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ドイツが22年までにすべての原発を閉鎖する、と。
http://www.washingtonpost.com/business/economy/germany-to-close-all-of-its-nuclear-plants-by-2022/2011/05/30/AG0op1EH_story.html?wpisrc=nl_cuzheads

日本の地震と津波が、予想以上に米国経済の回復の足を引っ張っているらしい。
http://www.usatoday.com/money/economy/2011-05-30-cnbc-us-economy-japan-quake_n.htm?csp=Dailybriefing

英国のGPですい臓がん患者として自殺幇助合法化に向けてDignity in Dyingで運動してきたAnn McPherson医師が死去。
http://www.guardian.co.uk/society/2011/may/30/assisted-suicide-campaigner-ann-mcpherson

米国下院でFDAへの予算削減案が出てきているらしい。そんなことをしたら5か月前にできたばかりの食品安全法の実効が危うくなる、と食品安全アドボケイト。:今でも予算不足から(だけでもないとは思うけど)、医薬品も医療機器も認可のプロセスがいい加減だと内部告発まで出ているのに。
http://www.washingtonpost.com/politics/food-safety-advocates-decry-fda-cuts/2011/05/27/AGzY7yEH_story.html?wpisrc=nl_cuzheads

スポーツなどの練習中に子どもが脳しんとうを起こしたら、iPhoneなどのアプリでQ&Aに応える形で脳しんとうかどうかを診断します、というサービスが4ドルで始まった。ちゃんとCDCのデータを使用し、そのデータを使って予防プログラムの作成に関わった医師が始めたアプリ。そういえば「お子サマに最適なスポーツと脳しんとう予防を」という謳い文句の遺伝子診断商品もあったな。
http://www.washingtonpost.com/national/app-helps-diagnose-concussions-in-youth-sports/2011/05/26/AG0xiwEH_story.html?wpisrc=nl_cuzheads

母乳で育てられた子は将来悪いことをするようになる確率が低い……かもしれない? という調査結果。:でも、その「将来」って「5歳時」のことみたいなんだけど、「5歳」段階で「問題行動」があるかどうかを母親への面接とアンケートで調べた、と。その「問題行動」が具体的にどういう行動のことなのかは記事には書かれていないように思うのだけど、bad behavior, behavior problemsという用語が使われているだけに、その内容が気になる。なにしろ2歳から5歳の子どもたちが落ち着かないとか眠らないといって向精神薬の多剤投与が行われている実態もあるので。
http://www.washingtonpost.com/national/bad-behavior-may-be-less-likely-with-longer-breast-feeding/2011/05/23/AGQ1nxEH_story.html?wpisrc=nl_cuzheads

【関連エントリー】
子どもに安定剤飲ませ過ぎ(2008/4/17)
双極性障害で抗精神病薬を処方される2-5歳児が倍増(2010/1/16)
2歳で双極性障害診断され3種類もの薬を処方されたRebeccaちゃん死亡事件・続報(2010/2/22)
拘留施設の子どもらの気分障害、攻撃的行動に抗精神病薬?(米)(2010/10/6)
「製薬会社に踊らされて子どもの問題行動に薬飲ませ過ぎ」と英国の教育心理学者(2011/1/18)
2011.05.31 / Top↑
「人体の不思議展」問題で京都府警が立件を見送り。:「生命倫理」通巻20号(2009)に、福島県立医科大学の末永恵子氏が「『人体の不思議展』の倫理的問題点について」という論文を書き、種々の倫理問題があるが現在の法律では取り締まりは「不可能に近い」と指摘し、遺体の研究・教育目的での使用を包括的に規制する「人体基本法」を構想すべきであるとのヌデ島次郎氏の提言に同感だとしている。末永論文はこちらのサイトから読める。そういえば、生活保護者の遺体を勝手に献体していた自治体もあった。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110530-00000033-mai-soci

UNICEFが各ワクチンの購入契約価格を公表。:ずっと前から「金持ちはゼニを出せ」と掛け声が繰り返されて慈善の名のもとに世界中からカネが集められてきたというのに、これまで公表されてこなかったというのも、公表した途端に「透明性」を云々し始めるというのも、考えてみればすごい話。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/226855.php

キリスト教系の団体が神の仕事を遂行するに当たってゲイツ財団のカネに頼ることはどうなんだろう、との問題を考察している人がいる。結論は、どうやら「やめておくべき」のようなのだけど、こういう問題提起が出てきたということは、そういう状況があちこちで想定されている、ということでもあり……。
http://blogs.christianpost.com/christianlife/2011/05/biblical-principles-of-funding-gods-work-will-you-take-from-bill-gates-27/

緊縮予算で援助予算への批判が高まる中、英国のCameron首相が途上国へのワクチン支援の増額を約束。
http://www.guardian.co.uk/global-development/2011/may/29/david-cameron-makes-vaccine-pledge?CMP=EMCGT_300511&

AgeUKの調査で2014年までに65歳以上の100万人が介護サービスを失う。
http://www.guardian.co.uk/society/2011/may/30/social-car-failing-disabled-pensioners-says-report?CMP=EMCGT_300511&

先のOECDの報告書で2位だったオランダでも介護費用カットの動き。オランダもダイレクト・ペイメントみたい。
http://www.dutchnews.nl/news/archives/2011/05/ministers_may_slash_personal_c.php

泥棒で捕まった男が、裁判で5人の子どもの面倒をみる人間が他にいないので自分が収監されることは子どもたちの利益を損なうと説いて、判決を覆した。:記事に寄せられたコメントは、「では、子どもたちを保護・養護する社会保障制度は何のためにあるのか」と非難ごうごう。私は、監獄が過密状態になって始末が負えなくなっていること、児童保護施設も同様の状態になっていること、などなどの事情を考えてしまった。どちらもゼニがかかることだから。男を家に戻せば、親子6人の生活は男の個人的な責任に戻せるわけで。
http://www.thisisnottingham.co.uk/news/Burglar-sentence-overturned-look-children/article-3603808-detail/article.html

米で子宮外妊娠のケースが出産に。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/226848.php

女の子たちの初潮年齢がどんどん下がってきているらしい。
http://www.medicalnewstoday.com/releases/226570.php

EUで唯一、離婚が違法だったカトリック国マルタ島が、ついに離婚を合法化。
http://www.guardian.co.uk/world/2011/may/29/malta-votes-yes-legalising-divorce?CMP=EMCGT_300511&
2011.05.30 / Top↑
これ、まだ読めていないけど、この2日間で一番気になるニュース。先進国でショック症状を起こした子どもへの一般的な治療として大量の水分点滴などFeastと呼ばれる療法が行われているが、アフリカでの治験で死者が続出し、治療に大きな疑問符がついた。:気になるのは、ここでも先進国の子どもたちの治療の実験がアフリカの子どもたちで行われていること。
http://www.guardian.co.uk/society/2011/may/26/shock-treatment-feast-trial-results?CMP=EMCGT_270511&

アフリカがビッグ・ファーマの非人道的な人体実験場と化していることについては、こちらのエントリーでちょっと触れた ↓
ゲイツ財団がコークとマックに投資することの怪、そこから見えてくるもの(2011/3/9)

それから、ゲイツ財団と提携しているLancetにも、グローバルな治験の基準緩和を求める論文があった。それについては、こちらに ↓
Lancet最新号はゲイツ特集か:HIVに死産にワクチン、それからこれはコワいぞ「グローバル治験条件緩和」(2011/5/9)

HBOのテレビ映画「オレゴン式死に方」の詳細。オレゴンの尊厳死法で自殺したターミナルな患者さん6人の決断から実行までを詳細に記録し、抑制したタッチで描いたものとのこと。実際に息を引き取る場面もあるような……?:1分ちょっとのYouTube映像もあるのだけど「お住まいの国には公開されていません」と出たのには、絵が出ないことにはほっとしつつ、お住まいの国や地域までが特定されてしまっていることにはゾッと。
http://www.salon.com/entertainment/tv/feature/2011/05/25/how_to_die_in_oregon

FEN事件のEgbert医師を「新たなDr. Death」と命名し、Batlimore Sun紙が「ターミナルでもない患者を、障害があるというだけの理由で自殺させた彼の行状は、自殺幇助合法化議論における障害者らの最悪の懸念を裏付けるものだ」と。:同感。こういうことをきちんと言ってくれるメディアが英でも米でも急速に減っているだけに、ありがとう。
http://www.baltimoresun.com/news/opinion/bs-ed-suicide-20110525,0,2918008.story

5月3日や5月13日の補遺で拾って来た「自殺キット」、どうやら、あちこちで密かに売られていた様子。取り締まりの動き、広がる。同時に自殺幇助合法化議論も再燃。
http://www.wdtimes.com/news/national/image_07dc061a-d7c9-59b4-9d36-93b5e1ce5e7d.html
http://www.ajc.com/news/nation-world/suicide-kits-rekindle-debate-958471.html
http://www.istockanalyst.com/business/news/5187403/assisted-suicide-opponents-respond-to-the-shut-down-of-assisted-suicide-kit-business-in-san-diego-according-to-californians-against-assisted-suicide
http://washingtonexaminer.com/news/2011/05/suicide-kits-rekindle-debate-assisted-suicide-0

ケアの質コミッションがNHSの高齢者ケアは「尊厳も栄養も、てんでなってない」とボロクソ。
http://www.guardian.co.uk/society/2011/may/26/nhs-failing-in-care-of-elderly-patients?CMP=EMCGT_260511&

NYTに、善玉コレステロールを上げても心臓病には効果がないという研究結果が出た、と。
Study Questions Treatment Used in Heart Disease: Surprising results suggest that raising patients’ good cholesterol did not seem to matter against heart disease.

やっぱりビッグ・ニュースか。善玉コレステロールのニュース、WPにも。こちらは全文読めます。私は読めていませんが。
http://www.washingtonpost.com/national/boosting-good-cholesterol-useless-study-finds/2011/05/25/AGXnK0BH_story.html?wpisrc=nl_cuzheads

またもProPublicaの調査報道。ビッグ・ファーマが自社と競合するジェネリック製品の足を引っ張るために、学会や研究者らに手をまわし、ジェネリック製品の安全性に疑問を呈する書簡をFDAあてに送らせていたことが明らかに。
http://www.propublica.org/blog/item/e-mails-show-drug-company-used-third-party-medical-groups-to-influence-regu

豪で、認知症患者の徘徊に対応すべく、GPSなどのトラッキング装置の利用が説かれている。「安全を確保しつつ介護者への依存から解放し、自由に行動してもらうことができる」。:「科学とテクノロジーの簡単解決文化」の背景にいる利権は常に「本人のため」という美辞麗句を武器にしている?
http://www.computerworld.com.au/article/387997/gps_device_free_dementia_sufferers/

妊娠中にビタミン・サプリを飲むと、自閉症の子どもが生まれる確率が下がる。:……もしや究極の「本人のため」?
http://www.medicalnewstoday.com/releases/226412.php

趣味で古いピンボール・マシンを収集した人が、それらを並べて博物館にしたところ、広さが規定通りでないとして閉鎖の憂き目に。:写真を見るだけでも楽しそうだけど。
http://www.washingtonpost.com/local/national-pinball-museum-to-close/2011/05/23/AFa1149G_story.html?wpisrc=nl_cuzheads
2011.05.27 / Top↑
何度か補遺でも拾っているけど、
OECDから先日、介護に関する報告書が出された。

予想に反して「高齢者への介護の提供」度で第3位だったことを寿ぐ
ノルウェイの英語ニュースがあり、短いものでもあり、興味もあるので、

一応メモとして、内容を以下に。


ノルウェイは高齢者介護にGDPの3.5%を使っており、
スウェーデンとオランダに次いで3位。

GDPの2.2%が介護費用に充てられる予算編成と
介護関連施策とで高齢者介護制度が維持されている。

高齢者の3.9%が介護サービスを利用しており、
その4分の3は在宅ケアを受け、残り4分の1がナーシング・ホームに入所。

労働人口の2.9%が高齢者介護分野で働いており、
その比率はスウェーデンに次いでOECD諸国の中では2位。

ノルウェイの統計局(?)の試算では
2050年までにその割合を5.6%に挙げる必要がある、とのこと。

Norway is the world’s third best country in the world in providing care for the elderly, according to a study by the Organization for Economic Co-operation and Development(OECD)
The Foreigner, May 26, 2011


オランダが2位……。ふむ。

北欧もたしか、優生思想が根強いんでしたっけね……。



なお、補遺で拾ったのは、以下の2つ ↓

http://blogs.yahoo.co.jp/spitzibara/63316841.html
http://blogs.yahoo.co.jp/spitzibara/63321412.html
2011.05.27 / Top↑
英国の23歳のラグビー選手が事故で首から下が麻痺した状態となって絶望し
両親に伴われてスイスのDignitasで自殺した08年9月のDaniel James事件は
自殺幇助合法化議論で「すべり坂」の典型例として言及されることの多い事件ですが、

そのDanielさんの主治医が、
Dignitasヘ行って自殺しようとしている彼の意図を認識しており、
その意図を表明した文書まで目撃していながら
出発してしまった当日まで警察に知らせなかったことが明らかとなり、
論議を呼んでいます。

チューリッヒへ向かう前にも何度か自殺未遂を繰り返しており、
死の6か月以上前に主治医であるGPは精神科医に紹介した、とのこと。
その時の精神科医の判断は、自己決定能力はある、というもの。

GPが署名入りの幇助自殺意図を明示した文書を見たのは8月28日。
Danielさんがスイスに向けて旅立ったのは9月9日のことでした。

Dignitasでの自殺は9月12日。

GPは守秘義務のために警察に通報しなかったと主張し、
警察は、守秘義務を盾に取られると自殺幇助事件の捜査が困難なので、
医療職の責任を明確にしてほしい、と求めている、とのこと。

GP knew paralysed rugby player intended to die at suicide clinic but didn’t tell police
The Daily Mail, May 26, 2011


26日午後8時前現在、
この記事には15件のコメントが寄せられており、
そのうち新しい順に6件と古い順に6件の合わせて12件を読んでみたところ、
1件が「こんなに若いのになんて悲しい」というだけのもので
その他11件すべてがGPの行動を支持するものでした。

それぞれへの評価も、いずれも支持のみ多数。

支持の根拠は、守秘義務と同時に、死は自己決定権だという意見と、
ちょっと気になるものとして「QOLが低くなって可哀そうに、
それでは死にたくなるのも無理はない」というものも。


「守秘義務」という切り口で言えば、
非常に難しい問題なのだろうとは私も思うのですが、

それ以前に、
事故で障害を負った人が自分の障害を受容するためには時間と支援が必要であり、
彼と同じ経験をした人の中には一定の悲嘆の時間を過ごした後に
そこをくぐり抜けて現実を受け入れ、生きる希望を取り戻す人もあることを
主治医は知っているはずであり、

だからこそ、彼を精神科医に紹介したのでは、とも思えたりもするので、

守秘義務以前の問題として、

両親や精神科医や地域の支援の人的資源と連携しつつ、
生きる方向での支援を模索できなかったのか……。

中途障害を負った患者に対するGPの対応や支援の姿勢の問題として、
考えるべきことが、この事件にはあるのではないか、と思う。


【追記】
このエントリーをアップした際にYahooブログが勝手に拾ってきた
人さまのブログ・エントリの中に、英国在住でカウンセリングを受け始めた方のお話があり、
クライアントに自殺しそうな行為が見られた場合、カウンセラーは守秘義務を破ってでも
「異例の処置」をとりGPに連絡する、との説明を受けられたそうです ↓

カウンセリング初回(2008/8/24)


【27日追記】
この問題で続報ありました ↓

http://www.independent.co.uk/life-style/health-and-families/health-news/agony-of-helping-a-son-to-kill-himself-2289710.html

http://www.telegraph.co.uk/health/healthnews/8537130/Family-doctor-knew-rugby-player-wanted-to-die-in-clinic-but-did-not-tell-police.html


【James事件関連エントリー】
Dignitasの自殺幇助で英国警察が捜査へ0(2008/10/17)
息子をDignitasで自殺させた両親、不問に(英)(2008/12/10)
2011.05.27 / Top↑
HBOのテレビ映画“How To Die In Oregon(オレゴン式死に方)”がカンヌ映画祭に。:HBOと言えば、Kevorkian医師の半生記映画 ”You Don’t Know Jack”を作ったところ。
http://news.yahoo.com/s/nm/20110524/film_nm/us_assistedsuicide

Bill Gatesが金持ち国は貧しい国の農業振興にカネを出せ、と。:いよいよ始動ですね。ワクチンの次なるゲイツ財団の「途上国の農業支援」という名のGM農業新興・慈善資本主義。新たな科学とテクノロジーによるグリーン・レボリューション。
http://www.theglobeandmail.com/news/world/africa-mideast/bill-gates-urges-rich-countries-to-fund-poor-farmers/article2033487/

Bill Gatesがニュー・オーリンズのロータリークラブのカンファで、ポリオ撲滅を説いた。:2月9日の補遺でも書いたけど、私が奨学金をもらって留学した1980年代から、国際ロータリー・クラブはワクチンによるポリオ撲滅運動を熱心にやっておられました。それから30年も経って、まだ撲滅かなわぬなら、それはワクチンではなく別の方策を試みるべきだということでは?
http://www.google.com/url?sa=X&q=http://www.nola.com/health/index.ssf/2011/05/bill_gates_pushes_fight_to_end.html&ct=ga&cad=CAEQARgAIAAoATAAOABAuZPy7gRIAVAAWABiAmVu&cd=3oD6AKqd1jg&usg=AFQjCNGOMDARbOqjY_9pPE-KynuWUuQAyw

英で「勃起薬つき夢のコンドーム」という記事を昨日、週刊ポストで読んで検索してみたら以下の日本語記事があった。「勃起薬」の主成分はニトログリセリン。:おいおい……。
http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20110525/dms1105251535012-n1.htm

英国政府が性教育に関するご意見番に、いかなる状況下でも中絶を認めず、避妊ではなく禁欲を説くチャリティLifeのメンバーを任命。:子どもには禁欲を説き、女性には中絶を認めない一方で、永遠に勃起し続ける夢だけは追いかける、DV夫のような英国。
http://www.guardian.co.uk/society/2011/may/24/abortion-sexual-health-coalition?CMP=EMCGT_250511&

米国では医学生の段階から製薬会社のマーケティング攻勢を受ける。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/225641.php

ジョンズ・ホプキンス大の研究者らが体外受精で複数の遺伝病をオミットできる新たな着床前遺伝子検査を開発。
http://www.medicalnewstoday.com/releases/226225.php

これは、かなり気になるニュース。カナダの健康被害関連の訴訟で「遺伝子特性」が問題になるケースが増加し、そのことによって職場や環境などの社会要因が軽視される傾向が出てきていると、CMAJに掲載された調査。
http://www.medicalnewstoday.com/releases/226026.php

同じくCMAJに、カナダの腎臓障害のあるアボリジナルの子どもは、同じ障害のある白人の子どもより腎臓移植を受けられる確率が低い。
http://www.medicalnewstoday.com/releases/225639.php

ミシガン大の研究者の調査で、長期に呼吸器を使っている子どもには、もっと緩和ケアや訪問医療が必要、との結果。
http://www.medicalnewstoday.com/releases/226346.php

インドで過去10年間に「女の子だから」という理由で600万の中絶が行われた。特に第1子が女児で、次の子が女の子の場合。
http://www.guardian.co.uk/world/2011/may/24/india-families-aborting-girl-babies?CMP=EMCGT_250511&
2011.05.25 / Top↑
2009年の法案提出は当ブログでも拾っており、もうこれが3回目だったとのことですが、
またもテキサス州の「無益な治療」法改正法案は実らなかったようです。

2008年11月段階での米国の「無益な治療」法の状況は
以下のエントリーでざっと眺めていますが、

生命維持の中止まで免罪する「無益な治療法」はTXのみ(2011/1/21)

医学的に効果がなく無益または不適切だと判断した治療を拒否することを
医療提供者に認めている州は当時で10州程度。

(程度というのは、どの州かという情報が
当ブログではまだ部分的に混乱しているためです)

ただし、TX以外の州は
患者の希望に沿った治療の続行を引き受ける医療機関に移送するまでの期間
生命維持だけは続けることを義務付けており、

患者が転院先を見つけるための10日間の猶予が過ぎたら、
一方的に生命維持を停止することまで認めているのはTX州のみ。
(それは現在に至るまで変わっていないと思います)

Bryan Hughes下院議員らが求めている改正は、他州と同じく、
本人や家族が望むなら転院可能になるまで生命維持の続行を義務付けよう、とするもの。

同議員は、
「時と共に、我々のところに届く、ひどい扱いを受けたとか、
家族や大切な人が終末期にどんな目にあわされたかというホラーのような話が
どんどん増えてきている」

「ありがたいことに、大半の病院と大半の医師は無益な治療法を悪用してはいないが
中にはそういう病院や医師もいる。彼らに切り捨てられている人たちは現にいるのだ」とも。

同議員は、また「法案は流れても修正条項という手はある」。

もともと私が初めてテキサスの「無益な治療」法について知った
Gonzales事件を巡る07年の議論では、病院側は、金銭問題は全く考えていない、
ただ延命効果のない治療がGonzalesくんを徒に苦しめているだけだから
倫理委が無益な治療は止めることが本人の最善の利益だと判断した、と
説明していました。(もっとも倫理委は非公開でした)

議論の論点は治療の救命可能性と患者に与える苦痛の2点のはずでした。
救命可能性がないにもかかわらず患者に苦痛を与えるなら、それは無益な治療だと
主張されていたのです。少なくとも表向きは。

そして、当時は
無益な治療判断はコストとは切り離して考えるべきだと説く倫理学者が
まだ主流のように見えました。

もっとも、Peter SingerやNorman Fostといった先鋭的な倫理学者は
既にコストを云々していましたが、彼らの無益論は当時から既にして
そもそも「治療の無益」性を問題にしない「患者の無益」論でした。

そして、ほんの4年の間に、SingerやFostのようなことを言う人の方が多数派となり、
いつのまにか「無益な治療」訴訟が報道される時にコストがあげつらわれることが増え、
この記事でも、当たり前のように、以下のデータが挙げられています。

・1人の植物状態の人に1年間、生命維持治療を行うと6万から8万ドルがかかる。

・平均的な人は一生の内にかかる医療費の10から15%を最後の1年間に使い、
 そのコストは通常、民間または政府の医療保険によって支払われる。
 無保険など慈善ケースとなれば病院が支払うことになる。

Texas End-of-Life Bills Appear Dead
The Texas Tribune, May 23, 2011


これでは、
この記事が読者に投げかけている問いは完全に
「これだけのコストを費やして植物状態の人に生命維持治療を行うことの是非」であり、

「個々のケースの治療の無益性」という
本来の「無益な治療」論の倫理問題は全く無視されてしまっている。

SingerやFostらによるグズグズの議論の横行によって
こんなふうに、いつのまにか、なし崩し的に議論の論点そのものがズラされていくこと、
その「いつのまにか」に気付かないまま、世論がそれに誘導され、
まるで騙し絵のように別物になった議論の論点を受け入れてしまうことこそが
「死の自己決定権」議論で起こっているのと全く同質の「すべり坂」だし、

「すべり坂は起きてない」、「起きているというならエビデンスを出せ」と言う彼らこそが
学者とも思えない論理性を欠いた不誠実な議論でもって「すべり坂」を演出し、
敢えて「すべり坂」を起こしている仕掛け人ではないのか……?


そして、そこに「無益な治療」などという名前はくっついていないけれど、
本来は「個々のケースにおける丁寧な判断」という問題であるはずの「終末期医療」を巡る議論が
「年寄の医療は全部、無駄な延命」、「呼吸器も透析もすべて延命」また「ダンディな死に方」などといった

ひとくくりの線引き論や、美意識の問題に、いつのまにか摩り替えられてしまっている
日本の終末期医療法制化の議論でも、全く同じ仕掛けや操作が行われているのでは?


【Gonzales事件関連エントリー】
テキサスの“無益なケア”法 Emilio Gonzales事件(2007/8/28)
ゴンザレス事件の裏話
生命倫理カンファレンス(Fost講演2)
TruogのGonzales事件批判
2011.05.25 / Top↑
昨日の補遺で拾ったOECDの介護費用に関する報告書について、あちこちの反応。上が英アルツハイマー病協会からのもの。
http://www.alzheimers.org.uk/site/scripts/news_article.php?newsID=972
http://www.citywire.co.uk/money/oecd-paying-for-care-of-elderly-out-of-income-is-unaffordable/a493145?ref=citywire-money-latest-news-list

「抗がん剤はダメだけど自殺幇助はOK」とメディケアから通知が来るOR州で、カトリック系の病院のホスピスが健闘している。:この記事はちゃんと読みたい。今のところ読めないまま拾っておく。
http://www.catholicsentinel.org/main.asp?SectionID=2&SubSectionID=35&ArticleID=15196

福島の原発事故の後もBill Gatesが原発推進で大いに気を吐いていることについて、「Gatesの口が向かうところ、彼のゼニが投資されている」と指摘する経済記事。特にES, SHAW, DNNという3つの会社。:こういう情報を見て金融トレンドを読んでは投資することが肝要。だから、ワクチンも原発も、リスクとは無関係に既定路線……ということになるんだろうな……と。しかし「ゲイツの口が向かうところ、彼のゼニが投資されている」とは突いている。やっぱ彼がしゃべるところは株価、上がるんだよ。だって、そういうのが慈善ゲイツ資本帝国主義なんだもん。たぶん。
http://www.smallcapnetwork.com/After-Fukushima-Bill-Gates-Likes-Nuclear-Energy-Should-You-ES-SHAW-DNN/s/article/view/p/mid/1/id/1912/

ジュリアン・アサンジは次のビル・ゲイツになるか? という記事。次のゼニ儲けのチャンスは、そうした反エスタブリッシュメントの分野になるだろう、って、ロクに読んでいないけど、たぶん。:ビル・ゲイツの王国と化していく世界だけでも私には十分に恐ろしいんだけど……いや、待て。ゲイツ王国はアンチではないけれど、確かにエスタブリッシュメントを無化しつつあるような……。ゲイツが無化、無力化して行ったあとで、アサンジの反が動き始めるってこと? それって、どんな世界……?
http://www.pcmag.com/article2/0,2817,2385752,00.asp

英国Cameron首相の「大きな社会」構想って、けっこう中身が変化しているらしくて、現在のが、例の「英国のビル・ゲイツ出て来い」と寄付を募ることを加味したヴァージョン4.0なんだとか。
http://www.guardian.co.uk/politics/2011/may/23/stand-by-big-society?CMP=EMCGT_240511&

英国自殺幇助合法化運動の広告塔Debby Purdyさんが、新たな症状を抑える薬をトラストに出してもらうための闘いを続けていることは、3月にエントリーにしたけれど、その続報。十分な治療が受けられないために自殺幇助を求めることになっても、それが「死の自己決定権」で正当化されてしまう理不尽に、あなたはこれを機に気付くべきでは? そして、その「死の自己決定権」こそ、あなたが一昨年までしきりに英国で声を張り上げて世論に根付かせてきた概念に他ならないということにも。
http://www.bbc.co.uk/news/uk-england-leeds-13509108

英国NHS改革法案がずうっと揉めているんだけど、よその国の医療制度の詳細まで首を突っ込む勇気がない。自分の国の医療制度だってロクに知らない内にコロコロかわってワケが分からないのに。
http://www.guardian.co.uk/society/2011/may/23/nhs-bill-scrutiny-listening-exercise?CMP=EMCGT_240511&

アフガニスタンの野戦病院で器具の消毒が十分でないため、多くの兵士らが肝炎やエイズなどに感染の恐れ。「兵士や契約社員たちが」とあるのが目を引いた。:同じ仕事をして同じ状況で同じ病気に感染しても、後者の人たちは十分な補償が受けられないのでは?
http://www.canberratimes.com.au/news/national/national/general/blood-disease-scare-for-australian-troops-in-mideast/2172469.aspx

Missouri州に50年ぶりの巨大竜巻。116人死亡。:昨日の夕方、CNNで遠くからやってくる竜巻の映像をちらっと見た。怖かった。自分たちが生きている間、地球はもってくれるんだろうか……と最近思う。
http://www.guardian.co.uk/world/2011/may/23/missouri-town-joplin-ravaged-tornado?CMP=EMCGT_240511&
2011.05.24 / Top↑
生殖補助医療で子どもを産もうと計画していた
オーストラリア、ニューサウスウェールズ州のEdwards夫婦。

2人はIVF治療を始めることを決め、契約書にサインすることに。
ところがその前日、職場での事故で夫は死んでしまう。

夫の死の数時間後には妻は
夫の遺体から妻子を採取して冷凍保存するよう
裁判所の緊急命令をとりつけ、実行された。

ところが夫は死後の精子利用についての同意書にサインしていない。

2008年の the NSW Assisted Reproductive Technology Actでは
死後の精子の使用には本人の明示的な同意が必要とされるため
クリニックの方がその精子を使うことを拒否。

妻のJocelyn Edwardsさんが裁判所に使用の許可を求めていたケースで、
NSW 最高裁はMarkさんの精子をJocelynさんのproperty(所有物、財産)と認めた。

09年のバレンタインデーに夫のMarkさんは
「僕に何かあっても、ボクの一部はキミと一緒に生きてほしい。
赤ちゃんを産むって、約束しておくれ」と妻に語っていたという。

それが夫の同意とみなされた。

しかし、依然としてNSW州の州法は
亡き夫の精子を使って妊娠することを禁じているため、
Jocelynさんは生殖補助医療を受けるには別の週または他国にいくことに。

今回のケースでは
夫妻が子どもを産みたいと願っていたことが明らかだったので
例外的な判断だとする専門家もいるが、

一方、規制のない州では2007年に連邦政府が出したガイドラインで
「明確に表明または目撃された同意」があれば書面での同意までは求めていないことが
基準になる、という専門家もいる。

Woman wins right to dead husband’s sperm
The Canberra Times, May 24, 2011


この記事だけからではなんとも言えないとは思いますが、
亡き夫の精子を妻の「財産」と判断するなら、
夫の意思とは無関係に妻が利用できることにはならないのかな……という点が、
とても素朴に疑問のまま。

夫が使ってほしいと生前語っていたから
夫から妻に贈与された「財産」ということになる……ということ?
2011.05.24 / Top↑
FEN事件の逮捕者の1人Egbert医師が自宅でインタビューに応えて、これまでに300人の自殺を幇助した、と。それ自体は逮捕時にも出てきていた情報だけど、「我々には、いつどのような死に方をする権利があるとWe believe」「犬は安楽死させるのに、自分の母親が苦しんでいるのは見ているしかないのはおかしいと考える医学生は増えていますよ」。病気で下半身がマヒした男性の幇助に行ったら、多くのイトコが集まって感謝とお別れの言葉が交わされたとして、”It was beautiful.”: Arizonaの事件では起訴されたものの先月無罪判決。もう1つ、Georgia州でも起訴された事件があり、それはこれから。
http://www.baltimoresun.com/news/maryland/bs-md-right-to-die-20110520,0,4152934.story

この前見失ってしまった話題の別ニュースを見つけた。FL州で、ナーシングホーム業界の圧力に負けた知事がオンブズマン制度の解体を狙っている?
http://www.cnbc.com/id/43126014

OECDが各国の高齢化と今後の介護に関する見通しに関するレポートを出している。(以下のリリースに本文へのリンクあり)2050年には介護費用が現在の倍になる、と。高齢化率では日本と韓国がダントツのトップ。米国の高齢化率が低くないのは出生率が上がっているため、という記事を2年くらい前に確かNYTだかで読んだ。
http://www.oecd.org/document/12/0,3746,en_21571361_44315115_47904908_1_1_1_1,00.html

ちゃんと読んだわけではないけど、上記の報告書について、Telegraphの記事の書き方と、Carer Watchという介護者チャリティのブログ記事の書き方を比べてみると、なかなか興味深い(ような予感がする)。
http://www.telegraph.co.uk/news/politics/8501333/OECD-huge-elderly-care-bill-threatens-family-ties.html
http://carerwatch.wordpress.com/2011/05/19/providing-and-paying-for-long-term-care-oecd/

英国の地方自治体が高齢者・障害者の介護予算をカット。総額で1億ポンド。
http://www.telegraph.co.uk/news/politics/8510705/Councils-axe-1bn-of-funding-for-elderly-and-disabled-care.html

英国のCameron首相が、米国のGatesやBuffettのような「慈善家」が英国でも出てきて「大きな社会」の中心的な役割を民間が担ってほしい、と。: Gates氏の個人的な(しかもコロコロ変わる)考えや思いつきによって米国の医療も教育も、グローバル・ヘルスも、ものすごく左右されていますけど?
http://www.telegraph.co.uk/finance/economics/8527957/David-Cameron-seeks-UK-philanthropists-in-the-mould-of-Gates-and-Buffett.html

そのBill Gatesさん、米国の学校の小規模化にいまだ未練があるらしく今後5から6年に渡って総額35億ドルを投入するって。「教職員組合の年功序列をやめて、生徒のテストの点数で教師を評価する」ために投入されるカネ。:今はDALYで患者の状態の方が数値化されていますけど、そのうちには患者の予後がDALYで点数換算されて、個々の医師の評価にされていくんでは? そうすると誰も重症患者を引き受けなくなるのでは? それともPAS合法化議論はそうなった時代への準備なのか?
http://www.boiseweekly.com/CityDesk/archives/2011/05/22/gates-foundation-set-to-pump-billions-into-school-advocacy

10月のNational Conference and Exhibitionの生命倫理分科会で、Diekema医師がプレゼン2つ。そのうちの一つは薬の治験の同意と守秘義務に関するもので、もう1つはERにおける「扱いにくい親、扱いにくい患者」。それからERでの虐待の疑いについてのパネルにも登場するらしい。
http://www.aap.org/Sections/bioethics/PDFs/SOB_%20H_Program%202011.pdf

癌研究の国際機関から、牛、豚など赤身の肉とハムなど加工肉を食べ過ぎないように、と。
http://www.guardian.co.uk/world/2011/may/23/cut-red-meat-cancer-researchers?CMP=EMCGT_230511&
2011.05.24 / Top↑
いつもブログを覗かせてもらっているThaddeus Mason Pope氏のHPに、
「無益な治療」訴訟の資料一覧がありました。

これ自体、たいへん貴重な資料なので、なにはともあれエントリーに。

http://www.thaddeuspope.com/futilitycases.html


一番詳しいのはBetancourt事件で、
他が年ごとにまとめてあるのに対して、この事件だけは事件が項目になっている。

最初は1991年。

それから後、ひぇぇ、こんなにあるのかぁ……とびっくりする半面、
GolubchukとかBaby RBとか、つい最近のMaraachli事件など、
当ブログで拾って来た事件でここに挙げられていないものも多く、

「無益な治療」訴訟の定義にもよるのかもしれませんが、ちょっと??

Pope氏は法学と哲学の研究者で、
Widener 法科大学の医療法研究所のassociate professorであり、
同時に Albany 医科大の医学教育のadjunct associate professor。


ちなみに09年段階で当ブログが拾って来た「無益な治療」事件の一覧はこちら ↓
「無益な治療」事件一覧(2009/10/20)

それ以後に拾った主なものとしては、
カナダのIsaiah事件
英国のBaby RB事件
米国のBetancourt事件
米国のBarnes事件
米国のNyirahabiyambere事件
カナダのMaraachli事件

そして、上訴審が現在進行中の ↓
カナダのRazouli事件
2011.05.22 / Top↑
去年3月、脳動脈りゅうの破裂で脳死になった男性Julio Garciaさん(38)の臓器は、
妻の決断によって7人のレシピエントに移植された。

このほど、NY 臓器提供者ネットワークが、
Julioさんをたたえ、家族に感謝するセレモニーを行った。

そのビデオがNYTに ↓

Donating Lives
May 16, 2011


冒頭では、
子沢山の一家が自宅に勢ぞろいして
亡き夫・父と彼の死後を語る。

その後、場面は、セレモニーが行われた一室に。

一家が多くの人の拍手に迎えられて入室。

「1人でも2人でもなく、多くの人の命を救ったヒーロー」として
最初にJulioさんの人生が写真で紹介された後で、

会場にいたレシピエントが一人立ち上がる。

移植前にどういう症状に苦しんでいたか
今どんなに楽になって助かっているが
感謝の言葉と共に語られると、

レシピエントはJulioさんの妻に近づいていき、
改めて感謝の言葉を述べ、2人は泣きながら握手を交わす。

そして、また別のレシピエントが紹介され、それが繰り返された後で、
(その部分はビデオでは省略されています)
最後に心臓のレシピエントが立ちあがる。

妻と男性は言葉を交わしながら、感極まり最後には抱き合う。

そこにいたレシピエントが全員紹介されて並んだところで
妻がその前に立ち、ドナーの妻としての思いをスピーチ。

みんなが感情的になり涙を流し続ける感動的なセレモニーの最後に
妻は改めてレシピエント一人一人と言葉を交わし、お互いに祝福しあう。

ビデオのタイトルは「命(複数形)を提供する」。


なお、記事はこちら ↓
One Death Provides New Life for Many
NYT, May 16, 2011


(ちょっと余裕がないので、記事はまだロクに読んでいませんが)


記事の左手にもビデオがはめこまれていますが、
その下にはどの臓器がどの人に移植されたかが写真と図で分かるようになっています。

匿名の人が3人。それ以外の人は写真があります。
セレモニーの会場にいて、妻がスピーチをする際に背後に並んでいた人たちのようです。

            -----

去年、「いのちの選択」で、ドナー家族の体験談を読んだ際に
後悔していない人や後悔しないために活動に向かう人たちの声は
私たちに聞こえる機会はあるにしても、後悔している人は語りたくないだろうから
そういう人の声は私たちの耳には届きにくい……ということを考えたものだったけど、

もしかしたら
そればかりでもない力動も加わっていくのかもしれない……。


それにしても、私はモノを知らないためか、
ドナーが誰かという情報はレシピエントには一切明かさないのが
臓器移植医療の原則なのだとばかり思っていました。

そして、それが原則として重視されるには、
それなりの理由があるのだとばかり思っていたのですが……。


【追記】
米国のドナーとレシピエントの交流についての議論をまとめてくださった
てるてるさんの情報ページがありました ↓
http://www5f.biglobe.ne.jp/~terutell/donorrecipient.htm

米国では97年にガイドラインができたとか。
カウンセリングを提供しつつ、慎重に、しかし個々の判断で。


日本については、
臓器移植ネットワークのサイトに

ドナー家族とレシピエントは、実名を知らされたり、直接対面することはありません。移植が無事終了しても移植コーディネーターは、その結果やその後の経過 を臓器提供側の家族や主治医に報告します。レシピエントの術後の経過を把握し、ドナー家族に対する報告と精神的ケア、レシピエントからドナー家族への感謝 の手紙を橋渡しするのも、移植医療の発展には欠かせない重要な業務です。

移植学会でのドナー家族の講演 ↓
http://www.jdfc.net/headline/headline18.html

ドナー家族に光を当てよう、と。
米国の状況を例に引きつつ――。
2011.05.22 / Top↑
Kevorkian医師、腎臓病が悪化して病院へ運ばれ、そのまま入院。肺炎も。
http://www.lifenews.com/2011/05/19/assisted-suicide-crusader-jack-kevorkian-hospitalized/
http://www.freep.com/article/20110519/NEWS03/110519029/Kevorkian-hospitalized-kidney-ailment-pneumonia?odyssey=tab|topnews|text|FRONTPAGE

VT州の自殺幇助合法化ロビーのサイト。:現在、ビデオがあって、つい先日、合法化法案が否決されたのを受けて、今後に向けて合法化を実現すると決意を語る知事のビデオがある。
http://vtdigger.org/

一回どこかで勉強しておきたいと思っていた英キャメロン首相の「大きな社会」構想について、NYTのコラムニスト。:でもまだ読んでいない。
http://www.nytimes.com/2011/05/20/opinion/20brooks.html?_r=1&nl=todaysheadlines&emc=tha212

カナダオンタリオ州(だけなのかどうかは?)の「直接処遇職員の日」:基本はナーシングホームらしいのだけど。この季節って、「○○の日」とか「○○週間」が多いのかしら。
http://www.marketwire.com/press-release/oltca-celebrates-psws-on-their-second-annual-day-of-recognition-1516641.htm

オクラホマ州のナーシング・ホームのオンブズマンを長くやってきた人が、「ホームの高齢者にも権利はある」と。:米国ではボランティアのオンブズマンが入所者の知人・友人を装って、ふらっと訪ねて行くらしい。でも、あんまりケアのお粗末を指摘しすぎると、施設長らから嫌われて、ついには知事に辞めさせられたり予算を削られたりということも起こり始めている。そのニュース、今日読んだのだけどブクマし忘れて見失ってしまった。
http://www.news-star.com/opinions/letters/x1357380850/Long-term-care-residents-have-rights

サンフランシスコが包皮切除術を禁止。宗教上の自由を侵すとの批判も。:この論争、またDiekemaが出てくるぞ。包皮切除については数年前までは「利益もリスクもいまだ不透明」と言っていたし、2006年に法廷であれだけ慎重を強調していたくせに、今ではすっかり「包皮切除には利益がある」と宗旨替え。途上国のエイズ予防策として提唱している人が背後でトラの皮をかぶっているからではないか、この人はやっぱり2007年当たりから徐々に倫理学者としての魂をそのトラさんに売ったのではないか……と私は推測しているのだけど。
http://www.huffingtonpost.com/2011/05/19/circumcision-ban_n_864241.html

……と思ったら、投票前にやっぱりABCに出てきていた。「推奨している学会はありません。もしも科学的なエビデンスが繰り返されているなら、どこかが推奨すると思いますけどね」と疑問を投げかける医師に続いて、Diekema医師が感染リスク軽減の効果があると主張。また「包皮切除で深刻な合併症が起こることは滅多にありません。よくある合併症は処置の跡の表皮からの少量の出血ですが、圧迫すれば収まります。あとは表皮の感染で抗生剤のクリームを塗るくらいですね」。あなた、包皮切除が失敗したケースで裁判に呼ばれたんじゃなかったっけ? そこで「外科手術のリスクは痛み、死と合併症の可能性」と証言したんじゃなかったっけ? よくそこまで鉄面皮にコロコロ言うことを変えられるわね。んとに。
http://abcnews.go.com/Health/san-francisco-vote-circumcision-ban/story?id=13638220

ProPublicaの指摘を受けて、スタンフォードなどいくつかの大学が製薬会社との金銭関係で利益の相反に関する方針を改訂。
http://www.propublica.org/article/medical-schools-plug-holes-in-conflict-of-interest-policies

「あなたの寿命は何歳まで」というお告げをもたらしてくれる血液検査ができたのか、できるのか、だそうな。専門家の中には、そんな検査の情報は役に立たん、という声も。NYT。
A Blood Test Offers Clues to Longevity: Some experts say that blood tests that seek to tell people their biological age do not provide useful information.

妊娠中の女性の喫煙は胎児のDNAに影響する。
http://www.medicalnewstoday.com/releases/225918.php

アルツハイマー病の治療薬アリセプトの大量投与にはリスク。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/225939.php
2011.05.21 / Top↑

遺伝子からお子サマに最適のスポーツを診断!

遺伝子に資質が組み込まれていないスポーツでお尻を叩いても、
それは親御サマにとってもお子サマにとっても不幸というもの。

お子サマの遺伝子に応じた種目、練習の方法が見極められるよう、
さらには、練習中に心臓病や脳しんとうなどで命を落とさぬよう、
ぜひとも、お子サマの遺伝子をお調べくださいませー。



……てな宣伝モンクで
米国で最近「スポーツ遺伝子検査」を売り出した会社が2つあるそうだ。

American International Biotechnology Services
当該商品のページはこちら。200ドルで、ACTN3他6つの遺伝子をチェックするらしい。

もう1つはAtlas Sports Genetics。
こちらは169ドルで、オーストラリアの研究所のテストで ACTN3をチェックする。

どちらのサイトもACTN3について、もっともらしいことが説明されているけど、
この記事の専門家の説明によると、その遺伝子は運動のカギを握る筋肉のプロテインをコントロールする、
ACTN3プロテインは瞬発力のある筋を作る、というんだけど、

でも、それって、それだけのことでしょ……? と思ったら、

Atlasの方の幹部が「誤解している人が多いですが、
ACTN3で未来のマイケル・ジョーダンになれるということじゃないですよ。
検査で分かるのは、そのプロテインがあるかどうか、です。
それで、瞬発力の生きるスプリントに向いているか、それとも
耐久力の生きる競技に向いているかが分かる、ということなんです」

(それなら、ただそれだけのことだと正直に言えば?
「誤解している」んじゃなくて「誤解してもらって」ショーバイが成り立ってるんじゃん)

オリンピック級のアスリートの場合には
確かにACTN3遺伝子が短距離走の選手のパフォーマンスに関係しているらしいのだけど、
その分野の専門家は「99%の人では関係ないですよ」。

American Internationalが検査するACTN3以外の5つの遺伝子は
同社の主張するところでは、パワー、エネルギー、耐久力に関連しているそうな。

さらにそのうち3つは、脳しんとうを起こしやすい人を特定できるんだそうな。

そういう遺伝子変異がある人は、頭に何かがぶつかった場合には
脳損傷のリスクを避けるために、他の人よりも長く休んだ方がいい。

「主なターゲットの1つは子ども。
そういう変異のある子どもが闇雲にスポーツをやっていて、
いきなり心臓病や脳しんとうで倒れないようにしてあげたい。
子どもがトレーニング中にいきなり倒れることはないと親も安心できるでしょ」と同社幹部。

(スミマセン、脳しんとうは、その遺伝子の変異がなくても
トレーニング中であれ何してる時であれ、物がぶつかってくれば起こると思います。
ぶつかり方が激しければ、いきなり倒れることだってあると思いますが?

「脳しんとうで命を落とさないためにも」って宣伝文句、実はこれだけのことだったの……?
それって「誇大」というより、いっそ「ウソ」なんでは?)

脳しんとうに関係すると同社が主張しているのはApoEという遺伝子。
これを「スポーツ遺伝子」として検査に含めることに専門家から異議がある。

というのは、ApoEはアルツハイマー病の関連遺伝子。
子どもがサッカーをやりたいというから、じゃぁ……と、
軽い気持ちで、この会社のサイトを開き、
子どもの口の中を撫でた綿球を送ってみたら、
サッカーで脳しんとうを起こすリスクどころか、
将来この子はアルツハイマー病になる確率が高いことが分かってしまった……
ということにもなりかねない、という批判。

そもそもインターネット上で繁盛している消費者直結(DTC)遺伝子検査は
信ぴょう性も怪しければ、遺伝子情報が正しく理解・解説されるかどうか分からない。
それでも一旦出てくれば、就職や保険での差別にもつながるリスクがある。

こういう会社が出てきたのを機に、遺伝子診断そのものを
ちゃんと規制すべきだ、と専門家。

FDAはこれまでも、このテの検査にはシワい対応をしており、
これまでも閉鎖に追い込まれた計画もあったらしいのですが、
今回は5月11日にAmerican Internationalに対して、なかなかオツな書面を送っています。

「この検査を販売するに当たってFDAの認可は無用であると
御社がお考えなのであれば、そう断定された根拠をご提示ください」

“Ashley療法”論争でFostに動員されたと思しき
シアトルこども病院のオトモダチFriedman Rossが
ここではなかなかいいコメントをしている。

「これは本当に懸念されますね。
スポーツや身体を動かすアクティビティは子どもにとって遊びでなければ。

遺伝子がこれならオマエは必ずや世界の一流選手だ、とか
こんな遺伝子じゃ見込みはないからやめておけ、とか、そういう話じゃないでしょ」

Genetic testing for sports genes courts controversy
WP, May 18, 2011


ここまでくると、もうほとんど“霊感商法”の域。

2社の関係者が言っていることを読めば読むほど、
「ゼニになるならゴマ粒だって黒ダイヤモンドだと言いくるめますも~ん」と聞こえて
シラケるばかりか、こんなショーバイがまかり通る時代なのかと悲しくなってしまう。


ちなみに、この記事の冒頭で、
「ヘリコプター・ペアレント」という表現を、初めて見た。

Wikipediaによると、
我が子の行動や教育問題に過剰に入れこんで、子どもに付きまとう親のこと。
ヘリコプターがホバリングをするように、子どもに付きまとうイメージから。

つまりは、こういうこと? ↓
幼児化する親、幼児化していく社会(2010/8/27)

そして、こういう未成熟なヘリコプター・ペアレントこそが
「必要を作り出すプロセスがショーバイのキモ」時代のカモなのでしょう。

親が”DNA霊感商法”の餌食にされて
200ドルをぼったくられるのは勝手かもしれないけど、

それに振り回される子どもは、
ゼニさえ儲かるなら鼻糞だってトリュフに仕立てる無責任な大人と
子どもに付きまとってコントロールという名の依存をやめられない未成熟な親との、二重の被害者――。
2011.05.21 / Top↑
ジュネーブの第64回世界保健総会でBill Gatesが「“ワクチンの10年”やろうぜい」とガンガン檄を飛ばしている。
http://www.pharmatimes.com/Article/11-05-19/Gates_calls_for_%E2%80%9Cdecade_of_vaccinations%E2%80%9D.aspx

その保健総会でアフガニスタンの保健相が「ワクチン接種のために支援を」とゲイツ氏と会談する予定。子どもの死亡率が世界で第2位だというんだけど、アフガニスタンで子どもの死亡率が高いことの最も急がれる対応策は本当にワクチンなんだろうか。
http://www.reuters.com/article/2011/05/17/health-gates-afghanistan-idUSLDE74F24X20110517

その保健総会で、メディアは先を争ってゲイツ氏のインタビューをとる。やっぱりこの人が世界の厚生相なんだなぁ……。
http://www.channel4.com/news/bill-gates-capitalist-to-philanthropist
http://news.bbc.co.uk/2/hi/programmes/hardtalk/9488576.stm

世界不況のあおりで寄付が減り、資金繰りが難しいWHOは改組が必要。:WHOはもともとゲイツ財団に「ゼニくだせぇ」とすがりつつ、財団の資金を途上国と奪い合っている、って09年から言われていた。ゲイツ財団がワクチン普及のために作ったGAVIともう一つの組織の方が、圧倒的にお金持ちらしい。憂うべき事態なんだけど、なぜか然るべく憂う人が見当たらない。
http://www.google.com/hostednews/afp/article/ALeqM5iVenWuf_GW-ZkUDlSDu_dMIBHnvQ?docId=CNG.dd4b60fa12b9b85d2c4de04c8e17ef89.291

Dying Matters(死ぬことは大事)という組織(たぶん英国)があって、5月16-22日が「死ぬことは大事啓発週間」なんだそうな。まだロクに見ていないので、どういう趣旨の活動なんだか、よく分からないけど、「死ぬことと、死と、身近な人に死なれること、について啓発する」団体らしい。
http://www.dyingmatters.org/

で、そのDying Mattersが啓発週間に発表した死に関するあれこれの意識調査の結果がこちら。永遠に生きたいと望む人が「15%しか」いないって書いてあるんだけど、「15%もいるのか」と私はびっくりした。でも、100歳を超えて生きたい人は「9%しか」いないの「しか」は共感かな。なんでTH二ストは食べるものも食べず、長生きのためにすべてを犠牲にするみたいな生活をして、なにがなんでも150まで生きたいのか、私は前から不思議でならない。ざっとしか目を通していないけど、どうやらDying Mattersってのは、「死をタブーにせず、終末期医療について意思決定しておきましょう」という趣旨の啓発活動を旨とするみたい?
http://www.comres.co.uk/dyingmatterssurveymay11.aspx

5月18日は国際博物館の日。:今日、ふらっと某博物館に行ったら受付で「国際博物館の日の記念品として」と、きれいなクリアファイルとポケット・ティッシュを2個も(!)もらった。特別展示も期待以上に面白かったし、こういう日はなんだか1日気分が爽快。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9B%BD%E9%9A%9B%E5%8D%9A%E7%89%A9%E9%A4%A8%E3%81%AE%E6%97%A5

人に教えてもらった東神戸教会のサイトに「それでも世界は美しい」というタイトルの、とてもいいメッセージがあった。フランクルの「夜と霧」に触れて、東日本大震災のあった日本の我々自身に向けて。
http://www.higashikobech.org/message.htm
2011.05.20 / Top↑
月刊「介護保険情報」誌3月号の連載で
「ヘルシー・ホームズ事業:英国リヴァプール」を書いた。

英国では「燃料貧困」「燃料プア」が社会問題化していて、
特に労働者が多いリヴァプール市がNHSトラストと手を組んで
健康で温かい住宅の実現を通じて健康格差解消を目指すプログラムを実施している。

まさに「福祉と医療の連携」にはこういう形もあるのか……と目からウロコの話を、
これは自前で見つけたのではなく、編集の方から教えていただいて調べてみたもの。

この問題に関する調査が最近あったようで、
その結果を受けてBMJに社説が出ていた。

The health impacts of cold homes and fuel poverty
Editorial, BMJ, May 11, 2011


調査は Friends of the Earthというチャリティによるもの。
5月12日に “The health impacts of cold homes and fuel poverty”として報告された。

「調査から分かったのは誰だって知っていて知らないフリをしてきたことばかりで
寒い家はエネルギーを無駄に使い、住民の健康を害する、ということ」。

英国の家を熱効率の良い温かいものにすれば
二酸化炭素の排出量も減るし、健康への影響も減って健康格差が緩和される。

そのために報告書が提言しているのは3つで、

① 住宅のエネルギー効率を上げて、「温かい家」はバカ高いという事態をなくすことで
家計も楽になり健康度が上がる。

② 家が寒いために燃料貧困から健康格差が起きている状況は正すべきである。

③ 家の熱効率が良くなれば使用燃料が少なくなり
二酸化炭素の排出量が減って長期的には地球温暖化の緩和に役立つ。

ちょっと意外なのは、南半球のオーストラリアにも同じ問題がある、と。


病気予防といえば、やれ、この薬やサプリでこの病気が予防できるとか、
遺伝子検査を受けて病気になる前から健康な臓器をとっちゃえとか、
個体に対して操作を及ぼすことばかり煽る人が多いけれど、
(まぁ、それはお金を生んで誰かを儲けさせるからね)

人は環境から影響を受け、環境に影響を及ぼしながら
「社会」の中で「暮らし」ているんだよねって、
この事業のことを調べていたら、つくづく思ったんだった……。

それを、また思い出した。

このヘルシー・ホームズ事業、
いま流行りの「アウトリーチ」をもう一つ拡大し柔軟にして
さらに、リーチの先にいる人たちのためになるものにするヒントが
隠れているような気がするんだけど。

とはいえ、
英国の連立政権は社会福祉予算の大幅カットを自治体に厳命しているので
リヴァプールの事業もどうなるか心配。
2011.05.20 / Top↑
うわぅ。

5月17日に以下のエントリーで紹介したRasouli訴訟ですが ↓

「“治療停止”も“治療”だから同意は必要」とOntario上位裁判所

なんと、病院側(医師2人)が上訴して、現在最高裁で審理されていました。

昨日、その上訴審で、医師側の主張が出てきたらしいのですが、
これが、なんとも、Norman Fostも顔負けの傲岸さで、

Rasouli氏の生命維持は「死を防いでいるのではなく長引かせているだけ」。
「単に長引かせて、患者の元々の病気の影響を送らせているだけ」なんだそうで、

「(上級裁判所の判決みたいなことを言っていたら)患者が自分の治療を
あれこれ品定めしたり選んだりすることになってしまう。……略……
そんなことになったら医療の意思決定の既存モデルは覆されてしまう」

だから、
自分たち医師が無益だと考える治療を中止することに同意は無用、
そうでなかったら、治療の効果がなくなっても患者に継続を無理強いされることを恐れて
どんな治療もできなくなってしまうじゃないか、

仮にそれが患者の望みに反していたとしても
患者の最善の利益を決めるのは医師の責任である、と。

Consent for ending life support would undermine MD’s authority, court hears
The Globe and Mail, March 18, 2011


「元々の病気の影響(effects)を遅らせて死を長引かせているだけ」が
一方的な治療停止の根拠になるんだったら、ガン治療にせよ糖尿病の治療にせよ、
みんな、ただの「無益な延命」だから中止しても良い……ことにならないでしょうか?

ちなみに、医師サイドの実際の発言には、少なくとも記事の中では、
そういう言葉は出てきていないのですが、記事タイトルは
「生命維持停止に同意なんて医師の権威を損なう、と法廷で主張」。

「医療の意思決定の既存のモデル」って「医師の権威が全て。医療は医師の専決」でしたっけ?

インフォームド・コンセントとか、
患者に分かりやすい説明とか
患者とのコミュニケーションとか信頼関係とか、

あの懐かしい標語の数々は、一体どこへ――?


【追記】
一昨日からずっと、素人のものすごく単純な疑問があるんですけど、
この人、脳の良性腫瘍の摘出手術を受けたんですよね。

良性腫瘍の切除手術で「植物状態」になって、
それで担当医からこういう言われようまでして
「どうせ植物状態で回復しないんだから死ね」と
要求されているわけですよね。それって、あんまり悲しい……というか

もしも担当医ら2人が言うように
患者の最善の利益が医師によって適切に判断されて、
それに基づいた有効な医療がその都度行われていたら、
この人は最初から細菌性髄膜炎にはならなかった……なんてことは?

もしそうだとしたら、今、裁判で医師が言っている「この人の元々の病気」というのは
細菌性髄膜炎ではなくて、良性腫瘍だったことになるのでは?

それとも、こういうのは「過誤」ではなくて
「開頭手術に伴うリスクが現実のものとなってしまったケース」と理解するのが
脳外科医療では常識なんでしょうか。
2011.05.20 / Top↑
武田、ゲイツ財団医療支援分野トップを取締役に招へい(日経新聞 5月11日。一旦貼ったリンクがおかしくなったので、後で修正する予定):グラクソ経由。この人、たぶんこのエントリーの最後に触れているDr.Tanakaじゃないかと思う。そう言えば米国の国際開発支援組織USAIDのトップもゲイツ財団の元職員。

その他、上記の関連で「ゲイツ財団と製薬企業連携」。NPO法人ファーマサポートのサイト。日本語。「第一三共がポリオに効果のある4種混合ワクチンの開発に乗り出したほか、武田製薬、エーザイなど大手がワクチン事業に力を入れ始めている」。:「ワクチンの10年」経済施策がいよいよ日本でも本格的に始動するということか……。これ保健施策じゃなくて経済施策なんだけど、子どもたちの命は本当に守れるのか。日本の子どもたちも、途上国の子どもたちも……。
http://pharma-support.or.jp/2011/03/28/%E3%82%B2%E3%82%A4%E3%83%84%E8%B2%A1%E5%9B%A3%E3%81%A8%E8%A3%BD%E8%96%AC%E4%BC%81%E6%A5%AD%E9%80%A3%E6%90%BA/

【関連エントリー】
リスクの“リ”の字もなく“黄金時代”に沸くワクチン開発記事(2009/11/19)
「これからはワクチンが儲かりまっせぇ」の陰には、やっぱりゲイツ財団が……(2009/11/20)
「健康ギャップ」なくても「ワクチン・ギャップ」埋めないと「世界に恥じ」る……と説くワクチン論文(2010/3/5)
「米国のワクチン不信と、そこから見えてくるもの」を書きました(2010/7/5)
日本の「ワクチン産業ビジョンの要点」の怪(2011/3/8)
ゲイツ財団がコークとマックに投資することの怪、そこから見えてくるもの(2011/3/9)
ゲイツ財団はやっぱりビッグ・ファーマの株主さん(2011/3/28)


英国では今、子どものホスピス週間らしい。
http://www.walesonline.co.uk/news/wales-news/2011/05/18/hospice-helping-parents-care-for-sick-children-91466-28712759/

パジャマなど乳児向けのポリウレタンを使った製品に何十年も前から発がん物質が含まれていたことが明らかに。(NYT)
Chemical Suspected in Cancer Is in Baby Products:A chemical suspected of being a carcinogen that was removed from children’s pajamas decades ago prevalent in baby’s products made with polyurethane foam, new research shows.

プラスチック製品にも。子供向けの商品含め。
http://www.medicalnewstoday.com/releases/225592.php

ADHD治療薬に将来の心臓病リスクが懸念されていたけど、調査で否定された。
http://www.medicalnewstoday.com/releases/225536.php

ルワンダの1994年のツチ族大虐殺の首謀者に禁固30年。
http://blogs.yahoo.co.jp/spitzibara/59165268.html
2011.05.20 / Top↑
Ashley事件におけるDiekemaらの正当化の中で私がずっと不思議だったことの一つに、
開腹手術のリスクが一切言われないことがありました。

これもまた偶然拾った“お宝”なのですが、

外科手術のリスクについて
Diekema医師が法廷での証言で語っている資料を見つけました。

http://www.circumstitions.com/ethics-diekema.html

時は2006年1月。
Ashleyの手術から約1年半後、
あのGuntherとの共著論文を書く数ヶ月前……とでもいったタイミングでしょうか。

ワシントン州で、男児の包皮切除が失敗したケースが裁判となり(死亡例も結構あるようです)、
そこに専門家として呼ばれて証言を求められたもののようです。そのポイントは
「外科手術のリスク」と「医師が適切な利益対リスク検討を行う責任」について。

まさにAshley事件に、そのまま当てはまるポイントです。
当てはまる個所の発言を抜いてみると、

Non-therapeutic procedures that involve excessive risk should be avoided. An appendectomy on a healthy child, who has no history or symptoms of an appendicitis and who is not undergoing an abdominal surgery for other therapeutic reasons, for instance, would not be ethically justifiable because the absence of benefit to the child would not justify the surgical risks.

過度なリスクを伴うなら治療目的ではない医療は避けるべきである。例えば、盲腸炎の病歴も症状もなく、その他の治療上の理由による開腹手術を受ける予定もない健康な子どもの盲腸切除術は倫理的に正当化できない。なぜなら、その手術のリスクを正当化する利益が子どもにはないからだ。



Ashleyの盲腸は確かに開腹手術の“ついでに”切除されたものですが
その開腹手術は「治療上の理由」によるものではありませんでした。

で、彼が考える「手術のリスク」の具体的な内容はというと、

…a surgical procedure can only be justified when the benefits likely to accrue to the patient outweigh the harms that might arise from surgery – pain, possibility of death or complications.

患者にとっての利益がその手術から起こるリスク―痛み、死と合併症の可能性―を上回る場合にのみ、外科手術は正当化される。



痛みと、死と合併症の可能性――。
それが生命倫理学者Douglas Diekemaの考える「外科手術のリスク」なのです。

外科手術は、死の可能性を賭してでも得るべき患者への利益がある場合のみ正当化される。
Diekema医師は、そう言っているわけですね。

そういう「外科手術のリスク」観を持ち、
盲腸切除術で上記のようなことを言う倫理学者ならば、
健康な子どもに行う子宮摘出術や乳房摘出術での「手術のリスク」については
さらに重要視し、慎重に手術の是非を判断するはずです。

ところが、

06年のGunther & Diekema論文が
「予防的子宮摘出」の「利点」をずらずらと挙げた後で、
そのリスクについて書いているのは

The risks of this surgical procedure in prepubertal girls, and the risks of long-term complications, are minimal- certainly they do not excess risk of similar procedures many of these children will experience as part of their medical care.

思春期前の少女での子宮摘出術のリスク(複数形)と長期的合併症のリスクはミニマルなものである。それらのリスクは、こうした子どもたちの多くが受ける医療の中の、同様の治療のリスクを超えるものでは決してない。



また、2010年のFostとの共著論文では、

any risk-benefit analysis of hysterectomy and breast bud removal cannot ignore the potential benefits of ameliorating or avoiding breast discomfort, menstrual cramps, pelvic exams, and Pap smears, and any consideration of harms of the alternative treatments that would have been necessary (e.g., 30 years of birth control measures, anesthesia for gynecological exams and mammograms, breast biopsies, etc.)

子宮摘出と乳房芽摘出のリスク対利益検討では、乳房の不快感、生理痛、性器診察、子宮癌検査を和らげたり避けたりする利益の可能性を無視することはできない。さらに、子宮があれば必要になるであろう代替え療法(30年も避妊薬を続けること、婦人科の検査のために欠ける麻酔や、マンモグラフ、乳房の生検査など)の害も無視できない。



一見、後半部分で「害」について検討しているように見えますが、
これは摘出手術によって「取り除かれる害」のことを言っているのであって
あくまでも「利益」を云々しているにすぎません。

一方、著者は「手術のリスク」については、またも過小に書きます。

Hysterectomy is a common procedure with a low incident of serious harm performed for many reasons, including those cited in Ashley’s case. Breast bud removal is also an accepted procedure, …..

子宮摘出は、重大な害が起こることの少ない、ありふれた治療で、Ashleyの症例で挙げられたものを含めて多くの理由で行われている。



利益を数える際には、
あるかどうかも分からない生理痛や
将来Ashleyが受けることになるかどうかも分からない検査や、そのための麻酔までが
「取り除かれてよかった害」としてほじくり出されて「無視できない」と力みつつ、

「死と合併症の可能性」というリスクは丸無視する。

それは、いったい、どういう生命倫理学者の
いったい、どういう「リスク対利益」検討なのか?


さらに治療の侵襲度や親の意向についても、
06年の法廷での証言でDiekema医師は興味深い発言をしています。

A parent or proxy decision-maker would not be offered surgery as an option until the less harmful therapy had been attempted and demonstrated to be unsuccessful.

外科手術が選択肢として親や代理決定者に提示されるのは、より害の少ない療法を試みて、その効果がなかったことがはっきりした後のことである。



また、彼は米国小児科学会の声明の以下の部分に同感だとも言います。

…Providers have legal and ethical duties to their child patients to render competent medical care based on what the patient needs, not what someone else expresses….The pediatrician’s responsibilities to his or her patient exists independent of parental desires or proxy consent.

医療提供者には小児患者に対して、誰か他の人の言い分ではなく、患者のニーズに基づいて、有効な医療を行う法的また倫理的な義務がある。……患者に対する小児科医の責任は、親の望みや代理決定者の同意とは独立して存在するものである。



ふ~む……。

2004年のシアトルこども病院の特別倫理委が
父親のブログによると当初は「乳房切除をしぶっていた」にも関わらず
父親のプレゼンの後で(つまり「誰か他の人の言い分」を聞いた後で)納得し、
「親に決めさせてあげよう」という結論に至った(Diekemaの08年の講演での証言)……
……というのは、上記の声明に照らせば、まったく不可解な話です。

また、成長抑制ワーキング・グループの論文が
「親の望みとは独立した医師の患者に対する責任」を言わず、
ひたすら「医療に関する親の意思決定の尊重」を言い、
「親と共に行う意思決定(shared decision-making)」を説いているのも妙な話。

WGの論文といえば、
「女児の場合には成長抑制と子宮摘出は分かち難い」と認めつつ
「ここでは子宮摘出については論じないこととする」と断っているのも言語道断。

それは「女児の成長抑制には外科手術のリスクがあり得ます」と認めつつ、
「でも、痛みや死と合併症の可能性は問題にしない」と言っているわけで
(しかも「治療上の理由なしに課せられる外科手術のリスク」なわけですが)

そうしておいて、この論文は
「成長抑制療法のリスク対利益」は通常の重症児医療での親の意思決定の場合と同じだから
条件によっては道徳的に正当化される……と「妥協点」と称して「結論」づける。

それもまた、いったい、どういう「成長抑制のリスク対利益」検討なのか?

Diekema医師が、実はちゃんと認識している手術リスクを
”Ashley療法”論争で意図的に無視してきたことは、この法廷での証言から明らか。

要するに、アンタらがやってきたことは、
06年の論文から今回のWGのHCR論文に至るまで、
ただの「利益と利益の検討」じゃないか――。
2011.05.20 / Top↑
夜の死体運び屋さんのブログに、すごい話が出てるんですけど。昨日、ある精神病院で亡くなった患者さんの「死後の解剖」に大学病院から医学生を呼び、遺族を待たせて延々と6時間。普通は1時間くらいで済むというんだけど。でね、最後に書いてあるのは「医学生、嬉しそうにクーラーボックス2つお土産を持っていったなぁ……」。亡くなった患者さんの遺体の「解剖」で、どーして「クーラーボックスのお土産」が出るんですか?
http://blogs.yahoo.co.jp/sougiyaoyaji/45069252.html

チューリッヒの住民投票に勢いづいたか、翌日スコットランドでMargo MacDonald議員が「私が再選されたってことは、自殺幇助を合法化してほしいという選挙民の願い」と。同議員は去年、合法化法案を提出して敗北を喫したのだけど、当初の対象者要件に「自立生活を送れない身体障害者」が含まれていたのが非難を浴びて途中で削除した経緯がある。基本線は16歳以上の自己決定能力のある人で1年以上スコットランドの保険制度に加入しているターミナルな患者または耐え難い痛苦のある人、みたい。
http://news.stv.tv/politics/249906-margo-macdonald-renews-campaign-for-assisted-suicide/

スイスで開かれた第64回World Health Assemblyで、Bill Gates氏、世界各国の保健当局トップに向けて、特にアフリカ各国のリーダーたちに向けて、「子どもたち全員にワクチンを」「新しくできたワクチン、5、6種類をすべての子どもたちの届けるために力を貸してください」と。
http://multivu.prnewswire.com/mnr/gatesfoundation/49363/
http://www.google.com/hostednews/afp/article/ALeqM5jjh9JlBPwHToZEweRkid5CaSdiuQ?docId=CNG.72fdb89220dcdc18731f851e3ffacf49.161

欧米ではしかが流行している。:これは数年前からDiekemaたちが問題視している米国のワクチン不信の影響。上のスピーチでGates氏も触れた模様。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/225432.php

以前は大統領以外は死後10年経った人の肖像画しか置かなかった方針を転換したワシントンの国立肖像画ギャラリーに、ゲイツ夫妻の肖像画がお目見え。夫妻が座っている後ろにアフリカの少女が2人のビデオが写って「すべての命に平等な価値がある」とゲイツ財団のスローガンが書かれている構図だとか。このスローガンは財団のHPにもあるけど、この財団の医療の効率化策って新・優生思想なのに? といつも思う。
http://www.nytimes.com/2011/05/17/opinion/17tue4.html?_r=1

米国のナーシング・ホームが、新しい改正医療法で義務付けられる職員への医療保険のコストをまかなえないから、免除してほしい、と。NYTに。
Nursing Homes Seek Exemptions From Health Law: Alarmed at the cost of providing health insurance to workers, many nursing homes are seeking an exemption from the new law, which is intended to ensure access to affordable coverage.

貧しい人の法律支援はますます必要度が増しているのに助成金がどんどん引き上げられている。:
これまで多くの人の努力によって長い長い時間をかけて築き上げられてきた、弱者の人権を守る仕組みや制度が、あっという間に崩壊していく。
http://www.propublica.org/blog/item/legal-services-for-poor-face-growing-need-and-less-funding

医師だって、苦しんでいる患者にどうやって共感を表わしたらいいのか困っている。
http://www.washingtonpost.com/national/health/doctors-often-struggle-to-show-compassion-while-dealing-with-patients/2011/05/02/AFiR8A5G_story.html?wpisrc=nl_cuzheads

テクノロジーで死因が特定されることが増えて、米国の病院で死んだ患者の5%しか解剖されていない。1970年には20%だという。とはいえテクノロジーでは見過ごしてしまう病気が解剖では見つかるらしいのだけど。
http://www.washingtonpost.com/national/science/autopsies-which-can-reveal-medical-secrets-are-now-rare-in-us-hospitals/2011/05/12/AFJii74G_story.html?wpisrc=nl_cuzheads

慢性肺疾患の患者さんの終末期医療の意思決定支援をコンピューターのプログラムで。
http://www.medicalnewstoday.com/releases/225453.php

またウツ病の遺伝子変異説。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/225475.php

豪で家畜に奇形の出産が相次いで、殺虫剤の安全性が問題視されている。
http://www.canberratimes.com.au/news/national/national/general/deformities-spark-pesticide-fears/2163809.aspx?src=enews

結婚を断ったら顔に酸性の劇薬を投げつけられて失明した女性が、犯人の男性を同じ目にあわせてやりたいと望み、「目には目を」を旨とするイランの法廷は女性の訴えを認めて犯人は両目を劇薬で失明させられることに。
http://www.guardian.co.uk/world/2011/may/13/iran-blind-criminal-acid?CMP=EMCGT_160511&

ソマリアの海賊対策で米海軍がゲーマーに助けを求めている?
http://www.washingtonpost.com/local/navy-calling-on-gamers-to-help-with-security/2011/05/13/AFRYiP4G_story.html?wpisrc=nl_cuzheads

ミシシッピ川の水位が上がって、ニューオリーンズ洪水の危機。
http://guardianmail.co.uk/go.asp?/bGUA005/xM1DSK3/qQKHIK3
2011.05.17 / Top↑
前のエントリーで読んだカナダのRasouli訴訟の判決文の中に、
08年に当ブログで追いかけたGolubchuk事件の審議に関する個所があり、
非常に面白い議論があったみたいなので、その部分を。

Golubchuk事件については以下のエントリーに ↓
84歳患者巡る無益な治療論争、裁判へ(カナダ)(2008/2/14)
カナダの無益な治療論争:Golubchuk事件(2008/3/24)
Singer、Golubchukケースに論評(2008/3/24)
「無益な治療」訴訟(加)のGolubchuk氏死亡(2008/6/29)


当該部分は判決文の[80]から[82]までの個所。

どうやらGolubchuk裁判の時に、
「医療職が患者の治療を差し控えたり中止するのに同意は無用。」
んなの、裁判所がイチイチ口を出すことじゃねぇ」と
病院側が主張したらしい。

ここを読んで、うぐっ、ふっふっ……思わず血沸き肉騒いでしまったのは、
これ、当ブログの一番のオトモダチ、Norman Fostの持論そのものだから。

Fostの持論通りの啖呵を
08年にカナダの裁判所で切った医師がいたのですね。

で、それに応えて、判事は “the court did have a role”
バ~カタレ、何を言うか。裁判所は口を出すんだもんね~、と。
(勢いでくっついただけで、もちろん前半部分は判事は言っていない)


あのGolubchuk事件で、こんなやりとりがあったとは……。

07年のシアトルこども病院生命倫理カンファでの
Fostの「医療は医師が決めること。裁判所になど行かず好きにしろ」発言には
私は、お尻から火を吹いてシアトルまで太平洋を越えてくくらいの
衝撃を受けたものだったけど、

カナダでも同様の考えが医師の間で広がりつつあったということなのでしょう。

「無益な治療」論ではカナダがどうやら最先端か……なんて
生意気な感想を抱くようになった今になって振り返れば
当たり前のことといえばそうなんだけど、当時は何も知らなかったし。

ただ、Golubchuk訴訟で判事が「口は出すんだもんね~」と応じた根拠は
身体接触のある治療には同意が必要だとか、その他あ~だこ~だと
学者の説を引っ張ってきてある内容が、私にはちょっと理解できないのですが。

それから、その他にもSawatzky訴訟、Sweiss訴訟と類似の判例があって、
そちらでも「治療の差し控えと中止に医療職は同意を必要としないとの判断は出ていない」とのこと。

結局、今回のRasouli訴訟の判事さんが言うには

[83] Sawatzky, Golubchuk and Sweiss demonstrate that the common law position on whether consent is needed to withdraw or withhold treatment in Canada is not firmly decided. The inconsistencies in Canadian case law on the issue and the existence of jurisprudence supporting a duty to obtain consent in withdrawal of treatment circumstances, lead to the conclusion that the law on whether consent is needed to withdraw or withhold treatment in Canada is not wellsettled.



コモン・ロー的には、カナダでは
治療の差し控えと中止に同意が必要かどうかは、はっきり結論が出ていない。

で、昨日のエントリーで読んだ今回の判決の結論としては
医療同意法の「治療」には「治療の中止」も含まれているので同意は必要、
という解釈でした。

           ――――

「医療職が治療をやるまいとやめようと同意なんかいるか、そんなの裁判所の知ったこっちゃねぇ」
「ところが、ちゃ~んと裁判所の知ったことなんだよね~」

このやりとり、私は“Ashley療法”で聞きたいっ。

「重症児の成長を抑制するくらいのことに、裁判所が口出すこたぁ、ねぇ」な~んて
ゼニ印の虎の威を借りてタカビーこいてる Norman Fost や Diekema に、
誰か、はっきり言ってやっておくれ。

「バ~カタレめ、医療が障害者相手に犯した過去の過ちを忘れたか。
医療はなかったことにしたくとも、法には歴史性というものがあるのだ。
だから、障害者への侵襲度の高い不可逆な医療については
裁判所はしっかり口を出すんだもんね~。べぇ~ぇ、だ」
2011.05.17 / Top↑
カナダの移民男性に関する「無益な治療」訴訟
Rasouli v. Sunnybrook Health Science Centre における
Ontario上位裁判所の判決文から事件の概要と、結論のみ、読んでみました。

判決文はこちら。今年3月に出されたものです。

事件の経緯とは、

Hassan Rasouli氏(59)は2010年10月にSunnybrook Health Science Centreで脳の良性腫瘍の手術を受けた。
術後に細菌性の髄膜炎などを起こし、脳と脊髄を損傷、10月16日からこん睡状態に陥る。
人工呼吸器を装着し、経管栄養にて「生かされている」状態。

主治医2人と脳神経科のスタッフとの診断ではRasouli氏は遷延性植物状態にあり
医学的回復(medical recovery)の現実的な望みはなく、
このまま介入を続けても医学的利益がないばかりか害を生じかねないし
今の状態を続けると病院のベッドに寝たきりの場合に起こる合併症でゆっくりと死んでいくことになる、と。

そこで法的後見人である妻のParichehr Salaselさんに予後を伝えて、
今後は緩和ケアのみとしたいと同意を求めるも、妻は不同意。
セカンドオピニオンでも同じ予後が伝えられたが不同意は変わらず。

なお、Rasouliさん一家は2010年4月にイランからカナダに移住。
夫は退職したエンジニア、妻はイランでは医師だった。

妻によれば、命は生かされるべきだというのがイスラム教徒としての
夫と家族の考え方であり、医療へのアクセスは基本的人権であり、
命のすべての兆候が消えるまで医療は与えられるべきだ、と。

またRasouliさんにはある種の反応があり、改善もみられ、
最少意識状態が植物状態と誤診されているのではないか、とも。

そこで妻はHCCAの規定に基づき、夫の治療停止については
The Consent and Capacity Board (CCB)で本人の最善の利益を検討するよう求めると同時に

病院は州の機関として、カナダ憲法で保障された
宗教の自由ならび生命、自由、安全への権利を侵してはならない、とも主張。

で、法律の素人としては判決文の大半は面倒で読んでいられないし、
読んでも理解できそうもないので、いきなり結論に飛ぶと、

CONCLUSIONS:
[103] “Treatment” under the HCCA includes the withdrawal of life support. Therefore, doctors require consent when withdrawing life support in Ontario. End of life cases present very difficult considerations for all parties involved. It is clear from the evidence that the hospital, doctors and substitute decision-maker in this case all have as their priority the best interests of the applicant.We are fortunate in Ontario that our legislature has provided a statutory scheme to assist doctors and substitute decision-makers in determining when an incapable person should be removed from life support, complete with recourse to an independent, expert tribunal in the event that a dispute arises in applying the best interests test. This statutory scheme will allow the applicant’s doctors to challenge the substitute decision-maker’s decision refusing consent to the proposed plan at the CCB. While no end of life decision can be easy, the process established by the HCCA provides consistency and ensures a full consideration of an incapable person’s best interests in cases such as this.

RESULT:
[104] For the reasons outlined, I am of the view that the physicians’ proposal to end life sustaining treatment to Mr. Rasouli, a decision which is supported by the Hospital and opposed by Mr. Rasouli’s substitute decision-maker, must be referred to the Consent and Capacity Board.

[105] Pending the decision of the Board, the physicians are not permitted to withdraw mechanical ventilation and transfer Mr. Rasouli to palliative care. Should the circumstances change, the parties may return to court.

[106] I am of the view that the Canadian Charter of Rights and Freedoms does not apply to the proposed decision of the physicians to withdraw mechanical ventilation.




HCCAとは、恐らく the Health Care Concent Act(医療同意法)のこと。
その法律の「治療」には「治療の停止」も含まれているため中止にも同意が必要、と。

この判断、米国の無益な治療法とか、ついこの前 SavulescuとWilkinsonが書いていた論文なんかを考えると、
ちょっとほっとする解釈ではありますが(詳細は文末にリンク)

判決文のどこかで、医師らの言い分の中に
「患者に利益にならない治療をする義務は医師にはない」というものも目にしたので、
こちらの言い分の根拠は何なんだろう、その辺りの関係はどうなんだろう……と、ちょっと気になります。

ともあれ、判決の結論とは、

終末期の意思決定の困難ケースにはHCCAがCCB(同意・同意能力委員会?)で
一貫性と十全な検討を保障している……として、判断はCCBへ。
CCBの結論が出るまで病院は生命維持を中止してはならない。
なお、カナダ憲法はこのケースには当てはまらない。

          ―――――

フランスのブルカ禁止などイスラム教徒の移民を巡る文化的な摩擦が
法的な問題に至るケースが増えているようで、
カナダでもシャリア法の解釈の導入を禁止する州が出たりしているようです。

また、ちょっと前のものですが
カナダでシャリア保険を開発というニュースも。

そういえば、先日の米国の無益な治療事件でも治療を拒否された患者は移民だった。
それ以前の「無益な治療」事件でも患者が移民だったケースがあった。
いずれも非合法の移民だというわけじゃない。なんだか、なぁ……。

元をたどれば、先進諸国のビッグ・マネーの方々が、
自分たちがもっと効率よくガッポガッポ稼げるように、と、それだけを考えて
世の中のいろんなシステムを緩めたり消したり作り替えたりしつつ
「弱肉強食でイケイケ」の「強欲ひとでなしルール」を
グローバルにどんどん敷いていくものだから、そのあおりで
もともと貧しい国では経済など成り立たず政治すら機能しなくなり
安手な労働力として使い倒されることを覚悟で移民の道を選んで
母国を出ていくしかない人が大勢出てきたのではないのか。
(または海賊になるとか)

カナダ政府だって
子育てや介護に奴隷労働者を輸入するための釣り餌として
「一定の期間介護労働者として働いてくれたら永住権の申請も」と
送り出し国との間で協定まで結んでいる。そして実際には
何年も働いていけないような酷い労働環境を放置している。

そんなふうに、
自分たちが世界の経済・政治・労働もろもろの環境を荒したために食い詰めた人たちを
自国で安価な労働力として使い倒して更に踏みつけつつ、
そういう人が重い病気になってゼニがかかるようになったら
もはや治療は無益だと、切って捨てる――。

そういうこと……?

【関連エントリー】
Savulescuらが、今度はICUにおける一方的な「無益な治療」停止の正当化(2011/2/9)
「ダウン症の息子が社会の重荷」とドイツ人医師に永住権を拒否(豪)(2008/11/10)
カナダ政府、「障害のある子どもが社会の負担」と相次いで永住権を拒否(2011/5/3)
世界の「奴隷労働」を、拾った記事から概観してみる(2011/1/20)
2011.05.17 / Top↑
今日の午後、スイスの住民投票の日本語ニュースを検索していた際に、

「妙なもの」というべきか「面白いもの」というべきか、
なにしろ「おや? おやおや、おや~ぁ?」と尻上がりに語尾が伸びそうな文書に
行き当たってしまいました。

インターネットってな、いろいろと、まさに“お宝”の宝庫ですね。

今回、全くの偶然に掘り当ててしまった“お宝”はこちら ↓
http://www.kals.jp/kouza/igakubu/news/pdf/2010/A.2.3.pdf

2ページ。タイトルは、シンプルに「A.2.3」。
内容は、世界のPAS(医師による自殺幇助)の概要を取りまとめたもの。

ただ、検索でPDF文書に行き当たるとよくあるように、
どこの誰が出した、どういう性格の文書であるかの情報が
そのページ内に含まれていない「名無しのゴンベさん文書」。

でも、内容が尊厳死法なので、気になって読んでみると、まず、その詳細なことに驚く。
例えば、こんな一見どうでもよさそうなことまで書いてある。

前ワシントン州知事、ブース・ガードナーは、パーキンソン病で、この病気自体は尊厳死法のもとでは、末期的疾患とは考えれていないが、法案を発議し、キャンペーンの陣頭に立ち、大口の寄付者にもなった。



それから、オレゴンの尊厳死法の実態について

1998~2007 年の間に医師等は致死量の薬剤投与の処方箋を総計541 枚書いたが、そのうち341 名が薬剤の摂取により死亡している。処方箋を受け取っても13名の患者は2007年末の時点で生存しており、処方箋を受け取った残りの患者は、結局、本来の病気が原因で亡くなっている。致死量の薬剤を摂取した後に、亡くなった患者グループの年齢中央値は69 歳であり、ほとんどすべてが白人で比較的、教養のある人達であった。ODHS のデータによると、グループの構成は男性のほうがやや多くなっている。約86%がホスピスに在院しており、81.5%が末期癌患者であった。

自ら行う医療の本質からか、あるいは個人的に(自殺幇助に)関わることに反対しているために、オレゴン州の多くの医師はこれまで致死量の薬剤を投与する処方箋を書いてはいない。2007 年に、45 人の医師が85 枚の処方箋を発行している(医師によって1枚から10 枚の幅がある)



こういう詳細を見ると、
毎年オレゴン州の保健当局から出される報告書の
たぶん2008年当たりの内容から拾っていると思われ、
「お、本気ね、あなた……」と唸るわけですが、

そのくせ、オレゴン州とワシントン州の対象者要件については、
詳細がなくて、ごく雑駁な説明で済まされていたりする。

なので、最初の印象は「なんだか、まだらに詳細だなぁ……」というものだった。

たぶん書いた人がたまたま手に入れた何本かの情報から
さささっと取りまとめて書いたもので、手元にたまたま詳細があった情報だけが詳細、
それで「まだらに詳細」という印象になるのかなぁ……と勝手な推理をしつつ、
読み進んで後半にさしかかると、

オレゴン州の尊厳死法施行は成功しているが、2007 年に致死量の薬剤を処方された85 人の患者が誰一人として、精神科医の評価を受けるように指図されていないということに対しては、懸念を覚える。



と、「名無しのゴンベ」さんが「懸念を覚える」と、いきなり個人の声になって力む。

この段落ではこの後も引き続き精神障害者に処方されたケースがあることが述べられていて、
じゃぁ、「懸念を覚える」あなたは、どういう立場の、いったい誰・・・?

不当な処方がされたケースがあると指摘し「懸念がある」と力みつつ
それでも「尊厳死法施行は成功している」って、どーゆーこと?

更に、それに続く結論部分では、

医師達は、自ら死を早めることを願う末期患者へ致死量の薬剤を処方するということに反対し続けるだろう。それにもかかわらず、ワシントン州の発議案が支持され、他州でも同様の法的な変更が起きる可能性があることで、医療関係者には、末期医療を改善し続けるために為しうることを見極める機会が与えられるのである



ここ、「ワシントン州の」から「与えられるのである」まで下線が引かれている。
(ここではゴチックにしてみました。)

この下線部、文脈から考えて、その意味するところは、要するに
「ワシントン州以外にも広がって行くなら、
医療職は末期医療の改善策として考えてみましょうね」ですね……。

ふ~む。興味深い結論だなぁ……。

そう思って振り返れば、真ん中あたりに
オレゴンで尊厳死法が出来たのは緩和ケアが改善されたからだ、と主張する段落もある。

そこには具体的なデータや情報は一切、全くないんだけど、
オレゴンでは医師が終末期の緩和ケアや在宅医療に秀でていて
死にたいと考えるような劣悪なケアを受ける患者が減ったから尊厳死法を作れたのだと
たぶん言いたいんだろうな……という感じの段落。
この段落が一番説得力に乏しいんだけどね。

これって……「まだらに詳細」なだけじゃなくて、「偏ってる」のか……?

だって、緩和ケアについていうなら、
オランダでは合法化以降、緩和ケアは崩壊していると前の保健相が言っているし、
「抗がん剤はダメだけどPASはOK」というのはオレゴンについては有名な話。
そういうのを全部はしょって、「成功している」って?

で、この文書、2ページめまで行くと、「回答例」なるものに出くわす。
ただし、問そのものは存在しない。

問1の回答例は面倒くさいから省いて、
問2と問3の回答例は、

問2 オレゴン州においては、医師による致死薬の処方が合法化されることによって、緩和治療の内容が改善されるという効果を生んだ。効果的な緩和治療やホスピスサービスは、患者が医師に自殺幇助を求める理由の多くに対応し、ひいては患者の自殺意思さえも変えうるということ。

問3  患者が法的判断をできる状態にあること、自発的に判断していること、十分な説明を受けた上で判断していること。



実は問2の回答の前半は、本文の内容の逆なんですわ。

本文は「緩和ケアが良くなったから尊厳死法が出来た」という趣旨なのに
回答例は「尊厳死法が出来たら緩和ケアが良くなった」と答えている。
さらに言えば、回答例の前半と後半の因果関係がムチャクチャ。
これ、本当ならペケ回答のはずなんだけど、なぜかこれが「回答例」。

で、問4のところには「訳例参照」とあるので、
ああ、さっきの下線部のことか……。

なに、これ? まさか、どこかの大学の医学部の試験問題とか……?
え、でも、それじゃぁ医学部の教育って、こんなに情報が偏向しているの……?
これで医学生に「米国の尊厳死法」とかって教育されたら、それって情報操作では……?

……と気になったので、
先のPDFのアドレスから、あれこれ検索してみたところ、
どこの医学部でもなくて、なんと河合塾! でした。

河合塾の中に「医学部学士編入コース」ってのがあるみたい↓
http://www.kals.jp/kouza/igakubu/index.html

Web講座とか公開実力テストとか通信講座とか公開模試とか、
いろいろあるみたいだから、上の「A.2.3」もそんな中の文書だったのでは?

訳例とあるから、もしかしたら英文の長文問題の日本語訳だったのか?

しかし、そういうことかぁ……と了解して改めて読み直してみると、
つくづく妙な解説文だと首をかしげてしまう。

どんなふうに妙か……というのが、
なかなか言葉で説明しにくいのだけど、

例えていうならば、Biedermanスキャンダルについて
以下のような問題文が作られているのを見せられた、みたいな……。

巨額のカネが顧問料として支払われたのは事実である。Biederman先生が2歳児だって双極性障害は診断できる、抗精神病薬を多剤投与して構わない、と論文や講演で言いまわったために、そういうのが流行になって子どもへの処方量が跳ね上がったことに懸念はある。

しかし、それでもBiederman先生の功績と権威は揺るがない。もちろん、それを疑う声は続くだろう。にもかかわらず、他の多くの著名児童精神科医が幼児期から双極性障害を診断し多剤投与を続ける可能性によって、医療関係者には、子どものメンタルヘルスを改善するために為し得ることを見極める機会が与えられるのである。

2011.05.17 / Top↑
暫定結果とのことですが、
今日の日曜日、スイスのチューリッヒ・カントン(州?)で行われた住民投票で

外国人への自殺幇助を禁止し、
一年以上、同カントンに居住している人に限る規制案は4分の3以上の反対で却下。

全面的な自殺幇助の禁止案は、さらに多数の反対により却下。

Zurich voters reject ban on “suicide tourism”
Swissinfo.ch, May 15, 2011



【スイスでの規制関連エントリー】
スイス議会が自殺幇助規制に向けて審議(2009/6/18)
Dignitas あちこち断られた末にお引越し(2009/6/28)
スイスで精神障害者の自殺幇助に「計画的殺人」との判断(2009/6/30)
スイス自殺幇助グループExit、当局と合意(2009/7/12)
APが「スイスは合法的自殺幇助を提供している」(2009/7/18)
チューリッヒ市が自殺幇助に“規制強化”とはいうものの……(2009/7/21)
スイス当局が自殺幇助規制でパブコメ募集(2009/10/29)
スイス連邦裁判所が「チューリッヒ市とExitの合意は無効」(2010/6/18)
スイス政府、“自殺ツーリズム”全面禁止せず、規制強化で対応の方針(2010/9/18)

【最近の気がかりな議論】
スイスで精神障害者への自殺幇助容認議論(2011/3/1)
スイスの地方自治体が高齢者施設での自殺幇助合法化巡り住民投票(2011/4/15)
スイスの自殺幇助団体Exit、高齢者の要件を緩和(2011/5/9)
2011.05.15 / Top↑
スイス、チューリッヒ郡の「自殺ツーリズム」住民投票関連。
http://www.bbc.co.uk/news/world-europe-13403074
http://www.bbc.co.uk/news/uk-13387444
http://www.google.com/hostednews/afp/article/ALeqM5gp1sJkca80FkTaraH-8Ni30sNxhw?docId=CNG.4432ee42b7b95abed5c3f576194fd62f.301

上の話題とも関係、また英国の著名人が自殺幇助合法化支持で発言。今度は元クリケットの選手。
http://www.dailyindia.com/show/439809.php

NYT。ほんと、ヘンな話なんだけど、米国の景気が回復して医療費にお金を使える人が増えたら、と警戒する保険会社が保険料を釣り上げるものだから、多くの人が治療を受けることを先延ばしにして、結局保険会社が記録的なボロ儲け、ということに。:これ、医師や学会にゼニを配りまくらないと商売にならない製薬会社や医療機器会社が、そのゼニを回収するために病気じゃない者までせっせと病人に仕立てて医療費をどんどんかさませていって、それで医療現場がさらに予算削減圧力を受けて……という救いのない悪循環の構図と、なんか似てない? 
Health Insurers Making Record Profits as Many Postpone Care: Companies continue to press for higher premiums, saying they need protection against any sudden uptick in demand once people have more mondy to spend on their health.

ジュベール症候群の遺伝子発見。
http://www.medicalnewstoday.com/releases/225229.php

内臓の先天奇形の原因となるアダムズ・オリヴァー症候群の遺伝子も発見。
http://www.medicalnewstoday.com/releases/225218.php

e99*jpさんのブログから「社会保障改革集中検討会議 生中継やめ言いたい放題」:「米国では40%の人がお金がなくて医療が受けられないのに、日本では90%の人が医療に不満を持っている」という発言が出ているんだけど、その「40%の人がお金がなくて医療を受けられない」米国の医療の実態、知らないわけじゃないんだ? なのに、どうしてワクチンだとか臓器移植だとか日本の医療を一定の方向に進める話になる時だけ必ず「米国では」「欧米先進国では」「国際水準の医療に追い付かなければ」ばっかり言うの? 「その米国では40%もの人が医療を受けられない実態もあるんだけどね」とはゼッタイに言わずに?
http://blogs.yahoo.co.jp/e999jp/61823774.html

日本語記事「ある貧しい若者の死が映す臓器売買の闇 - 違法市場、世界各地に広がる」
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90920021&sid=afXphtpsPBMo

【関連エントリー】
バイオ企業と結託した葬儀屋が遺体から組織を採りたい放題(2009/7/30)
被災地に“救援”ではなく“臓器狩り”に人が駆けつける“腎臓バザール”パキスタン(2009/7/31)
2011.05.15 / Top↑
当ブログでもいくらか追いかけてきたように
米国上院のGrassley議員率いる調査はこれまでに
製薬会社と精神科医や研究者らとの恐るべき癒着ぶりを暴きだしてきましたが、
(詳細は文末にリンク)

今度は医療機器メーカーの怪しげなお金の動きをターゲットにしている模様。

つい先日のProPublicaの報道でも
米国不整脈学会や高血圧学会の周辺の関連企業との蜜月ぶりが取り上げられて
その中でGrassley議員の調査から出てきた情報が参照されていました ↓

学会が関連企業相手にショーバイする米国の医療界(2011/5/11)

今回のProPublicaの記事は
ステント・メーカーと心臓病医療との関係を取り上げています。

それによると、

ピッツバーグの病院が今年初め、141人の患者に対して
あなたの受けた血管造影とステント挿入は無用だった可能性がある、と
通知した、とのこと。

また、そんな必要もない患者500人にステントを入れたとして
医師免許のかかったヒアリングに臨むことになっている
メリーランド州の心臓専門医もいる。

さらに、別途明らかになった調査では
ガイドラインではまず薬物療法を推奨しているというのに
血管造影をやってステントを入れた患者の半数以上が
その前に薬物療法を受けていなかった、という結果が出たばかり。

どうやらステントの過剰使用は、
調査だけでなく訴訟も多発して問題となってきたらしいのだけれど、

一方、米国血管造影インターベンション学会(SCAI)の09年の歳入820万ドルの内
57%に当たる4700万ドルが医療機器会社と製薬会社からのカネ。

金額のトップ3は、ステント業界のビッグ3。

SCAIの直前会長は学会がカネをもらっているからといって
スポンサーの製品のプロモをやったりリスクを過小に言うことはないと言い、

会員が現に無用なステントを患者に使っていた事実を指摘されると、
学会は「取り締まり機関」ではない、と抗弁しつつ、重大に受け止め
不適切なステント治療を行う医師は追放処分にする、と。

なにしろステントは儲かるんだそうで、

2005年から2009年に米国のメディケアで心臓ステント挿入に支払われたのは
24万8116件で13億ドル。

ガイドラインでは、まず薬物療法を試した後に血管造影やステントを、と推奨しているが、
無用なステントへの抑制の努力はあまり行われている形跡がない。

Grassley議員は8年と09年にかけて
ステントと心臓カテーテルの最新情報を現場に流してきた心臓血管研究財団についても
調査の対象とし、関連企業から財団が提携しているコロンビア大学へのカネの流れを
ディスクローズしていないことを問題とした。

しかし、それに対して、コロンビア大は
09年に金銭的な利益の相反については新しい方針を採択してはいるが、
医師らは大学職員となる前にカネを受け取っているので
ディスクローズする必要はないと答えたとのこと。

Cardiac Society Draws Bulk of Funding From Stent Makers
ProPublica, May 13, 2011


Biedermanスキャンダルを始め、
ビッグ・ファーマと精神科医らの間であったことが
全くそのまま、ここでも繰り返されている感じがしますが、

世界中に衝撃が走った、あのBiedermanスキャンダルから3年の間に
次々に同様のスキャンダルが暴かれ続けているというのに
その一切が日本では微塵も報道されないのは、一体なぜ?????



【Grassley議員の調査など関連エントリー】
抗ウツ剤めぐる研究者と製薬会社の癒着スキャンダル報告書(米国)(2008/11/17)
抗ウツ剤めぐる研究者と製薬会社の癒着スキャンダル報告書 Part2(2008/11/23)
今度はラジオの人気ドクターにスキャンダル(2008/11/23)
FDAの科学者ら「認可審査あまりにも杜撰」と内部告発(2009/1/15)
製薬会社がゴーストライターに書かせた論文でエビデンス作り(2009/8/8)

【いわゆる“Biedermanスキャンダル”関連エントリー】
著名小児精神科医にスキャンダル(2008/6/8)
著名精神科医ら製薬会社からのコンサル料を過少報告(2008/10/6)
Biederman医師にさらなる製薬会社との癒着スキャンダル(2008/11/25)
Biederman医師、製薬業界資金の研究から身を引くことに(2009/1/1)

【その他関連エントリー】
子どもへの抗精神病薬でFDAと専門家委員会が責任なすり合い(2008/11/19)
FDAと製薬会社の訴訟つぶしに待った(2009/3/5)
2011.05.15 / Top↑
英国のDr. Deathと呼ばれるDr. Irwinについては
以下のエントリーで追いかけてきましたが

英国で患者の自殺を幇助した医師が「証拠出すから逮捕に来い」と(2009/7/28)
英国で、自殺幇助容疑で元GP逮捕へ(2009/9/28)
自殺幇助ガイドライン後、初の起訴か(英)(2010/4/25)
自殺幇助の元GPに英国公訴局長「証拠はそろっているけど、公益にならないから不起訴」(2010/6/26)
英国のDr. Death「元気な高齢者にも医師による自殺幇助を」(2010/8/16)
中高の授業でDr. Deathが自殺装置を披露する「教育ビデオ」(英)(2011/4/17)


今週末のスイスの“自殺ツーリズム”への規制を巡る住民投票を受けて
多くの人がDignitasに向かう英国でも議論がさらに過熱しており、
そうした一連の議論の中で、

Dignitasが自殺者らの遺灰を湖に投棄していた件を問われて答えたもの。

「これは私に言わせればスイスの責任、葬儀屋の責任。」

「人は死んだらそれまで。死んだ人の灰がどうなろうと、私は一切興味はないね」

「自分の人生と宿命については自分がコントロールできて然りだ。
どんな死に方をするかだって自分が個人的に選べて然り」

これまで3人がDignitasに行くのに随行し、
もう一人をBerneのExit Internationalに連れて行ったというIrwin医師は

その中の2人の遺灰が英国の身近な人に送られたと語り、
Dignitasで死んだ残りの2人の遺灰についてはどうなったか知らない、と。

DR Death – I DON’T CARE WHEREDIGNITAS PATIENTS’ ASHES ARE
EXPRESS, May 15, 2011


去年の骨壷発見時のニュースについては こちらに ↓
チューリッヒ湖の底に大量の骨壷、Dignitasが投棄か(2010/4/28)

5月13日の補遺で拾った住民投票関連のニュースに、
この時の骨壷引き上げ作業の映像を含むビデオがあります。
2011.05.15 / Top↑

一つの流れにつながっていく移植医療、死の自己決定と”無益な治療”

英語圏の医療に関するニュースを漠然とでも毎日眺めて何年か経つと、最初はバラバラに見えたニュースが、線や面に繋がったりクラスターを形作ったりして、全体から1つの大きな絵が浮かび上がってくると感じることがある。「絵が見える」などというと占いじみて恐縮だけれど、ここ数年の英語ニュースには大きくいって3つの流れが見える。

いずれも当欄で何度か紹介したもので、①移植医療における“臓器不足”解消への動き(09年11月号他)。②自殺幇助の合法化に向かう「死の自己決定権」議論の高まり(10年2月号他)。そして「自己決定権」の全く反対方向から、③患者や家族の決定権を否定し、彼らの意向に逆らっても病院や医師らに「無益な治療」の停止を決定する権利を認める「無益な治療」論とその法制化の動き(09年2月号他)。

それぞれは最初、てんでに勝手な方向に向かって伸びていく川のように見えた。やがて「もしや近づき始めている……?」と微妙な気配を感じていたら去年5月、英国の生命倫理学者、ジュリアン・サヴレスキュとドミニク・ウィルキンソンが“臓器不足”解消策として「臓器提供安楽死」を提唱する論文を書いた(10年8月号で紹介)。臓器提供も安楽死も自己決定によって認められるなら、生きたまま臓器を提供する方法での安楽死の自己決定も倫理的に許されると主張したのだ。①“臓器不足”解消の川と②自殺幇助合法化の川が合流しようとしている……。私はそう思った。

この論文では、既にベルギーで行われたとして「安楽死後臓器提供」(手術室での安楽死で心停止後に摘出)も提唱されているが、それを裏付けるように去年12月、ベルギー医師会のカンファレンスで05年から07年に実施された4例が報告された。4人は重症の神経障害がある43歳から50歳の患者だったという。

ベルギーは医師による自殺幇助が合法化されている数少ない国や州の1つ。08年に公式に報告された安楽死者705人の2割を占める神経筋肉障害の患者の臓器は「比較的高品質」であり、安楽死者は臓器不足解決に使える「臓器プール」だと、プレゼンを行った医師らは主張した。プロトコルも存在するという。

既に①の川と②の川は合流していたのだ。これから③「無益な治療」停止の法制化の川もそこに合流していくのでは……。その意味することの恐ろしさに怖気を催しつつ、私は考えた。が、まさか③の川がこんな“急流”になるとは思わなかった。

2月2日、麻酔学ジャーナルの電子版に掲載されたのは、上記サビュレスキュとウィルキンソンの論文“Knowing when to stop: futility in the ICU”。

抄録によると、無益概念を整理し、ICUで医療サイドが無益・不適切と判断した治療は、家族が反対した場合にも一方的に拒否できるよう、意思決定手順のモデルを提示するもの。昨年5月の論文と同じ著者が書いていること、ターゲットがICUであることから、この流れはやはり①臓器不足解消の川を意識し、そちらに向かっているのではないだろうか。

実際、①の川も流れを速めている。去年7月に米国神経学会から出された成人の脳死判定ガイドライン改定版の著者を含むニューヨークの研究者らが、去る12月にNeurology誌に気になる論文を発表した。

ニューヨークの臓器提供ネットワークが07年から09年にかけて手掛けた約1300人の脳死ドナー(うち小児82人)のデータを調べたところ、1回目の脳死判定後2度目までに脳幹機能回復の兆候を示した患者は皆無。逆にその間に死亡し、利用できたはずの臓器が使えなくなったケースは12%に及ぶ。最初の判定の後2回目までの時間が長くなるにつれ家族の同意率が下がり、提供拒否が増えている。これは、いたずらに家族が苦しめられているエビデンスで、2回目の判定までベッドをふさぎ無駄な医療費もかかる。何よりも家族を苦しめないために1歳を超えた患者の脳死判定は1回で十分――。

3本の川は、こうして一つの大きな流れを形作っていこうとしている。それが私に見えてきた、いわゆる“国際水準の医療”の大きな絵だ。

このうち②と③の2本については、日本ではそんな川があることすらロクに知られていないが、それは日本には存在しないからなのだろうか。それとも地下を流れているからなのだろうか。

「世界の介護と医療の情報を読む」
「介護保険情報」2011年4月号

2011.05.14 / Top↑
日本で子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)なるものが行われているそうな。ご存知でした? 狙いとか概要が分かりやすいのはこちらの中心仮説。
http://www.env.go.jp/chemi/ceh/about/index.html

介護保険制度、ついに軽度者の完全切り捨てへ?
http://blogs.yahoo.co.jp/e999jp/61815719.html

フォローアップ受診時の子どもたちの笑顔を写真に撮って、現在NICU入院中の子どもの親たちの不安に少しでも希望を、との試みがある。:これ、いいなぁ。私も以前、母子入園の親たちに、現在すでにベテランになった障害児の親たちとの出会いを作ることを提案して、数人で順番に母子プログラムに出掛けたことがあった。評判とても良かったんだけど、担当者が代わってそれきりになった。専門家はすぐに「知識」を与えて「教育」しようとするけど、違うんだよ。一番不安な時って、ちゃんと生き延びて笑顔で暮らしている人の姿ほど、希望と力を与えるものはないと思う。「専門家でないとできないこと」ばかりじゃないんだけど、「専門家以外にできること」があると専門家が知ってくれないと、それは実現できないの。そこが難しい。
http://blogs.yahoo.co.jp/nicu_sp25/9448650.html

スイス、チューリッヒ郡でこの週末、自殺ツーリズムへの規制を巡って住民投票。関連の報道が多々出てきている。下側のBBCのリンクにあるビデオに、Dignitasがチューリッヒ湖に投棄したとされる骨壷が引き上げられる映像が含まれている。
http://worldradio.ch/wrs/news/switzerland/ethical-debate-rages-ahead-of-assisted-suicide-vot.shtml?24606
http://worldradio.ch/wrs/news/switzerland/ethical-debate-rages-ahead-of-assisted-suicide-vot.shtml?24606

英国でCompassion in Dyingが、自殺希望者にホットラインを解説。自殺の方法を教えることはしません。ただ、死にたい人に法的な情報を提供したり、その人の権利について相談に乗るだけです、と。
http://www.lifesitenews.com/news/euthanasia-group-to-launch-assisted-suicide-info-hotline/

米オレゴン州で自殺キットを売っている91歳のSharlotte Hydornさん、法的に禁じようとの州議会の動きにもちっとも悪びれず、去年自殺した29歳のNicholas Klonoskiさんは「確かにあたしのキットを買ったわさ。死にたい理由なんて聞いてない」「あたしが売っているのは自殺キットじゃない。Exit キットよ」と。
http://www.reuters.com/article/2011/05/12/us-suicide-kits-idUSTRE74B7OX20110512

NYTのコラムニスト Nicholas Kristofが「女性性器切除は中国の纏足と同じ運命をたどるべき」と。:Good for you!  読んだか、容認に転じようと小児科学会で画策するDouglas Diekema? Kristofによると、アフリカだけで年間3000人の女児に行われているという。子どもに与える苦痛、感染、排尿困難のほか、成人後に出産リスクを高めて死亡率が上がるという問題があるという。それなら途上国のマターナル・ヘルスで妊産婦の死亡率が心配だと言っているBill Gatesは、なぜ女性器切除をやめろと言わないのか。なぜDiekemaに米国小児科学会で逆方向への運動をさせるのか……。そういえばKristofはソマリアについて主に書いているけど、ソマリアって無政府状態なのにワクチンの接種率は高いんだとビル・ゲイツは自慢していたな。やっぱりDiekemaが言っていた「多少は受け入れてやらないと、米国の医師とそういう文化の母親たちとの信頼関係ができない」という辺りがホンネか? 現地の母親たちの西側先進国の医師らへの信頼関係を損なわないため? 新薬の治験とかワクチン接種をスムーズに進めるために?
http://www.nytimes.com/2011/05/12/opinion/12kristof.html?_r=1&nl=todaysheadlines&emc=tha212

NYTの社説で高等教育に参入している企業は「教育のことなんて考えていない」と規制強化を、と。:昨夜のNHKクローズアップ現代で、美術館や博物館の閉館が相次いで文化財が守れなくなっている現状を取り上げていたけど、それってコイズミ改革が指定管理者制度を導入した時に「そんなことをしたらこうなる」って多くの人が予測していたことが全くその通りに起きているだけじゃないか。でも、NHKはそこのところは言わず「入館料だけの独立採算では立ちゆかなくて」と言うにとどめる。こういうこと、実は「歴史や文化なんてゼニにならないものは教えなくてもいい。大事なのはカネに繋がる経済と科学」というところに傾き始めている教育施策とも繋がっているんだろうと思う。指定管理者制度で「事業者の自己責任」を負わされ切り捨てられたのは美術館や博物館だけじゃない。「そんなことをしたらこうなる」と当事懸念されたことは、そこでも起きている。
Education is the Last Thing on Their Minds: Lawsuits brought by whistle-blowers make a strong case for why more regulation of higher-education companies is needed.

な~んか象徴的な記事がNYTに。「誰のこと、グランマって?」。米国のベビーブーマーたちは孫が出来ても「おじいちゃん」「おばあちゃん」と呼ばれるのは年寄臭くてイヤだからと、ニックネームで呼んでもらってるらしい。
Who Are You Calling Grandma?:Reluctant to be called anything that makes them sound old, baby-boomer grandparents are naming themselves or accepting toddlers’ nicknames for them.

ノーベル賞経済学者Robert W. Fogelらが近く出版する本”The Changing Body”で、テクノロジーと栄養状態の改善で人間の身体が短期間に大きくなり長生きになっているが、それは果たして本当に「発展」なのか、いったいどこがリミットなのか、と疑問を提起しているらしい。で、それを受けて6人の学者のディベイトをNYTが組んでいる。:この本、読めよ、トンデモヒューマニストたち。
http://www.nytimes.com/roomfordebate/2011/05/12/do-we-want-to-be-supersize-humans?nl=todaysheadlines&emc=thab1

一方、「地球温暖化で地球上から消えゆく前に訪れておくべき場所100選」写真集も出版された。:買いたいな、とちょっと思うくらい写真がきれい。12ポンド。そう高くはない。
http://www.guardian.co.uk/environment/2011/may/12/100-places-under-threat-global-warming?CMP=EMCGT_130511&

ドイツの裁判所、91歳のウクライナ人にホロコーストの共犯者として有罪判決。懲役5年。
http://www.guardian.co.uk/world/2011/may/12/john-demjanjuk-guilty-nazi-war-crimes?CMP=EMCGT_130511&

子どもの運動不足は9歳にして心臓病リスクに繋がる。
http://www.medicalnewstoday.com/releases/225058.php

それなのに子どもの3分の1は学校以外で全く運動をしていない。
http://www.medicalnewstoday.com/releases/225097.php
2011.05.13 / Top↑
オーストラリアで
脳卒中で「脳死」と診断された女性が2週間の意識不明状態から
車いすで病院内を動き回れるほどに回復を遂げている。

その間、夫はずっと医師らから呼吸器取り外しへの同意を求められたが
信仰心の篤いカトリックである夫は抵抗を続けた。

結局、病院は気管切開に妥協。
気管を切開した上で呼吸器が外された3日後、妻の意識が回復したという。


Gloria Cruzさんは3月7日、就寝中に脳卒中の発作を起こし
Royal Darwin Hospitalに救急搬送された。

CTスキャンを撮り医師は脳腫瘍があったのだろうといい、
脳の手術が行われたが夫には詳細な説明はなかった。

ICUで対面した妻は顔がはれ、髪がなく、口にも頭にも管が挿入されて
死んだように横になっていた。27年間愛してきた妻の姿ではなかった。

医師らは「望みはない」といい、48時間以内に死ぬだろうと告げた。

医師らは人工呼吸器をとめて死なせてあげようと勧めたが
夫は「まだ奇跡が起こる可能性はある。私がどんなに妻を愛しているか
髪はご存じだから、と医師に言ったんです。妻を苦しめたくはないけれど、
でもまだ死んでほしくないんだ、と」

48時間の猶予を頼んだが、
医師とソーシャル・ワーカーと患者アドボケイトが電話をかけて来て
呼吸器取り外しに同意するよう求めた。

夫の抵抗に、病院側もついに呼吸器を外す前に気管切開をすることに同意。

2週間後、妻の喉に呼吸するためのチューブが挿入され、
人工呼吸器のスイッチが切られた。

その3日後、妻の意識が戻った時には病院スタッフは唖然としたという。
医師は驚いて「奇跡だ」と言い、夫を振り向いていった。
「私の診断が間違っていて良かった(I’m happy my prognoses was wrong)」。

Stroke victim’s miracles survival
The NT News, May 11, 2011


記事に掲載されている写真をぜひ見てください。
現在の意識状態については何も書かれていませんが、
Gloriaさんの表情がすべてを物語っています。

この記事に寄せられたコメントの一つが
「よかったなぁ。臓器提供チームが大急ぎで手術に入っていたら、
あんた、今日こうやって体験談なんか語っていられなかったぜ。
臓器提供はいいことだけど、それはドナーが死んでいる時だけだ。
でも、死んでるかどうかなんて、分かりようがないだろ?」



これまでの類似のケースとして当ブログが把握しているものを
以下に取りまとめてみました。

【米国:リリーさん】
植物状態から回復した女性(2007年の事件)

【米国:ダンラップさん】
脳死判定後に臓器摘出準備段階で意識を回復した米人男性のニュース(再掲)(2009/7/30)

【ベルギー:ホウベン?Houbenさん】
23年間“植物状態”とされた男性が「叫んでいたのに」(ベルギー)(2009/11/24)
「なぜロックトイン症候群が植物状態と誤診されてしまうのか」を語るリハ医(2009/11/25)

【日本:加藤さん】
「植物状態にもなれない」から生還した医師の症例は報告されるか?(2011/1/19)

【米国:ゴッシオウ? Gossiauxさん】
事故で視力を失った聴覚障害者が「指示に反応しない」からリハビリの対象外……というアセスメントの不思議(2011/2/6)

【その他、関連エントリー】
「植物状態」5例に2例は誤診?(2008/9/15)
「脳死」概念は医学的には誤りだとNorman Fost(2009/6/8)
2011.05.13 / Top↑