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アシュリー事件で詳細な調査を行ったWPAS(現DRW)を含む
全米の障害者の人権擁護ネットワーク、NDRNから
“アシュリー療法”、強制不妊、治療の一方的停止と差し控えを批判する
大部の報告書が出たことと、その冒頭の批判声明について、
以下のエントリーで紹介してきました。

障害者人権擁護ネットから報告書「“A療法”・強制不妊・生命維持停止は人権侵害(2012/6/20)
障害者の人権を侵害する医療への痛烈な批判: NDRNの報告書「まえがき」(2012/6/22)


“アシュリー療法”と強制不妊についても、
書いておくべきことはいくつかあるのですが、

この報告書を読んで、最も驚き、心が騒いだのは
いわゆる“無益な治療”論による障害児・者の医療の切り捨てが
既にここまで来ているのか……という事例の数々。

とり急ぎ、報告書の27ページから30ページにかけて紹介されている7つのケースについて。


① Amelia Rivera事件:知的障害を理由に腎臓移植を拒否(2012年1月)

この事件は当ブログでも取り上げており、詳細は以下のエントリーに ↓
「知的障害があるから腎臓移植ダメ?」 フィラデルフィアこども病院(2012/1/18)


② 薬の副作用治療のはずが栄養も水分もなしの緩和ケアに(WA州)

知的身体にも障害のある若い男性が、
精神科薬の副作用の治療で入ったナーシング・ホームで
不当にホスピスケアに切り替えられ、餓死させられそうになったケース。

精神科薬の副作用で重大な神経障害を起こし、入院を経て
薬の副作用の治療目的でナーシングホームに入った。

ところがホームでは“debility NOS (特に分類されない虚弱)”と診断され、
ホスピス・サービスへ切り替え、栄養と水分の供給を行わず、
男性はそのまま死なされることになった。

DRWの調査員が訪問し、本人がうめき声を上げているのは空腹のためだと訴えても、
スタッフはどうせ何も分からなくなっているとして相手にしなかったので、
調査員は男性に眼でペンを追わせて意識が完全であることを証明し、
治療計画の変更を迫った。

その結果、男性には適切な栄養とリハビリ・サービスが供給され、
さらに通常治療に切り替えて口から食べるよう促したところ
男性は体重とともに身体能力を取り戻し、担当医は「奇跡の回復だ」と驚いた。


③ 法定代理人が本人の意思を無視してDNR指定(ND州)

人格障害とアル中で腎臓障害のある男性 Waldo (40)が
精神病院と治療施設と監獄とを行ったり来たりして
行動が改まらないことに業を煮やした法的代理人(法人)が
もはや改善の見込みも、支援を受けて自立生活を送れる見込みもないとして
Waldo を本人の意志に反して“no code(蘇生無用)”に指定した。

NDP&Aが介入し、裁判所でヒアリングが行われ、
弁護士に相談した代理人が、本人の意思を尊重することに同意した。


④ 78歳、知的その他の重複障害あるから大腸がん手術ダメ(RI)

ロードアイランドの入所施設で暮らす78歳の男性に大腸がんが必要だということになり、
州法に基づいて施設関係者が州に対して申請を行い、
手術を受けなければ男性は1年以内に死ぬとの予後情報を添付したが、

外科医は、これほど重い障害がある患者を延命させる理由はない、と反論。

本人は障害のために言葉を持たないが、幸いなことに
本人は生きていることを喜びとし手術を受けたいと希望していることを
施設職員が確信していたために、

そのことを医師に伝え、信じてもらうことができた。

それらを前提に考えれば、
手術の利益はリスクを上回ると外科医も考えを変えて
男性は手術を受け、その後2年間生きた。


⑤ 自己決定能力があるのに家族としか意志疎通を図らない病院 (OH州)

本人に自己決定能力があるので代理人が設けられていない人が
病院の緩和ケア病棟に入院させられてしまい、人権が侵害されているとして
ケア提供者から連絡を受けたオハイオ州の人権擁護団体(OLRS)が介入した。

病院側は言語障害のある本人との意思疎通をまったく試みないまま
家族の意向に沿って、症状を悪化させるとの理由で栄養と水分を中止していた。

OLRSは病院の危機管理課に連絡を取り介入を求めると同時に、
セカンド・オピニオンを求めた。

その結果、セカンド・オピニオンは当初の診断と変わらなかったが、
病院が積極的に本人に意思確認を図るようになった。
また姉(妹?)が代理人に任命され、彼を
緩和サービスのあるナーシング・ホームに移した。


⑥ 遠方に住む無関心な代理人が「検査も治療もしないで」 (IL州)

ナーシング・ホームの管理者からの通報で
内臓出血を起こしている入所の女性について
もう何年も面会のない遠方在住の代理人が
これ以上の検査も治療もしないよう求めてきたということだったので、

代理される人への虐待やネグレクトが疑われる場合の緊急代理人制度について
EFEから情報提供を行い、施設側がその手続きを行って、
州から緊急代理人が任命され、女性に救命治療が行われた。


⑦ 若干20歳に医師が「辱そうも障害も重すぎるから、治療は無益」 (ワシントンDC)

John Smithさんは若干20歳。
2010年6月11日に、感染を起こしてステージⅣとなった辱そうと
もともとの骨の感染症からくる骨髄炎の治療のため、入院した。

当初は点滴で抗生物質での治療が予定されていたが、
入院後に医師らは、傷が酷いうえに身体的にも知的にも障害が重いので
治療の利益がリスクを上回らないとして、治療を取りやめ、
栄養と水分の供給もなしに、介護施設に送って死なせようという、ということに。

とりあえずの受け皿がないために、そのまま病院で症状を悪化させていく
Johnさんを案じた介護スタッフが懸念の声を上げても、
医師らは「治療法はないし、もうすぐ死ぬ」と取り合わない。

7月になると、医師らはJohnさんをDNR指定とした。
その意思決定の理由には障害も含まれている。

しかし入院時にJohnさんの保護権は州にあり、
州法の規定によれば、意志決定は裁判所に任命された法定代理人と
法定保護者である児童家庭サービス局との協議によって行われなければならない。

ワシントンDCの人権擁護団体は
病院の担当医が上記所定の手続きを満たしていないことを文書によって証明。

Johnさんが、なんら積極的な治療を受けられなかった2か月の入院を終え、
地域の自分のアパートに退院して帰った8月2日には、
体重が10キロ以上も減り、辱そうは3倍の大きさになっていた。

その後、2回の入院で抗生物質による積極的な治療を受け、
その後地域の自宅に戻ったが、傷は回復しつつある。

「あれほど辛い思いをしたにもかかわらず、
また、この患者は死ぬと病院医師らが診断したにもかかわらず、
彼は今でも地域で生きて暮らしている」
2012.06.26 / Top↑
ビル・ゲイツが「やっぱり人類の将来には原発よ」と、自らが立ちあげに関与した次世代型原発開発企業のTerraPowerを売り込み。
http://www.bizjournals.com/seattle/blog/techflash/2012/03/gates-nuclear-energy-technology-is.html

で、その原発開発でTerraPowerの相棒になるのが日本の東芝なんだとか。:なるほど、最近にわかにゲイツ氏の関心事に日本政府が力を入れていることの背景には、タチ・ヤマダ氏の武田製薬赴任の他にも、こういう事情もあるのか?? それから原発の最初から結論ありきの再稼働なんかも?
http://www.bizjournals.com/seattle/blog/techflash/2010/03/reports_bill_gates_and_toshiba_to_team_on_new_nuclear_reactor.html

だいぶ前から、ビル・ゲイツがハワイのLanai島を買うのではないか、という噂が流れているけど、どうやら本当らしい。:そのうち世界の何割かがゲイツ一族やゲイツ財団の所有になったりして? 東京都みたいに、判断に合意形成がいるわけでもないし。 
http://www.bizjournals.com/seattle/blog/techflash/2012/06/will-bill-gates-buy-hawaiian-island-of.html

Roger Clemens と Lance Armstrong のステロイド疑惑にNorman Fostが登場し、「魔女狩り裁判みたいなことは止めろ」というタイトルの論考で例によって「ステロイドを使って何が悪い」論を展開したのに対して、「いや、非倫理的である」との批判。
http://www.usatoday.com/news/opinion/letters/story/2012-06-24/roger-clemens-peds/55797408/1

日本。石田東尾ダウン症告白に見る、高齢出産賛美の裏で中絶激増。:米国ではダウン症の可能性があるとされると9割が中絶している。……でも、考えてみたら、もう何年も前からずっと「9割」と言われ続けている、というのも妙な話。
http://biz-journal.jp/2012/06/post_289.html

【ダウン症児の中絶関連エントリー】
選ばないことを選んだ夫婦の記録(2007/11/4)
ダウン症児:産んだ夫婦・中絶した夫婦(2008/4/18)
英国でダウン症児の出生数が増加傾向(2008/11/24)
ダウン症の安全確実な出生前検査まもなく米国で提供開始(2009/2/25)
ダウン症アドボケイトと医療職団体が出生前診断で“合意”(2009/7/1)
ダウン症胎児急増するも出生率は減少(英)(2009/10/28)
ダウン症理由の中絶、実は政府統計の2倍(英)(2009/11/16)
ダウン症らしいからと、依頼者夫婦が代理母に中絶を要求(カナダ)(2010/11/18)


遺伝理論を巡る、Richard Dawkins vs EO Wilson の代理戦争が書評をきっかけに勃発。
http://www.guardian.co.uk/science/2012/jun/24/battle-of-the-professors?CMP=EMCNEWEML1355

NYT。犯罪者の出所後に社会復帰までのステップとして機能するハーフウェイ・ハウスで、民間の場合、ドラッグや暴力が横行しており、スタッフも専門的な研究を受けておらず、もっと管理監督を、との声。
Halfway Houses in New Jersey:Drug use, violence, poorly trained staff and escapes are common in the privately run institutions. Lawmakers must scrutinize the halfway houses, create standards and enforce them.

NYT。子どもへの性的虐待スキャンダルに揺れるヴァチカンが、FOXニュースのレポーターを広報担当者として起用。
Fox News Reporter Hired as Vatican Media Adviser: the correspondent, Greg Burke, will try to shore up the Vatican’s communications strategy in a paper troubled by a widening leaks scandal and charges of sexual abuse by priests.
2012.06.26 / Top↑
ミュウはもう何度か書いてきたように
「おかあさんといっしょ ファミリーコンサート」が3度のメシよりも好きなヤツで、
家にいる限り、午前1回、午後1回のコンサートDVDが決して欠かせぬ日課となる。

その時には親が「○○(タイトル)にする?」と聞くのに対して
「ハ(Yes)」または首振り(NO)で答えて選んだり、

時には、ほぼ全巻を取りそろえてある棚のあたりを指さして、
「他のものを出してこい」と要求することもある。

そして、ずらっと目の前に並べられたケースの中から
「あれにしようかな、あ、でもこれもいいし……きゃ~、ど~しよ~」みたいに
実に楽しそうに目移りしつつ、しかし十分に悩ましげに、時間をかけて選んでいく。

面倒くさくなった親が適当なのを勝手にかけてしまったりすると、
オープニングの音楽がチャラッチャラ~と流れ始めたところで、
「これは違うっ!」と頑強な「ダメ出し」を食らう。

ケースからも最初の曲の出だしからも分かるほど、
ミュウはそれぞれをちゃんと判別しており、その時々の「選好」というものがあるんである。

そういえば、DVDを見ている間は
そのケースをずっと手に持っているのが子どもの頃からの彼女のルールだった。

手が大変不器用なので
1時間ちょっとの視聴の間には
何度かケースがずれて上手に持てなくなる時があるのだけれど、

そういう時、ミュウはいったん別の手に持ち替えたり、または
手にしたケースを自分のお腹に押しあて、腹でケースを支えつつ握り直す……という芸当を見せる。

それは、子どもの頃からずっとケースを持ったままDVDを楽しんできて、
その過程で、ケースをとり落としそうになるたびに「試行錯誤」する中から
少しずつ見つけ出してきた修正方法なんだなぁ……ということを、

この週末に、いつものように
なんてことなく、お腹を使ってケースを持ち替えている娘を見て、改めて考えた。

一般に「ものを考える」能力があるどころか、
「何も分からない」と思われているらしい重症のウチの娘が

「手にしているものを持ちにくくなってきたら、
お腹に押し当てて支えておけば、落とさずに握り直すことができる」と
試行錯誤を重ねながら、その方法を獲得した……ということは、
彼女が「思考している」ということなんでは……?


そういえば、数年前までミュウのおもちゃの一つに
親が使い終わった携帯電話が含まれていて、
片手で握ったまま、その親指だけでキーを押しては
画面が変わるのを楽しんでいたのだけれど、

半年ばかりそうやって遊んでいるうちに、ミュウはいつのまにか
親指の指先だけではなく、外に反らせた時の関節の内側や、
親指の付け根の出っ張りでも、握りこんだ携帯のキーを押すことができるようになっていた。

広範なキーを押すために
これもまた試行錯誤で獲得した彼女なりの「工夫」であり「わざ」のようだった。

時々、いつのまにか握る場所まで変わっていることがあるので、

注意して見ていると、
いったん別の手に持ち替えてから握り直すやり方のほかに、
時々ほんの一瞬だけ、携帯電話を握りこんでいる手をぱっと離すことがある。

その一瞬に、ほんの僅かに上または下に携帯を移動させて
次に握る場所を微妙に調節していることが判明した。

こいつは、本当はかなり頭がいいんではないか……。

私としては、つい、そう思ってしまうのは、
やっぱり、ただの親バカなんだろうか。

実際のところ、
この子たちの頭の中でどれほどの「思考」が行われているか
本当は誰にもわからないではないか……と、私は思うのだけれど。
2012.06.26 / Top↑
East Kent Hospitals の神経科部長で、Kent大学の臨床神経科学科教授の
Patric Pullicino氏が、ロンドンでの医師会講演で

現在、英国で病院またはNHSの医療化で亡くなる人は年間45万人おり、
そのうちの29%に当たる13万人がリヴァプール・ケア・パスウェイ(LCP)と呼ばれる
終末期ケアのパスの適応となっているが、

「LCPをスタートさせるだけのエビデンスがなく、
LCPはケアのパスウェイというよりも死の幇助のパスウェイになっている」

「まだかなり長く生きられるはずの多くの高齢患者が、
LCPによって殺されているのではないか」

「患者は状態の適切な分析もなしにLCPを始められていることが多い」

などと語り、その要因として、
ベッドを早く空けて回転させたいことと、
辱そうなど、手のかかる高齢患者への看護の手間を省きたいことの2点があるのでは、と。

また、一応、死が数時間後または数日後に迫っているなどと言われるが
それらは「明らかに誤り」であり、

QOLや予後に関する担当医やチーム内の個人的な見解が作用して
患者がLCPの対象とされている、とも。

Pullicino医師自身、
てんかん発作がある71歳の患者が肺炎で救急搬送されてきた際に、
週末のピンチヒッターで勤務していた医師が本人や家族の同意もなしにLCPを決めて、
モルヒネを投与していたので、月曜日にそれに気づいて
周囲の抵抗を受けながらも撤回させた経験がある、という。

その男性は治療によってけいれん発作が治まり、4週間後に退院して家に帰り、
その後1年2カ月後に別の病院に運ばれて、やはりLCPの適用となり死亡。

他にも、3年前に、ロンドン大学の老年医療科の名誉教授 Peter Millard氏、
St. Luke病院がんセンターの緩和ケア部長、Peter Hargreaves氏などからも、
「裏口安楽死」の警告の声があり、

弱者の治療(の判断?)に経済要因が持ち込まれている危険性が指摘されていた、とのこと。

Top doctor’s chilling claim: The NHS kills off 130,000 elderly patients every year
The Daily Mail, June 19, 2012


09年に、現場医師らがDaily Telegraph紙に内部告発の手紙を書いたのも、
これと全く同じ、LCPが高齢者であれば機械的に適用されている、との指摘でした ↓

“終末期”プロトコルの機会的適用で「さっさと脱水・死ぬまで鎮静」(英)(2009/9/10)


3年前に出た医療現場でのLCP適用への批判とは、
この辺りのことのように思われます。

しかし、この記事の1か所には
「Pullicino医師は、その71歳の男性患者がその後に生きた14カ月は
NHSと納税者への大きなコストによって賄われたものだと認めざるをえなかった」という
下りがあるので、その場でそうした質問(突っ込み?)があったものと思われ、

英国でも米国同様に“無益な治療”論は
既に当該患者に対する治療そのものの無益性よりも、
社会がそのコストを容認するか否かという意味での無益性へとシフトしている……ということでは?
2012.06.26 / Top↑
2月に論争になった「出生後中絶」すなわち新生児殺しの容認について、きっかけとなった論文を掲載したジャーナルJME(編集長はSavulescu)が、その論争の続編みたいな特集を予定しているらしい。:より誠実な生命倫理の議論が志向されている、というよりも話題性が追求されているだけなのか、まるで生命倫理学者の世渡り術はタレント並みなのか……とか思ってしまう。昨今の倫理学者はラディカルなことを言えば言うほど、権威ある大学に迎えられていく、と言っていたのは誰だったっけ?
http://www.bioedge.org/index.php/bioethics/bioethics_article/10121#comments

【「出生後中絶」関連エントリー】
シンガーが「出生後中絶」論文論争に登場(2012/3/9)
中絶してもいいなら“出生後中絶”と称して新生児殺してもOK(2012/2/27)
“出生後中絶”正当化論は「純粋に論理のエクササイズ」(2012/3/5)


英国の医師から「NHSは毎年恒例患者を13万人、見捨てて死なせている」と内部告発。:前にも出た“終末期”プロトコルの機会的適用で「さっさと脱水・死ぬまで鎮静」(英)(2009/9/10)と同じく、リヴァプール・パスウェイの機会的適用の問題。日本でも尊厳死法ができたら、恐らくは医療現場はこういうところに向かうのでは? 
http://www.dailymail.co.uk/news/article-2161869/Top-doctors-chilling-claim-The-NHS-kills-130-000-elderly-patients-year.html

日本語。臓器移植:「心停止後」欧米で急増 ドナー不足解消狙い:オランダ、ベルギーと安楽死を合法化している国、一方的なDNR指定が問題になっている英国、UNOSが心臓死後臓器提供DCDを「循環死後臓器提供」と呼び替えることを提言している米国で突出していることが目を引きます。そもそもDCDについては知る人にはとっくに周知の事実だったのに(当ブログでも関連エントリーは多数あります)、今このタイミングになって一般のメディアがことさらに取り上げることの意味を考えてしまう。
http://mainichi.jp/select/news/20120624k0000e040099000c.html

米、人種間の資産格差22倍 経済危機が少数派直撃
http://www.47news.jp/CN/201206/CN2012062201001311.html

ゲイツ財団が、MITとハーバード大にオンライン教育ツール開発のグラントを100万ドル。
http://www.bcs.org/content/conWebDoc/45794

囚人の高齢化問題。:前にも⇒「刑務所で認知症患者が増加、介護も囚人に(米国)」書きました(2012/5/7)
http://www.medicalnewstoday.com/releases/246626.php

英・豪・米の介護者週間にも家族介護の美化が見られることには、いつも忸怩たる思い。
http://www.surreycomet.co.uk/news/9775909.Devoted_carer_says_mum_is_number_one/

一方、こういう介護者週間メッセージはありがたい。「苦しい時には声を」。
http://www.thecomet.net/news/carers_week_message_don_t_suffer_in_silence_1_1416233

日本語。結城康博さんのブログ記事で「寝たきり専門の介護施設???」:高齢者では療養病床の廃止で追い出された高齢者が、こうした貧困ビジネスの餌食になっている実態がある。これが、いずれ重症障害者でも起こっていくのではないか、と私はずっと前から恐ろしくてならない。
http://blogs.yahoo.co.jp/yyyyyasujp/52811041.html

介護予防に、ビタミンD。:補遺でも散々拾っているけど、ビタミンDとスタチンとアスピリンは、予防医学の「三種の神器」? でも、こういうのも ⇒ サプリで散々儲けた後で「やっぱりビタミンDの撮り過ぎはよくない」って(21010/11/30)
http://www.medicalnewstoday.com/articles/246555.php

ピッツバーグ医大の研究で、遺伝子操作でマウスの老化を止めらたんだそうな。ピッツバーグと言えば、心臓死後臓器提供DCDのメッカでもある。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/246914.php

こちらはコカインの作用を無化するコカイン中毒DNAワクチン研究。
http://www.medicalnewstoday.com/releases/246761.php

グローバルな二酸化炭素排出量はこれまで思われていたよりもはるかに大きい。
http://www.guardian.co.uk/environment/2012/jun/21/global-carbon-emissions-record?CMP=EMCNEWEML1355

今後5年間で、英国の警察業務の多くの部分が民間企業に委託されていくだろう、との予測。:なんか、こわいな。私兵化しないのかな。
http://www.guardian.co.uk/uk/2012/jun/20/g4s-chief-mass-police-privatisation?CMP=EMCNEWEML1355

英国で、年金問題を巡り医師らがスト。
http://www.guardian.co.uk/society/2012/jun/21/doctors-strike-pensions-hospitals-gp-surgeries?CMP=EMCNEWEML1355
http://www.guardian.co.uk/society/2012/jun/21/doctors-strike-action-pensions?CMP=EMCNEWEML1355

英国の生活保護制度の変更に際して、窓口の対応が悪ければ申請者に自殺者が多発する恐れが指摘されている。:どんどん進んでい英国の社会保障費カット。
http://www.guardian.co.uk/society/2012/jun/20/jobcentre-supervisors-suicide-risk-benefit-claimants?CMP=EMCNEWEML1355

日本では<生活保護>33歳女性の申請拒否、指導で受理 京都 舞鶴:バッシングでこういうことが起こるのは予想できたこと。府の良識ある対応がまだしもの救いだけれど。
http://news.biglobe.ne.jp/domestic/0620/mai_120620_4805156935.html
2012.06.26 / Top↑
“アシュリー療法”を巡るシアトルこども病院とWPASの合意の期限にあたる5月に
WPAS(現DRW)が加盟する全国的障害者人権擁護ネットワーク 
National Disability Rights Networkが出した報告書について
6月20日の以下のエントリーで取り上げました。

障害者人権擁護ネットから報告書「“A療法”・強制不妊・生命維持停止は人権侵害(2012/6/20)


現在、半分くらいまで読んだところなのですが、

まず冒頭の「まえがき」にあたるNDRNのトップの書簡に
強く胸を揺さぶられたので、

以下に全文を仮訳してみました。


今この時にも米国のどこかで親や代理人が医師と椅子を並べて、ターミナルでもない人の生命維持治療の差し控えや、子どもの生殖器や乳房芽の切除や、ホルモン療法による成長抑制について相談している。後者は、この療法を受けた最初の子どもとされる女児の名前にちなんでアシュリー療法と一般に呼ばれているが、我々の社会が障害のある人々を価値なきものとみなし、その人権を侵害してきた数々の出来事のつらなりの先に、最も新しく追加された、最も恥ずべき事例である。

こうした相談が行われるのは、そこで問題にされている人がほとんど価値のない存在だとみなされているからに他ならない。彼らはただ障害を持って生まれたというだけの理由で、十全な人間ではないものとみなされ、自由やプライバシーの権利も、望まない侵害を受けない権利(right to be left alone)からも無縁とされてしまうのだ。

医師と親とが一緒になって、意識状態やQOLについての想定だけを根拠に、子どもから臓器を摘出し成長を抑制することを決めてしまうなど、考えただけでもショッキングで醜悪である。障害者がどれほど「お荷物」として想定されているか、驚くほどくっきりと描き出している事例がオレゴンにある。出生前診断が見逃したためにダウン症候群の子どもが生まれたと訴える両親に、陪審員が300万ドルの支払いを認めたのだ。その子どもの出生は「ロングフル・バース」と称された。こんなことが米国で起こり、今も起こっているという現実は、米国人として我々が持っているはずのコアな価値観に照らせば、汚辱である。それが自分で声を上げることのできない人たちの身に起こっているのだから、なおのこと汚辱である。こうした野蛮な実態に光を当て、それを支持しつつ21世紀を進もうとする医療界を批判すべく、NDRNは当報告書“Devaluing People with Disabilities: Medical Procedures that Violate Civil Rights. 障害のある人への軽視:市民権を侵害する医療”を刊行した。

これまで30年以上に渡って障害者の人権を専門とする弁護士として、またそのアドボケイトとして活動してくる中で、私はもう障害者に対するありとあらゆる形態の差別と有害行為を見てきたと思うことも多いが、残念なことに、その私ですら驚き衝撃をうけるほどの行いを人間はさらにやってのける。

多くの人がアシュリー療法は医療ではなく優生思想だと考える一方で、医療界では医師も医療倫理学者も病院側も、そして時には障害のある子どもの親までもが、この子たちは知的障害が重く理解する能力がないから、何の害もなされていないと主張する。そうして市民権を侵害する医療決定を正当化してしまうのである。

人は誰も、市民権と人権と生まれながらにしての尊厳と共にこの世に生を受ける。障害があっても、その事実は変わらない。それなのに、障害のある人は日々、完全な一人の人間であると認めてもらうための闘いを強いられている。

なるほど我々は米国障害者法(ADA)など、多くのすばらしい進展を遂げてきた。しかし、アシュリー療法などが容認されてしまう時、いや、提唱されてしまうだけでも、それは障害のある人々には何の価値も権利も尊厳もない世界に向かって傾斜する、すべり坂である。

Curt Decker
Executive Director
National Disability Rights Network
(ゴチックはspitzibara)


言及されているオレゴンのケースは、今年3月の出来事。
関連情報は、ざっと以下に ↓

http://www.droregon.org/the-dro-blog/oregons-wrongful-birth-case
http://www.oregonlive.com/portland/index.ssf/2012/03/jury_rules_in_portland-area_co.html
http://www.dailymail.co.uk/news/article-2113342/Deborah-Ariel-Levy-Portland-couple-wins-case-Legacy-Heath-wrongful-birth-daughter-born-Down-syndrome.html



【ロングフル・バース訴訟関連】
「出生前診断やらないとロングフル・バース訴訟で負けますよ」と加医師会(2008/11/8)
ロングフル・バース訴訟がテーマ、Picoultの近刊を読む(2009/8/10)
Picoult作品のモデル、NH州のロングフル・バース訴訟(2009/8/11)
2012.06.26 / Top↑
米国で初めて、
公的強制不妊プログラムの犠牲者への補償を決めたNC州の決断については
以下のエントリーで拾ってきましたが、

NC州で、かつての強制不妊事業の犠牲者への補償に向け知事命令(2011/3/21)
NC州の強制不妊事業の犠牲者への補償調査委員会から中間報告書(2011/8/15)


ここへきて「まさか……」。
まさに絶句の展開です。


Bev Perdue知事と州下院が支持しているにもかかわらず、
犠牲者一人につき5万ドルを支払う補償案は上院で予算化を認められなかった。

1350人から1800人と言われる犠牲者が名乗り出た際に
州には9000万ドルが必要となり、その懸念が背景にあるものと思われるが、

これまでに生存中の犠牲者として認定された人は146人で
今後手続きにかかる申請も200人分。
それほどかからないと言われてもいた。

上院議員の中には、

合法的に実施されたプログラムの賠償を行ってしまえば、
次には奴隷やインディアンの子孫にも賠償しろ、など、
米国が過去にやった強制不妊以上のことにまで賠償の門戸を開くことになる……と反対する声も。

同州は21日、
強制不妊の新たな申請を打ち切り、
今後は州のアーカイブ部門で対応することに。

当然、犠牲者や支援者は怒っている。

14歳で不妊手術をされた Elaine Riddickさんは
「政治家のメンタリティーは
優生思想を支持した当時から何も変わっていないんだと思うとショックです。
人の人生をめちゃくちゃにしておいて、こんなことをするんですか?」

現在アトランタ在住のRiddickさんは
70年代に米国最高裁に提訴しようとしたが聞き入れられなかった。
現在、他の犠牲者グループと一緒に集団訴訟の準備中。


Payments for Victims of Eugenics Are Shleved
NYT, June 20, 2012


まさに、
急速に本音をムキ出しにしていく
酷薄な「時代の声」を聞くかのような……。
2012.06.26 / Top↑
【ただいま英・豪の介護者週間です】
英国の今年の介護者週間のテーマは In Sickness and in Health 病める時も健やかな時も。
http://www.chron.com/business/press-releases/article/Counselling-Directory-Offer-Carer-Support-During-3644047.php
http://www.chesterfieldpost.co.uk/public_services/hospital_medical/hosp_med_00000161.html
http://www.bbc.co.uk/news/health-18482859
http://www.bbc.co.uk/news/uk-northern-ireland-18477082
http://www.hertfordshiremercury.co.uk/Health-and-Beauty/Health-and-Well-being/Spotlight-on-Carers-Week-14062012.htm
http://www.thisisderbyshire.co.uk/pound-500-000-help-boost-health-hundreds-carers/story-15968603-detail/story.html
http://www.guardian.co.uk/society/2012/jun/18/half-unpaid-carers-risking-health
http://www.google.com/hostednews/ukpress/article/ALeqM5ipOrccpYUljZ_8G1OXb8psFWGa8Q?docId=N0339081339952925701A
http://www.guardian.co.uk/social-care-network/2012/jun/20/celebrating-carers-commitment?newsfeed=true

【カナダTaylor訴訟 続報】
http://www.ctv.ca/CTVNews/TopStories/20120619/Gloria-Taylor-right-to-die-doctor-assisted-death-120619/
http://www.cbc.ca/news/canada/british-columbia/story/2012/06/18/bc-gloria-taylor-assisted-suicide.html
http://fullcomment.nationalpost.com/2012/06/18/will-johnston-the-wrong-decision-on-assisted-suicide/
http://www.cbc.ca/news/yourcommunity/2012/06/reaction-to-the-striking-down-of-canadas-assisted-suicide-law.html
http://www.ottawacitizen.com/opinion/Assisted+suicide+broad/6801849/story.html

英国の作家テリー・プラチェットが、「自殺幇助反対派のヒステリー」を批判。
http://www.telegraph.co.uk/news/celebritynews/9334190/Sir-Terry-Pratchett-opponents-of-assisted-suicide-stir-up-needless-hysteria.html

BMJが医師らに自殺幇助容認を呼び掛け。:BMJは随分前から歴然と合法化ロビーだし。⇒http://blogs.yahoo.co.jp/spitzibara/55274951.html
http://www.christian.org.uk/news/bmj-wants-doctors-to-go-soft-on-assisted-suicide/

ビル・ゲイツが「イノベーション文化」だとインドを高評価。:その「イノベーション」の中には貧しい農夫たちを自殺に追い込んでいるモンサントのGM農業改革や「革新的家族計画」という名の下での強制的不妊手術なんかも含まれているのかな。
http://www.ndtv.com/article/india/bill-gates-gives-india-high-marks-for-its-culture-of-innovation-233797

ゲイツ財団とモンサントが、ミルクを通じて人間の遺伝子操作を行い、人類を小型化しようと画策している?:前から、どうもビル・ゲイツの言うことと、シンガー、サヴレスキュ、ウィルキンソンなんかが言うことって、近いよねー……とは思っていたけど、いよいよモロに重なってきた。そういえば、A療法論争の展開の節目ごとにシンガーが顔を出してくるなぁ。Maraachli事件ではシンガーは「同じ金を使うなら、ワクチンで途上国の子どもたちを救え」とも言ってたなぁ……。
http://www.salem-news.com/articles/june122012/monsanto-gates-dp.php

英国で精神障害者の25%しか適切な治療を受けられていない、との調査結果が出て、その報告書はその対応のために内閣に大臣を置くように提言している。:なんだか、なぁ……。
http://www.guardian.co.uk/society/2012/jun/18/mental-illness-people-help?CMP=EMCNEWEML1355

規制強化で、ビッグ・ファーマとの協力関係をしり込みする医師が増えているらしい。
http://www.medicalnewstoday.com/releases/246665.php

スウェーデンで10歳女児に幹細胞から作った血管を移植。
http://www.guardian.co.uk/science/2012/jun/14/girl-vein-stem-cells-transplant?CMP=EMCNEWEML1355

1998年に金沢大学医学部付属病院産婦人科で、同意なき臨床試験が行われ、99年に訴訟になっていたということを、昨日知った。その時に、病院側が提出した証拠文書の改竄を暴いた同大の医師が打出喜義氏。私は先週末、某所でお目にかかった折にはこの事件のことを知らず、たいへん失礼をしてしまったのですが、実に素敵な方でした。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%89%93%E5%87%BA%E5%96%9C%E7%BE%A9

クルーグマンさんがNYTに「犠牲者としてのギリシャ」というコラムを書いている。
Greece as Victim: Whose hubris caused this crisis?

ウィキリークスのジュリアン・アサンジ、亡命希望しエクアドル大使館へ。
www.guardian.co.uk/media/2012/jun/19/julian-assange-wikileaks-asylum-ecuador?CMP=EMCNEWEML1355
2012.06.26 / Top↑
なんともショッキングな調査結果――。

ここ数年の経済不況で親が失業したり、総体的な家庭の経済状況の悪化により、
英国で満足な食事を取れないまま登校する児童が増えている。

ガーディアン紙のサイトの教師ネットワークに参加している全英591人の教師への調査で

5人に4人(83%)の教師が
朝おなかをすかせている生徒がいる、と回答。

55%の教師が
生徒の4分の一が十分な食事を取らずに学校に来る、
不況、失業、福祉削減で家族の経済事情が悪化している、と回答。

半数以上が、そういう生徒が過去1,2年で増加している、と。

教師の49%が、朝食を食べていない生徒のために食べ物や果物を持っていったことがある。
ほぼ5人に1人が、昼食を買うお金を生徒にあげたことがある。

低所得家庭の子どもたちには無料の昼食が提供されているが、
5人に4人が、そういう子どもたちには登校時に無料の朝食が必要と。

実際に必要性を感じて独自に「朝食クラブ」を実施している学校もあるとのことで、

記事のビデオでは、ベーグル2分の1切れが配られており、
校長先生らしき女性が「前日の給食の後はなにも食べずに学校に来る子どもたちもいる」。
(私はこのビデオの英語はほとんど聞き取れないので、たぶん、ですが)

こうした現状に、
GP協会、全国校長会、小児科学会から
無料の給食制度の適用となっている英国で130万人の子どもたちには
朝食も出す必要がある、と大臣らに呼び掛け。

一方、学校での無料の給食制度の適用条件そのものが厳しく、
その対象となっていないままおなかをすかせている子どもたちがいる問題も。

今回の調査で明らかになった、朝食を食べられないでいる子どもたちは
そうした厳しい適用条件から外れたボーダーラインの家庭の子どもたちだ、との指摘も。

ロンドン市長はこの問題を重視し、
ロンドンの特に貧困地域に当たる50校で無料の朝食を提供しているチャリティ
Magic Breakfastに対して資金援助を考えている、とのこと。

Magic Breakfastは英国の1000の小学校の内200校で無料の食事を提供しており、
それら200校では半数以上の生徒が学校で無料の食事をとっている。

この1年間で学校に届ける食事の量は20%も増えたという。

「ニーズは急増しています。現場のニーズにアタフタしているところです。
我々が提供するシリアル、ベーグル、ポリッジ(お粥)、オレンジジュースを
増やしてくれと学校からは頼まれているので、
なぜそんなに増やさないといけないのか聞いてみると、
おなかをすかせて登校してくる生徒が増えている、と言われます。
何故そんなことになるのか聞けば、去年失業した親が増えたからだ、ということです。

こんなにたくさんの子どもたちが空腹と栄養不良で
学校へ来てもロクに勉強もできないなんて、我々社会の汚点です。

こんなに沢山の子どもたちが登校時に勉強する気にならないほどお腹をすかせているのに
豊かで責任ある社会だなんて、どうして言えますか?」

ウェールズでは、75%の学校が
家庭状況を問わず生徒に朝食を無料で提供しているが、
今年度の費用は1130万ポンド。
次年度は1270万ポンドに上がると見られる。

イングランドの大臣らには学校で無料の朝食を提供する考えも
無料の昼食制度の拡大をする考えもなく、学校ごとに独自にやるなら
工夫してやってほしい、という姿勢。

しかし、設備とスタッフの問題もあり、
なかなか教育現場にとっても容易なことではない。

Exclusive: Half of teachers forced to feed pupils going hungry at home
The Guardian, June 19, 2012
2012.06.26 / Top↑
障害児・者への“アシュリー療法”、強制不妊、生命維持停止について
市民権、人権侵害である、と批判する大部の報告書が、
National Disability Rights Network から5月に出ていました。

タイトルは 
Devaluing People with Disabilities
Medical Procedures that Violate Civil Rights

著者は
David Carlson
Cindy Smith
Nachama Wilker

資金はNIDRR(the National Institute on Disability and Rehabilitation Research)

報告書本体はこちら ↓
http://www.ndrn.org/images/Documents/Resources/Publications/Reports/Devaluing_People_with_Disabilities.pdf


Ashley療法だけでなく“無益な治療”論の観点からも
これは非常に重要な文書。

読んで、おいおいにエントリーにしていこうと思いますが、
とりあえず書いておきたいことは2点で、

① 今年5月は、07年のWPASとこども病院の合意の最初の期限であり、
その期限切れの時期にタイミングを合わせて、この報告書が出されている、ということ。

この点について、私がずっと懸念してきたことは以下に ↓

シアトルこども病院は、5年の合意期限が切れるのを待っている?(2010/11/8)

実際に、以下のような動きが起きている ↓
論争から5年、アシュリー父ついに動く(2010/3/16)
豪でアシュリー事件の賛否を問うアンケートが仕掛けられている?(2012/5/15)


② 大いに引っかかるのが、
この報告書のファースト・オーサーのDavid Carlson。

この人は07年に
このネットワークの一つであるWPAS(現DRW)が調査報告書を書いた時にも
ファースト・オーサーだった人。

07年5月のワシントン大のシンポにも登場したけれど、

その後、シアトルこども病院が、
明らかに初めに結論ありきとしか思えない成長抑制ワーキング・グループを立ち上げた時に、
そのメンバーに入った。

9年1月に同病院がこのWGの結論を正当化するためのシンポを開いた段階でも
Carlsonはまだメンバーに残っていた。

ところが、WGの結論(一定の条件付きで成長抑制を妥当とする)がついに
へースティング・センター・レポートに掲載された際には
メンバーの一覧の中にCarlsonの名前はなく、
20人いると論文中で書かれているメンバーが実際には19人しかいなかった。

その欠員1名について論文は報告していないし、
Carlson自身もメンバーから抜けたことについて説明していない。
(少なくとも私はそんな説明には行き当たっていない)。


WPASの調査報告書が
当初の目的を途中であきらめてしまっていることを含め
David Carlsonという人の行動そのものが、当ブログでは
Ashley事件をめぐるミステリーの一つです。

その詳細は以下のエントリーに ↓
なぜWPASのCarlson弁護士はWGメンバーから消えたのか?(2010/12/6)
2012.06.26 / Top↑
肌の発汗状態を電気信号化して人の集中や緊張度を測る技術
Galvanic Skin Response(GSR)を使ったブレスレットを授業中に生徒に装着させ、
それによって教師の技量を評価するシステムの研究に、

Gates財団から多額の資金が提供されている。

同財団が推進するMeasuring Effective Teachers (MET)プロジェクトの一環として、
Clemson 大学へのグラントとして49万8000ドル、
The National Center on Time and Learningへのグラントとして62万1000ドル。

合計110万ドル以上が、
このブレスレットを用いた教師評価の研究に費やされていることに。

使われている技術は
刺激に対する情緒と認知の反応をバイオメトリックで計測しようとの
「ニューロ・マーケッティングという振興分野」の一部だが、

生徒が一体、先生のいうことに反応しているのか、
それとも隣の席の友達が言うことに反応しているのかを
ブレスレットには判別できない、

電気代を賄うのにも苦労している学校区があるという時に、
実際に必要な物品ならともかく、なんだって
こんなものに金を使うのか、という批判も。

この記事の著者Valerie Straussは、

If this tells us anything, it is that the obsession with measurement and data in school reform has reached new nutty heights.

このニュースから何か分かることがあるとしたら、学校改革での数値化とデータへの偏執が、また一段とバカバカしさを増した、ということ。

$1.1 million-plus Gates grants: ‘Galvanic’ bracelets that measure student engagement
WP, June 11, 2012


ゲイツ財団の教育改革については、以下のエントリーに ↓
ゲイツ財団の米国公教育コントロール 1(2011/5/2)
ゲイツ財団の米国公教育コントロール 2(2011/5/2)


上記の2でも同じよう内容の試みを紹介していますが、

今回のWPの記事でも、ゲイツ財団が進めるMETでは
全米7学校区で教師の評価研究プロジェクトが進められており、そこでは
生徒のテスト・スコアを全国的にデータ化して教師の評価に反映させるとか
教室に監視ビデオを設置するなどが研究されている、とのこと。

ゲイツ財団の教師の評価プロジェクト
Measures of Effective Teaching(MET)については以下のページに ↓
http://www.gatesfoundation.org/united-states/pages/measures-of-effective-teaching-fact-sheet.aspx


ところで、上記のWPの記事を受け、ゲイツ財団側は
同サイトの関連プロジェクトの内容は不慣れな職員による「誤りだった」として
その翌日に言及された2つのグラントの「目的」を修正した、とのこと。

いずれのグラントの目的も
当初、関連付けられていた教師評価プロジェクトに関する記述が削除され、
METとは無関係なブレスレットの有効性研究と書きかえられた。

それを受けて、以下はWPの追加記事。
Gates changes Galvanic bracelet grant description
WP, June 12, 2012



そういえば2008年段階で既に、マイクロソフトからは
以下のような「労務管理システム」が申請されていたっけな……。

ワイヤレス・センサーを使って
従業員の心拍数、体温、動き、顔の表情、血圧などを常時監視し
それらのデーターが管理職のコンピューターに送られることによって、
従業員一人ひとりの生産性がモニターできる。

コンピューターは個々人の体重、年齢、健康状態に関するデーターに照らして
従業員の心拍数の増加や顔の表情から苛立ちとかストレスを感知すると
即座に管理職に知らせて適切な対応を促す。

従業員をパソコンで監視・管理する世界へ(2008/2/12)
2012.06.19 / Top↑
グーグルが2010年から出しているインターネットの透明性に関する報告書で

過去6カ月間に、
西側の民主主義国を含め、各国政府がインターネットを検閲し、
政治的コンテンツの削除を依頼してくる件数が気がかりなほどに急増している、と。

スペインは
ブログと新聞記事へのリンクを削除してほしいとの依頼が270件。

ポーランドは
同国の企業開発に関する機関に批判的な記事と、
その記事へのリンクに繋がる8サイトの削除を依頼。

カナダの官僚からは、
カナダ国民がパスポートに排尿しトイレに流すYouTubeのビデオの削除依頼があったが、

グーグルは上記3カ国での依頼には応じなかった、という。

タイ当局からは現政権を侮辱しているとされ、
タイの法律に違反しているYouTubeのビデオ149本の削除依頼があり、その70%に応じた。

パキスタンは軍と政府高官を風刺したYouTubeビデオ6本の削除を依頼。
グーグル側は拒否した。

英国警察からは
テロリズム推進と思われるYouTubeのアカウント5件の削除依頼があり、グーグル側は応じた。

米国では
ハラスメントと思われるYouTubeビデオの削除依頼が多く
当局が求めた187件の削除依頼の内42%を削除した。

グーグルの幹部はブログで、

Unfortunately, what we've seen over the past couple years has been troubling, and today is no different. When we started releasing this data, in 2010, we noticed that government agencies from different countries would sometimes ask us to remove political content that our users had posted on our services. We hoped this was an aberration. But now we know it's not.

This is the fifth data set that we've released. Just like every other time, we've been asked to take down political speech. It's alarming not only because free expression is at risk, but because some of these requests come from countries you might not suspect – western democracies not typically associated with censorship.


最後の個所だけ、ざっと訳すと、
「政治的な発言の削除要求の増加が懸念されるのは、
言論の自由が侵されているというだけでなく
通常は検閲という言葉とは無縁と思われている
西側民主国家からもそうした要望が出てきているからである」

この報告の対象となっている過去6カ月間では
裁判所の命令には平均65%、非公式の依頼には平均47%応じたという。

他の幹部によると、グーグルがコンテンツを削除する場合、
主な理由はコピーライト違反で、同社の検索結果からコピーライト対象記事を削除するよう
版権者からの依頼が毎月100万件寄せられているという。

去年1年間に版権理由での削除依頼が330万件あり、
今年はその4倍に膨れ上がる勢い。
グーグルはこうした依頼には97%に応じたとのこと。

Google reports ‘alarming’ rise in censorship by governments
Guardian, June 18, 2012
2012.06.19 / Top↑
去年4月に以下のエントリーで紹介した住民投票が
17日に行われ、Vaudカントンで新法が作られることに。

スイスの地方自治体が高齢者施設での自殺幇助合法化巡り住民投票へ(2011/4/15)


刑法に個人的な利益ですることでなければ自殺幇助を違法ではないと解釈させる個所があるものの
スイスには自殺幇助に関する明確な法規制は存在していない。

今回17日に行われたVaudカントンの住民投票で
ナーシング・ホームと病院でも自殺幇助の希望があれば専門職はその希望を尊重すべきだ、と
62%が回答したことにより、

Vaudカントンで
スイスで初めての自殺幇助に関する法律が誕生することに。

新法が施行された後には
ホームと病院のスタッフには
自殺幇助を希望する人の意志を尊重する義務が生じることになる。

ただし条件として、
希望者は不治の病または怪我を負っていることと
自己決定できるだけの知的能力があること。

その2条件の判断は
ナーシング・ホームの施設長と病院の場合には主任医師によって行われる。

17日の投票では
ホームと病院の入所者・患者には無条件でPASを認めるべきだとする
自殺幇助機関Exitの選択肢も含まれており、

一定の条件をチェックした上で認めるとの案は
それに対抗する選択肢として提出されたもの。

こちらの選択肢はVaudのナーシング・ホームと医師らの協会も支持していた。
住民はExit提案を採らず、こちらを選択した結果に。

Exit側は、
医療サイドが最終的な判断権を持つなら、それは個々人の決定権の侵害であり、
組織的パターナリズムだと主張しており、

この法律ができても
施設側は自殺させないために手を尽くすだろうし、手続きも長くかかるので
自殺希望者は退所・退院して家に帰ってから自殺幇助を求める方がよい、と。

Vaud to get first Swiss assisted suicide law
Swissinfo.ch, June 17, 2012


なお、Exitからは、住民投票の直前に以下のような情報を流れていました。

スイスのナーシング・ホームでは既に自殺幇助が行われている(2012/6/13)
2012.06.19 / Top↑
3日ほど留守にして昨日帰ってきたら
その3日の内に自殺幇助関連で大きな出来事が2つも起こっていました。

一つがカナダで、もう一つはスイス(次のエントリーで)。
いずれも当ブログで既に拾って気になっていた話題でした。

まずはカナダのブリティッシュ・コロンビア州の大きなニュースを、
Globe and Mail紙の記事2つから。

            ―――――

カナダのブリティッシュ・コロンビアB.C.州で多数起こされている訴訟のうち、
自殺幇助合法化ロビーthe Farewell Foundation for the Right to Dieが介入して
特に注目を集めていたALS患者のGloria Taylorさん(64)らの裁判で、15日、

BC州最高裁は
自殺ほう助を禁じる刑法の規定について
「原告らの平等の権利を不当に侵害するもの」として、違憲と判断、
いくつかの条件付きでTaylorさんに自殺幇助を求める権利を認めた。

Taylorさんはそれを受け、弁護士を通じて以下のコメントを発表。

I am deeply grateful to have the comfort of knowing that I’ll have a choice at the end of my life. This is a blessing for me, and other seriously and incurably ill individuals. This decision allows me to approach my death in the same way I have tried to live my life – with dignity, independence, and grace.


同州では多数の類似の訴訟が起こっているので
詳細が私には整理できていないのですが、

冒頭の判決文の引用では「原告ら」と複数になっているものの
一方で、この判決で自殺幇助が可能となったのはTaylorさん一人だとも解説されており、

いずれにしてもこの判決で、今後Taylorさんと同じく
憲法適用除外の訴訟を起こす人が相次ぐだろうし、
Taylorさんにはそういう人を支援する用意がある、とも。

一方、以下のエントリーで紹介したように
連邦議会は2010年4月に合法化法案を否決しており、

カナダ議会、自殺幇助合法化法案を否決(2010/4/22)


また、1993年のSue Rodriguez訴訟におけるカナダ最高裁のPSA違憲判決と
今回の判決がどのように整合されるのか、という問題もあって、

今回のBC州最高裁の判決に、連邦政府が上訴するものと見られている。
上訴の期限は7月15日。

(記事には様々な立場の意見が多数紹介されていますが、
これまで他国の議論などでも繰り返されてきたことばかりなので、省略します)

B.C. Supreme Court strikes down ban on physician-assisted suicide
The Globe and Mail, June 15, 2012

Landmark case raises ‘weak and unpersuasive, but arguable, grounds for appeal
The Globe and Mail, June 17, 2012


15日付のGlobe and Mail紙の社説は以下。判決を「正しい」と。
http://www.theglobeandmail.com/commentary/editorials/bc-court-correct-to-strike-down-law-prohibiting-doctor-assisted-suicide/article4268263/

その他、17日に出ていた報道のうち一部を以下に。
http://www.google.com/hostednews/afp/article/ALeqM5gQMMl7-Q5gxfFRgWisO0zYcBuK8w?docId=CNG.cd10071abd95e4ef777f2f11df936cdf.dd1
http://www.guardian.co.uk/society/2012/jun/16/court-canada-ban-assisted-suicide
http://www.bbc.co.uk/news/world-us-canada-18467754

また、今朝出てきていた批判を以下に2つ。
http://www.huffingtonpost.ca/2012/06/16/archbishop-michael-miller-assisted-suicide_n_1603063.html
http://www.thestar.com/news/article/1212771--column-b-c-assisted-suicide-ruling-an-alarming-interpretation-of-charter-dimanno


【カナダの自殺幇助合法化議論関連エントリー】
カナダの議会でも自殺幇助合法化法案、9月に審議(2009/7/10)
カナダ・ケベック州医師会が自殺幇助合法化を提言(2009/7/17)
図書館がDr. Death ワークショップへの場所提供を拒否(カナダ)(2009/9/24)
カナダの議会で自殺幇助合法化法案が審議入り(2009/10/2)
自殺幇助合法化法案が出ているカナダで「終末期の意思決定」検討する専門家委員会(2009/11/7)
カナダ議会、自殺幇助合法化法案を否決(2010/4/22)
カナダの法学者「自殺幇助合法化は緩和ケアが平等に保障されてから」(2011/2/5)
カナダで自殺幇助合法化を求め市民団体が訴訟(2011/4/27)
カナダ王立協会の終末期医療専門家委員会が「自殺幇助を合法化せよ」(2011/11/16)
2012.06.19 / Top↑
【英の介護者週間18日から24日】

特筆事項として、レスパイトを介護者の権利として法制化へ。
http://www.bbc.co.uk/news/uk-18379535
http://www.telegraph.co.uk/health/elderhealth/9320910/Carers-to-be-given-respite-holidays.html

ガーディアンの介護者週間記事で、早期に支援を行うと介護者の負担軽減効果があることにGPらがやっと気付いてきた、と。
http://www.guardian.co.uk/society/2012/jun/12/but-who-looks-after-the-carers?newsfeed=true

24時間介護の介護者の心身の健康への影響。
http://www.enfieldindependent.co.uk/news/9754675.Treats_for_carers_during_Carers_Week/

7歳のヤング・ケアラーの男児が「2012年で最も英雄的な人々」の一人に。:こういうのは、ホント、どうかと思うんだけれど。
http://www.harrowtimes.co.uk/news/9755753.Seven_year_old_young_carer_wins_Nandos_Hail_a_Hero_competition/

経済不況で両親とも働かなければならないため祖母など身内が子育てを引き受けざるを得ない家庭が増え、そういう親族には支援がないことが英国で問題に。養親並みに支援を、と。
http://www.bbc.co.uk/news/uk-england-kent-18406295

NZで成人した障害のある子どもを介護している家族に、手当を支給するよう裁判所が命じたのを受けて、保健省が制度改正を行うものの予算が限られているために対象者数によっては制限も。:ちゃんと読めないのが残念な記事。どういう位置づけの手当てなのか、気になる。
http://tvnz.co.nz/politics-news/family-carer-payments-capped-says-minister-4927264

こちらはついでで米国の「介護者の権利」をとりまとめたサイト。
http://www.caregiverslibrary.org/caregivers-resources/grp-caring-for-yourself/hsgrp-work-and-caregiving/caregivers-rights-article.aspx


【介護者支援関連以外】

介護者による虐待を含め、高齢者への差別が著しいとの調査結果が相次いでいる英国で、内務大臣が年齢差別禁止法の厳格化の方針を表明。10月以降、医師が年齢だけを理由に医療を差し控えることは差別に当たることに。:英国では高齢者の入院時に本人にも家族にも無断でDNR指定がされるケースが相次いで問題になっている。
http://www.guardian.co.uk/society/2012/jun/11/theresa-may-patient-age-discrimination-ban?CMP=EMCNEWEML1355

母親の血液と父親の唾液で生まれる前から子どものゲノムがほぼ分かるようになる、とのニュースを受けて、NYTのコラムニストが「新・優生思想」への懸念を書いている。:これはエントリーにしたくて机の上にずっとあったのだけど、ついに断念しました。この頃、ニュースにとても追いつけない。それくらい世の中の変貌がどんどん加速している……と、もう日ごとに痛感し、どんどん人間社会の将来に絶望的な気分になっております。
http://www.nytimes.com/2012/06/10/opinion/sunday/douthat-eugenics-past-and-future.html?_r=2&nl=todaysheadlines&emc=edit_th_20120610

米国の乳児健診で、身長体重などの計測結果が成長曲線通りでないということになると親が不安を感じたり動揺することが問題に。:なんなんだろう、この子育て周辺に全般的に漂う息苦しいゼロ・トレランスな空気は? 成長曲線の問題ではなく、社会の姿勢の硬直化、偏狭化、何に対しても懐が浅くなっていくことの問題のような。
http://www.washingtonpost.com/national/health-science/pediatric-growth-charts-often-leave-parents-confused-and-concerned/2012/06/08/gJQAadfgUV_story.html?wpisrc=nl_cuzheads

CTスキャンによる子どもたちの被爆の問題。:これは歯科のレントゲンと並んで、ずいぶん前から指摘され続けている。子育て周辺で親や子供に向けられる結果責任ゼロ・トレランスの空気の一方で、科学とテクノの利権構造は子どもたちを平気で餌食にしていたりもする?
http://www.washingtonpost.com/national/health-science/as-ct-scans-become-more-common-for-children-concerns-about-radiation-grow/2012/06/08/gJQAZjWnUV_story.html?wpisrc=nl_cuzheads

Lancetがまたも母子保健と未熟児に関する特集。国連のミレニアム・ゴールの再評価も。以下の他にも論文いろいろ。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/246413.php
http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736%2812%2960820-4/fulltext
http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736%2812%2960685-0/fulltext?elsca1=ETOC-LANCET&elsca2=email&elsca3=

今度はアル中と薬物中毒のワクチン。もう酒なんか飲まなくても「もっとハッピーな選択肢ができますよ」:これは「ワクチンの10年」が言われ始めた頃から「今後開発される夢のワクチン」の中に出てきていた。
http://www.guardian.co.uk/science/shortcuts/2012/jun/10/the-future-of-drugs-safe?CMP=EMCNEWEML1355

ヨーロッパで性病が広がりつつあり、2010年には32000件の淋病。しかも急速に抗生物質耐性ができている。このままいくと、そのうち淋病は不治の病になる、と専門家。
http://www.guardian.co.uk/society/2012/jun/12/gonnorhoea-soon-untreatable?CMP=EMCNEWEML1355

都会の子供の方が田舎の子供よりもアレルギーになりやすい。
http://www.medicalnewstoday.com/releases/246348.php

英国で人間それぞれにバー・コードを当てて管理しようというアイディアが論争に。
http://www.bioedge.org/index.php/bioethics/bioethics_article/10104#comments

経済が破たんし病院の物資の不足が深刻なギリシャで極右政党が、病院や幼稚園から移民とその子どもを路上に追い出す、と。
http://www.guardian.co.uk/world/2012/jun/12/golden-dawn-hospital-immigrants-greece?CMP=EMCNEWEML1355
2012.06.19 / Top↑
スイスのドイツ語圏のナーシング・ホーム職員への調査によると、
回答者の50%以上が自分の職場で自殺幇助が行われた、と答えた。

スイス在住者を対象とした自殺幇助機関Exitの幹部によると、
5年前には自殺幇助を容認するナーシングホームは20%だったというが

チューリッヒを中心に
Exitに来てくれと申し出る施設が増加。

最近2人の利用者から自殺幇助の希望があったことから
施設としての方針を作らざるを得なかったというBadenの施設長 Marc Pfirter氏は
「なにが正しいかを決めるのは我々ではないですから」と語り、
患者本人の意志が「sacrasanct 神聖不可侵」との立場をとっている。

「施設に入ると、
自分の世界がベッド一つと箪笥1つだけになってしまいますからね」

職員のサポートなしには動けない人の場合には
自分の思うように行動する能力が施設入所で低下することになるので、

そういうことを考えると
最後を決めるのは高齢者本人の意思決定だと結論したのだという。

とはいえ、施設によっては自殺幇助を禁じているところもある。
容認に向けた議論は行われているが、議論は激しいものになっている。

ナーシング・ホームでは自殺幇助はすべきではない、と考えるホーム関係者もおり、

「考えてみてください。
2人部屋で暮らしている女性の片方がある日突然、姿を消すんですよ。
もう一人に『あの人はどうしたの? 昨日まで元気だったのに?』と聞かれて、
『昨日Exitが来たんですよ』と答えるんですか? そんなことをしたら、
施設利用者の間に、とんでもない不安と疑いが広がりますよ」

More nursing homes allow assisted suicide
The Local, June 13, 2012


ちなみに、6月2日の補遺によると、

17日にVaudカントン(州)では
ナーシング・ホームと病院で自殺幇助を認めるかどうかの
住民投票が予定されている、とのこと。


チラっと思うのは、
劣悪なケアをする施設ほど、利用者の方々は自殺幇助を希望するようになると思うのだけれど、

それを本人の意思の尊重だと言って
Exitを呼んでは死んでもらっていいのだったら、

施設側には、
ケアの質を上げる努力をするインセンティブはなくなる……なんてことは?
2012.06.19 / Top↑
去年、以下のエントリーで取り上げた大会がいよいよ始まるようです。

死ぬ権利協会世界連合、来年チューリッヒで世界大会(2011/8/28)

世界中の55団体から約100人が参加予定。
(日本尊厳死協会もメンバーなので参加するものと思われます)

スイスの自殺幇助機関EXITによれば、

議題になる中には、
フランスの新大統領 Francois Hollande氏が選挙公約に挙げていた
ターミナルな人に対する自殺幇助の合法化や、

また、英国の専門家委員会がイングランドとウェールズでの
自殺幇助合法化を提言したことなどが含まれる、とのこと。

招かれる講演者の中には 
英国の「活動家」Debbie Purdy、
米国の弁護士 George Felos、
それから米国のアルツハイマー病患者でSF作家 Terry Pratchettら。

Right-to-die groups hope for laxer laws in Europe
AP, June 12, 2012


Hollande氏の公約については、こちら ↓
フランスの大統領候補が「当選したら積極的安楽死を合法に」(2012/2/6)

また英国の「専門家委員会」とされているものは、
もともと合法化ロビーのFalconer議員を委員長に
たいそう恣意的に組織された単なる民間の委員会で、
それについては、以下に ↓
英国Falconer委員会「自殺幇助合法化せよ」提言へ(2012/1/2)


実は今朝、ウォーキングしながら、なぜか、ふと
「そういえばデビー・パーディさんは最近どうしているんだろう」と頭に浮かび、
あれこれと考えてしまったところだったので、
この記事にお名前を発見し思わず笑ってしまいました。
まぁ、ご健在で何よりですが、

10年2月の自殺幇助起訴ガイドラインを作らせた“功績者”である
パーディさんについては、以下に ↓
MS女性、自殺幇助に法の明確化求める(2008/6/27)
親族の自殺協力に裁判所は法の明確化を拒む(2008/10/29)
自殺幇助希望のMS女性が求めた法の明確化、裁判所が却下(2009/2/20)
Debby PurdyさんのBBCインタビュー(2009/6/2)
自殺法改正案提出 Falconer議員 Timesに(2009/6/3)
MSの教育学者がヘリウム自殺、協力者を逮捕(英)(2009/6/26)
作家 Terry Pratchett ”自殺幇助法案”を支持(2009/7/1)
英国医師会、自殺幇助に関する法改正案支持動議を否決(2009/7/2)
英国上院、自殺幇助に関する改正法案を否決(2009/7/8)
Purdyさんの訴え認め、最高裁が自殺幇助で法の明確化を求める(2009/7/31)
Purdy判決受け、医師らも身を守るために方の明確化を求める(2009/8/15)
法曹関係者らの自殺幇助ガイダンス批判にDebbie Purdyさんが反論(2009/11/17)
Debbie Purdyさんが本を出版(2010/3/22) 


作家の Pratchett氏については、こちら↓
作家 Terry Partchett “自殺幇助法案”を支持(2009/7/1)
自殺幇助ガイドラインに、MSの科学者とアルツハイマーの作家それぞれの反応(2009/9/23)
作家 Pratchette氏「自殺幇助を個別に検討・承認する委員会を」(2010/2/2)
Pratchett氏の「自殺幇助委員会」提言にアルツハイマー病協会からコメント(2010/2/3)
BBC、人気作家がALS患者のDignitas死に寄り沿うドキュメンタリーを作成(2011/4/15)


【13日追記】
その後、あれこれと出ている報道の一部を追記。
http://www.news24.com/World/News/Zurich-hosts-euthanasia-debate-20120612
http://www.reuters.com/article/2012/06/12/us-swiss-assistedsuicide-idUSBRE85B1ES20120612
http://www.foxnews.com/world/2012/06/12/right-to-die-groups-hope-for-laxer-laws-in-europe/
2012.06.19 / Top↑
7日の
米・英政府とゲイツ財団とUNPFにより優生施策、7月には国際会議も?のエントリーで
英国政府の資金でインドの貧困層に強制不妊が行われていることを
4月にガーディアン紙がすっぱ抜いたという話があったので、
その記事を読んでみました。

UK aid helps to fund forced sterilization of India’s poor
Guardian, April 15, 2012


問題のプログラムは Reproductive and Child Health Program Phase Ⅱ。
英国政府から1億6600万ポンドの資金を得て2005年にスタートした。

当時から、人口増加に悩むインドでは貧困層への強制不妊に使われるのでは、との
懸念は取りざたされていたというが、

英国の国際開発局(DfID)では来年まで資金提供が予定されており、
これまでに提供された1億6200万ポンドの使途には特に条件は付いていないという。

しかし、特に英国政府の資金が振り向けられている、インドの特に貧しい州、
Madhya Pradesh と Bihar から聞こえてくる実態とは、

貧しい人たち、ことに少数部族の男女が騙されたり脅されたりして連れてこられ、
水道もなく器具の消毒もできない劣悪な衛生環境で乱暴に手術され、
術後のケアもされずに放置されている、というもの。

手術を受けないと食料の配給を受けさせないと脅したり、
手術を受けたら7ポンド程度の現金とサリーをあげると金品で誘ったり、
不妊手術をした人には車や冷蔵庫が当たる宝くじまで運営する州もあるという。

一方で、Biharのクリニックには不妊手術1件につき1500ルピーの報酬のほか、
1日に30件以上をこなした場合には患者1人に500ルピーのボーナスまで出る。

医師には患者1人につき75ルピー、
NGO職員にも手術を受けさせた人数に応じて
一人あたり150ルピーが支払われるという仕組み。

Biharでは、1月に強制的に連れてきた53人の女性を学校の校舎に集め、
焚き火の明かりのもとで、たった2時間で一人の医師が全員に手術を行った、
術後は全員が痛みに苦しむまま放置されていた、との目撃談もあり、
その被害者の中には妊婦も含まれていた、という。

2009年にインド政府が報告したところによると、
それまでに50万人に不妊手術が行われたとのこと。

もちろん、上記のようなやり方だから死者も多数報告されており、
人権団体などが訴えを起こし、4月初めに裁判所はインド政府、州政府に対して
こうした疑惑に応じるように命じた。

しかしインド政府のスタンスは
上記プログラムにおいては不妊手術をなおも家族計画の最も一般的な手段としており、

英国のDfIDの2010年の報告書でも
地球温暖化への対策のために、こうしたプログラムの推進が必要だと述べている。

           ――――――


非常に興味深いと思うのは、
ここで強制不妊プログラムのターゲットにされている州の一つBiharが
ゲイツ夫妻が10年に「養子にした」ほどにゲイツ財団と縁の深い州であること。

ゲイツ夫妻が去年5月にビハールを訪れた際には
ビハール州政府と「革新的な家族保健」の協力覚書を交わしていること。

その他、ビル・ゲイツの途上国の避妊に関する興味関心については、以下に。
ゲイツ財団資金で超音波による男性の避妊法を開発、途上国向け?(2010/5/12)
注目集めるインド発・男性向け避妊法、「女性にも」とゲイツ財団(2011/6/3)
ゲイツ財団が途上国の「家族計画、母子保健、栄養プログラム」に更に150億ドルを約束(2010/6/8)
「途上国の女性に安価な薬で簡単中絶“革命”を」の陰には、やっぱりゲイツ財団(2010/8/3)


ついでに挙げておくと、
ゲイツ財団がインドでもくろんでいるのはワクチン普及だけでなくGM農業改革も(2011/4/16)
2012.06.19 / Top↑
去年の秋に上梓した拙著
「アシュリー事件:メディカル・コントロールと新・優生思想の時代」(生活書院)について

刊行後に気付いた訂正や追加説明は、トップページの書庫
「拙著『アシュリー事件』について」書庫を新設し、注のテキストデータをアップしました に
取りまとめておりますが、

さらにまた一つ大きなミスに気付きましたので
追加訂正させていただきます。


P.154 の小見出し「エイミー・タンらの論文」は「ナオミ・タンらの論文」の誤りです。


お詫びし、訂正いたします。
2012.06.19 / Top↑
日本に介護者支援法を
実現する市民の会
にご賛同ください

「一般社団法人 日本ケアラー連盟」は、介護をしている人、介護者を気遣う人、介護者の抱える問題を社会的に解決しようという志を持つ人が集い、病気や障害ごとの縦割り介護を横につないで、「市民の共感と連帯の力がいかされる社会保障」に向けた改革を推しすすめ、共に生きる社会をつくります。

 日本の社会は、安定的なセーフティネットとしての社会保障制度の基盤がゆるぎ、再構築が急がれています。とりわけ介護問題の中でも、今なお「介護する側」が抱える長期間にわたる身体的・精神的・経済的な過酷な負担という課題については、国による正確な実態把握も遅れ、有効な支援施策も欠いたまま、長い間放置されてきました。
人はみな「人として尊厳を保ちながら、健康で文化的な生活をおくることができる」権利や、幸せを追求する権利をもっています。しかし、介護者自身のそうした権利は、「(介護は)家族がやってあたりまえ」という無言の圧力のもとに覆い隠されてきました。
さらに私たちは、この社会が介護者という当事者たちの「声なき声」と真摯に向き合うことなく、社会問題として顕在化させてこなかったという事実にも目を向けなければなりません。

 これまで日本では、病気や障害ごとにさまざまな患者会や家族会が、自助グループとして長きに渡り当事者の権利や生活を守るため、地道な運動を積み重ねてこられた経緯があります。その歴史を踏まえつつ、私たちは、あらたに「介護者(ケアラー)」をキーワードとして、横につなぐ運動を展開したいと願い、2010年6月に任意団体である「ケアラー(家族など無償の介護者)連盟」を立ち上げ、全国調査を実施してきました。

そこからみえてきたことは、
1―5世帯に1世帯は在宅で介護(ケア)をしている人がいる
2―4人に1人は複数の人の介護(ケア)をしている
3-高齢者や男性、未婚、働き盛りの介護者、育児と介護の両方を担う人、なども増えており、想像以上に幅広いケアラーが存在している
4-2人に1人は身体の不調を感じ、4人に1人以上は心の不調を感じている
ことなどです。
その支援は最早国民的な課題です。

 また、精神疾患・認知症の人を介護しているケアラーは、とくに負担感や孤立感を感じており、精神疾患のある親の元で、実際にはケアをしている子ども(10代・20代のヤングケアラー)は、“「病気」や「生活」「自分」のことが分からない”、“誰にも言えず、家の中でも孤独である”、“大人になっても「生活のしづらさ」を感じている” という調査結果もあります。

そして何よりケアラーは多様な支援を望んでいることも明らかになりました。
 
私たちは、介護者支援の目的を、

① 介護される人、する人の両当事者がともに尊重される
② 無理なく介護を続けることができる環境を醸成・整備する
③ 介護者の社会参加を保障し、学業や就業、趣味や社交、地域での活動などを続けられるようにする
④ 介護者の経験と、人びとの介護者への理解と配慮がともに活かされる社会(地域)をつくる

ことに置いています。

この運動は、介護者の権利擁護せいをめざし、具体的な支援施策の実施や、その根拠となる「支援法」の制定をも盛り込んだ幅広い国民的な運動です。
現在、介護者支援法(仮称)の制定に向けて活動する、「日本に介護者支援法を実現する市民の会」の準備をすすめています。
志を同じくするみなさまの積極的な参画をいただき、国会そして社会に向け大きくアピールをしていきたいと考えています。この趣旨に賛同し、ぜひ名を連ねていただきますよう切にお願いいたします。

2012年(平成24年)6月吉日

                   日本に介護者支援法を実現する市民の会
                       事務局:一般社団法人日本ケアラー連盟
                                                   代表理事   岡部 謙治
                                                            児玉 真美
                                                            津止 正敏
                                                            堀江 紀一
                                                            堀越 栄子
                                                            牧野 史子

                                                            三富 紀敬

ご賛同いただける方は、お手数ですが、 次のエントリーの内容をコピペ・記入していただき、
以下の日本ケアラー連盟事務局あてにファックスまたはメールにてお送りいただきますよう、
また期間が短く恐縮ですが、6月18日までにお願いいたしたく、
どうぞよろしくお願いいたします。

◆窓口◆
一般社団法人日本ケアラー連盟事務局
〒160-0022 東京都新宿区新宿1-25-3エクセルコート新宿302
Tel.03-3355-8028/Fax.03.5368-1956
メール:carers.law@carersjapan.com
2012.06.19 / Top↑
これまで
中国、インド、ブラジル、フィリピン辺りが通り相場だった臓器のブラック・マーケットが
ヨーロッパの経済危機でギリシャ、スペイン、イタリア、ロシア、
それからセルビアなどのバルカン諸国へと広がっている。

腎臓から髪の毛、精子、母乳まで
ありとあらゆる人体パーツを売ります、という広告が
そうした国々の人々によってインターネットに出されており、
中には肺を250,000ユーロで買ってください、というものも。

最近では、こうした動向は米国にも及び、
不法滞在の移民が糊口をしのぐためにネットを通じて腎臓を売るケースが
複数、明らかになっているという。

専門家によると、そうした中、組織犯罪グループが、
慢性的貧困に苦しむ弱者と、何としても助かりたい富裕な患者の両者を
共に餌食にして肥え太ることとなっている、と。

例えばセルビアでは臓器売買は他国と同様に
10年以下の懲役刑にあたる違法行為だが、
腎臓移植の必要な人3人に1個の移植腎臓しかない(昨年のデータ)とあって、
ネットを通じて患者と貧困層のドナーを仲介するブローカーが暗躍。

腎臓1個につき10万ユーロ、プラス必要経費。

Organ Watchというカリフォルニア州に本部を置く人権組織は
世界中で違法に売買されている腎臓は年間15000から2万個と推計しており、
国連でも腎臓移植に使われる5~10%は売買されたものだとしている。

EUの特別検察官は、
最近までヨーロッパの売買のハブはトルコで
移植ツーリズムにやってくるのは米・英・仏・伊・独・イスラエルの患者だった、と。

記事で紹介されているケースでは、

セルビアの50代の夫婦が
パンとサラミだけの食事を一日一回だけしか食べられないところまで追いつめられて
もはや腎臓を売る以外に飢えを避ける道はないとネットに広告を出した。

46歳のギリシャのビジネスマンの男性が
家族みんながホームレスにならないためにはこれしかないと、
腎臓を売りに出し、買い手を見つけるために探偵まで雇った。

セルビア南部の町 Doljevacの失業率は50%で、
ある主婦が臓器売買ネットワークを立ち上げると、3000人以上が登録を希望。
しかし非合法のため政府が認めず、彼らは今では近隣諸国へ行って売ろうとしている。

セルビア政府が臓器を売らなければならないほど自国民は食い詰めていないと主張する一方、
同国の警察は過去10年間に臓器売買のケースを起訴したことが一度もないし、

ベルグラードの著名な腎臓専門医は
移植腎臓は病院の委員会で精査されているので
違法な売買がセルビアで行われているというのは信じがたいと言うが、

工場の仕事を失った後に裕福な地元の政治家に腎臓を「あげ」て、
お礼にその人の会社に雇ってもらい医療費を出してもらったと証言する
セルビア南部の52歳の男性は、ドナーカードなど偽造書類で兄弟を装って
ベルグラードの公立病院で腎臓摘出を行った、と語る。

記事冒頭で紹介されているセルビア人夫婦の夫は
無料の教育と障害の仕事が保証されて腎臓売買なんて聞いたこともなかった
ユーゴスラビア時代を懐かしみながら、

「この国の人々が臓器を売るようなところまで追いつめられるなんて恥辱。
もっとひどい不況の時ですら、臓器を売れるなんて考えたこともなかった」

European Crisis Bolsters Illegal Sales of Body Parts
NYT, June 1, 2012


【関連エントリー】
バイオ企業と結託した葬儀屋が遺体から組織を採り放題(2009/7/30)
被災地に“救助”ではなく“臓器狩り”に人が駆けつける“腎臓バザール”パキスタン(2009/7/31)
医療のネオリベ“医療ツーリズム”(2009/8/3)

イスラエルの貧困層から米国の富裕層へ、腎臓を闇売買(2011/10/29)
ウクライナで広がる闇の臓器売買(2011/10/29)
エジプトでアフリカ難民から生きたまま臓器を採って闇売買(2011/11/7)
闇の臓器売買、1時間に1個のペースで(2012/5/28)
2012.06.19 / Top↑
ビルダーバーグ会議続報。
http://www.guardian.co.uk/world/us-news-blog/2012/jun/05/bilderberg-2012-chantilly-occupy?newsfeed=true

TIME誌の特集”HOW TO DIE”。:出来高払いにするから医師らが終末期の高齢者を無用の検査漬けにする、出来高払いではなく医師らを給与制とするthe Geisinger Health Systemの薦め。オバマ大統領も医療改革のモデルに。
http://www.time.com/time/covers/0,16641,20120611,00.html
http://medicalfutility.blogspot.jp/2012/06/how-to-die-time-mag-cover-story.html

英国NHSが自国で先端医療を受けられない患者を国外に送っているという話は2007年に医療ツーリズムを調べた時にも出てきていたけど、現在は米国にまで送っているらしい。その一方で、米国にはそういう医療を受けられない人が増えている皮肉をGuardianが。
http://www.guardian.co.uk/society/2012/jun/06/us-medical-care-haven-nhs?CMP=EMCNEWEML1355

【関連エントリー】
「なぜ大国アメリカで?」と医師が憤る無保険者の実態(2008/11/11)

上記の記事を別記事のショッキングな写真と一緒に再掲したものが以下。
http://blogs.yahoo.co.jp/spitzibara/54711663.html

子どもたちに経済不況の影響、深刻(米国)(2009/4/23)
自己決定と選択の自由は米国の国民性DNA?(2009/9/8)
この10年で医療を受けられない米国人が激増(2012/5/31)


高齢者の医療ではホスピス・ケアをデフォルトにしようとの動きがあるみたい? ブクマし損ねたけれど、この他にも同じ路線の記事はあった。
http://www.medicalnewstoday.com/releases/246192.php

NYT。母の血液と父の唾液サンプルで、生まれる前から子どものゲノムの大半が分かる日が近い?
DNA Blueprint for Fetus Built Using Samples From Parents: Researchers put together most of a fetus’s genome using a mother’s blood and father’s saliva, heralding an era when parents might know much more about a child long before its birth.

エール大学とオックスフォード大学の研究者らが、IVFで異常のない健康な卵子を選別する安全、効果的、安価な方法を開発。
http://www.medicalnewstoday.com/releases/246138.php

大ウツの治療が効果的にいった患者では後々の薬物濫用の確率が低いので、廻り回ってプロザックには青年期の薬物乱用防止効果がある?
http://www.medicalnewstoday.com/releases/246201.php

日本語。米国では自閉症は5歳まで診断されないケースが多い。「自閉症スペクトラム障害児の半数以上は、同疾患のコアとなる症状に対する影響が明らかになっている薬剤はないにもかかわらず、刺激薬や抗不安薬、抗うつ薬、睡眠補助薬、抗けいれん薬、抗精神病薬の薬剤を1つ以上服用していることも判明」
http://news.e-expo.net/world/2012/06/post-102.html

日本語。自閉症の子供 半数以上に向精神薬。「米カリフォルニア大学デイビス校の神経発達障害専門機関であるMIND研究所のランディ・ヘイガーマン氏は「自閉症の併存症を医師が認識するようになって きていることは大変良いこと」とする一方、「不安神経症や睡眠障害、注意欠陥多動性障害(ADHD)などの治療を受けている(自閉症の)子供の割合が 50%というのは、おそらく十分な値ではない」と指摘。さらに、こうした薬の使用により他の行動療法の効果が高まる可能性があるとしたほか、不安神経症や 多動性障害の緩和、睡眠量の増加により自閉症の影響が軽減されると述べている」:ブルームバーグの記事の翻訳みたい。
http://www.sankeibiz.jp/compliance/news/120605/cpd1206050502003-n1.htm

コペンハーゲン大の調査で、デンマークの子どもたちの不安障害は十分に診断されていない。
http://www.medicalnewstoday.com/releases/246139.php

NYT。CTスキャンに子どもの発がんリスク?
CT Scans Increase Children’s Cancer Risk, Study Finds: Researchers say the small but significant increase in the risk of leukemia and brain cancer do not mean that CT scans should be avoided entirely, but that the test should be performed only when necessary.

南アフリカで通称「秘密法」と呼ばれる言論統制の導入に向け、民衆の抵抗運動。
http://www.guardian.co.uk/world/2012/jun/06/south-african-campaigners-secrecy-bill

いつもお世話になっているガウタマ・シンラン・ソリドゥスさんのブログ・エントリー「小泉純一郎が、なぜ『格差社会』を生んだといわれてたのか?」
http://blogs.yahoo.co.jp/solidussolidarity/36078065.html

ザ・シミュレーション生活保護2030
http://www.j-cast.com/kaisha/2012/06/04134359.html
2012.06.07 / Top↑
メリンダ・ゲイツがこのところ中絶や家族計画について発言しているらしいことは
あちこちで目にして気になってはいたのですが、やっぱり……という記事が出てきました。


1912年にロンドンで第一回国際優生学会議が開催されてから今年で100年――。

その記念すべき年の7月11日に、ゲイツ財団と英国政府の共催で、
米国のPlanned Parenthoodと英国のMarie Stopes International、
さらに国連人口基金(UNFPA)も協賛して、
ロンドンで開かれることになっている国際会議は

ゲイツ財団によれば
「世界で最も貧しい国々の多くの女性に
より近代的な家族計画のツールを提供するため」のものとされているが、

実際は新たな優生学会議であり、
100年前の会議との違いは唯一、
今回の会議は優生目的を認めないということのみ、と以下の記事。

子どもを産むことを巡って女性の選択権を初めて主張した人たちが
だんだんと優生思想を説くことになっていった過程については
2010年に以下の本で読んで衝撃を受けた記憶がまだ生々しいのだけれど、

「家族計画」への道 近代日本の生殖を巡る政治
荻野美穂 岩波書店 2008


この記事でも、
Planned Parenthoodの創設者マーガレット・サンガ―と
英国で同じく産児制限を主導したマリー・ストープスが共に優生学の関係者と繋がり、
Stopesは親になることに適さない人への強制手術を説いたことが語られている。

優生思想とは、
政府が望ましい国民像(1912年では白人で肉体的にも知的にも優れて富裕であること)と望ましくない国民像を線引きして、政治力を行使して前者を増やし、
後者を減少させようとするもの、と定義する記事の著者は、

最近のメリンダ・ゲイツの以下の発言を引用し、

Government leaders … are now beginning to understand that providing access to contraceptives is a cost-effective way to foster economic growth … Government should provide all women with access to family planning tools that are safer and effective and meet the needs of all women.

政府首脳たちは…避妊へのアクセスを提供することが経済成長を促すコスト効率の良い方法だということを今では理解し始めている。… 政府がすべての女性に安全で効果的な家族計画ツールへのアクセスを提供し、すべての女性のニーズに応えるべきである。


ここには、
貧しい人々の子どもは生まれてくると政府の資金によるプログラムを利用することになり、
経済成長を阻害する存在だとの前提が存在し、

したがって、
強制によらず、政策として目立たない形で行われる
ソフトな優生思想そのものである、と。

しかし、この記事のショッキングな指摘は、この点に留まらない。

こうしたソフトな優生思想が目立たなくなっているのは
既に力によるハードな優生思想がまかり通るようになっているからだ、と述べて、
その実態を報告している。

そこには中国の一人っ子政策や、
一人っ子政策を支持するスタンスに立つUNPFと、それを巡って
UNPF支持のオバマ政権vs 批判し選挙の争点にしようと狙うロムニー候補の対立、

さらには、
インドで貧しい国民に対して行われている強制的不妊施策と、
それを地球温暖化のための人口削減策として英国政府が多額の資金援助をしているとの、
驚くべき事実を指摘し、

詰まるところ英米の資金援助によって
中国とインドでは政府主導の強制的な人口削減策としての優生施策が取られている、と。

Melinda Gates Talks Eugenics
American Thinker, June 6, 2012


いろいろと、
これまで当ブログが拾ってきた断片情報と合致しているのは事実。

まず、こちらのエントリーの最後にまとめていますが、
ビル・ゲイツの父親はかつてPlanned Parenthood Federation会長であり、
2002年にはゲイツ財団から同連盟にグラントが提供されているとの情報がありました。

その他、ゲイツ財団が中国とインドの保健行政に深く関わってきたこと、
特にインドでの避妊に大きな関心を寄せてきたことは、以下のように
いくつものエントリーで拾って来た通り。

ゲイツ財団資金で超音波による男性の避妊法を開発、途上国向け?(2010/5/12)
ゲイツ財団がインドのビハール州政府と「革新的な家族保健」の協力覚書(2010/5/17)
2010年5月29日の補遺:G8での途上国の母子保健関連記事。ここでも「家族計画」に言及。
ゲイツ財団が途上国の「家族計画、母子保健、栄養プログラム」に更に150億ドルを約束(2010/6/8)
「途上国の女性に安価な薬で簡単中絶“革命”を」の陰には、やっぱりゲイツ財団(2010/8/3)
注目集めるインド発・男性向け避妊法、「女性にも」とゲイツ財団(2011/6/3)

知的障害・貧困を理由にした強制的不妊手術は過去の話ではない(2010/3/23):G8での避妊・家族計画論争
ナミビアでHIV感染女性への強制不妊手術に抗議デモ(2010/6/2)
コンドーム生産国日本の家族計画国際協力がペルーの強制不妊に繋がった?(2010/8/17)
英国で知的障害女性に強制不妊手術か、保護裁判所が今日にも判決(2011/2/15)

世界医師会が「強制不妊は医療の誤用、医療倫理違反、人権侵害」(2011/9/12)

また米国では、いくつかの州で過去の強制不妊の歴史に謝罪や賠償の動きがあり、
MN州、100年に及ぶ差別的施策を障害者に公式謝罪(2010/6/15)
MN州の公式謝罪から「尊厳は無益な概念」を、また考えてみる(2010/6/17)

NC州で、かつての強制不妊事業の犠牲者への補償に向け知事命令(2011/3/21)
NC州の強制不妊事業の犠牲者への補償調査委員会から中間報告書(2011/8/15)


ちなみに、時々お邪魔しているakihito_uzuki2000さんのブログで
昨日、読ませていただいた以下の記事が偶然にも
「日本の精神医学と優生思想」というタイトルで

http://blogs.yahoo.co.jp/akihito_suzuki2000/61828308.html

その最後に、akihiro_suzuki2000さんが書かれている以下の下りに、
唸ってしまいました。

優生学というのは断種と安楽死を究極の方法として、子育て、結婚相手の選択、疾病の治療と予防、ライフスタイル、そして人口移動などに幅広くまたがったプ ロジェクトであった。寿命から疾病構造から生活水準から居住にいたるまで、激変した近代社会のダイナミクスの中で、人間の生殖と生活に到達しようとした生権力と言いかえてもいい。


また、冒頭のみで、まだ読めていませんが、
インドの産児制限について以下の日本語論文を見つけました。
サンガ―やストープスについても言及あります。

浄点化するセクシュアリティ―英領期インドにおけるR.D.カルヴェーの産児制限運動を中心に
松尾瑞穂、南アジア研究第21号(2009年)


この論文から「はじめに」の冒頭部分を以下に。

インド政府は、1952年に世界に先駆けて人口抑制政策を開始して以来、たびたびその方向性や名称を転換させつつも、今日まで一貫して「人口問題」に取り組んできた。しかし出生率や人口増加率の低下に集約される「成果」(表1)が目指されるあまり、女性の避妊手術に特化したターゲット方式を敢行するなど、その手法がしばしば批判の対象となってきたのは周知のとおりである。独立後の国家形成という大事業のなかで、身体そのものが統治・管理の対象となる過程は、まさにフーコーのいう生政治(biopolitics)[フーコー 1986]の展開として捉えることも可能であろう[松尾 2007a]。
だが、家族計画は、一方では個的身体を超えた人口という「全体」を志向する統治であると同時に、他方ではカーストや階層、宗教、ジェンダーという社会的要因による集団間の差異を作り出してきた。
2012.06.07 / Top↑
2009年に、ネットの別のところで書いたものを、
なんとなく、こちらに書き写しておきたくなったので――。



もう2年くらい、蚊をやっている。

象に闘いを挑んでいく蚊。

倒すどころか刺すことすら、できっこないのに
一人で力んで槍を構え
象の周りをぶんぶん飛んでいる。

もちろん象はそんな蚊がいることすら
まったく知らない。

象だけでなく世界中の誰も知らない……

……とばかり思っていたら、
この前ひょっこりGoogleのアラートが
どこかの誰かの言葉をひろってきた。

Here is someone who keeps the good fight.
(がんばって闘っている人がいる)

日付を見たら3ヶ月も前の言葉だった。

こんなにちっこい蚊のことを
ちゃんと見つけてくれる人がいた……。

ジン……ときた。

過ぎ去った3ヶ月のかなたのどこかの誰かに向かって
「ありがとう」と手を合わせ、丁重に頭を下げた。

日本の蚊だからね。

そしてドンキホーテみたいな日本の蚊は
このフレーズを懐にしっかり仕舞わせてもらったよ。

Keep a good fight.

結果じゃない。
蚊には蚊なりの good fight さ。

象め。




蚊はその後、去年秋に
「アシュリー事件」という本を書きました。

蚊には蚊なりに、精いっぱいのファイトの戦記――。 
2012.06.07 / Top↑
今年のビルダーバーグ会議、米国ヴァージニア州で開催中。ヘンリー・キッシンジャーもビル・ゲイツも。会場周辺では抗議する人たちが集まっているが、そこではティー・パーティもオキュパイ運動も肩を並べているのだとか。
http://www.heraldnet.com/article/20120603/NEWS02/706039898
http://www.guardian.co.uk/world/2012/jun/02/bilderberg-virginia-tea-party-occupy?CMP=EMCNEWEML1355

【関連エントリー】
“優生主義者ビル・ゲイツ”、世界エリートの“陰のサミット”ビルダーバーグ会議に(2010/6/9)
ビルダーバーグ会議2010(6月3-6日)(2010/6/10)
「ビルダーバーグ倶楽部」からVeriChipとワクチンについて(2010/6/29)
「ビルダーバーグ倶楽部」からAshley事件について(2010/6/29)


豪ギラード首相が、全国規模の障害者保険制度を整備する、と。
http://www.theaustralian.com.au/news/opinion/pm-puts-politics-before-the-disabled/story-fnbcok0h-1226382010463

米国で連邦メディケア&メディケイド・サービス・センターが、ナーシング・ホームなどでの認知症患者への問題行動への対応として抗精神病薬が過剰に使われている問題への対策に乗り出す。
http://www.post-gazette.com/stories/news/science/agencies-demand-curbs-on-drugs-for-dementia-638831/

2030年までに世界中でガン患者が75%も増加する、との試算。生活の欧米化で。:「生活の欧米化」とは、突き詰めれば「科学とテクノの簡単解決バンザイ文化」そのものが病気を増やしているということではないのか……という疑問が私にはずっとある。でも、世界はそれにさらに同じ文化で対応しようとしている、という疑問も。
http://www.cbsnews.com/8301-504763_162-57445722-10391704/global-cancer-cases-projected-to-rise-75-by-2030/

NHSに急性病で搬送された患者は無益な心肺蘇生で尊厳のない死に方をさせられている、という調査結果。:このところ英国では患者本人も家族も知らない内にカルテにDNR指定をされているというケースでの訴訟が相次いでいるのだけれど、この調査はそういうこととも関係している?
http://www.guardian.co.uk/society/2012/jun/01/acutely-ill-prevented-dying-dignity?CMP=EMCNEWEML1
2012.06.07 / Top↑
米国ワシントン州のシアトルこども病院が、親の要望により、重症障害のある当時6歳の女児アシュリーから子宮と乳房を摘出し、さらにホルモン大量療法によって身長の伸びを抑制したことで世界的な議論が起きた2007年の“アシュリー療法”論争とその続報については、同年3月号以降、当欄で何度か紹介してきた。

この事件との出会いは、アシュリーとほぼ同じ障害像の娘を持つ私にとって、それまでの世界観を揺るがせるほどの大事件だった。07年5月にブログ「Ashley事件から生命倫理を考える」を立ち上げ、事件の展開を追いかけながら、こうした事件が起こされてしまう今の世の中のあり方や時代性についても考えを巡らせてきた。そうした4年半の検証と考察を、去年の秋に「アシュリー事件 メディカル・コントロールと新・優生思想の時代」(生活書院)という本に取りまとめて上梓したところだ。その中で私は「アシュリー事件はまだ終わっていない」と、何度か書いている。

07年当初の論争では、障害者の権利擁護団体WPASの調査により、子ども病院は手続きの違法性を認め、今後は裁判所の命令なしに子宮摘出は行わないとWPASと合意した。しかし、その後もアシュリーの父親は広く世界中の重症児に一般化していく夢を語り続け、担当医やその周辺の医師らはシンポジウムを開き論文を書いては正当化に努めてきた。その動きも10年秋の論文の後は途絶えて久しい。しかし、上記WPASとの最初の合意期限の12年5月に向け、水面下で進められているシナリオがあるのでは、との懸念が私には続いていた。一方で「そうでなければよいが」と願ってもいたのだけれど、やはり私の懸念が現実のものとなってしまったのかもしれない。

3月15日、英国の新聞ガーディアンにアシュリーの父親のインタビューが掲載された。Eメールにより1週間かけて行われたもの。依然、匿名のままである。もうすぐ15歳になるアシュリーの身長は07年から2センチ伸びて137センチ、体重は4キロ増えて34キロ。楽しく毎日を送っており、“アシュリー療法”は成功だったと語るだけでなく、07年以降に連絡を取り合い情報交換をして、これまでに少なくとも12家族が重症障害のある子どもに同療法を行ったとも明かした。既に“治療”を終了した子どもは6人(米国4人。ヨーロッパとオセアニア各1人)で、うち2人が男児。手術を受けたのは3人で、残り3人は成長抑制のみ。

ガーディアン紙はそのうちトム(12)とエリカ(14)(共に仮名)の母親に取材して、追加記事を書いている。驚くのは2人とも赤ん坊の頃にもらわれた養子であること。さらにトムの成長抑制とエリカの子宮と乳房摘出については、医師の単独の判断で実施が決められているように思われることだ。

母親は2人とも「本人のQOLのため」「医療はすべて自然に逆らい神を演じること。抗がん剤治療と同じ」「障害児・者のうち1%程度の重症児だけが対象。批判する障害者はその点を誤解している」など、これまで医師らが繰り返してきた正当化論を踏襲している。一方、アシュリー・ケースでは「親が介護しやすいように小さくしたわけではない」と繰り返し否定されたはずの「介護の便宜を図る」目的が、ガーディアンの記事ではさりげなく盛り込まれていることが気にかかる。

また、07年にニューヨーク・タームズ紙でいち早く擁護論を書いた功利主義の哲学者ピーター・シンガーが、この度も父親のインタビュー翌日にガーディアンに登場。「尊厳や権利の侵害だからこの療法は禁止しろという声があるが、在宅介護を可能としQOLを維持して本人の利益になるなら、病院内倫理委の検討を条件に認めるべきだ」と説いた。そして「乳児は可愛いが尊厳ある存在ではない。これは大きな身体のまま赤ん坊の知的レベルに留まる高齢者でも同じことだ」と、この度はわざわざ高齢者に言及した。

そういえば直前の3月12日には、07年の論争で成長抑制の擁護論文を書いた生命倫理学者マシュー・リアオがアトランティック紙で、地球温暖化のために、肉を食べたくなくなる薬や環境保護の姿勢を涵養する薬とともに、人の身体を小さくするための薬と遺伝子組み換え技術を開発すべきだと提唱している。

いったい何が起ころうとしているのか。この世界はどこへ向かおうとしているのか……。やはりアシュリー事件はまだまだ終わってなどいない。様々な意味で――。

「世界の介護と医療の情報を読む」
「介護保険情報」2012年5月号
2012.06.03 / Top↑
【自殺幇助関連】

スイスのVaudカントンで17日に、ナーシング・ホームと病院での自殺幇助を認めるかどうかの住民投票が予定されている。
http://www.thelocal.ch/3433/20120601/

カナダのトロント大学で6日に「カナダで自殺幇助は合法化されるべきか」と題したシンポ。
http://world.einnews.com/pr_news/98638760/media-advisory-legalizing-assisted-suicide-to-be-debated-at-university-of-toronto

英国のGP協会長が自殺幇助合法化に反対の立場を表明。
http://www.bioedge.org/index.php/bioethics/bioethics_article/10088

オレゴン州の自殺幇助でうつ病患者のアセスメントが行われていない、という問題について2011年の実態報告から Charlotte Lozier Instituteの論文。:OR州でもWA州でも尊厳死法のセーフガードが機能していないと、前から指摘されている重大な問題。関連エントリーも多数。
http://www.lozierinstitute.org/2012/05/assisted-suicide-in-oregon-evidence-of-missed-evaluation-for-depression/

ルイジアナ州で自殺幇助禁止強化へ。:ルイジアナ州といえば、ハリケーン・カトリーナの際に安楽死事件があったところ。
http://alexschadenberg.blogspot.jp/2012/05/assisted-suicide-ban-strengthened-in.html

マサチューセッツ州では11月の住民投票実現に向けて合法化ロビーの動きが活発に。
http://newoldage.blogs.nytimes.com/2012/05/29/massachusetts-debates-death-with-dignity/

CA州で自殺幇助をテーマにコメディ映画の企画。タイトルは It’s a Good Day to Die.
www.wdbj7.com/news/wdbj7-california-filmmaker-with-ties-to-western-virginia-hopes-to-bring-her-next-project-home-20120601,0,7282246.story

【自殺幇助関連以外】

カリフォルニア州で、何度も警告を受けたにもかかわらず真面目に治療薬を飲まず多酒を飲んで薬物を乱用しているとして、結核患者Armando Rodriguezさんを逮捕。こういう問題で刑法処分することを巡って議論に。:ワクチン拒否する親にも法的責任を問えという声は起きているし。
http://www.bioedge.org/index.php/bioethics/bioethics_article/10082

ビッグ・ファーマと医師らの金銭関係の調査報道を続けているProPublicaの担当記者らとのQ&A。
http://www.propublica.org/article/chatting-with-the-reporters-behind-dollars-for-docs

インドの代理母は1000のクリニックが林立する230億ドル産業。
http://www.bioedge.org/index.php/bioethics/bioethics_article/10089

ビル・ゲイツがまたもインドに。ポリオ撲滅、ワクチン開発、家族計画、要人と会談し資金提供しているインドの医療プログラムについて意見交換。インド政府も公衆衛生で“パートナーシップ”をおねだり。
http://twocircles.net/2012may31/gates_praises_india_containing_polio.html
http://www.indianexpress.com/news/gates-in-pune-on-vaccine-hunt/956481/
http://articles.timesofindia.indiatimes.com/2012-06-01/india/31957911_1_control-population-bill-gates-family-planning
http://zeenews.india.com/news/health/health-news/bill-gates-meets-jairam-ramesh-in-delhi_17221.html
http://zeenews.india.com/news/nation/govt-seeks-bill-gates-partnership-for-sanitation_778771.html

台湾の障害者人口、2026年に104万人に。
http://focustaiwan.tw/ShowNews/WebNews_Detail.aspx?Type=aSOC&ID=201205270009

連立政権の社会保障費削減で、高齢者から在宅ケア・サービスが奪われている。
http://focustaiwan.tw/ShowNews/WebNews_Detail.aspx?Type=aSOC&ID=201205270009

NZの介護職団体から「政策決定権者らは1週間でも実際に介護現場で働いてみろ」と介護予算を求める声。
http://www.nzherald.co.nz/nz/news/article.cfm?c_id=1&objectid=10808840

日本語。英キャンプ場で24人に「奴隷生活」強制、男4人を訴追
http://jp.reuters.com/article/worldNews/idJPJAPAN-23157120110913?rpc=122

日本語。ボスニアでドイツ人女性を8年間「奴隷化」、当局が夫婦拘束
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120528-00000020-reut-int

日本語。米シアトルの学生街で銃乱射、5人死傷 容疑者は自殺図る
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120531-00000001-cnn-int

日本。生活保護制度に関する冷静な報道と議論を求める緊急声明
http://seikatuhogotaisaku.blog.fc2.com/blog-entry-33.html

日本。利用者数の増加ではなく貧困の拡大が問題である~「生活保護利用者過去最多」に当たっての見解~
http://seikatuhogotaisaku.blog.fc2.com/blog-entry-9.html

平成24年度重症心身障害児者の地域生活モデル事業に係る公募について(厚労省)
http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/cyousajigyou/chiikiseikatsu/
2012.06.03 / Top↑
去年5月の補遺などで
ゲイツ財団のグローバル・ヘルス部門のトップだったタチ・ヤマダ氏が
日本の武田製薬に赴任したニュースを追いかけましたが、

そのヤマダ氏をクローズアップした、“いかにも”な続報。

大きな流れとしては
大ヒットした糖尿病薬以降のブロックバスターを開発できず、業績が悪化、
そのヒット商品の特許切れも間近となって苦しい武田製薬の立て直しに
ヤマダ氏が一役買うことが期待されている、という記事なのですが、

この記事の中には当ブログの追いかけてきた話題に関連した
たいへん興味深い情報が満載なので、特にその部分について、以下に――。


武田製薬に「グローバルな研究開発手法を導入する」ことを期待されて
招へいされたヤマダ氏が、赴任するや武田製薬内に新たに設けたユニットは
「253億ドルのグローバル・ワクチン市場への進出」を狙った部局。

さらに、今年1月にはヤマダ氏が
やはりゲイツ財団から、Rajeev Venkayya氏を招へい。

Venkayya氏は救急専門医で、
かつてはブッシュ大統領のもとでバイオ・ディフェンスの補佐官を務めた人物。

武田製薬ではワクチン・ユニットの拡大を指揮する。

現在、ワクチン市場が日本に限られている同社では
日本の市場向けには4種混合ワクチンの開発を急いでいるが、

これからのワクチン市場は何といっても途上国狙い。

現在、カネ持ちの先進国で使われているワクチンを
低所得、中所得の国々も欲しがるようになるのは必至と語るヤマダ氏は、
「好機は明らかです」。

世界のワクチン市場は、北米、EUと日本を除外しても、
去年だけで11%も拡大し、67億8000万ドルに膨らんだ。
さらに今後5年間で10%も成長すると言われている。

この予測を出しているKalorama Informationの担当者は
「ワクチンは今や大きな市場ですよ。まだまだ広がる余地もあります」

なにしろ、
新興国の経済と人口が伸びて行くということは、
新興国で売られるワクチンの需要がどんどん膨らんでいくということだから、と。


Gates Foundation Veteran Yamada Retools Drugmaker Takeda
Bloomberg, May 31, 2012


なるほど、「ワクチンの10年祭り」は、あと5年残っている、
ターゲットは新興国と途上国のワクチン市場、というわけですね。

まだまだ、あと5年は、ワクチンが儲かりまっせぇ……と。


【ゲイツ財団と「ワクチンの10年」について】
新興国でのワクチン開発・製造に、巨大製薬会社がマーケット・チャンスと乗り出している(2009/11/8)
リスクの“リ”の字もなく“黄金時代”に沸くワクチン開発記事(2009/11/19)
「これからはワクチンが儲かりまっせぇ」の陰には、やっぱりゲイツ財団が……(2009/11/20)
「次世代ワクチン・カンファ」の露骨(2010/5/28)
やっと出た、ワクチンのため世界中からかき集められる資金に疑問の声(2011/6/16)
「ゲイツ財団(の連携機関)が途上国の子どもに銃を突きつけワクチン接種」(2011/7/29)
公衆衛生でマラリア死8割減のエリトリアから「製薬会社株主ビル・ゲイツのワクチン開発」批判(2011/8/2)
やっぱり不思議な「ワクチン債」、ますます怪しい「途上国へワクチンを」(2011/9/4)

ヤマダ氏招へいの前後については、こちらに ↓
ゲイツ財団、ビッグ・ファーマ・ノバルティス役員の引き抜きへ(2011/9/12)

【日本のワクチン施策について】
朝日のワクチン記事にも「米国では」の印籠(2009/8/8)
「健康ギャップ」なくても「ワクチン・ギャップ」埋めないと「世界に恥じる」……と説くワクチン論文(2010/3/5)
日本の「ワクチン産業ビジョンの要点」の怪(2011/3/8)
2012.06.03 / Top↑