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Peter Singerが抑止力を根拠に死刑を支持する発言。
http://www.bioedge.org/index.php/bioethics/bioethics_article/9811#comments

Peter Singerのツイッターは https://twitter.com/#!/PeterSinger

日本語で「米メルクの7~9月、純利益5倍に 売上高は8%増」 「主力の糖尿病薬や、日本で販売が始まった子宮頸がんワクチンの売り上げが拡大」「米国が6%増にとどまった一方、日本が30%増、中国が52%増とけん引した」そうです。
http://www.nikkei.com/news/category/article/g=96958A9C9381959CE0EBE2E29C8DE0EBE3E2E0E2E3E3E2E2E2E2E2E2

25日にオーストラリアの首相がビル・ゲイツと会談して、ポリオ撲滅でゲイツ財団と連携すると表明したと思ったら、今度はイギリス連邦のリーダーが集まって世界のポリオ撲滅でもっとゼニを出すことを確認。
http://www.google.com/hostednews/ap/article/ALeqM5gquaYzkllapCIrV0RlzvG2ezcTBQ?docId=8082b351643d4351a86c0c05a2c92672

マラリアやデング熱の予防策として、子ども世代が死ぬよう遺伝子操作をした蚊が研究されており、性向が近いと言われているが、思いがけない人や環境への悪影響があるのではないか、と専門家。:これもまたゲイツ財団が力を入れている“科学とテクノの簡単解決バンザイ”研究の一つ。
http://www.nytimes.com/2011/10/31/science/concerns-raised-about-genetically-engineered-mosquitoes.html?_r=1&nl=todaysheadlines&emc=tha25

「待ってました!」と思わず叫んだ、教育改革に関するWP記事。米国教育のレベルを上げるには生徒の成績向上率で教師のパフォーマンスを評価してダメ教師はクビに、なんて言ってる「ビル・ゲイツや富裕層の改革論者は、これを見よ」と、現場から出てきた子どもの成績不振の一番の問題は貧富の格差拡大にある、とのデータを突きつけている。
http://www.washingtonpost.com/blogs/answer-sheet/post/new-data-bill-gates-other-ed-reformers-should-care-about/2011/10/30/gIQAg6JfWM_blog.html?wpisrc=nl_cuzheads

米国政府、炭素菌ワクチンで子どもへの治験を始めたいらしい。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/236779.php

Kevorkian医師の自殺幇助装置がオークションに出るという話は何度か補遺で追いかけてきたけど、売れなかったそうだ。
http://www.upi.com/Top_News/US/2011/10/29/Kevorkian-suicide-machine-fails-to-sell/UPI-55491319915212/

米国の介護者の権利章典の仮訳を改定したら、英国にも介護者憲章というものがあると教えてもらったので、検索してみた。
http://www.west-middlesex-hospital.nhs.uk/for-patients/general-information/carers-charter/
http://www.ntw.nhs.uk/section.php?l=1&p=368
http://myweb.tiscali.co.uk/berkshire/charterstrat.pdf

英国の私立大学は富裕層の子弟の入学を優先している。
http://www.guardian.co.uk/education/2011/oct/31/ucas-university-admissions-process-rich?CMP=EMCGT_311011&

オーストラリアで母から娘Melinda Arnoldさんに子宮移植が行われることに。母親が代理母になろうとしたけど失敗し、養子縁組もうまくいかなかったため。手術を名乗り出たのは、スウェーデンのGothenburg大学のMats Brannstrom医師らのチーム。:
http://www.bioedge.org/index.php/bioethics/bioethics_article/9805#comments

上のMats Brannstrom医師らは、6月にも英国の母娘の子宮移植をやろうとしていた。今回のニュースで言及がないのは、英国のケースは手術に至らなったためでは? 
英国女性が娘に子宮提供を決断、OK出ればスウェーデンで移植手術(2011/6/14)
2011.10.31 / Top↑
代理母斡旋業が無規制のまま放置されている米国で、
オーストリアの夫婦の代理母をやったコロラド州の女性が
とんでもない健康被害をこうむり、莫大な医療費を抱える羽目に。

代理母はCarrie Mathewsさん。
2歳、4歳、6歳、8歳の4人の子どもの母親で
テレビのインタビューに応えた際には「妊娠している状態が大好き」。

代理母を希望してThe National Adoption and Surrogacy Centerにコンタクトをとり、
紹介された夫婦の中からオーストリアのBakoses夫妻を選んだ。

夫妻はもう20年間子どもがほしいと試みてきた50代の夫婦。

両者は30ページにも及ぶ契約書を交わし、そこでは
代理母をすることで25000ドル、妊娠中は毎月経費として2000ドルの支払いが約束された。

センターの勧めでサイプラスのクリニックで体外受精。
ところがそれまでの妊娠が4回ともスムーズなものだったから今回も、との
思惑は外れて、双子を妊娠したMathewsさんは次々に健康問題を抱えることに。

さらにコロラドの病院で帝王切開で産んだ数時間後には
内部出血で緊急手術を受け、術中には「死んで蘇生させられた」りも。

結局Mathewsさんは出産後も20日間入院することとなり、
その間にBakoses夫妻は生まれた双子を連れて帰国。

Mathewsさんへはまだ14000ドル分が未払いのままだが、
センターのHilary Neiman弁護士は夫妻とは連絡がつかない、と。

Mathewsさんが出産の合併症で請求された医療費は217000ドル。
このうち保険会社がどれだけが自腹になるのか、今のところ不明。

実はこのセンターのNeiman弁護士、
8月に赤ん坊売買組織に関与して有罪を認めている人物。


Hilary NeimanとTheresa Ericksonという
生殖補助を専門にする女性弁護士2人がやっていた赤ん坊売買ビジネスというのが
これまた、ものすごい話で、

代理母希望の女性を募っては
米国よりも規制が緩やかなウクライナに連れて行き、
ドナーの精子と卵子で妊娠させて、妊娠第2期に入ったところで
代理母契約の途中で依頼主の夫婦が契約を解除したという作り話で持ちかけて
生まれてくる赤ん坊を10万から15万ドルで売っていた、と。

代理母斡旋業にはライセンスが必要ないため、
代理母をやろうという人はしっかり情報を集めて信頼できる業者を選び、
医療保険に入るなどして我が身をちゃんと守るように、と専門家は注意を喚起している。

Surrogate Mom Stuck With a $200,000 + Medical Bill
ABC News, October 27, 2011


弁護士2人がやっていた赤ちゃん売買で出てきたウクライナといえば、
臓器の闇売買が広がっている国として以下のエントリーで話題にしたばかり――。

ウクライナで広がる臓器売買(2011/10/29)


グローバル強欲ひとでなしネオリベ金融慈善資本主義に席巻されていく世界とは、

貧しい国々が生き延びようとすれば、
自国民を金持ち国の奴隷労働に送り出すか、

または

「科学とテクノの簡単解決バンザイ文化」に浮かれ踊りながら
自分の欲望をお手軽に、かつ果てしなく満たしていこうとする金持ち国の富裕層のために

自国民の身体を資材として提供しつつ、その技術まで闇で提供するメッカとなっていく
恥知らずな道を選ぶしか他にはどの国も生き延びていくすべのない世界――。

だから日本も
TPPで自国の産業や地道に働いて生きていこうとする自国民を見殺しにしつつ
原発事故で多大な被害に生きあぐねている自国民からも目をそむけて
恥知らずにも原発を海外へ輸出しよう、などと……?


【関連エントリー】
これが8回目という代理母(2008/3/9)
インドの生殖医療ツーリズム(2008/8/12)
グローバル化が進む“代理母ツーリズム”(2011/1/29)
生まれた子どもの引き渡し拒否の代理母に、裁判所が「育ててよい」(2011/2/13)
ナイジェリアの“赤ちゃん工場”摘発(2011/6/2)
2011.10.31 / Top↑
The National Family Caregivers Association (NFCA全国家族介護者協会)と
Forest Laboratories, Inc.とがGfK Roper Public Affairs & Corporate Communications に委託して
今年3月28日から4月25日の間にアルツハイマー病の人の介護者674人に調査を実施。

その結果、
家族介護者が最も大きな不安(ほとんど恐怖といってもいいほどの)を感じているのは
本人とコミュニケーションが取れなくなること。

それに次いで介護者にとって大きな不安は
本人の健康状態が衰えていくことだった。

ちゃんとしたコミュニケーションが「まったく取れない」「あまりうまく取れない」と
答えた家族介護者は半数以上。

そのため双方向のコミュニケーションを諦めてしまったという人が多いが、

コミュニケーションが介護ストレスになっていると答えた人が71%に上る一方で、
新たなコミュニケーションの方法を模索し見つける人も多く、
76%の人が前よりもコミュニケーションがうまくなったと回答している。

代替コミュニケーションの工夫としては
84%が顔の表情を見る、
79&がボディ・ランゲージ、
66%は絵や写真を使う、と答えた。

介護者の性別による違いはほとんどないが、
アフリカ系の方が白人よりも介護に費やす時間が長く、
代替えコミュニケーションを使っている割合も
ヒスパニック系で80%、アフリカ系で81%が使っているのに対して
白人は69%にとどまっていた。

またほとんどの介護者が何らかの支援を受けており、
自分だけで介護を担っているという人は12%だった。

その他、この調査が指摘しているのは
家族介護者はアルツハイマー病の人の変化を目の当たりにしているので
家族介護者の観察を記録して、医師に伝えることが重要。
それらの情報が生かされるためにも、介護者と医師の信頼関係が大事。

アルツハイマー病の家族介護者は
自分自身のリスクについても不安に感じていることが多く、
10人中9人が少しでも兆候を感じたらすぐに受診する、と答えた。

Alzheimer’s Disease Impact On Caregivers, New Survey
MNT, October 28, 2011


ちょっと記事の本筋とはズレるのですが、

私が外国語の教師を長いことしてきたからか、
言葉というコミュニケーションの手段を持たない重症障害のある娘の親だからか、

私にとっては
音声、顔や目の表情、ジェスチャーやボディ・ランゲージ……などなどは
「コミュニケーション」の一部として、その中に当たり前に含まれているものだと
ずっと自然にそう捉えてきたので、

そういうものを「コミュニケーション」の外に置いて、
それとは別の「代替コミュニケーション」だのこの調査と記事の捉え方には、
かなり違和感がありました。

米国の生命倫理の周辺の情報を読みかじっていると、
「言葉によるコミュニケーションが取れないなら意思疎通そのものが不能」
という短絡的な考えや、さらにそこから大きく飛躍して、
「言葉でコミュニケーションが取れないなら、その人は何も分かっていない」
という恐ろしい決めつけまでがじわじわと広がりつつあるのではないかと
懸念は漠然とあったけど……。

でも、この調査が意味するところも、
言葉で意思や気持ちを表現することができなくても
働きかける側の姿勢や工夫次第でコミュニケーションはとれる、という可能性であり希望だと思う。



認知症や高齢・障害のために言葉を持たない人の痛みに気付くノウハウについては、
以下のエントリーに ↓
「認知症の人の痛みに気付く」ワークショップ(2009/9/9)
高齢者入所施設における痛みマネジメント戦略(2009/9/9)
「認知症患者の緩和ケア向上させ、痛みと不快に対応を」と老年医学専門医(2009/10/9)

また、言葉を持たない障害者への医療サイドの無理解が患者の死を招いたことを
医療オンブズマンが認定した英国のケースについてはこちらに。
オンブズマンは家族介護者の観察や情報を医療職が尊重することの大切さを訴えました ↓
Markのケース:知的障害者への偏見による医療過失(2009/4/1)
Martinのケース:知的障害者への偏見による医療過失(2009/4/1)

娘と私自身の体験は上のMark, Martinのエントリーにも書いていますが、
その他、障害児・者のコミュニケーションについては多数のエントリーを書いており、その一部がこちら ↓
「意思疎通できない」という医療基準のコワさ(2009/2/9)
「コミュニケーションの廃用性」について(2009/9/10)
重症障害児・者のコミュニケーションについて・整理すべきだと思うこと(2010/11/21)
2011.10.31 / Top↑
ウクライナで臓器の闇売買が広がっている。

ロシアなど
本人が文書で拒否していない限り
死者の臓器を医師は利用してもよいとする
いわゆる「オプト・アウト」方式となっている国も多いが、

ウクライナでは
家族同意が必要とされている。

ただ、葬儀屋を巻き込んで
家族がしないうちに遺体から抜き取られる、ということが
横行しているらしい。

ウクライナの医師の中には、
だからこういう闇売買をなくすために
人体組織バンクを作ろう、と主張する声も。

Ukraine tops Europe in organ trafficking
BioEdge, October 28, 2011


これを読んで思い出した――。

この直前の記事で、
「臓器売買で米国で初めての有罪」といっていたけど、
そりゃ固形臓器の話であって、

骨だの腱だの心臓の弁だのと
遺体から人体組織を採りたい放題にとって闇で流していた
すさまじいスキャンダルは、06年にあった。 ↓

バイオ企業と結託した葬儀屋が遺体から組織を採り放題(2009/7/30)
2011.10.31 / Top↑
イスラエルの困窮者の弱みに付け込んで1万ドル程度で腎臓を売らせ、
米国の富裕層に12万ドルで売っていたのはLevy Izhak Rosenbaum。
NY市ブルックリン在住のユダヤ人。

売買仲介を希望する会社員を装ったFBIの“おとり捜査”で 09年7月に逮捕されており、
一昨日の公判でRosenbaumが有罪を認めた、というニュース。

おとり捜査の際に録音された会話では
「あちこちに賄賂をばらまかないといけないからカネはかかる」
「これまで失敗したことはない」
「もう長いことやっている」などと語ったほか、
医者でもないのに腎臓移植に通じており、
ドナーはレシピエントの友人や近親者だと
病院に信じさせるのもお手の物だったとか。

ブルックリンの保険会社に勤める共犯者が
レシピエントの血液をスラエルに送り、
適合するドナーを米国に連れてきて、
米国の病院で摘出手術を受けさせていたという。

ドナーに関する売買可能性のチェックに関しては規制が緩やかで、
病院側にとっても移植手術は儲けが大きいため、
ドナーについては詮索したがらないことが多いという。

1984年の連邦法で臓器売買は違法となっているが
世界中で闇売買は行われている。

ただし逮捕者が有罪を認めて売買の事実が確認されたのは米国で初めて。

国連臓器売買タスクフォースのコ・チェアをつとめる
倫理学者のArt Caplanは、

「国際的には(移植)腎臓の4分の1は闇売買されたものと思われるが
闇売買が米国にまで達していることが判明したのはこの事件が初めて」
(ゴチックはspitzibara。びっくりしたな、もう……)

NYC man pleads guilty to kidney trafficking
AP, October 28, 2011


以下のBioEdgeのサイトによると、
米国でRosenbaumが仲介した腎臓移植を手掛けた病院の中には
ジョンズ・ホプキンスなどの高名な病院も含まれているとのこと。

http://www.bioedge.org/index.php/bioethics/bioethics_article/9812
2011.10.31 / Top↑
USA Todayへの読者の手紙で、「メディケア・メディケイドといった公的保険で介護施設に入っている人がほとんど。こんなだから自分で民間の介護保険に入ろうなんてインセンティブも働かないし、身内の面倒は身内で見ようという気にならないんだよ」と。:オバマ大統領の医療制度改革から、介護保険加入助成に関する内容が削られた背景にあるのは、たぶんこういう主張? こうやって結局介護は家庭に、家庭の女性に押し戻されていく? 自腹で介護者だって看護師だって雇える富裕層以外は?
http://www.usatoday.com/news/opinion/letters/story/2011-10-27/CLASS-Act-health-care/50963024/1

今日の二つのエントリーの関連で、米国の介護オンブズマン制度について。
http://www.ltcombudsman.org/about-ombudsmen
http://www.ltcombudsman.org/about-ombudsmen/becoming-a-volunteer-ombudsman
http://www.dphhs.mt.gov/sltc/services/aging/ltcombudsman.shtml
http://www.ltcop.org/index.htm

「85歳で認知症でもうすぐ死ぬんだったら、糖尿があろうとレモン・パイでもチョコでも食べたければ食べさせてあげればいい」と、生活のリズムも食べたいものも本人の自由を尊重する米国のナーシング・ホーム。:共感。前に書いた米国で認知され始めた「介護の力」という「介護保険情報」の記事でも、「チョコはソラナックスよりも効きますよ」という話があった。
http://www.vcstar.com/news/2011/aug/11/let-them-eat-chocolate-says-advocate-of-change/#ixzz1W4Yo0B1M%20-%20vcstar.com

ガンの家系の人は毎日アスピリンを飲むと予防になるそうな。:アスピリンとスタチンとビタミンDの周辺には、「何が何でも予防医学で売るぞ」という気迫が漂っている。
http://www.guardian.co.uk/science/2011/oct/28/aspirin-cancer-risk-inherited-susceptibility?CMP=EMCGT_281011&

【アスピリン関連エントリー】
健康な人も5種混合薬を毎日飲んで将来の心臓病リスクを半減しよう、って(2009/4/2)
「40過ぎたらガン予防で毎日アスピリンを飲みましょう」って(2009/4/30)

こちらは「ガン予防になるから、みんなで飲もう」論文
2010年10月27日の補遺
2010年12月7日の補遺
2011年1月1日の補遺

それでも09年当たりにはまだ
「明らかな異常もないのに予防で飲むべきではない」という声もあったのに……。
2009年5月30日の補遺
2009年11月4日の補遺

【スタチン関連エントリー】
米ではスタチン8歳からどんどん使おう、と
「8歳からコレステロール薬」にNYTimesが社説
コラムニストがビッグ・ファーマにお勧めする「2010年・新年の誓い」(2009/12/24)
ビッグ・ファーマが当て込む8つの“でっちあげ病”(2010/4/17)
2011年1月29日の補遺(スタチンにアルツハイマー病予防効果)

【ビタミンD関連エントリー】
子どものビタミンD不足サプリで補えと米小児科学会(2008/10/15)
サプリでさんざん儲けた後で「やっぱりビタミンDの摂り過ぎはよくない」って(2010/11/30)


不況で米国の若者たちがワシントンD.C.に流れ込んでいる。:ネットで「日本にはもう希望がないから海外へ逃避しよう」といった論調を見かけるし、野田政権が無能だから日本は景気が悪い、という話にもなるけど、それは日本だけの問題じゃないと思う。地方では仕事がないから都会に出て、そこで奴隷労働みたいなことになる、それ以外に若者たちに生きていく道がない世界――。
http://www.washingtonpost.com/local/census-dc-area-gains-young-adults-in-recession/2011/10/26/gIQA8gijKM_story.html?wpisrc=nl_cuzheads

「障害者自立支援法違憲訴訟 立ち上がった当事者たち」:読んでみたい本。
http://www.seikatsushoin.com/bk/082%20ikensosho.html

米国在住の方が出産直後に出会った米国の育児支援・虐待防止制度。
http://d.hatena.ne.jp/kiyoko26/20110531/1306893391
2011.10.31 / Top↑
ナーシング・ホームで暮らす人の権利は
1987年のNursing Home Reform Lawという連邦法で保障されたもの。

特に個人の尊厳と選択そして自己決定が強調されている。

上記の法に基づいて、ナーシング・ホームだけでなく
アシスティッド・リビングやケア・ホームなど多様な介護施設を対象に
州法や条例を通じて入所者の権利を定めている州もある。

基本理念は、
施設で暮らしている人に施設入所せずに地域で暮らしている人と同じ権利を保障すべく、
入所施設は高いQOLを維持するケアを行わなければならない、というもの。

1987年のNursing Home Reform Lawで保護されている
ナーシング・ホームで暮らす人の権利は、以下。

以下について十分な説明を受ける権利
・利用可能なサービスとそれぞれの値段
・施設の規則や既定。施設で暮らす人の権利を記した文書も含む
・州のオンブズマンと監督機関の住所と電話番号
・州の監査報告とホームの是正計画
・部屋や同室者の変更は前もって
・感覚障害がある人の援助
・点字や外国語を含め、理解可能な言語により説明を受ける権利

不服を申し立てる権利
・報復の不安なくスタッフその他への苦情を申し立て、施設から解決に向け迅速な努力をしてもらう権利
・オンブズマン制度を利用して不服を申し立てる権利
・州の監督機関や認可の権限を持った機関に不服を申し立てる権利

ケアに参加する権利
・十分で適切なケアを受ける権利
・健康状態の変化をすべて説明してもらう権利
・自分のアセスメント、介護・治療・退所の計画に参画する権利
・薬や治療を拒否する権利
・薬物によるまたは物理的な拘束を拒否する権利
・自分のカルテをチェックする権利
・メディケイドまたはメディケア給付のサービスを無料で受ける権利

プライバシーと守秘の権利
・自分が選んだ人と自由に制約のないコミュニケーションを行う。また、その内容が漏らされない権利
・医療と介護を受けるに当たってプライバシーが守られる権利
・健康情報も金銭的な状況を含め個人的な事情も守秘される権利

転所・退所に関わる権利
・転所または退所しない限り介護施設に留まる権利
・転所・退所が必要または適切とされるのは以下の場合
(a)それが入所者の福祉のためになる場合
(b)入所者の健康状態が改善してこれ以上の入所が必要でなくなった場合
(c)他の入所はまたはスタッフの健康と安全を守るために必要な場合
(d)通知したにも関わらず入所者が求めた施設利用や物品、サービスへの費用を払わない場合
・30日前までに理由、実行日、転所・退所先、異議申し立ての権利、さらに州の介護オンブズマンの住所・電話番号を含めて通知される権利
・ナーシング・ホーム側による十分な準備で安全に転所・退所できる権利

尊厳、敬意、自由への権利
・配慮、敬意と尊厳を持って扱われる権利
・心身への虐待、体罰、強制的な隔離、薬物または物理的な拘束を受けることがない権利
・自分で決める権利
・持ち物が守られる権利

以下の人々の訪問を受ける権利
・主治医、州の監督機関やオンブズマン制度から派遣される人
・近親者、友人、その他、入所者が選んだ人
・医療、福祉、法律その他のサービス機関
・入所者には訪問者を拒む権利がある

自分で選択する権利
・何を着て自由な時間をどう過ごすかなど自分のことを自分で決める権利
・ニーズや好みに常識的な形で応えてもらう(reasonable accommodation)権利
・医師を選ぶ権利
・ホーム内外のコミュニティの活動に参加する権利
・入所者会議を組織し参加する権利
・自分の金銭については自分で管理する権利



Residents’ Rights
The National Consumer Voice for Quality Long-Term Care
2011.10.31 / Top↑
10月は米国では「介護施設で暮らす人の権利月間」。
去年までは「介護施設で暮らす人の権利週間」だったのが今年から「月間」になった。

6月にも「介護保険情報」の連載で
ケアホームの劣悪な介護実態を潜入調査で暴いた英国の消費者団体の報告書について
書いたことがあるのだけど、

介護サービス利用者を「消費者」と捉える視点が
くっきりしているのかもしれない。

米国のこの「施設で暮らす人の権利月間(週間)」も
The National Consumer Voice for Quality Long-Term Care
という良質な介護を求める消費者団体が作ったもの。

資料では2005年に初めて行われている。

施設で暮らす人の権利月間(週間)では、
連邦法で保護されている「ナーシング・ホームで暮らす人の権利」を
アシスティッド・リビング施設など多様な施設にも広げて啓発活動が行われ、

各州とも施設で暮らす人の尊厳、選択、自己決定を再確認すると同時に
連邦法で義務付けられたオンズブマン制度の周知徹底を図る努力を行う。

また地域ごとに啓発イベントや
施設で暮らす人たちとオンブズマン、また地域との交流行事などが行われる。

今年のテーマはWelcome Home: Creating Connections Between Residents and the Community.

介護施設に入所している人も地域のコミュニティの一員、
施設で暮らす人たちと地域のつながりを作ろう、と。

主な取り組みとしては、
全国の介護施設で入所者によるオープン・ハウス開催を呼び掛けるほか、

・入所者の声の募集。
 予め以下の4つの質問が提示されて
6月11日の締め切りまでに全国の介護施設で暮らす人からの回答が寄せられている。

1. 地域での子どもの頃のお気に入りの思い出はなんですか?
2. 子どもの頃に好きだった地域のイベントは何でしたか?
3. 地域の一員であることは、あなたにとって?
4. 地域の人があなたの住む施設を訪問することは
あなたにとってどういう意味で大切ですか?

寄せられた声はこちらで読めます。

・介護オンブズマン制度の強化
オンブズマンに月間の参加を呼び掛け、
施設で暮らす人やスタッフとの関係作りを働き掛ける。

・研修や資料提供
施設で暮らす人とスタッフの信頼関係づくり
地域住民と施設との関係作り

ちなみに去年の「施設で暮らす人の権利週間」のテーマは
Defining Dining: It’s About Me (食事:食べるのは私。選ぶのも決めるのも私)

食事について選ぶことができるのは施設で暮らす人の権利であることを確認し、
食を通じて、選択と自己決定の権利や、入所者の声に耳を傾けることの大切さを
訴えていこうとするものだった。


なお、これとは別に5月には「ナーシング・ホーム週間」がある。
以下の記事によると、こちらは1967年に
the American Health Care Associationが作ったもの ↓
http://www.emmetsburgnews.com/page/content.detail/id/508820/Celebrate-National-Nursing-Home-Week.html?nav=5001


連邦法で保護された「ナーシング・ホームで暮らす人の権利」については
次のエントリーで全訳してみました。
2011.10.31 / Top↑
去年スコットランドで自殺幇助合法化法案を提出したMacDonald議員が、次の提出に向けて動き出したみたい。去年否決された法案には当初、生きるのが嫌だという非自立の身体障害者も含まれていた。詳しくはこちらから→http://blogs.yahoo.co.jp/spitzibara/62233363.html
http://www.heraldscotland.com/news/politics/macdonald-moves-on-right-to-die-1.1131223

Wesley Smithが「ヨーロッパで安楽死広がる」という記事で、インパクトの強いエピソードを紹介している。自殺幇助合法化反対の論客として有名なSmithがどこかで講演したところ、質疑の際に会場から精神障害があるという女性が立ちあがって、自分にも自殺する権利があると主張した。すると、会場の約半数から拍手が沸き起こったという。10年前なら、死にたいという精神障害者の自殺願望が指示されることは考えられなかったんでは? とSmith. 彼は9月の自殺予防の日にも、自殺は防ぐべきものだったはずなのに、と同じ趣旨の記事をどこかに書いていた。
http://www.nationalreview.com/articles/281303/euthanasia-spreads-europe-wesley-j-smith

今日の2つのエントリーの最後のあたりで触れた、中国とゲイツ財団が「途上国への医療と農業支援」で提携関連ニュースの追加。タイトルは「ビル・ゲイツ、中国を支援するドアを開く」で、どうやら人だけじゃなく動物向けワクチンや品種改良製品や技術を中国で開発して、それを途上国へ持って行くのにゲイツ財団の途上国支援の枠組みを中国に利用させてあげて、その見返りに中国が金を出す……というカラクリ?
http://english.peopledaily.com.cn/90778/7627762.html

これからEラーニングの時代になると、大学はもはや絶滅危惧種、デジタル教育に適用するか死滅するかしか選択の道はない、とビル・ゲイツ。
http://www.theaustralian.com.au/higher-education/universities-must-adapt-or-die-in-the-e-learning-world/story-e6frgcjx-1226176625274

日本語記事。米国の最富裕層の収入、約30年で3倍に増加。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20111026-00000173-reu-bus_all

上に関連して、引っ張っておきたいのが8月1日の補遺から

ビル・ゲイツ氏の総資産、ついに米国の国庫を超える。:米国の国庫は家庭で考えてみればいわば「生活 費」でその中から軍事や経済政策や社会保障や、もろもろ賄わなければならないのに対して、ゲイツ氏の個人資産はいわば「お父さんのお小遣い」なのだから、 金額が同じ程度なら、それはゲイツの方が可処分率も自由に使える金額もはるかに大きいことになるのでは……? それに、それは、もしもゲイツ氏がその気に なれば、米軍をはるかにしのぐ私兵を持つことも可能だということでもある? あー、でも、それ、きっと、もう持ってるんじゃないのかな。軍隊という形では なく、IT技術で他国や他国民を侵害し、諜報活動を行い、コントロールする技術を持った軍団という形で。
http://www.bizjournals.com/sanjose/news/2011/07/30/now-bill-gates-has-more-cash-than-us.html


で、そのゲイツ氏、自分のマイクロソフト株をせっせとゲイツ財団に移している。:名前の異なる2つの財布。一人の人の。
http://socialbarrel.com/bill-gates-sells-5mn-microsoft-stocks/12256/

日本語記事。29日に再び世界一斉デモ、「ロビン・フッド税」導入を要求。
http://jp.reuters.com/article/financialCrisis/idJPJAPAN-23790220111025?rpc=122

ProPublicaがオキュパイ運動について書いているんだけど、読めてない。
http://www.propublica.org/article/putting-the-global-occupy-movement-in-context

NYT。中国がメディアとインターネットの規制強化へ。
China Reins in Entertainment and Blogging: Communist leaders in China are proposing new limits on media and Internet freedoms that include some of the most restrictive measures in years.

受精卵に人格を認める憲法改正の住民投票、ミシシッピ州で11月8日に。その他、フロリダやオハイオなど6州で同様の動き。これがEUみたいなES細胞研究の規制の話としてではなくて、中絶や避妊の規制の話としてNYTに。
http://www.nytimes.com/2011/10/26/us/politics/personhood-amendments-would-ban-nearly-all-abortions.html?_r=2&nl=todaysheadlines&emc=tha23

乳がん検診のマンモグラフに「利益よりも害の方が大きい」との調査結果が出ている。
http://www.guardian.co.uk/society/2011/oct/26/breast-cancer-screening-review-launched?CMP=EMCGT_261011&

ニューヨーク市警のお巡りさん8人を銃の横流しで起訴。
http://www.nytimes.com/2011/10/26/nyregion/new-york-officers-accused-of-smuggling-guns.html?src=mv&ref=nyregion

歌手のマドンナのお兄さんって、橋の下で暮らすホームレスなんだとか。
http://news.yahoo.com/blogs/abc-blogs/madonna-brother-why-am-homeless-142358745.html
2011.10.27 / Top↑
暇にまかせて人さまのツイッターをあちこち覗いて遊んでいたら
ふと目についたのが、以下のBluerose_smell さんの23日のツイート

経団連会長は、遺伝子組み換え種子モンサントと業務提携、放射能除去薬メジフィジックス出資の住友化学会長米倉氏、経済同友会代表幹事はワクチンで有名なメルクと深い関係にある武田薬品社長長谷川氏。TPPで、医薬品緩和市場開放でボロ儲けの2大経済団体。



モンサントにメルク…… え? それって……。

        
まず、
① モンサントについて拙ブログで拾った情報を整理してみると、

ゲイツ財団がインドで目論んでいるのはワクチン普及だけでなくGM農業改革も(2011/4/16)
「アグリビジネス」の後ろにはワクチン推進と同じ構図が見える(2011/10/5)
“大型ハイテクGM強欲ひとでなし農業”を巡る、ゲイツ財団、モンサント、米国政府、AGRAの繋がり(2011/10/27)


② 日本メジフィジックスについては知らなったので、
ちょっと検索してみたら背景にいるのはゼネラル・エレクトリック社。

当たり前ながら、
Cascadeという個人投資会社を持っているビル・ゲイツはGEの株主さんだし、
ここ数年、ゲイツの投資の師匠をやってるウォーレン・バフェットも同様。

Bill Gates’Highest-Yielding Stocks
Stockpickr, November 9, 2008
A Sneak Peak Into the World’s Richest Portfolios(AMX, NYT, KO, GS, GE, MSFT, MCD, XOM, WFC, AXP, PG, GLD, KGC, AU, BRK.A, BRK.B)
tickerspy, March 11, 2011

2011年3月25日の補遺で拾ったように
3月にはゲイツ夫妻とバフェットは一緒に訪印している。

インドといえば、
ゲイツ財団が仕掛けるワクチンや避妊や農業のイノべージョンのグラウンド。
そこでバフェットは「慈善に回すのはヤバい金でも全然構わない」と。

バフェットは数年前に個人所有の株をごっそりゲイツ財団に差し出し、それ以後、
2人はせっせとゲイツ財団に世界中の金持ちのゼニを結集させている。

それは、つまり世界人口の1%のスーパーリッチたちと
そこに繋がる先進国の政府が、“慈善”や“途上国支援”という名目を隠れ蓑に
自分たちの国民を見殺しにし、途上国の人々を餌食にしながら、カネを回し、
さらに自分たちが肥え太るべくグローバルひとでなし経済を維持していくために
ゲイツ財団を見てくれの良い“財布”として使おうと決めた、
ということなのでは?

その“慈善団体”は、2009年段階で既に
WHOよりもおカネ持ちだったんだけど……。


③ 次にメルクと仲良しの武田製薬について。

まず、ゲイツ財団とメルクとのつながりについて
分かりやすいのは、こちら ↓

ゲイツ財団はやっぱりビッグ・ファーマの株主さん(2011/3/28)

ちょっと面倒でもよかったら、こういうところから関連リンクへ ↓

ゲイツ財団がインドで目論んでいるのはワクチン普及だけでなくGM農業改革も(2011/4/16)
HPVワクチン、男児にも定期接種が望ましい、とCDC(2011/10/26)


で、武田製薬には今年5月に、
それまでゲイツ財団のグローバル・ヘルス部門のトップだった山田氏が、役員として着任している。

すると、その前後から、日本でも
GAVIやゲイツ財団との「途上国ワクチン支援」での提携が目に見えて加速。

この辺りのことは以下のエントリーで概観している ↓
(タイトルにあるように山田氏の後任はノバルティスからの引き抜き)

ゲイツ財団、ビッグ・ファーマ・ノバルティス役員の引き抜きへ(2011/9/12)

このエントリーの最後で私は以下のように書いた。
(実際に行ってもらうとリンクも)

ゲイツ財団が世界の科学とテクノとグローバル経済に及ぼす影響力(支配力?)は

まず、身体を巡る血液のように世界中の研究機関に浸透した研究助成のカネを通じて、
次に、上記のように世界中の国々や国際機関に送りこまれた「元職員」を通じて、
そして、ウォーレン・バフェットと2人でタグを組んでの投資行動を通じて、
またカネを通じての世界中のメディア・コントロールと、
Lancetを始めとする研究メディアのコントロール……

などなどを通じて、数年間で
あっという間に世界中に広がり強大化してきている。

それは、まるで、
世界的大不況が広がり、各国政府がカネと政治力を失っていくにつれ、
逆に、ごく少数に極端に集中していく富とその力とが
ゲイツ財団を中心に集中・強大化・組織化されていくかのようで。



これまではその戦略のキーワードは
ワクチンと母子保健を中心にした「医療」だったけど、

いまやそこに「農業」が追加され、これからのキーワードは「医療と農業」――。


今日の直前エントリーの最後に追記したように、
中国政府が途上国の医療と農業のイノベーションでゲイツ財団と提携調印とのニュースが出てきているし、

25日の補遺で拾ってたんだけど、
もう1つ、「これを聞いて驚くなよ……」ともったいぶった前置きをしたいようなニュースもある。

なんと
ゲイツとバフェット、「貧しい農民を支援した功績」により24日、
World Food Program USA’s George McGovern Leadership Awardなる賞を受賞している。

まるで来週のG20でのゲイツ演説に向け、
彼の“慈善家”ぶりに、より強力なスポットライトを当てるかのように、ね。

ビル・ゲイツは受賞の言葉として、
途上国の医療と農業の支援にゼニを投じることに
不況だからと言って金持ち国はひるんではならない……とか
「貧しい農民への支援はこれまでになく重要になっている」などと発言。

Bill Gates Accepts Hunger Award, Says Focus on Poor Farmers “More Important Than Ever”
PR Newswire, October 24, 2011


誰も言わないけど、TPPって実は、
こういう大きな構図の中の、ほんの小さな一部の話なんでは――?
2011.10.27 / Top↑
ゲイツ財団とモンサントのアグリ・ビジネスの繋がりについて
これまでに以下の2つのエントリーを書いています。

ゲイツ財団がインドで目論んでいるのはワクチン普及だけでなくGM農業改革も(2011/4/16)
「アグリビジネス」の後ろにはワクチン推進と同じ構図が見える(2011/10/5)

モンサントについては、
最近みつけた、とても詳しく分かりやすいブログ記事がこちらの ↓

モンサント社は何をしようとしているのか
yamachanblog, 2011.06.22

             ―――――

今回とりあげる以下のTriple Punditの記事は
上の2つのエントリーの間に当たる9月16日に補遺で拾ったものです。

当時はさほど重要とは分からず補遺に放置していたのですが、
日本のTPPに関連して気になる情報に接し(それについては次のエントリーで)
いよいよこの記事の意味するところが大きいと思われるので、とりまとめてみます。


冒頭で提起されているのは以下の事実。

ゲイツ財団は最近モンサント、カーギルなどアグリ=バイオテク企業と手を組んで
例えばウイルス抵抗性を持つキャッサバ(イモの一種?)研究に1190万ドルなど、
遺伝子組み換えGM研究に資金を投じている。

GMキャッサバの研究については日本モンサントのサイトに ↓
http://www.monsanto.co.jp/news/global/crops/vegetable.html#a07
http://www.monsanto.co.jp/news/global/crops/vegetable.html#a19

この後、記事では非常に興味深い4つの指摘がされています。

① ゲイツ財団はUSAIDとも国務省とも強力に繋がっている。
(当ブログでもUNAIDのトップは元ゲイツ財団職員だとの情報を
冒頭にリンクした4月16日のエントリーで拾っています)

② 国務省がモンサントの利益推進エージェントとなっていることは
ウィキリークスに暴かれたばかり。

③ アフリカ緑の革命同盟(AGRA)の幹部の多くはモンサントからの天下り。

④ ゲイツ財団はモンサントの50万株を2300万ドルで購入。


そもそも2008年の段階でFAO(国連食糧農業機関)から
持続可能性が高くアフリカの農民にとって本当の支援になるのはオーガニック農法だとの
報告が出ているし、

最近では、モンサントのGM作物によって逆に害虫の方が強化・進化、
モンサントの大ヒット農薬であるラウンドアップにも耐性を持つ雑草も出ているなどの
指摘も相次いで、

Guardian紙は去年9月29日に
Why is the Gates foundation investing in GM giant Monsanto?
(なぜゲイツ財団はGM最大手モンサントに投資するのか?)という記事の中で、
以下のように書いている。

政府レベルでも地方レベルでも出ているのは、
アフリカ諸国には適さない米国型の大規模ハイテク農法が
「世界の飢餓対策」の名のもとに世界で最も貧しい農民に押し付けられるようなことは
あってはならない、との深刻な懸念の声だ。


このTriple Pundit記事の著者が最後に誰か賢い人の言葉として
ものすごくいいことを言っている。

A really wise person once said that we cannot expect to solve the world’s problems by using the same thinking that created them.

前にだれか賢い人が言っていたように、
世界の問題は、その問題を創り出したのと同じ考え方では解決できないのだ。
GM技術は、まさにその同じ考え方で問題解決を図ろうとするもの以外の何でもない。



ただ、この人、いまいち分かってないのよね……と思うのは
それに続いて、こう書いているのね。

バイオテク農業企業は、手段を選ばず自らのテクノロジーを広く推し進めている。
ゲイツ財団のような団体がそうした企業を支援することはない。



――だから、“支援”しているんじゃないだってば。
この人、ワクチンで起こっていることを知らないのかな。

The Gates Foundation Invests in GMO Research in Africa
Triple Pundit, September 14, 2011


今日は、以下のようなニュースも出てきていて、
中国とゲイツ財団とが「途上国での新たな医療と農業のイノベーション」で提携調印 ↓

China links up with Gates to fund aid projects
AFP, October 27, 2011


ビル・ゲイツはワクチンでやれたことを農業でもやれると読んで、
いよいよ本格的に仕掛けて出ている……と、私には見えるけど……。
2011.10.27 / Top↑
米国 CDC (疾病予防管理センター)の予防接種委員会が
11歳から12歳の男児にHPVワクチン・ガーダシルの定期接種を推奨。

これまで言われてきた性器イボのみならず、
性行為によってHPV感染する恐れのある口腔、陰茎、肛門のガンが予防できるし、

男性でこれらを予防することが出来れば
間接的に女性の予防にも資することができるから。

13歳から21歳も、3回ちゃんと受けるように、と。

HPV Vaccine For 11-12 Year Old Boys Approved by CDC Advisory Committee, USA
MNT, October 25, 2011/10/26

Boys should get HPV vaccine too, panel says
AP, October 25, 2011

Routine HPV vaccination recommended for boys
WP, October 26, 2011


上にリンクした以外にも多くの記事が出てきていますが、
ちょっと面白いと思うのは、記事によって書き方が分かれていること。

それから、いくつかの記事に、
「ガーダシルはもともと女児に3回の接種が奨励されているものの
期待されたほどには接種率が伸びていないことから2年前に男児に向けても認可された」
という内容の一節が含まれていること。

09年にFDAが性器イボ予防効果で男児に向けにガーダシルを認可した際にも
自社の余りにえげつないマーケティング戦略が却って疑念を呼び、
女児への接種が伸びないことにアテが外れたメルク社が
挽回のために男児をターゲットにしているとの憶測がしきりに飛びました。

それについては、去年5月にシカゴ・トリビューンの記事を
以下のエントリーで紹介している通り。↓
HPVワクチン、今度は男児狙いときて親の警戒またアップ(2010/5/13)

その情報を含め、ガーダシルとメルク社の戦略については約1年前に
「米国のワクチン不信と、そこから見えてくるもの」の中で
以下のようにとりまとめて書いています。

HPVワクチン、ガーダシル

同様に、ここ数年、ビッグ・ファーマの動きとしてメディアが注目してきたのが、子宮がんの原因となるヒト・パピローマ・ウイルス(HPV)に有効とされる ワクチン、ガーダシルを巡る売り込みロビーの激しさである。製造元のメルク社にはブッシュ政権要人との強力なコネクションが取りざたされており、FDAの 素早い認可、治験の不十分、長期的な効果や安全性の未確認、特に認可からの2年間で30人を超える死者を出した、けいれん、マヒ、卒倒ほかの副作用に関す る情報公開などに、疑問の声が続いている。また不妊を引き起こす成分が含まれているとの指摘もある。

米国疾病予防センター(CDC)は現在、HPVワクチンを含めて17種類のワクチンを推奨しているが、義務付けの範囲は各州の判断となるため、製薬会社は 州政府に対して激しい売り込みロビーを仕掛ける。2007年にはテキサス州知事が小・中学校に通う条件としてHPVワクチン接種を義務付けようとしたが、 義務付けを提案した州政府の女性委員会にメルク社の関係者がいる事実が明らかとなり、議会によって知事の動きが封じられる事件もあった。

結局、通学条件にするよう州に強引に働きかけるメルク社のロビー戦略は却って親の不信を深める結果となり、同社は戦略を変更。しかし当初の見込みほど女児 へのガーダシル接種率は伸びなかった。メルク社は、男性の性器イボにも有効だとして、08年12月にFDAに男児対象のガーダシル認可を申請し、去年10 月に認められた。

(中略)

ちなみに、HPVワクチンでライバル社に押され気味のメルク社が、今年1月、50億ドル規模のワクチン部門責任者として迎えたのは、ブッシュ政権の終焉と共に職を辞したCDCの前所長、ジュリー・ガーバディング氏――。



メルク社のガーダシルはグラクソ・スミス・クライン社のサーバリクスに負けたと
当初はもっぱら言われていたのですが、

やはり去年1月のガーバディング氏の天下りあたりから
俄然、猛烈な勢いの巻き返しが始まったものでしょうか。

日本でも09年に認可されたのはサーバリクスでしたが、
つい先ごろ、なんとも杜撰な議論によってガーダシルが追加導入されました ↓

日本でもガーダシル導入へ、厚労省当該部会の議論の怪 1(2011/8/5)
日本でもガーダシル導入へ、厚労省当該部会の議論の怪 2(2011/8/5)

この勢いで行くと、日本でも間もなく
「男児にもHPVを、全額助成で」キャンペーンが始まるかも?

          -----

なお、メルク社が
HPVワクチンをウガンダに持っていこうとしていることについては、こちらに ↓

Lancet最新号はゲイツ特集か:HIVに死産にHPVワクチン、それからこれはコワいぞ「グローバル治験条件緩和」(2011/5/9)

途上国にワクチンを届けるとなると、
そこは「途上国支援」の話になるわけですが、
そういう話で見逃してはならない情報が、こちらに ↓

ゲイツ財団はやっぱりビッグ・ファーマの株主さん(2011/3/28)
やっぱり不思議な「ワクチン債」、ますます怪しい「途上国へワクチンを」(2011/9/4)


【HIVワクチン関連エントリー】
CDCが11,12歳に髄膜炎、百日咳、子宮がんのワクチン接種を呼びかけ(2008/9/2)
英国でHPVワクチン義務化、親の反発必至(2008/9/5)
今度は乳がん予防のワクチンだと(2008/9/15)
ノーベル賞選考過程にHPVワクチン特許持つアストラゼネカ関与の疑惑(2008/12/18)
CA州で女児4人に1人がHPVワクチンを接種(2009/2/21)
HPVワクチン普及目的で保健当局が学校に女児の個人情報を要求(NZ)(2009/4/3)
3医学会がHPVワクチン製造元の資金で学会員にワクチンを推奨(2009/8/19)
2009年8月21日の補遺(Washington DCの学校で事実上義務化との情報あり)
HPVワクチン接種後に13歳女児が死亡(英)(2009/9/29)
2009年12月24日の補遺(CDC前センター長がMerk社のワクチン部門責任者として天下り)
米国で「ワクチン打たないなら診てやらない」と医師ら(2011/7/6)
米国のHPVワクチンを巡る州ごとの法制化実態(2011/9/14)

【日本のHPVワクチン施策関連エントリー】
「HPVワクチン」検索結果の怪(2008/9/2)
朝日のワクチン記事にも「米国では」の印籠(2009/8/8)
日本の「ワクチン産業ビジョンの要点」の怪(2011/3/8)
子宮頸がんワクチンでの失神は「ドキドキするから」?(2011/8/5)
日本初、HPVワクチン接種後に14歳の中学生が死亡(2011/9/21)
2011.10.27 / Top↑
カナダ・ケベック州の自殺幇助委員会、緩和ケアの充実を勧告へ。:カナダはこのところ自殺幇助合法化で動きが活発。特にケベックだけど、じゃぁ、この辺でトーンダウンかな。詳細は以下に。
http://www.winnipegfreepress.com/canada/breakingnews/committee-on-assisted-suicide-likely-to-recommend-more-palliative-care-132495373.html

【関連エントリー】
カナダの議会でも自殺幇助合法化法案、9月に審議(2009/7/10)
カナダ・ケベック州医師会が自殺幇助合法化を提言(2009/7/17)
図書館がDr. Death ワークショップへの場所提供を拒否(カナダ)(2009/9/24)
カナダの議会で自殺幇助合法化法案が審議入り(2009/10/2)
自殺幇助合法化法案が出ているカナダで「終末期の意思決定」検討する専門家委員会(2009/11/7)
カナダ議会、自殺幇助合法化法案を否決(2010/4/22)
カナダの法学者「自殺幇助合法化は緩和ケアが平等に保障されてから」(2011/2/5)
カナダで自殺幇助合法化を求め市民団体が訴訟(2011/4/27)


ブラジルで25年も前に、公立病院でまだ脳死になっていない4人の患者から腎臓をとりだして富裕層を対象にした民間病院に運び、移植に使ったとして、3人の医師に有罪判決。17年半の禁固刑。ただし医師の1人は既に死亡。
http://www.npr.org/templates/story/story.php?storyId=141605181

10代の頃から定期的に献血をしていて、25歳の時に誰かの命を救えるものならと考えて腎臓ドナーになったという人の手記がGuardianに。記事の末尾にドナー希望の人に向けたNHSの連絡先が記されている。
http://www.guardian.co.uk/lifeandstyle/2011/oct/24/i-gave-stranger-my-kidney?CMP=EMCGT_251011&

ビル・ゲイツがG20を前に、金持ち国は途上国の医療と農業支援にゼニを投じることをやめてはならない、と。:「医療」と「農業」というところがミソだね。
http://www.publicbroadcasting.net/wamc/news.newsmain/article/0/0/1867063/World.News/Bill.Gates.to.urge.G20.not.turn.backs.on.poor

ビル・ゲイツが途上国の飢餓と貧困に苦しむ貧しい農夫への支援で、なんとかいう賞を受賞。「貧しい農夫への支援、これまで以上に重要に」だと。:よー言うよ、ったく。モンサントと組んでインドの貧しい農夫を自殺に追い込んではボロ儲けしているくせに。(詳細は上の記事のリンクに)
http://www.prnewswire.com/news-releases/bill-gates-accepts-hunger-award-says-focus-on-poor-farmers-more-important-than-ever-132474768.html

NYTの社説が最近何かと話題になっているマラリア・ワクチン研究を取り上げている。
Two Cheers for the Malaria Vaccine: A vaccine to protect children against malaria has shown promising results in a clinical trial. But there are big hurdles still to surmount.

豪首相がポリオ撲滅でゲイツ財団と提携する、と。
http://www.abc.net.au/worldtoday/content/2011/s3346425.htm

バイオ・テロへの備えとしての炭素菌ワクチンの子どもへの接種の安全性研究を巡り、米国で論争。
http://www.washingtonpost.com/national/health-science/possible-study-of-anthrax-vaccines-effectiveness-in-children-stirs-debate/2011/10/13/gIQAFWLdDM_story.html?wpisrc=nl_cuzheads

Occupy Chicagoに集結した人たちが公園からの退去命令に従わず、130人の逮捕者。Cincinnatiでも11人。
http://www.washingtonpost.com/national/at-least-100-arrests-as-occupy-chicago-protesters-remain-in-park-defying-order-to-leave/2011/10/23/gIQA2A8p8L_story.html?wpisrc=nl_cuzheads

車いす客を乗車拒否 草津のバス会社「安全確保できぬ」:ミュウが小さい頃、中華料理店に連れて行って「ウチは熱いものを運ぶので危ないから車いすはお断り。どうしても来たかったら、平日の3時から5時の間に来い。正月と盆はダメだよ」と言われ、憤怒に我を忘れたのが、私が障害児の親としての最初の「闘い」となった。その時のことを思い出した。あれから時代も変わったはずだったのに、時代がまた逆行している気配がどんどん濃厚になる。
http://www.kyoto-np.co.jp/top/article/20111022000014

ダウン症の男子生徒が高校のホームカミング・キングに。
http://www.washingtonpost.com/blogs/maryland-schools-insider/post/student-with-down-syndrome-crowned-homecoming-king/2011/10/23/gIQAbdEe9L_blog.html?wpisrc=nl_cuzheads

日本。職場のメンタルヘルス対策義務化=臨時国会で法改正へ―厚労省:まともな精神状態ではいられないような働き方をする以外に生きていくすべがなく、そういう働き方を社員に強いるしか企業だって生き残ることができない社会をそのままに、メンタルヘルスが企業の責任に押しかぶされていくのも変な話。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20111024-00000139-jij-pol

日本語記事。米国の学校の食い物にされる中国富裕家庭の子女たち―米メディア。
http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=55378

英国Wales議会で、子どものお尻叩きなどに法廷で「合法的な体罰」とするディフェンスを禁じる法案。
http://www.guardian.co.uk/uk/2011/oct/19/smacking-children-ban-closer-wales?CMP=EMCGT_201011&

日本。後見人ついた人の財産、銀行で管理の制度開始へ。
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20111024-OYT1T00972.htm

妊娠中に環境ホルモンに晒された女児では幼児期に問題行動が起こりやすい?
http://www.washingtonpost.com/business/economy/study-links-bpa-exposure-in-womb-to-behavior-problems-in-toddler-girls/2011/10/24/gIQA6ihRDM_story.html?wpisrc=nl_cuzheads
2011.10.27 / Top↑
EUが1998年に出した生命技術に関する指針では、
商業的搾取が道徳に反する、特に“ヒト胚を産業または商業目的に利用した”ものには
特許は認められない、と規定する一方で、

当時はまだ技術そのものが開発されていなかったために
ヒト胚の定義はない。

また欧州議会も2005年に決議において以下のように明記し、
胚性幹細胞を創り出すことにはその廃棄が前提されている以上、
ヒト胚を利用した研究に特許は認められないとしている。

"the creation of human embryonic stem cells implies the destruction of human embryos and... therefore the patenting of procedures involving human embryonic stem cells or cells that are grown from human embryonic stem cells is a violation".


それに対して、ドイツの科学者 Oliver Brustle が訴訟を起こし、
受胎から14日後からのものが胚であると定義したうえで
自分が研究に用いる胚は受胎から5ないし6日後のものなので
これらの規定の対象外である、と主張していた。

この度、欧州司法裁判所は
ヒトに発達していくプロセスが開始される以上、
受胎した瞬間からヒト胚とみなされるべきである、とヒト胚を定義し、

98年の指針から以下の部分を引用して、
人体試料( human biological material)は尊厳を持って扱われるべきである、と判断した。

Although it seeks to promote investment in the field of biotechnology, use of biological material originating from humans must be consistent with regard for fundamental rights and, in particular, the dignity of the person.

バイオテクノロジーの分野への投資を推進する必要はあるものの、
ヒトに由来する身体試料には基本的権利と、特に人としての尊厳の尊重が必要である。



この判決によって、EUでの研究が出来なくなるわけではないが、
EU内では特許が取れないため、研究者らは成果を商業ベースに載せることができない。

科学者らからは、
せっせと基礎研究ばかりをやっては成果を外国に持っていかれ、
EUは外国での成果を逆輸入するしかないじゃないか、と怒りの声が上がる一方で、

ドイツ医師会会長は
生命を商業的思惑から守るものとして、この判決を歓迎。

成人幹細胞と万能幹細胞なら倫理的に許容範囲だ、と。

European Court of Justice bans embryo patents
BioEdge, October 22, 2011


英米の手段を問わない「科学とテクノの簡単解決バンザイ文化」と
その背景にへばりついた巨大利権をめぐる熾烈な国際科学研究競争がある以上、

こういう判決は「国際競争力を損ない」「国益を損なう」ものだ、
という見方があるのは十分に想像できるし、

それだけにEUって面白いなぁ……と。

で、英国はこの判決を受けてどうするんだろう……?

             -----

この件について、BioEdgeがOxfordのAnscombe Bioethics Centerのディレクター
Dr. David Albert Jonesにインタビューしている ↓
(私は読めていません)

http://www.bioedge.org/index.php/bioethics/bioethics_article/9801?utm_source=twitterfeed&utm_medium=twitter


ざっと自分のブログ内を検索してみたら、
去年8月24日の補遺に、米国でも以下のような話があった。
これは特許ではなくて、ブッシュ時代に散々モメた連邦政府の研究助成の話だけど。

連邦裁判所が、ヒト胚を壊す研究への政府の助成は法律違反、と判断。どうする、Obama政権?
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2010/08/23/AR2010082303448.html?wpisrc=nl_cuzhead
http://www.nytimes.com/2010/08/24/health/policy/24stem.html?_r=1&th&emc=th



【関連エントリー】
NHKの山中教授インタビューを機に、英国のキメラ胚解禁について再掲(2010/9/18)
早くも米国で胚性幹細胞による脊髄治療実験にGO(2009/1/24)
ES細胞治療受けた少年に脳腫瘍(2009/2/18)
Savulescuの相方Wilkinsonは2007年に「ヒト・クローン胚作れ」と(2011/4/28)


【”たぶん同じ路線”の話エントリー】
科学とテクノは法の束縛から自由になろうと、駄々をこね始めている?(2009/7/11)
事業仕分けの科学研究予算問題から考えること(2009/12/12)
「遺伝子に特許やるな」という米国の訴訟(2010/2/8)
2011.10.27 / Top↑
「家族介護の9つの秘訣」に続き、再びAARPのサイトから――

優しくて頑張り過ぎちゃった介護者に訪れる“燃え尽き症候群”。
こんな兆しが見られたら、あなたも“燃え尽き”かけているかも。


① 介護について話す時に「いつだって」「ゼッタイに」と言っている。

「母さんを施設に入れるなんて私はゼッタイにしないから」とか
「友達とランチにも行けない。あの子の食事介助はいつだって私なんだから」とか……。

② 何度も断っているうちに、いつのまにか
友達から遊びに行く誘いの電話がかかってこなくなった。

③ 「あ~、楽しかったなぁ」という思いをしたのはいつのことだったか、思い出せない。

④ 介護に関することはあなたがすべてやるのが当たり前だと、親戚中が考えている。
(ただし夫婦介護の場合はこれは文字どおりにはあてはめられないかも)

⑤ 太ってきた。体調が悪い。

⑥ 最後に旅行に行ったのは、もう思い出せないほど昔のこと。

⑦ 誰と何を話していても、いつのまにか介護の話になってしまう。

⑧ 趣味がなくなってしまった。

⑨ 朝まで通しで眠ることができない。

これには介護している人のニーズに応えるため、と
自分がストレスや心配事で眠れないため、と2つの理由が考えられますが、
後者は燃え尽き症候群の予兆かも。

⑩ 明日、もう目を覚ましたくない、と考える。

介護をしていて、特に苦しい危機的状況のさなかでは、
こういう思いになることは誰にでもありますが
危機が過ぎ去ってもこんなふうに感じる時は
燃え尽きかけているのかも。

10 Signs of Caring Too Much
AARP from Caring.com


それぞれの項目の後に
「そうなるのは、あなたがこうだからです」
「そうならないために、こういうふうにしてみましょう」
という解説やアドバイスが書かれているのですが、

その部分を読んでいると、
かつて「育児相談」とかで「障害児の母親」の悩みを聞くと、
「それはお母さんがこうしないから子どもがこうなるのです」
「お母さんさえああすれば、子どもとはこうなるもの」と、
我が子のオムツさえ替えたこともなさそうなジイサンたちに
元校長だとかいうだけで高いところからエラソーな説教をされ、
「それはお母さんが悪い。もっと努力しなさい」というところに話を落とされて、
結局、相談する前よりもはるかに気分が悪くなって終わる……という
実に不愉快な体験を思い出してしまった。

ここでは介護体験がない人が書いているわけでも
高いところから訓を垂れているわけでもないのだろうけど、
“自己責任”で介護者を「責める」トーンがほんのわずかに感じられるので
この際、はぶきました。

大事なのは
このチェックリストに当てはまったら、
「あ、自分、燃え尽きかけているのかな」と、
まずは立ち止まって考えてみることだと思う。

そこで、
燃え尽きに向かわないために自分はどうすべきだったかを
点検したり反省するんじゃなくて(そんなのはハッピーな状態に戻れてからでいい)

これ以上、燃え尽きに向かって進まないために
ちょっと介護の力と手を抜いてみること、
どこで抜けるか考えてみること。

私の好きな“身勝手な豚”さんは、
自分が介護の中で一番「イヤだ」と感じていることは何かを考えてみろ、と言っています。

そして、その一番イヤな部分で、ほんのちょっと手を抜いてみる。
ほんのちょっと手を抜いたらどうなるか、様子を見てみたらいい、
手を抜いても、大したことは起こらないはず。
そしたら、さらにもうちょっと抜いてみる。

そんなふうに、少しずつ手を抜いていこうね、と言っています。

詳細はこちらに ↓
「“身勝手な豚”の介護ガイド 4: 「階段から突き落としてしまいたい」で止まるために」(2011/7/23)


それから“身勝手な豚”さんの、燃え尽きないための黄金律は
Break, or you break。

ブレイク・レスパイトして休憩するか、ブレイクしてあなたが壊れるか――。
2011.10.24 / Top↑
遺伝子操作をした豚からの臓器移植研究はこの10年で目覚ましく進歩している。Xenotransplantationというんだそうな。Xenophobiaって、外国人嫌悪のことだから、異種間の臓器移植という意味なのね。なんか気持ちの悪い単語だなぁ……。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/236387.php

NYT。統合失調症を患う法学教授の手記がヒットして、他の患者さんたちにも病気と付き合いながら生活するノウハウの研究に手を上げて、と。
Memoir About Schizophrenia Spurs Others to Come Forward: The success of a book by Elyn R. Saks, a law professor, has encouraged others with schizophrenia to volunteer for studies on how they cope.

人身売買で英国に連れてこられ、保護されたはずの子ども達が保護施設から消える、という現象が英国で続いている。今回も24人が消えた。12歳から17歳。
http://www.guardian.co.uk/law/2011/oct/18/children-lost-human-trafficking?CMP=EMCGT_191011&

【関連】2008年にも「空港や大きな港の周辺で施設や里親過程で保護されていたはずの外国人の子ども達が400人以上も姿を消していることが判明」している。以下のエントリーの⑨ ↓
子ども達がこんなにも不幸な時代(2008/5/30)

11月は米国の介護啓発月間。
http://www.prnewswire.com/news-releases/november-is-long-term-care-awareness-month-a-good-time-for-local-groups-to-schedule-informational-seminars-132180503.html

ゲイツ財団がフィリピンでもHIVキャンペーンを後押し。:ゲイツ財団は中国のHIVキャンペーンではこんなことしてた。
http://www.mb.com.ph/articles/338110/bill-gates-helps-hiv-campaign

ゲイツ財団とグラクソが手を組んで開発したワクチンで、マラリアは半減する、と。
http://www.forbes.com/sites/matthewherper/2011/10/18/glaxosmithkline-bill-gates-backed-vaccine-cuts-malaria-infections-by-half/
http://www.guardian.co.uk/society/2011/oct/18/malaria-vaccine-save-millions-children?CMP=EMCGT_191011&

上記マラリア研究へのビル・ゲイツの1億ポンド提供を、「目覚ましい慈善行為」とMirror紙。
http://www.mirror.co.uk/news/top-stories/2011/10/23/bill-gates-100million-for-malaria-research-is-a-stunning-act-of-philanthropy-115875-23507568/

10月24日はゲイツ財団とパートナーが集う「世界ポリオ・デイ 2011」
http://multivu.prnewswire.com/mnr/gatesfoundation/49365/

ビル・ゲイツが独禁法違反でMicrosoftが訴えられている訴訟で、近く出廷。http://www.foxnews.com/scitech/2011/10/20/microsoft-founder-bill-gates-to-testify-in-billion-dollar-suit/
http://www.cbsnews.com/stories/2011/10/17/scitech/main20121484.shtml

重心施設に子どもを入所させている親としては非常に気になる座談会。「小児在宅医療の普及に向けて」:支援のためもだけれど、いわゆる「ベッドふさぎ」問題、コスト問題の解消のためというホンネだって露骨にチラついて、どちらかというと「救児の人々」の路線の匂いも? こういうのを読むと、高齢者は療養型介護施設の廃止決定で実際に地域に受け皿なんかないまま追い出された、ということを考える。そういう人たちがどうなったかというと、重症高齢患者専用のアパートという名の貧困ビジネスの餌食になっている。まさか、それが重症児でも起こるのでは、と考えると、私は発狂しそうなくらい恐ろしい。
http://www.igaku-shoin.co.jp/paperDetail.do?id=PA02945_01

同じく、【中医協】重症児の在宅移行も論点に。
http://www.cabrain.net/news/regist.do;jsessionid=055E2BAB3BB102C3BEE3016A8B64E000

後見人ら、財産を守るはずが着服18億円超。
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20111020-OYT1T00256.htm

NYTにThe Fierce Imagination of Haruki Murakami というタイトルで村上春樹に関する記事。
2011.10.24 / Top↑
2008年12月に「介護保険情報」誌の連載「世界の介護と医療の情報を読む」で仮訳したものを、
以下のエントリーにアップしておりましたが、

「介護者の権利章典」訳を改定しました(2009/12/12)


自分でも、この訳には当時から全然満足できておらず、
いつかやり直したいと思いつつ、そのままになっていました。

昨日tu_ta9さんのブログ「今日考えたこと」で紹介してくださったのを機に
懸案のやり直しにチャレンジしてみました。


介護者の権利章典 (再改定版)

私には……

・自分を大切にする権利があります。自分をいたわり大切にすることは身勝手とは違います。自分を大切にしなければ、家族を介護する力も出ません。

・外に助けを求める権利があります。身内からは反対されるかもしれないけれど、誰にだって耐えられること、頑張れることには限界があります。どこまで耐えて頑張れるか、私自身の限界を知っているのは私です。

・介護者として以外にも様々な役割や立場を持った私自身の生活を、中断することなく続ける権利があります。家族に介護が必要となった時を境に私の生活は変わらざるを得なくなりましたが、できる限りの介護をしているのだから、時に介護者以外の役割や立場を大切にすることがあっても、バチは当たりません。

・腹を立てたり、落ち込んだりする権利があります。たまには、自分で持て余した気持ちをぶちまける権利もあります。

・罪悪感を煽ったり落ち込ませるようなことを言って、こちらを思い通りにさせようとする身内(わざとやる人も無意識にやる人も)がいても、その手には乗らない権利があります。

・気を配り、愛をそそぎ、許し難きを許し受け入れながら介護しているのだから、そういう私にも気を配り、愛をそそぎ、許し受け入れてもらう権利があります。

・こうして介護をやりおおせている自分を誇らしく感じる権利、時としてメゲそうなほど大きい介護ニーズにも踏ん張っている自分を褒めてやる権利があります。

・一人の人としての自分を失うことなく、私自身の人生を生きていく権利があります。私が介護している人には、いつか常時介護が要らなくなる日が来ます。その後にも私は自分の人生を生きていくのですから。

・この国の障害のある人々への支援が進み、そのための方策が新たに見出されていきますように、また介護者を助け支える支援も進んでいきますように、と望み求める権利があります。


原文はこちら ↓
http://www.zarcrom.com/users/yeartorem/rights.html


なお「ぶちまける」は tu_ta9さんの翻訳からのパクりです。
tu_ta9さん、無断借用すみません。

ちょっとはマシになったでしょうか。

自分としては、「”身勝手な豚”の介護ガイド」との出会いで、
介護に関する翻訳への姿勢がちょっと吹っ切れたと感じているところがあるので、
ついでに「”身勝手な豚”の介護ガイド」エントリーシリーズを以下に。

「“身勝手な豚”の介護ガイド」1:セックスもウンコも“殺してやりたい”も
「“身勝手な豚”の介護ガイド」2:あなた自身をもう一人の“子豚”に
「“身勝手な豚”の介護ガイド」3:“専門家の世界”に心が折れないために
「“身勝手な豚”の介護ガイド」3のオマケ:だって、Spitibaraも黙っていられない
「“身勝手な豚”の介護ガイド」4:「階段から突き落としてしまいたい」で止まるために
「“身勝手な豚”の介護ガイド」5:ウンコよりキタナイものがある
「“身勝手な豚”の介護ガイド」6:セックスを語ると“子豚”への愛が見えてくる“ケアラー哲学”
2011.10.24 / Top↑
オフィシャルサイトはこちら ↓
http://www.foxmovies.jp/saruwaku/

ちょっと前に新聞で沢木耕太郎氏のレビューを読み、
すばらしい作品なのに、サルの知能が伸びるきっかけになるのが認知症治療薬という
その一点だけが安っぽいという意味の個所を読んだ時に、

私は「私の中のあなた」レビュー以来、
沢木氏に偏見があるからかもしれないけど、

いや、それはたぶん違うだろう、
その一点こそが時代への警鐘のはずだ、という予感が強くしたので、
見に行ってきた。

大当たりだった。

「科学とテクノの簡単解決バンザイ文化」で何が起こっているかが
ほとんど報道されることのない日本では、沢木氏のように解釈する人が多いのかもしれないけど、

それこそ「私の中のあなた」の“救済者兄弟”が国によってはすでに合法的な現実だとは知らず、
単なるSF的創造だとか空想の世界の話として受け止めた人が多かったのと
同じことじゃないんだろうか。(この件については文末にリンク)

この映画で描かれているブロックバースターの開発を巡る
製薬・遺伝子操作関連企業の熾烈な競争と、その中で
研究テーマや対象が医学的な必要よりも投資家の興味によって
「ゼニがすべてを決め、ゼニですべてが動く」利権構造も、

大きな利権に繋がる薬や技術は
副作用や諸々のリスクなど安全性の確認が十分にされない内から
見切り発車で流されていく構図も、向精神薬やクローン牛やGM農業や
いま現実に「科学とテクノの簡単解決文化」で起こっているそのままだし、

そして、それらの熾烈な競争で
最も投資家の興味を呼んでいる“美味しいマーケット”の1つは
「頭がよくなる薬・技術」であり「認知症の治療法」だというのも現実だ。

トランスヒュー二ストらの「頭さえよくなれば障害が治り生産性が上がって
みんながハッピーになれる」ユートピア像に見られるように
(詳細は「トランスヒューマニズム」書庫に)

また「科学とテクノで簡単解決文化」の知能偏重を象徴するかのように、
(詳細は「科学とテクノのネオリベラリズム」書庫に)

「頭が良くなる薬」がそのまま「認知症の治療薬」になるはずだという
映画の中の直線思考まで、ちゃんとTHニスチックで「それらしい」。
(その2つは直線では繋がらないはずだと私は独断と偏見で思うけど。)

そして、THニストの夢といえば、もちろん「不老不死」。
それだって、ちゃんと盛り込まれていた。

「自然のあり方を壊してはいけないわ」
Some things are not meant to change.(世の中には、変えちゃいけないものがあるのよ)
などの登場人物の言葉とともにね。

(両者は別の場面での別のセリフなのですが、
なぜか前者は字幕が目に、後者は英語が耳に届いてしまったので)

だから、認知症の治療薬開発に成功したと思ったら、
想定外の展開に至って人類滅亡への道を開いてしまった……というのが
かつての猿の惑星シリーズで核戦争で人類が滅びたのかと思ったら、
案外に核戦争では滅びていないけど、今度は「科学とテクノの簡単解決文化」の愚かさで
人類は滅びるんだね……という、とてもリアリティのある警鐘――。


それにしても、主人公のチンパンジー、シーザーの目覚めを描くプロセスは見事だった。

見事すぎて、シーザーの vulnerability(日本語を思いつけなかった)が
重症障害のある娘の vulnerability に直結し、生々しく痛かった。

特に保護施設に置き去りにされるシーン、その直後に
保護してくれる存在を失ったシーザーが虐待を受ける場面は、
6歳の娘を施設に入れた私には苦し過ぎて、息が詰まりそうだった。

科学とテクノの簡単解決文化の後ろにあるのはつまるところ
グローバル強欲ひとでなしネオリベ金融慈善資本主義だから、この映画をみていると、
その「ひとでなし」の部分でモノとして利用され踏みつけられ切り捨てられていく
世界中のありとあらゆる生き物(もちろん人間を含む)が、シーザーに象徴されていく気がする。

初めてシーザーが人間の言葉で人間の暴力を拒絶す感動的なシーンで
彼の NO は、私には遠くニューヨークの公園に集結した人々から聞こえてきた。

障害のため、肌の色のため、性別のため、貧困のために、
力弱い子どもだからというだけで、途上国に生まれ住んでいるというだけで、
カネさえ儲かれば人の命などどうなったっていいという強欲の犠牲にされていく
世界中の弱い者たちの声の集まりとして、響いてきた。

そして、ついに団結し立ち上がった猿たちの逆襲は、なんて小気味よかったことか。

「いけ、どんどん行け、もうそんな愚かな人間たちは滅ぼしてしまえ!」と思わず心に叫びつつ、
血沸き肉躍り、実に胸がすく、ヤンヤな活劇だった。

たぶん、人間による人間への逆襲が、きっとどうしたって
これほど目覚ましい逆転を起こすとは誰にも思えず、

現実の世界では
シーザーのように仲間と闘っているつもりでいたのに
振り返ったら一人だった……みたいな体験や、

団結すれば強いのは分かっていても、
その団結するということそのものの難しさに絶望してしまうことの方が
誰にとっても多いのが、きっと現実の世の中というものであるだけに、

いつのまにか「人間なんか滅ぼしてしまえ!」と
心に叫びながら猿の側に立ってシーザーの活躍に喝采できる活劇は、ほんに陶然と心地よい。

娘の代弁者だと自任している、サルの側でものを言っているはずの私は、
実は娘にとっては人間の側に立っていたりもするように、

人は同時にサルでもあり人間でもあるからややこしい、現実世界の複雑なジレンマを、
つかのま忘れてコーフンできることからくるカタルシス――。


【「私の中のあなた」関連エントリー】
ピコー「私の中のあなた」、キャメロン・ディアス主演で映画化(2009/6/22)
映画「私の中のあなた」は“空想”でも“未来の話”でもなく、既に現実(2009/9/15)
臓器移植ネットワークが映画「私の中のあなた」とタイアップすることの怪(2009/9/16)
沢木耕太郎氏の「私の中のあなた」レビュー(2009/9/19)
映画「私の中のあなた」を見る前に原作小説を再読(2009/10/8)
映画「私の中のあなた」を見てきました(2009/10/10)
「私の中のあなた」映画と小説のレビューを書きました(2009/12/4)
2011.10.24 / Top↑
The Royal College of Nursing (RCN)が20日付で自殺幇助に関するガイダンス
RCN guidance on responding to a request to hasten death を出した。

私は余裕がなくて読めませんが、ガイダンス本文はこちらに ↓
http://www.rcn.org.uk/__data/assets/pdf_file/0004/410638/004167.pdf

以下の記事の内いくつかにざっと目を通したところでは、

患者が死にたいとか自殺幇助の希望などを口にした時に、
応じると自殺幇助の行為と解釈されてしまうのではないかとの不安から、
そうした患者との会話そのものに応じずに逃げてしまおうとする
現場ナースの悩ましさに応える形で、

たとえ患者が直接的に自殺を幇助してほしいと求めた場合にも、
それは額面通りの要望ではなく、これから自分の病状がどうなるか、苦しむのだろうかと
先に対する不安をそういう形で表現されているのだから、

そうした患者の訴えに耳を傾け、その気持ちについて質問するなど
対応することが自殺をそそのかしたり幇助することになるわけではない、というのが主旨。

ただし、その場合にも
自殺幇助は違法行為である以上、例えばDignitasの名前やその他ウェブサイトなど
自殺幇助に結び付く具体的な情報を提供することはあってはならないし、
自ら自殺幇助の話題を持ち出すことはあってはならない。

そういう患者には、
将来への不安を解消する手段として事前指示書を書いておくという方法があることを
知らせるという対応が望ましい。

意思決定能力のある成人患者が
終末期医療について医療職と率直に語り合えるということは大事なので、
このような患者に対応する医療職には法的な保護と支援が必要、とも。


http://www.nursinginpractice.com/article/27203/RCN_launches_guidance_on_assisted_suicide
http://www.nursingtimes.net/nursing-practice/clinical-specialisms/end-of-life-and-palliative-care/nurses-must-not-ignore-patients-requests-for-assisted-suicide-rcn-advises/5036758.article
http://www.dailymail.co.uk/health/article-2051179/Dignitas-Nurses-warned-jailed-talking-assisted-suicide.html
http://www.google.com/hostednews/ukpress/article/ALeqM5jZ8FLbLgRlV0Vl1tEJiXbKmlp8iA?docId=N0178671319099891587A


ざっと読む限り、まっとうなガイダンスのような気がするけど、

ガイダンスというのは、一旦出てしまうと、現場では
本来の繊細な主旨とはズレた、ぜんぜん別物の機械的な正当化基準として使われるようになりがち……?

すでに報道記事のタイトルは、おそろしくマチマチで互いに正反対のものも。


なお、RCNは09年に
それまで自殺幇助合法化には反対としていたスタンスを中立に転向しています ↓

英国看護学会が自殺幇助について反対から中立へスタンスを転換(2009/7/25)
英国看護学会、スコットランドの自殺幇助法案提出議員と会談へ(2009/7/28)
自殺幇助問題で看護学会の転向受け、医療職に警告相次ぐ(2009/7/29)
2011.10.21 / Top↑
乙武洋匡クンの「障害のある子どもの親はおおらかに」説が、
どうやら論争になっているらしい ↓
http://togetter.com/li/198030

こちらのlessorの日記さんのエントリーで知った ↓
http://d.hatena.ne.jp/lessor/20111008/1318099122

概ね、lessorさんが言っておられることに同意。
私は親だから、もうちょっと直截にイラッとする。

「五体不満足」の後この人はすごく苦しんで何枚か皮が剥けたのかと思っていたけど、
やっぱり、どうしてもどこか「優等生障害者」を演じることから
抜けきれないのかな、というのが最初の印象。

私は、本人も親も、障害の受容は一生らせん状に続けていくものなのでは、と思う。

「五体不満足」を読んだ時、
生まれた姿を見てお母さんが「かわいい」と言ったというエピソードは、
息子に自分の障害をネガティブに捉えずに成長してほしいとの願いから
乙武クンのためにお母さんが作った創作だと私は受け止めた。

「かわいい」という言葉がその時に出たことは事実かもしれないけど、
それが大人になるまで息子とその周辺で繰り返し語られ、
本にまで書かれ、世間から広く称賛されていくなかで、
その時の「かわいい」が彼の母親の育児のすべてであるかのように象徴されていった点で、
あのエピソードは、やはり、ある意味の「創作」だと今でも思う。

その後のお母さんの育児の過程がずっと「かわいい」だけであったはずはないし、
そこでもいろんな葛藤や苦しみがあり、らせん状の受容が何度も繰り返されていたはずで、
その中には、障害があろうとなかろうと親として子が可愛いというのだって事実だし、
障害があろうとなかろうと子育ての喜びはもちろん沢山あるけれど、
悲観的になったり、逃げ出したいという思いが頭をよぎる瞬間だって、
なかったはずはない。

また、そういう瞬間があったからといって、
その人が暗いわけでも不幸なわけでも、愛情がないわけでも、もちろんないし
それは、そういう思いや瞬間や時期もある、ということに過ぎない。

人の思いというものは乙武クンが書いているほど、きれいに澄みきった単色じゃない。

彼の母親は「おおらか」だったのではなく、
息子のために「おおらかを装う賢さ」を持っていた、ということなんじゃないだろうか。

でも、その賢さは、ものすごく苦しい受容のらせんを、
何回転も経なければ維持できないものなんだよ。乙武クン。

障害当事者にとっても、
いろんな苦しい思いを巡り揺らぎ経て、らせん状の受容を何周も繰り返しながら
どうにか前向きになれたり、ありのままで生きることに腹をくくれたり、
喜びを見いだせるようになったり、生きる目的を見いだしていくように。

そして、人生の様々な展開や身辺に降りかかる出来事によっては、
そこからまた何度も苦しい受容の葛藤の中に投げ込まれて、もがき、またそこから、
受容のらせんをぐるりと這い上って……を繰り返すしかないように。

本人も親も、その繰り返しの中で、
それでも苦しみや悲しみを抱えたままでも人は日々を幸せに生きていくことができるんだと、
たぶん障害者と家族だけに限らず、誰にとっても生きるというのはそういうことだという
一つの真実みたいなものに、多くの人は辿り着いていくんだと思う。

自分たちの力ではどうすることもできない
環境や諸々の条件や出会いに一定量めぐまれている人はね。

たまたま、そこまで恵まれていない人というのだって、世の中にはいる。
その中には、それなりに幸せと感じられる日常にたどり着けない人もいるんだろうと思う。
親にしろ障害のある人本人にしろ。障害のない人にしろ。

だから、乙武クンのお母さんは
生まれたのを見た瞬間に「かわいい」と言い、その後もずっと
「かわいい」だけで子育てをすることができたお気楽な親でも「おおらかな親」でもなくて、
息子のために「おおらかなフリをしようと努める賢い」親だったのであり、

そして、その母親の賢さがうまく生かされるだけの環境や出会いに、親子が恵まれたから、
息子が母親の創作を現実と信じて成長することができた、ということじゃないのかな。

でも、「五体不満足」の後であれだけ苦しんで、
世間に期待される優等生障害者像から脱皮しようとしたはずなのに、

その歳になって、まだ自分の母親の創作の裏にあるものを見抜けず、
自分の母親は本当におおらかだったと信じているとしたら、

乙武クン、それはちょっとナイーブ過ぎないか?

「……な社会にしていくことも、僕が果たすべき役割のひとつ」
「一人じゃどうすることもできない」と過剰な役割を背負いこんで
「メディアに登場」しているなら、この辺りでもう一度
メディアから距離を置いてみるのも一つでは?
2011.10.21 / Top↑
米国の退職者協会AARPの「介護の成績表」情報に行った際に
たまたまAARPサイトで目についた介護者支援サイトが面白そうだったので、
とりあえず10月4日の補遺で拾っておきましたが、

その中の一つが「家族介護の9つの秘訣」というスライド・ショー。
副題は「同じ経験をしてきた介護経験者からのアドバイス」

9 Secrets of Caregiving
AARP, September 12, 2011


その9つとは、

① Keep Your Own Medical Records
医療記録は自前で作りましょう。

介護が必要な人はいくつもの医療機関にかかりがちですが、
それぞれの医療機関が連携したり情報共有するわけではないので
いつ誰に会い何を話して何を決めたか、
自分が介護している人の医療については
自分で記録しておきましょう。

② Take Time for Yourself.
自分の時間を持ちましょう。

介護者にはレスパイトが不可欠。
レスパイト・サービスを探しましょう。
わずか半日でもいいから、
可能な時には介護を離れて自分の時間を。

私の好きな“身勝手な豚”さんは Break, or you break.
「ブレイクして休むか、それともあなたがブレイクして壊れるか」と言っています。

③ Focus on One Person.
一度にあの人のこともこの人のことも考えないで。

子どもを育てながらの配偶者や老親の介護だったり、
複数の人を同時に介護していたり、状況はいろいろ。
でも、その時その時に、あなたを最も必要としている人に集中しましょう。
もちろん、あなた自身にも時間を割いて。
そういう切り替えが、介護を続ける力となります。

④ Accept Today; Don’t Wish for Yesterday
「昔はこうだったのに」と考えるより今のその人に目を向けましょう。

元はこういう人だったのに、と
その人が元気だったころの姿を惜しんでばかりいると
今のその人が見えなくなります。

それよりも苦しくはないかな、ハッピーかな、と
今のその人に目を向けると、目の輝きに気づいたり、
今のその人との関係に喜びを見つけることができます。

⑤ Don’t be a Martyr; Ask for Help.
悲劇のヒロインにならないで。助けを求めましょう。

介護されている人も介護している人も
世の中には五万といるのだから、
友達や近所の人や専門機関にも堂々と助けを求めて、
決して悲壮な覚悟で介護を抱え込まないで。

⑥ Talk about the Tough Topics.
難しい問題から逃げず話してみましょう。

人の弱みにつけこんでカネをだまし取るような輩が
世の中には沢山います。何かおかしいなと感じても、
お金の話題は出しにくいものですが、逃げずに
思い切って、話してみましょう。

⑦ Get the Legal Stuff Done.
法律や金銭の問題を専門家に相談しましょう。

法的な代理人になるなど、
法律と金銭の問題について専門家に相談して、
知識を身につけ、対処しておきましょう。

⑧ Take Care of Your Own Health.
自分の健康管理もしっかり。

介護者にも持病があったりします。
介護負担に追われてなおざりにしておくのではなく、
運動をしたり食事にも気をつけて、
自分自身の健康管理もしっかりしましょう。

⑨ Don’t Succumb to Chaos.
とんでもないことが起きてもパニックしないで。

とんでもない事態が発生した時、最も大事なことは落ち着くこと。
落ち着くことで、どんな状況下でも強く、柔軟に、思いやりをもって対処することが出来ます。



AARPの「州ごとの介護の成績表」については
「介護保険情報」11月号の連載で書きました。

また、これまでに同誌の連載で介護者支援関連で書いたものは
去年、介護者支援シリーズ1~6にとりまとめました ↓

英国の介護者支援
英国の介護者週間
英国のNHS検証草案と新・全国介護者戦略
米国 家族介護者月間
障害のある子どもを殺す母たち
NHSの介護者支援サイト Carers Direct


なお、介護者に向けたメッセージやアドバイスとしては ↓

「介護者の権利章典」訳を改定しました(2008/12/12/)
今日から豪介護者週間……because I care(2008/10/19)
You are only human: 介護者だって生身の人間なのだから(2008/10/30)
介護者も自分を大切にしましょう(2008/10/31)
自分の気持ちを理解して受け入れる(介護者のために)(2008/10/31)
自己主張をしましょう(介護者のために)(2008/11/1)
「介護者の10の心得」by the Princess Royal Trust for Carers(2011/5/12)
2011.10.21 / Top↑
「患者にとって死を受け入れることは難しいが、やらなければならないこと」というタイトルのWPの記事が、自殺幇助を受ける自己決定権と、終末期に無益でありながら苦痛を強いる治療を家族が差し控えることとを一緒に論じている。
http://www.washingtonpost.com/national/health-science/accepting-death-is-difficult-for-patients-and-doctors-but-it-needs-to-be-done/2011/07/13/gIQARq4AsL_story.html?wpisrc=nl_cuzheads

中国のFoshanという町で、市場通りの大勢の人の前で車が前輪・後輪の両方で2歳の女の子を轢き、そのまま逃走。倒れて血だらけになっているのに、通行人は誰も助けに行かずみんながそのまま通り過ぎて行ったという。やっと56歳のぼろ布回収業者が助けに行き、道路際まで運んだところで2台目のトラックに轢かれ、少女は脳死状態。道徳心を巡って議論に。
http://www.cbsnews.com/8301-503543_162-20121691-503543.html?tag=pop;stories

低体重児は自閉症スペクトラムの確率が5倍。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/236087.php

早いところ卵子を凍結保存しておいた方が、後後のIVFでの着床率が上がりますよ、と科学者ら。
http://www.guardian.co.uk/science/2011/oct/18/eggs-frozen-young-women?CMP=EMCGT_181011&

長生きの秘訣探るべく、115歳女性のゲノムを解読。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/236073.php

小児緩和ケアの課題。
http://www.medicalnewstoday.com/releases/236058.php

もともと多かった十代の女性に加えて、精神障害があるというのではなく、人生のストレスからの高齢者、少数民族、男性の自傷行為が思いがけないほど増えている。
http://www.guardian.co.uk/society/2011/oct/17/self-harm?CMP=EMCGT_181011&

NHSの予算200億ポンド・カットで、老若患者みんなに悪影響。
http://www.nytimes.com/slideshow/2011/10/18/us/politics/1018PROTEST.html

頭に怪我をして救急で受診した場合に、黒人、ヒスパニックなどマイノリティの子どもがCTスキャンを受けられる割合は白人の子どもよりも低い。
http://www.medicalnewstoday.com/releases/236008.php

NYT。アマゾンが出版社を飛ばして著者と直接契約。
Amazon Signs Up Authors, Writing Publishers Out of Deal: Amazon.com, the online retailer, has long competed with bookstore; now it is starting to make deal with authors, bypassing the traditional publisher.

NYTの「ホニャララを占拠せよ」デモ参加者のスライド7枚。:なんか、のどかな写真ばっかり。
http://www.nytimes.com/slideshow/2011/10/18/us/politics/1018PROTEST.html
2011.10.18 / Top↑
英国では病院が患者を蘇生無用(DNR/DNAR)指定する際に、
必ずしも家族への通知をすることが義務付けられていないことについて、
以下のエントリーなどで追いかけてきましたが、

肺炎の脳性まひ男性に、家族に知らせずDNR指定(英)(2011/8/3)
「本人にも家族にも知らせず“蘇生無用”」はやめて一律のガイドライン作れ、と英国で訴訟(2011/9/15)


いつも読んでいる「無益な治療ブログ」の16日のエントリーによれば、

ケアの質コミッション(CQC)が出した高齢者の尊厳と栄養に関する報告内容について
高齢者アドボケイト Action on Elder Abuseが詳細を調べて出した意見書が

DNAR指定に関する部分について「特に懸念される」「危険な状況」がある、と指摘。

高齢者の入院時にカルテに
DNAR指定がルーティーンとして加えられているケースがあったり、

患者とも家族とも相談しないで
研修医がDNAR指定を決めているケースも。

Action on Elder Abuseでは
「病院の届け出から監査官がこういう問題に気づいていながら
監督官が何の行動も起こしていない」とCQCを批判。

New Report on Unilateral DNAR in England
MEDICAL FUTILITY BLOG, October 16, 2011



【その他関連エントリー】
“終末期”プロトコルの機械的適用で「さっさと脱水・死ぬまで鎮静」(英)(2009/9/10)
「ポスト・ヒポクラテス医療」の「無益な治療」論ではDNR指定権まで病院に?(2010/6/19)
2011.10.18 / Top↑
生後11カ月の無脳症の乳児に親の希望で外科手術が行われたケースを、去年のTruog論文で正当化する論文が出たらしい。Aの利益でBへの介入が正当化されるというのは、臨床の論理よりも、社会の利益のため科学の発展のために研究対象への介入が正当化される研究の論理の方に近い、と無益な治療ブログのPope.
http://medicalfutility.blogspot.com/2011/10/surgery-for-anencephalic-infant.html

米国の介護者週間10月16日から22日。
http://www.thesatellite.com.au/story/2011/10/17/carers-week-gives-much-needed-credit/

オーストラリアの介護者週間も10月16日から22日。
http://carersaustralia.com.au/?/carersweek/

前にも補遺で拾ったけど、故Kevorkian医師の自殺幇助装置が10月末にオークションに。
http://www.dailypioneer.com/sunday-edition/agenda/foreign/13460-till-death-did-us-part.html

自閉症は生後12カ月で診断できる、とミシガン大学の研究者。早期診断、早期介入を、と。
http://www.medicalnewstoday.com/releases/236003.php

米国小児科学会の年次大会で、ADHDの診断は6歳以上からというこれまでのガイドラインを4歳以上からに引き下げよう、との提言。学齢前の子どもへの介入は薬物療法ではなく行動療法で、でも効果がなかったら薬物療法で。:上の記事とまるで対のような……。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/236069.php

NHSの予算カットで、NICUのスタッフの質が低下。
http://www.guardian.co.uk/society/2011/oct/17/nhs-cuts-putting-babies-at-risk?CMP=EMCGT_171011&
2011.10.18 / Top↑
詳細は知らないのだけど、医療制度改革に盛り込まれていた介護保険プラン(たぶん民間の介護保険加入を義務付けて、加入が困難な人には助成金を出すという話では、と)について、オバマ大統領がついに諦めて削除。共和党は「勝利」と。:反格差社会デモの間にも、こういうことが起こっている米国。
http://www.washingtonpost.com/national/health-science/white-house-kills-long-term-care-program/2011/10/14/gIQAVZLYkL_story.html
http://www.ktuu.com/sns-bc-long-termcareprogramupdate,0,3413914.story

9・11の直後に、あまりに不謹慎さが衝撃的だとして米国のメディアが伏せ、2006年になって公開された1枚の写真。倒壊して姿を消し、もうもうと粉じんを舞い上げている世界貿易センタービルでの惨劇を対岸に、ニューヨークの若者たち5人がのんべんとくつろいで談笑している姿。2006年にこれを見たFrank RichというコラムニストはNYTに「別にこの5人が無情だというわけじゃない。ただの(他人に何が起ころうと知ったこっちゃない、という)米国人なだけだ」と。上の記事の、Obamaの医療制度改革から介護保険プランを削除させ勝利を唄う共和党の人たちを考えた。自業自得の貧乏人の介護まで面倒みられるか――。
http://www.guardian.co.uk/commentisfree/2011/sep/02/911-photo-thomas-hoepker-meaning?CMP=EMCGT_141011&

オキュパイ・トウキョウのサイトに今日のデモのビデオがある。夕方のフジテレビのニュースは「100人が参加」と報じていたんだけど、その人数、一体どこが発表したの?
http://occupytokyo.org/ja/

「ウォール街を占拠せよ」デモの本拠地となっている公園の土地所有者の意向を受けて、デモ関係者を強制排除しようとした警察が、衝突での混乱回避するため、強制排除を中止。デモ隊は凱歌。
http://www.guardian.co.uk/world/2011/oct/14/occupy-wall-street-protest-live#block-21
http://www.guardian.co.uk/world/2011/oct/13/occupy-wall-street-zuccotti-park-cleanup?CMP=EMCGT_141011&

NYのデモの仕掛け人のツイッター
http://twitter.com/#!/AdamGabbatt

日本語のツイッターでは、この話題で騒然。立命館大学大学院先端総合学術研究科 特別招聘教授に上野千鶴子氏が就任。:最近、介護の研究をされており、家族介護前提ではなく個人にサービスをつける「おひとりさま」仕様の介護保険制度を提唱してくださるのはありがたいのだけど、ちょっと抵抗を感じるのは、この人って結局は日本の社会の中で男と同じように生きてくることができた“名誉男”なんだよなぁ……って。日本の社会で女だというだけで、育児や介護や家事といったお世話仕事は「オマエがやって当たり前」にされてきた女たちよりも、この人の感覚は団塊の世代のおっさんに近いんじゃないか、と感じる時がある。障害児の母親をフェミニズムは置き去りにし裏切ってきたじゃないか、という恨みつらみが尾を引いているだけかもしれないけど。
http://www.ritsumei.jp/news/detail_j/topics/9388/year/2011/publish/1

11日の補遺でつい長々と書いてしまった「介護保険情報」10月号「論壇」での、池田省三氏による結城康博氏の著書批判について、現場の施設長のブログ「masaの介護福祉情報裏板」での反論、「池田省三の無知とデタラメ」。:やんや!! 飛躍かもしれないとは自分でも思うけど、この人の批判を読んでいたら、障害の現実について驚くほど無知なままに、「障害のある生は生きるに値するかしないか」を平然と論じて学問だとか学者だとか称し、現実の生身の人間の処遇に自分の発言が影響力を持つことの重大性について考えてみることもしない傲慢な人たちの無知とデタラメと、池田氏がそっくり重なってしまった。まぁ、日本の厚労省(その背後には財務相)の「御用聞き学者」か、世界の財務・経産・厚労省の「御用聞き学者」かという違いくらいしかないんだし、さほど飛躍でもないかも。介護保険が専門と称する現場経験のない学者には最低3年の現場実習、障害を云々するつもりの生命倫理学者は全員、自分が論じようとする障害像と同じ障害児・者のヘルパー実習最低1年を必須に――。もちろんヘルパー資格とってからね。あ、それとも「介助者」でよしとする? 痰の吸引とかは?
http://blog.livedoor.jp/masahero3/archives/51829883.html#comments

黒人の1歳未満乳児の死亡率は白人の乳児の2倍。米国。NYT。
Tackling High Infant Mortality Rates Among Blacks: Nationally, black babies are twice as likely as white infants to die before age 1. In Pittsburgh, where the racial disparity is even sharper, health officials face many hurdles.

黒人と白人の両親から生まれた双子が、一人は肌が黒くて一人は白い。白い方の子どもが幼稚園で自画像を描く時に、先生に「あなたはミックスだから黒人としての自分を書かないとダメ」と指導されたというヘンなエピソードなど、周囲の異様な接し方や両親の憤りなど、とても興味深い記事。
http://www.guardian.co.uk/lifeandstyle/2011/sep/24/twins-black-white?CMP=EMCGT_141011&

携帯電話の6台に1台は大腸菌に汚染されている。持ち主がちゃんと手を洗わないから。:これ、ケイタイを調査したというだけで、他のものだってこれまでも実はそんなもんだったりして? それでも、そこそこ免疫でなんとかなっていくのが、これまでの人間だったと思うんだけど、これからは違ってくるような気もしないでもない。
http://www.guardian.co.uk/world/2011/oct/13/mobile-phones-uk-e-coli?CMP=EMCGT_141011&

<モンゴル政府>核処分場建設計画を断念 日本に伝達:国際社会から見えにくいアフリカの途上国を有害ゴミのゴミ捨て場にするような非道をやるのは欧米先進国だけなのかと思っていたけど。反格差社会デモがついに「待った」の声を上げた、グローバル強欲ひとでなし金融ネオリベ慈善資本主義の問題というのは、ただ各国で格差が広がって食えない人が増えていくというだけじゃなくて、国単位でも地域単位でも格差が広げられて、こういうことがどんどんやられてしまう世界なのだと思うので、ホント、この辺りで方向転換が可能なのなら……と祈るような思い。でも、そんなのビル・ゲイツが「善い人」と拍手されている限り、あり得ないんだよね……と、一方では思っている。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20111015-00000007-mai-pol

【関連エントリー】
象牙海岸の悲惨(2007/12/15)
「象牙海岸で先進国の有害ゴミによる死傷者多数」事件:続報(2008/10/24)
先進国の有害廃棄物でアフリカから3万人超える集団訴訟、最近はマフィアが核廃棄物を海に(2009/9/19)


日本語ニュースで、ウガンダなどに米軍100人派遣=武装勢力掃討を支援―オバマ大統領:ウガンダと言えば、8月25日の補遺で拾ったように、インドの農業ビジネスがエチオピア、タンザニア、ウガンダなんかの土地を買い占めている、という話がある。インドでは米国政府とつるんだゲイツ財団とモンサントがアグリ・GMビジネスを強引に(強欲・非人道的に)展開しているわけだから、この米軍派兵もぐるりと廻りまわって繋がっていく話?
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20111015-00000023-jij-int

【関連?エントリー】
ゲイツ財団がインドで目論んでいるのはワクチン普及だけでなくGM農業改革も(2011/4/16)
「アグリビジネス」の後ろにはワクチン推進と同じ構図が見える(2011/10/5)
2011.10.18 / Top↑
臓器移植法を問い直す市民ネットワークから「脳死・臓器移植 Q&A50:ドナーの立場で“いのち”を考える」刊行。:まだ入荷していないみたいだけど、とりあえずアマゾンにオーダー入れた。
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4875252846

生命倫理に関する米大統領評議会白書「脳死論争で臓器移植はどうなるか」:これも読んでみたい気がするものの、オーダー入れるにはちょっと踏ん切りが必要。
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4884123506?tag=hatena-bu-22

福岡伸一さん訳でキンブレルの「素晴らしい人間部品産業」。:これ、昔「ヒューマン・ボディ・ショップ」というタイトルでどこかから出ていたのを読んだ記憶があるのだけど、4月に講談社から復刊していたみたい。たしか90年代に読んで、すごい衝撃だった。
http://bookweb.kinokuniya.co.jp/htm/4062162873.html

英国ホスピス週間。
http://www.oxfordmail.co.uk/news/9302156.HOSPICE_WEEK__Carers_who_go_the_extra_mile/

英国ケアの質コミッションから、病院スタッフは高齢患者にきちんと食事をさせていないし、尊厳ある扱いをしていない、との指摘。:これ、私が英語ニュースを読み始めた2006年ごろから言われ続けている。高齢患者と知的障害者。
http://www.guardian.co.uk/society/2011/oct/13/hospitals-lambasted-old-people?CMP=EMCGT_131011&

American Society for Bioethics and Humanities という学会があるんだそうな。第13回年次大会。10月13-15日。学会サイトに行くと、 medical humanities という用語が目についた。ただ、ものすごく盛り沢山のプログラムをざっと見ただけでも、やっぱり臓器移植で「死亡者提供ルールの撤廃」が提唱されていたりするような?
http://www.asbh.org/uploads/files/meetings/annual/pdfs/asbh11_confbro_final.pdf

摂食障害の入所施設での治療が保険給付の対象とならず、米国で訴訟に。NYT.
Eating Disorders a New Front in Insurance Fight: People with eating disorders like anorexia are fighting insurers to pay for stays in residential treatment centers, an issue that is being considered by an appeals court in California.

緑の野菜を食べることで、遺伝子による心臓病リスクは減らせる。
http://www.medicalnewstoday.com/releases/235806.php

英国でも女性管理職はぜ~んぜん少ない。
http://www.guardian.co.uk/business/2011/oct/13/shocking-lack-women-directors-ftse?CMP=EMCGT_131011&

英国の大半の町で、民間の賃貸住宅の家賃が高騰し、とてもじゃないけど払える金額ではないところまで。
http://www.guardian.co.uk/money/2011/oct/13/families-unable-to-afford-rents?CMP=EMCGT_131011&
2011.10.18 / Top↑
12日のエントリーでとりあげたインタビューで言及されていた、AJOBのCaplan論文を読んでみた。

The Use of Prisoners as Sources of Organs – An Ethically Dubious Practice
Arthur Caplan, University of Pennsylvania
The American Journal of Bioethics, 11 (10):1-5, 2-11

冒頭で、移植臓器を増やすために繰り出されている「斬新なアイデア」が紹介されている。

① NY市を含むいくつかの市で導入されている「ドナー救急車」。

特別仕様のこの「ドナー救急車」、通常の救急車の後をついて走る。
で、病院の外で死ぬような人が出た場合には、前を行く通常の救急車が死亡宣告するや
即座に後続の「ドナー救急車」チームが起動、家族を探し連絡して臓器提供の同意をとり、
遺体に生命維持装置を取り付ける。その措置を行ったうえで摘出が可能な機関に搬送する。

事前指示など予めドナーとなる意思表示が行われている患者の場合に行われるが
NYの臓器ドナーネットワークの計画では、今後は病院外で死亡する患者のすべてに
家族による代理決定で実施していきたいとしている。

NY市の「ドナー救急車」については、こちらのエントリーでも触れられていた ↓
UNOSが「心臓は動いていても“循環死後提供”で」「脊損やALSの人は特定ドナー候補に」(2011/9/26)

② 選択的手術(命にかかわらない緊急性の低いもの)を受ける人すべてに
腎臓提供をルーティーンの手続きとして勧める、という案が出ている市も複数ある。

「絶対必要なわけではない手術を受けるなら腎臓1個くらい出しなさい」とのメッセージや
事実上の「条件」になってしまう懸念はないんだろうか。

③ 生命維持治療停止を巡る事前指示書の内容によって
臓器提供の可能性が影響されないようにしよう、との提案も。

「これこれの状態になったら人工呼吸器は外してください」と指示している人でも
それによって臓器が劣化して提供できなくなるなら外さなくてよいことにしよう、と?

④ 処刑後の死刑囚からの臓器提供。

もともと、こういう声はあったが賛同の声を集め活発な議論を起こす口火を切ったのは今年3月のNYT記事 ↓
「執行後に全身の臓器すべて提供させて」とOR州の死刑囚(2011/3/6)

⑤ 囚人からの生体臓器提供。

今年1月にミシシッピー州知事が、人工透析が州財政の負担になるとの理由から
片方が腎臓を提供してもう一方が移植手術を受けることを条件に
終身刑で服役していた黒人の双子の姉妹を釈放する、という事件があった。
これについてはCNNの日本語記事がこちらに → http://www.cnn.co.jp/usa/30001456.html

また、2007年にはサウス・カロライナ州議会に、
腎臓または骨髄提供と引き換えに刑期短縮を認める法案が提出されたことがある。
Ralph Anderson議員提出の法案では、骨髄の場合は60日、腎臓の場合は180日を
「特に利点の大きな、または特に人道的な行い」を認めて短縮するもの。

で、この論文でCaplanは④と⑤を取り上げ、実施上からも道徳上からも認めるべきではないと説く。
まず、④の死刑になった囚人からの死体臓器提供についてCaplanが挙げている問題は、だいたい以下。

・死刑そのものに倫理論争がある。

・最も多い中国で年間5000人。イランでも年間400人。
 米国では倫理論争の影響を受けて減少傾向で2010年は46人と、
 死刑になる人の数が非常に少ない。倫理懸念から米国では減少傾向。

・もともと少ない死刑囚人口は、高齢、感染症を含む病気持ち、肥満である確率が一般よりも高い。

・感染病の確率が高い、非道な犯罪者だなどの理由でレシピエントの方が望まない可能性がある。

・DNA検査で死刑囚の冤罪を確認するThe Innocence Projectにより、
1989年以降、267人が無罪となっており、そのうち17人が死刑囚。
えん罪の可能性を含む死刑の倫理議論は今後も広がっていくと予想される。

・中国での宗教・思想犯を含む死刑囚からの臓器摘出疑惑に国際的な批判が出ているが、
米国でも死刑囚から採るとなると中国の慣行を批判しにくくなる。

・医療職が死刑に関与すること自体への抵抗感があり、
米国医学会、米国医師会、世界医師会も反対のスタンスをとっている。
さらに死刑での臓器摘出に進んで関与するとは思えない。

実施面での最大の問題として指摘されているのが
「死刑囚は生命維持装置をつけて死ぬわけではない」。

もしも死刑囚から臓器をとろうとするなら
囚人をDCDDドナーとして扱う必要が出てくるが、

(これまで当ブログでDCD(心臓死後臓器提供)と呼んできたものと
事実上同じプロトコル差すのではないかと思うのですが、ここでは
donation after cardiac determination of death(心臓死宣告後提供)が使われています。
上記UNOSの記事にあったように“循環死”の宣告が説かれ始めているためでは?)

病院でのDCDDなら心停止から5分以内に手術室に運ばれて摘出にかかるが
死刑では最終的な死亡宣告まで少なくとも10分から15分待つことになっている。
そこに摘出のための施設に移動させるなどの時間が加わる。そのプロセスに関わる医療職も必要。

そうした現実問題を考えると、死刑囚からの臓器提供を可能にするためには
処刑方法そのものを“Mayan プロトコル”変更する必要がある。

Mayanとは、いけにえとして拍動する心臓を取り出して捧げる宗教儀式のこと。

となれば、Caplanがここで“Mayanプロトコル”と称しているのは
生きたままの臓器摘出による処刑、すなわち Savulescu提唱の“臓器提供安楽死”と同じ方法での処刑。

しかし、こうした変更には法的な問題もある他、これまでの黄金律「死亡者提供ルール」に違反する。
そんなことをすれば生死の線引きを変えて死体臓器提供への国民の信頼を揺るがす。
また処刑前から臓器保存処置がとられる事態を招きかねない、とCaplanは問題を指摘。

一方、spitzibaraがこの点で気になることとして、
手段を問わず臓器不足解消を唱える一派はその死亡者提供ルールそのものの撤廃を求めている ↓
臓器移植で「死亡者提供ルール」廃止せよと(2008/3/11)
Robert Truog「心臓死後臓器提供DCDの倫理問題」講演ビデオ(2009)(2010/12/20)

次にCaplanが指摘しているのは
ドナーにすることによって償いとしての死刑の道徳的正当性が失われる、という点。

処刑される死刑囚が最後にドナーとなり有徳な人と称えられることは犠牲者家族にとってどうなのか。

医療目的に司法制度が利用されることの2重の危うさについて
ここでCaplanが書いていることが私にはことの本質を突いているように思えるのだけど、

…the aim of the penal system is not to serve medical needs but to achieve justice for those wronged and their families and friends, as well as to deter future crimes.(中略)
Giving the state a motivation to execute beyond retribution or deterrence may be seen as inconsistent with protecting prisoners’ rights.

権利という点では、先のNYTの記事を書いたLongoは臓器提供も囚人の権利だと主張しているが、
重罪を犯したものは釈放後にも一定の権利を制約されている、と反論。

次に、④の生体ドナーとしての囚人について。

囚人の総人口は多く、特に親族への提供の希望はあるが
まず実際の問題として囚人における感染病の有病率の高さ。

それから非常に複雑な道徳的な問題として
連邦法は臓器提供を何らかの価値と結び付けることを禁じており、
保釈や刑期短縮、特権の拡大などのインセンティブや報酬は
こうした「価値づけ」とみなすのがUNOS倫理委をはじめ国内外での判断。

また囚人は総じて強要や操作を受けやすく、囚人の同意を額面通りにとることは危険。
ミシシッピー州のケースのように医療コストを理由に囚人の臓器提供を認めるのも問題。

以上、死体臓器提供の場合と同じ理由によって、
囚人からの生体臓器提供も慎重な規制とケース・バイ・ケースのアセスが必要。

           ―――――
個人的には、
「ドナー救急車」チームが死亡宣告された“遺体”に「生命維持装置をつける」ことのおかしさ、
また、死刑執行で死亡確認には10から15分待つことになっている一方で、
DCDDでは5分以内でよいことになっているということのギャップの2つが、すごく気になる。
結局、Caplanによる死刑執行後の囚人からの臓器摘出の倫理性議論から
ここではDCDDプロトコルそのもの非倫理性があぶり出されている……のでは――?

もう1つ、上で引用したCaplanの「司法制度は医療目的ではない」ということが
臓器提供に限らず、科学とテクノの原理で席巻されていく最近の世の中の風潮を
象徴的に指摘する言葉のように私には思えた。

医療は、社会とか文化という、もっと広く大きいものの中にその一部として内包されて、
社会から文化や法を通じてシビリアン・コントロールを受けてきたはずなのに、
科学とテクノの発達と、それによって急速に肥大化する利権とによって、
医学を初めとする科学とテクノの価値意識やニーズと、グローバル経済ががっぷり噛み合って、
社会や文化の方が科学と経済の浅く狭い価値意識に染め変えられていくような、

もはや社会からのシビリアン・コントロールが効かず、
逆に社会に向けて医療によるメディカル・コントロールが急速に敷かれているような……。
2011.10.18 / Top↑
英国のNuffield Council on Bioethicsが
約1年半の調査と検討を経て、
この度とりまとめた報告書が
政府に対して提言しているのは、

① 臓器ドナーとして登録した人が死んで、実際に臓器が使えた場合には、
葬式代をNHSで出してあげる制度が国民に受け入れられるかどうか、
また、それによってドナー登録が増えるかどうかの検討を。

② 生殖子を生殖補助医療クリニックや研究目的の利用に提供する人への金銭支払いに
現在設けられている250ポンドの上限の引き上げを。
交通費だけでなく所得補償まで可能にするため。

③ 「みなし同意」制度は導入せず、あくまでも本人の意思を重視で。


で、この③の本人意思でのドナー登録を推進するために、
まもなくWalesでパイロット・スタディが1つ始まるというのだけど、それが、

New drivers will be given the chance to register as organ donors.

新たに運転免許を取得した人は、
その交付の際に「ドナーとして登録する機会を与えられる」制度だそうです。

なにしろパイロット・スタディなのだから、
この制度によって提供臓器の数がどのように変化するか、注視しておくように、と
Nutffield カウンシルの報告書。

なにやら日本でも、
どこで議論されたのやら、ちっとも記憶にないのだけど、いつの間にか始まっていた
健康保険証ウラのドナーカード利用を思い出します。


記事を読んで印象に残ったのは
カウンシルのディレクター、Hugh Whittall氏の以下の発言。

As science and medicine develop, he added, the need for bodily material will increase.
「科学と医学が進むにつれて、身体資材のニーズは増していきます」

だから、つまり、生命倫理カウンシルの役割・仕事というのは
そのニーズを満たすため、如何に国民の身体資材化を推し進めていくか、その方策を編み出し、
それらをアカデミックな装いで正当化し、さらに国民が自ら進んで身体資材となるよう誘導すること?

Organ donors ‘funeral expenses should be met by NHS, says report
The Guardian, October 10, 2011


それにしても
英国の社会保障費削減が相次いで大規模なデモを巻き起こしていることは、
いくつかの補遺の他にも5月に以下のエントリーでも取り上げたし ↓

英国の障害者らが介護サービス削減に抗議して訴訟、大規模デモ(2011/5/11)

ガウタマ・シンラン・ソリドゥスさんも10月1日のエントリーで取り上げておられる通り ↓

イギリスでもデモ
【学院倶楽部】科学と宗教ならびに教養と民族の【共同と連帯】(2011/10/10)


NHSは財政破たんをきたし、もう長いこと英国最大の社会問題になっていて、
NHS存続のためにベッド数もサービスも削減やむなしという話まで出ているというのに
それでも「ドナーの葬式代はNHSが出してあげよう」という提言が平然と出てくるのって、

医療が持たない、地方自治体の財政が持たない、と危機がしきりに言われている日本で
一人4万5000円のHPVワクチン助成には誰も異を唱えないのと、同じ――?

それにしても、この葬式代、記事をよく読むと、
出してもらえるのはドナー登録しておくだけじゃダメで、
ドナー登録した人の臓器または組織が移植や研究に利用された場合のみ。

せっかくドナー登録しておいても、
臓器が使えない死に方をしたのでは出してもらえないらしい。

葬式代が愛他的な善意に報いようという趣旨なのだったら、
ドナー登録しただけで出してくれないと筋が通らないと思うのだけど、

その辺り、
臓器を増やす狙いで登録者数を増やすための
単なる“釣り”に過ぎないから大まかなのか、

それとも、
せっかく登録した人は死に方にもちゃんと気を配って
臓器が無駄になるような死に方はなるべく避けろ、と――?
2011.10.13 / Top↑
前のエントリーの続きです。

生命倫理系のサイト、BioEdgeの Caplanインタビュー。

BioEdge: How dependent are Chinese transplant surgeons on the organs of executed prisoners?
Arthur Caplan: They are heavily dependent. While there are living donors of kidneys and once in a while a lobe of liver the Chinese have no cadaver organ procurement system. So the vast majority of transplanted organs according to their own numbers of transplants carried out must come from prisoners. For hearts and livers those certainly are executed prisoners.
Are Chinese doctors and hospitals actively marketing organ transplant services?
Yes, they are. They promote transplant tourism on the internet. And they are making plans to expand their ability to do transplants and to attract more non-Chinese cash customers by creating what they call "medical cities".
How have doctors, journals, and scientists reacted to your proposal? Has there been any resistance?
It is too soon to tell. So far the reaction has been a bit disappointing--no ringing endorsements from any journals or professional societies.
How have the Chinese reacted?
No reaction at all.
The Chinese government has vowed to end the practice of using organs from executed prisoners. Why haven't they stopped? Do you think that they will stop?
I think many Chinese health care professionals do want the practice to end. But they are sceptical about whether they can get the public to support cadaver organ donation. And I believe the military, which appears to play a key role in running prisons and some of the transplant hospitals, is less concerned about execution as a key source of transplantable organs.
As in other Asian countries, there is great resistance to organ donation in China. If they cannot rely upon executed prisoners, what would you advise them to do?
They must create a cadaver organ donor system. Period. There is always resistance when these programs are launched--there was in the USA decades ago and more recently in Denmark and Israel. A strong campaign with clear explanations of rights and safeguards is the key to public acceptance.
What if a prisoner did give his consent? A prisoner on Oregon's death row recently published an op-ed in the New York Times volunteering his organs.
"Prisoners" in China come in all forms--political, religious, criminal. I doubt we can take 'consent' at face value. Nor do I think we can trust consent to donation from persons being executed in the USA. The hope of commutation of a death sentence is a hugely coercive factor even if it does not come to pass. See my just published article in the American Journal of Bioethics for more on using prisoners as sources of organs.




中国では、刑務所も移植病院も運営は軍部だとのこと。

また、まだどうこういうには早いけれど、
今のところLancetでのCaplanらの呼びかけに対して
どこかの学会や団体から賛同の声が上がったということも
中国からのリアクションもない、と。

最後の質問で話題になっている
NYTで自己決定により臓器提供を申し出た死刑囚については、こちらのエントリーに ↓

「執行後に全身の臓器すべて提供させて」とOR州の死刑囚(2011/3/6)

この時にCaplanがMSNBCに書いた論説がこちら ↓
Organs from inmates? That idea should be DOA
MSNBC, April 21, 2011


なお、最後に触れられているAJOBのCaplan論文は以下に(全文が読めます) ↓

The Use of Prisoners as Sources of Organs – An Ethically Dubious Practice
AJOB, 11(10): 1-5, 2011
2011.10.12 / Top↑
米国の生命倫理学者、Ashley事件でもおなじみのArt Caplanらが
Lancet最新号で世界の医学・科学関係者に向けて中国の移植医療へのボイコットを呼びかけている。

Time for a boycott of Chinese science and medicine pertaining to organ transplantation
Al Caplan, Gabriel Donovitch, Michael Shapiro, Jacob Lavee, Miran Epstein
The Lancet, Volume 378, Issue 9798, Page 1218, 1 October 2011


死刑囚からの移植臓器摘出の事実は中国政府も2006年11月に公式に認め、
今後は死刑囚からの摘出を禁じて、合法的な臓器提供システムをつくると約束した。
その辺りの事情については2007年1月に簡単に書いたことがある ↓

「大地震後に瓦礫の山で“臓器泥棒”」
「介護保険情報」2007年1月号「世界の介護と医療の情報を読む」

しかし、その後も中国の臓器移植件数はうなぎ上りで、
もともと臓器提供への抵抗感が強く、死体からの臓器提供システムが存在しない国で、
相変わらず死刑囚から臓器が摘出されては、外国人優先の医療ツーリズムに回されている。

CaplanらのLancetの呼びかけで、特に印象的なのは以下の一節。

Despite the continuation of organ donation by execution, the international medical and scientific community has done little to make its moral abhorrence of this state of affairs widely known. Presentations about transplantation in China continue to be made at international conferences, publications about the experience of transplantation in China appear in peer-reviewed journals, and pharmaceutical companies continue their marketing efforts and engage in sponsoring research involving various aspects of transplantation in China.
The time has come to bring normal scientific and medical interchange with China concerning transplantation to a halt. We call for a boycott on accepting papers at meetings, publishing papers in journals, and cooperating on research related to transplantation unless it can be verified that the organ source is not an executed prisoner. These steps are admittedly challenging. But the international biomedical community must firmly and boldly challenge the status quo―the barbarous practice of obtaining organs from executed prisoners.

(概要)
世界中の医療関係者は、中国での死刑囚からの臓器摘出の事実を知りながら、そのおぞましい事態に何の行動も起こさずに来たばかりか、国際会議で中国の移植医療に関するプレゼンが堂々と行われ、ピア・レビューを経ているはずの医学雑誌に報告が掲載され、製薬会社はマーケッティングを行い、中国の移植のあらゆる分野に研究費を提供している。
いまこそ、こうした中国の移植医療に関する論文の掲載や学会発表をボイコットし、それら臓器が処刑された死刑囚のものではないことを確認すべきである。生命医学の国際社会は死刑囚からの臓器摘出という野蛮な行為に、はっきりとNOを表明しなければならない。




Caplanらがここで指摘しているのは、
移植医療の国際競争や医療ツーリズムといった、実は医療ではなく経済の問題として
自国民の命にも人権にも、なりふり構わぬ「勝ち組競争」の現実を黙認・追認している、
国際科学・医学界の実態であり、

実は「このまま医療の倫理は経済の原理に引きずられっぱなしていくのか」と
科学・医学の世界の良識を正面から問うているのでは?

それなら、
中国の死刑囚からの臓器摘出と、それを黙認している科学とテクノの国際社会というのは
非常に象徴的な問題ではあるけれど、実は生殖補助医療の国際ツーリズムやワクチン、途上国支援など、
その他多くの問題にも通じていくんじゃないだろうか。


時々覗いている生命倫理系のサイト、BioEdgeがCaplanにこの件でインタビューをしており、
メルマガで届いた個所の全文を次の(後)のエントリーで。
2011.10.12 / Top↑