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ADHDの治療薬 Adderallが米国の大学生の間で
集中力を高める即効力のある“スマート・ドラッグ”として濫用されている。

地元紙の取材で、
Wisconsin大学Madison校のキャンパス内でも
闇で売っている学生から1錠5ドルで簡単に手に入ることが分かった。

長期に服用すると、睡眠障害や頭痛、依存、チックなどの副作用があることが
明らかになっているが、

学生がADHDの症状を訴えれば医師は処方する。
そうして手に入れたAdderallがキャンパス内で違法に売買されているらしい。

副作用を軽視している医師も少なくないし、
大学側もマリファナや飲酒に比べると
さほど深刻な問題と捉えていない。

しかし、同校のカウンセリング担当の薬物濫用の専門家は
身体的な副作用のほかに、こうした薬を飲まないと試験をクリアできないような心理状態に陥る
精神的な副作用にも警告を発している。

この記事に登場する匿名の学生は
ストレスの多い時期にAddedallのオーバードースから
病院に運び込まれたことがあり、現在は他の薬に切り替えたという。

それでも
「本当に簡単に集中できるようになるんだもの。
奇跡の薬なんて言いたくはないけど、でもAdderallがなかったら
今ここ(法科大学)にはゼッタイいなかったと思うわ」と。

Some see use of ‘smart drug’ Adderall rising at UW-Madison
Wisconsin State Journal, December 20, 2010

Chris Rickert: With performance-enhancing drugs, the trick is balancing your buzz
Wisconsin State Journal, December 25, 2010



で、Wisconsin大学、エンハンスメントと来れば、
この人が出てこないわけはない……のが、Ashley事件の立役者の Norman Fost。

Fostがこの記事で主張していることは、だいたい、こんな感じ。

なまじ違法だったり手に入れにくくなっているから
学生たちが処方薬を闇で売買したり、怪しげなルートで手に入れなければならない。

合法的に手に入れた酒が原因で何千人という人が死んだり大騒動を起こしているんだから、
非合法に手に入れた薬のおかげで法科大学に入れるなら合法化すればいい。

合法化すれば製造も利用も透明性が担保され、
ちゃんと監督することができて、よほど安全になる。





ちなみに、こちらエントリーのコメント欄での
児童精神科医AFCPさんの当てずっぽうの推測によると、
ADHDの治療薬のエンハンスメント目的での使用を肯定する精神科医が
日本でも3割くらいはいるのでは……とのことでした。
2010.12.29 / Top↑
カナダ、ケベック州で知的障害のある男性Stephan Dufour(31)が、車いす生活の叔父(41)に強要されて叔父の寝室に首を吊れるようなセッティングの手伝いをし、自殺幇助の罪に問われていた06 年9月の事件の裁判の上訴審で、無罪判決。自殺幇助罪が成立するには、相手の死を予測し、それを目的に行動していることが必要だが、Dufourは叔父からのコントロールを受けて行動したに過ぎず、知的障害のために抵抗できなかっただけで、叔父の死を望んでいなかった、との判断。
http://www.edmontonjournal.com/news/ASSISTED+SUICIDE+QUEBEC+APPEAL+STANDS/4014873/story.html

この判決を自殺幇助合法化への前例と捉えることに、Euthanasia Prevention CoalitionのAlex Shadenbergが警告を発している。:ケベック州のこのところの合法化ロビーの勢いはものすごいので、確かにShadenbergが懸念するように、これを事実上の合法化の第一歩として喧伝したい人たちは沢山いるのだろうな、と思う。
http://www.lifesitenews.com/blog/the-acquital-of-stephan-dufour-is-not-an-assisted-suicide-precedent-for-que?utm_source=feedburner&utm_medium=feed&utm_campaign=Feed%3A+LifesitenewscomLatestHeadlines+%28LifeSiteNews.com+Latest+Headlines%29

米国で医療制度改正法案に盛り込まれた際には「死の委員会」だとの非難を浴びて削除された、終末期の延命治療放棄の事前指示書作成に向けた医師の関与への相談料が、メディケアの運用規則として復活。1月1日から施行。
http://www.nytimes.com/2010/12/26/us/politics/26death.html?_r=2&nl=todaysheadlines&emc=a2

12月30-31日、テルアビブ大学で国際障害学学会。基調講演の1つはAdrienne Ash。
http://www.distudisrael.com/

12歳とか13歳の子どもの盗みや器物損壊、けんか、イジメなどの問題行動は将来の重大な違法行為の指標となる、とモントリオール大学が2年間の追跡調査を行った結果をJournal of Child Psychology and Psychiatry誌に。例えば10代の間に、不法ドラッグを売る確率は6倍、ギャングのメンバーになる確率は9倍、武器を持ち歩くようになる確率は 11倍、逮捕される確率は8倍に。:悩める親の参考に、というのだけど、なんだか最近、子どもたちの利益のためというよりも、親や社会の利益のための調査研究が多くなっているような……。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/211740.php
2010.12.29 / Top↑
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【米国】
WA州とOR州の2009年尊厳死法データ(2010/3/5)
OR州の「尊厳死」:97%にC&Cが関与、たった20人の医師がせっせと処方(2010/3/11)
Montanaで最高裁判決後、少なくとも1人にPAS:C&C(2010/4/10)
オレゴン州の尊厳死法、セーフガードは機能せず(2010/8/17)
全国平均よりも35%も自殺率高いOR州で、それでも尊厳死法に消極的だとホスピス批判(2010/9/13)
WA州の尊厳死法、殺人の可能性あっても「問わず語らず」で(2010/9/16)
WA尊厳死法の「すべり坂」、エビデンスがまた1つ(2010/11/2)


【オーストラリア】
「やめておけ、豪の安楽死法は失敗だったぞ」と緩和ケア医がケベックの医師らに(2010/10/8)


【ベルギー・オランダ・スイス】
ベルギーにおける安楽死、自殺幇助の実態調査(2010/5/19)
オランダで安楽死が増加し保健省が調査。緩和ケアの崩壊も(2010/6/21)
MinelliはDignitasでボロ儲けしている?(2010/6/25)
幇助自殺者が毎年1割ずつ増えるオランダで「安楽死クリニック」求める声(2010/8/12)
「PAS合法化なら年1000人が死ぬことに」と、英シンクタンクが報告書(2010/10/26)


【その他関連】
Savulescuの「臓器提供安楽死」を読んでみた(2010/7/5)
ハリケーン・カトリーナ:メモリアル病院での“安楽死”事件 1/5(2010/10/25)
(ここから5エントリーのシリーズ)


【月刊誌「介護保険情報」の連載「世界の介護と医療の情報を読む」で書いたもの】
「医師による自殺幇助に合法判決 – モンタナ州」(2月号)
「近親者による自殺幇助」合法化議論: 英国(3月号)
「公訴局から自殺幇助起訴判断ガイドライン: 英国」(4月号)
「腎臓ペア交換・臓器提供安楽死」(8月号)
「セーフガード崩れる尊厳死法の実態が明らかに」(10月号)
2010.12.27 / Top↑
7月

DignitasのMinelliが「求められれば健康な人の自殺幇助も」と、またBBCで(2010/7/3)
「ケアラー連盟結成宣言」(日)(2010/7/6)
「米国のワクチン不信と、そこから見えてくるもの」を書きました(2010/7/5)
豪タスマニア州が自殺幇助合法化法案を準備中(2010/7/13)
“ロックト・イン症候群“の男性が「妻に殺してもらう権利」求め提訴(英)(2010/7/20)
英国老人医学会が医師による自殺幇助に反対声明(2010/7/21)
GA州のALS男性が「臓器提供安楽死」を希望(2010/7/25)
「障害児の涎は薬で抑えましょう」というFDAの“Ashley療法”的発想(2010/7/30)

8月
英国のDr. Death「元気な高齢者にも医師による自殺幇助を」(2010/8/16)
「健康で5年しか生きられない」のと「重症障害者として15年生きる」のでは、どっちがいい?(2010/8/20)
障害者の買春を福祉で購うことの是非論争、でも実は別の話?(英)(2010/8/21)
NZの世論調査で自殺幇助合法化、賛否まっぷたつ(2010/8/23)
幼児化する親、幼児化していく社会(2010/8/27)
Kevorkian医師の半生記映画、主演のパチーノ共、エミー賞を受賞(2010/8/30)
アニメ・ソング「ダウン症ガール」巡り「コケにされる平等」インクルージョン論争(米)(2010/8/31)

9月
6万ドルの安楽死キャンペーン、オーストラリア全土に看板とTVコマーシャル攻撃(2010/9/7)
NC州に自殺幇助専用ホスピス?(2010/9/14)
「人種も身長も趣味だって選べます」精子ドナー斡旋業で逮捕者(英)(2010/9/15)
スコットランドの自殺幇助合法化法案から「自立できない障害者」要件外れる見通しに(2010/9/22)

10月
拘留施設の子どもらの気分障害、攻撃的行動に抗精神病薬?(米)(2010/10/6)
DignitasのMinelliが「病人だけじゃなく家族にも致死薬を出そうぜい」(2010/10/19)
ゲイツ財団のメディア・コントロール(2010/10/21)
「障害者の権利とリプロダクティブ・ライツは相互に否定しない」と優生思想に抗議するステートメント(2010/10/30)

11月
「障害者の権利と動物の権利を一緒にするな」とNDYのStephen Drake(2010/11/1)
ProPublicaが暴く「ビッグ・ファーマのプロモ医師軍団の実態」(2010/11/2)
朝日新聞の「どうせ治らないなら延命はしませんよね、あなた?」(2010/11/5)
ダウン症らしいからと、依頼者夫婦が代理母に中絶を要求(カナダ)(2010/11/18)
欧州人権裁判所に「死の自己決定権」提訴(独)(2010/11/29)
英国上院に自殺幇助に関する検討委員会(2010/11/30)
サプリでさんざん儲けた後で「やっぱりビタミンDの摂り過ぎはよくない」って(2010/11/30)

12月

スコットランドの自殺幇助合法化法案、否決(2010/12/2)
FENが「GA州の自殺幇助関連規定は言論の自由を侵す」と訴訟(2010/12/11)
英国DPP、家族による自殺幇助既に20件も不起訴に(2010/12/15)
セルビア人を殺して採った臓器を密売、巨大犯罪組織のボスは現コソボ総理大臣(2010/12/16)
「功利主義はとらない」……南アフリカの人工透析患者選別委員会の模索(2010/12/17)
米国神経学会「家族を苦しめないために(臓器生かすにもコスト減にも)脳死判定は1回に(2010/12/18)
Robert Truog「心臓死後臓器提供DCDの倫理問題」講演ビデオ(2009)(2010/12/20)
英国で初めて、“救済者兄弟”からの骨髄移植ファンコーニ貧血の姉に(2010/12/22)
2010.12.27 / Top↑
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複数のエントリーがあるものは、なるべく最新のエントリーにリンクしました。
その場合、たいてい文末に関連エントリー・リンク一覧があります……と思います。

1月
台湾で自殺幇助事件
NH州議会、自殺幇助合法化案を否決
カナダ、Isaia事件(無益な治療)
英でInglis事件 (慈悲殺)
英Gilderdale事件で無罪判決(自殺幇助・慈悲殺)

2月
ロシアのジャーナリストが「知的障害ある新生児は“出生後中絶”で」
オランダで「70歳以上の高齢者には自殺幇助を」と学者・政治家ら
「高齢者がいつでも死ねるよう街角ごとに“安楽死ブース”を」と英国作家
英BBC司会者の“自殺幇助”告白事件
豪でAngela事件(重症児の子宮摘出)
英国で公訴局長DPPから自殺幇助起訴ガイドライン

3月
CDCの前ディレクターはHPV売ってるMerck社のワクチン部門トップに天下り(2010/3/9)
闇の自殺幇助機関FEN事件の4人を起訴(米)(2010/3/10)
「脳死でなくても心停止から2分で摘出準備開始」のDCDを、ERで試験的に解禁(米)(2010/3/17)
「知的障害の原因となる遺伝子を突きとめる検査ができた」とジェネティック企業(2010/3/25)
救済者兄弟について:これまでのエントリーのまとめ(2010/3/28)
米国小児科学会が「子どもの突然の死にも親が臓器提供を忘れぬよう働きかけを」(2010/3/31)

4月
Cameron党首、自殺幇助合法化に反対を表明(2010/4/9)
CT州の障害者権利擁護局が「自殺幇助合法化訴訟に障害者の視点を」と動議(2010/4/15)
NZで脳出血後遺症の重症障害女性が栄養と水分を拒否して自殺(2010/4/16)
カナダ議会、自殺幇助合法化法案を否決(2010/4/22)
チューリッヒ湖の底に大量の骨壷、Dignitasが投棄か(2010/4/28)

5月
ウズベキスタンで貧しい女性に無断で不妊術(2010/5/8)
「生きた状態で臓器摘出する安楽死を」とSavulescuがBioethics誌で(2010/5/8)
ベルギーで2年前にロックトインの女性、「安楽死後臓器提供」(2010/5/9)
シンガポールで末期がん女性が自殺幇助を希望(2010/5/12)
HPVワクチン、今度は男児狙いときて親の警戒またアップ(米)(2010/5/13)
ゲイツ財団が、インドの貧しい村を「養子」に?(2010/5/17)
介護者の権利を守るための「ケアラーズ連盟」、6月7日に発足へ(日本)(2010/5/18)
英国で、介護者による自殺幇助を事実上合法化する不起訴判断(2010/5/25)
「次世代ワクチンカンファ」の露骨(2010/5/28)

6月
ナミビアでHIV感染女性への強制不妊手術に抗議デモ(2010/6/2)
自殺幇助議論で、Campbellさんら障害者が議員をターゲットに“抵抗”キャンペーン(2010/6/4)
CT州地方裁判所「人道的な目的であっても自殺幇助は違法」(2010/6/8)
ビル・ゲイツの音頭で米国の長者たちが各国政府の頭越しに世界人口抑制に取り組もうと合意(2010/6/9)
“優生主義者ビル・ゲイツ”世界のエリートの“陰のサミット”ビルダーバーグ会議に(2010/6/9)
ビルダーバーグ会議2010(6月3-6日)(2010/6/10)
NJ州の「無益な治療」訴訟:Betancourt事件(2010/6/11)
MN州、100年に及ぶ差別的施策を障害者に謝罪(2010/6/15)
Oregon州に米国版Dignitasか、Dignity House(2010/6/24)
ドイツ最高裁が本人意思なら延命治療停止は合法との判断(2010/6/25)
「腎臓がほしければ、他人にあげられる腎臓と物々交換で」時代が始まろうとしている?(2010/6/30)
2010.12.27 / Top↑
AJOB成長抑制論文
http://bioethics.net/journal/j_articles.php?aid=2118
http://whatsortsofpeople.wordpress.com/2010/01/12/ashley-revisited-american-journal-of-bioethics/(Sobsey)
http://whatsortsofpeople.wordpress.com/2010/01/13/ashley-effects-of-estrogen-on-weight/ (Sobsey)

アシュリー父が3周年アップデイトで「既に12人に実施」
http://ashleytreatment.spaces.live.com/mmm2009-09-01_09.47/mmm2009-09-01_09.47/mmm2007-10-25_18.59/blog/cns!E25811FD0AF7C45C!1827.entry(親のブログ)
http://severedisabilitykid.blogspot.com/2010/01/ashley-treatment-is-alive-and-wellsadly.html (Clair Roy)
http://badcripple.blogspot.com/2010/01/ashley-treatment-and-parental-update.html (Bill Peace)

Fost & Lantos ディベイト
http://blog.bioethics.net/2010/01/ashley-x-revisited-fost-and-lantos-debate-on-the-b/

Angela事件
判決文
http://www.austlii.edu.au/au/cases/cth/FamCA/2010/98.html

media
http://www.brisbanetimes.com.au/queensland/parents-win-bid-to-sterilise-daughter-20100309-ptlf.html
http://mikiverse.blogspot.com/2010/03/disabled-girl-can-be-sterilised-court.html
http://www.dailymail.co.uk/news/worldnews/article-1256806/Australian-court-allows-parents-sterilise-11-year-old-daughter.html
http://www.telegraph.co.uk/news/worldnews/australiaandthepacific/australia/7405283/Parents-win-right-to-have-disabled-daughter-11-sterilised.html

blog
http://www.alexfieldherself.com/2010/03/parents-on-edge.html
http://thefaithfulpenguin.blogspot.com/2010/03/state-approval-for-bona-fide-medical.html

Conference “Disability, Health Care & Ethics – What Really Matters”
http://www.law.umaryland.edu/faculty/conferences/detail.html?conf=92
http://badcripple.blogspot.com/2010/04/conference-paper-on-ashley-treatment.html
http://www.thehastingscenter.org/Bioethicsforum/Post.aspx?id=4742&blogid=140

成長抑制WGの「妥協点」論文がHCRに
http://www.thehastingscenter.org/Publications/HCR/Detail.aspx?id=4961
http://www.thehastingscenter.org/Publications/HCR/Detail.aspx?id=4963
http://www.thehastingscenter.org/Publications/HCR/Detail.aspx?id=4964
http://www.thehastingscenter.org/Publications/HCR/Detail.aspx?id=4965
http://www.thehastingscenter.org/Publications/HCR/Detail.aspx?id=4950

http://www.molecularstation.com/science-news/2010/11/recommendations-issued-on-controversial-ashley-procedure-for-disabled-children/
http://www.q13fox.com/news/kcpq-ashleys-procedure-is-morally-p-120510,0,4379552.story
http://www.mynorthwest.com/category/local_news_articles/20101202/Ethics-group-says-stunting-disabled-kids%27-growth-is-%22morally-permissible%22/

http://iamabrokenmanyoucantbreakme.blogspot.com/2010/11/500000-seizures-did-not-kill-my-son.html
http://saynoga.blogspot.com/2010/11/there-are-several-ashley-treatment.html
http://saynoga.blogspot.com/2010/11/another-hasting-article-addressed.html
http://saynoga.blogspot.com/2010/11/best-for-last.html
http://bioethics2010bu.blogspot.com/2010/12/disabled-children-is-it-ethical-to.html

YouTubeでの動き
http://www.youtube.com/watch?v=BTLySMgWN84
http://www.youtube.com/watch?v=Vt2R-6jPaI8&feature=share

当ブログの主要な関連エントリーのまとめは以下です
2010年のまとめ: Ashley事件(できごと)
2010年のまとめ: Ashley事件 (資料性のあるエントリー)


なお、事件当初からのリンク集一覧はこちら
2010.12.26 / Top↑
【関連論文】

イリノイ大学法学部ジャーナルで「成長抑制には裁判所の判断が必要」(1/28)
「Ashley療法は身体の統合性を侵すため、親の決定権の外」とHealth Law Week(4/2)
Cambridge医療倫理ジャーナルに“Ashley療法”のケーススタディ?(6/21)
ソーシャルワークの立場からの“A療法”批判(8/21)
「アシュリー事件から考える障害、医療、介護、人権そして『愛』」という文章を書きました(11/13)


【その他、特に資料性のあるエントリー】

故Gunther医師が07年に成長抑制を語る“お宝映像”を発見(12/10)

Diekema医師が今更のようにAshley論文書いて批判に反駁(2009/10/1)
Diekema&Fost論文を読む 1:倫理委に関する新事実(2009/11/1)
Diekema&Fost論文を読む 2:ホルモン療法の期間を修正(2009/11/1)
Diekema&Fost論文を読む 3:政治的判断を否定(2009/11/1)
Diekema&Fost論文を読む 4:窮鼠の反撃? 証明責任の転嫁(2009/11/2)
Diekema&Fost論文を読む 5:「だから、ちゃんと検討したんだってば」(2009/11/3)
Diekema&Fost論文を読む 6:司法の否定(2009/11/3)
(注:この論文はピアコメンタリー募集のため09年4月に公開されました。AJOB掲載は10年1月)

「倫理委の検討は欠陥」とQuellette論文 1(2010/1/15)
(ここから4つシリーズ)

Angela事件の判決文は、Ashley論文(06)と同じ戦略で書かれている 1(2010/3/7)
Angela事件の判決文は、Ashley論文(06)と同じ戦略で書かれている 2(2010/3/17)

P・シンガーの障害新生児安楽死正当化の大タワケ(2010/8/23)
「なぜ人間は動物と違って特別なのか?」州差別批判からの問い 1
(ここから3つシリーズ)

その他シンガー関連エントリーは多数になったので、以下に取りまとめました。
2010年11月9日の補遺&シンガー月間とりまとめ(2010/11/9)

米小児科学会倫理委の「栄養と水分の差し控え」2009年論文 1/5:概要
米小児科学会倫理委の「栄養と水分の差し控え」2009年論文 2/5:前置き部分
米小児科学会倫理委の「栄養と水分の差し控え」2009年論文 3/5:差し控えが適当である例
米小児科学会倫理委の「栄養と水分の差し控え」2009年論文 4/5:倫理的な検討
米小児科学会倫理委の「栄養と水分の差し控え」2009年論文 5/5:法律的な検討       

Quinlan事件からAshley事件を考える 1
Quinlan事件からAshley事件を考える 2
Quinlan事件からAshley事件を考える 3
Quinlan事件からAshley事件を考える 4

米国のプライバシー権を確立したGriswold事件から断種法へ 1
米国のプライバシー権を確立したGriswold事件から断種法へ 2
2010.12.26 / Top↑
2010年のまとめ:Ashley事件 には、
この「できごと」編の他に「資料性のあるエントリー」編を作りました。

また、別途、継続して作っている「Ashley事件関連リンク一覧」の一環として
「Ashley事件リンク集 11: 2010年の動き」を作りました。


1月

AJOBに成長抑制論文&コメンタリー
AJOBがDeikema&Fost論文とコメンタリーを掲載(1/13)
Lantosコメンタリー、Ashley事件の大デタラメを指摘(2/17)
Adrienne Aschの、かなり醜い言い訳(2/17)

Ashley父が3周年アップデイトで「すでに12人に実施」
“A療法”すでに12人の男女児に実施……とAshley父のブログ(1/25)
Ashley父にメールで学会報告をした医師はFostかDiekema(1/25)
Bad CrippleさんがAshley父のアップデイトでエントリー(1/27)

FostとLantosディベイト
Lantos医師「倫理委で何があったか誰にもわからない」(1/29)

2月

Angela事件
豪で11歳重症児の子宮摘出、裁判所が認める(3/10)
Angela事件(豪):事実関係の整理(2010/3/10)
Angela事件の判決文を読む 1(2010/3/11)
Angela事件の判決文を読む 2(2010/3/11)
重症児の子宮摘出承認でダウン症協会前会長・上院議員が検察に行動を求める(豪)(2010/3/13)
Angela事件の判決文はAshley論文と同じ戦略で書かれている 1(2010/3/17)
Angela事件の判決文はAshley論文と同じ戦略で書かれている 22010/3/17)
Ashley事件とAngela事件の接点はここに……?(2010/4/27)

4月

Maryland大学法学部でカンファレンス
障害者の権利に対する医療と倫理委の無理解を考えるカンファレンス:Maryland大法学部(4/3)
Ashley事件について、明日William Peace氏講演(4/27)

8月

“Ashley療法“にオープンな態度を呼び掛けるナースの動画YouTubeに(2010/8/9)

11月

成長抑制WGメンバーEva Kittay来日
哲学者エヴァ・キテイ氏、11月に来日(10/12)

成長抑制WGの論文がHCRに
成長抑制WGの論文がHastings Center Reportに(2010/11/7)
Eva Kittayの成長抑制論文(2010/11/7)
Norman FostもAlice Dregerも成長抑制に関する論文(2010/11/7)
シアトルこども病院は、5年の合意期限が切れるのを待っている?(2010/11/8)
Eva Kittayさんに成長抑制WGのことを聞いた!(2010/11/12)
HCRの重症児の親による成長抑制支持論文にClairさんが見事な反撃(2010/11/17)
Clairさんの文章から、親と障害者運動について考えた(2010/11/17)
Clairさんのブログ、今度は重症児の親の成長抑制批判論文(2010/11/18)
「成長抑制でパンドラの箱あいた」とEva Kittay氏(2010/11/23)
成長抑制の対象はIQ25以下の重症重複障害児、とWG(2010/12/1)
なぜWPASのCarlson弁護士はWGメンバーから消えたのか?(2010/12/6)
Foxのローカル局が「時代が変わり意見も変わって、成長抑制はOKと決定」(2010/12/7)
Norman Fost「成長抑制が気に入らなければ虐待だと通報してみろ」と逆ギレ(2010/12/7)
子ども病院成長抑制WGメンバーの正体(2010/12/8)
成長抑制WGのHCR論文:とりあえず冒頭のウソ3つについて(2010/12/8)
「HCR成長抑制論文に激怒するヒットラー」YouTubeに(2010/2/15)
2010.12.26 / Top↑
NYTの「写真で見る2010年」。ハイチの地震から。
http://www.nytimes.com/packages/html/photo/2010-year-in-pictures/?nl=todaysheadlines&emc=ab1#/0

同じくGuardianからも「2010年を振り返る」
http://www.guardian.co.uk/world/interactive/2010/dec/22/2010-year-review?CMP=EMCGT_231210&

南アフリカのバイオテクノロジーを専門とする大学教授が、母親をNZに連れて行って自殺させ、南アフリカに帰国した後、自殺幇助合法化に向けたキャンペーンを始める、と。
http://www.mg.co.za/article/2010-12-22-professor-who-helped-mom-die-arrives-back-in-sa

深刻な不況が2年も続いているというのに依然として製薬業界は好調。そのキタナイやり口を15紹介する記事。
http://www.alternet.org/story/149282/15_dirty_big_pharma_tricks_that_rip_you_off_and_risk_your_health_for_profit/

アリゾナのSt. Joseph病院が、例えカトリック教会の方針に背くことになろうと、命にかかわるケースでの中絶手術は続行する、と。それに対して教会側は、そんなことを言うなら同病院はもはやカトリックではない、と。
http://www.nytimes.com/2010/12/23/opinion/23thu2.html?nl=todaysheadlines&emc=a211
http://www.guardian.co.uk/world/2010/dec/22/us-catholic-bishop-hospital-abortion?CMP=EMCGT_231210&

単独での開業医、いわゆるGPは死に絶えつつある、という豪の記事。
http://www.canberratimes.com.au/news/local/news/general/solo-practitioner-dying-out-generally-speaking/2033024.aspx?src=enews

財政破たんに至る国々を抱えて苦闘するEUに、中国が経済支援を申し出ている。
http://www.bbc.co.uk/news/business-12065731
2010.12.23 / Top↑
イラクとアフガニスタンに派遣される米軍兵士が、多数、脳に損傷を受けて帰還しているのに、軍がその面倒をちゃんと見ていないことが問題視されているけど、(米軍関係者にはTricareという医療保険があるが、こうした微妙な脳損傷とか精神障害など、現代の戦争で兵士が受けるダメージに規定が追い付かず、適切な治療がカバーされてないらしい)一方、彼らに効果的なセラピーを提供しているProject Shareというプログラムがある。Bernie Marcusという慈善家が08年に始めたもの。記事タイトルは「脳損傷の兵士、上質のケアを提供するのはペンタゴンではなく慈善家」:我々の目に見える時には、このように1つ1つの事例としてしか出てこないから分かりにくいけれど、世界中でこういうことが起こっているのだと思う。世界の富が非常に限られた少数に集中する一方で、各国政府は世界的不況でカネ詰まり状態が進む。政府が果たすべき機能を担えないところに、慈善家のお金が流れ込んでいく。そして慈善家個々人が各国の首脳と同じか、時にはそれ以上の発言権を持っていく。彼らが個人である身軽さでヨコの関係を作り、世界をどのような場所にしていくかを密室会議で相談するくらい、簡単なことだ。
http://www.propublica.org/article/for-brain-injured-soldiers-top-quality-care-from-a-philanthropist-not-the-p

中国のロボット・レストラン。ロボットがサーブしてくれる。
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2010/12/22/AR2010122200173.html?wpisrc=nl_cuzhead

英国の財政赤字11月に記録的な額に。230億ポンド。:どこの国でも同じことが起こっている? どこの国でも、国として機能を回していくためには、もう借金を重ねていく以外にない……とか?だから、それをどうにかするために国民には自己決定権で自ら死んでもらいたいのがホンネ……とか?
http://www.guardian.co.uk/business/2010/dec/21/budget-deficit-november-2010?CMP=EMCGT_221210&

日本の映画「うまれる」:私自身は「子どもは親を選んで生まれてくる」という話は、ミュウが赤ん坊の頃から、どうしても受け付けない。命の切り捨てに抗うために、そういうところへ話を持って行ってほしくない。「体内記憶がある」ということはありうるかもしれないと思うけど、それと「選んだ」ということは必ずしも結び付かないはずだし、結びつけないでほしい。いわんや、「雲の上からお母さんを癒してあげるために」生まれてきたなんて、いかにも虐待的な親のようになっていく社会が大ウケしそう恐ろしいことを言わないでほしい。しかし、こういうメッセージが必要になっているということなんだろうな、とは思う。監督は障害のある人の兄。
http://www.umareru.jp/
2010.12.23 / Top↑
IVFで「完璧なドナー」として選ばれ、
救済者兄弟として生まれてきた1歳の男児から
ファンコーニ貧血の9歳の姉への骨髄移植が行われた。

6か月前に、Bristol Royal 病院で。

“救済者兄弟”フルコースが行われて治療に至った
英国で初めてのケースとのこと。

両親は共に30代。匿名を希望。
夫妻にはもう一人息子がいるが、マッチしなかった。
娘に適合するドナーを求めて世界中を探したが見つからなかったため、
体外受精で救済者兄弟を産むことを決意した。

IVFでは6個の胚が作られ、
そのうちの2個を着床(入れた? implant)させた。

男児が生まれた際の臍帯血から幹細胞を採り、
次に1歳になってから骨髄移植を行った。

医療費は全部で1万ポンド。
全額がプライマリー・ケア・トラストによって支払われた。

まだ救済者兄弟が合法化されていなかった2003年に
英国人夫婦 Michelle and Jayson Whitakerが貧血の息子を救うために
救済者兄弟を産むためにシカゴに行ったケースがある。

担当医は、
英国で可能になったことをまだ知らない専門医が多いので、
たまたま適合する子どもが生まれることを祈って次々に子どもを産むように言われたり、
外国に行くように進められている患者が多いが、
命を救う素晴らしい医療だ、と。

Girl, nine, benefits from UK’s first IVF ‘saviour sibling’ therapy
The Guardian, December 21, 2010

英国が救済者兄弟を合法化したのは2008年のヒト受精・胚法改正によってのこと。
詳細は以下のエントリーに。

英国議会ハイブリッド胚を救済者兄弟を認める(2008/5/20)


なお、救済者兄弟についてはエントリーが大変多くなったので、
今年3月に以下のエントリーに取りまとめています。

救済者兄弟について:これまでのエントリーのまとめ(2010/3/28)
2010.12.23 / Top↑
英国で第2のDebbie PurdyさんになろうとしているNicklinsonさん夫婦が「死なせないのは人権侵害」とIndependentの取材を受けている。
http://www.independent.co.uk/news/uk/home-news/i-love-my-tony-and-thats-why-i-need-to-kill-him-2164309.html

米国の大学で学生を精神科ERに担ぎこむことが日常化し始めている。
http://www.nytimes.com/2010/12/20/health/20campus.html?_r=1&nl=todaysheadlines&emc=a23

豪でガン、糖尿病、心臓病、喘息、精神障害などの慢性病のために亡くなった人の多くは、適切な介入があれば死を避けられた、社会経済的な要因の大きなケースだったことが判明。男性では慢性病による死亡率は、最も貧しい地域で最も裕福な地域に比べて2倍も高い。しかし女性では、男性の最も裕福な地域に比べても6割も高い。:これはきっとオーストラリアだけに限らない。
http://www.canberratimes.com.au/news/local/news/general/many-chronic-disease-deaths-avoidable-report/2030121.aspx?src=enews

来年あたり、米国の100の地方都市が財政破たん?
http://www.guardian.co.uk/business/2010/dec/20/debt-crisis-threatens-us-cities?CMP=EMCGT_211210&

Guardianがアンケートした「今年のベスト・ブック」:Stephen King 作品が入っている。http://www.guardian.co.uk/books/interactive/2010/dec/14/books-of-the-year-2010?CMP=EMCGT_211210&

子ども時代にガンの治療とか検査で頭や首に放射線被ばくすると、その後58年間に渡って、甲状腺がんのリスクが上がる。:これ、前にも歯科の放射線被ばくのリスク記事があった。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/211942.php
2010.12.21 / Top↑
これもまた、全文公開されていることに最近気づいた、07年のAshley論文。

シアトルこども病院Truman KatzセンターのDiekemaの同僚で
論争当初から、ちょろちょろしているWilfond医師の書いたものだけに、
ずっと読みたかったものです。

もちろん読んだからといって、予想通りの「身内の援護射撃」でしかないのですが、
ただ、1つ、見逃せない発言があるので、エントリーに。

The Ashley case: the public response and policy implications
Hastings Center Report, the Sept-Oct, 2007 by Benjamin S. Wilfond


基本的には、
治療上の必要がなくても、社会的理由で医療介入が用いられるのは
ADHDの子どもに薬を飲ませたり行動療法を行うことや
口蓋裂の手術、頭の形を整えるためのヘルメットなど、既に行われており、
Ashleyに行われたことも、それと変わらない、との主張。

ただ、非常に興味深いのは、以下の一節で、

……those not directly involved in a case can have difficulty fully appreciating the thought processes of the parents, clinicians, and ethics committee. There is certainly value in reevaluating their choices, but we must appreciate that those looking in from outside may have limited insight into the particulars and nuance of the decision. Further, even those involved in the case may struggle to fully describe their thinking at the time. The medical journal article and the parents' description were published almost three years later. They may be based on fading memories and after-the-fact analysis. These observations point to the need for careful consideration in reaction to public disclosures about difficult cases.




外部の人間が、当時者の気持ちや考えについて云々したところで、
それは所詮、想像の域を出ることはないのだし、

主治医論文にしても親のブログにしても
3年も前の出来事を振り返って、薄れゆく記憶に基づいて書いているのだから
情報公開された困難ケースを批判する際には、そういうことも念頭に置いておけ……

……って、米国医師会雑誌に掲載されるような医学論文てな
「ずっと前の困難事例を、もはや曖昧な記憶に基づいて書き、
あくまでも事後に振り返って分析しているだけなんっすけど」という程度のものなのか?

仮にも、れっきとした医師の、こんな寝言論文を
HCRが、また、なんで、しゃらりんと掲載してるのか?

JAMAにもHCRにも、査読者ってものは、いないのか?

まさか、特定の論文には査読者がいない……とか……?

んっとに、呆れてしまうのだけど、結局のところ、
Wilfondは医師らの論文がマヤカシ・穴ぼこ・矛盾だらけだということも
論文の内容と親のブログの内容とが齟齬をきたしていることも
十分に承知していた……ということでしょう。

この下り、
病院内でGuntherにプレゼンさせた際にも、
冒頭に出てきたWilfondが「当該ケースそのものをretrospectivelyに扱うのではない」と
わざわざ念押しをしていたことと、ぴったりと符合します。


そういえば、今に至ってもなお、DiekemaもAJOBの論文で、
倫理委の検討プロセスに対するQuelletteらの鋭い批判に対して
「でも、その場にいなかった人たちの想像に過ぎないでしょ」と
幼稚な反論をしていましたね。

結局、そういうお粗末な言い訳しかできないほど、
この点については、自分たちの正当化が破たんしているという自覚が
Diekema本人にはもちろん、Wilfondにも07年の初めからあったということなのでしょう。

それこそ、彼らが互いに手を組み、
たくらみを巡らせて一般化の動きを急ぎ作ることによって
Ashley事件の真実から目をそらせ、隠ぺいを図ったことの証拠――。
2010.12.21 / Top↑
前から存在は知っていたけど、是が非でも読みたいほどでもないから、とりあえず放置したり、
そのうちにすっかり忘れてしまっていた論文と、時間が経ってから何かの折にネットで再開してみると、
思いがけず全文公開されていた……という嬉しい発見が、たまにあります。
07年の論争当時に書かれた、これも、その1つ。

Disability and slippery slopes
Anita J. Tarzian, Hastings Center Report, Setp-Oct, 2007


一部の障害者運動の関係者がA療法の問題について
「何がAshleyにとって幸福なのか」という視点で語られるのを見聞したことから、
「障害者運動も無意識に重症児・者は障害者の中でも別、と線を引くのですか」と問い、
Ashleyにとっても他の障害者と同じように「権利の問題」ではないのかと問題提起して、
重症児・者を(後には親をも)置き去りにしない社会モデルを訴えたことがあるのですが、

Tarzianの論文が私にとって非常に興味深いのは、
私と同じ問いを発していながら、その主張は全く反対であること。
私は、別扱いするのは障害者の権利運動の重症児への裏切りだと考えたのに対して、
Tarzianは、別扱いしないのが障害者の権利運動の重症児への裏切りだと主張し、

重症児・者に線引きをせず“A療法”を「権利の問題」として扱う障害者運動は
身障者の利害に基づく社会モデルを優先して重症児の特性や彼らとの違いを無視し、
Ashleyという重症児個人を犠牲にしたのだ、と非難している。

とても印象的なことに、冒頭で著者はTerry Schiavo事件に言及している。

07年の論争時、ネットでは「これはシャイボ事件の再来だ」という懸念の声が結構出ていて、
当時の私はその意味が良く分からなかったのですが、このブログでの作業を通じて、
今は2つの事件に相通じるものがあることも「これはシャイボだ」と思わず口走った人たちの警戒心も
非常によく理解できるようになりました。

しかし著者が考えるSchiavo事件とAshley事件との共通項とは
重症障害児・者に対する軽視や偏見ではもちろんなく、
本来そうではないものを障害者運動が敢えて「人権問題」にした事件であること。

Tarzianの論文要旨は、だいたい、こんな感じ。

身体障害者の利害を中心に考えられた「障害の社会モデル」は、
支援によって社会生活が可能なレベルの知的障害者くらいまでは織り込んでいるものの
Ashleyのような社会生活がありえない重症知的障害児・者のことは念頭にない。

社会モデル・自己決定権を唱えられるような障害者と違って、
Ashleyのように自己決定できない重症児の場合には親が本人の最善の利益を考えてやるしかないのに、

そうした親の愛情ある行為を、自分たちの原則論で人権を持ち出して否定するのは
障害者運動が自分たちのアジェンダのためにAshley個人を犠牲にしたのだ。

“Ashley療法”を重症児に認めれば“すべり坂”が起きるとの彼らの批判は、
重症児・者とその他の障害者の違いを理解すれば起こるはずのない“すべり坂”であり、的外れ。

“すべり坂”の懸念を言うなら、
障害とQOL、医療資源の分配について社会全体で広く議論を推進することこそが肝要。
(と、まさに医学モデルで結論しているわけですね)



Tarzianの批判の背景にあるのは、本当は、
重症児・者はその他の障害児・者と同じ権利には値しないという線引きを
障害者の権利運動も共有すべきであり、それをしないのが怪しからん、という主張でしょう。

それはAshley父やDiekemaらの主張するところと、まったく同じです。
Ashleyの父は08年のCNNのメール・インタビューで以下のように書いています。

We are in the unfortunate situation today where activists with political power and motivated by their ideology have successfully taken a potentially helpful option away from families whose pillow angels might benefit. (See this activism Web site. )
A collective agenda/ideology is being shoved down the throat of all individuals with disabilities, whether it serves them as individuals or not. This is disturbing in a society that believes strongly in the well-being of children and in individual rights. Pillow angels should not be deprived of this treatment when their parents and their doctors have carefully considered the options and concluded that it would be of benefit.



ここにあるのもまた、障害者運動は
障害者全体のイデオロギーのために個々の障害児の幸福や権利を顧みず、
親の愛情ある決断を邪魔し、利益のある治療を子どもたちから奪っている、との非難。

これまでA療法/成長抑制を認める立場の人に共通していると私が思うのは、

① 重症重複(特に知的)障害者はその他の障害者とは別の存在だと考えている。
② 別の存在なのだから、別扱いすべきだと考えている。(「権利」ではなく「最善の利益」)
③ 親の愛情を疑わない。つまり親子の間に利益や権利の衝突があるとは考えない。
④ 親の決定権を絶対視する。
⑤ 重症児は親がずっとケアするものだと考えている。




もちろん、一番根っこにあるのは「別の存在だから別扱いすべきだ」の点で、
A事件の根っこは「重症(特に知的)障害児・者はその他の障害者とは別なのか否か」という問いなのだと
改めて痛感させられます。

別だと考える人にとっては、これは個々の「最善の利益」の問題であり
別ではないと考える人にとっては、万人の「権利」の問題だということになる。

で、ここで大事だと私が思うのは、
後者の人は「別ではない」と考えると同時に「別だと考えるべきではない」と考えてもいること。

言いかえると、それは、
原理原則を守ろう、「守るべき原理原則」というものを捨てまい、という姿勢でもある。

私がずっと疑問に感じているのは、
もともと、これは「権利」か「最善の利益」かという選択の問題ではなく、
本当は検討の位相の違い、順番の問題ではないのか、と。

「利益vsリスク」論は前提がおかしい(2008/2/6)でも書いたのだけど、

論理的な検討の段階として、「利益vsリスク」検討よりも前に
「それは条件によっては許されることか、それとも条件を問わず許されないことか」
という問いの段階が、まず、あるはずなんじゃないだろうか。

まず「条件を問わずに許されないことか、条件次第ではやっても良いことか」が問われ、
そこで後者だと判断された場合にのみ、その「条件」の検討が行われる。
その基準が「最善の利益」――。

「利益vsリスク」の検討というのは、本来そういうものじゃないのだろうか。

上位にある問いだからこそ人権概念が万人にあてはまる原理原則となるのは当たり前で、
むしろ、生命倫理の議論から、その原理原則を外してしまおうとする人たちが、
わらわらと沸いて出てきていることの方が問題なのだと私は思うのだけど、

その動きは、ちょうど、
科学とテクノロジーが可能にしていく多くのことを背景に、
「できるか、できないか」の問いだけがクローズアップされて
「できるとしても、やるべきではないことか」の問いが
時代遅れで無意味な問いであるかのように扱われ、
幼稚で皮相的な功利的な理屈で強引に押しのけられようとしていることと
きれいに並走しているのだと思う。

そうして、それら諸々の勢いを借りて、世の中は、
「殺してもいい人」と「殺してはいけない人」を平然と
線引きして痛痒を感じないような方向に向かっていこうとしている……。

そんなふうに、Ashley事件はShiavo事件と繋がっている――。

         ―――――

Tarzianの非難を受けて、Not Dead Yet のStephen Drakeがブログで反論しています。

「障害者とも呼べないほど重度の人の代弁を障害者がするな」論法は
昔からあった、と面白い表現を使って切り捨てているのですが、
一応、Ashleyの人権侵害はWPASだって認めたじゃないか、とも。

Hastings Ctr Report: Article Claims Ashley X “Sacrificed for the disability rights agenda”
Not Dead Yet News & Commentary, October 19, 2007


【関連エントリー】
成長抑制を巡って障害学や障害者運動の人たちに問うてみたいこと(2009/1/28)
重症心身障害児・者にはアドボケイトがいない、ということ(2009/1/29)
親と障害学の対立の構図で議論から締め出されている他の存在も見えなくなっている(2010/1/30)
親の立場から、障害学や障害者運動の人たちの願いしてみたいこと
2010.12.21 / Top↑
12月8日の補遺で拾った
シアトルこども病院での去年のTruogの講演「心臓死後臓器提供DCDの倫理問題」を聞いてみました。

Ethical Issues in Organ Donation After Cardiac Death
Provider and Nursing Grand Rounds Online Videos
Seattle Children’s Hospital, August 20, 2009


Truogは臓器提供の「死亡者提供ルール」を廃止して
生きている人間からでも採っていいことにしようと主張している倫理学者だということは
小松美彦氏の著書でも読んだし、08年に以下のBostonBlobe記事でも言及されており、
ずっと気になっていました。

臓器提供で「死亡者提供ルール」廃止せよと(2008/3/11)

なお、08年の秋には、TruogはHCRに以下の論文を書いており、

Rethinking the Ethics of Vital Organ donations: accepted medical practice already violates the dead donor rule. Explicitly jettisoning the rule―allowing vital organs to be extracted, under certain conditions, from living patients―is a radical change only at the conceptual level. But it would expand the pools of eligible organ donors.
Franklin G. Millerand, Robert D. Truog


翌夏のこの講演でも、論文への反響について語られています。

例によって1度聴いたくらいでは分からない部分の方が圧倒的に多いのですが、
大まかな流れとしては、上記Boston Globe紙でのNorman Fostの、
死亡者提供ルールは今でも欺瞞に過ぎず、
脳死者とされる人は死んでいるわけではないのだから、
それならば命を救うために死亡者提供ルールを撤廃してはどうか、
という主張と同じ論理展開で、生きている人を死なせて臓器を摘出するDCDについて
倫理的に問題はない、と結論付けるもの。

前半を聞いていると、

DCDではドナーとなった子どもは生きているうちにICUから手術室に移されて
そこで臓器保存に必要な処置を受け、その後に人工呼吸器を取り外すので
家族は死後の子どもと一緒にゆっくり過ごすことができない。

生命維持装置を外しても一定時間死ななかったらICUに戻って終末期医療を続けることが
いずれのDCDのプロトコルでも定められているので、その場合には
家族は子どもの喪失を2度も体験しなければならない。

終末期医療の質の基準とされる項目53のうち、
DCDとの間で両立できる項目はわずか9しかない。

生命維持治療停止の決定と臓器提供の決定は別々に行われると
DCDの方針ではされているが、それは現実には線引き不能なもの。
両者の間には利益の衝突がある。

家族のカウンセリングを含め、
現在のシステムそのものが提供臓器を最大限に増やす目的でできている。

例えば、家族にアプローチする段になると
それまで関わってきた医療者が引っ込みOPO(臓器獲得機構)の人間が登場する。

家族に対して中立な立場で語りかけるアプローチと、提供を前提に語りかけるアプローチとでは
「臓器提供についてご説明します」と「大切なお子さんの臓器を生かせる機会についてご説明します」
「もしも(If)提供をご決断されるとしたら」と「提供を決断されると(When)」など、まるきり違う。

そもそも、DCDのドナーは死んでいるのか?

生きている患者をドナーにすることを巡っては
「不可逆性」という概念で正当化されているが、ここでの「不可逆性」とは
「蘇生しないことを選んだために不可逆になる」ことに過ぎない。

デンバー・プロトコルでは心停止から75秒だけ待って心臓を摘出したが、
では75秒過ぎたところで母親が「やっぱりやめます」と決意を翻したとしたら?
その時に蘇生させれば、その子の拍動はおそらく戻るに違いない。
それでも「不可逆」だというのだろうか。



こんなふうに話が続いてくると、
聞いている側はあやうく、この人はDCDに反対の立場なのだろうと思いこみそうになる。

ところが、デンバー子ども病院のプロトコルを例にとった上記の展開に続いて
Truogは「いったいDCDのドナーは死んでいるのか?」と問い、
すぐに続いて「死んでいるかどうかが、そもそも問題だろうか?」と問うことで
それまでの話の流れを一気に逆転させてしまうのです。

その後の彼のプレゼンの要旨は以下のような感じ。

医師には患者を殺してはならないという規範意識が沁みついているので
(また裁判所の介入で話が面倒になる可能性もあるために)
自分たちは患者を死なせているわけではないと、あれこれと詭弁を弄し、
言い替えの工夫をしては、ごまかしてきただけで
医師は患者を死なせる行為を頻繁に行っているのが現実である。

(質疑の際に、Truogは、世界最初のヨハネスバーグでの心臓移植手術の際、
ドナーの胸をあけた医師らが拍動する心臓を前に摘出をためらい、
わざわざ氷水をかけて停止させてから摘出したというエピソードを、
心臓の拍動で生死を線引きすることの無意味さの事例として紹介。
会場からも「氷水をかけて停止」のところで笑いが漏れました)

医師が患者を死なせる行為の正邪は、倫理的に考えると、
患者の状態と予後、患者の希望、家族が考える患者の最善の利益など、状況次第である。

臓器提供の場合の倫理ベクトルは3つある。

・ここに、やがて死に至るほど重大な脳損傷を受けた3人の子どもがいる。
・親は提供を決めている。提供は親に心理的なメリットももたらす。
・移植臓器がなければ3人の子どもが死ぬ。

これを考えてみれば、どう考えてみても反対する理由はない。
わざわざ75秒も待つ必要すら、ない。

HCRの論文に対して、この提言は功利主義だとの批判があった。
功利主義は悪であるとのニュアンスで悪のレッテルを貼られた。
しかし自分の提案は功利主義ではない。

臓器提供は善であるとの立場に立つ限り、
臓器移植を待っている患者のニーズに社会は何としても応えなければならない。
自分の提案はむしろコミュニタリアニズムでもある。



Truogは一応ここではDCDの倫理性を説いていますが、
彼の論理が「どうせ死ぬ患者なんだから殺したってかまわない」である以上、
TruogもまたJulian Savulescuと同じく、次の射程として
「臓器提供安楽死(ODE)」を捉えていることは間違いないでしょう。

なお、プレゼン冒頭で、紹介者が
シアトルこども病院が前米初の小児科DCDの方針を作ったこと
画期的な移植出をしたばかりであることなどに言及しているので、
検索してみたところ、方針そのものにはヒットできなかったのですが

シアトルこども病院は、
いまだに少ない小児科領域でのDCDを積極的に行っている数少ない病院の1つとのこと。
同病院の医師が07年にDCDについて論文を発表していました。

Trends in Pediatric Organ Donation After Cardiac Death
Robert Mazor, MD, Harris P. Baden, MD
Pediatrics Vol.120 No.4 October 2007, pp. e960-e966

また、行われたばかりの「画期的な移植手術」というのは、
時期とタイトルから、こちらではないか、と。 ↓

http://www.king5.com/health/60728917.html

母親の腎臓を娘に移植。85年の第一例から同病院の500例目に当たる移植手術。
なお、同病院では年間50例の移植を実施している、とのこと。


【関連エントリー】
「国際水準の移植医療ですでに起こっていること」を書きました(2009/12/4)
「脳死でなくても心停止から2分で摘出準備開始」のDCDを、ERで試験的に解禁(米)(2010/3/17)

「生きた状態で臓器摘出する安楽死を」とSavulescuがBioethics誌で(2010/5/8)
ベルギーで2年前にロックトインの女性、「安楽死後臓器提供」(2010/5/9)
臓器提供は安楽死の次には“無益な治療”論と繋がる……?(2010/5/9)
Savulescuの「臓器提供安楽死」を読んでみた(2010/7/5)
「腎臓ペア交換」と「臓器提供安楽死」について書きました(2010/10/19)

GA州のALS男性が「臓器提供安楽死」を希望(2010/7/25)
やっぱりCNNが飛びついたGA州ALS患者の「臓器提供安楽死」希望(2010/7/30)
GA州の「臓器提供安楽死」希望でキャスターがALSを「ターミナルな病気」(2010/

2010.12.21 / Top↑
HCRの成長抑制WGの論文を持ち上げたBill Peaceが反省している。というか、彼は数ヶ月前に手術を受けて以来ずっと、ほとんど寝たきり状態になっているので、現在は一時的に自身の医療への不信が高まっていて、ちょっと落ち込んでいるところで論文を読みなおしてみたら、やっぱりなぁ……ということみたい。インフォームドコンセントも大病院も倫理委員会も、それほど自分には信じられないし、もともとAshleyの親の要望を認めたのだって倫理委だったじゃないか……って。(だから、アンタが時々忘れたフリをしているだけで、もともとそういう事件なんだってば):医療不信が身にしみている一人の障害者の中ですら、その日その時に自分が置かれている状況や精神状態で同じことについての見かた、感じ方、考える方はこんなにも変わる。人間て、そんなもんだと知っておくことも、こんな時代には必要な知恵なのだろうと思う。権力のある側から手招きされると、どうしても嬉しくなってしまうものだってことも含めて。
http://badcripple.blogspot.com/2010/12/feeling-betrayed.html

英国の病院の95%で、スタッフに認知症ケアの研修が行われていない。:日本でも同じなのでは? というか、意思表示が難しい患者への対応について、医療スタッフは総じて意識が低すぎるといつも思う。特に「痛い」と言えない患者の痛みへの想像力があまりに欠落していると思う。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/211723.php

新生児の脳は母親の声には特別に反応する。:新生児の脳とか意識については、未だ分かっていないことだらけなんだろうな、本当は……。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/211743.php

治療法がないのに、早期発見できたアルツハイマー病を患者に告知することのジレンマ。
http://www.nytimes.com/2010/12/18/health/18moral.html?_r=1&nl=todaysheadlines&emc=a23

自閉症に今度は大気汚染犯人説。
http://www.cbsnews.com/8301-504763_162-20025991-10391704.html

予算カットで英国NHSで患者はごく普通の医療すら受けられなくなっている。
http://www.telegraph.co.uk/health/healthnews/8208958/Patients-denied-treatment-as-NHS-makes-cutbacks-Telegraph-can-disclose.html

具体的な内容は全く表に出てこないみたいだけど、クイーンズランドの大病院の救急部で職員内のイジメが深刻になり、調査へ。
http://www.canberratimes.com.au/news/local/news/general/bullying-still-happening-at-qbn-hospital-staff-say/2029541.aspx?src=enews

米国兵士、同性愛でも堂々と服務できることに。
http://www.nytimes.com/2010/12/19/us/politics/19cong.html?_r=1&nl=todaysheadlines&emc=a2

英国皇太子のフィアンセの「平民」出自が、一部の人の間で未だに問題になっているらしい。:commonerという言葉の差別的な響き――。
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2010/12/18/AR2010121803829.html?wpisrc=nl_cuzhead
2010.12.19 / Top↑
Medical New Todayから標題の通りのニュース。

Two Brain Death Exams May Be Pointless, Undermine Organ Donation, And Increase Family Anguish
The MNT, December 16, 2010


上記MNTの記事では
Neurology誌に報告された調査を行ったのも論文を書いたのも
「NYのThe North Shore LIJ Health Systemの研究者ら」だとされているのですが、

記事にあるリンクから当該論文のアブストラクトに行ってみたところ

Second brain death examination may negatively affect organ donation
D. Lustbader, MD, D. O'Hara, MS, E.F.M. Wijdicks, MD, PhD, L. MacLean, PhD, W. Tajik, A. Ying, MS, E. Berg and M. Goldstein, MD
Neurology doi: 10.1212/WNL.0b013e3182061b0c

この論文の著者の中には、今年7月に出された米国神経学会の
成人の脳死判定ガイドライン改定版の著者も混じっているようです。

ガイドラインの改定は以下で、

Evidence-based guideline update: Determining brain death in adults
Report of the Quality Standards Subcommittee of the American Academy of Neurology
Neurology

このガイドライン改定については日本語の情報がかなり出ているようです。
例えば日経メディカルはこちら

脳死判定基準作成の難しさを指摘し、さらなる研究が必要と書かれているような気配なので
今回の論文は、それを受けてエビデンスを出した、という位置づけなのかもしれません。

なお、MNTの記事には
「米国神経学会は現在、脳死判定を一回にするよう求めている」との記述もあります。


ともあれ、今回のLustbaderらの論文のアブストラクトは以下。

Background: Little is known about the impact of the requirement for a second brain death examination on organ donation. In New York State, 2 examinations 6 hours apart have been recommended by a Department of Health panel.
Methods: We reviewed data for 1,229 adult and 82 pediatric patients pronounced brain dead in 100 New York hospitals serviced by the New York Organ Donor Network from June 1, 2007, to December 31, 2009. We reviewed the time interval between the 2 clinical brain death examinations and correlated this brain death declaration interval to day of the week, hospital size, and organ donation.
Results: None of the patients declared brain dead were found to regain brainstem function upon repeat examination. The mean brain death declaration interval between the 2 examinations was 19.2 hours. A 26% reduction in brain death examination frequency was seen on weekends when compared to weekdays (p = 0.0018). The mean brain death interval was 19.9 hours for 0–750 bed hospitals compared to 16.0 hours for hospitals with more than 750 beds (p = 0.0015). Consent for organ donation decreased from 57% to 45% as the brain death declaration interval increased. Conversely, refusal of organ donation increased from 23% to 36% as the brain death interval increased. A total of 166 patients (12%) sustained a cardiac arrest between the 2 examinations or after the second examination.
Conclusion: A single brain death examination to determine brain death for patients older than 1 year should suffice. In practice, observation time to a second neurologic examination was 3 times longer than the proposed guideline and associated with substantial intensive care unit costs and loss of viable organs.



MNTの記事での、著者のLustbader医師の発言はもっと率直で、

One of the most disturbing findings of our study is the prolonged anguish imposed on grieving families in the intensive care unit waiting for the second brain death exam. Not only is the opportunity for organ donation reduced, but families may endure unnecessary suffering while waiting an average of 19 hours for the second exam to be completed.

Since organ viability decreases the longer a person is brain dead, our results show that conducting more than one brain death examination results in the loss of potentially life-saving organs. A repeat exam adds an extra day of intensive care resulting in additional costs of about a million dollars per year in the New York region alone.




アブストラクトとMNTの記事から
私なりの理解で内容を以下にまとめてみると、

NYの臓器提供ネットワークの19カ月期間のデータで
1229人の成人と82人の子ども分を調べたところ、

最初の判定から2度目の判定までの間に、
脳幹機能の回復の兆候を示した患者は皆無だった。

一方、最初の判定後、次の判定までの間に心臓発作を起こした患者は12%(166人)おり、
それは命を救えたはずの臓器が、それだけ利用できなくなったことを意味する。

また、現在、2度目の判定は1度目の後、平均19時間を置いて行われているが、
NY州保健局のガイドラインは6時間で、その3倍もの時間があけられていることになる。

6時間待った場合では家族の同意率が57%なのに
19時間待った場合には45%しかない。

提供拒否も、6時間の場合には23%しかないのに、
19時間待つと36%に跳ね上がる。

これは、すなわち、2度目の判定までの待ち時間が
徒らに家族を苦しめているというエビデンスである。

また19時間も間をあけると
その脳死患者は更に1日余分にICUのベッドをふさぐのだから、
それだけ無駄な医療費もかかっている。

なによりも家族を苦しめてはならないし、
誰かの命を救えるはずの臓器をあたら無駄にしてもいけない、
医療費コストの節約のためにも、結論として、

1歳を超えた患者の場合は、脳死判定は1度で十分である。

2010.12.18 / Top↑
ヨーロッパ人権裁判所から、アイルランド政府が命の危険のある女性に中絶を認めないのは人権侵害、との判断。
http://www.guardian.co.uk/world/2010/dec/16/ireland-urged-reform-abortion-legislation?CMP=EMCGT_171210&

脳死判定の2度目のテストは、無意味だし家族の余計な精神的な負担になるからやめよう、という声。それに摘出臓器にもダメージ与えるし……って。:出たね。ついに。ざっと読んだだけでも心臓がドキドキしてきた。これ、明日エントリー、立てます。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/211785.php

the National Alzheimer’s Project Actが両党の支持を得て米国議会を通った。:でも先の中間選挙で、医療制度改革は暗礁に乗り上げているとかいうのに、アルツハイマー病患者だけをどうするというのだろう?
http://www.medicalnewstoday.com/articles/211712.php

脳のプラークは、あれはアルツハイマー病の原因じゃなくて結果かもしれない?:あらま。私はずううううっと前から、個人的に、ウツ病の脳内化学バランスの乱れも「あれは原因というより結果」説を唱えているんだけど……。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/211578.php

米国医学会雑誌に掲載された論文で、様々な介護形態とコストを比較検討したところ、高齢者包括ケア(PACE)が施設での従来型の介護よりもはるかにコスト効率が良いことが判明。:んなの日本じゃ国を挙げて推進しているんだぞ……と思ったら、米国にもPACEの全米協会がちゃんとできていた。まぁ、日本の地域包括支援システムだって、ゼニの手当てがイマイチどうなるんだか、現場の専門職が2階で梯子外されるかもしれないけど、でも、これはどの国も日本の後を追いかけてくる問題なのだから、いっそモデルになって介護観光大国を目指そーよ。ついでに東洋の死生観に基づく、奥の深い生命倫理を提唱していく……って、ダメ? そんなのはゼニ産まないから?
http://seniorhousingnews.com/2010/12/16/new-study-finds-pace-model-effective-for-long-term-care/

ショッピング・モールや野球場など人の集まる場所での骨髄ドナーの登録キャンペーンに綺麗なお姉さんたちを(わざわざモデルを雇って)起用して、ハイヒールとミニスカートをはかせ、「ちょっと綿球でお口の中をなでてもらうだけでお金になるんだけど、どーおぉ?」と誘わせていた……とさ。:女は骨髄ドナーにならなくていいみたいだよ。
http://www.nytimes.com/2010/12/17/us/17models.html?nl=todaysheadlines&emc=a23

英国連立政権のコストカットで、20万人の子どもたちと、20万人の労働年齢の成人が2012年から13年にかけて絶対的な貧困状態に陥る、との懸念。
http://www.guardian.co.uk/politics/2010/dec/16/spending-cuts-rise-absolute-child-poverty?CMP=EMCGT_171210&

米FDAが乳がん患者へのAvastinの認可を取り消したことに、患者サイドの反応が真っ二つ。「Avastinで命をつないでいるのに、どうしてくれるんだ」というのと、「効きもしない薬で治ると思わせていたんだから、認可取り消し歓迎」というのと。
http://www.nytimes.com/2010/12/17/health/policy/17drug.html?_r=1&nl=todaysheadlines&emc=a2

Larry King が最後のLarry King Liveを終えた。特に好きだったわけではないけど時間帯が夕方だったので、たまたま見ることが多かった。せっかくだから今日の記念すべき最終回も見た。クリントン元大統領がゲストで衛星ナマ出演して、自分のことばっかりしゃべってった。私にとっては、DiekemaもFostも生出演した07年1月12日のAshley事件のLarry King Liveが何といってもダントツに貴重な資料だ。放送そのものは見ていないけど、トランスクリプトは何回読んだか分からない。Larryも「でもアシュリーはどうせ……」という感覚でしゃべっているのにはムカつくけど、Norman Fostが当初は利益関係のない部外者・中立の倫理学者を装って弁護していた証拠があの番組に残っている。Diekemaもあれこれとハッタリかましているし。障害当事者のJoni Tadaさんの健闘が良かった。
http://www.guardian.co.uk/tv-and-radio/2010/dec/15/larry-king-live-final-show?CMP=EMCGT_171210&
2010.12.18 / Top↑
人工透析を必要とする患者なら誰でも公費で受けられる制度を持っているのは
米国と西ヨーロッパと日本で、その他の国の腎臓病患者の多くは受けられないでいるという。

その状況をWHOが2008年にまとめた論文がこちら

とはいえ、米国でも人工透析が普及し始めた60年には
病院ごとに委員会を作って、こっそり患者を査定し、
人工透析を受けさせる患者を決めていた。

1962年にLIFE誌がシアトルの病院の患者査定基準をすっぱ抜き、
世論の非難がまきおこったことから
誰でもメディケアで透析が受けられる制度ができた。

(例のIHMEの所長Murray考案による医療評価基準DALYに
このシアトルの腎臓透析患者選別と同じ基準が含まれているとの批判が出ているのは
何やら興味深いところです。功利主義的切り捨て医療の話には、なぜ、こうもシアトルが絡む――?)

ところがProPublicaの最近の調査で
米国の人工透析制度は莫大なお金がかかっているにもかかわらず
なぜかその他先進国に比べて患者のアウトカムが良くない。

それはどこに問題があるのか、という調査シリーズをProPublicaは進行中なのですが、
その一環で、南アフリカの病院の選別委員会にProPublicaが同席を許され取材。

委員会や担当医師を取材して記事を書いたSheri Finkは
例のハリケーン・カトリーナのメモリアル病院での安楽死事件の記事で
ピューリッツァ賞を受賞したジャーナリスト。


南アフリカでは現在、
何らかの医療保険があったり、GDPの2倍に上る治療費を払える患者であっても
5人に4人は人工透析を受けることができないという。

医療制度の財政のひっ迫で、断られる患者がどんどん増えて
Tygerberg病院では8月には8割の患者を断り、
11月には20人のうち2人しか引き受けられなかった。

判断は病院に任されているが、
断るのは「死刑宣告」をする気分だと医師はいう。

Tygerberg病院ができたのはアパルトヘイトの時代で
建物は左右全く同じ作りのウイングとなっており、もちろん人種別だった。

1988年から2003年までに同病院で透析を受けた患者でみると
白人患者の方が非白人患者よりも認められる確率が4倍も高かった。
1994年にアパルトヘイトが終わった後も、病院の選別基準は変わらなかったようだ。

最近では民間セクターの透析施設が増えて
白人患者はそちらに移行しているので、このような病院には来なくなった。

しかし同時に政府は医療費削減策をとっているため
透析プログラムも縮小を余儀なくされており
それだけに公平と透明性を担保するガイドラインが必要となっている。

関係者らが集まって作ったこの地域のガイドラインはこちら
今年2月24日付。(関係ないけど、英国で自殺幇助の起訴ガイドラインが出る前日……)

リンク文書のタイトルを見ると、腎臓病の末期の(end-stage)患者の選択基準となっている。
そこに至るまで受けさせてもらえないということなのか?

ガイドラインの最初の概要だけ読んでみると、患者は3つのカテゴリーに分類される。
受けられる人。資源があれば受けられる人。受けられない人。
社会ファクターと医療ファクターを合わせ考えるが特に後者を重視するという。
かつての、社会にとっての当該患者の有益性を問う功利主義の選別は行わない。

で、ProPublicaが実際に覗いてみた委員会では
患者のスライドが映されて、他職種の担当者が次々に患者について説明する。

読み書きできます。アフリカーナもXhosaも話せます。
タバコを吸ったことも薬に手を出したこともありません。
酒を飲むのは週末に妻とのみ。大した量じゃありません。
知的障害も精神障害もありません。

こういうのはポイントになる。

バスタブも台所のシンクもトイレもある持ち家です。

これは大きなポイント。
家で安全な透析が可能な患者だということになるから。

仕事は農場労働者で給料は月175から220ドル程度。
犯罪歴はなく、33歳の妻と4,9、13歳の3人の子どもがいます。

これらは、あまりカウントされない。

アパルトヘイトの文化の根強い国の“犯罪歴”は、背景にいろいろイワクがある。
子どもがいなくても、他の人の子育ての手伝いはできる。

あまりカウントされなくても、医師や看護師やソーシャルワーカーらが
患者がどういう人かを、ともかく語っていきながら、委員会は
かつてのような功利主義の選別にならないように気をつける。
つい、これまでの習慣で、そういう判断に傾いてしまうのが人間だから。

医療ファクターでは特に腎臓移植を受ける体力があることを重視する。
移植で透析不要になれば、その分、透析を受けられる人が一人増やせるからだ。

どれほど誠実な闘病姿勢か、ということも
主治医の報告で問われるところ。

この委員会がカテゴリー3に分類し透析を受けられないと決まった
一家の大黒柱でもあり幼い子供の母でもある40代女性の場合、
決定的なマイナス・ポイントは肥満だった。
この女性はホスピスに紹介された。

決定とその理由については、患者と家族に十分に説明される。
人種や社会経済的な理由で却下されたのではないと分かってもらわなければならないし、
すべてを明らかにすることが選別の倫理性には不可欠だ。

Life and Death Choices as South Africans Ration Dialysis Care
By Sheri Fink,
ProPublica, December 15, 2010/12/17


人種差別の根深い国だからこそ功利主義はとらないということの意味が大きいのだということが
記事の全体から感じられてくる。

だた、功利主義はとらないといっても、委員会での会話を読んでいると、
実際にはくっきり線引きするのは難しいような気がした。

知的障害や精神障害の有無が問題になっているのはどういう理由なのか、
知りたかったのだけど、それは書かれていなかった(と思う)。


            ―――――――


12月8日にNHKのクローズアップ現代が
「ある少女の選択~“延命”生と死のはざまで~」という番組を放送した。

番組のサイトでは以下のように解説されている。

腎臓の「人工透析」30万人。口ではなくチューブで胃から栄養をとる「胃ろう(経管栄養)」40万人。そして、人工呼吸器の使用者3万人。「延命治療」の発達で、重い病気や障害があっても、生きられる命が増えている。しかしその一方、「延命治療」は必ずしも患者の「生」を豊かなものにしていないのではないかという疑問や葛藤が、患者や家族・医師たちの間に広がりつつあ る。田嶋華子さん(享年18)は、8歳で心臓移植。さらに15歳で人工呼吸器を装着し、声も失った。『これ以上の「延命治療」は受けたくない』と家族と葛 藤を繰り返した華子さん。自宅療養を選び、「人工透析」を拒否して、9月、肺炎をこじらせて亡くなった。華子さんの闘病を1年にわたって記録。「延命」と は何か。「生きる」こととは何か。問いを繰り返しながら亡くなった華子さんと、その葛藤を見つめた家族・医師たちを通じて、医療の進歩が投げかける問いと 向き合いたい。




NHKは、なぜ華子さんの選択を描く番組の解説冒頭に、
人工透析、胃ろう、人工呼吸器を使っている患者の人数を並べたのだろう。

それぞれ30万人、40万人、3万人は、
すべて「延命治療」を受けている人たちだとNHKは言うのだろうか。

人工透析、胃ろう、人工呼吸器のおかげで
重い病気や障害があっても、生きることができている人は、みんな、
のべ73万人の全員が「延命治療」を受けているのだと
NHKは本気で考えているのだろうか。

「重い病気や障害があっても、生きられること」が
いつから「延命」になったのか、NHKに聞きたい。


【関連エントリー】
日本の尊厳死合法化議論を巡る4つの疑問(2010/10/28)
2010.12.18 / Top↑
ネット上に嘆願書を掲載して、
賛同する人がそこに署名を加えていくサイトGoPetitionに
13日付でVirginia州の自殺幇助合法化を訴える嘆願書がアップされている。

17日朝9時半時点で、署名者は2名。

Decriminalize Assisted Suicide in Virginia
GoPetition, December 13, 2010


これから、こういう動きが増えてくるのかもしれない。

なにしろ合法化ロビーはゼニも力も動かせる人間も持っている。
休みなく、次々に手を打ってくる。

一見すべてが自由意思に基づいて個人がやっていることのように思えるけれども
本当にそうなのかどうか……。
2010.12.18 / Top↑
Obamaの大統領生命倫理問題研究委員会(?)が初の報告書で、新薬開発だ環境浄化だ代替燃料だと何かと有望視されている合成生物学(synthetic biology)について、研究室で合成される微生物には思いがけない厄災を引き起こす可能性がないよう慎重に、と。
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2010/12/16/AR2010121600019.html?wpisrc=nl_cuzhead

「インドネシアのNICUはコスト効率が良い」というタイトルで、インドネシアに新システムを備えたNICUでもできたのかと思って斜め読みしてみたら、 NICUがない場合に比べてNICUがある方がDALY(でたよ。IHME所長Murray考案による、ゲイツ財団とWHO御用達のDALY!)による障害を勘案した生存年数でコスト効率が良いことが分かったという話だった。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/211031.php

アイルランドの中絶禁止法はヨーロッパ人権宣言違反だとする3人の女性が1年前に提訴した件に、今日、ヨーロッパ人権裁判所から判断が出る模様。
http://www.guardian.co.uk/world/2010/dec/16/ireland-abortion-human-rights-europe?CMP=EMCGT_161210&

この前、英国の学費値上げデモの際に警官が障害のある学生を無理やり車椅子から引きずりおろして排除するシーンがYouTubeに投稿されて問題になっていたけど、Guardianがその学生Jody McIntyreさん本人にインタビューしている。:本人にしたら、それほど酷い目にあわされたという感じはしていないみたい。もっと酷いことをいっぱい見てきたから、と。
http://www.guardian.co.uk/uk/2010/dec/15/jody-mcintyre-protester-dragged-from-wheelchair?CMP=EMCGT_161210&

今年、NYの子どもたちからサンタのもとに届く手紙には、「オモチャがほしい」ではなくて「コートがほしい」「靴がほしい」「靴下を」などと書かれているそうな。「私は何もいらないから、お母さんに冬物のコートをください」なんて子も。
http://www.usatoday.com/news/nation/2010-12-15-1Asantaletters15_ST_N.htm?csp=Dailybriefing

英国連立政権、春までに公務員を10万人リストラ。:警察官の写真がくっついているので、警察・消防、もろもろの行政機能は維持できるのか?? と思ってしまった。警察官らの写真一枚で、書かなくたって、そういうメッセージを送れるものなんだなぁ……とも。
http://www.guardian.co.uk/society/2010/dec/16/public-servants-to-lose-jobs?CMP=EMCGT_161210&

先ごろ出された医療制度改革白書には英国医師会を始め関係者らからゴウゴウの批判が出ているが、連立政権はNHS創設以来のラディカルな改組を敢行する、と。民間改行医への資金の振り替えや、プライマリ・ケア・トラストの廃止、それに代わる機能としてGPの組織化など。
http://www.guardian.co.uk/society/2010/dec/15/nhs-reforms-health-andrew-lansley?CMP=EMCGT_161210&

英国で夫に虐待・レイプされたと警察に訴えていた女性が、レイプの訴えを取り下げたところ、警察の公務を妨害したとして逮捕、起訴された事件があったらしい。このような事件では、取り下げの背景にどのような事情があるか、司法に関わるものは夫からの暴力に脅かされる女性の立場に問題意識を持たなければならない、とDPP。今後は同様の案件の起訴はDPPの了解を必要とすることに。:いつも自殺幇助の件で拝顔しているDPPのStarmer 氏。そういえば自殺幇助事件の起訴にもDPPつまりStarmer氏の了解が必要なんだよね。そう、なにもかも公訴局トップの了解を必要としていて、組織って成り立つのかな。というか、じゃあ、組織ってなんのためにあるの? 自殺幇助のガイドラインだって、はい、一応作りました、でも判断は個々に私 Starmerが行います……だもんね。あれは。
http://www.guardian.co.uk/society/2010/dec/16/keir-starmer-rape-claim-retraction-cases?CMP=EMCGT_161210&

昨日のエントリーにアップしたヒトラー映画のシーンが、尖閣諸島や小沢一郎を巡る検察の陰謀説でも使われているというのをガウタマ・シンラン・ソリドゥスさんのブログで教えてもらったのだけど、今日たまたまブルース・スプリングスティーンの映像を探していたら、全く同じ場面を使った「スプリングスティーンのコンサートに娘と行くのに、部下が最前列のチケットを取り損ねたために激怒しているヒトラー」の動画があった。他にも「ツイッターが使えなくなって激怒しているヒトラー」とか、いろいろあるらしい。知らなかった。確かにいじり甲斐のあるシーンだ。
http://www.youtube.com/watch?v=xGJpu5AiYoE

lenalidomideという薬をごく少量飲むだけで、加齢で低下する免疫システムを活性化できることが分かったそうな。この薬は「若返りの泉」だ、と。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/211442.php
2010.12.16 / Top↑
――ことの起こりは08年11月。

コソボの空港で搭乗を待っている間にトルコ人男性が気を失って倒れた。
男性の腹部には生々しい大きな傷が……。

翌日、コソボ警察はMedicusというクリニックで74歳のイスラエル人男性を発見する。
彼は誰かから盗んだものと承知で腎臓を買うために来ていて、
そのために、9万ユーロを支払っていた。

腎臓提供に報酬を払うと偽っては、
ロシア、モルドバ、カザフ、トルコから人を連れてきて腎臓ドナーにしていたらしい。

買いに来るのは、ポーランド、イスラエル、ドイツなどの患者。

組織的な臓器のトラフィッキングが行われていたとして
14日にコソボの首都Pristinaの地方裁判所で始まった裁判で
被告となっている7人の医師の中には、高名な医師も含まれている。

しかし、この話、一医療機関で行われていた臓器の密売に留まらない。

Medicusで行われていたことは、コソボ解放軍(KLA)がもう10年来やってきた、
臓器、麻薬、武器の密輸の組織犯罪の一部に過ぎないというのだ。

しかも、その首領は、
12日に行われた初めての選挙で勝利宣言をしたばかりのコソボのHashim Thaci総理大臣。

彼には長年独自に組織したDrenicaというグループがあり、
Drenicaのメンバーを多数KLAに入れることによって、KLAを牛耳ってきた。

もともと1999年にコソボ戦争が終わった後2000年にも、
セルビア人が殺されて臓器を採られているという訴えがセルビア人から出ていた。
その段階で、臓器狩りの首領がThaciだということは取りざたされた。

2年前にヨーロッパ評議会がこの件での調査を命令。

ヨーロッパ評議会の戦争犯罪担当の前検事からは
KLAの幹部を捜査しようとしたら妨害があったとの証言も。

戦争当時からセルビア人をアルバニア側に掴まえてきては
6か所の秘密の収容所に分散しておいて、狩り取り施設に医師が来て待機すると
順次場所を移されて、頭を銃で撃って殺し、臓器を摘出していたものと思われ、
08年8月までの犠牲者の数は20-30人とみられている。

自分の身の上に起こることを察したセルビア人たちは
身体を切り刻むのだけはやめてくれろと懇願したという。

ヨーロッパ評議会の調査を行ってきた人権調査官の報告書が
このほど評議会に提出されることとなり、Guardianがその内容を報じたもの。

ただし、調査官は、一番の問題は
99年当時から、KLAの実態を知りながら、コソボの安定を最優先すべく
見て見ぬフリをしてきた西側国際社会の姿勢にある、と指摘している。

なおMedicus事件の7人の被告は全員、罪状を否認。
コソボ政府も、報告書の指摘については全面否定。

2000年の臓器狩りに関係した人物が
今はThaci政府のアドバイザーとして要職に就き、
医療問題を担当しているという。

Kosovo PM is head of human organ and arms ring, Council of Europe reports
The Guardian, December 14, 2010

Kosovo physicians accused of illegal organs removal racket
The Guardian, December 14, 2010
2010.12.16 / Top↑
California Watchというサイトが成長抑制WGの論文を取り上げているのだけど、これもまた事実誤認だらけ。:カリフォルニアといえば、目下、自殺幇助合法化で最も熱心なキャンペーンが行われている州……。一見繋がっていないように見えるけど、実は繋がっているんじゃないのかなぁ……と私はひそかに疑っていたりする。
http://californiawatch.org/dailyreport/it-ethical-stunt-growth-severely-disabled-kids-7484

米国で、生後24時間以内の違法な新生児殺害の件数が、これまで考えられていた5倍に達していることが判明。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/211148.php

今日のエントリーで DPPの不起訴が既に20件にも及んでいることを聞き出していた、Falconer卿率いる「自殺幇助委員会」(委員の多数は最初から合法化論者で、資金の一部が合法化論者の作家から出ている)は、同時にWiltshire在住のロックトイン症候群の男性の苦悩を看護師である妻の口から赤裸々に語らせている。
http://www.retfordtoday.co.uk/news/man_reveals_daily_agony_to_assisted_suicide_hearing_1_2856779
http://www.bbc.co.uk/news/uk-england-wiltshire-11989830

BBCの記事で写真を見て思い出した。Nicklinsonさん。この人のことは7月に以下のエントリーに書いているけど、“ロックトイン”じゃないと思う。
http://blogs.yahoo.co.jp/spitzibara/61159960.html

同委員会は、合法化に向けてエビデンス作りにまい進しているようだ。Debby Purdyさんからも聴取。DPPのガイドラインが出たおかげで、いざとなったら夫に付き添われてスイスにいけると思うことができて、死ぬのは先に延ばそうと思えるようになった、と。
http://www.midhurstandpetworth.co.uk/news/purdy_lords_ruling_on_suicide_gave_me_new_life_1_1982320

アラバマ州で母親を抱え込んだ男Thomas Princeが母親を殺すと喚きながら、警官に弾の入っていない銃を向け、射殺された12月の事件を、「警察による自殺幇助」事件だと断定。
http://blog.al.com/breaking/2010/12/police_shooting_of_man_who_too.html

「警察による自殺幇助」については、去年8月の以下のエントリーに。
[http://blogs.yahoo.co.jp/spitzibara/54884051.html

UKPAから「介護者の半数は介護によって健康を損ねている」と。:こうなってくると、介護者の負担も、「だから介護者支援の充実を」という方向に向かうのではなく、「だから自殺幇助合法化を」の後押し材料になるのかしら?
http://www.google.com/hostednews/ukpress/article/ALeqM5hfo87dUQEJ2qF5Q3TwqDRdV8lMjw?docId=N0140701292330468104A

米国にthe Affordable Care Actができれば、ブーマーズがどれほどの恩恵を被るかという試算。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/211334.php

現在の米国人は10年前に比べて、老後に病気をして過ごす期間が長い。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/211323.php

コソボで、首相が主導して、セルビア人の囚人を殺して腎臓を摘出する闇の腎臓売買のカラクリが明らかに。ロシアやポーランドからも患者が腎臓を買いに来ていたとか。
http://www.guardian.co.uk/world/2010/dec/14/kosovo-prime-minister-llike-mafia-boss?CMP=EMCGT_151210&
http://www.guardian.co.uk/world/2010/dec/14/illegal-organ-removals-charges-kosovo?CMP=EMCGT_151210&

英NHS経費削減策で、簡単な整形手術の有料化、神経手術器具の消毒再利用など医師らから提言。
http://www.guardian.co.uk/society/2010/dec/14/doctors-ideas-save-nhs-cash?CMP=EMCGT_151210&

Yahooが人員の4%、600人を解雇。
http://www.nytimes.com/2010/12/15/technology/15yahoo.html?_r=1&nl=todaysheadlines&emc=a26

米国のティーンの間でマリファナとエクスタシーの使用が増加している。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/211465.php
2010.12.15 / Top↑
自殺幇助合法化論者のFalconer卿がチェアを務める委員会のヒアリングで
昨日までに英国公訴局長DPPのStarmer氏が語ったところによると、

今年3月までの昨年度に送検された自殺幇助事件は19件。
そのうち17件が不起訴となり、1件は現在検討中。
1件は警察が取り下げた。

今年度これまでに送検されたのは14件で、
そのうち3件はすでに起訴が見送られ、
残り11件を現在、検討中。

不起訴になった20件だけについてパターンを云々できないとしながらも、
Starmer氏は、概ね「家族内または家庭内での行為で、
亡くなった人と長く一緒に暮らし、多くの場合、強い愛情関係にあった人による
思いやりの行為だった」と。

自殺幇助に反対するthe Care Not Killing Allianceでは
Starmer氏の情報公開を「許しがたい」とし、スポークスマンは
「あらゆる実際的な目的での自殺幇助を合法化し、法を愚弄している」と同氏を非難。

No charges in 20 assisted-suicide cases aspublic prosecution is accused of re-writing law
The Daily Mail, December 15, 2010


ちなみに、DPPは今年2月末に
自殺幇助事件での起訴判断に関するガイドラインを出しています。

【DPPガイドライン関連エントリー】
DPPの自殺幇助に関する起訴判断のガイドラインを読む 1(2010/3/8)
DPPの自殺幇助に関する起訴判断のガイドラインを読む 2 (2010/3/8)

そこに至るまでの09年の英国の自殺幇助合法化議論のまとめはこちら。

ガイドラインの後に、当ブログが拾った不起訴案件のニュースは以下。

英国の自殺幇助ガイドライン後、初の判断は不起訴(2010/3/26)
英国で、介護者による自殺幇助を事実上合法化する不起訴判断(2010/5/25)
自殺幇助の元GPに英国公訴局長「証拠はそろっているけど、公益にならないから不起訴」(2010/6/26)
英国DPP、自殺幇助の逮捕者をまた不起訴(2010/8/17)
2010.12.15 / Top↑
これは笑えます。

ドイツ映画「ヒトラー最後の12日間」の一場面に勝手な字幕をかぶせたもの。

11月16日に重症児の父親から成長抑制批判と「親を指針とした医療職によるアセスメント」で紹介した
Segev君の父親Erikさんが YouTubeからブログに引っ張ってきている ↓

Hitler reacts to the Hastings report on growth attenuation.wmv
I am a broken man/You don’t break me, December 10, 2010


地図を指差して、非常に緊張した面持ちの部下が
「ここに安楽死ホスピスを作りました。
一応、念のために成長抑制センターのすぐそばです。
批判的なブロガ―たちが騒いでいましたが、誰もそんなブログは読まないので、
現在はこのあたりまで前線を下げています」と戦況を説明すると、

ヒトラーがムッと不機嫌になり、
「で、障害児を殺すのか、成長抑制するのか、一体どっちなんだ?」

それに対して、部下が非常に言いにくそうに
「それが……HCRに成長抑制を倫理的だとする判断が掲載されました」と報告。

それを聞いたヒトラーが怒りを爆発させる、というシーンになっています。

内容の一部や順番に誤りがあったり抜けていたりもするかもしれませんが、
概ね、こんな感じ ↓

(なお、文中の「グローニンゲン・プロトコル」とは
2005年にオランダで発表された障害新生児安楽死のガイドラインのこと)

障害児は社会のお荷物だから殺すんじゃなかったのか。
それを、成長抑制の倫理性が認められただとぉ?

重症障害児にはアプリオリに意識があると思うヤツは今すぐこの部屋を出て行ってくれ。

(ぞろぞろと多くの人が出て行く。重苦しい沈黙の後でヒットラーはブチ切れて)

そもそもグローニンゲン・プロトコルとは何事だ!
障害児殺しを考えたのは、この俺だぞ。
どうして「アドルフ・プロトコル」と呼ばない!
グローニンゲンなんて、誰も発音できんだろーが!

すぐにピーター・シンガーに電話をしろ!

ったく、オリジナル考案者の顔を立てることもしないなんて!

いいか。無条件の愛なんてものは、ないんだ。
誰が生きて誰が死ぬべきかを決められるのは医療機関だけなんだよ。

だいたいお前らが、成長抑制をやってもいいと口約束さえしてくれれば
生まれてすぐに殺すことから目をそらせると言うから乗っただけなんだぞ。
それが、どうして、こんなことになるんだ!

部下が「倫理委員会が殺す話を霞ませてしまっているもので……」

じゃぁ、成長抑制なら野蛮じゃないから禁止しなくてもいいというのか!
そんなことを言うなら、いっそIQ25以上の障害児も含めたらどうなんだ!

シアトル・グループが「他の決定と同じ、利益とリスクの比較考量」だとぉ?
「重症障害児について親が決めたことに反対する人が出るのは他の医療でも同じ」だとぉ?
(カギ括弧内は成長抑制WGの論文からの引用)

そんな「妥協点」なんて、うじゃらうじゃらしたことを抜かしておったら
まともな人間は頭が混乱するだろーが!

障害児がいたら社会が困るというのが、そいつらには分からんのか!
障害児本人だって死にたいに決まっているじゃないか。

(さんざん喚き散らした後で、しばし黙ってうずくまったヒットラーは
やがて顔を上げると、静かな、敗北感に満ちた口調で)

もしかしたら、あのエセ倫理学者・ブロガ―たちこそが
皆がトチ狂っている混乱の中で正気を保っているのか……。

そう、これは、生命の……勝利だ。

たぶん我々は、命をありのままに受け入れるべきなのだ……。
命はいろいろなのだから……。



いや~、おっかしかったぁ!

特に「すぐにピーター・シンガーに電話しろ!」には、ぶははっと吹いてしまった。


Norman Fostらがここまで執拗に成長抑制の一般化にこだわるのは他に狙いがあるのではないか、
それは障害のある新生児への「無益な治療」論の一般化ではないのか、
つまり重症児の安楽死に向けた地ならしとして成長抑制による線引きと
司法からの切り離しが画策されているのではないか、と、ここしばらく考えていたのですが、

笑いながら、改めて、そのことを考えました。
2010.12.15 / Top↑
テキサス州の女性の自殺幇助裁判。Jerrfey Ostfeldがメキシコから獣医用のバルビルール系毒物を持ち込んでウツ状態の女性Jennifer Malone に飲ませた、というもの。
http://www.nrtoday.com/article/20101210/NEWS/101219990/1051&parentprofile=1055

製薬会社と医療機器会社に対して、医師らに支払った金額を申告させる連邦政府の計画が2013年に実施されることになっているが、93年の早くから州法で同様の規定を設けているミネソタ州の報告内容の詳細を、ProPublicaが各会社がHPに公開している支払情報と突き合わせたところ、多くのケースで州に対しては実際に支払った金額よりも過少に報告が行われており、州の監督担当者はそれに気づいていなかった。報告を義務付けたからといって、チェックしなければ正しい報告が行われるとは限らない、という連邦法への警告。:突き合わせればバレると分かっているようなことが20年近くも州政府と製薬会社との間で平然と続けられてきたというのが、どこか、何をかいわんや、という感じがする。
http://www.propublica.org/article/in-minnesota-drug-company-reports-of-payments-to-doctors-mistaken

英国の大学の学費値上げ問題で続いている学生たちの抗議行動で、障害のある学生が警官によって車いすから引きずり降ろされ、そのまま道路の脇まで引きずられていく映像がYouTubeに投稿され、問題になっている。
http://www.guardian.co.uk/uk/2010/dec/14/student-protests-video-protester-wheelchair?CMP=EMCGT_141210&

英国の世論調査British Social Attitudeの報告書で、英国人は80年代のサッチャー時代よりもさらに福祉国家に対してネガティブ。
http://www.guardian.co.uk/education/2010/dec/13/social-survey-thatcherite-britain?CMP=EMCGT_131210&

子ども達に読み書きそろばんの基礎力を保障するべく1999年にまずは貧困地域から始まった英国のSure Startプログラムの成果を調査すべく、2001年から2008年にかけての子どもたちの能力を調べたところ、大した効果を上げていないことが判明。
http://www.guardian.co.uk/education/2010/dec/14/sure-start-children-eary-years?CMP=EMCGT_141210&

インドネシア版セサミ・ストリートを見た子どもたちは、見なかった子どもたちよりも格段に読み書きそろばん、健康関連スキルのレベルが上がった。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/211086.php

人種がはっきりと分かれていて犯罪率の高い地域に住んでいる人は、そうでない人に比べてガンになる確率が高い。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/211078.php

Facebookとブログとツイッターで、ホームレスのアドボケイト活動を続けるワシントンDCのホームレス。
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2010/12/12/AR2010121203509.html?wpisrc=nl_cuzhead

未熟児を母親が身体に密着させて過ごすことで保育器を使わない「カンガルー・ケア」。
http://opinionator.blogs.nytimes.com/2010/12/13/the-human-incubator/?nl=todaysheadlines&emc=ab1
2010.12.14 / Top↑
ピッツバーグ大学の調査で、65歳以上で入院中に人工呼吸器を使って生還・退院した患者は、呼吸器を使わずに退院した患者よりも、長期に渡る障害を負う確率が高い、と。:臓器摘出のために人為的に心臓死を引き起こす「ピッツバーグ方式」の、あのピッツバーグ大学だよ……。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/210836.php

英国連立政権の保健相から11月30日に白書 Healthy Lives, Healthy People: Our Strategy for Public Health in England. これは、その白書を「ふん。口先だけ」とけなすLancetの論文。白書そのものは、こちら。
http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736%2810%2962244-1/fulltext?elsca1=TL-101210&elsca2=email&elsca3=segment

英国のどこかの地方自治体が、在宅介護の支給に上限を設けるなど200万ポンドの社会サービスのカットを決めている。高齢者、障害者への影響に懸念。:これはあちこちで起こっていることなのだろうと思う。
http://www.thurrockgazette.co.uk/news/8732259.__2_million_of_adult_social_care_cuts_approved/

米国小児科学会から、子どもの摂食障害の急増に警戒感。:いかに子どもの「学校の成績」を上げるか、いかに頭の良い子どもにするかが、科学研究の重要なテーマになっていたり、“科学とテクノの簡単解決”文化の暴走が「親の決定権」や「親のプライバシー権」で正当化されたり、社会全体がどんどん虐待的な親のようなっていく米国の狂騒状態をみていると、急増しない方がおかしいと思う。ロボットならぬ子どもには心というものがあるのだから。あー、でも摂食障害にも遺伝子決定説が出てくるからなぁ……。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/211006.php

ピーナツ・アレルギーのワクチンが有望。
http://www.canberratimes.com.au/news/local/news/general/promise-of-peanut-allergy-vaccine/2023033.aspx?src=enews

高齢者のウツ病予防介入に何が効果的かという実験で、効果があったのは人との交流のある活動で、運動、スキル・トレーニング、支援グループ、回想、それらの組み合わせには、大した効果が見られなかった。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/211162.php
2010.12.14 / Top↑
米国の「死の自己決定権」アドボケイト団体Final Exit Networkが
Georgia州をはじめ、いくつかの州で相当数の人に組織的な自殺幇助を行ったとして
幹部らが逮捕された事件については、去年の2月から追いかけてきました。

詳細は文末の関連エントリー・リンクにもありますが、
「介護保険情報」誌の連載「世界の介護と医療の情報を読む」の09年4月号でも
簡単に事件のあらましをまとめました。


そのFEN事件、昨日10日の公判で、
GA州の事件で逮捕された幹部ら4人が起訴の取り下げを訴えたらしいのですが、
(これについては昨日の補遺にも)

なんとFENはそれと同時に
GA州を相手取って言論の自由訴訟を起こしたとのこと。

この事件では、
自分たちは自殺したいという人たちに情報提供とカウンセリングを行っているが、
実際に手を下して幇助することはしていない、というのが当初からのFEN側の主張で、

自分たちは手を出していないのに、
しゃべったというだけで違法行為を問われるのなら
それは法律の方がおかしいのだ、と言いたいのでしょう。

現在のGA州法の自殺幇助関連の規定は曖昧で、
言論の自由に抵触するものである、と訴えた。

しかし、一連の事件の報道では、
とても「しゃべっただけ」とか「情報提供しただけ」とは思えなかったし、

昨日の法廷でも、
自殺希望者としてFENのボランティアと接触した、おとり捜査官の証言があり、
ヘリウム自殺する際には、ちゃんと死ねるように(頭にかぶった袋をはがないよう)手を抑えるのだと
そのボランティアが説明したという。

Suicide Rights Group Sues State
GPB News, December 10, 2010


私は09年2月の最初の報道の直後、FENの公式サイトを読んで
認知症やパーキンソンの人には、まるで「決行できる間に決断しましょうね」と
そそのかすがごとき内容に驚愕しました。

今では、このサイトはアクセス不能となっていますが、
当時は他にも幹部の逮捕という事態に出したリリースが掲載されており、その中でも、

パーキンソン病、多発性硬化症、筋ジス、ルー・ゲーリック病などの神経系の病気やアルツハイマー病の人は、しばしば“終末期”と呼べる状態になるよりもはるか前に生きる理由も意思も失います。癌、脳卒中、慢性心臓疾患、肺気腫、その他不治の状態と、負けると分かっている戦いを延々と続けなければならない人 たちも、必死で一呼吸一呼吸にしがみつくくらいなら尊厳のある終わりを望みます。

このような人々の多くは助けを得ることができません。Final Exit は耐え難い状態に苦しんでいる人々のために活動しています。Networkのボランティアはカウンセリング、支援、そして、あなたが選んだ時にあなたが選んだ場所で、自己処置のガイダンスを提供します。しかし、選ぶのは常にあなたです。死を急ぐように我々が勧めることは決してありません。

「あなたが(死ぬと)選んだ時にあなたが(ここで死ぬと)選んだ場所」に
FENが複数のボランティアを派遣していたことは明らかになっています。

そして、自殺しようとする人の傍にいて、
「自己処置のガイダンスを提供」していたわけだから、

それを「我々は情報提供はしたが、しゃべっただけで、手は下していない」とか
そんなのは言論の自由だとか言ったって……。




【FEN自殺幇助事件関連エントリー】
尊厳死アドボケイト団体の幹部4人を逮捕、他8週も自殺幇助容疑で家宅捜査(米)
精神障害者への自殺幇助でもthe Final Exit に家宅捜査
Final Exit 自殺幇助事件続報:130人の自殺に関与か?
Final Exit Networkの公式サイトを読んでみた
CA州の自殺幇助事件続報
自殺幇助合法化議論、対象者がズレていることの怪
Final Exit自殺幇助事件、週末の続報
「ホスピスだって時間をかけた自殺幇助」にホスピス関係者が激怒
FEN創設者GoodwinのAP通信インタビュー
FENの自殺幇助ガイド養成マニュアル
精神障害者の自殺幇助で新たにFEN関係者4人を逮捕
FENが自殺幇助合法化プロモビデオをYouTubeにアップ
OhioでもFENによる自殺幇助事件か(2009/6/18)
久々に Final Exit Network自殺幇助事件の続報(2009/10/16)
FEN事件で精神障害者の自殺を幇助したボランティア、有罪を認める(2010/1/13)
闇の自殺幇助機関FEN事件の4人を起訴(米)(2010/3/10)
FENが「Kevorkian医師の半生記映画見て“死ぬ権利”考えよう」(2010/4/22)
2010.12.12 / Top↑
Bill Peaceが成長抑制WGの論文をブログでとりあげ、社会サービスの不足を指摘している点など、部分的に評価している。特に、 Hasting Centerの関与を評価しているが、そんなの、成長抑制の是非とは、なんの関係もない。しかも、こともあろうに「症例によっては医学的に成長抑制が必要となる場合もあるだろう」 とは、一体なんだ?:Peaceは、07年当初に「Ashleyは私だ」と重症児とその他障害者の間に線引きすることを否定し、一貫して障害者の権利を侵害する差別だと批判してきた。ところが、ある日突然、彼はHasting Centerから呼び出しを受ける。非常勤の研究員として迎え入れたいので面接に来い、という話だった。さしたる業績もない自分に、なんで、あの権威ある Hastings Centerから誘いがあるのか、彼は自分でもさっぱり分からなかった。同センターについても批判的に捉えていたのだが、職についていない彼には現金収入も魅力だった(と少なくとも彼は自分にそう言い聞かせていたのだと思う)。面接を受け、彼はめでたく非常勤の研究員となった。そして今や、すっかり同センターのファンだ。ついでに成長抑制への批判の矛先も随分と鈍くなった。じゃぁ、「医学的に成長抑制が必要」なのかもしらんとアンタが認める障害児は、もう「私」ではなくなったのか?
http://badcripple.blogspot.com/2010/12/growth-attenuation-hastings-center.html

08年のFEN自殺幇助事件で起訴されたFEN幹部の4人の公判。起訴不当を訴える見込み、と。
http://washingtonexaminer.com/news/2010/12/final-exit-network-group-be-ga-court-friday

世界銀行からブルガリア、クロアチアなどEUに新加盟した国々の高齢化と介護の不足に関する報告書。
http://www.sofiaecho.com/2010/12/10/1008642_bulgarias-aging-population-means-increasing-pressure-on-long-term-care-services-world-bank

ビッグ・ファーマのファイザーが、ナイジェリアで子どもの髄膜炎に関する治験を巡る訴訟を取り下げさせようと、検事の弱みを握るべく探偵を雇って汚職の証拠を探させていたことが、WikiLeaksが暴いた電報で明らかに。
http://www.guardian.co.uk/business/2010/dec/09/wikileaks-cables-pfizer-nigeria?CMP=EMCGT_101210&

ロシアがWikiLeaksのアサンジ氏にノーベル平和賞を授与すべきだ、と。
http://www.guardian.co.uk/media/2010/dec/09/julian-assange-nobel-peace-prize?CMP=EMCGT_101210&

ハリケーン・カトリーナ直後の警察官による市民射殺事件で、新たに3人に有罪。背後から射殺、遺体を焼却し、ウソの報告書を書いていた。家族からの度重なる訴えも無視し続け、08年にPropublicaの調査が記事になってやっと警察内部で調査が始まった、とのこと。
http://www.nytimes.com/2010/12/10/us/10katrina.html?_r=1&nl=todaysheadlines&emc=a23

ProPublicaから、民間の営利施設での人工透析では、死亡率が高い、との調査結果。
http://www.propublica.org/article/new-study-shows-higher-mortality-risk-at-in-for-profit-dialysis-chains

ProPublicaはFacebookに人工透析のページを作っている。システムの不備を追及する構え? 
http://www.facebook.com/ProPublicaDialysis

人工透析と言えば、8日のNHKクローズアップ現代の「ある少女の選択~“延命”生と死のはざまで」について、疑問だらけになっていたところ、以下の開業医の方のブログで人工透析拒否への疑問が書かれていた。:華子さんのケースそのものを云々することは非常に難しいのだけれど、こういう番組の描き方や解説のされ方から、医療全体で起こりつつあることとして、いわゆるスタンダードではなく、倫理問題が取りざたされるような――しかも多くの場合、非常に高額な――医療や医療技術の応用が、莫大な資金が投入されて研究・提唱・奨励されていく一方で、呼吸器や胃ろうや人工透析といった、多くの患者が利用しているスタンダードな医療に「延命治療」というレッテルが次々に貼られていくような気がすることの気味悪さの方を考えてしまった。そのレッテル、色は「延命だから、すべからく無意味で無駄」色で、柄は「自己決定」模様で。
http://blog.goo.ne.jp/joshunaizensha/e/b8eb176ba24eb36b808640858eb50954

ちなみに、この番組を見て思い出したのは、米国で06年に15歳の少年が抗がん剤治療を拒否して論争となったAbraham Cherrix君の裁判。以下の07年のエントリーに概要を取りまとめています。
http://blogs.yahoo.co.jp/spitzibara/13603796.html

失業状態があまりに長く続くと人間は仕事をする能力が低下するだけでなく、仕事を探そうという気力も失う、という話に続いて、障害者手当をもらっている人は米国人10人に1人。彼らが延々と手当てに依存しないためには……と言われても、障害のために働けないでいる人たちは仕事を探す気力がないわけじゃないと思うし、さらに、たぶん、その10人に1人の中には相当の割合でイラクやアフガニスタンで障害を負って帰ってきた米兵もいるし。
http://www.nytimes.com/2010/12/10/opinion/10orszag.html?nl=todaysheadlines&emc=a212

認知症予防に効能をうたわれてきたイチョウ葉エキスに、またもエビデンスが否定されている。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/210788.php

認知症を始め認知障害のある人を被験者とする研究で、十分なICが行われていない可能性がある。倫理綱領・ガイドラインが必要、と。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/210733.php

Facebookの創設者Zuckerberg氏(26)を含む米国で最もお金持ちの17人が、資産の多くを慈善に提供すると約束。:で、もちろん発言権も行使する……。
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2010/12/09/AR2010120901759.html?wpisrc=nl_cuzhead

12月8日から10日、北京でアジア高齢化会議。参加は中国、インド、インドネシア、日本、米国。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/210837.php

アフガニスタンの女性は結婚の強要や名誉殺人など、今だに虐待されている、と国連の報告書。
http://www.guardian.co.uk/world/2010/dec/09/afghan-women-abuse-united-nations?CMP=EMCGT_101210&

94年にルワンダで100日間で80万人のツチ族が殺された大虐殺の文書を公開。
http://www.guardian.co.uk/world/2010/dec/10/rwanda-unveil-genocide-archive?CMP=EMCGT_101210&

母親の血液検査で、胎児の遺伝病のいくつかをDNAスクリーニングすることが可能に?
http://www.medicalnewstoday.com/articles/210840.php

乳がんまたは子宮がんの発症に関連する遺伝子変異のある女性が、どの程度の割合で予防的摘出手術を受けているか。検査前の気持ちが手術への決断に如何に影響しているか。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/210733.php

人工呼吸器をつけている患者さんが音楽を聴くことの効用。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/210786.php

ERで医療補助を行うロボットの開発。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/210717.php

タバコの副流煙が子どもの多動や問題行動に影響しているとの調査結果。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/210948.php
2010.12.12 / Top↑
新生児への遺伝子診断技術が登場したのは1990年代。
必須アミノ酸の一つを利用できない病気(PKU)の発見を可能にするものだった。

その後、対象となる病気が増えて、米国小児科学会は2005年に
それまでの対象を大幅に拡大し、29の項目と24のサブ項目とを
スクリーニングの対象に義務付けるよう勧告した。

09年には全州で29のうち少なくとも21の病気・障害のスクリーニングを義務付けており、
全項目を義務付けている州も44に及ぶ。

05年の勧告の際、小児科学会の理由は
診断を求めて親が右往左往することを避けるために、というものだったが、

このたび、Journal of Health and Social Behaviorの12月号に発表された
UCLAの社会学者らの調査によると、むしろ
発症リスクにおびえ、過剰な予防に執着したり、
医師が無用だと判断しても予防手段を捨てられない親の姿が明らかになった。

中には、感染防止のために母親以外には一切の世話を認めない父親や、
子どもの発症兆候を見逃してはならないと仕事をやめる親まで。

スクリーニングで珍しい病気や障害の発症可能性があるとされると、
何年にも渡って親は医師から教えられた予防手段を守り、
真夜中に子どもを起こしたり食事制限や人との接触を制限し
フォローアップで検査を受けさせる。

しかし多くの場合、何年間も検査結果が陽性にならないまま
やがて子どもたちは成長して、29項目がリスクファクターにならない年齢を迎える。

そうして何年もたち、医師の方はもう心配ないだろうと考えても、
長年おびえ続けてきた親の方が予防体制を解くことに警戒が強く、
医師と親の間でトラブルになることも。

論文主著者のStefan Timmermans教授は、今のスクリーニングは
生まれた直後に「ご出産おめでとうございます。お子さんは珍しい病気を発症するかもしれません。
ただ、我々には確かなことは分からないし、いつになったら確かなことが分かるかも分かりません」
と告げるようなものだと語り、

このような「(発症)待機患者」親子は
新生児遺伝子スクリーニングの“コラテラルダメージ”だとして、
そうした親子を大量に作り出している現在のスクリーニングに疑問を呈している。

Study Raises Questions About Genetic Testing Of Newborns
MNT, December 8, 2010


この研究が、社会学の人たちによるものだという点が
非常に興味深いと思った。

だから、たぶん、医学の人たちは
この結果をあまり相手にしないのだろうけど、

では医学の分野の人たちは
どこまで、こうしたフォローアップの研究をしているのだろう?

小児科学会が「診断を求めて右往左往することを減らす」ことを理由に
スクリーニングの対象を広げたのであれば、小児科学会にこそ、
その理由の正当性を検証する責任があるはずだろうと思うのだけど。


そういえば、08年にGoogleの創設者Brin氏が遺伝子診断を受けたら
パーキンソン病の遺伝子変異が見つかったということで
確率20~80%の発症予防に残りの人生、全力を尽くす、とばかりに
燃えていたけど、あの人は、その後どうしておられるのだろう?


【追記】
Google のBrin氏はお元気なようです。
http://bits.blogs.nytimes.com/2010/03/22/interview-sergey-brin-on-googles-china-gambit/


【関連エントリー】
遺伝子診断、無用のストレスが体に悪いだけ(2008/9/19)

遺伝子診断で嚢胞性線維症が半減(2008/4/1)
新生児スクリーニング制度化(加・米)(2008/4/21)
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子ども病院倫理カンファ(遺伝子診断)に関する記事(2008/8/1)
新・着床前遺伝子診断MoT:遺伝病はもちろんアルツも糖尿も癌も心臓病も弾けるぞ(2008/10/24)
出生前診断をショーバイで語るとこうなる(2008/11/21)
新生児スクリーニング、去年から24の病気に(WA州)(2009/12/9)
英国で109の遺伝子疾患スクリーニング、一般カップル向けに(2010/2/8)
2010.12.12 / Top↑