakeとが
7月11日付で論考を寄せています。

Comfort Care as Denial of Personhood


大まかな論旨は

生命倫理の界隈の人や昨今の終末期に関する議論を知っている人なら、
Peaceのエッセイを読んで、さほど驚くとも思えないし、
これに類する話が他にもいっぱいあることくらいは想像がつくだろうけれど、

Peaceのエッセイで最も驚くべきは
それが生命倫理学のジャーナルに発表されて、
一般も参加できる議論が行われていることである。

これまで生命倫理学者は
専門家の議論に一般人が加わることはないと言わんばかりに場を閉ざしてきたし、

3年前に四肢マヒの女性Terrie Lincoln(19)があわや安楽死させられそうになったけれど
その後、回復して今では母親となっている事件でも、

へースティング・センターの理事でもある神経科医のJoseph Fins医師が
脳損傷の患者から治療が不当に引き上げられているとか、
臓器提供への圧力までかかっている、と
去年から今年にかけて発言を続けたことについても、

また今年5月のNDRNによる
障害者への一方的な治療の差し控え途中の実態報告と批判についても、
(この報告書についてはエントリーがすでにかなりあります)

生命倫理学は反応しないままできている。

2007年からペンシルベニア州で
重症障害者の肺炎の際の救命治療差し控えを親が求めている訴訟についても
あのArt Caplanですら、おひざ元の出来事だというのにコメントしない。

そうした現状があるだけに、
Peaceのエッセイが生命倫理のジャーナルで議論になること自体が珍しいことなのだ。

Peaceに死の自己決定を教唆した医師は、
もしかしたら去年NY州で施行された緩和ケア情報法のことを知っていたのではないか。

命の危機にひんしている患者には医師は終末期医療の選択肢について説明する義務があると
定めたこの法律が議会を通過したのはPeaceが入院していた2010年のことだった。

しかし、あなたはターミナルだとか、重症の障害を負うことになるかもしれないと聞かされて
不安を抱えたまま危機的な病状で生きようと闘っている病人に、タイミングもなにも配慮せず
こんなふうに無神経に終末期の選択肢の話を持ち出すことが医師の義務だというなら、

そんな法律には障害者コミュニティは反対する。

緩和ケアの選択肢について説明するにも柔軟にタイミングを選び、
患者と家族には多職種でのチームとしてアプローチし、
身体的サポートのみならず心理的なサポートも行うことを重視するよう
この法律は書きかえられるべきである。


Terri Lincolnのケースとは、

3年前に交通事故で意識不明となった19歳の女性について
医師は、重症障害を負うくらいなら人工呼吸器を外すよう親に繰り返し勧めた。

Terriさんが意識を回復してからも、医師らは苦しまずに死なせてあげると説得を試みたが、
Terriさんと家族は抵抗し続けた。

10年たった現在、Terriさんには娘がいて、
電動車いすを使い、毎日の介護サービスを利用して幸せに暮らしている。


ペンシルベニアのケースとは、

グループホームで暮らす男性が
肺炎から一時的に人工呼吸器をつけることになった際、
両親が人工呼吸器の取り外しを求めて提訴。

裁判所はこれを却下し、
男性は肺炎で命を落とすことなくグループホームに戻った。

ところが彼の両親はさらに州の最高裁に上訴し、
もしも次に同じような事態が起こった場合には治療を差し控えてほしいと訴えた。

2010年の判決で、最高裁もこれを却下。


Dr. Finsの去年の発言については
ColemanとDrakeがリンクしているNYTの記事を
当ブログでも以下のエントリーで紹介していました。

睡眠薬による「植物状態」からの「覚醒」続報(2011/12/7)


ICUの患者や家族に対して、
あまりにも剥き出しに臓器提供へのプレッシャーをかけるやり方が納得できないので
自分は臓器獲得組織の理事を辞任せざるをえない、

助かった患者の家族からも、
生命維持を中止して臓器提供しろと圧力があった、との報告を複数受けている、
などのFins医師の発言については

もう一つのリンク先を読んだ上で、
改めてエントリーを立てたいと思います。
2012.07.20 / Top↑
アシュリー事件に関して2007年当初から一貫して「アシュリーは私だ」と言い
重症障害者だけの問題ではない、障害者みんなの問題だと
批判を続けている障害当事者のWilliam Peaceが

辱そうを感染させて長い間寝たきりとなって
自宅で訪問看護や介護を受けていたことは去年、
彼自身のブログで読んで知っていたのですが、

一昨年その治療で入院した際に
ま夜中にやってきた医師から治療を放棄して死ぬよう、教唆を受けていたとは……。

Peaceはその場で「治療はしてほしいし自分は生きたい」と強く答えたものの、
その時の恐怖も、その後の恐怖もあまりに大きくて、これまで誰にも
その経験について語ることができなかったと言います。

今回、Hastings Center Reportに発表したエッセイで
その詳細を明かし、これは自分だけに起こった例外事例ではなく、
障害者はずっと病院を敵意に満ちた危険な場所だと感じてきたし、
障害者を正常からの逸脱としか見なさない医師らは
障害のある患者のいうことには耳を傾けないというのも
障害者がみんな感じてきた不安でもある。

自分に「治療を拒否するなら苦しまずに死なせてあげる」とほのめかした医師を含め、
こうした医療職の障害者への無理解・無神経な扱いは、
医療が障害者の生を価値なきものとみなし、
障害のある生を生きるよりは死の方がマシだとの
価値意識が根深いことの証である、

障害学はこの点で多くの仕事を成してきたのだから、
医療の専門職が本当に頭が良いなら障害者の発言から学ぼうとするはずなのに、と
エッセイを結んでいます。

冒頭、小説のような筆致で生々しく描かれる医師の教唆場面の概要とは

長い入院の挙句、感染した傷の状態が悪化し、そこへMRSAの感染まで重なって、高熱を出し、意識も朦朧として、おう吐し続けていたPeaceは、それでも17歳で半身まひになって以来ずっと医療と付き合ってきた者として、今の状態は悪いにせよ命がどうこうという事態ではないことは分かっていたという。

夜中の2時、これまで見たことのない医師が看護師を伴って入ってきた。

看護師に薬を取りに行かせて2人きりになると、その医師はまず、自分の病状の深刻さを分かっているか、と聞いた。分かっていると答えると、

これから半年、もしかしたら1年以上もあなたは寝たきりになる、もしかしたら傷がこのまま治らない可能性も高い。そうなったら、あなたは二度と車いすには乗れないし、仕事もできない、生涯に渡って全介助の生活になる。医療費もかさんで、あなたは破産しますよ。治癒する前に保険は切れるし、このタイプの傷ができた人はたいていナーシング・ホーム行きになります。

強力な抗生剤を使っているので、臓器がやられる可能性があり、腎臓とか肝臓はいつ機能不全になっても不思議はない。傷が解放性だし、深くて元の感染が酷いから、そこへMRSA感染となると命が危ういし、マヒのある人がこういう事態になると多くは死にます。

そう語った後で、医師は抗生剤の投与はあなたの意志によるものであり、あなたの意志のみによるものです、あなたには薬の投与をやめる権利があります。命を救うための抗生剤をやめる権利もあります。もしも現在の治療の続行を望まないなら、苦痛を取り除いてあげます、と言った。

ここでPeaceは次のように書いている。

Although not explicitly stated, the message was loud and clear. I can help you die peacefully. Clearly death was preferable to nursing home care, unemployment, bankruptcy, and a life-time in bed.

はっきりと言葉にしなくとも、メッセージは明らかだった。穏やかに死なせてあげますよ。だって、ナーシング・ホームに入って、失業し破産して、一生寝たきりになるくらいなら、死んだ方がマシでしょう、と。


Comfort Care as Denial of Personhood
William Peace
The Hastings Center Report 42, no.4 (2012):14-17, DIE 10.1002/hast.38


ちなみに、このエッセイ、タイトルは「人格の否定としての緩和ケア」。

Bill Peaceのエッセイの趣旨は、
現在少しずつエントリーにしているNDRNの報告書の趣旨とも
また1年がかりで読んだアリシア・ウ―レットの「生命倫理と障害」の主張とも同じ。

ちなみに、Bill Peaceが障害者に対する医療の偏見を象徴する事例として挙げているのは
Larry MacAfee事件、David Rivlin事件、Dan Crews事件と Christine Symanski事件。

このうちLarry MacAfee事件は
ウ―レットの「生命倫理と障害」第6章でとりあげられており、
当ブログでも以下のエントリーでとりまとめています ↓
(そこで類似事件としてRivlin事件が触れられています)
Oulette「生命倫理と障害」第6章:Larry MacAfeeのケース(2012/3/31)


またSymanskiさんについては
今年2月17日の補遺でThaddeus Popeの記事を拾っていました↓
http://blogs.yahoo.co.jp/spitzibara/64761787.html



【その他関連エントリー】
医療職の無知が障害者を殺す?(2008/4/23)
「医療における障害への偏見が死につながった」オンブズマンが改善を勧告(2009/3/31)
オンブズマン報告書を読んでみた:知的障害者に対する医療ネグレクト
Markのケース:知的障害者への偏見による医療過失
Martinのケース:知的障害者への偏見による医療過失



              ―――――――――


ちょっと偶然が重なったので、余計に気になることとして、

Peaceに治療拒否を教唆した医師は hospitalist と説明されています。

実は hospitalist については先月、
米国の介護者支援の文脈で知ったばかりでした。

導入は90年代だったようですが、
最近になって急速に普及してきた総合医のことで、
医療が高度に専門分化し多職種の関与で複雑化する中、
入院患者の入院中の医療をコーディネートし、
退院までをトータルにサポートするというのがコンセプトのようなのですが、

私が出会ったのは家族介護者に向かって
医療職との望ましい協働のために、というアドバイスのページで、

最近の病院はとにかく早期退院だから、介護者はそれを十分に念頭において
医療職と適切なコミュニケーションを図ることが重要だと強調する
その内容から受けた印象では上記のコンセプトは建前に過ぎず、
医療資源の効率的な使用と病院の利益のために
特に重症患者の早期退院に向けて尽力する職種、という感じも。

そのページはこちら ↓
What Is a Hospitalist? A Guide for Family Caregivers
Next Step in Care
Family Caregiver & Health Care Professionals Working Together


これについてまた改めて取りまとめたいと思っていますが、
日本でもホスピタリスト導入に向けた動きがあるようです。

Peaceのエッセイから推測するに
早期退院に向けて尽力する、だけではないみたい……?
2012.07.20 / Top↑
7月11日の補遺で拾って以降、ずっと関連情報を補遺に取り上げているオランダの安楽死の実態調査データについて、BioEdgeもLifeNewsと同じような指摘をしている。Lancetのリリースは一部のデータだけを取り上げて「すべり坂は起きていない」という絵を描いて見せているが、論文のデータを詳細に検討すると、致死薬を使う代わりに長期の重鎮静で死を早めているケースが増加していたり、そこでは明示的な患者の意志表示の有無が怪しかったり、公式に報告される安楽死の件数そのものはまだまだ少なかったり、むしろ懸念材料が見えてくる、と。:やっぱり10年のベルギーにおける安楽死、自殺幇助の実態調査(2010/5/19)と同じ。
http://www.bioedge.org/index.php/bioethics/bioethics_article/10158

豪クイーンズランドの病院ICUの医師が、あまりにも残酷な人工呼吸器停止で問題に。意識のある83歳の女性患者のところへきて家族の前でいきなり「選択肢は3つです。1つはあなたの人工呼吸器を外します、あなたはすぐに死にます。次に、部屋と同じ濃度にします。あなたは意識不明になって死にます。3つ目はこのままにしておくとあなたの臓器はダメになって3日か4日で死にます。ご家族とお話しください」といって去っていった。そしてその晩のうちに勝手に人工呼吸器のスイッチを切り、患者が苦しんでいるのに気付いたナースがスイッチを入れたが間に合わず死亡。相次ぐクレームを受け医療委員会が調査したが、ICUで働かないことを条件に医師免許は剥奪せず。医師が医師を調査する委員会では機能していない、との批判も。
http://www.abc.net.au/news/2012-07-10/doctor-accused-of-ended-patients-lives-prematurely/4122522

ピーター・シンガーのJerusalem Postのインタビューについて、BioEdgeが取り上げていて、その最後の部分で、Singerが最近最も関心を寄せているのがグローバルな貧困の問題で、慈善によって解消までは無理にしても大きく軽減できると語っているのが印象的。去年のMaraachli“無益な治療”事件でPeter Singerが「同じゼニ出すなら、途上国の多数を救え」(2011/3/22)と、ワクチンに触れていたことを思い出す。
http://www.bioedge.org/index.php/bioethics/bioethics_article/10155

ゲイツ財団がGM農業研究に巨額のグラントを決めたことに批判が出ている。
http://www.independent.co.uk/environment/green-living/anger-after-bill-gates-gives-6m-to-british-lab-to-develop-gm-crops-7945448.html

【関連エントリー】
“大型ハイテクGM強欲ひとでなし農業”を巡る、ゲイツ財団、モンサント、米国政府、AFRAの繋がり(2011/10/27)
TPP進める経済界のトップ、やっぱりぐるっと廻って“ゲイツつながり”(2011/10/27)
EU政府も欧州委員会もアフリカでの新薬開発実験でゲイツ財団のパートナー(2012/1/25)

英国政府から資金提供を受けて行われる科学研究については2014年までに全ての文献がオンラインで公開されることに。
http://www.guardian.co.uk/science/2012/jul/15/free-access-british-scientific-research?CMP=EMCNEWEML1355

英国で不況の影響から中高年男性の自殺が増えている。
http://www.guardian.co.uk/society/2012/jul/15/suicide-rise-older-men?CMP=EMCNEWEML1355

英国の介護者支援制度の強化を含めた社会ケアシステム改革案関連。
http://www.oxfordtimes.co.uk/news/9817379.MP_welcomes_care_reform/
2012.07.20 / Top↑
生殖補助ツーリズムのメッカとなっているインドで
2010年、15歳の時から3度目の卵子提供の直後、
腹痛を訴えたSushma Pandyさん(17)が、2日後の8月10日に死亡。

Pandyさんが卵子を提供したのは
世界的にも有名なクリニック、the Rotunda Center。

Pandyさんの両親は娘の卵子提供については知らなかったと言い、
ガーディアンと自称してクリニックにつきそった女性はそのまま姿を消しているし、
どうやら男性2人も関わっていたり、クリニックには偽造書類が提出されていたなど
不可解なことが多いにも拘らず、

今に至るまで誰も逮捕起訴されていない。

卵子提供は25000ルピーになるので
Pandyさんは3回で75000ルピーを手にしたはずだが、
そのカネも消えてしまった模様。

インドのIVFクリニックが無規制で野放しになっている問題が
改めて浮き彫りに。

Eggsploitationというドキュメンタリーを作成したプロデューサーは
「Sushma Pandy に起こったことは世界中の女性に毎日起こっていることです。
生殖補助産業は健康リスクの深刻さを知っているのに、単に儲けが減るというだけで
監督にも長期的調査にも規制にも反対している」

17-year-old Indian girl dies after egg donation(2012/7/14)


【関連エントリー】
インドの生殖医療ツーリズム(2008/8/12)
インドの70歳女性、体外受精で初産(2008/12/9)
グローバル化が進む“代理母ツーリズム”(2011/1/29)
2012.07.20 / Top↑
先月のカナダBC州最高裁からPAS禁止に違憲判決で、連邦政府が上訴を決定。
http://www.torontosun.com/2012/07/13/feds-to-appeal-assisted-suicide-ruling
http://www.vancouversun.com/news/Federal+government+will+appeal+assistedsuicide+ruling+justice/6930370/story.html

Ashley事件を一貫して批判し続けてきた障害当事者のBill Peaceが、HCRに去年の彼自身の重症の辱そうを巡る医療体験(これについてはPeaceは自分のブログにリアルタイムで書いていた)から、障害者への緩和ケアへの誘導・教唆の実態についてエッセイを書いている。また、へースティング・センターのブログには、それを受けてNot Dead Yet のDiane ColemanとStephen Drakeとが論考を寄せている。Peace自身が「辱そうがひどいから治療してもQOLは元に戻れない」という理由で緩和ケアへとやんわりと、しかし執拗に誘導を試みられていたというのは、私にとってもショック。まだちゃんと読めていないけど、これは必読。
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/hast.38/abstract
http://www.thehastingscenter.org/Bioethicsforum/Post.aspx?id=5913&blogid=140

12日の補遺で拾った「携帯会社がFBIや警察に利用者情報を渡している」記事の続報。ProPublicaとNYT. 「電話じゃない、追跡装置だよ」と。
http://www.propublica.org/article/thats-no-phone.-thats-my-tracker

メリンダ・ゲイツの「途上国に避妊と家族計画を」キャンペーンについてLATimes記事。メリンダさんと英国のキャメロン首相が、国際会議の期間中に活動家と話している写真あり。そういえば英国政府はワクチンでもゲイツ財団のキャンペーンへの最大の協力者だった(去年の「途上国へのワクチン費用400億ドル国際会議」の舞台もロンドン) ⇒http://blogs.yahoo.co.jp/spitzibara/63465244.html
http://www.latimes.com/news/opinion/opinion-la/la-ol-gates-contraception-vatican-20120713,0,335589.story
2012.07.20 / Top↑
NDRN報告書のP. 21より、
知的障害者への強制不妊を人権擁護団体の介入が阻止したケースの概要を。

2008年の事件。

2008年に母親が産婦人科医を訪れ、
知的障害のある娘カルメン(22)は生理が重く、生理痛もひどく
頻繁に尿路感染を起こす、自分でケアできない不衛生が原因で
腎臓に感染が起きて、既に片方の腎臓は摘出しているし、

腎臓でかかっている娘の主治医は
今度尿路感染を起こしたら命の危険があると言っている、との理由で不妊手術を希望。

産婦人科医はカルメンを診察する前から、
部分的な子宮摘出手術に同意した。

The North Dakota Protection & Advocacy Project(ND P&A)が
カルメンの母親と産婦人科医と話したが、
カルメンの人権について納得してもらうことはできなかった。

そこでND P&Aは代理人裁判所へこの問題を持ち込み、
審理では自らがカルメンの代理人となった。

ND P&Aが証人として呼んだのは
カルメンの介護サービスを提供している事業所の看護師で、

カルメンのケアの記録からは
生理は重くはないし、異常なほどの生理痛もないし、尿路感染もなく、
プロの介護を受けて生理のケアが不衛生になることもないし、
腎臓の専門医から不妊手術を進められている事実もない、
本人は産婦人科医の診察を恐れており、
不妊手術は嫌だと言っている、と証言。

裁判所は手術を禁じた。


これを読んで、私が思い浮かべるのはやはり
2010年3月のオーストラリアのAngela事件。
(詳細は文末にリンク)

一見すると、
生理が異常なほど重くて、貧血やけいれん発作を引き起こしていて
それが命にかかわるほどになっていると読めるのですが、

よくよく読むと、
けいれん発作も貧血も現在は収まっていて
書かれているような「健康問題」も「命の危険」もどこにも存在しない。

でも、それが存在するかのように
マヤカシと隠ぺいのトリックを駆使して書かれている。

何がそう「読める」んであり「書かれている」のか、というと、
他ならぬ判事による判決文だから、びっくりで、

それが何よりもこの事件の最大のミステリー。

だからAngela事件は
上記のカルメンのケースとはまったく次元の違うタチの話ではあるのだけれど、

そこに共通しているのは、

知的障害者や重症児・者の強制不妊手術を受け入れやすい文化が
医療を中心に、社会の中にまずあって、

その文化は強制不妊が人権侵害だとの意識自体が低いために、

「健康問題」とか「本人のため」という正当化を持ちだされると
個別の事実関係に即して丁寧にそれを検討するプロセスをすっ飛ばして
簡単に説得されてしまう人たちがいる、という点。

これはアシュリー事件での
生理が始まってもいない段階から「生理痛を予防する」とか
「万が一レイプされた時の妊娠予防」などという正当化論に
簡単に説得されてしまう人が少なくなかったことにも通じていく。


もう一つ、頭に浮かぶ英国の事件がこちら ↓
英国で知的障害女性に強制不妊手術か、保護裁判所が今日にも判決(2011/2/15)

ちなみに世界医師会からは去年、以下のような見解が出ています ↓
世界医師会が「強制不妊は医療の誤用、医療倫理違反、人権侵害」(2011/9/12)



【Angela事件関連エントリー】
豪で11歳重症児の子宮摘出、裁判所が認める(2010/3/10)
Angela事件(豪):事実関係の整理(2010/3/10)
Angela事件の判決文を読む 1(2010/3/11)
Angela事件の判決文を読む 2(2010/3/11)
重症児の子宮摘出承認でダウン症協会前会長・上院議員が検察に行動を求める(豪)(2010/3/13)

Angela事件の判決文は、Ashley論文(06)と同じ戦略で書かれている 1(2010/3/17)
Angela事件の判決文は、Ashley論文(06)と同じ戦略で書かれている 2(2010/3/17)
2012.07.20 / Top↑
Lancetに途上国で周産期の妊婦の死亡率を下げるには避妊・家族計画が有効、という論文。コメントもその大半はメリンダ・ゲイツが発言したばかりの内容を後押しするものがずらり。避妊が女性のエンパワメントだとか命を救うとか、貧困や人口成長の解決策だとか。:Lancetってあまりにも分かり安くって、時々思わず笑ってしまう。もともとグローバル・ヘルスとHPVワクチンの話題が大好きみたいだけど、早産や未熟児にかかるコストや予防方法の研究に男児の包皮切除の病気予防エビデンス、今度はメリンダさんが英国政府と国際会議を共催して途上国で避妊と家族計画を推進するとぶち上げたタイミングを計ったように、これ……。
http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736%2812%2960478-4/fulltext?elsca1=ETOC-LANCET&elsca2=email&elsca3=

【関連エントリー】
Lancet誌はゲイツ財団に買収された?(2008/4/13)
Lancet誌とIHMEのコラボとは?(2008/4/25)
Lancet誌に新プロジェクト IHMEとのコラボで(2008/7/1)

早産・死産撲滅に、シアトルこども病院がゲイツ財団、ユニセフ、WHOと乗り出す(2009/5/14)
未熟児を産ませず、生まれても救命しないための科学的エビデンス作りが進んでいる(2009/6/10)
Lancet最新号はゲイツ特集か:HIV二死産にHPVワクチン、それからこれはコワいぞ「グローバル治験条件緩和」(2011/5/9)


Guardianがカトリック教徒であるメリンダ・ゲイツの避妊キャンペーンを「ヴァチカンとの闘い」と捉えて書いている。昨日からタイトルは書きかえられたけど。
http://www.guardian.co.uk/world/2012/jul/11/melinda-gates-challenges-vatican-contraception?CMP=EMCNEWEML1355

新生児死亡率の人種間格差。
http://www.medicalnewstoday.com/releases/247695.php

同じ薬を薬局で買うと1錠35セントなのに、医師が処方すると3ドル25セントになるマージンの不思議。60セントの薬が3ドル33セントになるのも(これ、ソーマという筋弛緩剤。ソーマといえばハクスリーの「すばらしき新世界」に出てくるハッピー・ピルなんだけど、そういう名前の薬が実在するんだぁー)。で、こういう差額が保険会社につけ回されて医療費を押し上げている。
http://www.nytimes.com/2012/07/12/business/some-physicians-making-millions-selling-drugs.html?_r=2&nl=todaysheadlines&emc=edit_th_20120712

オランダの安楽死実態調査論文を受け、LifeNewsサイトに、「オランダの医師は重鎮静で自殺幇助を誤魔化している」との批判。論文本文を読むと、Lancetのリリースには扱われていないデータから様々に複雑な実態が見えてくる、と。
http://www.lifenews.com/2012/07/11/dutch-doctors-use-deep-sedation-to-hide-assisted-suicides/

米国の検死制度の怠慢と機能不全を暴いているProPublicaのシリーズ最新記事。2004年に腎臓結石の手術で入院中、鎮痛剤を出された直後に心臓マヒで死んでいるのが発見された男性(61)。病院側は男性の心臓を今だに保管していて、妻に返そうとしない。検死が行われるのは病院死の5%のみで、遺族側には死因が分からないままというケースが少なくない。
http://www.propublica.org/article/cardiac-arrest-hospital-refuses-to-give-widow-her-husbands-heart

前から指摘されている問題だけど、高齢者施設に無資格だったり、前科のある可能性がある人までが介護者として雇われている。
http://www.medicalnewstoday.com/releases/247688.php

英国で28回もバスに乗車拒否されたという車いすユーザーの抗議を受け、障害者問題担当大臣が公共交通機関に障害者への対応改善を指示。
http://www.guardian.co.uk/society/2012/jul/11/row-wheelchairs-buses-minister-attitude?CMP=EMCNEWEML1355

アイルランドに10歳未満のヤング・ケアラーが2000人という調査結果。
http://corkindependent.com/stories/item/10403/2012-28/Over-2000-carers-under-10

日本。尊厳死法案、「仕切り直し、一から議論を」-障害者団体、終末期の定義を疑問視
http://www.cabrain.net/news/article/newsId/37662.html

日本。自閉症の小6男児にいじめ…「死にたい」と転校 小学校側は当初認めず
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/120713/crm12071312070018-n1.htm

日本語。自由であり続けるために20代で捨てるべき50のこと(サンクチュアリ出版)のまとめ
http://bukupe.com/summary/5359
2012.07.20 / Top↑
その後、報告書中盤で書かれているのは
① 障害当事者らによる専門家委員会について
② これら無用な医療介入による人権侵害に関する考察

①NDRNとDRWとは、この報告書のために
2012年春に5つのそれぞれ別の専門家委員会を開催している。

開催地は4つの委員会がシアトルとワシントンDCで、
一つは会議電話によるもの。

だいたいの会議は2時間半で行った。

メンバーの障害像は
コミュニケーションに障害のある人や重症障害者を含め、多様。

議論されたのは、A療法のほか、より広く、
障害のある人への医療、医療職や医療の意志決定と障害者など。

ここでのA事件についての批判は
おおむねこれまでに出てきたものと同じですが、
いくつか特に目を引かれた点を挙げておくと、

・車いすやその他の自助具があれば障害者も社会に貢献する生活が送れることを
両親も学ぶべき。

・将来的にアシュリーが自分にはどうして乳房がないのか悩んだ時に
親は何と説明するのか。

(このあたり、アシュリーの障害像について発言者自身が十分な理解に至らないまま
自分の障害を基準に考えていると感じられる点がちょっと気になるところ)

・テクノロジーが進めば、アシュリーだって意志疎通ができたり動けるようになったり
子どもを産み育てることだって可能になるかもしれない。

(報告書を通じて、
支援テクノロジーへの過剰な期待が感じられる点も、ちょっと気になりました)

・医師は日頃から障害のある患者のいうことに耳を傾けようとしない。

・医師はこちらの理解力の程度を勝手に決め付ける。

・医師は障害者を実験に使う。

・医師は自分では障害者のことを分かっていると考えているが
実際には障害者が生活するナマの姿を見たこともない。

・医学教育の中に、障害について学ぶ内容が必要。


②無用な医療介入による人権侵害に関する考察

ここでも概ね07年のWPASの分析と同じく、
米国の憲法、リハビリテーション法やADAなどの連邦法、州法などの制限によれば
これらの介入は違法であるとし、

それにも関わらず、医療機関や倫理委、審査委員会、裁判所までが
最善の利益論で認めてしまっている実態を非難するとともに、

差別撤廃に向けた、これらの法の精神を尊重する重要性を説き、

連邦法が定めているのはあくまでも最小限の保護だとして、
州法や市の条例によって障害者への保護強化のために法的措置を訴えている。

ただ、具体的に求めているのが
意志決定プロセスに障害者による代理と敵対的審理を義務付けるセーフガードの保障なのか
A療法、強制不妊や一方的な治療の差し控えと中止への直接的な法規制なのかについては、ちょっと曖昧。

私には前者のように読めるのですが、それならその主張は
07年段階の「裁判所の命令なしには違法。これは乳房芽切除でも成長抑制でも同じ」という立場とは
どのように整合するのか

(もっとも07年の報告書にも
「実際に裁判所の判断を仰いだとしたら却下されたかどうかは分からない」とも書かれていました)

それとも本来は違法であるはずのA療法が
まともな手続きなしに一般化されている現実を後追いせざるを得ないために
こういう書き方になっているということなのか?

全体の構成を含め、どうも、あちこちで、
イマイチ論理的にすっきり判然とせぬ報告書ではあります。


【NDRN報告書関連エントリー】
障害者人権擁護ネットから報告書「“A療法”・強制不妊・生命維持停止は人権侵害(2012/6/20)
障害者の人権を侵害する医療への痛烈な批判: NDRNの報告書「まえがき」(2012/6/22)
障害者への医療の切り捨て実態 7例(米)(2012/6/26)
DNRN報告書:概要(2012/7/7)
DNRN報告書:WI州の障害者への医療切り捨て実態 2例(2012/7/9)
2012.07.20 / Top↑
NDRNの報告書の“アシュリー療法”に関する個所から。

アシュリー事件のケース・スタディとして
06年のGunther&Diekema論文から今年3月に出てきたTom とEricaのケースまでの流れに沿って、
両親と担当医らの正当化論、それからシアトルこども病院が立ちあげた成長抑制WGの結論などを概観し、
07年のWPASの調査報告書とだいたい同じ批判が示されています。

特に目を引くのは、正当化論をいくつか引用した後の以下の下り。

これらの文章には、自分たちの考え方がアシュリーの市民権に反するのではないかとちょっとでも考えてみる意識が完全に欠落している。
(p.20)

それからTom やEricaのケースに見られるように
その後も“アシュリー療法”が続けられていることについて、

アシュリー療法がその後も行われているのは、障害者コミュニティの人々を価値のおとった存在とみなす医学モデルの偏った姿勢の証である。
(p.23)


また、今年3月にGuardian に寄せられたコメントを引いて、
「社会における能力主義」が指摘されている。
その引用の最後の一文は、

A療法が倫理的に許容されるのは、障害のある人は人間ではないと本気で考える枠組みにおいてのみである。
(p.26)


報告書は、その後、2007年以降の論争で出てきた
様々な障害者団体からの批判の論点を挙げ、さらに
無益な治療の一方的な差し控えや停止の実例を報告した後に、

「障害のある人々の視点(2012)」という項目に至り、
その冒頭で以下のように書いている。

今日に至るまで刊行された文献の多くは、重症障害のある子どもに代わって意思決定を行うのは親と介護者が最もふさわしいと説いてきたが、NDRNとDRWとしては、医療の意志決定に関しては障害者の立場を代理するのは障害のある人々の方がふさわしいと考える。
(p.33)


この後で、シアトルこども病院が07年にWPASとの間で
倫理委のメンバーに障害者を加えると合意したことに触れ、
その後、実際に障害者をメンバーに加えた、と書いている。

“アシュリー療法”その他の医学的には無用の医療介入のセーフガードとして
特に親や代理人、介護者の希望と当人の権利との間に相克がある場合には
障害の種類や重症度を問わず、本人の意見が反映されるデュー・プロセスが必要だと主張し、

障害者といえど考えは様々なので
倫理委に障害者を加えるだけでは十分ではないという指摘もあるが、

……一人ひとりの障害者がそれぞれ違うとはいえ、デュー・プロセスによる保護によって市民権と人権を守られる権利は誰にも等しい。


ここら辺りで個人的にちょっと引っかかるのは
「障害のある人の代理決定を行うのは親や介護者よりも
障害者の方がふさわしいのだ」とまで言ってしまうのは、どうなのか、という点。

その後の部分を読むと、実際に主張しているのはそこまでのことではなく、
自分で意志表示をし自分の権利を主張できない人の場合に
親や介護者が本人の権利を侵害する可能性があるなら特に、
本人だけの利益の代弁者による敵対的審理をデュー・プロセスとして補償し、
その役割に障害者を当てよ、という主張に過ぎないように思えるのだけれど、

冒頭で書かれていることとの間にギャップがあるので、紛らわしい。

私は後半の部分の主張には賛成だけど、
冒頭のように「医療について決めるのは親よりも障害者の方がふさわしい」とまで言われると
一律に言えることではないと、抵抗がある。
2012.07.20 / Top↑
ニュー・メキシコ州で医師と患者による自殺幇助訴訟。これはたぶん4月12日の補遺で拾ったニュースの続報。
http://www.healthpolicysolutions.org/2012/07/11/doctors-patient-challenge-new-mexico-assisted-suicide-ban/

昨日の補遺で拾ったオランダの安楽死に関する論文に、英米のメディアが「PAS合法化しても“すべり坂”は起きない」とのエビデンスだ、と。:オランダで緩和ケアが崩壊し、25歳以上の重症脳障害を治療する医療機関がなくなり、「宅配安楽死」制度ができてしまっている実態って、そういうデータからは見えない“すべり坂”なんでは、と私は思うのだけど。
http://www.telegraph.co.uk/health/healthnews/9390411/Legalising-assisted-dying-doesnt-lead-to-more-opting-for-death-Lancet.html
http://health.usnews.com/health-news/news/articles/2012/07/11/dutch-euthanasia-rates-unchanged-after-legalization

ちなみに、ベルギーの実態調査データは10年に出ている。この時、ネットでは「本人の明示的な意思表示なしに致死薬が使われている」「看護師が安楽死に関与している」など、データの詳細から“すべり坂”がむしろ疑われるデータと捉える向きが多かったのに、その直後の日本の某シンポで若手研究者がこの論文から「件数割合」のデータだけを引用して、「ベルギーでは“すべり坂”は起きていない」と発表したのに、ぶったまげたことがあった。
ベルギーにおける安楽死、自殺幇助の実態調査(2010/5/19)

モンタナ州の自殺幇助を違法とする法案がどうなったのか確認できていなかったのだけど、あの法律は結局のところ成立しなかったみたい?
http://www.montanansagainstassistedsuicide.org/2012/07/position-statement-no-20-must-be.html

メリンダ・ゲイツさんの「途上国で避妊を」キャンペーンと英国政府と共催の国際会議関連。ゲイツ財団は今後の8年間で10億ドルを提供。でもなぜかSeattle Timesの記事の方には、途上国の貧困問題解決のために人口抑制が必要、という話は全く出てこない。
http://www.cbsnews.com/8301-504763_162-57470508-10391704/melinda-gates-promotes-birth-control-as-an-important-part-of-family-planning/
http://seattletimes.nwsource.com/html/localnews/2018659038_gates12m.html

上記の動きに、これで貧困が解決するわけがない、メリンダさんがやろうとしているのは自分の基準にそぐわない貧乏な人たちを減らすことに過ぎない、このキャンペーンは途上国の女性の利益にはならず、Planned Parenthoodのような組織を利するだけ、との批判。
http://www.onenewsnow.com/Culture/Default.aspx?id=1628854

片やビル・ゲイツ氏は、教育施策に関するフォーラムで基調講演を行い「教師は生徒に評価させるのが一番」と。
http://blogs.edweek.org/edweek/state_edwatch/2012/07/bill_gates_praises_common_core_cautions_about_bonus_pay.html

09年から10年にかけての豚インフルエンザ騒ぎで使われたH1N1ワクチンに、ギラン・バレ症候群のリスクを3倍に高める副作用の可能性。調査対象となった地域での死亡リスクは2500人に1人。
http://www.telegraph.co.uk/health/healthnews/9389139/H1N1-vaccine-linked-to-potentially-fatal-nervous-system-condition-study.html

英国政府の後ろ向きの介護制度改革に、「去年のDillnot報告はどこへ行った?」と高齢者の憤り。
http://www.telegraph.co.uk/health/elderhealth/9393742/Elderly-betrayed-over-care-funding-reform.html

米国で携帯電話会社がFBIや警察などの求めに応じて、利用者のデータを渡した、と。去年だけでもデータを求められた回数は130万回。ProPublicaとNYT。
http://www.propublica.org/article/how-many-millions-of-cellphone-are-police-watching
2012.07.20 / Top↑
先月、以下のエントリーで取り上げた
LCPの機会的適用問題の続報がありました。

「NHSは終末期パスの機会的適用で高齢患者を殺している」と英国の大物医師(2012/6/24)


この告発で
本来は緩和ケアのパスであるリヴァプール・ケア・パスウェイ(LCP)が
機械的に運用され「死のプロトコル」と化している実態が論議を呼んでいるようです。

09年に既に現場の医師からの告発があったのですが(詳細は文末にリンク)、
今回、7月8日にまたTelegraph紙に医師ら6人から書簡が送られています。

冒頭の部分を抜いてみると、

Remarks on the Liverpool Care Pathway by Professor Patrick Pullicino at a conference of the Medical Ethics Alliance (report, June 20) gave rise to controversy.
But he is not wrong to say that there is no scientific way of diagnosing imminent death. It is essentially a prediction. Other considerations may come into reaching such a decision, not excluding the availability of hospital resources.

MEAカンファでのPatrick Pullicino教授のLCPについての発言が論議を呼んでいるが、

死が差し迫っていることを診断する科学的な方法は存在しないというPullicino教授の発言は間違ってはいない。死が差し迫っているというのは基本的に予測に過ぎない。そう断定することには、病院の医療資源を使えるようにするなど、その他の配慮が混じってくるのではないか。


上のトーンからすると、
Pullicino教授の発言は批判的に受け止められているように想像されますが、

この書簡によると、
Pullicino教授の発言が公になって以降、
一般からLCPを不当に適用されたという事例が報告されているとのこと。

また、どうやら自衛手段として
事前指示書でLCPを拒む人も出てきている模様。

Deadly one-way street
The Telegraph, July 8, 2012


なお、この書簡についての Telegraph の記事はこちら ↓
http://www.telegraph.co.uk/health/healthnews/9385674/Hospitals-letting-patients-die-to-save-money.html



【関連エントリー】
“終末期”プロトコルの機会的適用で「さっさと脱水・死ぬまで鎮静」(英)(2009/9/10)
2012.07.12 / Top↑
オランダで2002年に安楽死法ができて、2005年には自殺幇助や安楽死の数が減ったことが分かっているが、その後2010年までの間にまた増加したものの、法律ができる前と同じ発生率だ、と。:てことは、法律ができる前にも非合法なままの安楽死や自殺幇助が放置されていたということ? それはともかく、積極的安楽死と消極的安楽死と自殺幇助がごっちゃに論じられているような印象もあって、ざっと読んだのではいまいちよくわからない。元論文のアブストラクトはLancet に。⇒http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736%2812%2961034-4/abstract
http://medicalxpress.com/news/2012-07-netherlands-euthanasia-suicide-legalization.html

昨日W.Smithが問題にしていたスイスの自殺幇助データ記事。
http://www.swissinfo.ch/eng/swiss_news/Finding_a_place_for_assisted_suicide_in_society.html?cid=32986262

日本。介護62年…長女刺殺の85歳母に猶予判決:タイトルは「刺殺」だけど読んでみると「絞殺」。85歳の母親は「昨年7月頃、自宅で転倒して右肩を骨折。利き手が不自由になり、自身も、家事を手伝ってもらう訪問介護が必要に」なっていた。そういう高齢の母親に介護を続けさせてきた社会の方は、あまり問われない。http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=61444

1月にこの事件のニュースを読んで書いたエントリーがこちら ↓
母に殺させるな……「介護者支援」への思い(2012/1/12)


ゲイツ財団、途上国での避妊アクセスに100万ドル単位の資金を提供する、と。
http://biz.thestar.com.my/news/story.asp?file=/2012/7/11/business/20120711081417&sec=business

メリンダ・ゲイツ、ロンドンで各国首脳が集まって開催される家族計画サミットに英国の国際開発長官と共に出席。途上国の1億2000万人の女性と少女に安全な避妊方法を提供するために、出席者で40億ドルの資金調達キャンペーンを始める。:40億ドルって、くしくもゲイツ財団が途上国の子どもたちのワクチンのために、と言って世界中から集めた資金の学と同じ。というか、WPの記事によれば、このサミットそのものを立ち上げたのがメリンダさん。
http://www.telegraph.co.uk/technology/bill-gates/9389187/How-I-got-Bill-Gates-to-give-away-his-billions.html
http://www.washingtonpost.com/blogs/under-god/post/melinda-gates-launches-family-planning-summit-says-no-controversy-around-birth-control/2012/07/10/gJQAPVwSbW_blog.html?wpisrc=nl_cuzheads

【関連エントリー】上記の会議はここで言われていた「国際会議」みたい ↓
米・英政府とゲイツ財団とUNPFにより優生施策、7月には国際会議も?(2012/6/7)
インドの貧困層への不妊プログラム、英国政府の資金で「温暖化防止のため」(2012/6/12)


ドイツの包皮切除禁止へのユダヤ教ラビからの批判。
http://www.washingtonpost.com/blogs/guest-voices/post/germanys-ban-on-circumcisions-rabbi-david-wolpe-reflects-in-verse/2012/07/10/gJQAiwNWbW_blog.html?wpisrc=nl_cuzheads

日本。新型の着床前診断で16人出産…学会指針に違反
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120710-00001629-yom-soci

日本。<最低賃金>11都道府県で生活保護給付水準下回る:それでもって生活保護受給者が増えていることが不正受給の問題に直線的にすりかえられていくのって?
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120710-00000084-mai-soci

米国人の大半は親よりも稼いでいるんだけれど、所得階層が上がっているのは3分の1だけ。特に人種間格差大。
http://www.washingtonpost.com/local/most-americans-earn-more-than-parents-but-only-a-third-rise-in-income-class-study-says/2012/07/09/gJQAOWyzYW_story.html?wpisrc=nl_cuzheads

2015年から英国で高齢者がケアホームに入る資金を政府から借りて、死後に持ち家を売って借金返済という制度を開始。:こういうの、なんだっけ、リバース・モーゲッジとかいうんじゃなかったっけ?
http://www.guardian.co.uk/society/2012/jul/11/loans-elderly-death-residential-care?CMP=EMCNEWEML1355

米国政府に国防筋から、アノニマスなどハッカーを取り締まるんじゃなくて、人材として登用して敵を探して追跡させよ、と。
http://www.guardian.co.uk/technology/2012/jul/10/us-master-hackers-al-qaida?CMP=EMCNEWEML1355

MS州で激化するプロ・ライフ運動に必死の抵抗で営業を続ける州で唯一の中絶クリニックだけど、今日、中絶の全面禁止を盛り込んだ新しい州法への裁判所の判断によっては、それまでに。
http://www.guardian.co.uk/world/2012/jul/10/mississippi-only-abortion-clinic-protest?CMP=EMCNEWEML1355

親に統合失調症や双極性障害があると子どもの自閉症リスクは高くなる?
http://www.medicalnewstoday.com/articles/247663.php
2012.07.12 / Top↑
英国で高齢者介護の予算を巡って、政治論争。
http://seattletimes.nwsource.com/html/localnews/2018631466_birthcontrol08m.html
http://www.telegraph.co.uk/health/elderhealth/9383120/Well-save-in-the-future-if-we-spend-more-on-social-care-now.html

訪問ヘルパーが15分を単位になっていることには前から批判が出ているけど、新しい調査報告。
http://www.telegraph.co.uk/health/elderhealth/9379877/Care-routinely-rationed-to-15-minute-slots-to-save-cash-study-shows.html

近く出る、英国の高齢者介護白書関連。
http://www.guardian.co.uk/society/2012/jul/09/elderly-minimum-standard?newsfeed=true

スイスのExit とDignitasとで2011年に自殺させた人は560人。スイスの自殺者の3人に1人に当たる。それでも自己決定権の尊重を盾に規制に及び腰の法務大臣の発言に、Wesley Smithが「自殺予防が自己決定権の集団的制限になるなら、それは死にたい人にはみんな死んでもらうという理屈になるじゃないか」と批判。
http://www.firstthings.com/blogs/secondhandsmoke/2012/07/09/swiss-proves-no-brakes-assisted-suicide/

ウォール・ストリート・ジャーナルに、ショッキングな記事。Scott Crawfordさん(41)は09年2月心臓移植手術を受けて、移植そのものは成功したものの合併症から1年近くICUに入院。その間には胆石をとり、左足を切断し、肺の一部を切除するなどの手術を受けた。その辺りで担当医はこのままこの患者の治療を続けていいのだろうか、と悩む。看護師も患者の苦痛にジレンマを感じていた。家族と移植医は諦めず、意見は割れたが、Crowfordさんはクリスマス直前に死亡。この記事で何がショッキングかというと、WSJがCrowfordさんにかかった医療費を外来・入院とも計算して、総額で「政府はこの人の治療で210万ドルを支出した」と書いていること。それだけではなく、その金額は09年のメディケア患者のうち、大きい順に5番目だという計算までしていること。もちろん記事のテーマは「上がる一方の医療費の圧迫をどうするか」であり「特に高齢者の死ぬ前1年間に医療費が集中的にかかっている」問題。今後、年間に医療費を使った金額のランキング・リストが患者の実名と共に公表される日でも来るんだろうか……?
http://online.wsj.com/article/SB10001424052702304441404577483050976766184.html#articleTabs%3Darticle

英国でPAS合法化法案を出した(準備中かも?)Falconer上院議員がTime紙に寄稿した際に「英国医師会もスタンスを中立に変更した」と事実と違う記述をし、同医師会から訂正されている。
英国医師会は6月末に中立に変更する動議を否決したばかり⇒http://blogs.yahoo.co.jp/spitzibara/65271215.html。
同医師会は09年7月にも同じ動議を否決している⇒http://blogs.yahoo.co.jp/spitzibara/53614646.html
http://www.nationalrighttolifenews.org/news/2012/07/bma-corrects-lord-falconer-s-misrepresentation-of-its-position-on-assisted-dying/
http://pitcherblog.dailymail.co.uk/2012/07/okay-ill-say-it-lord-falconer-is-a-liar-on-assisted-suicide.html

Warren Buffettがゲイツ財団に15億2000万ドルを寄付。:あ、でも現金じゃなくて、自社株で、というところがたぶんミソ。バフェットは以前から自分の富(株式)をせっせとゲイツ財団に注ぎ込んでいるし、ゲイツとバフェットとでGiving Pledgeというキャンペーンを張って、スーパーリッチたちに「富を慈善に」と呼びかけてはゲイツ財団に金を集めている。で、慈善資本主義の資本がそこに膨れ上がっては、それら資本に有利な方向に慈善が説かれ、カネが廻り回って肥え太って戻ってくる……という仕掛け? 
http://www.huffingtonpost.com/2012/07/09/warren-buffett-bill-gates-foundation_n_1659734.html?utm_hp_ref=impact

【関連エントリー】
2011年5月8日の補遺(この段階でGiving Pledgeで集まった69人が上記2人の呼びかけで会合を持っている)
ビル・ゲイツの音頭で米国の長者たちが各国政府の頭越しに世界人口抑制に取り組もうと合意(2010/6/9)

上の記事と合わせて読むと興味深い掲示板のコメントで「ビル・ゲイツがそんなに貧困を案じているなら、まずはMS社の低賃金労働と奴隷労働をやめたらどうだ」。この人、最後に「でもガーディアンはそんな指摘はしない。だってゲイツ財団の金もらってるからね」と言っているけど、今や、ゲイツ財団の金が流れているのはガーディアンやランセットだけじゃない。⇒ゲイツ財団のメディア・コントロール(2010/10/21)
http://www.democraticunderground.com/1002919921

ゲイツ財団の産児制限キャンペーンに批判。
http://seattletimes.nwsource.com/html/localnews/2018631466_birthcontrol08m.html

包皮切除をやっていない男児は尿路感染のリスクが高い。
http://www.medicalnewstoday.com/releases/247532.php

普通の風邪のウィルスから髄膜炎ワクチンを開発中。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/247547.php

カンボジアで謎の病気で子ども56人が死亡。手足口病のウイルスが突然変異か?
http://www.medicalnewstoday.com/articles/247577.php
http://www.medicalnewstoday.com/articles/247589.php

母親の血液サンプルから胎児のゲノム読解可能に?
http://www.medicalnewstoday.com/articles/247501.php

一方、こちらは出生前遺伝子スクリーニングは正確とは限らない、とも。
http://www.bioedge.org/index.php/bioethics/bioethics_article/10145

認知症患者の終末期に行われる治療は医師によってバラバラ。認知症の治療薬と一緒に効果のエビデンスもないのにスタチンと抗生剤が使われていたりする。:ふむ。ここでもスタチンね。
http://www.medicalnewstoday.com/releases/247540.php

ビタミンDサプリが高齢者の骨折予防に効果的。:スタチン、ビタミンDにアスピリンよ。やっぱ「なんでもこい」の予防医学の稼ぎ頭は。
http://www.medicalnewstoday.com/releases/247525.php

米国の裁判所が、骨髄ドナーへの金銭支払いを合法と認める。3000ドルが相当だとか。
http://www.bioedge.org/index.php/bioethics/bioethics_article/10147#comments

米国ミネソタ大の生命倫理学者Carl Elliottがニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディスンとブログで、実験の被験者の保護が不十分であることを告発。
http://www.bioedge.org/index.php/bioethics/bioethics_article/10137#comments

プロ・ライフの中絶バッシングに対抗すべく、米国の写真家が自身の中絶体験を隠しカメラで撮影した写真を含め、ブログで公開。
http://www.guardian.co.uk/commentisfree/2012/jul/09/photos-abortion-educate-empower-women?CMP=EMCNEWEML1355
2012.07.12 / Top↑
7月5日のエントリー
DNRN報告書:概要で触れただけで終わった
ウィスコンシン州の事例2つを、同報告書P.17から
概要を取りまとめて、以下に。


① グループホームで暮らす13歳の子どもが
風邪の治療を中止されて死んだケース。

その男児には発達障害と身体障害があったが、
ターミナルな状態でも植物状態でもなかった。

風邪をひいたのでGHの職員らが病院に連れて行き、
医師から抗生剤を処方された。

しかし、それを知った両親は
次に風邪をひいたら治療せずに肺炎にして、肺炎の治療はせずに死なせると
子どもの主治医との間で取り決めていると主張。

GH側はそれに従うことを拒否し、抗生剤を飲ませ続けた。

すると両親は子どもをGHから地元の大学病院へ移し
抗生剤だけでなく栄養と水分まで引き上げた。

少年は数日後に死亡。


② 同じ大学病院で
72歳の発達障害のある患者の生命維持治療を拒否するよう
医師が不当に家族に働きかけたことが疑われているケース。

家族からの報告では、
患者は助かってもQOLが非常に低くなるため
生命維持治療はこれ以上用いるべきではないと医師は説明した、とのこと。

その説明を聞いた当初、家族は医師に同意するが、
翌朝になって目を覚ました患者が食べたいと言ったので、
家族の気持ちが変わる。

そこで治療と栄養を再開してくれるよう求めたところ、
当初は医師が抵抗を示したが、後に最終的に意向に沿って治療を再開してくれた。

その後、患者は回復期を送れるようナーシングホームに送られた。



【注】
この報告書での「発達障害」は
日本で自閉症などを意味して使われている発達障害とは異なり、
広義の「発達障害」として使われているように思います。

というか、Ashley事件の議論では
アシュリーの障害像も何度も「発達障害」と形容されていたので
米国の用法としては広義の「発達障害」が一般的なのかもしれません。



【その他の、NDRN報告書関連エントリー】
障害者人権擁護ネットから報告書「“A療法”・強制不妊・生命維持停止は人権侵害(2012/6/20)
障害者の人権を侵害する医療への痛烈な批判: NDRNの報告書「まえがき」(2012/6/22)
障害者への医療の切り捨て実態 7例(米)(2012/6/26)
2012.07.12 / Top↑
先週のミュウ
(園との連絡ノートより)

入浴後、テレビ中継でカープの試合を見ました。
始めはあまりノリ気ではなかったようで、
「誰かビデオにしてくれないかな~」と、
周囲をきょろきょろ。

でも、すぐに選手たちの動きに「くぎづけ」になってました。

ホームランを打った時など、それはスゴイ喜びようでした。



今週のミュウ
(園との連絡ノートより)

熱が出ました。

39.2度まで上昇し、
アンヒバ座薬を使用しました。

徐々に下がって、それ以後は
36.5~37.2℃でずっと過ごしています。

TV, DVD, CDを一人占めして
楽しそうに過ごされています。

アデノウィルスやヨウレン菌はマイナスでした。


めでたく元気になったミュウは
目の前の道路が見えなくなるほどの豪雨の中を
「おかあさんといっしょ」のCDを聞きながら帰ってきて、

(まるでホラー映画のクライマックスみたいな豪雨とカミナリで
CDの音なんかほとんど聞こえないのに、それでもなぜか、
ちゃんと盛り上がるべきところで盛り上がるから不思議)

「ぴったんこカンカン」を大騒ぎしながら見た後、
現在、我が家で眠りこけております。


明日は2日遅れの父親の誕生祝--。

先週、「来週はお父さんのお誕生日祝いだから
ミュウとお母さんとでケーキを買ってあげよっか?」と持ちかけたら、

「私もお金、出すのぉ……?」みたいな釈然としない顔で、ちょっと考えたのち、

いつもの3分の1くらいの口の開け方で、
「はー」と、ちょいと力の足りぬ返事をしたミュウでした。
2012.07.12 / Top↑
英国の自殺幇助合法化ロビーのFalconer上院議員が合法化法案を提出?:なんでメディアが騒がないの? ちなみにFalconer議員は作家のプラチェットの資金で私的な自殺幇助委員会を作って、あたかも公的なパネルの結論のように合法化を提言した人物。⇒英国Falconer委員会「自殺幇助合法化せよ」提言へ(2012/1/2)
http://www.nationalrighttolifenews.org/news/2012/07/the-legalisation-of-assisted-suicide-dont-be-fooled-it-is-primarily-about-money/

サン・ディエゴで新たなZody Cervantes“無益な治療”事件? 髄膜炎のけいれん発作で2か月前から人工呼吸器依存の2歳児。
http://www.nbcsandiego.com/news/health/Mother-Toddler-Brain-Injury-Life-Support-Fight-Rady-Childrens-Hospital-161206965.html

生殖テクノロジーとヘルスケアを考える研究会(2010年3月13日:金沢大学)における安藤泰至氏(鳥取大学医学部準教授)の講演「生命操作システムにおける『見えざるもの』 -生殖技術を中心にー」と質疑:語り口調も言葉も柔らかいけど、指摘はワイルドだぜぇぇ。
http://tech_health.w3.kanazawa-u.ac.jp/html/20100313_andou.html
http://tech_health.w3.kanazawa-u.ac.jp/html/20100313_situgioutou.html

子どもの心臓手術の待機期間が長すぎて患者が命を落としていることが問題になっている英国で、11病院の高度な手術をするユニットのうち4つを封鎖し、7病院に。:普通に考えたら、ユニットの数が減れば待機がさらに伸びるような気がするんだけど、それって、どういうリーズニングなの? 
http://www.guardian.co.uk/society/2012/jul/04/hospitals-heart-units-delays-children?CMP=EMCNEWEML1355

英国は警察官だけじゃなくて、軍でもリストラを進めるらしい。
http://www.guardian.co.uk/uk/2012/jul/05/thousands-soldiers-compulsory-redundancy?CMP=EMCNEWEML1355

ネット上に自分のヌードや性的な写真をアップすることを sexting というんだそうな。米国の調査で高校生の30%にその体験があったとか。
http://www.medicalnewstoday.com/releases/247360.php

WA州の同性婚法を守ろうとの運動に、Bill GatesとSteve Ballmer(MS社のCEO)が10万ドルを寄付。
http://seattletimes.nwsource.com/html/localnews/2018585823_gaymarriage.html

ビル・ゲイツは同じくWA州のチャーター・スクール運動にも、100万ドル。:アシュリー事件を調べていた時に、シアトルって地域によって住んでいる人の階層がはっきりしているらしい印象があった。でもって、富裕層が住んでいる地域の病院には寄付金を集める地域住民のネットワークまであって、そういう人が権力もお金も持っているわけだから、寄付金がガッポガッポ入っているみたい……だった。
http://tdn.com/news/state-and-regional/washington/gates-gives-over-m-to-support-charter-initiative/article_5efde076-3c5a-5572-8742-524df2b94a77.html

sakichokoさんのブログ・エントリー「孤立死とは『気づいてもらえない死』 遺品整理キーパーズ 吉田太一さんに聞く」
http://sakichokomemo.blogspot.jp/2012/07/blog-post.html
2012.07.05 / Top↑
障害児・者への“アシュリー療法”、強制不妊、治療の一方的停止と差し控えを中心に
医療における障害者の人権侵害を批判して

米国の障害者人権擁護ネットワークNDRNが5月に出した報告書については、
これまで以下の3つのエントリーを書いてきました。

障害者人権擁護ネットから報告書「“A療法”・強制不妊・生命維持停止は人権侵害(2012/6/20)
障害者の人権を侵害する医療への痛烈な批判: NDRNの報告書「まえがき」(2012/6/22)
障害者への医療の切り捨て実態 7例(米)(2012/6/26)

その後、この報告書に言及し、KittayやAschらの批判へも反論しながら
Ashley療法を擁護する論考も出てきました ⇒http://blogs.yahoo.co.jp/spitzibara/65280886.html

そこで、改めてNDRNの報告書の内容を
少しずつ取りまとめていこうと思います。

          ―――――――

まず全体の内容構成をspitzibaraの独断で整理すると

① 米国における障害者の人権概念と法整備の歴史
② アシュリー事件のケース・スタディ
(A事件を中心に、強制不妊の歴史と生命維持の差し控えの現状も一緒に検討される)
③ アシュリー事件を巡ってNDRNが立ちあげた当事者委員会の内容
(いわば、子ども病院が立ちあげた成長抑制WGのカウンターパートとして?)
④ 医療決定は最善の利益論ではなく法的デュープロセスを保障すべき、との主張の展開。
⑤ 提言


ここでは、①について簡単に。

米国の障害者の人権擁護がたどってきた歴史が振り返られますが、
その冒頭で触れられているのは医学モデルの差別性。

その象徴として挙げられているのは施設収容と強制不妊施策。

特筆しておきたいデータとして、施設で暮らす障害者は
1990年の171900人から、2009年には92300人へと現象。

医学モデルから社会モデルへの米国政府の最初の包括的な転換点として
1990年の米国障害者法ADAと、その2008年の改正法。

また2008年の国連障害者人権条約(CRPS)。

これらにより、障害の種類や重症度を問わず、
社会が障害者をaccommodateすることが求められているにもかかわらず、
医療現場では障害を理由に人権侵害が行われている、として、

Wisconsinの大学病院(Norman FostはWI大学病院所属……)での
障害を理由にした“無益な治療”判断の事例が2つ紹介されています。(p.17)
その内容はまたいずれ。

このパートの最後の辺りで印象的だったのは以下の下り。

The purpose of this report is to add a critical, but missing, piece of the discussion regarding medical decision making and individuals with disabilities.……(中略)……The presence of a disability has been used to deny access to due process protections in regards to medical decision making in general and in situations where there is a potential or actual conflict of interest between individuals with disabilities and their parents or caregivers.

本報告書の目的は、医学的意思決定と障害者を巡って、決定的に重要でありながら欠落している議論を補うことにある。……(中略)…… 医学的意思決定一般において、障害者と親や介護者との間に利益の相克やその可能性がある状況においてすら、障害があるということが、デュー・プロセスによる保護から外す正当化に使われてきた。


まさしく、アシュリー事件の大きな問題点の1つ――。
2012.07.05 / Top↑
糖尿病の治療薬の安全データ隠ぺいなどを巡るライアビリティ訴訟で、
GSKが有罪を認め、30億ドルの賠償金で和解したことを
昨日の補遺で拾いましたが、

ここ数年のビッグ・ファーマで問題となった
違法マーケティングとデータ隠しの事例と、政府に支払った罰金額とを
ProPublicaが一覧にしています。

それによると、

・イーライ・リリー (2009年1月:14億2000万ドル)
 適用外であるにもかかわらず、向精神薬Zyprexaを高齢者の認知症治療薬としてプロモ。
 また販売員に法をないがしろにするよう研修を行った。

・ファイザー (2009年9月: 23億ドル)
 鎮痛剤 Bextra をFDAが危険と判断した高用量でプロモ、
05年に安全性への懸念から市場から引き上げられた。
その他、向精神薬Geodon, 抗生剤 Zyvox、抗てんかん薬 Lyricaでも
同社は違法な反則行為が疑われた。

・アストラ・ゼネカ (2010年4月:5億2000万ドル)
 向精神薬 Seroquelの違法なプロモーション。
 当初、統合失調症、次いで双極性障害で認可されたにもかかわらず、
  攻撃性、不眠、不安やうつなど、認可外へのプロモを行った。
 
・メルク (2011年11月: 9億5000万ドル)
  鎮痛剤 Vioxx をリューマチで認可される前から治療薬として違法にプロモ。
  心筋梗塞リスクが判明し、04年に市場から引き上げられた。
  売り上げのために心臓病リスクについて説明を偽った疑い。

・アボット (2012年5月: 15億ドル)
  向精神薬 Depakote の違法なプロモ。
  特別に販売チームを作ってナーシング・ホームをターゲットに
  高齢の認知症患者の問題行動抑制目的でマーケティングを行った。
 (その目的では認可されていないし、効果のエビデンスなどないにもかかわらず)
  また統合失調症の治療薬としてもプロモ。
 (こちらも効果のエビデンスがないにもかかわらず)

・グラクソ・スミス・クライン (2012年7月: 30億ドル)
  米国の医療不正事件で史上最大規模。
  安全データ報告ミスと違法なプロモでのライアビリティ民事および刑事訴訟。
  18歳未満には認可されていないにもかかわらずPaxilを18歳未満のうつ病対象と偽った。
また糖尿病治療薬Avandiaの安全性データをFDAに報告しなかった。

Big Phama’s Big Fines
ProPublica, June 3, 2012


アボット社のケースの
高齢者や認知症患者、施設入所者への抗精神病薬の過剰投与の問題では
これまでもいろいろ拾っています ↓

認知症患者への不適切な抗精神病薬投与、教育・意識改革が必要(2009/4/17)
10年間で精神科薬の処方が倍増(米)(2009/5/7)
英国のアルツ患者ケアは薬の過剰投与で「まるでビクトリア時代」(2009/6/5)
ナーシング・ホーム入所者に症状もICもなく精神病薬投与(2009/10/31)
不適切な抗精神病薬の投与、15万人の認知症患者に(英)(2009/11/15)
1人でTX州の総量をはるかに越える統合失調治療薬を処方する精神科医が野放し・・・・・・の不思議(2009/11/30)


08年、09年あたりから問題視され明るみに出されてきた以下の諸々が、
上記のような裁判や罰金に繋がってきたように思われます。

【いわゆる“Biedermanスキャンダル”関連エントリー】
著名小児精神科医にスキャンダル(2008/6/8)
著名精神科医ら製薬会社からのコンサル料を過少報告(2008/10/6)
Biederman医師にさらなる製薬会社との癒着スキャンダル(2008/11/25)
Biederman医師、製薬業界資金の研究から身を引くことに(2009/1/1)

【その他、08年のGrassley議員の調査関連】
抗ウツ剤めぐる研究者と製薬会社の癒着スキャンダル報告書(米国)(2008/11/17)
抗ウツ剤めぐる研究者と製薬会社の癒着スキャンダル報告書 Part2(2008/11/23)
今度はラジオの人気ドクターにスキャンダル(2008/11/23)

【その他、09年の製薬会社のマーケティングやスキャンダル関連エントリー】
FDAの科学者ら「認可審査あまりにも杜撰」と内部告発(2009/1/15)
ファイザー製薬ナイジェリアの子どもに違法な治験、11人が死亡(2009/2/1)
インターネットの医薬品情報、その陰にいるのは?(2009/2/14)
Harvardの医学生が医療倫理改革を起こそうとしている(2009/3/4)
FDAと製薬会社の訴訟つぶしに待った(2009/3/5)
ICなしの外傷患者臨床実験、死亡者増で中止に(2009/3/30)
HPVワクチン普及目的で保健当局が学校に女児の個人情報を要求(NZ)(2009/4/3)
マラリアやエイズ撲滅キャンペーンの影で子どもの死因第1位の肺炎が無視されてきた不思議(2009/5/10)
抗ウツ薬の自殺リスクを警告したら、処方だけじゃなくて診断そのものが激減?(2009/6/4)
FDA委員会を前に精神障害当事者らから声明(2009/6/9)
製薬会社がゴーストライターに書かせた論文でエビデンス作り(2009/8/8)
巨大ファーマがかつてのゼネコンなのだとしたら・・・・・・(2009/9/29)
英米の医療スタッフから豚インフル・ワクチン接種に抵抗が出ている(2009/10/13)
中流の子なら行動療法、メディケアの子は抗精神病薬・・・・・・?(2009/12/13)


最近のものでは例えば、↓
「製薬会社に踊らされて子どもの問題行動に薬飲ませ過ぎ」と英国の教育心理学者(2011/1/18)
ジェネリックを売らせないビッグ・ファーマの「あの手この手」が医療費に上乗せられていく(2011/11/15)


あと、この問題を一貫して調査し報道しているProPublicaのシリーズの一つがこちら。↓
ProPublicaが暴く「ビッグ・ファーマのプロモ医師軍団の実態」(2010/11/2)
2012.07.05 / Top↑
米国ヒューストンで、妻以外の女性と同棲中らしい男性が、妻の自殺幇助で起訴されている。:ヘンな事件。妻の自殺企図を知りつつ家を出た夫が翌日帰ってみたら妻が床で倒れて死んでいた、遺書はあった、夫婦がパーティ・グッズの店でヘリウムのタンクを購入したことが分かっていて、実は夫は妻がポリ袋をかぶってこのタンクと接続するのを手伝ったんじゃないか、という容疑。この記事では、妻がターミナルな病気だったら起訴されなかっただろうが、金銭問題が妻の自殺の動機と考えられるために起訴されたんだろう、という推測がされている。つまりターミナルな人の自殺幇助なら不起訴でいいという考えが米国でも広がっている、ということでは? というか、私はいつも不思議なんだけど、こういう事件で殺人と自殺幇助の区別って、どうやったら可能なの?
http://abclocal.go.com/ktrk/story?section=news/local&id=8722092

先日の日本初の児童の脳死・臓器移植に関する朝日の天声人語がツイッターで話題になったらしい。:実際、ひどすぎると思う。これを批判したある方のツイッターに「現在の法では脳死は死である以上、何が酷いのか」という反論があったけど、その同じ人が「脳死からの回復事例があるのですか? 知りませんでした」と書いているのを読んで、うげぇ……と思った。そういう人には、誰か、このエントリーを教えてあげていただけませんか。⇒英国で、またも“脳死”からの回復事例(2012/4/30)
http://www.asahi.com/news/intro/TKY201206190737.html

日本。子宮頸がんワクチン接種後に失神、567件報告(読売新聞):記事へのコメントがたいへん興味深い。さらに興味深い事実として、当ブログが拾っている情報では、2011年夏の段階で既に子宮頸がんワクチンでの失神の原因は「ドキドキするから」だと結論付けられていた不思議⇒子宮頸がんワクチンでの失神は「ドキドキするから?」(2011/8/5) 
http://ceron.jp/url/headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120627-00001109-yom-sci
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120627-00001109-yom-sci

【関連エントリー】
「健康ギャップ」なくても「ワクチン・ギャップ」埋めないと「世界に恥じる」……と説くワクチン論文(2010/3/5)
日本の「ワクチン産業ビジョンの要点」の怪(2011/3/8)
日本でもガーダシル導入へ、厚労省当該部会の議論の怪 1(2011/8/5)
日本でもガーダシル導入へ、厚労省当該部会の議論の怪 2(2011/8/5)
やっぱり不思議な「ワクチン債」、ますます怪しい「途上国へワクチンを」(2011/9/4)
日本初、HPVワクチン接種後に14歳の中学生が死亡(2011/9/21)


ちなみに昨日の朝日新聞に「ジャパンワクチン株式会社」の全面広告があったので、検索してみたところ、出てきたのが以下の記事。GSKと第一三共が戦略提携した合弁会社だそうな。:これって、例えばこういうのへの対抗策だとか? ⇒ゲイツ財団からヤマダ氏を迎えた武田製薬は「グローバル・ワクチン市場」参入を狙う(2012/6/1)
http://www.mixonline.jp/Article/tabid/55/artid/42203/Default.aspx

【「ワクチンの10年」関連エントリー】
新興国でのワクチン開発・製造に、巨大製薬会社がマーケット・チャンスと乗り出している(2009/11/8)
リスクの“リ”の字もなく“黄金時代”に沸くワクチン開発記事(2009/11/19)
「これからはワクチンが儲かりまっせぇ」の陰には、やっぱりゲイツ財団が……(2009/11/20)
「次世代ワクチン・カンファ」の露骨(2010/5/28)
「必要を作り出すプロセスがショーバイのキモ」時代と「次世代ワクチン・カンファ」(2010/5/29)


そのGSKの元会社Glaxoが、糖尿病治療薬の無認可使用と安全性を巡るデータ隠ぺいを巡る事件で、有罪を認め30億㌦で和解。:これ、2011年11月6日の補遺(↓)で拾った、以下のニュースの続報では?
http://www.guardian.co.uk/business/2012/jul/02/glaxosmithkline-drug-fraud?CMP=EMCNEWEML1355

グラクソが糖尿病治療薬Avandiaなど10種の薬を巡る一連の違法マーケッティング、メ
ディケイド詐取などライアビリティ訴訟で、米国政府と30億ドルで和解。:そう、そう。こういうのもまた、忘れてはならない医療費高騰の犯人の1。
http://www.washingtonpost.com/business/economy/3billion-settlement-expected-in-glaxosmithkline-drug-marketing-probe/2011/11/03/gIQAYf7sjM_story.html?wpisrc=nl_cuzheads

心臓病と脳卒中リスクがありながら、グラクソから利益供与を受けた御用学者が論文を書いていたAvandiaスキャンダルについては去年から以下の補遺で拾っている ↓
http://blogs.yahoo.co.jp/spitzibara/60035255.html
http://blogs.yahoo.co.jp/spitzibara/60985870.html
http://blogs.yahoo.co.jp/spitzibara/61698101.html
http://blogs.yahoo.co.jp/spitzibara/61890963.html


NYT. MS州の中絶論争。生殖の自由を否定しようとする州に対して、連邦裁判所の判事が待ったをかけた。Mississippi’s Abortion Ban: The state’s latest attempt at denying women reproductive freedom was temporarily blocked by a federal judge.

ケアホームなどの居住型施設に保護されている子どもたちが性的虐待のターゲットにされている問題で、英国政府がやっと対応に乗り出すらしい。:英国ではその他にも、空港近辺の施設から子どもたちが姿を消したり、子どもたちを保護する立場の大人が人身売買に関わっているとしか思えない事件が相次いでいる。⇒http://blogs.yahoo.co.jp/spitzibara/64211556.html
http://www.guardian.co.uk/society/2012/jul/03/children-in-care-protection?CMP=EMCNEWEML1355

それでも英国は2015年までに最前線の警察官を5800人削減。:24日に今後5年間で警察業務の多くの部分が民営化されていくだろうという記事もあった。それって、国家にはもう国民の安全を守るつもりはないから、それぞれに自分で我が身は守りなさいよ、ってこと? 今でも途上国では事実上の無法地帯となっているところが広がっている気がするけど、それがいわゆる先進西側諸国でも始まりつつあるってことなんでしょうか?
http://www.guardian.co.uk/uk/2012/jul/02/police-forces-cut-5800-officers?CMP=EMCNEWEML1355

裁判所がツイッターに、オキュパイ運動の活動家の3カ月分のツイートの提出を命じる。:全然読んでいないけど、タイトルとリードと最初の数行から、すっごくイヤ~なニュース。警察官を削減し、業務を民営化して、警察は国民の安全を守るのではなく国民を支配する政府軍と化すのか???
http://www.guardian.co.uk/world/2012/jul/02/twitter-release-occupy-prostest-tweets?CMP=EMCNEWEML1355

「この道を歩いてる」ブログのエントリー「大飯原発の再稼働について、現場で起きていた本当のこと」:胸が熱くなりました。
http://blog.goo.ne.jp/suzuki_juju/e/50e69beb6749d32bb760f2f21af30ba0

日本。児童虐待。10歳少女に告訴能力…1審判決破棄・差し戻し:よかった。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120703-00000859-yom-soci
2012.07.05 / Top↑
前のエントリー「英国の社会的包摂施策」を書きましたの添付資料です。


社会的包摂:主要メッセージ

1. 排除への取り組みは、サービス利用者をあらゆるレベルで動員することなしには成功しない。排除されている人々と協働する共生産的アプローチが、サービス開発・実施のすべてのレベルで不可欠である。

2. 社会的包摂とは単なる再就労の問題にとどまらず、もっと幅広い社会参加の問題である。多くの市民が当たり前と考える社会的、経済的、教育的、また娯楽・文化的機会と医療サービスにアクセスする権利が、全ての人にある。

3. 社会的包摂は単なるアクセスの問題にとどまらない。社会的包摂は主流サービスへのアクセス改善の問題にとどまらず、被雇用者として、学生として、ボランティアとして、教師として、介護者として、親として、アドバイザーとして、住民として、すなわち能動的市民としてのコミュニティへの参加の問題である。

4. 従来の縄張りを超えて働きかける必要がある。包摂に向けた障壁軽減のためには、あらゆるレベルで縦にも横にも官民の機関間の取り組みを統合し、個々人の経験に直接的に繋がりながら施策や実際の取り組みに働きかけていく必要がある。

5. 社会的包摂はパートナーシップによる取り組みが支えである。全体とはバラバラの部分の集合のことではない。地域参加や能動的市民性を支援し社会的資本を構築するためには、あらゆるセクターの機関がそれぞれの間をつなぐ橋を築くことが必要となるが、それはパートナーシップによる取り組みで実現できる。

6. 排除された多くのグループにとって、社会的包摂は中心的な問題である。精神障害のある人、高齢者、認知症の人、障害者にとって、包摂とは、予防、健康増進、持続的な支援、許容度が高く暮らしやすい地域づくりの問題である。

7. 公セクターの義務は積極的義務である。差別解消への取り組みとして平等と機会を積極的に増進することは、心身の障害をめぐる公セクターの義務である。排除を起こす障壁の撤廃には、平等促進のための法的手段がカギとなる。

8. 一人ひとりのアイデンティティが回復と包摂に繋がる。人は単なるカテゴリーや診断名ではなく、また単に満たすべきニーズを持つ存在でもなく、貴重な貢献ができる存在である。自分が所属する多くのコミュニティで得られる機会にアクセスでき、能動的市民として貢献し評価されるよう、支援するサービスが必要である。

9. 包摂を促進するためには差別化されたサービス提供を主流のサービスに統合する道筋が必要である。コミュニティで差別された一部のみを対象とするグループや活動は、誰でもアクセス可能な主流サービスへと統合していく支援の一環と位置づけられない限り、差別を強化する恐れがある。

10. メンタルヘルスと満足できる生活のためには健康的な職場が必要である。休職や失業の原因として多いのは、その他の労働関連病よりもストレス、うつ病と不安症。許容度の高い環境を提供し、肯定的で本人の力を引き出す態度で接することにより、職場と学習環境はメンタルヘルス向上を支援する必要がある。

「介護保険情報」6月号掲載
2012.07.05 / Top↑
近年、日本でも「社会的包摂」という言葉を耳にすることが増えてきた。ほんの概要に過ぎないが、英国の社会的包摂施策について調べてみた。

英国では2004年から09年まで「全国社会的包摂プログラム(NSIP)」が実施された。ブレア首相が1997年に内閣府に設けた「社会的排除(Social Exclusion)局」が2004年6月に、メンタル・ヘルスの問題がある人の雇用をはじめ社会参加を阻んでいる問題を軽減・削除することによって生活改善を図る行動計画“Mental Health and Social Exclusion”を発表したのがスタートだった。政府内の各省横断型の計画で、さらにボランティア、サービス利用者、精神科医療職など、様々なセクターと連携を図りつつ社会的包摂の実現を目指そうとする行動計画である。行動の対象カテゴリーとして挙げられたのは「スティグマと差別」「社会的排除への取り組みにおける医療と社会ケアの役割」「雇用」「地域参加」「基本的権利」「実現に向けて」の6つ。

それを受けて同年10月に刊行された具体的な行動指針“Action on Mental Health”では、さらに「雇用」「収入と福祉手当」「教育」「住居」「社会的ネットワーク」「地域参加」「ダイレクト・ペイメント」の7つのプロジェクト・エリアが示された。また06年には首相戦略局からも行動計画“Reaching Out: An Action Plan on Social Inclusion”が発表されて、NSIPを後押しした。

NSIPの4年間は09年3月に刊行された報告書“Vision and Progress: Social Inclusion and Mental Health”によって、「地域の動員」「雇用」「教育と技能」「住居」「芸術と文化」「リーダーシップと要員」「社会的包摂の取り組み:能力の高い要員と我々の仕事の譲渡可能性」の7つの中心領域ごとに総括されている。それぞれの領域で多様な関係者に働きかけを行い、それらを横断的に結び付けてリーダーを養成し、地域の文化に社会包摂的な変容を起こそうと取り組みが展開されてきた。もちろん、4年間で達成できるようなことではない。NSIPプログラム・ディレクターであるディヴィッド・モリス氏は前書きで次のように書いている。

「このプログラムを進めるに当たり重要なのは削除主義に抗うことであった。変化の過程で、個々人の複雑さやコミュニティの相互依存的性格を単独の要因や目的に矮小化してしまえば、ことは単純になるが、そこには人の生活の複雑さを過小評価するリスクが伴う。我々の出発点は、このことを認識し、そこから目的を広く共有するコンセンサスを築くことであった」
「それが我々の出発点であったとしても、終着点は存在しないことを認めなければならない。考え方や複雑な組織の縄張りを超えてサービスを変容させることを通じて、現在も文化的変容を果たすべく取り組みが続いている。全人的アプローチは全システム対応を必要とする。それらはいずれも単純なものでも短期に達成できるものでもない」

モリス氏は09年3月末でNSIPが終了した後も、セントラル・ランカシャー大学の地域、権利と包摂国際学部で包摂研究所(Inclusion Institute)を率いて、学問領域と現場とのパートナーシップによる社会的包摂のエビデンス基盤の構築、NSIPで作られた地域資源の活用と包摂施策の実施の支援、組織やコミュニティの変革のための人材育成など、取り組みを続けている。

09年の報告書でも包摂研究所のHPでも興味深いのは、co-production(共生産・共に作ること)が強調されていることだ。元は米国の市民権弁護士エドガー・カーンによって広められた概念だという。その人なりの経験や能力や技能を持つクライエントを「資産」と捉え、仕事を広く定義しなおし、相互作用としての関係性や人との繋がりを重視しつつ、クライエントと専門家とがサービス開発・実施プロセスにおいてパートナーとして協働すること。これは、メンタル・ヘルス・サービスの利用者の多くがまさに専門家の“ボックス”こそが問題なのだと語ることから、NSIPは“そのボックスの外側で”考え行動することを目指した、とモリス氏が報告書の前書きで書いたことと重なるだろう。

ちなみに社会的排除について、包摂研究所のHPでは以下のように定義されている。「社会的排除は、人びとあるいは地域が相互に関連し合った問題、たとえば失業、技能の不足、低収入、粗末な住居、高い犯罪率、不健康、家庭崩壊などを複合的に抱えた時に起こる。その特徴は、相互に関連し合った問題が互いに増幅し合うことにある。それらが複合すると問題が急速に複雑化する悪循環となる」。この定義に基づいて、同研究所はNSIPが掲げたのと同じ10のメッセージを再掲している。以下に全文を仮訳してみた。

「介護保険情報」6月号掲載


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2012.07.05 / Top↑