去年のちょうど今ごろ、
ミュウは生まれて初めてのぜんそく発作を起こして、
久しぶりに「今度こそダメかと思ったぁぁ」エピソードを更新した。
ディズニー・オン・アイスに行くことにしていたのだけれど、
酸素マスクにサチュレーション・モニター装着ではどうにもならない。
園に入所している方の中で誰か連れて行ってもらえる人があったら、差し上げてください、と、
スタッフにチケットを託すことにした。
ベッドのミュウは「えーっ!!」と、顔で盛大に抗議したけれど、
「この状態じゃぁ、どうしたって行かれまー。
今年は誰か行かれる人に行ってもろーて、ミュウは来年いこうや。
その代わり、来年は必ずいこうね」というと、
しぶしぶ「ハ」と納得した。
なので、今年は春にチラシを見た時に
すぐさま事務局に「車いす席を!」と勢い込んで電話して、
冷たく「チケットの売り出しはまだ先です」と返されるくらいに、
「今年は行くぞ!」気分満々だった。
無事にチケットを買い、
中休みには、おむつ交換のために
授乳室を使わせてもらえるよう段取りもちゃんとつけた。
そして、先週末にミュウが帰ってきた時に
「いよいよ来週じゃねー。去年いけんかった分、楽しもうぜぇ」と盛り上げたところだったんである。
で、つい3日前のこと――。
「突然、全身にじんましんが出て、顔までむくんでいるので点滴をしたい」と
療育園から電話がかかってきた。「本人はいたって元気なので、ご安心を」とのこと。
電話を受けた父親の談では、ドクターの声の背後で
テレビだかDVDだかに大騒ぎしている娘の歓声が響き渡っていたというから、
まぁ、さほど心配はしなかったけれど、
あっちゃ~。ディズニーがぁぁぁ……。
いやいや、まだ日にちはある。大丈夫。
イヤな予感は、そう考えて宥めた。
……で、今朝。
どうやら、まだ、じんましんは出たり引っ込んだりしているらしい。
むくみのために採血も大変だったという。そうか。まだむくんでいるか……。
帰省はドクターからOKが出そうだけれど、
ディズニーを、どうする……?
間の悪いことに、日曜日には台風の暴風圏に入るとの情報もある。大雨はまず間違いなし。
もしも諦めて、誰か園の入所者の方に行ってもらうとしたら、
明後日のこととて決断を急ぎ、行ける人を当たってもらわなければならない。
私の頭には、
去年のまさにこの時期のぜんそくで
酸欠となり白目を剥いた娘の姿がよみがえっている。
じんましんが収まりきっていない状態で連れて行き、
台風で予測不能な事態もあり得る中、万が一にもぜんそくでも起こしたら……。
やめよう。来年にしよう。
夫婦で話し合って、そう決めた。
園に電話をかけ、
誰か、行ける方があれば行ってもらってください、と当たってもらうよう依頼した。
「家族が連れて行ける人がなかったらチケットは捨てますから」と言ったら、
電話に出た園の幹部は「家族に聞いてみてダメなら、あとは、
こちらから連れて行ってあげるか、ですね」と応えてくれた。
その言葉が嬉しかった。
もしもスタッフが出てくれるのなら(ボランティアになるのかもしれないけど)
日頃あまり外出できない子どもさんを連れて行ってあげてもらえたら、と思った。
よかった。……と、電話を切って、しばし……。
この間ずっと、「なにか」重苦しいものが心に引っかかっていた。
意識の上にはなかなか上ってこないけど、心がザワついてしまう「なにか」――。
……!
ミュウだ!
去年は、命が危ぶまれる状況もあって毎日通っていた。
だから「ディズニー中止」を決めたのもミュウのベッドサイドでのことだった。
スタッフとその話をしながらミュウの抗議を受けて、その場で説明し、ミュウも納得した。
でも、さっき私たちは
ミュウには断りも相談もなく勝手に決めてしまった!!
いかん!!
「今からミュウのところへ話をしに行ってくる。
親が勝手に決めてしもーたけん」
夫にメールを入れ、急ぎパソコンをシャットダウン。
今日の仕事の予定なんぞ、くっそぉ。このさいチャラよ。
夫からも
「たしかに。じゃぁ、ミュウによろしく!」と即座の返信。
そだ。“病人部屋”でテレビを独占させてもらっているなら
「おかあさんといっしょ ファミリーコンサート」DVDの新しいのを持っていってやろう。
そそくさと着替えて、車に飛び乗る。
ちょうど、お昼前でもある。
どうせ行くなら、お昼ごはんに間に合って食べさせてやりたい。
なんだか急いで取り返さなければならない者があるみたいに気持ちがせいて、
コンビニで買ったおむすびをかじりながら園に急ぐ。
着いたら、
看護師さんの介助でもう8割がた食べ終えていたけれど、食欲は旺盛。
足はまだむくんでいるものの、顔のむくみも赤みも引いていた。
あー、えかったぁ。顔見たら安心したぁ~。
いきなり現れた母親に、ミュウは固まっている。
ふっふ、ええもの持ってきたでぇ。ジャーン。
DVDを取り出すと、ミュウはいっそう驚愕の表情で固まる。
(これが喜びの表情だというのは、慣れぬ人にはたいそう分かりにくい)
食事介助を代わって、2人になってから、
おもむろに本題を切り出してみる。
ミュウちゃん、明後日のディズニー、
すっごく残念じゃけど、またまた来年ってことにせん?
ちょっと、この状態じゃぁ、行かれんじゃろーじゃない。
ミュウは気抜けするほど素直に「ハ」と言った。
自分でもこりゃダメだと思っていたのかもしれない。
その代わり、来年こそ絶対に行こうな。「ハ」。
ゴハンの後、ベッドにくっついて寝ころび、
親の方はとっくに見飽きた「おかあさんといっしょ ファミリーコンサート」を見る。
昼下がりの療育園の詰め所奥の部屋は、
親子でそっとしておいてくださる皆さんの心遣いで、
立ち働く職員の方々の声や気配をうっすらと感じつつ、眠くてのどかな時空間。
時々まぶたが閉じそうになっているくせに、
誰かが新たに舞台に登場すると「わ、出たよ、おかあさん」と
イチイチ感動とともに振りむいて知らせてくれるミュウに付き合いながら、
私も時々うとうとする。
コンサートが終わった後、
本格的なお昼寝の体制を整えてやり、
「明日の晩、お父さんと迎えに来るけんね」。
眠気でぼお――としたミュウは、
それでもバイバイの腕を振り上げてみせた。
―――――
自分から求めたつもりは全然ないのに、
いつのまにか気が付いたら、障害者自立生活運動の人たちの世界の
真っただ中みたいなところに、迷い込んでしまっていた。
それ以来、私の頭の中はなんだかわけがわからないまま、
痛くてならないことだらけになった。
一体なんの祟りかと思うほどに
この人たちと出会ってから私は苦しくてならない。
この人たちは重心のことなんか何も知っていなくて分かっていなくて、
知らないし分からない人には自分は分かってないということが分からないのが常だから
そこのところが、なかなか分かってはもらえなくて、通じなくて、
重心の話をしているのに平気で身障の文脈で返されて、否定されて、
別にそんなこと言っていないのに単に運動を批判していると決めつけられて、
だから、この人たちの言うことは私にはイチイチ気にくわないことばっかりで、
その通じなさに一人で悶絶しては「もう知らんわっ!」と何度ブチ切れたか分からない。
でも、この人たちの言葉と出会わなかったら、
私はたぶん「いかん! 勝手に決めてしもた!」と気付くことはなかったと思う。
父親の方だって即座に「たしかに」と返すことはなかったと思う。
だから、今も気に食わないことはいっぱいあるんだけど、
だから、これからも「もう知らん!」と何度も思うのはゼッタイ間違いないのだけれど、
だから、もしかしたら、
自分の心身の安定を守るためにも、他人さまに迷惑をかけないためにも
そろそろ「さようなら」と言う方がよいのでは、という気がしてもいるのだけれど、
でも、出会えたことに、感謝している。
ミュウは生まれて初めてのぜんそく発作を起こして、
久しぶりに「今度こそダメかと思ったぁぁ」エピソードを更新した。
ディズニー・オン・アイスに行くことにしていたのだけれど、
酸素マスクにサチュレーション・モニター装着ではどうにもならない。
園に入所している方の中で誰か連れて行ってもらえる人があったら、差し上げてください、と、
スタッフにチケットを託すことにした。
ベッドのミュウは「えーっ!!」と、顔で盛大に抗議したけれど、
「この状態じゃぁ、どうしたって行かれまー。
今年は誰か行かれる人に行ってもろーて、ミュウは来年いこうや。
その代わり、来年は必ずいこうね」というと、
しぶしぶ「ハ」と納得した。
なので、今年は春にチラシを見た時に
すぐさま事務局に「車いす席を!」と勢い込んで電話して、
冷たく「チケットの売り出しはまだ先です」と返されるくらいに、
「今年は行くぞ!」気分満々だった。
無事にチケットを買い、
中休みには、おむつ交換のために
授乳室を使わせてもらえるよう段取りもちゃんとつけた。
そして、先週末にミュウが帰ってきた時に
「いよいよ来週じゃねー。去年いけんかった分、楽しもうぜぇ」と盛り上げたところだったんである。
で、つい3日前のこと――。
「突然、全身にじんましんが出て、顔までむくんでいるので点滴をしたい」と
療育園から電話がかかってきた。「本人はいたって元気なので、ご安心を」とのこと。
電話を受けた父親の談では、ドクターの声の背後で
テレビだかDVDだかに大騒ぎしている娘の歓声が響き渡っていたというから、
まぁ、さほど心配はしなかったけれど、
あっちゃ~。ディズニーがぁぁぁ……。
いやいや、まだ日にちはある。大丈夫。
イヤな予感は、そう考えて宥めた。
……で、今朝。
どうやら、まだ、じんましんは出たり引っ込んだりしているらしい。
むくみのために採血も大変だったという。そうか。まだむくんでいるか……。
帰省はドクターからOKが出そうだけれど、
ディズニーを、どうする……?
間の悪いことに、日曜日には台風の暴風圏に入るとの情報もある。大雨はまず間違いなし。
もしも諦めて、誰か園の入所者の方に行ってもらうとしたら、
明後日のこととて決断を急ぎ、行ける人を当たってもらわなければならない。
私の頭には、
去年のまさにこの時期のぜんそくで
酸欠となり白目を剥いた娘の姿がよみがえっている。
じんましんが収まりきっていない状態で連れて行き、
台風で予測不能な事態もあり得る中、万が一にもぜんそくでも起こしたら……。
やめよう。来年にしよう。
夫婦で話し合って、そう決めた。
園に電話をかけ、
誰か、行ける方があれば行ってもらってください、と当たってもらうよう依頼した。
「家族が連れて行ける人がなかったらチケットは捨てますから」と言ったら、
電話に出た園の幹部は「家族に聞いてみてダメなら、あとは、
こちらから連れて行ってあげるか、ですね」と応えてくれた。
その言葉が嬉しかった。
もしもスタッフが出てくれるのなら(ボランティアになるのかもしれないけど)
日頃あまり外出できない子どもさんを連れて行ってあげてもらえたら、と思った。
よかった。……と、電話を切って、しばし……。
この間ずっと、「なにか」重苦しいものが心に引っかかっていた。
意識の上にはなかなか上ってこないけど、心がザワついてしまう「なにか」――。
……!
ミュウだ!
去年は、命が危ぶまれる状況もあって毎日通っていた。
だから「ディズニー中止」を決めたのもミュウのベッドサイドでのことだった。
スタッフとその話をしながらミュウの抗議を受けて、その場で説明し、ミュウも納得した。
でも、さっき私たちは
ミュウには断りも相談もなく勝手に決めてしまった!!
いかん!!
「今からミュウのところへ話をしに行ってくる。
親が勝手に決めてしもーたけん」
夫にメールを入れ、急ぎパソコンをシャットダウン。
今日の仕事の予定なんぞ、くっそぉ。このさいチャラよ。
夫からも
「たしかに。じゃぁ、ミュウによろしく!」と即座の返信。
そだ。“病人部屋”でテレビを独占させてもらっているなら
「おかあさんといっしょ ファミリーコンサート」DVDの新しいのを持っていってやろう。
そそくさと着替えて、車に飛び乗る。
ちょうど、お昼前でもある。
どうせ行くなら、お昼ごはんに間に合って食べさせてやりたい。
なんだか急いで取り返さなければならない者があるみたいに気持ちがせいて、
コンビニで買ったおむすびをかじりながら園に急ぐ。
着いたら、
看護師さんの介助でもう8割がた食べ終えていたけれど、食欲は旺盛。
足はまだむくんでいるものの、顔のむくみも赤みも引いていた。
あー、えかったぁ。顔見たら安心したぁ~。
いきなり現れた母親に、ミュウは固まっている。
ふっふ、ええもの持ってきたでぇ。ジャーン。
DVDを取り出すと、ミュウはいっそう驚愕の表情で固まる。
(これが喜びの表情だというのは、慣れぬ人にはたいそう分かりにくい)
食事介助を代わって、2人になってから、
おもむろに本題を切り出してみる。
ミュウちゃん、明後日のディズニー、
すっごく残念じゃけど、またまた来年ってことにせん?
ちょっと、この状態じゃぁ、行かれんじゃろーじゃない。
ミュウは気抜けするほど素直に「ハ」と言った。
自分でもこりゃダメだと思っていたのかもしれない。
その代わり、来年こそ絶対に行こうな。「ハ」。
ゴハンの後、ベッドにくっついて寝ころび、
親の方はとっくに見飽きた「おかあさんといっしょ ファミリーコンサート」を見る。
昼下がりの療育園の詰め所奥の部屋は、
親子でそっとしておいてくださる皆さんの心遣いで、
立ち働く職員の方々の声や気配をうっすらと感じつつ、眠くてのどかな時空間。
時々まぶたが閉じそうになっているくせに、
誰かが新たに舞台に登場すると「わ、出たよ、おかあさん」と
イチイチ感動とともに振りむいて知らせてくれるミュウに付き合いながら、
私も時々うとうとする。
コンサートが終わった後、
本格的なお昼寝の体制を整えてやり、
「明日の晩、お父さんと迎えに来るけんね」。
眠気でぼお――としたミュウは、
それでもバイバイの腕を振り上げてみせた。
―――――
自分から求めたつもりは全然ないのに、
いつのまにか気が付いたら、障害者自立生活運動の人たちの世界の
真っただ中みたいなところに、迷い込んでしまっていた。
それ以来、私の頭の中はなんだかわけがわからないまま、
痛くてならないことだらけになった。
一体なんの祟りかと思うほどに
この人たちと出会ってから私は苦しくてならない。
この人たちは重心のことなんか何も知っていなくて分かっていなくて、
知らないし分からない人には自分は分かってないということが分からないのが常だから
そこのところが、なかなか分かってはもらえなくて、通じなくて、
重心の話をしているのに平気で身障の文脈で返されて、否定されて、
別にそんなこと言っていないのに単に運動を批判していると決めつけられて、
だから、この人たちの言うことは私にはイチイチ気にくわないことばっかりで、
その通じなさに一人で悶絶しては「もう知らんわっ!」と何度ブチ切れたか分からない。
でも、この人たちの言葉と出会わなかったら、
私はたぶん「いかん! 勝手に決めてしもた!」と気付くことはなかったと思う。
父親の方だって即座に「たしかに」と返すことはなかったと思う。
だから、今も気に食わないことはいっぱいあるんだけど、
だから、これからも「もう知らん!」と何度も思うのはゼッタイ間違いないのだけれど、
だから、もしかしたら、
自分の心身の安定を守るためにも、他人さまに迷惑をかけないためにも
そろそろ「さようなら」と言う方がよいのでは、という気がしてもいるのだけれど、
でも、出会えたことに、感謝している。
2012.09.29 / Top↑
オランダ政府の「安楽死委員会」への医師からの報告によると、
2010年から2011年でオランダでの安楽死件数は559件も増加。
全死者数に占める割合で言うと、
2.3%から2.7%への増加。
委員会の幹部は、
医師が合法的な安楽死を行ったかどうかを調査する機関だが、
急増の理由については推測する以外にないとしたうえで、
以下の4つを上げている。
① 医師が前よりもちゃんと報告するようになってきた。
② 終末期の患者の安楽死が増えている。
③ 人口の高齢化の結果。
④ 倫理観の変化。
Number of assisted suicide cases reported by Dutch doctors rose in 2011
AP, September 27, 2012
でも、何度か書いたけど、
安楽死法の施行の後でオランダの緩和ケアは崩壊した、と
当時の保健省が認めた、という情報があるし、
王子の事故で
オランダには25歳以上の重症脳損傷患者の治療機関が存在しないことも
報道されている。
そういうなかで、
治療を受けられない状況ができていて、
それならば痛み苦しむよりは安楽死を、と自己決定する人たちの意識を
「倫理観の変化」と括ってしまうって、どうなの……?
―――――――
ところで、
この記事で「医師による自殺幇助(PAS)」と書かれているのは
スイスや米国オレゴン州、ワシントン州のPASと必ずしも同じではなく、安楽死のこと。
それは記事冒頭で
「安楽死はオランダでは2002年に、ターミナルな病状で、多大な苦痛があり、
死にたいと望む人に対して合法化された」と書かれていることや、
その法律に基づいて医師らが安楽死を報告する「安楽死コミッション」のデータが
この記事に使われていることからも明らか。
それなのに、APはタイトルとリードでは
「オランダで医師による自殺幇助件数が増加」という
事実と異なった書き方をしている。
10年にもAPは、
ドイツで消極的安楽死が合法化された時に
それを自殺幇助合法化だと報じ、詳細まで偽ったことがあった ↓
AP通信がドイツの「自殺幇助合法化」報道を訂正(2010/7/3)
英国で「合法化ロビー」と非難されているBBCも
似たようなことをやっている ↓
BBC「世論は慈悲殺を支持」の怪(2010/2/1)
「BBCは公金を使って安楽死を推進している」と議員らが批判(2010/2/5)
幇助合法化を訴えて自殺した健康な夫婦の続報を新たな事件のように書くBBCの怪(2010/4/1)
2010年から2011年でオランダでの安楽死件数は559件も増加。
全死者数に占める割合で言うと、
2.3%から2.7%への増加。
委員会の幹部は、
医師が合法的な安楽死を行ったかどうかを調査する機関だが、
急増の理由については推測する以外にないとしたうえで、
以下の4つを上げている。
① 医師が前よりもちゃんと報告するようになってきた。
② 終末期の患者の安楽死が増えている。
③ 人口の高齢化の結果。
④ 倫理観の変化。
Number of assisted suicide cases reported by Dutch doctors rose in 2011
AP, September 27, 2012
でも、何度か書いたけど、
安楽死法の施行の後でオランダの緩和ケアは崩壊した、と
当時の保健省が認めた、という情報があるし、
王子の事故で
オランダには25歳以上の重症脳損傷患者の治療機関が存在しないことも
報道されている。
そういうなかで、
治療を受けられない状況ができていて、
それならば痛み苦しむよりは安楽死を、と自己決定する人たちの意識を
「倫理観の変化」と括ってしまうって、どうなの……?
―――――――
ところで、
この記事で「医師による自殺幇助(PAS)」と書かれているのは
スイスや米国オレゴン州、ワシントン州のPASと必ずしも同じではなく、安楽死のこと。
それは記事冒頭で
「安楽死はオランダでは2002年に、ターミナルな病状で、多大な苦痛があり、
死にたいと望む人に対して合法化された」と書かれていることや、
その法律に基づいて医師らが安楽死を報告する「安楽死コミッション」のデータが
この記事に使われていることからも明らか。
それなのに、APはタイトルとリードでは
「オランダで医師による自殺幇助件数が増加」という
事実と異なった書き方をしている。
10年にもAPは、
ドイツで消極的安楽死が合法化された時に
それを自殺幇助合法化だと報じ、詳細まで偽ったことがあった ↓
AP通信がドイツの「自殺幇助合法化」報道を訂正(2010/7/3)
英国で「合法化ロビー」と非難されているBBCも
似たようなことをやっている ↓
BBC「世論は慈悲殺を支持」の怪(2010/2/1)
「BBCは公金を使って安楽死を推進している」と議員らが批判(2010/2/5)
幇助合法化を訴えて自殺した健康な夫婦の続報を新たな事件のように書くBBCの怪(2010/4/1)
2012.09.29 / Top↑
ずっと気になりながら、まとめることができていないカナダのBaby M“無益な訴訟”事件。無益な治療の続行を望んだ親が暴行罪だかに問われた。治療続行を巡る裁判が終わり、今度は親の犯罪が裁かれる? 気になる。
http://medicalfutility.blogspot.jp/2012/09/baby-m-appeals-court-affirms-ruling.html
http://medicalfutility.blogspot.jp/2012/09/baby-m-treatment-case-ends-criminal.html
オランダで医師による自殺幇助が11年から10年で559件も増加。死者全体に占める割合で2.3%から2.7%へ。:記事は自殺幇助と書いているけど、これは安楽死のことと思う。できたら明日エントリーに。
http://www.washingtonpost.com/world/europe/number-of-assisted-suicide-cases-reported-by-dutch-doctors-rose-in-2011/2012/09/26/89be3168-07ec-11e2-9eea-333857f6a7bd_story.html
オレゴンの医師が語る自殺幇助の実態。
http://www.thebostonpilot.com/article.asp?ID=15125
英国でNicklinsonさんと一緒に訴訟起こしていた男性Martinさんが、上訴へ。Nicklinsonさんについてはこちらにリンク一覧 ⇒http://blogs.yahoo.co.jp/spitzibara/65474511.html
http://www.guardian.co.uk/society/2012/sep/20/locked-in-syndrome-appeal-court
スイス議会、自殺幇助の規制強化案を否決。:去年とっくに諦めたのかと思ったけど、まだ諦めていない議員さんたちもいるんだ……。関連はこちらにリンク一覧 ⇒http://blogs.yahoo.co.jp/spitzibara/63558038.html
http://www.reuters.com/article/2012/09/26/us-swiss-politics-suicide-idUSBRE88P15320120926
スウェーデンで母から娘へ子宮提供、2件。
http://www.bioedge.org/index.php/bioethics/bioethics_article/10244#comments
【関連エントリー】
2年以内に世界初の子宮移植ができる、と英国の研究者(2009/10/23)
英国女性が娘に子宮提供を決断、OK出ればスウェーデンで移植手術(2011/6/14)
未来の医療はバイオ・バンク依存型に?
http://www.medicalnewstoday.com/releases/250506.php
小児が脳損傷から負った障害は2年で固まる。:こういう情報がどういう方向に利用されていくのか……と、つい考えてしまう。“無益な治療”論を追いかけたりしていると。
http://www.medicalnewstoday.com/releases/250422.php
米国在住の人のブログで、子どもに5分間に8本ものワクチンが打たれた、という経験談。
http://www.kohara.ac/blog/author1/2009/08/
新刊本。「ジフテリア予防接種禍事件―戦後史の闇と子どもたち」田井中克人、和気正芳著 かもがわ出版:この事件、全然知らなかった。読みたい。
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4780305691?tag=hatena-bu-22
GatesとBuffetの“Giving Pledge”スーパー・リッチ慈善資本主義クラブに、続々と超富裕層が集まっている。
http://www.huffingtonpost.com/2012/09/19/warren-buffett-giving-pledge-new-members_n_1896882.html
毒性廃棄物投棄への規制できていない、とアムネスティとグリーンピースが警告。「Trafigura事件の教訓は生かされていない」:毒性廃棄物が象牙海岸に投棄されて3万人を超える被害者を出したTrafigura事件は、当ブログでも追いかけた事件。
http://www.guardian.co.uk/environment/2012/sep/25/trafigura-lessons-toxic-waste-dumping
象牙海岸の悲惨(2007/12/15)
「象牙海岸で先進国の有害ゴミによる死傷者多数」事件:続報(2008/10/24)
先進国の有害廃棄物でアフリカから3万人超える集団訴訟、最近はマフィアが核廃棄物を海に(2009/9/19)
NZで、ダウン症候群の人の親たちが、出生前遺伝子診断導入で保健省を提訴。
http://www.savingdowns.com/press-release-down-syndrome-parents-take-ministry-of-health-to-the-international-criminal-court/
日本。「出生前診断に対する DPI女性障害者ネットワークの意見」
http://dl.dropbox.com/u/28020767/%E5%87%BA%E7%94%9F%E5%89%8D%E8%A8%BA%E6%96%AD%E3%81%AB%E5%AF%BE%E3%81%99%E3%82%8B%E6%84%8F%E8%A6%8B_DWNJ20120924.pdf
日本の映画「39窃盗団」「ダウン症の兄と発達障害のある弟が、心神喪失者は罰せられないという刑法39条を悪用した振り込め詐欺のボスにだまされ、泥棒の旅に出る異色コメディー」
http://www.cinematoday.jp/movie/T0015746
22日にあったシンポ。「子どもを育てない親への支援 親が育てない子どもへの支援」:たぶん、この話題の流れなんだと推測しているのだけど、ツイッターで「ケアに向いていない女性」という表現が目について、なんだ、その個人モデル発想は? と。
http://www.kojoken.jp/ivent/contents/120922mizyushin.html
日本。出生前、血液で父子判定 国内2業者、1年で150件
http://www.asahi.com/national/update/0924/TKY201209230471.html
ヨーロッパの高齢者ケアの危機。
http://www.bioedge.org/index.php/bioethics/bioethics_article/10242#comments
ワシントンDC郊外の高所得層地域で貧困が広がっている。
http://www.washingtonpost.com/local/poverty-grows-in-high-income-washington-suburbs/2012/09/21/271af814-0406-11e2-8102-ebee9c66e190_story.html
原爆資料館開館当初、「原子力の未来」というコーナーがあった??という件に対する、学芸員さんからの回答をいただきました。ブログsakichokomemoから。
http://sakichokomemo.blogspot.jp/2012/09/blog-post_1526.html
http://medicalfutility.blogspot.jp/2012/09/baby-m-appeals-court-affirms-ruling.html
http://medicalfutility.blogspot.jp/2012/09/baby-m-treatment-case-ends-criminal.html
オランダで医師による自殺幇助が11年から10年で559件も増加。死者全体に占める割合で2.3%から2.7%へ。:記事は自殺幇助と書いているけど、これは安楽死のことと思う。できたら明日エントリーに。
http://www.washingtonpost.com/world/europe/number-of-assisted-suicide-cases-reported-by-dutch-doctors-rose-in-2011/2012/09/26/89be3168-07ec-11e2-9eea-333857f6a7bd_story.html
オレゴンの医師が語る自殺幇助の実態。
http://www.thebostonpilot.com/article.asp?ID=15125
英国でNicklinsonさんと一緒に訴訟起こしていた男性Martinさんが、上訴へ。Nicklinsonさんについてはこちらにリンク一覧 ⇒http://blogs.yahoo.co.jp/spitzibara/65474511.html
http://www.guardian.co.uk/society/2012/sep/20/locked-in-syndrome-appeal-court
スイス議会、自殺幇助の規制強化案を否決。:去年とっくに諦めたのかと思ったけど、まだ諦めていない議員さんたちもいるんだ……。関連はこちらにリンク一覧 ⇒http://blogs.yahoo.co.jp/spitzibara/63558038.html
http://www.reuters.com/article/2012/09/26/us-swiss-politics-suicide-idUSBRE88P15320120926
スウェーデンで母から娘へ子宮提供、2件。
http://www.bioedge.org/index.php/bioethics/bioethics_article/10244#comments
【関連エントリー】
2年以内に世界初の子宮移植ができる、と英国の研究者(2009/10/23)
英国女性が娘に子宮提供を決断、OK出ればスウェーデンで移植手術(2011/6/14)
未来の医療はバイオ・バンク依存型に?
http://www.medicalnewstoday.com/releases/250506.php
小児が脳損傷から負った障害は2年で固まる。:こういう情報がどういう方向に利用されていくのか……と、つい考えてしまう。“無益な治療”論を追いかけたりしていると。
http://www.medicalnewstoday.com/releases/250422.php
米国在住の人のブログで、子どもに5分間に8本ものワクチンが打たれた、という経験談。
http://www.kohara.ac/blog/author1/2009/08/
新刊本。「ジフテリア予防接種禍事件―戦後史の闇と子どもたち」田井中克人、和気正芳著 かもがわ出版:この事件、全然知らなかった。読みたい。
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4780305691?tag=hatena-bu-22
GatesとBuffetの“Giving Pledge”スーパー・リッチ慈善資本主義クラブに、続々と超富裕層が集まっている。
http://www.huffingtonpost.com/2012/09/19/warren-buffett-giving-pledge-new-members_n_1896882.html
毒性廃棄物投棄への規制できていない、とアムネスティとグリーンピースが警告。「Trafigura事件の教訓は生かされていない」:毒性廃棄物が象牙海岸に投棄されて3万人を超える被害者を出したTrafigura事件は、当ブログでも追いかけた事件。
http://www.guardian.co.uk/environment/2012/sep/25/trafigura-lessons-toxic-waste-dumping
象牙海岸の悲惨(2007/12/15)
「象牙海岸で先進国の有害ゴミによる死傷者多数」事件:続報(2008/10/24)
先進国の有害廃棄物でアフリカから3万人超える集団訴訟、最近はマフィアが核廃棄物を海に(2009/9/19)
NZで、ダウン症候群の人の親たちが、出生前遺伝子診断導入で保健省を提訴。
http://www.savingdowns.com/press-release-down-syndrome-parents-take-ministry-of-health-to-the-international-criminal-court/
日本。「出生前診断に対する DPI女性障害者ネットワークの意見」
http://dl.dropbox.com/u/28020767/%E5%87%BA%E7%94%9F%E5%89%8D%E8%A8%BA%E6%96%AD%E3%81%AB%E5%AF%BE%E3%81%99%E3%82%8B%E6%84%8F%E8%A6%8B_DWNJ20120924.pdf
日本の映画「39窃盗団」「ダウン症の兄と発達障害のある弟が、心神喪失者は罰せられないという刑法39条を悪用した振り込め詐欺のボスにだまされ、泥棒の旅に出る異色コメディー」
http://www.cinematoday.jp/movie/T0015746
22日にあったシンポ。「子どもを育てない親への支援 親が育てない子どもへの支援」:たぶん、この話題の流れなんだと推測しているのだけど、ツイッターで「ケアに向いていない女性」という表現が目について、なんだ、その個人モデル発想は? と。
http://www.kojoken.jp/ivent/contents/120922mizyushin.html
日本。出生前、血液で父子判定 国内2業者、1年で150件
http://www.asahi.com/national/update/0924/TKY201209230471.html
ヨーロッパの高齢者ケアの危機。
http://www.bioedge.org/index.php/bioethics/bioethics_article/10242#comments
ワシントンDC郊外の高所得層地域で貧困が広がっている。
http://www.washingtonpost.com/local/poverty-grows-in-high-income-washington-suburbs/2012/09/21/271af814-0406-11e2-8102-ebee9c66e190_story.html
原爆資料館開館当初、「原子力の未来」というコーナーがあった??という件に対する、学芸員さんからの回答をいただきました。ブログsakichokomemoから。
http://sakichokomemo.blogspot.jp/2012/09/blog-post_1526.html
2012.09.29 / Top↑
園との連絡ノートより
今日の昼食後、更衣し、
ミュウさんとゴロゴロ(添い寝)しました。
TVをつけると右頬が下になり、
(塗ったばかりの)軟膏がとれるかと思ったので。
ミュウさ―ん!
「は―――い」
口パク&右手挙上。
ミュウちゃん
「は―――い」
口パクのみ。
コダマ ミュウさーん。
「は……」
もう、いいよ。何回も……。
ちゃんと返事してくれるのが嬉しくて、
何度も呼んでしまいました。
すごくニコニコされていて、
声掛けにすごく反応してくれて……。
嬉しかったです。
ありがとう!!
元気な週末をお過ごしください。
今日の昼食後、更衣し、
ミュウさんとゴロゴロ(添い寝)しました。
TVをつけると右頬が下になり、
(塗ったばかりの)軟膏がとれるかと思ったので。
ミュウさ―ん!
「は―――い」
口パク&右手挙上。
ミュウちゃん
「は―――い」
口パクのみ。
コダマ ミュウさーん。
「は……」
もう、いいよ。何回も……。
ちゃんと返事してくれるのが嬉しくて、
何度も呼んでしまいました。
すごくニコニコされていて、
声掛けにすごく反応してくれて……。
嬉しかったです。
ありがとう!!
元気な週末をお過ごしください。
2012.09.29 / Top↑
(前のエントリーの続きです)
私がこの問題にこだわらないでいられないのは、先に拙著からの引用部分に書いたように
アシュリー事件という窓から私が今という時代の世界のありようを見てきたから。
そこに今という時代の底知れない恐ろしさを感じるから。
70年代は中絶の問題を挟んで
障害者は「女性により殺し殺される関係」を問題とし、
リブは「女性と障害者が殺し殺される関係として対立させられる社会」を問題としたけど、
今度は、
生まれる時と死ぬ時の間の問題(端的に言えば介護の問題)を挟んで、
親と障害当事者は対立させられ、その挙句に殺し殺される関係へと
また追い詰められようとしているんじゃないか、と思う。
在宅介護の重症児・者が親に殺される事件が起こると、
「殺した」「殺された」とツイッターやブログが騒がしくなるけれど、
その時に「殺した」一人の親の背後には、
今この時にも寝たきりの重症児者を家で介護している何千人という親たちがいる。
その多くは既に高齢だ。親の方が要介護の障害者になっていることもあり得る。
(たしか去年奈良で寝たきりの娘を「殺した親」は自身が車いすの障害者だった)
必ずしも支援やサービスの整った都会で暮らしている人ばかりではない。
私には、世の中の動きは「地域移行」という名目で、
そういう暮らし方をする親子をさらに増やしていこうとしているように思えてならない。
「殺した」「殺された」と言っている人たちは、
そういう何千組もの、今この時にもどこかでそうして暮らしている親子が
共に人権を侵害されて日々を暮らしているという事態の方には
なぜ、あまり興味がないのだろう。
今この時に一番苦しみ痛んでいる人の声は社会の表には出てこない。
今この時に苦しみのさなかにいる人は社会に向かって声を上げる余裕も気力もないから。
だから介護の問題で言えば、一番過酷な介護を担っている人の声は私たちには届かない。
そういう人の介護の中に抱え込まれてしまっている、
もともと言葉を持たない重症心身「障害者」の声も、
私たちには届いてこない。
でも、だからといって、
そういう親子が今この時に存在していないわけじゃない。
聞こえてくるのは、なぜ
「親は抱え込むからダメだ」という声(これが何を解決する?)ばかりで、
「親はなぜ抱え込まざるを得なくなるのだろう」と問うてみる声ではないのだろう。
障害者運動の側も「親が一番の敵」と
親だけは個人モデルに置き去りにした捉え方から
「なぜ親が一番の敵にならざるを得ないのか」と
親をも社会モデルに含めた捉え方へと、一歩を踏み出してもらえないだろうか。
そうでなければ、介護の問題を挟んで対立させられているうちに、
親はそれ以外に自分が生きられないところに追い詰められて「殺させられる」だけではなく、
殺したことを称賛されるところまで連れて行かれてしまう。
あのケイ・ギルダーデールのように。
(ギルダーデール事件の詳細は文末にリンク)
「死の自己決定」や「尊厳死」さらに例えば「慈悲殺」といった概念が、
そのツールとして巧妙に利用されていくのだとも思う。
そこでは「自己決定」や「自己選択」という名目で
障害当事者だけでなく親や家族介護者も一緒に「自己責任」の中に廃棄されようとしている。
ギルダーデール事件の時に、
あるME患者さんが書いたように、
「介護者が助けてほしいといっても、その願いは無視されますよ、
でもね、もしも、どうにもできなくなって自殺を手伝うのだったら、
同情をもって迎えてあげますよ」という社会からのメッセージを通じて――。
そのことを、最近ずっと考えている。
考え込んでしまっては、
ミュウを抱いて崖っぷちに追い詰められていくようで、怯えてしまう。
こんなに酷薄な時代だと知りながら、いったい何ができるというのだろう、と
無力感に打ちひしがれ、絶望しそうになる。
森岡先生は、生命学の営みについて、
以下のように書いていた。
……私は何も強制せず、ただ、問いを発し続けるだろう。そうやって、私は、この社会の支配的価値観を担った人々を、世界の一隅から、執拗に揺さぶり続けていくのである。
(p.352)
私には森岡先生やリブの人たちのような「揺さぶ」るほどの力はないけれど、
これまでも殺されてきたし今も殺されている重症障害のある人の一人を娘に持ち、
これまでも殺させられてきたし、今からまさに殺させられようとしている親の一人として、
障害者運動も女からの声、親からの声に一度とり乱してみては、と思うのだから、
例えば、「親は障害児を邪魔だと言って施設に入れたり殺すから敵だ」と言う人は、
その一方で自身の人生では、自分が社会的存在として生きるのに邪魔だから
子育ても年寄りの介護も身近な誰か(例えば背負わせやすい女)に背負わせてきた、
または、状況によっては背負わせる可能性があるのではないか、と
自分をまず問うてみてはどうか? と思うのだから、
そう思うなら、私はそう思うと言うしかないんだな、と
この本を読みながら、思った。
そんなふうに、70年代の米津さんと同じことを
私は私自身の言葉で、呼びかけていくしかないのだな、と思った。
「私はそうして行きたいと思っています」という
米津さんの言葉が、すがしい。
私も、そうして行きたいと思います。
【Gilderdale事件関連エントリー】
Gilderdale事件:「慈悲殺」を「自殺幇助」希望の代理決定として正当化する論理(2008/4/18)
慢性疲労症候群の娘を看護師の母親がモルヒネで殺したGilderdale事件(2010/1/19)
Gilderdale事件から、自殺幇助議論の落とし穴について(2010/1/22)
Gilderdale事件で母親に執行猶予(2010/1/26)
Gilderdale事件:こんな「無私で献身的な」母親は訴追すべきではなかった、と判事(2010/1/26)
「Gilderdale事件はダブルスタンダードの1例」とME患者(2010/1/29)
私がこの問題にこだわらないでいられないのは、先に拙著からの引用部分に書いたように
アシュリー事件という窓から私が今という時代の世界のありようを見てきたから。
そこに今という時代の底知れない恐ろしさを感じるから。
70年代は中絶の問題を挟んで
障害者は「女性により殺し殺される関係」を問題とし、
リブは「女性と障害者が殺し殺される関係として対立させられる社会」を問題としたけど、
今度は、
生まれる時と死ぬ時の間の問題(端的に言えば介護の問題)を挟んで、
親と障害当事者は対立させられ、その挙句に殺し殺される関係へと
また追い詰められようとしているんじゃないか、と思う。
在宅介護の重症児・者が親に殺される事件が起こると、
「殺した」「殺された」とツイッターやブログが騒がしくなるけれど、
その時に「殺した」一人の親の背後には、
今この時にも寝たきりの重症児者を家で介護している何千人という親たちがいる。
その多くは既に高齢だ。親の方が要介護の障害者になっていることもあり得る。
(たしか去年奈良で寝たきりの娘を「殺した親」は自身が車いすの障害者だった)
必ずしも支援やサービスの整った都会で暮らしている人ばかりではない。
私には、世の中の動きは「地域移行」という名目で、
そういう暮らし方をする親子をさらに増やしていこうとしているように思えてならない。
「殺した」「殺された」と言っている人たちは、
そういう何千組もの、今この時にもどこかでそうして暮らしている親子が
共に人権を侵害されて日々を暮らしているという事態の方には
なぜ、あまり興味がないのだろう。
今この時に一番苦しみ痛んでいる人の声は社会の表には出てこない。
今この時に苦しみのさなかにいる人は社会に向かって声を上げる余裕も気力もないから。
だから介護の問題で言えば、一番過酷な介護を担っている人の声は私たちには届かない。
そういう人の介護の中に抱え込まれてしまっている、
もともと言葉を持たない重症心身「障害者」の声も、
私たちには届いてこない。
でも、だからといって、
そういう親子が今この時に存在していないわけじゃない。
聞こえてくるのは、なぜ
「親は抱え込むからダメだ」という声(これが何を解決する?)ばかりで、
「親はなぜ抱え込まざるを得なくなるのだろう」と問うてみる声ではないのだろう。
障害者運動の側も「親が一番の敵」と
親だけは個人モデルに置き去りにした捉え方から
「なぜ親が一番の敵にならざるを得ないのか」と
親をも社会モデルに含めた捉え方へと、一歩を踏み出してもらえないだろうか。
そうでなければ、介護の問題を挟んで対立させられているうちに、
親はそれ以外に自分が生きられないところに追い詰められて「殺させられる」だけではなく、
殺したことを称賛されるところまで連れて行かれてしまう。
あのケイ・ギルダーデールのように。
(ギルダーデール事件の詳細は文末にリンク)
「死の自己決定」や「尊厳死」さらに例えば「慈悲殺」といった概念が、
そのツールとして巧妙に利用されていくのだとも思う。
そこでは「自己決定」や「自己選択」という名目で
障害当事者だけでなく親や家族介護者も一緒に「自己責任」の中に廃棄されようとしている。
ギルダーデール事件の時に、
あるME患者さんが書いたように、
「介護者が助けてほしいといっても、その願いは無視されますよ、
でもね、もしも、どうにもできなくなって自殺を手伝うのだったら、
同情をもって迎えてあげますよ」という社会からのメッセージを通じて――。
そのことを、最近ずっと考えている。
考え込んでしまっては、
ミュウを抱いて崖っぷちに追い詰められていくようで、怯えてしまう。
こんなに酷薄な時代だと知りながら、いったい何ができるというのだろう、と
無力感に打ちひしがれ、絶望しそうになる。
森岡先生は、生命学の営みについて、
以下のように書いていた。
……私は何も強制せず、ただ、問いを発し続けるだろう。そうやって、私は、この社会の支配的価値観を担った人々を、世界の一隅から、執拗に揺さぶり続けていくのである。
(p.352)
私には森岡先生やリブの人たちのような「揺さぶ」るほどの力はないけれど、
これまでも殺されてきたし今も殺されている重症障害のある人の一人を娘に持ち、
これまでも殺させられてきたし、今からまさに殺させられようとしている親の一人として、
障害者運動も女からの声、親からの声に一度とり乱してみては、と思うのだから、
例えば、「親は障害児を邪魔だと言って施設に入れたり殺すから敵だ」と言う人は、
その一方で自身の人生では、自分が社会的存在として生きるのに邪魔だから
子育ても年寄りの介護も身近な誰か(例えば背負わせやすい女)に背負わせてきた、
または、状況によっては背負わせる可能性があるのではないか、と
自分をまず問うてみてはどうか? と思うのだから、
そう思うなら、私はそう思うと言うしかないんだな、と
この本を読みながら、思った。
そんなふうに、70年代の米津さんと同じことを
私は私自身の言葉で、呼びかけていくしかないのだな、と思った。
「私はそうして行きたいと思っています」という
米津さんの言葉が、すがしい。
私も、そうして行きたいと思います。
【Gilderdale事件関連エントリー】
Gilderdale事件:「慈悲殺」を「自殺幇助」希望の代理決定として正当化する論理(2008/4/18)
慢性疲労症候群の娘を看護師の母親がモルヒネで殺したGilderdale事件(2010/1/19)
Gilderdale事件から、自殺幇助議論の落とし穴について(2010/1/22)
Gilderdale事件で母親に執行猶予(2010/1/26)
Gilderdale事件:こんな「無私で献身的な」母親は訴追すべきではなかった、と判事(2010/1/26)
「Gilderdale事件はダブルスタンダードの1例」とME患者(2010/1/29)
2012.09.29 / Top↑
(前のエントリーからの続きです)
第6章の「障害者と『内なる優生思想』」では、
もう一度青い芝の会とリブとの衝突を振り返りつつ、
内なる優生思想問題が掘り下げられていくのだけれど、
青い芝の会の考え方が簡潔に取りまとめられている個所は、例えば以下。
健全者のエゴイズムは、一般の健常者の心の中にあるだけではない。それは、障害児の世話をしている親の心の中にも存在する。親は、障害児の世話という重い荷物を背中からおろして安心したい、心の平安がほしいと思っている。これこそが、健全者のエゴイズムである。さらに悪いことには、親は、「障害児が死んでしまえば自分が楽になる」という思いを、「障害児が死んでしまうことが障害児にとって幸せになる」とごまかしていくのだ。
障害者は、社会に広く蔓延している「健全者のエゴイズム」と闘わなければならない。それと同時に、そのようなエゴイズムにまみれた親からの「解放」が必要なのである。彼らが自立生活を始めた一つの理由は、親から解放されることだった。
「青い芝の会」は、社会に向かって訴える。なぜあなたたちは、障害者を不幸と決めつけるのか。障害者は生まれてこなかった方が幸せだと言うのか。障害者はこの社会に存在しない方がいいと考えるのか。……
(p.292)
「青い芝の会」のすごさは、
「健全者幻想」がほかならぬ障害者自身の心の中にもあることに気付いたこと。
……彼らは、健全者たちを仮想的にして、彼らを叩きつぶせばいいとする闘いの欺瞞に気づいてしまったのだ。闘うべき敵は目の前の相手だけではない。闘おうとする自分自身の内部にも、敵は潜んでいる。だから、障害者解放運動は、自己との闘いを不可避的に含まざるを得ない。このきわめて「生命学的」な状況から目を逸らさなかったのが、「青い芝の会」の治世の深さだ。そこから目を逸らさなかったがゆえに、彼らは、後にウーマン・リブの女性たちと、深い次元でのやりとりをすることができ、彼女たちの大きなインパクトを与えたのであろう。
(p.299-300)
リブの側からも重要な呼びかけがされている。
米津知子(このまえ福島菊次郎さんの映画で見た人だ)の発言。
確かに殺される側の障害者とそして殺す側の女というのはこの世の中で対立させられていると思うし……(spitzibaraによる中略)……
…… 女が殺したのだと言うところで女が糾弾されると言うのは、一面では正当だけれども、でもやっぱり何故女に障害児殺しをさせたのだと言うところで権力に対する恨みとして怒りとしてそれを向けていってほしいと言う気がします。私はそうして行きたいと思っています。
(p.308)
こうしたリブからの応答について、
森岡先生は以下のように書く。
障害者と女性の対立というのは、権力によって仕掛けられた図式であり、表面上の対立を超えて両者は共闘できるという考え方が、ここにあらわれている。
(p.309)
……すなわち、女性と障害者は権力によって対立させられているのであるから、われわれは、われわれをそのような対立に追い込もうとする権力に対して、共に闘わなければならないという「女性と障害者の共闘パラダイム」が成立したのである。
(p.309)
でも、私はこのパラダイムは本当は成立していない、と思う。
なぜなら、
70年代に、
「障害理由での中絶は女性の権利の中でどうなんだ?」という障害者運動からの問いを
リブは正面から受け止め、少なくとも応えようとその痛みを引き受け考えた、
(解決は今だにしていないとしても)と思うのだけれど、
「母親は殺すんじゃない、殺させられているんだ」というリブからの問い返しを
70年代にも障害者運動は受け止めなかったし、今だに受け止めていないのでは?
実は、この疑問こそが、
この本をどうしても読みたいと私が思った理由だった。
ものすごく僭越なのかもしれないけれど、
「アシュリー事件」で以下のように書いた時、
私は米津さんと同じことを呼び掛けたのだと思う。
(これを書いた時の私は、優生保護法改悪反対運動についても、
そこでのリブと障害者運動の対立についても米津知子についても何も知らなかった。
田中美津も名前くらいしか知らなかったけど)
……「親が一番の敵」とは、本当に、逃れようもなくズバリと真実を突いた言葉だ。親はその真実にまず気付かなければならないのだと思う。抑圧する者としての自分を自覚しているべきなのだろうと思う。一方、「親が一番の敵」だという指摘が真実だというのは、「親が敵になってしまう一面が確かにある」ということであって、「全面的に敵だ」ということでも「敵でしかない」ということでもないはずだ。「親が一番の敵だ」と対立的なところから責めて終わるのではなく「親が一番の敵にならざるを得ない社会」にも目を転じることによって、親とも共に考え闘う障害学や障害者運動というものはありえないだろうか。そんなおずおずとした問いかけをしてみないでいられなかった。
アシュリーの父親やディクマらが描いて見せる「親の愛」vs「障害者運動のイデオロギー」という対立の構図を乗り越えていく方策がどこかにあるとしたら、そこから探し始めることができるのではないか。そして、実はそれは非常に切迫した急務ではないのか……。
拙著「アシュリー事件」(p.253-254)
でも、この呼びかけは
障害者運動からは「障害者運動を批判した」と受け止められて、
「だから障害者は自立生活を目指したんじゃないか」と返されてしまう。
そこに、私が感じるのは、
障害者運動という運動がもつ男性性に対するやりきれなさ、とでも言ったもの。
それは例えば、
重症重複障害のある子どもの親としての立場で
「ピーター・シンガーには重症児・者の現実が見えていない」と言っているのに対して、
「おまえにはシンガーが分かっていない」と学者から返されてしまうことに感じる
やりきれなさと、とても似ている。
じゃぁ、私がシンガーの本をもっと読み、シンガーを正しく理解すれば
シンガーに重症児・者の現実が見えるようになる、というのだろうか、というような。
それは単に「もっと勉強して出直してこい」と聞く耳もたず
高いところから門前払いを食らわせているだけではないのか、というような。
そんな中で悶々としながら頭の中でグルグルしてきたことが
「アシュリー事件」の後で田中美津と出会い、それからこの本を読んで
やっと、くっきりとした言葉になってきた気がする。
それが先の疑問。
障害者運動はリブに問題提起をしたけれど、
女性の側からの問い返しと共闘の呼び掛けには、いまだ応えていないのではないか――。
(次のエントリーに続く)
第6章の「障害者と『内なる優生思想』」では、
もう一度青い芝の会とリブとの衝突を振り返りつつ、
内なる優生思想問題が掘り下げられていくのだけれど、
青い芝の会の考え方が簡潔に取りまとめられている個所は、例えば以下。
健全者のエゴイズムは、一般の健常者の心の中にあるだけではない。それは、障害児の世話をしている親の心の中にも存在する。親は、障害児の世話という重い荷物を背中からおろして安心したい、心の平安がほしいと思っている。これこそが、健全者のエゴイズムである。さらに悪いことには、親は、「障害児が死んでしまえば自分が楽になる」という思いを、「障害児が死んでしまうことが障害児にとって幸せになる」とごまかしていくのだ。
障害者は、社会に広く蔓延している「健全者のエゴイズム」と闘わなければならない。それと同時に、そのようなエゴイズムにまみれた親からの「解放」が必要なのである。彼らが自立生活を始めた一つの理由は、親から解放されることだった。
「青い芝の会」は、社会に向かって訴える。なぜあなたたちは、障害者を不幸と決めつけるのか。障害者は生まれてこなかった方が幸せだと言うのか。障害者はこの社会に存在しない方がいいと考えるのか。……
(p.292)
「青い芝の会」のすごさは、
「健全者幻想」がほかならぬ障害者自身の心の中にもあることに気付いたこと。
……彼らは、健全者たちを仮想的にして、彼らを叩きつぶせばいいとする闘いの欺瞞に気づいてしまったのだ。闘うべき敵は目の前の相手だけではない。闘おうとする自分自身の内部にも、敵は潜んでいる。だから、障害者解放運動は、自己との闘いを不可避的に含まざるを得ない。このきわめて「生命学的」な状況から目を逸らさなかったのが、「青い芝の会」の治世の深さだ。そこから目を逸らさなかったがゆえに、彼らは、後にウーマン・リブの女性たちと、深い次元でのやりとりをすることができ、彼女たちの大きなインパクトを与えたのであろう。
(p.299-300)
リブの側からも重要な呼びかけがされている。
米津知子(このまえ福島菊次郎さんの映画で見た人だ)の発言。
確かに殺される側の障害者とそして殺す側の女というのはこの世の中で対立させられていると思うし……(spitzibaraによる中略)……
…… 女が殺したのだと言うところで女が糾弾されると言うのは、一面では正当だけれども、でもやっぱり何故女に障害児殺しをさせたのだと言うところで権力に対する恨みとして怒りとしてそれを向けていってほしいと言う気がします。私はそうして行きたいと思っています。
(p.308)
こうしたリブからの応答について、
森岡先生は以下のように書く。
障害者と女性の対立というのは、権力によって仕掛けられた図式であり、表面上の対立を超えて両者は共闘できるという考え方が、ここにあらわれている。
(p.309)
……すなわち、女性と障害者は権力によって対立させられているのであるから、われわれは、われわれをそのような対立に追い込もうとする権力に対して、共に闘わなければならないという「女性と障害者の共闘パラダイム」が成立したのである。
(p.309)
でも、私はこのパラダイムは本当は成立していない、と思う。
なぜなら、
70年代に、
「障害理由での中絶は女性の権利の中でどうなんだ?」という障害者運動からの問いを
リブは正面から受け止め、少なくとも応えようとその痛みを引き受け考えた、
(解決は今だにしていないとしても)と思うのだけれど、
「母親は殺すんじゃない、殺させられているんだ」というリブからの問い返しを
70年代にも障害者運動は受け止めなかったし、今だに受け止めていないのでは?
実は、この疑問こそが、
この本をどうしても読みたいと私が思った理由だった。
ものすごく僭越なのかもしれないけれど、
「アシュリー事件」で以下のように書いた時、
私は米津さんと同じことを呼び掛けたのだと思う。
(これを書いた時の私は、優生保護法改悪反対運動についても、
そこでのリブと障害者運動の対立についても米津知子についても何も知らなかった。
田中美津も名前くらいしか知らなかったけど)
……「親が一番の敵」とは、本当に、逃れようもなくズバリと真実を突いた言葉だ。親はその真実にまず気付かなければならないのだと思う。抑圧する者としての自分を自覚しているべきなのだろうと思う。一方、「親が一番の敵」だという指摘が真実だというのは、「親が敵になってしまう一面が確かにある」ということであって、「全面的に敵だ」ということでも「敵でしかない」ということでもないはずだ。「親が一番の敵だ」と対立的なところから責めて終わるのではなく「親が一番の敵にならざるを得ない社会」にも目を転じることによって、親とも共に考え闘う障害学や障害者運動というものはありえないだろうか。そんなおずおずとした問いかけをしてみないでいられなかった。
アシュリーの父親やディクマらが描いて見せる「親の愛」vs「障害者運動のイデオロギー」という対立の構図を乗り越えていく方策がどこかにあるとしたら、そこから探し始めることができるのではないか。そして、実はそれは非常に切迫した急務ではないのか……。
拙著「アシュリー事件」(p.253-254)
でも、この呼びかけは
障害者運動からは「障害者運動を批判した」と受け止められて、
「だから障害者は自立生活を目指したんじゃないか」と返されてしまう。
そこに、私が感じるのは、
障害者運動という運動がもつ男性性に対するやりきれなさ、とでも言ったもの。
それは例えば、
重症重複障害のある子どもの親としての立場で
「ピーター・シンガーには重症児・者の現実が見えていない」と言っているのに対して、
「おまえにはシンガーが分かっていない」と学者から返されてしまうことに感じる
やりきれなさと、とても似ている。
じゃぁ、私がシンガーの本をもっと読み、シンガーを正しく理解すれば
シンガーに重症児・者の現実が見えるようになる、というのだろうか、というような。
それは単に「もっと勉強して出直してこい」と聞く耳もたず
高いところから門前払いを食らわせているだけではないのか、というような。
そんな中で悶々としながら頭の中でグルグルしてきたことが
「アシュリー事件」の後で田中美津と出会い、それからこの本を読んで
やっと、くっきりとした言葉になってきた気がする。
それが先の疑問。
障害者運動はリブに問題提起をしたけれど、
女性の側からの問い返しと共闘の呼び掛けには、いまだ応えていないのではないか――。
(次のエントリーに続く)
2012.09.29 / Top↑
「生命学に何ができるか 脳死・フェミニズム・優生思想」
森岡正博 勁草書房 2002
冒頭の脳死関連の章も大変面白いのだけれど、
今回はとりあえず、ウーマン・リブと障害者運動との間にあったことを知り、
そのうえで考えてみたいことがあってこの本を手にした事情があるので、
脳死関連はここではパスして、以下もほぼ自分のためのメモとして。
まず最初にメモしておきたいこととして
パーソン論批判。
ちなみに29歳の森岡先生が書いたパーソン論批判についてはこちらに ↓
森岡正博氏(29歳)による「パーソン論の限界」(2009/8/22)
それを読んでspitzibaraが書いたパーソン論批判はこちら ↓
Spitzibaraからパーソン論へのクレーム(2009/8/23)
…パーソン論には大きな罠がある。それは、われわれが見失ってはならない人間観や、われわれが引き受けなければならないはずの倫理性というものを、巧妙に隠ぺいしてしまう働きがあるのだ。そのことを明らかにし、パーソン論の発想を批判しなければならない。われわれの課題とは、パーソン論を綿密に展開することにあるのではなく、パーソン論とは別要に考えてゆく可能性を模索することにある。
(p.109-110)
森岡先生は、パーソン論は見かけだけはラディカルだけど
実は保守主義であり、免責、免罪のイデオロギーだ、と看破する。
すなわち、パーソン論とは、われわれの多くがこの社会で実行しているところの、生命に価値の高低をつける差別的な取り扱いを、あからさまに肯定する理論なのである。それは、社会の現実というものを見据えたうえで、さらにそれを乗り越えていこうという思想ではない。それは、現実社会で行われている差別的な行為に、理論のお墨付きを与える、保守主義的な思想なのだ。(p.110)
パーソン論にあるのは、自分が悪いことをしないためには、どのように「悪」を定義すればよいかという視点だ。裏返せば、パーソン論には、悪い行いをしてしまった自分が、それを引き受けてどのように生き続ければいいのかという視点がない。悪の「責め」を自らに引き受けながら、いかに人生を生き切ればよいのかという視点がない。
(p.118)
パーソン論が、われわれの目をふさいで見えなくさせているもの、それが〈揺らぐ私〉のリアリティである。〈揺らぐ私〉のリアリティとは何か。
(p.127)
この〈揺らぐ私〉のリアリティが、
次の章でフェミニズムを経て、さらに次の章で田中美津の「とり乱し」と、
そのとり乱しを通して他者と出会おうとした彼女の思想へと繋がっていく。
第3章のキモは
70年代の優生保護紹介悪反対運動で障害者運動から投げかけられた
女性の選択権と選別的中絶における命の選別の相克の問題について
リブの側でどれほどの思索が深められていったか、というところ。
私がこの本で一番読みたかったのも、そこだった。
田中美津は、
胎児は人間ではない、と理屈で正当化されただけでは済まないものが自分の中にある、
それは何かと問い、
女は好んで中絶しているのではなく、中絶させられているのだ。それを確認したうえで、田中は、中絶する自分を殺人者としてとらえる。胎児の生命を絶つという事実から目をそらすことなく、その行為を殺人としてとらえる。そのうえで、自分が殺人者とならざるをえないようになっているこの社会の構造と、そしておそらくはこの声明世界の構造の真相を、殺人者の目からとらえ直そうとしているのである。そしてこの問いのさらに背後には、殺人や生命の殺戮なしには生きていけない人間存在とはいったい何なのかという根本的な問いが、ゆるくつながる形で存在していると私は思う。
(p.169)
……中絶は道徳的に悪ではないから許される、というふうには村上(spitzibara注:節子)や田中は考えない。そうではなく、中絶を子殺しだと認めたうえで、そういう子殺しをしてしまう自分を見つめ、自分の生のあり方を見つめ、自分が子殺しをしてしまうのはなぜか、子殺しをさせられてしまうのはなぜかというふうに思索を展開し、みずからの生きる道を定めていく。このような思索のパラダイム転換こそが、七〇年代ウーマン・リブの生命倫理の革新性なのである。
(p.176-7)
村上は、
女の生理にのっとって「衝動的に」子どもを生める日のために、
命の管理としての中絶=子殺しを女自身の手でやるべきだと主張している。
(私はここはまだよく理解できない)
中絶についての森岡先生のスタンスも、
分かったような気がするのだけど微妙で分かり切っていない気もするので
ここではパスしておく。
結局のところ、70年代に障害者運動から問われた、
女性の中絶の権利の中に障害を理由にした中絶の権利も含まれるのか、という問題は
「リブの言説の内部では決着が付かず、八〇年代を経て現在にまで持ち越されている」(p.190)
で、森岡先生が田中美津の思索の先に構想している「生命学にできること」とは
例えば
……単純で一面的でもいいから、どちらかの立場で一刀両断してすっきりしたい、という誘惑に最後まで抵抗すること。これらの難問に直面したときにわれわれを襲う「とり乱し」の状況に、まずは耐えること。そして、自分のなかのとり乱しの内部へと深く入り、なぜ私がこんなにもとり乱しているのかを、私自身の人生と経験を断層検査しながら解体していくこと。
(p.243)
あるいは
「悪ではないもの」の内容を記述して「そのように行動せよ!」と指令する倫理学ではなく、「悪」を背負った者同士が、自らの存在を自己肯定しつつ、どのようにして「悪ではないもの」をめざして歩んでいけるのかを、とり乱しと出会いのプロセスのなかで学び合い、伝達し合っていく営み。……
(p.248)
それは森岡先生自身の中では、以下のような
矛盾する男としての自分の「とり乱し」の自覚と、
その「とり乱し」の苦しさから逃げない覚悟となっている。
……私の中には、女たちの声を聞きそれと出会ってゆきたい自分があると同時に、いままでどおり身近な女たちに苦しみと辛さを押し付けて、男の権力性の上にあぐらをかいたまま、自分の快適さと欲望追求にいそしみたい自分とが同居している……
(p.237)
(次のエントリーに続く)
森岡正博 勁草書房 2002
冒頭の脳死関連の章も大変面白いのだけれど、
今回はとりあえず、ウーマン・リブと障害者運動との間にあったことを知り、
そのうえで考えてみたいことがあってこの本を手にした事情があるので、
脳死関連はここではパスして、以下もほぼ自分のためのメモとして。
まず最初にメモしておきたいこととして
パーソン論批判。
ちなみに29歳の森岡先生が書いたパーソン論批判についてはこちらに ↓
森岡正博氏(29歳)による「パーソン論の限界」(2009/8/22)
それを読んでspitzibaraが書いたパーソン論批判はこちら ↓
Spitzibaraからパーソン論へのクレーム(2009/8/23)
…パーソン論には大きな罠がある。それは、われわれが見失ってはならない人間観や、われわれが引き受けなければならないはずの倫理性というものを、巧妙に隠ぺいしてしまう働きがあるのだ。そのことを明らかにし、パーソン論の発想を批判しなければならない。われわれの課題とは、パーソン論を綿密に展開することにあるのではなく、パーソン論とは別要に考えてゆく可能性を模索することにある。
(p.109-110)
森岡先生は、パーソン論は見かけだけはラディカルだけど
実は保守主義であり、免責、免罪のイデオロギーだ、と看破する。
すなわち、パーソン論とは、われわれの多くがこの社会で実行しているところの、生命に価値の高低をつける差別的な取り扱いを、あからさまに肯定する理論なのである。それは、社会の現実というものを見据えたうえで、さらにそれを乗り越えていこうという思想ではない。それは、現実社会で行われている差別的な行為に、理論のお墨付きを与える、保守主義的な思想なのだ。(p.110)
パーソン論にあるのは、自分が悪いことをしないためには、どのように「悪」を定義すればよいかという視点だ。裏返せば、パーソン論には、悪い行いをしてしまった自分が、それを引き受けてどのように生き続ければいいのかという視点がない。悪の「責め」を自らに引き受けながら、いかに人生を生き切ればよいのかという視点がない。
(p.118)
パーソン論が、われわれの目をふさいで見えなくさせているもの、それが〈揺らぐ私〉のリアリティである。〈揺らぐ私〉のリアリティとは何か。
(p.127)
この〈揺らぐ私〉のリアリティが、
次の章でフェミニズムを経て、さらに次の章で田中美津の「とり乱し」と、
そのとり乱しを通して他者と出会おうとした彼女の思想へと繋がっていく。
第3章のキモは
70年代の優生保護紹介悪反対運動で障害者運動から投げかけられた
女性の選択権と選別的中絶における命の選別の相克の問題について
リブの側でどれほどの思索が深められていったか、というところ。
私がこの本で一番読みたかったのも、そこだった。
田中美津は、
胎児は人間ではない、と理屈で正当化されただけでは済まないものが自分の中にある、
それは何かと問い、
女は好んで中絶しているのではなく、中絶させられているのだ。それを確認したうえで、田中は、中絶する自分を殺人者としてとらえる。胎児の生命を絶つという事実から目をそらすことなく、その行為を殺人としてとらえる。そのうえで、自分が殺人者とならざるをえないようになっているこの社会の構造と、そしておそらくはこの声明世界の構造の真相を、殺人者の目からとらえ直そうとしているのである。そしてこの問いのさらに背後には、殺人や生命の殺戮なしには生きていけない人間存在とはいったい何なのかという根本的な問いが、ゆるくつながる形で存在していると私は思う。
(p.169)
……中絶は道徳的に悪ではないから許される、というふうには村上(spitzibara注:節子)や田中は考えない。そうではなく、中絶を子殺しだと認めたうえで、そういう子殺しをしてしまう自分を見つめ、自分の生のあり方を見つめ、自分が子殺しをしてしまうのはなぜか、子殺しをさせられてしまうのはなぜかというふうに思索を展開し、みずからの生きる道を定めていく。このような思索のパラダイム転換こそが、七〇年代ウーマン・リブの生命倫理の革新性なのである。
(p.176-7)
村上は、
女の生理にのっとって「衝動的に」子どもを生める日のために、
命の管理としての中絶=子殺しを女自身の手でやるべきだと主張している。
(私はここはまだよく理解できない)
中絶についての森岡先生のスタンスも、
分かったような気がするのだけど微妙で分かり切っていない気もするので
ここではパスしておく。
結局のところ、70年代に障害者運動から問われた、
女性の中絶の権利の中に障害を理由にした中絶の権利も含まれるのか、という問題は
「リブの言説の内部では決着が付かず、八〇年代を経て現在にまで持ち越されている」(p.190)
で、森岡先生が田中美津の思索の先に構想している「生命学にできること」とは
例えば
……単純で一面的でもいいから、どちらかの立場で一刀両断してすっきりしたい、という誘惑に最後まで抵抗すること。これらの難問に直面したときにわれわれを襲う「とり乱し」の状況に、まずは耐えること。そして、自分のなかのとり乱しの内部へと深く入り、なぜ私がこんなにもとり乱しているのかを、私自身の人生と経験を断層検査しながら解体していくこと。
(p.243)
あるいは
「悪ではないもの」の内容を記述して「そのように行動せよ!」と指令する倫理学ではなく、「悪」を背負った者同士が、自らの存在を自己肯定しつつ、どのようにして「悪ではないもの」をめざして歩んでいけるのかを、とり乱しと出会いのプロセスのなかで学び合い、伝達し合っていく営み。……
(p.248)
それは森岡先生自身の中では、以下のような
矛盾する男としての自分の「とり乱し」の自覚と、
その「とり乱し」の苦しさから逃げない覚悟となっている。
……私の中には、女たちの声を聞きそれと出会ってゆきたい自分があると同時に、いままでどおり身近な女たちに苦しみと辛さを押し付けて、男の権力性の上にあぐらをかいたまま、自分の快適さと欲望追求にいそしみたい自分とが同居している……
(p.237)
(次のエントリーに続く)
2012.09.29 / Top↑
lessorさんによる「障害のある乳幼児と母親たち―その変容プロセス」一瀬早百合著 生活書院の書評。
http://d.hatena.ne.jp/lessor/20120918/1347984805
lessorさんが最後に「この本を「障害児の親」が読んだらどう思うのだろう、というのは個人的な興味としてある」と書いておられるので、私は既に「児の親」ではないし、lessorさんのように研究の文脈に位置付けては読めていないけれど、7月にこの本を読んで書いたエントリーを以下に ↓
「障害のある乳幼児と母親たち その変容のプロセス」から「なぜ障害のある子どもの母親は『親でしかない』のか」へ 1(2012/7/27)
「障害のある乳幼児と母親たち その変容のプロセス」から「なぜ障害のある子どもの母親は『親でしかない』のか」へ 2(2012/7/27)
「障害のある乳幼児と母親たち その変容のプロセス」から「なぜ障害のある子どもの母親は『親でしかない』のか」へ 3(2012/7/27)
―――――
スコットランドのマクドナルド議員、執念の自殺幇助合法化法案再提出へ。Nicklinson事件で議員の意識も高まったはず、と。
http://www.google.com/hostednews/ukpress/article/ALeqM5j6AOXpOV8m5ZNaVbL1hrf5-GXd5Q?docId=N0251691348023545977A
【スコットランド自殺幇助合関連エントリー】
スコットランドでも自殺幇助合法化法案か(2009/2/20)
スコットランドでも「死の自己決定権」アドボケイトの医師が高齢障害者の餓死を幇助(2009/3/11)
スコットランドの自殺幇助合法化法案に倫理団体から批判(2009/4/22)
スコットランド議会で自殺幇助合法化案、提出へ(2009/4/25)
自殺幇助希望のスコットランドの女性、腎臓透析やめるよう医師に”命じ“る(2009/6/14)
英国看護学会、スコットランドの自殺幇助法案提出議員と会談へ(2009/7/28)
スコットランドの世論調査で3分の2以上が自殺幇助合法化を支持(2009/11/8)
「自立生活できない身障者も可」スコットランド自殺幇助合法化法案(2010/1/22)
ローマ法王がスコットランドの自殺幇助合法化法案を批判(2010/2/6)
スコットランド自殺幇助合法化法案を「死の自己決定権」アドボケイトが批判(2010/2/9)
スコットランドのパブコメは、87%が自殺幇助合法化法案に反対(2010/6/20)
スコットランド、加・ケベック州で自殺幇助について意見聴取(2010/9/8)
スコットランド自殺幇助合法化法案から「自立できない障害者」要件は外される見通しに(2010/9/22)
スコットランドの自殺幇助合法化法案、否決(2010/12/2)
【Nicklinson事件関連エントリー】
“ロックト・イン症候群”の男性が「妻に殺してもらう権利」求め提訴(英)(2010/7/20)
自殺幇助希望の“ロックト・イン”患者Nicklinson訴訟で判決(2012/3/13)
自殺幇助訴訟のNicklinsonさん、ツイッターを始める(2012/7/2)
「死ぬ権利」求めるロックト・イン患者Nicklinsonさん、敗訴(2012/8/17)
Nicklinsonさん、肺炎で死去(2012/8/29)
オーストラリア政府、障害者の家族への介護者手当カットへ?
http://www.radionz.co.nz/news/national/116162/payments-for-family-carers-could-be-restricted
在宅で終末期の患者をケアする介護者には看護師の支援が有効。
http://www.medicalnewstoday.com/releases/250310.php
英国の頭痛持ちの原因は鎮痛剤の飲みすぎ?
http://www.guardian.co.uk/society/2012/sep/19/headaches-painkillers
英国の空港で、“high value(価値の高い)”富裕層の乗客は一般と同じようにパスポートチェックに並ばなくてもスイスイ通り過ぎられるよう制度化する、とか。
http://www.guardian.co.uk/uk/2012/sep/18/high-value-fasttrack-passport-checks?CMP=EMCNEWEML1355
NYT. 米国では、公教育で優秀児をもっと大切に育てろ、というOp-Ed。:9月14日の補遺で拾ったニュースでは、米国の子供の5人に1人が貧困状態だというのもあった……ということをなぜともなく考えてしまう。
Young, Gifted and Neglected: Public education’s neglect of high-ability students doesn’t just deny individuals opportunities they deserve. It also imperils the country’s future supply of scientists, inventors and entrepreneurs.
日本語。5回目の新型核実験=X線使用、爆発伴わず―米
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120919-00000036-jij-int
http://d.hatena.ne.jp/lessor/20120918/1347984805
lessorさんが最後に「この本を「障害児の親」が読んだらどう思うのだろう、というのは個人的な興味としてある」と書いておられるので、私は既に「児の親」ではないし、lessorさんのように研究の文脈に位置付けては読めていないけれど、7月にこの本を読んで書いたエントリーを以下に ↓
「障害のある乳幼児と母親たち その変容のプロセス」から「なぜ障害のある子どもの母親は『親でしかない』のか」へ 1(2012/7/27)
「障害のある乳幼児と母親たち その変容のプロセス」から「なぜ障害のある子どもの母親は『親でしかない』のか」へ 2(2012/7/27)
「障害のある乳幼児と母親たち その変容のプロセス」から「なぜ障害のある子どもの母親は『親でしかない』のか」へ 3(2012/7/27)
―――――
スコットランドのマクドナルド議員、執念の自殺幇助合法化法案再提出へ。Nicklinson事件で議員の意識も高まったはず、と。
http://www.google.com/hostednews/ukpress/article/ALeqM5j6AOXpOV8m5ZNaVbL1hrf5-GXd5Q?docId=N0251691348023545977A
【スコットランド自殺幇助合関連エントリー】
スコットランドでも自殺幇助合法化法案か(2009/2/20)
スコットランドでも「死の自己決定権」アドボケイトの医師が高齢障害者の餓死を幇助(2009/3/11)
スコットランドの自殺幇助合法化法案に倫理団体から批判(2009/4/22)
スコットランド議会で自殺幇助合法化案、提出へ(2009/4/25)
自殺幇助希望のスコットランドの女性、腎臓透析やめるよう医師に”命じ“る(2009/6/14)
英国看護学会、スコットランドの自殺幇助法案提出議員と会談へ(2009/7/28)
スコットランドの世論調査で3分の2以上が自殺幇助合法化を支持(2009/11/8)
「自立生活できない身障者も可」スコットランド自殺幇助合法化法案(2010/1/22)
ローマ法王がスコットランドの自殺幇助合法化法案を批判(2010/2/6)
スコットランド自殺幇助合法化法案を「死の自己決定権」アドボケイトが批判(2010/2/9)
スコットランドのパブコメは、87%が自殺幇助合法化法案に反対(2010/6/20)
スコットランド、加・ケベック州で自殺幇助について意見聴取(2010/9/8)
スコットランド自殺幇助合法化法案から「自立できない障害者」要件は外される見通しに(2010/9/22)
スコットランドの自殺幇助合法化法案、否決(2010/12/2)
【Nicklinson事件関連エントリー】
“ロックト・イン症候群”の男性が「妻に殺してもらう権利」求め提訴(英)(2010/7/20)
自殺幇助希望の“ロックト・イン”患者Nicklinson訴訟で判決(2012/3/13)
自殺幇助訴訟のNicklinsonさん、ツイッターを始める(2012/7/2)
「死ぬ権利」求めるロックト・イン患者Nicklinsonさん、敗訴(2012/8/17)
Nicklinsonさん、肺炎で死去(2012/8/29)
オーストラリア政府、障害者の家族への介護者手当カットへ?
http://www.radionz.co.nz/news/national/116162/payments-for-family-carers-could-be-restricted
在宅で終末期の患者をケアする介護者には看護師の支援が有効。
http://www.medicalnewstoday.com/releases/250310.php
英国の頭痛持ちの原因は鎮痛剤の飲みすぎ?
http://www.guardian.co.uk/society/2012/sep/19/headaches-painkillers
英国の空港で、“high value(価値の高い)”富裕層の乗客は一般と同じようにパスポートチェックに並ばなくてもスイスイ通り過ぎられるよう制度化する、とか。
http://www.guardian.co.uk/uk/2012/sep/18/high-value-fasttrack-passport-checks?CMP=EMCNEWEML1355
NYT. 米国では、公教育で優秀児をもっと大切に育てろ、というOp-Ed。:9月14日の補遺で拾ったニュースでは、米国の子供の5人に1人が貧困状態だというのもあった……ということをなぜともなく考えてしまう。
Young, Gifted and Neglected: Public education’s neglect of high-ability students doesn’t just deny individuals opportunities they deserve. It also imperils the country’s future supply of scientists, inventors and entrepreneurs.
日本語。5回目の新型核実験=X線使用、爆発伴わず―米
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120919-00000036-jij-int
2012.09.29 / Top↑
11月にマサチューセッツ中で予定されている住民投票の
質問2は、医師による自殺幇助(PAS)合法化の賛否を問うもの。
MA州医師会から、この質問に対して反対のスタンスを取ることが表明された。
反対の理由は、
・PASは癒すものとしての医師の役割に根本的にそぐわない。
・余命6カ月の診断はできないし、そうした予測は不正確である。
数か月で死ぬと診断された患者がそれ以上、時には何年も生きるケースも少なくない。
・投票の質問には、不十分な説明で患者が意思決定してしまうことへの予防策も
患者が死ぬよう教唆を受けて意思決定することへの予防策も盛り込まれていない。
NEW: Mass Medical Society Takes Stance on Physician Assisted Suicide and Medical Marijuana
GOLOCAL Worceter.com, September 18, 2012
【関連エントリー】
MA州で自殺幇助合法化めぐり住民投票を求める動き(2011/8/25)
MA州医師会が自殺幇助合法化反対を確認(2011/12/6)
WA州の高齢者施設経営者からMA州住民への手紙「PAS合法化したら滑ります」(2012/5/29)
質問2は、医師による自殺幇助(PAS)合法化の賛否を問うもの。
MA州医師会から、この質問に対して反対のスタンスを取ることが表明された。
反対の理由は、
・PASは癒すものとしての医師の役割に根本的にそぐわない。
・余命6カ月の診断はできないし、そうした予測は不正確である。
数か月で死ぬと診断された患者がそれ以上、時には何年も生きるケースも少なくない。
・投票の質問には、不十分な説明で患者が意思決定してしまうことへの予防策も
患者が死ぬよう教唆を受けて意思決定することへの予防策も盛り込まれていない。
NEW: Mass Medical Society Takes Stance on Physician Assisted Suicide and Medical Marijuana
GOLOCAL Worceter.com, September 18, 2012
【関連エントリー】
MA州で自殺幇助合法化めぐり住民投票を求める動き(2011/8/25)
MA州医師会が自殺幇助合法化反対を確認(2011/12/6)
WA州の高齢者施設経営者からMA州住民への手紙「PAS合法化したら滑ります」(2012/5/29)
2012.09.29 / Top↑
どこかで拾っているはずなのに、
すぐには探しだせないのだけど、
英国で遺伝病を回避する手段として研究開発中の技術について、
生まれてくる子どもが遺伝的な親を3人もつことになる倫理問題が
ちょっと前から問題になっていた。
それについて、
英国のヒト受精胚機構(FHEA:the Human Fertilisation and Embryology Authority)が
パブリック・オピニオンの募集を行う、というニュース。
現在英国では遺伝子変異による遺伝病の人が約12000人。
その原因の多くはミトコンドリアの変異だが、
ミトコンドリアそのものは
200人に1人の割合で何らかの変異が起こる。
問題は、その変異が重大な遺伝病として
母親から次世代に伝えられてしまうこと。
そこで、それを避けるために
母親のミトコンドリアを健康なドナー卵子のものと置き換える技術が開発されている。
卵子段階で核を入れ替える方法と、
早期の胚段階でそれを行う方法とがある。
卵子ドナーの遺伝形質が子どもに受け継がれるため、
生まれてくる子どもは遺伝的に3人の親を持つこととなる。
実際にはいまだ開発途上の技術で、
Newcastle 大学のDoug Turnbullが有名どころ。
法改正によって、この技術が利用可能となれば、
クリニックごとにHFEAなどに認可を求めることとなる。
HFEAでは、
ネットでのアンケートによって募集した意見を春に保健大臣に答申する予定で
アンケート実施は9月17日から12月7日まで。
問いの一つは、
ドナーの匿名性の問題で、
血液提供のように匿名とするか
生殖子ドナーのように生まれた子どもから連絡を取ることを可能とするか。
子どものアイデンティティにかかわる問題。
またこうした遺伝子操作は次世代に影響するという問題も。
Turnbull博士の共同研究者 Mary Herbertは
「ミトコンドリア病の患者さんたちの人生を変えてあげたいのです。
こうした変異は患者さんとその家族のQOLに深刻な影響を与えます。
何世代にも渡って影響することも少なくありません。
それを止めることができれば、
こうした病気に苦しむ何百人という人たちにとって
大きな救いとなるでしょう」
「現在はこうした新技術の安全性と効果を検証する実験を行っているところです。
この実験でHFEAの意思決定プロセスには十分な情報が提供されると思います。
完了には3年から5年かかるかもしれませんが」
Regulator to consult public over plans for new fertility treatments
The Guardian, September 17, 2012
英国では2008年にヒト受精・胚法改正を巡って
非常に大きな国民的議論が行われました。
それについては、以下に ↓
遺伝子診断で障害も重病も弾くつもり?(英国)
「障害児はnon-person」と英国上院で
「聾の子どもを産む権利」論争
医学進歩しても24週未満未熟児は救命できない?
”救済者兄弟”
英国の”救済者兄弟”事情 追加情報
英国ヒト受精・胚法関連ニュース(2008/5/13)
英国ヒト受精・胚法関連ニュース2(2008/5/13)
英国議会ハイブリッド胚と救済者兄弟を認める(2008/5/20)
すぐには探しだせないのだけど、
英国で遺伝病を回避する手段として研究開発中の技術について、
生まれてくる子どもが遺伝的な親を3人もつことになる倫理問題が
ちょっと前から問題になっていた。
それについて、
英国のヒト受精胚機構(FHEA:the Human Fertilisation and Embryology Authority)が
パブリック・オピニオンの募集を行う、というニュース。
現在英国では遺伝子変異による遺伝病の人が約12000人。
その原因の多くはミトコンドリアの変異だが、
ミトコンドリアそのものは
200人に1人の割合で何らかの変異が起こる。
問題は、その変異が重大な遺伝病として
母親から次世代に伝えられてしまうこと。
そこで、それを避けるために
母親のミトコンドリアを健康なドナー卵子のものと置き換える技術が開発されている。
卵子段階で核を入れ替える方法と、
早期の胚段階でそれを行う方法とがある。
卵子ドナーの遺伝形質が子どもに受け継がれるため、
生まれてくる子どもは遺伝的に3人の親を持つこととなる。
実際にはいまだ開発途上の技術で、
Newcastle 大学のDoug Turnbullが有名どころ。
法改正によって、この技術が利用可能となれば、
クリニックごとにHFEAなどに認可を求めることとなる。
HFEAでは、
ネットでのアンケートによって募集した意見を春に保健大臣に答申する予定で
アンケート実施は9月17日から12月7日まで。
問いの一つは、
ドナーの匿名性の問題で、
血液提供のように匿名とするか
生殖子ドナーのように生まれた子どもから連絡を取ることを可能とするか。
子どものアイデンティティにかかわる問題。
またこうした遺伝子操作は次世代に影響するという問題も。
Turnbull博士の共同研究者 Mary Herbertは
「ミトコンドリア病の患者さんたちの人生を変えてあげたいのです。
こうした変異は患者さんとその家族のQOLに深刻な影響を与えます。
何世代にも渡って影響することも少なくありません。
それを止めることができれば、
こうした病気に苦しむ何百人という人たちにとって
大きな救いとなるでしょう」
「現在はこうした新技術の安全性と効果を検証する実験を行っているところです。
この実験でHFEAの意思決定プロセスには十分な情報が提供されると思います。
完了には3年から5年かかるかもしれませんが」
Regulator to consult public over plans for new fertility treatments
The Guardian, September 17, 2012
英国では2008年にヒト受精・胚法改正を巡って
非常に大きな国民的議論が行われました。
それについては、以下に ↓
遺伝子診断で障害も重病も弾くつもり?(英国)
「障害児はnon-person」と英国上院で
「聾の子どもを産む権利」論争
医学進歩しても24週未満未熟児は救命できない?
”救済者兄弟”
英国の”救済者兄弟”事情 追加情報
英国ヒト受精・胚法関連ニュース(2008/5/13)
英国ヒト受精・胚法関連ニュース2(2008/5/13)
英国議会ハイブリッド胚と救済者兄弟を認める(2008/5/20)
2012.09.29 / Top↑
スイス式の自殺幇助合法化を求めてきた団体
Verein Sterbehilfe Deutschland(StHD)は、
ドイツで商業的自殺幇助を禁止する法改正が起こなわれる見込みとなったことを受け、
スイスに事務所を移すことを決めた。
関係者がメディアに語ったところでは
StHDは300人の会員を擁し、これまで60件の自殺幇助を行った、とのこと。
会費は年ごとに200ユーロ、または終身会費として2000ユーロ。
ただし自殺幇助の後には会費は返還される(誰に、かは不明)ので
営利目的ではない、と創設者のKusch氏。
2008年に別の名称で立ちあげた時には
自殺幇助1件につき8000ユーロをチャージしたため
違法行為であるとして禁じられた。
そのため会費の身の制度に改めて
2010年に新たに立ちあげたのがStHDだという。
このたび、商業的自殺幇助を明確に違法とする法改正が確実視されることから
活動拠点をスイスに移すことに。
ただし、以下のニュース以外をざっと眺めてみた中には
スイスで自殺幇助を行う予定はない、との情報も。
New rules drive suicide firm to Switzerland
The Local, September 15, 2012
Verein Sterbehilfe Deutschland(StHD)は、
ドイツで商業的自殺幇助を禁止する法改正が起こなわれる見込みとなったことを受け、
スイスに事務所を移すことを決めた。
関係者がメディアに語ったところでは
StHDは300人の会員を擁し、これまで60件の自殺幇助を行った、とのこと。
会費は年ごとに200ユーロ、または終身会費として2000ユーロ。
ただし自殺幇助の後には会費は返還される(誰に、かは不明)ので
営利目的ではない、と創設者のKusch氏。
2008年に別の名称で立ちあげた時には
自殺幇助1件につき8000ユーロをチャージしたため
違法行為であるとして禁じられた。
そのため会費の身の制度に改めて
2010年に新たに立ちあげたのがStHDだという。
このたび、商業的自殺幇助を明確に違法とする法改正が確実視されることから
活動拠点をスイスに移すことに。
ただし、以下のニュース以外をざっと眺めてみた中には
スイスで自殺幇助を行う予定はない、との情報も。
New rules drive suicide firm to Switzerland
The Local, September 15, 2012
2012.09.29 / Top↑
9月14日の毎日新聞の「小児移植 課題重く 検証 6歳児未満 脳死臓器提供」という記事の最後の辺りで、聖隷三方原病院院長補佐の岡田真人氏が「終末期を迎えた患者の家族の精神的なケアに対応できる体制を全国的に整えるべきだ」「臓器提供は、あくまでも終末期医療の選択肢の一つ。終末期を迎え、悩む家族に寄り沿うチームを整備することが求められる」と語っている。同氏は、改正臓器移植法に基づく脳死臓器提供のマニュアル作りに携わった人物。:検索してみたら、岡田氏は09年に小児臓器提供 小児終末期医療の一つのオプションとしての臓器提供に対する医療者の対応の仕方というタイトルの論文を書いておられました。臓器提供は終末期医療の選択肢の一つ」というのは持論なのでしょう。でも分からないのは、「終末期医療」というのは、あくまでも患者さん本人のために行われる医療を言うのではないんだろうか、ということ。「臓器提供」そのものは医療ではなく、他者の「臓器移植」への協力行為でしかない。「臓器移植」は医療だとしても、それはレシピエントの利益のために行われる、レシピエントにとっての医療であって、臓器提供する側の利益のための、ドナーにとっての医療とは言えないはず。したがって、誰かが終末期に「臓器提供」を選択するとしても、それをドナーにとっての「終末期医療」に含まれる選択であるかのように言うことはできないはずだと思うのだけど? もしも、それをあたかも本人のための「終末期医療の選択肢」であるかのように言いなしてしまう人が「終末期を迎えた患者の家族への精神的なケア」を言うなら、その「精神的ケア」とは臓器提供への誘導を意味するのでは?
アイルランドで自殺幇助合法化を求める夫婦が訴訟を起こすらしい。
http://www.irishexaminer.com/breakingnews/ireland/wicklow-couple-to-challenge-assisted-suicide-laws-567105.html
ドイツで自殺幇助を行ってきた団体が、法改正による訴追のリスクから事務所をスイスに移した、というニュース。この団体、これまでに60人のドイツ人に自殺幇助を行ってきた、という情報もあるんだけど?
http://www2.wsls.com/news/2012/sep/15/german-assisted-suicide-group-opens-swiss-office-ar-2208178/
http://www.thelocal.de/society/20120915-44991.html
カナダのイスラム教徒の親が治療続行を訴えた無益な治療訴訟 Baby M事件で、裁判所が親の宗教的信条が子どもの最善の利益に沿っていないとして治療停止を命令。イスラム圏の
http://medicalfutility.blogspot.jp/2012/09/alberta-court-orders-baby-ms-life.html
上記に関連して、イスラム教のシャリア法が“無益な治療”論のターゲットとされつつある気配はRasouli訴訟の前半からあった ↓
「“治療停止”も“治療”だから同意は必要」とOntario上位裁判所(2011/5/17)
8月27日の補遺で拾った、同じくカナダのMr.Lをめぐる無益な治療事件でも、Mr.Lはイスラム教徒。
http://blogs.yahoo.co.jp/spitzibara/65501693.html
来週、途上国の農業改革めざしthe African Green Revolution Forum(AGRF)のカンファ。基調講演は前国連事務局長のコフィ・アナン氏、メリンダ・ゲイツ氏、ビル・ゲイツ氏など。
http://dailynews.co.tz/index.php/local-news/9626-agricultural-meet-set-for-next-week
グリーン・レボリューションの背景についてはこちらに ↓
ゲイツ財団がインドで目論んでいるのはワクチン普及だけでなくGM農業改革も(2011/4/16)
「アグリビジネス」の後ろにはワクチン推進と同じ構図が見える(2011/10/5)
“大型ハイテクGM強欲ひとでなし農業”を巡る、ゲイツ財団、モンサント、米国政府、AGRAの繋がり(2011/10/27)
米国テネシー州の2つのスクール・ディストリクトが教師の効率化を図るために合併するから、もっと資金を提供して、とゲイツ財団に要望。:公教育関連の資金を、スクール・ディストリクトが民間団体におねだりする構図。
http://www.wrcbtv.com/story/19552500/schools-asking-gates-foundation-for-more-funding
英国NHS、民営化に邁進?
http://www.guardian.co.uk/business/2012/sep/16/health-firms-nhs
日本語。子役のギャラは本人のもの? 親が子どもの扶養家族に? 子どもと親の法的な関係に迫る:親の権利・子の権利を考えるうえで、とても興味深い問題。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120916-00000301-bengocom-soci
2012.09.29 / Top↑
150人以上の議員への新たな調査で
医師による自殺幇助(PAS)合法化を支持すると回答したのは29%。
59%が反対で、12%は未定。
(スコットランドでは議員の86%が反対)
また72%が
医師が患者の求めによって致死薬を処方できることになったら
弱者に自殺を選択するよう圧力がかかる可能性がある、と考えている。
現在の経済状況では
弱者が家族の経済的な負担にならないよう自殺を選ぶリスクが増える、
と考える議員も、ほぼ60%。
MP’s ‘oppose assisted suicide move’
UKPA, September 15, 2012
Recession strengthens case against assisted suicide, MPs say
The Telegraph, September 15, 2012
まぁ、この記事だけを読めば、
英国の政治家の良識に安心してしまいそうだけれど、
医師による自殺幇助は認めないでも
「近親者による自殺幇助はおとがめなし」がすでに定着しているし、
英国の医療現場では
高齢者は機械的に「死ぬまで鎮静、さっさと脱水」で死なされているし、
障害者も入院すれば本人も家族も知らない内に「蘇生無用」指定されてしまうし、
そういう国で議員さんたちが
「この不況下でPAS合法化したのでは弱者に圧力が」と言ったって、なぁ……。
英国の医療現場の実態はこちら ↓
“終末期”プロトコルの機械的適用で「さっさと脱水・死ぬまで鎮静」(英)(2009/9/10)
肺炎の脳性まひ男性に、家族に知らせずDNR指定(英)(2011/8/3)
高齢者の入院時にカルテに「蘇生無用」ルーティーンで(英)(2011/10/18)
高齢者には食事介助も水分補給もナースコールもなし、カルテには家族も知らない「蘇生無用」……英国の医療(2011/11/14)
ケアホーム入所者に無断でDNR指定、NHSトラストが家族に謝罪(英)(2012/5/8)
「ダウン症だから」と本人にも家族にも無断でDNR指定(2012/9/13)
「NHSは助かるはずの知的障害者を組織的差別で死なせている」とMencap(2012/1/3)
ちなみにスコットランドで議員さんたちの警戒が高いのは、
もしかして、過去にこういうことがあったからかも? ↓
「自立生活できない身障者も可」スコットランド自殺幇助合法化法案(2010/1/22)
ローマ法王がスコットランドの自殺幇助合法化法案を批判(2010/2/6)
スコットランド自殺幇助合法化法案を「死の自己決定権」アドボケイトが批判(2010/2/9)
スコットランドのパブコメは、87%が自殺幇助合法化法案に反対(2010/6/20)
スコットランド自殺幇助合法化法案から「自立できない障害者」要件は外される見通しに(2010/9/22)
スコットランドの自殺幇助合法化法案、否決(2010/12/2)
医師による自殺幇助(PAS)合法化を支持すると回答したのは29%。
59%が反対で、12%は未定。
(スコットランドでは議員の86%が反対)
また72%が
医師が患者の求めによって致死薬を処方できることになったら
弱者に自殺を選択するよう圧力がかかる可能性がある、と考えている。
現在の経済状況では
弱者が家族の経済的な負担にならないよう自殺を選ぶリスクが増える、
と考える議員も、ほぼ60%。
MP’s ‘oppose assisted suicide move’
UKPA, September 15, 2012
Recession strengthens case against assisted suicide, MPs say
The Telegraph, September 15, 2012
まぁ、この記事だけを読めば、
英国の政治家の良識に安心してしまいそうだけれど、
医師による自殺幇助は認めないでも
「近親者による自殺幇助はおとがめなし」がすでに定着しているし、
英国の医療現場では
高齢者は機械的に「死ぬまで鎮静、さっさと脱水」で死なされているし、
障害者も入院すれば本人も家族も知らない内に「蘇生無用」指定されてしまうし、
そういう国で議員さんたちが
「この不況下でPAS合法化したのでは弱者に圧力が」と言ったって、なぁ……。
英国の医療現場の実態はこちら ↓
“終末期”プロトコルの機械的適用で「さっさと脱水・死ぬまで鎮静」(英)(2009/9/10)
肺炎の脳性まひ男性に、家族に知らせずDNR指定(英)(2011/8/3)
高齢者の入院時にカルテに「蘇生無用」ルーティーンで(英)(2011/10/18)
高齢者には食事介助も水分補給もナースコールもなし、カルテには家族も知らない「蘇生無用」……英国の医療(2011/11/14)
ケアホーム入所者に無断でDNR指定、NHSトラストが家族に謝罪(英)(2012/5/8)
「ダウン症だから」と本人にも家族にも無断でDNR指定(2012/9/13)
「NHSは助かるはずの知的障害者を組織的差別で死なせている」とMencap(2012/1/3)
ちなみにスコットランドで議員さんたちの警戒が高いのは、
もしかして、過去にこういうことがあったからかも? ↓
「自立生活できない身障者も可」スコットランド自殺幇助合法化法案(2010/1/22)
ローマ法王がスコットランドの自殺幇助合法化法案を批判(2010/2/6)
スコットランド自殺幇助合法化法案を「死の自己決定権」アドボケイトが批判(2010/2/9)
スコットランドのパブコメは、87%が自殺幇助合法化法案に反対(2010/6/20)
スコットランド自殺幇助合法化法案から「自立できない障害者」要件は外される見通しに(2010/9/22)
スコットランドの自殺幇助合法化法案、否決(2010/12/2)
2012.09.29 / Top↑
監獄の外で安楽死したとされるのは
強姦殺人2件で20年間収監されていた囚人、Frank V. D.B.
死んだ日は明らかになっていない。
そもそも、囚人に安楽死が行われていたこと自体が
公式に発表されていない。
この人については、
もともと監獄での福祉の欠落を問題にしてきた上院議員のLouis Ide氏に
監獄の職員がチクったことから、表に出たものらしい。
それを受けてベルギーのメディアで論争になっているというのだけれど、
どうやら問題になっているのは安楽死ではなく、むしろ
表に出たことが囚人のプライバシーの侵害だと問題になっているのだとか。
安楽死が問題視されないのは、
ターミナルな病気で、自ら希望し、3人の医師がその容貌を了解した、など
法的な要件を満たしているから、だとか。
もう一人、27年間収監されている囚人からも
安楽死の希望が出ていて、まだ認められてはいない、とのこと。
オーストラリアのDr. DeathことNitschke医師が
2005年に書いた著書 Killing Me Softly で囚人への安楽死を予測し、
「刑務所改革の最後のフロンティア」と称していたらしい。
BioEdgeのMichael Cookは、
「今回の展開を見ると、ベルギーはどうやら
安楽死法の革新的な応用で世界のリーダーとなろうとしている」と。
またCookは、今回表ざたになったいきさつからすると、
これまでにも内密理に行われてきたのでは、と考えている模様。
(これは以下の記事ではなく、ニュースレターの方に書かれている内容)
New first for Belgium: Prisoner euthanasia
BioEdge September 14, 2012
Cookも言及しているし、
彼が言う「革新的応用」というのもこのことを意味しているのだけど、
ベルギーでは既に安楽死後臓器提供が4件行われたことが報告されている↓
ベルギーで2年前にロックトインの女性、「安楽死後臓器提供」(2010/5/9)
ベルギーの医師らが「安楽死後臓器提供」を学会発表、既にプロトコルまで(2011/1/26)
ベルギーの「安楽死後臓器提供」、やっぱり「無益な治療」論がチラついている?(2011/2/7)
その他、ベルギーの安楽死関連エントリー ↓
ベルギーでは2002年の合法化以来2700人が幇助自殺(2009/4/4)
幇助自殺が急増し全死者数の2%にも(ベルギー)(2009/9/11)
ベルギーにおける安楽死、自殺ほう助の実態調査(2010/5/19)
ベルギーで「知的障害者、子どもと認知症患者にも安楽死を求める権利を」(2012/5/5)
ちなみに、米国ではこういう話も ↓
「執行後に全身の臓器すべて提供させて」とOR州の死刑囚(2011/3/6)
この時にCaplanがMSNBCに書いた論説がこちら ↓
Organs from inmates? That idea should be DOA
MSNBC, April 21, 2011
強姦殺人2件で20年間収監されていた囚人、Frank V. D.B.
死んだ日は明らかになっていない。
そもそも、囚人に安楽死が行われていたこと自体が
公式に発表されていない。
この人については、
もともと監獄での福祉の欠落を問題にしてきた上院議員のLouis Ide氏に
監獄の職員がチクったことから、表に出たものらしい。
それを受けてベルギーのメディアで論争になっているというのだけれど、
どうやら問題になっているのは安楽死ではなく、むしろ
表に出たことが囚人のプライバシーの侵害だと問題になっているのだとか。
安楽死が問題視されないのは、
ターミナルな病気で、自ら希望し、3人の医師がその容貌を了解した、など
法的な要件を満たしているから、だとか。
もう一人、27年間収監されている囚人からも
安楽死の希望が出ていて、まだ認められてはいない、とのこと。
オーストラリアのDr. DeathことNitschke医師が
2005年に書いた著書 Killing Me Softly で囚人への安楽死を予測し、
「刑務所改革の最後のフロンティア」と称していたらしい。
BioEdgeのMichael Cookは、
「今回の展開を見ると、ベルギーはどうやら
安楽死法の革新的な応用で世界のリーダーとなろうとしている」と。
またCookは、今回表ざたになったいきさつからすると、
これまでにも内密理に行われてきたのでは、と考えている模様。
(これは以下の記事ではなく、ニュースレターの方に書かれている内容)
New first for Belgium: Prisoner euthanasia
BioEdge September 14, 2012
Cookも言及しているし、
彼が言う「革新的応用」というのもこのことを意味しているのだけど、
ベルギーでは既に安楽死後臓器提供が4件行われたことが報告されている↓
ベルギーで2年前にロックトインの女性、「安楽死後臓器提供」(2010/5/9)
ベルギーの医師らが「安楽死後臓器提供」を学会発表、既にプロトコルまで(2011/1/26)
ベルギーの「安楽死後臓器提供」、やっぱり「無益な治療」論がチラついている?(2011/2/7)
その他、ベルギーの安楽死関連エントリー ↓
ベルギーでは2002年の合法化以来2700人が幇助自殺(2009/4/4)
幇助自殺が急増し全死者数の2%にも(ベルギー)(2009/9/11)
ベルギーにおける安楽死、自殺ほう助の実態調査(2010/5/19)
ベルギーで「知的障害者、子どもと認知症患者にも安楽死を求める権利を」(2012/5/5)
ちなみに、米国ではこういう話も ↓
「執行後に全身の臓器すべて提供させて」とOR州の死刑囚(2011/3/6)
この時にCaplanがMSNBCに書いた論説がこちら ↓
Organs from inmates? That idea should be DOA
MSNBC, April 21, 2011
2012.09.29 / Top↑
日本語。報道ステーション(2012. 9.11)全文書き
http://matome.naver.jp/odai/2134737448507517001
日本。石原伸晃氏がテレビ番組でネットスラングを――。ツイッターで物議を醸す。
http://news.livedoor.com/article/detail/6944489/
日本。石原幹事長、汚染土「福島の第1サティアンへ」:すっごく不思議なんだけど、どうしてメディアは「社会保障削減策として尊厳死に言及」という話題だけは触れようとしない? それに、ここまで悪質な失言が続いている人物がどうして今だに自民党総裁候補でいられるのか、さっぱり分からない。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120913-00001314-yom-pol
障害者支援の現場にいる人に、ぜひとも読んでいただきたいブログ友yaguchiさんのエントリー。「「はた」と気づいたこと」。「あまりにも当事者が不在すぎるのだ。今も昔も障害や慢性の病がある人とない人との生活感覚や置かれている状況に差がありすぎるのだ」
http://cscanary.at.webry.info/201209/article_7.html
11月に自殺幇助合法化の住民投票が予定されているMA州で、宗教関係の団体が賛否をめぐって分断されている。
http://www.boston.com/news/local/massachusetts/2012/09/10/massachusetts-religious-communities-divided-over-doctor-assisted-suicide-measure/ikBnYCIoGubXvwdlRUSYlJ/story.html
米国の子供5人に1人が貧困状態。
http://www.guardian.co.uk/business/2012/sep/12/us-census-figures-children-poverty
英国ではプライマリー・ケアの現場が崩壊寸前。
http://www.guardian.co.uk/society/2012/sep/13/acute-hospital-care-brink-collapse-doctors
マラリアに感染しにくい遺伝形質をさぐってワクチン開発に役立てようとの研究。
http://www.medicalnewstoday.com/releases/250147.php
幹細胞から作った組織による子どもへの気管移植、2年経って経過は良好。
http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736%2812%2960737-5/fulltext?elsca1=ETOC-LANCET&elsca2=email&elsca3=E24A35F
http://matome.naver.jp/odai/2134737448507517001
日本。石原伸晃氏がテレビ番組でネットスラングを――。ツイッターで物議を醸す。
http://news.livedoor.com/article/detail/6944489/
日本。石原幹事長、汚染土「福島の第1サティアンへ」:すっごく不思議なんだけど、どうしてメディアは「社会保障削減策として尊厳死に言及」という話題だけは触れようとしない? それに、ここまで悪質な失言が続いている人物がどうして今だに自民党総裁候補でいられるのか、さっぱり分からない。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120913-00001314-yom-pol
障害者支援の現場にいる人に、ぜひとも読んでいただきたいブログ友yaguchiさんのエントリー。「「はた」と気づいたこと」。「あまりにも当事者が不在すぎるのだ。今も昔も障害や慢性の病がある人とない人との生活感覚や置かれている状況に差がありすぎるのだ」
http://cscanary.at.webry.info/201209/article_7.html
11月に自殺幇助合法化の住民投票が予定されているMA州で、宗教関係の団体が賛否をめぐって分断されている。
http://www.boston.com/news/local/massachusetts/2012/09/10/massachusetts-religious-communities-divided-over-doctor-assisted-suicide-measure/ikBnYCIoGubXvwdlRUSYlJ/story.html
米国の子供5人に1人が貧困状態。
http://www.guardian.co.uk/business/2012/sep/12/us-census-figures-children-poverty
英国ではプライマリー・ケアの現場が崩壊寸前。
http://www.guardian.co.uk/society/2012/sep/13/acute-hospital-care-brink-collapse-doctors
マラリアに感染しにくい遺伝形質をさぐってワクチン開発に役立てようとの研究。
http://www.medicalnewstoday.com/releases/250147.php
幹細胞から作った組織による子どもへの気管移植、2年経って経過は良好。
http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736%2812%2960737-5/fulltext?elsca1=ETOC-LANCET&elsca2=email&elsca3=E24A35F
2012.09.15 / Top↑
英国で、50代と見られるダウン症の男性AWAさん(仮名)が、
入院した2つの病院で立てつづけに、障害を理由に、
本人にも家族にも無断で、DNR(蘇生無用)指定にされて、
男性の親族が、
2つ目の病院を訴えている。
AWAさんは両親が50年間世話をした後に
2010年暮れに入所施設に入った。
2011年8月に胃ろうの修正で入院し、
9月にも同じく胃ろうの不具合で再入院。
退院時に、カバンの荷物に紛れ込んでいたDNR指定用紙を
介護職員が見つけた。
施設が「地域の知的障害看護師」に通報し、
看護師が病院に電話をして担当医を問い詰めたところ、
医師の返事はだいたい;
この年齢のダウン症候群の人だと、限られた資源でもあり、
ダウン症の人は一般よりも早く老化するし、心臓にも問題があるし……といったものだった。
その後、AWAさんはKentの別の病院に肺炎で入院。
ここでもDNR指定を取り消してもらうには
先の看護師が交渉しなければならなかったという。
今回、訴えられているのはこちらの病院。
AWAさんのDNR指定の用紙には理由として
「ダウン症候群」「嚥下不能(AWAさんは胃ろうだった)」「寝たきり」「知的障害」が
挙げられていたという。
担当医はAWAさんには十分な知的能力がないと判断したため
この指定について患者本人とは話をしておらず、
「連絡がつかない(unavailable)」と理由で近親者にも知らせていなかった。
(記事に一か所、「認知症もある」との記述があるのだけど、
それ以外のところでは一切言及がなく、上記の「理由」にも含まれておらず
その辺りの事情が、ちょっと、よく分からない)
DNR指定を家族に連絡したかどうかを記入する欄は、空欄のままだった。
なお、AWAさんは現在も生きていて、
入所施設で暮らしている。
担当の弁護士事務所では
「ダウン症と知的障害を理由に
救命治療を差し控えるなんて、もう明らかな差別です」
以前、知的障害者への医療差別についてオンブズマンの報告書をまとめたMencapでは、
「深刻な問題です。……組織的差別です」
なお、2カ月後には
Addenbrooke病院で亡くなったJanet TraceyさんのDNR指定をめぐる訴訟で、
ロンドンの高等裁判所が法的調査を行うことになっているとのこと。
Janet Traceyさんの事件についてはこちらに ↓
「本人にも家族にも知らせず“蘇生無用”はやめて一律のガイドライン作れ、と英国で訴訟(2011/9/15)
Family of Down’s patient sue hospital over DNR order
The Guardian, September 13, 2012
英国では、ここ数年、
本人にも家族にも知らせずに一方的にDNR指定がされるケースが激増している ↓
“終末期”プロトコルの機械的適用で「さっさと脱水・死ぬまで鎮静」(英)(2009/9/10)
肺炎の脳性まひ男性に、家族に知らせずDNR指定(英)(2011/8/3)
高齢者の入院時にカルテに「蘇生無用」ルーティーンで(英)(2011/10/18)
高齢者には食事介助も水分補給もナースコールもなし、カルテには家族も知らない「蘇生無用」……英国の医療(2011/11/14)
ケアホーム入所者に無断でDNR指定、NHSトラストが家族に謝罪(英)(2012/5/8)
Mencapの調査と批判についてはこちら ↓
「医療における障害への偏見が死につながった」オンブズマンが改善を勧告(2009/3/31)
オンブズマン報告書を読んでみた:知的障害者に対する医療ネグレクト
Markのケース:知的障害者への偏見による医療過失
Martinのケース:知的障害者への偏見による医療過失
「NHSは助かるはずの知的障害者を組織的差別で死なせている」とMencap(2012/1/3)
米国の実態はこちら ↓
障害者への医療の切り捨て実態 7例(米)(2012/6/26)
心肺蘇生をめぐる生命倫理の議論についてはこちら ↓
「無益な心肺蘇生は常に間違いなのか?」とTroug医師(2010/3/4)
「医師は患者本人の同意なしにDNR指定してもよいか」Bernat論文(2012/4/11)
加藤太喜子「『医学的無益』はいかなる場面で有効な概念か」メモ(2012/5/9)
入院した2つの病院で立てつづけに、障害を理由に、
本人にも家族にも無断で、DNR(蘇生無用)指定にされて、
男性の親族が、
2つ目の病院を訴えている。
AWAさんは両親が50年間世話をした後に
2010年暮れに入所施設に入った。
2011年8月に胃ろうの修正で入院し、
9月にも同じく胃ろうの不具合で再入院。
退院時に、カバンの荷物に紛れ込んでいたDNR指定用紙を
介護職員が見つけた。
施設が「地域の知的障害看護師」に通報し、
看護師が病院に電話をして担当医を問い詰めたところ、
医師の返事はだいたい;
この年齢のダウン症候群の人だと、限られた資源でもあり、
ダウン症の人は一般よりも早く老化するし、心臓にも問題があるし……といったものだった。
その後、AWAさんはKentの別の病院に肺炎で入院。
ここでもDNR指定を取り消してもらうには
先の看護師が交渉しなければならなかったという。
今回、訴えられているのはこちらの病院。
AWAさんのDNR指定の用紙には理由として
「ダウン症候群」「嚥下不能(AWAさんは胃ろうだった)」「寝たきり」「知的障害」が
挙げられていたという。
担当医はAWAさんには十分な知的能力がないと判断したため
この指定について患者本人とは話をしておらず、
「連絡がつかない(unavailable)」と理由で近親者にも知らせていなかった。
(記事に一か所、「認知症もある」との記述があるのだけど、
それ以外のところでは一切言及がなく、上記の「理由」にも含まれておらず
その辺りの事情が、ちょっと、よく分からない)
DNR指定を家族に連絡したかどうかを記入する欄は、空欄のままだった。
なお、AWAさんは現在も生きていて、
入所施設で暮らしている。
担当の弁護士事務所では
「ダウン症と知的障害を理由に
救命治療を差し控えるなんて、もう明らかな差別です」
以前、知的障害者への医療差別についてオンブズマンの報告書をまとめたMencapでは、
「深刻な問題です。……組織的差別です」
なお、2カ月後には
Addenbrooke病院で亡くなったJanet TraceyさんのDNR指定をめぐる訴訟で、
ロンドンの高等裁判所が法的調査を行うことになっているとのこと。
Janet Traceyさんの事件についてはこちらに ↓
「本人にも家族にも知らせず“蘇生無用”はやめて一律のガイドライン作れ、と英国で訴訟(2011/9/15)
Family of Down’s patient sue hospital over DNR order
The Guardian, September 13, 2012
英国では、ここ数年、
本人にも家族にも知らせずに一方的にDNR指定がされるケースが激増している ↓
“終末期”プロトコルの機械的適用で「さっさと脱水・死ぬまで鎮静」(英)(2009/9/10)
肺炎の脳性まひ男性に、家族に知らせずDNR指定(英)(2011/8/3)
高齢者の入院時にカルテに「蘇生無用」ルーティーンで(英)(2011/10/18)
高齢者には食事介助も水分補給もナースコールもなし、カルテには家族も知らない「蘇生無用」……英国の医療(2011/11/14)
ケアホーム入所者に無断でDNR指定、NHSトラストが家族に謝罪(英)(2012/5/8)
Mencapの調査と批判についてはこちら ↓
「医療における障害への偏見が死につながった」オンブズマンが改善を勧告(2009/3/31)
オンブズマン報告書を読んでみた:知的障害者に対する医療ネグレクト
Markのケース:知的障害者への偏見による医療過失
Martinのケース:知的障害者への偏見による医療過失
「NHSは助かるはずの知的障害者を組織的差別で死なせている」とMencap(2012/1/3)
米国の実態はこちら ↓
障害者への医療の切り捨て実態 7例(米)(2012/6/26)
心肺蘇生をめぐる生命倫理の議論についてはこちら ↓
「無益な心肺蘇生は常に間違いなのか?」とTroug医師(2010/3/4)
「医師は患者本人の同意なしにDNR指定してもよいか」Bernat論文(2012/4/11)
加藤太喜子「『医学的無益』はいかなる場面で有効な概念か」メモ(2012/5/9)
2012.09.15 / Top↑
事件が起きたのは2010年10月2日。
カンザス州 Libertyで会計士事務所の前経営者
William Van Noteさん(67)と女友達(内縁の妻?)Sharon Dicksonさん(59)が、
自宅に侵入した何者かに銃で撃たれた。刺されてもいた。
Sharon Dicksonさんはその場で死亡。
Van Noteさんは傷を負いながら救急通報をして、病院に搬送された。
数日後に、Van Note さんが治療を受けている病院に、
弁護士をやっているVan Noteさんの娘がやってきた。
父親がサインした事前指示書を持っていた。
そこには延命治療は望まないと書かれていた。
病院はそれを受けて救命の努力を中止し、
Van Noteさんは何者かの襲撃を受けて4日後の10月6日に息を引き取った。
それから2年――。
警察は、Van Noteさんはその事前指示書には署名しておらず、
娘が偽造した文書だったことが判明した、と言っている。
そればかりではなく、
Van Noteさんを撃ち、刺したのも娘のSusan Elizabethだったという疑惑まで持ち上がっている。
共犯者も2人いるらしい。
Camden郡の検察官は
自分の法律家としてのキャリアの中でも
偽造事前指示書で殺人容疑なんて事件は初めてだと言っている。
Lawyer charged in father’s death may have forged signature on lifesaving measures
The Kansas City, September 10, 2012
へんてこな事件、と言えばそうだけど、
でも、ここには案外に重大な問題が浮き彫りになっている気がする。
もともと
密室である家族介護での自殺幇助事件で、
どうやって殺人ではなく自殺幇助だと証明できるんだろう、
……という疑問が、私にはずっとある。
なんだか、妻を介護している夫が
「妻が死にたいと言ったから手伝いました」といって
自殺幇助で不起訴になるケースって、この頃やたらと多いんだよね……。
今日もNZでそういうケースが報道されていたし。
http://tvnz.co.nz/national-news/no-conviction-man-assisted-wife-s-suicide-5079028
http://www.stuff.co.nz/national/crime/7674033/Assisted-suicide-ruling-common-sense
カンザス州 Libertyで会計士事務所の前経営者
William Van Noteさん(67)と女友達(内縁の妻?)Sharon Dicksonさん(59)が、
自宅に侵入した何者かに銃で撃たれた。刺されてもいた。
Sharon Dicksonさんはその場で死亡。
Van Noteさんは傷を負いながら救急通報をして、病院に搬送された。
数日後に、Van Note さんが治療を受けている病院に、
弁護士をやっているVan Noteさんの娘がやってきた。
父親がサインした事前指示書を持っていた。
そこには延命治療は望まないと書かれていた。
病院はそれを受けて救命の努力を中止し、
Van Noteさんは何者かの襲撃を受けて4日後の10月6日に息を引き取った。
それから2年――。
警察は、Van Noteさんはその事前指示書には署名しておらず、
娘が偽造した文書だったことが判明した、と言っている。
そればかりではなく、
Van Noteさんを撃ち、刺したのも娘のSusan Elizabethだったという疑惑まで持ち上がっている。
共犯者も2人いるらしい。
Camden郡の検察官は
自分の法律家としてのキャリアの中でも
偽造事前指示書で殺人容疑なんて事件は初めてだと言っている。
Lawyer charged in father’s death may have forged signature on lifesaving measures
The Kansas City, September 10, 2012
へんてこな事件、と言えばそうだけど、
でも、ここには案外に重大な問題が浮き彫りになっている気がする。
もともと
密室である家族介護での自殺幇助事件で、
どうやって殺人ではなく自殺幇助だと証明できるんだろう、
……という疑問が、私にはずっとある。
なんだか、妻を介護している夫が
「妻が死にたいと言ったから手伝いました」といって
自殺幇助で不起訴になるケースって、この頃やたらと多いんだよね……。
今日もNZでそういうケースが報道されていたし。
http://tvnz.co.nz/national-news/no-conviction-man-assisted-wife-s-suicide-5079028
http://www.stuff.co.nz/national/crime/7674033/Assisted-suicide-ruling-common-sense
2012.09.15 / Top↑
日本。この文脈で何がどう「誤解」なのか? (ブログ Lessorの日記) 報ステ石原伸晃ナマポ尊厳死発言―2012年9月11日:昨夜リアルタイムで見て、開いた口がふさがらなかった。「社会保障費を削減するために、年寄りは尊厳死でどんどん死んでください、あ、もちろん自己決定としてね」って意味で言ったよね。あの人は昨夜。あそこで。でもって、なんというか、口をきけばきくだけ「ボクな~んも考えてませ~ん」と底が割れていくような話ばっかだった。
http://d.hatena.ne.jp/lessor/20120911/1347382542
Wesley SmithがWHOが出した自殺予防ガイドラインを取り上げて、世界に広がる安楽死/自殺幇助合法化正当化議論との齟齬を突いて見せている。:Smithは前からこれをしきりに書いているけど、私もまったくその通りだと思う。
http://www.firstthings.com/blogs/secondhandsmoke/2012/09/11/assisted-suicide-interferes-with-suicide-prevention/
英国医師会BMAの新しい代理会長(? deputy chair)Kailash Chand医師は、強力な安楽死・自殺幇助合法化論者。
http://www.nationalrighttolifenews.org/news/2012/09/british-medical-association-council-elects-strong-advocate-of-euthanasia-and-assisted-suicide-as-new-deputy-chair/
日本。命の価値は…重度障害者の男児死亡事故で提訴:これも昨日、報道ステーションでやっていたニュース。タイトルが気に入らない。記事本文にはそういう意味の記述はまったくないし、両親はそんなことを考えているとも思えないのに。
http://www.tv-asahi.co.jp/ann/news/web/html/220911056.html
イリノイ州で、高齢者が中心のナーシング・ホームに障害児・者が入れられることの是非をめぐる議論が起きている。
http://blog.levinperconti.com/2012/09/sending_children_with_disabili.html
英国の介護者支援チャリティ the Association of Carersの25年間。
http://www.hastingsobserver.co.uk/news/local-news/charity-s-25-years-of-caring-for-the-carers-1-4236623
オーストラリア議会に 従業員が100人以上の企業に男女平等な扱いを義務付ける法案 Workplace Gender Equality Actが提出され、下院を通過。今週上院に。男性も育児できるように、という狙いも。
http://www.smh.com.au/opinion/political-news/laws-to-allow-more-men-to-be-primary-carers-20120910-25ofw.html
例の歩行補強ロボットHALなんかのことじゃないかと思うのだけど、NYTに装着型ロボットについて。「障害者を歩かせたり、人間の体を超人にするための装着型ロボット」
New Breed of Robotics Aims to Help People Walk Again: Several companies and research labs are working on wearable robots to help disabled people walk or to make the human body superhuman.
【介護ロボット関連エントリー】
「サイボーグ患者宣言」(2008/6/19)
自動排泄処理装置・シャワーシステムベッド(2008/10/15)
「尿吸飲ロボ」から“QALY時代の排泄ケア”を想像してしまった……(2010/2/20)
「洗車機とUFOキャッチャーでおむつ交換ロボットできる」と言う工学者の無知(2010/4/5)
子育てを担うじいちゃん、ばあちゃんが増えている。:これも世界に広がる貧困の余波。でも大丈夫、育児ロボットだってちゃんと開発中です? ⇒NECが開発するチャイルドケアロボットPaPeRo(2009/2/23)
http://www.medicalnewstoday.com/releases/249990.php
「監視社会」として有名な英国だけど、学校のトイレや更衣室にまで監視カメラが設置されていたりするとな。
http://www.guardian.co.uk/world/2012/sep/11/cctv-cameras-school-changing-rooms?CMP=EMCNEWEML1355
これは聞き捨てならないニュース。子宮がん検診は、メリットがないばかりか有害な手術や合併症に繋がっている、という新たなエビデンス。
False Promises on Ovarian Cancer: New evidence on screening tests is disturbing. The tests provide no gain, but can lead to harmful surgeries and complications.
ジャンク・フードがアルツハイマー病の原因となっているという説が出てきている。
http://www.guardian.co.uk/commentisfree/2012/sep/10/alzheimers-junk-food-catastrophic-effect?CMP=EMCNEWEML1355
日本語。サプリメントで自閉症の一部症状、改善の可能性 米研究:こういう研究の資金って、どういうところから出ているのかしら。
http://www.afpbb.com/article/life-culture/health/2899896/9490958
途上国で違法薬物の使用が増えている。ヘロインとかコカインから、トレンドは処方薬の濫用へ。またインドでは中流層に人造アヘンの中毒者が増えているらしい。:途上国は、先進国のビッグ・ファーマの無法な人体実験場と化しているということを考えると、さもありなんという話ではある。
http://www.guardian.co.uk/world/2010/jun/23/illicit-drugs-growth-developing-nations
http://www.guardian.co.uk/world/2012/sep/10/india-synthetic-drug-new-user
【関連エントリー】
ファイザー製薬ナイジェリアの子どもに違法な治験、11人が死亡(2009/2/1)
ゲイツ財団がコークとマックに投資することの怪、そこから見えてくるもの(2011/3/9)
http://d.hatena.ne.jp/lessor/20120911/1347382542
Wesley SmithがWHOが出した自殺予防ガイドラインを取り上げて、世界に広がる安楽死/自殺幇助合法化正当化議論との齟齬を突いて見せている。:Smithは前からこれをしきりに書いているけど、私もまったくその通りだと思う。
http://www.firstthings.com/blogs/secondhandsmoke/2012/09/11/assisted-suicide-interferes-with-suicide-prevention/
英国医師会BMAの新しい代理会長(? deputy chair)Kailash Chand医師は、強力な安楽死・自殺幇助合法化論者。
http://www.nationalrighttolifenews.org/news/2012/09/british-medical-association-council-elects-strong-advocate-of-euthanasia-and-assisted-suicide-as-new-deputy-chair/
日本。命の価値は…重度障害者の男児死亡事故で提訴:これも昨日、報道ステーションでやっていたニュース。タイトルが気に入らない。記事本文にはそういう意味の記述はまったくないし、両親はそんなことを考えているとも思えないのに。
http://www.tv-asahi.co.jp/ann/news/web/html/220911056.html
イリノイ州で、高齢者が中心のナーシング・ホームに障害児・者が入れられることの是非をめぐる議論が起きている。
http://blog.levinperconti.com/2012/09/sending_children_with_disabili.html
英国の介護者支援チャリティ the Association of Carersの25年間。
http://www.hastingsobserver.co.uk/news/local-news/charity-s-25-years-of-caring-for-the-carers-1-4236623
オーストラリア議会に 従業員が100人以上の企業に男女平等な扱いを義務付ける法案 Workplace Gender Equality Actが提出され、下院を通過。今週上院に。男性も育児できるように、という狙いも。
http://www.smh.com.au/opinion/political-news/laws-to-allow-more-men-to-be-primary-carers-20120910-25ofw.html
例の歩行補強ロボットHALなんかのことじゃないかと思うのだけど、NYTに装着型ロボットについて。「障害者を歩かせたり、人間の体を超人にするための装着型ロボット」
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子育てを担うじいちゃん、ばあちゃんが増えている。:これも世界に広がる貧困の余波。でも大丈夫、育児ロボットだってちゃんと開発中です? ⇒NECが開発するチャイルドケアロボットPaPeRo(2009/2/23)
http://www.medicalnewstoday.com/releases/249990.php
「監視社会」として有名な英国だけど、学校のトイレや更衣室にまで監視カメラが設置されていたりするとな。
http://www.guardian.co.uk/world/2012/sep/11/cctv-cameras-school-changing-rooms?CMP=EMCNEWEML1355
これは聞き捨てならないニュース。子宮がん検診は、メリットがないばかりか有害な手術や合併症に繋がっている、という新たなエビデンス。
False Promises on Ovarian Cancer: New evidence on screening tests is disturbing. The tests provide no gain, but can lead to harmful surgeries and complications.
ジャンク・フードがアルツハイマー病の原因となっているという説が出てきている。
http://www.guardian.co.uk/commentisfree/2012/sep/10/alzheimers-junk-food-catastrophic-effect?CMP=EMCNEWEML1355
日本語。サプリメントで自閉症の一部症状、改善の可能性 米研究:こういう研究の資金って、どういうところから出ているのかしら。
http://www.afpbb.com/article/life-culture/health/2899896/9490958
途上国で違法薬物の使用が増えている。ヘロインとかコカインから、トレンドは処方薬の濫用へ。またインドでは中流層に人造アヘンの中毒者が増えているらしい。:途上国は、先進国のビッグ・ファーマの無法な人体実験場と化しているということを考えると、さもありなんという話ではある。
http://www.guardian.co.uk/world/2010/jun/23/illicit-drugs-growth-developing-nations
http://www.guardian.co.uk/world/2012/sep/10/india-synthetic-drug-new-user
【関連エントリー】
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2012.09.15 / Top↑
去年、
あまりに希望のない話題ばかり拾うこのブログの空気の入れ替えにと、
「美しい文章」というエントリー・シリーズを思いつき、
2つほど書いて、それきり忘れていたのだけれど、
「短編復活」(集英社文庫)というのを買ってみたら、
前に図書館で借りて読んだことのある清水氏の作品が収録されていて、
「ああ、あれね」と思いつつ、またも大いに楽しませてもらった。
で、
これは「美しい文章」というよりも、
達人の、なんとも見事な技――。
「苦労判官大変記」の冒頭5行を。
(タイトルは書き間違いではありませぬ)
京の五条の橋の上。
月の明るい夜、その橋の上を、白い直垂を着た姿美しい若武者が、笛を吹きつつ渡っていた。
女の着物のような薄衣を肩にかけ、目にもあでやかななりをして、しかも横笛を見事に吹いているのである。どう考えてもバカである。
ぶははっ。
やっぱ、この鮮やかな落とし方は、
「美しい文章」だよね。これも――。
【その他の「美しい文章」エントリー】
美しい文章 1:井上ひさし「手鎖心中」(2011/6/18)
美しい文章 2:須賀敦子「ヴェネツィアの宿」(2011/7/28)
あまりに希望のない話題ばかり拾うこのブログの空気の入れ替えにと、
「美しい文章」というエントリー・シリーズを思いつき、
2つほど書いて、それきり忘れていたのだけれど、
「短編復活」(集英社文庫)というのを買ってみたら、
前に図書館で借りて読んだことのある清水氏の作品が収録されていて、
「ああ、あれね」と思いつつ、またも大いに楽しませてもらった。
で、
これは「美しい文章」というよりも、
達人の、なんとも見事な技――。
「苦労判官大変記」の冒頭5行を。
(タイトルは書き間違いではありませぬ)
京の五条の橋の上。
月の明るい夜、その橋の上を、白い直垂を着た姿美しい若武者が、笛を吹きつつ渡っていた。
女の着物のような薄衣を肩にかけ、目にもあでやかななりをして、しかも横笛を見事に吹いているのである。どう考えてもバカである。
ぶははっ。
やっぱ、この鮮やかな落とし方は、
「美しい文章」だよね。これも――。
【その他の「美しい文章」エントリー】
美しい文章 1:井上ひさし「手鎖心中」(2011/6/18)
美しい文章 2:須賀敦子「ヴェネツィアの宿」(2011/7/28)
2012.09.15 / Top↑
オーストラリアのNSW州で、自殺幇助合法化法案 the Right s of the Terminally Ill Billが提出された。
http://www.onlineopinion.com.au/view.asp?article=14092
8日に英国の新・保健省副大臣がPASに反対しつつ近親者の自殺幇助に「もっと正直な議論を」のエントリーで書いた副大臣、Anna Soubry氏に対して、野党から自殺幇助へと法改正を説いたことへの批判と辞任を求める声。
http://www.dailymail.co.uk/debate/article-2200766/Shes-foul-mouthed-attention-seeking-new-Health-Ministers-views-assisted-suicide-truly-disturbing.html
http://www.dailymail.co.uk/news/article-2200462/Assisted-suicide-row-Minister-resign-backs-changing-law.html
英国でケア・ホーム入所者がホームのケアの質を評価する新たな試み。
http://www.guardian.co.uk/society/2012/sep/09/care-homes-ratings-survey-watchdog?CMP=EMCNEWEML1355
自傷行為のある人の自殺防止のための方法論と遺族支援の調査研究のため150万ポンドの予算。:前にWesley Smithが書いていたと思うけど、重症障害さえなければ自殺は予防すべきことなのに、重症障害があるとなったとたんに自殺が「自己決定権」になるというのも、確かに妙な話。予防がお金になる自殺と、自殺してもらうことの方がおカネを浮かせることのできる自殺、という線引きなのかと、やっぱり勘ぐってしまう。
http://www.guardian.co.uk/society/2012/sep/10/suicide-prevention-strategy?CMP=EMCNEWEML1355
日本語。ダウン症の息子を連れた夫婦が飛行機への搭乗を拒否される/航空会社への批判が殺到(米):エコノミー・クラスに乗るには、これまで何の問題もなかったんだそうな。ファースト・クラスにグレードアップした途端に。:この問題は08年にも論争になったことがありました。以下にリンク。
http://rocketnews24.com/2012/09/10/246201/
【関連エントリー】
自閉症親子、飛行機から降ろされる(米)(2008/6/27)
教会が自閉症児締め出し、裁判所も認める(米)(2008/7/2)
アル自閉症児の母親の飛行機利用心得(2008/7/3)
パラリンピックを機に、スポーツジムを障害者にも使いやすいようバリアフリーに、との声が高まっている。
http://www.guardian.co.uk/society/2012/sep/10/gym-access-disabled-people-campaigners?CMP=EMCNEWEML1355
中国の平和賞の候補者にビル・ゲイツ。:中国との縁には浅からぬものがあるからね。そういえば最近も次世代原発開発でパートナーとして手を結んだんじゃなかったっけか。
http://www.google.com/hostednews/ap/article/ALeqM5iBQP11j9d-92oykDqt4ImclVxmGQ?docId=0084b73de6784c799c565875562ee2ae
Save the Childrenのキャンペーンを機に、英国で子どもの貧困問題がクローズアップされつつある。
http://www.guardian.co.uk/society/2012/sep/09/what-poverty-means-to-children?CMP=EMCNEWEML1355
カリブ海のサンゴ礁に絶滅の危機。
http://www.guardian.co.uk/environment/2012/sep/10/caribbean-coral-reefs-collapse-environment?CMP=EMCNEWEML1355
http://www.onlineopinion.com.au/view.asp?article=14092
8日に英国の新・保健省副大臣がPASに反対しつつ近親者の自殺幇助に「もっと正直な議論を」のエントリーで書いた副大臣、Anna Soubry氏に対して、野党から自殺幇助へと法改正を説いたことへの批判と辞任を求める声。
http://www.dailymail.co.uk/debate/article-2200766/Shes-foul-mouthed-attention-seeking-new-Health-Ministers-views-assisted-suicide-truly-disturbing.html
http://www.dailymail.co.uk/news/article-2200462/Assisted-suicide-row-Minister-resign-backs-changing-law.html
英国でケア・ホーム入所者がホームのケアの質を評価する新たな試み。
http://www.guardian.co.uk/society/2012/sep/09/care-homes-ratings-survey-watchdog?CMP=EMCNEWEML1355
自傷行為のある人の自殺防止のための方法論と遺族支援の調査研究のため150万ポンドの予算。:前にWesley Smithが書いていたと思うけど、重症障害さえなければ自殺は予防すべきことなのに、重症障害があるとなったとたんに自殺が「自己決定権」になるというのも、確かに妙な話。予防がお金になる自殺と、自殺してもらうことの方がおカネを浮かせることのできる自殺、という線引きなのかと、やっぱり勘ぐってしまう。
http://www.guardian.co.uk/society/2012/sep/10/suicide-prevention-strategy?CMP=EMCNEWEML1355
日本語。ダウン症の息子を連れた夫婦が飛行機への搭乗を拒否される/航空会社への批判が殺到(米):エコノミー・クラスに乗るには、これまで何の問題もなかったんだそうな。ファースト・クラスにグレードアップした途端に。:この問題は08年にも論争になったことがありました。以下にリンク。
http://rocketnews24.com/2012/09/10/246201/
【関連エントリー】
自閉症親子、飛行機から降ろされる(米)(2008/6/27)
教会が自閉症児締め出し、裁判所も認める(米)(2008/7/2)
アル自閉症児の母親の飛行機利用心得(2008/7/3)
パラリンピックを機に、スポーツジムを障害者にも使いやすいようバリアフリーに、との声が高まっている。
http://www.guardian.co.uk/society/2012/sep/10/gym-access-disabled-people-campaigners?CMP=EMCNEWEML1355
中国の平和賞の候補者にビル・ゲイツ。:中国との縁には浅からぬものがあるからね。そういえば最近も次世代原発開発でパートナーとして手を結んだんじゃなかったっけか。
http://www.google.com/hostednews/ap/article/ALeqM5iBQP11j9d-92oykDqt4ImclVxmGQ?docId=0084b73de6784c799c565875562ee2ae
Save the Childrenのキャンペーンを機に、英国で子どもの貧困問題がクローズアップされつつある。
http://www.guardian.co.uk/society/2012/sep/09/what-poverty-means-to-children?CMP=EMCNEWEML1355
カリブ海のサンゴ礁に絶滅の危機。
http://www.guardian.co.uk/environment/2012/sep/10/caribbean-coral-reefs-collapse-environment?CMP=EMCNEWEML1355
2012.09.15 / Top↑
8月末に以下のニュースがあった。
胎児のダウン症新型検査「精度99%」に賛否―命の選別につながらないか
JCAST, 2012年8月30日
それからずっと、ネット上で様々な議論を目にしながら、
私自身はエントリーに何かを書くという気になれないままでここまできてしまった。
その背景としては、
一つには、この検査そのものについては
英語ニュースでは数年前から何度も話題になっていて、
日本にやってくるのも時間の問題だとずっと思っていたこともあるし、
これまで、この問題では多くのエントリーを書いてきたので、
今さら、それらをまとめ直して書くのも面倒臭いということとか、
この問題に限らず、
科学とテクノの簡単解決文化と、そこに繋がる
グローバル強欲ひとでなしネオリベ記入慈善資本主義による
メディカル・コントロールと新・優生思想にはもはや歯止めがきかないところまできて、
すべり坂どころか既に断崖絶壁……という気分になっているから
ということもあるのだけれど、
ここ数日の間に、
この問題で気になるブログ記事を立てつづけに2つ見つけて、
どちらも、たいへん重要な指摘がされているので、
自分自身のメモとしてもリンクしておきたいと思って。
①なぜかアドレスをコピペすると「登録できない文字列」とされ、リンクが張れません。
以下のエントリータイトルで検索してください。
眠られぬ当直(よる)のために3(2012/9/5)
(ブログ:Heaven’s Door Hospital ヘブンズドアホスピタル)
ブログ主は医師。
ユニークな設定の漫画で、
「99%精度のダウン症診断」と母体保護法の問題を
非常に分かりやすく解説してくださっている記事。
障害理由の中絶は現在の日本では違法行為なのだけど?
というお話です。
ついでながら、このブログ、まだエントリーが12しかないのですが、
これ以外のエントリーも、いずれも爆笑の楽しさです。
② 私なりに思うこと(2012/9/7)
(ブログ:CSカナリア闘病記―回復を目指して)
こちらは、私も当ブログでずっと一貫して書き続けてきたのと同じことを
元現場職員、現在難病当事者の立場で書いてくださっている、ブログ友の方の記事。
その指摘の1つは、
私もちょうど昨日のエントリーで書いたばかりの点で、
障害当事者の実像は生活を共にして直接的に密接にかかわっていなければ分からない、
多くの議論が、その実像を置き去りにしたステレオタイプで行われている、ということ。
もう一つは、ラジオで荻上チキさんが指摘したとのことなのだけれど、、
遺伝子診断で障害のある子どもを産む・産まないを自己選択にすることは
養育を「自己責任」にしてしまう、という懸念。
私もそれとまったく同じ指摘を
未熟児の話だけど、こちらのエントリーで書いている ↓
「中絶か重症障害か……選ぶのは親のあなた(英)」(2010/5/16)
Art Caplanも、同じようなことをこの頃に書いてくれている ↓
遺伝子診断で激減の遺伝病、それが社会に及ぼす影響とは?(2010/9/10)
その他、これを機に
当ブログでダウン症を中心に出生前遺伝子診断に関連して書いてきた
エントリーの一部を以下に整理してみました。
(ゴチックは特に当該検査をめぐる話題)
2007年
選ばないことを選んだ夫婦の記録(2007/11/4)
「ダウン症だから選別的中絶」のコワさ(2007/11/12)
2008年
周産期に障害・病気情報提供を保障 法案にW・Smith賛同(2008/4/16)
障害胎児・新生児の親に情報提供を保障する法案(米)(2008/6/1)
障害胎児・新生児の親に情報提供保障する法案つぶれる(2008/7/29)
「中絶決断に情報提供不要」ヒト受精・胚法議論(2008/6/1)
羊水穿刺より侵襲度の低いダウン症検査、数年以内に(2008/10/8)
出生前後の障害・病気診断に情報提供を義務付け(米)(2008/10/9)
出生前診断をショーバイで語るとこうなる(2008/11/21)
英国でダウン症児の出生数が増加傾向(2008/11/24)
「障害児については親に決定権を」とSinger講演(2008/12/26)
2009年
受胎前遺伝子診断:巧妙な言葉の操作が優生思想を隠ぺいする(2009/1/16)
出生前遺伝子診断で「あれもこれも調べたい」って?(2009/2/2)
ダウン症の安全確実な出生前検査まもなく米国で提供開始(2009/2/25)
非侵襲出生前診断の倫理問題をJAMA論文が指摘(2009/5/28)
ダウン症アドボケイトと医療職団体が出生前診断で“合意”(2009/7/1)
ダウン症スクリーニングでShakespeare「技術開発と同じ資金を情報提供に」(2009/11/10)
2010年
遺伝子診断で激減の遺伝病、それが社会に及ぼす影響とは?(2010/9/10)
ダウン症らしいからと、依頼者夫婦が代理母に中絶を要求(カナダ)(2010/11/18)
胎児のダウン症新型検査「精度99%」に賛否―命の選別につながらないか
JCAST, 2012年8月30日
それからずっと、ネット上で様々な議論を目にしながら、
私自身はエントリーに何かを書くという気になれないままでここまできてしまった。
その背景としては、
一つには、この検査そのものについては
英語ニュースでは数年前から何度も話題になっていて、
日本にやってくるのも時間の問題だとずっと思っていたこともあるし、
これまで、この問題では多くのエントリーを書いてきたので、
今さら、それらをまとめ直して書くのも面倒臭いということとか、
この問題に限らず、
科学とテクノの簡単解決文化と、そこに繋がる
グローバル強欲ひとでなしネオリベ記入慈善資本主義による
メディカル・コントロールと新・優生思想にはもはや歯止めがきかないところまできて、
すべり坂どころか既に断崖絶壁……という気分になっているから
ということもあるのだけれど、
ここ数日の間に、
この問題で気になるブログ記事を立てつづけに2つ見つけて、
どちらも、たいへん重要な指摘がされているので、
自分自身のメモとしてもリンクしておきたいと思って。
①なぜかアドレスをコピペすると「登録できない文字列」とされ、リンクが張れません。
以下のエントリータイトルで検索してください。
眠られぬ当直(よる)のために3(2012/9/5)
(ブログ:Heaven’s Door Hospital ヘブンズドアホスピタル)
ブログ主は医師。
ユニークな設定の漫画で、
「99%精度のダウン症診断」と母体保護法の問題を
非常に分かりやすく解説してくださっている記事。
障害理由の中絶は現在の日本では違法行為なのだけど?
というお話です。
ついでながら、このブログ、まだエントリーが12しかないのですが、
これ以外のエントリーも、いずれも爆笑の楽しさです。
② 私なりに思うこと(2012/9/7)
(ブログ:CSカナリア闘病記―回復を目指して)
こちらは、私も当ブログでずっと一貫して書き続けてきたのと同じことを
元現場職員、現在難病当事者の立場で書いてくださっている、ブログ友の方の記事。
その指摘の1つは、
私もちょうど昨日のエントリーで書いたばかりの点で、
障害当事者の実像は生活を共にして直接的に密接にかかわっていなければ分からない、
多くの議論が、その実像を置き去りにしたステレオタイプで行われている、ということ。
もう一つは、ラジオで荻上チキさんが指摘したとのことなのだけれど、、
遺伝子診断で障害のある子どもを産む・産まないを自己選択にすることは
養育を「自己責任」にしてしまう、という懸念。
私もそれとまったく同じ指摘を
未熟児の話だけど、こちらのエントリーで書いている ↓
「中絶か重症障害か……選ぶのは親のあなた(英)」(2010/5/16)
Art Caplanも、同じようなことをこの頃に書いてくれている ↓
遺伝子診断で激減の遺伝病、それが社会に及ぼす影響とは?(2010/9/10)
その他、これを機に
当ブログでダウン症を中心に出生前遺伝子診断に関連して書いてきた
エントリーの一部を以下に整理してみました。
(ゴチックは特に当該検査をめぐる話題)
2007年
選ばないことを選んだ夫婦の記録(2007/11/4)
「ダウン症だから選別的中絶」のコワさ(2007/11/12)
2008年
周産期に障害・病気情報提供を保障 法案にW・Smith賛同(2008/4/16)
障害胎児・新生児の親に情報提供を保障する法案(米)(2008/6/1)
障害胎児・新生児の親に情報提供保障する法案つぶれる(2008/7/29)
「中絶決断に情報提供不要」ヒト受精・胚法議論(2008/6/1)
羊水穿刺より侵襲度の低いダウン症検査、数年以内に(2008/10/8)
出生前後の障害・病気診断に情報提供を義務付け(米)(2008/10/9)
出生前診断をショーバイで語るとこうなる(2008/11/21)
英国でダウン症児の出生数が増加傾向(2008/11/24)
「障害児については親に決定権を」とSinger講演(2008/12/26)
2009年
受胎前遺伝子診断:巧妙な言葉の操作が優生思想を隠ぺいする(2009/1/16)
出生前遺伝子診断で「あれもこれも調べたい」って?(2009/2/2)
ダウン症の安全確実な出生前検査まもなく米国で提供開始(2009/2/25)
非侵襲出生前診断の倫理問題をJAMA論文が指摘(2009/5/28)
ダウン症アドボケイトと医療職団体が出生前診断で“合意”(2009/7/1)
ダウン症スクリーニングでShakespeare「技術開発と同じ資金を情報提供に」(2009/11/10)
2010年
遺伝子診断で激減の遺伝病、それが社会に及ぼす影響とは?(2010/9/10)
ダウン症らしいからと、依頼者夫婦が代理母に中絶を要求(カナダ)(2010/11/18)
2012.09.10 / Top↑
日本。尊厳死法案、臨時国会への提出目指す―超党派議連、役員会で確認
http://www.cabrain.net/news/article/newsId/38074.html
Lancetに、オランダの安楽死法施行以降の、安楽死と自殺幇助の実態について詳細な実証研究が報告されている。
http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736%2812%2961128-3/fulltext?elsca1=ETOC-LANCET&elsca2=email&elsca3=E24A35F
日本語。精子育てる細胞作製=「セルトリ細胞」マウスでー男性不妊症治療に貢献・米研究所
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120907-00000012-jij-int
日本。京都の人口より多い認知症:「昔は経済が成長し、金利も高く、給料も伸びたのでマネープランを考える必要性は低かったと思います。右肩上がりで成長するなら、あまり悲観的になる必要はないからです。しかし、これからは違います。あなたの人生を自分でコントロールできるように計画を立て、準備をしてから行動しましょう」:人生を自分でコントロールできるように計画」って、どうすればコントロールできるの?
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/trend/tsumitate/20120906-OYT8T00543.htm
日本。窓口無料を廃止 重度障害者の医療費で県 来年度以降 国の“懲罰”理由、召喚式に(山梨)
http://www.sannichi.co.jp/local/news/2012/09/07/3.html
日本。重度心身障害者の医療費助成「現物方式」に 宇都宮市
http://www.shimotsuke.co.jp/town/region/central/utsunomiya/news/20120906/869792
日本。福祉乗車パス「生活保護世帯、交付廃止を」検討会が神戸市に報告書
http://sankei.jp.msn.com/region/news/120907/hyg12090702040003-n1.htm
日本。<国旗>購入費用を補助、補正予算案を提案 石川・中能登町
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120907-00000049-mai-pol
日本。電車ベビーカー論争にギャルモデル「子供優先車を検討して」:これ、08年にもネット上で論争になったことがあった ⇒ 想像力と寛容をなくしていく社会(2008/5/20)
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20120907-00000002-pseven-soci
日本語。イランで核武装の準備着々……イスラエル駐日大使
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120907-00001068-yom-int
http://www.cabrain.net/news/article/newsId/38074.html
Lancetに、オランダの安楽死法施行以降の、安楽死と自殺幇助の実態について詳細な実証研究が報告されている。
http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736%2812%2961128-3/fulltext?elsca1=ETOC-LANCET&elsca2=email&elsca3=E24A35F
日本語。精子育てる細胞作製=「セルトリ細胞」マウスでー男性不妊症治療に貢献・米研究所
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120907-00000012-jij-int
日本。京都の人口より多い認知症:「昔は経済が成長し、金利も高く、給料も伸びたのでマネープランを考える必要性は低かったと思います。右肩上がりで成長するなら、あまり悲観的になる必要はないからです。しかし、これからは違います。あなたの人生を自分でコントロールできるように計画を立て、準備をしてから行動しましょう」:人生を自分でコントロールできるように計画」って、どうすればコントロールできるの?
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/trend/tsumitate/20120906-OYT8T00543.htm
日本。窓口無料を廃止 重度障害者の医療費で県 来年度以降 国の“懲罰”理由、召喚式に(山梨)
http://www.sannichi.co.jp/local/news/2012/09/07/3.html
日本。重度心身障害者の医療費助成「現物方式」に 宇都宮市
http://www.shimotsuke.co.jp/town/region/central/utsunomiya/news/20120906/869792
日本。福祉乗車パス「生活保護世帯、交付廃止を」検討会が神戸市に報告書
http://sankei.jp.msn.com/region/news/120907/hyg12090702040003-n1.htm
日本。<国旗>購入費用を補助、補正予算案を提案 石川・中能登町
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120907-00000049-mai-pol
日本。電車ベビーカー論争にギャルモデル「子供優先車を検討して」:これ、08年にもネット上で論争になったことがあった ⇒ 想像力と寛容をなくしていく社会(2008/5/20)
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20120907-00000002-pseven-soci
日本語。イランで核武装の準備着々……イスラエル駐日大使
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120907-00001068-yom-int
2012.09.10 / Top↑
ここ数年、脳死や植物状態からの回復事例が相次いだり、
実は最少意識状態だったと植物状態の誤診ケースが次々に明らかになっています。
そうした事件それぞれの詳細は、以下のエントリーにリンク一覧があります。
Hassan Rasouliさん、「植物状態」から「最少意識状態」へ診断変わる(2012/4/26)
こうなってくると、
いずれ必ず、標題のようなことを言う人が出てくるだろうと思っていたし、
それは恐らくは、この辺りの誰かだろうとは予想していましたが、
やっぱり予想通りの人たちから予想通りの内容の発言――。
Journal of Medical Ethicsで
Dominic WilkinsonとJulian Savulescuが
「最少意識状態は植物状態よりもベターなのか」というタイトルのコメンタリーを書き、
昨年の英国女性Mの事件(エントリー後半にリンク)を取りあげて論じた後に、
NO と結論しているらしい。
BioEdgeによれば、その根拠は2点で、
① 意識があるだけ本人には苦痛である可能性があるし、
どうせ意味のあるコミュニケーションはとれない。
② 公平な資源の分配の観点から、
最少意識状態のまま生かしておくことには
カネがかかり過ぎる。
「仮に最少意識状態で生かされることに何がしかの利益があるとしても
(我々は利益が負担を上回ることには懐疑的だが)
限りある医療資源を他に回すことと比べれば、
その利益の影響は小さい」
Is it better to be minimally conscious than vegetative?
BioEdge, September 7, 2012
ここで2人が言っていることは、
08年のカナダのGolubchuk事件と
10年の同じくカナダのMaraachli事件で、
Peter Singerが言っていたことにそっくり ↓
Singer、Golubchukケースに論評(2008/3/24)
Peter Singer が Maraachli事件で「同じゼニ出すなら、途上国の多数を救え」(2011/3/22)
ちなみに、昨年の英国での匿名女性Mの関連エントリーは以下。
(仮名がこちらの記事ではMargoとなっていますが同じ事件と思われます)
「生きるに値しないから死なせて」家族の訴えを、介護士らの証言で裁判所が却下(2011/10/4)
この訴訟については、戸田聡一郎氏が「現代思想」6月号「尊厳死」特集の
「意識障害における尊厳死で何が問われるか」という論文で取り上げておられます。
私も「介護保険情報」1月号の連載で書きましたが、
私がこの事件で特に注目したいのは、
当該患者さんの意識状態を正確に知っていたのは家族でも医師でもなく、
日々の介護に当たっていた直接処遇職員だった、ということ。
これは「アシュリー事件 メディカル・コントロールと新優生思想の時代」でも書いたし、
当ブログでもあちこちのエントリーで書いていますが、
その人に「意識」があるかどうか、その人が何をどのような分かり方で分かり、
どのような表現方法で感情や意思を表現することができているか、ということは
その人と日々の生活を共有している者にしか分からない。
(「どうせ何も分からない」と思っている人には共に暮らしていても
「その人は分かっている」ということが分からない)
この1点を主張することが当ブログの最も大きな目的の一つと言ってもいいくらいに、
私はずっとこのことを書き続けてきたような気がします。
理屈でそれを書いたエントリーも「ステレオタイプという壁」の書庫に沢山ありますが、
娘を含め重症重複障害のある人たちがどんなふうに「その人なりの分かり方」で
多くのことを知り、分かり、感じ、表現し、訴えながら、生きてそこに在るか、
その姿を少しでも描くことで、それを伝えたいと願って書いているのが
「A事件・重症障害児を語る方へ」という書庫のエントリーたちです。
ぜひ、一度のぞいてみてください。
アシュリー事件でも
「どうせアシュリーは赤ちゃんと同じで
自分が尊厳を侵されているかどうかすら分からないのだから、
本人に利益があるなら医学的には無用の侵襲を加えてもよい」という
論理が成り立っていたことや、
シャイボ事件を始め、私たちにはただの重症障害者だとしか思えない人たちが
これまでも植物状態だと言われて死なされてきたことを思い、
尊厳死や死の自己決定権議論が
ターミナルな人と、ターミナルでも何でもない重症障害者とを
ぐずぐずに混同したまま進められていく各国の議論のあり方を思い、
また「こういう状態の人をそのまま生かし続ける費用を考えると、
その費用を他に使うことの利益の方がよほど大きい」というモノの言い方が、
本人の最善の利益論をも否定しつつ、医療拒否の論拠として出てきつつあることを思えば、
脳死状態の人から植物状態の人へ、
ここで植物状態の人から最少意識状態の人へ、と移動させられていく「線引き」は、
その内にはさらに最少意識状態の人から重症障害児・者へと移動していくことは
間違いないのでは?
そして、敢えて追記しておくならば、
Wilkinson と Savulescuは、ここ数年の発言から推測すれば、臓器不足の解消策として
安楽死希望者と無益な治療論で切り捨てられる重症障害者の”有効利用”を狙っている ↓
「生きた状態で臓器摘出する安楽死を」とSavulescuがBioethics誌で(2010/5/8)
臓器提供は安楽死の次には”無益な治療”論と繋がる……?(2010/5/9)
Savulescuの「臓器提供安楽死」を読んでみた(2010/7/5)
「腎臓ペア交換」と「臓器提供安楽死」について書きました(2010/10/19)
Savulescuらが、今度はICUにおける一方的な「無益な治療」停止の正当化(2011/2/9)
「“生きるに値する命”でも“与えるに値する命”なら死なせてもOK」とSavulescuの相方が(2011/3/2)
脳死者減少が必至なら倫理の線引き変更も必至?「人為的脳死後臓器提供安楽死」も?(2012/2/14)
「臓器提供の機会確保のための人工呼吸、義務付けよ」とWilskinson 1(2012/2/22)
「臓器提供の機会確保のための人工呼吸、義務付けよ」とWilskinson 2(2012/2/22)
実は最少意識状態だったと植物状態の誤診ケースが次々に明らかになっています。
そうした事件それぞれの詳細は、以下のエントリーにリンク一覧があります。
Hassan Rasouliさん、「植物状態」から「最少意識状態」へ診断変わる(2012/4/26)
こうなってくると、
いずれ必ず、標題のようなことを言う人が出てくるだろうと思っていたし、
それは恐らくは、この辺りの誰かだろうとは予想していましたが、
やっぱり予想通りの人たちから予想通りの内容の発言――。
Journal of Medical Ethicsで
Dominic WilkinsonとJulian Savulescuが
「最少意識状態は植物状態よりもベターなのか」というタイトルのコメンタリーを書き、
昨年の英国女性Mの事件(エントリー後半にリンク)を取りあげて論じた後に、
NO と結論しているらしい。
BioEdgeによれば、その根拠は2点で、
① 意識があるだけ本人には苦痛である可能性があるし、
どうせ意味のあるコミュニケーションはとれない。
② 公平な資源の分配の観点から、
最少意識状態のまま生かしておくことには
カネがかかり過ぎる。
「仮に最少意識状態で生かされることに何がしかの利益があるとしても
(我々は利益が負担を上回ることには懐疑的だが)
限りある医療資源を他に回すことと比べれば、
その利益の影響は小さい」
Is it better to be minimally conscious than vegetative?
BioEdge, September 7, 2012
ここで2人が言っていることは、
08年のカナダのGolubchuk事件と
10年の同じくカナダのMaraachli事件で、
Peter Singerが言っていたことにそっくり ↓
Singer、Golubchukケースに論評(2008/3/24)
Peter Singer が Maraachli事件で「同じゼニ出すなら、途上国の多数を救え」(2011/3/22)
ちなみに、昨年の英国での匿名女性Mの関連エントリーは以下。
(仮名がこちらの記事ではMargoとなっていますが同じ事件と思われます)
「生きるに値しないから死なせて」家族の訴えを、介護士らの証言で裁判所が却下(2011/10/4)
この訴訟については、戸田聡一郎氏が「現代思想」6月号「尊厳死」特集の
「意識障害における尊厳死で何が問われるか」という論文で取り上げておられます。
私も「介護保険情報」1月号の連載で書きましたが、
私がこの事件で特に注目したいのは、
当該患者さんの意識状態を正確に知っていたのは家族でも医師でもなく、
日々の介護に当たっていた直接処遇職員だった、ということ。
これは「アシュリー事件 メディカル・コントロールと新優生思想の時代」でも書いたし、
当ブログでもあちこちのエントリーで書いていますが、
その人に「意識」があるかどうか、その人が何をどのような分かり方で分かり、
どのような表現方法で感情や意思を表現することができているか、ということは
その人と日々の生活を共有している者にしか分からない。
(「どうせ何も分からない」と思っている人には共に暮らしていても
「その人は分かっている」ということが分からない)
この1点を主張することが当ブログの最も大きな目的の一つと言ってもいいくらいに、
私はずっとこのことを書き続けてきたような気がします。
理屈でそれを書いたエントリーも「ステレオタイプという壁」の書庫に沢山ありますが、
娘を含め重症重複障害のある人たちがどんなふうに「その人なりの分かり方」で
多くのことを知り、分かり、感じ、表現し、訴えながら、生きてそこに在るか、
その姿を少しでも描くことで、それを伝えたいと願って書いているのが
「A事件・重症障害児を語る方へ」という書庫のエントリーたちです。
ぜひ、一度のぞいてみてください。
アシュリー事件でも
「どうせアシュリーは赤ちゃんと同じで
自分が尊厳を侵されているかどうかすら分からないのだから、
本人に利益があるなら医学的には無用の侵襲を加えてもよい」という
論理が成り立っていたことや、
シャイボ事件を始め、私たちにはただの重症障害者だとしか思えない人たちが
これまでも植物状態だと言われて死なされてきたことを思い、
尊厳死や死の自己決定権議論が
ターミナルな人と、ターミナルでも何でもない重症障害者とを
ぐずぐずに混同したまま進められていく各国の議論のあり方を思い、
また「こういう状態の人をそのまま生かし続ける費用を考えると、
その費用を他に使うことの利益の方がよほど大きい」というモノの言い方が、
本人の最善の利益論をも否定しつつ、医療拒否の論拠として出てきつつあることを思えば、
脳死状態の人から植物状態の人へ、
ここで植物状態の人から最少意識状態の人へ、と移動させられていく「線引き」は、
その内にはさらに最少意識状態の人から重症障害児・者へと移動していくことは
間違いないのでは?
そして、敢えて追記しておくならば、
Wilkinson と Savulescuは、ここ数年の発言から推測すれば、臓器不足の解消策として
安楽死希望者と無益な治療論で切り捨てられる重症障害者の”有効利用”を狙っている ↓
「生きた状態で臓器摘出する安楽死を」とSavulescuがBioethics誌で(2010/5/8)
臓器提供は安楽死の次には”無益な治療”論と繋がる……?(2010/5/9)
Savulescuの「臓器提供安楽死」を読んでみた(2010/7/5)
「腎臓ペア交換」と「臓器提供安楽死」について書きました(2010/10/19)
Savulescuらが、今度はICUにおける一方的な「無益な治療」停止の正当化(2011/2/9)
「“生きるに値する命”でも“与えるに値する命”なら死なせてもOK」とSavulescuの相方が(2011/3/2)
脳死者減少が必至なら倫理の線引き変更も必至?「人為的脳死後臓器提供安楽死」も?(2012/2/14)
「臓器提供の機会確保のための人工呼吸、義務付けよ」とWilskinson 1(2012/2/22)
「臓器提供の機会確保のための人工呼吸、義務付けよ」とWilskinson 2(2012/2/22)
2012.09.10 / Top↑
今週初めの英国の内閣改造で新たに保健省副大臣に任命されたAnna Soubry氏が
自殺幇助関連法規を「バカげている」と批判。
先ごろ、医師による自殺幇助を求めたTony Nicklinsonさんが
法の明確化の判断は議会の仕事だとして敗訴した直後に
食を断ち、肺炎で死亡したケースについては意見を保留し、
医師は人を殺すよう求められるべきではないとしながらも、
「死ぬのに手助けを必要とするターミナルな病状の人たちが
海外へ行かなければならないのは言語道断」
「どういう時に起訴しないかというルールはあるし、
それで認められていることもあるけれど、
それについて、もうちょっと正直に、しっかり議論をするべき」
Minister slams assisted suicide law
UKPA, September 8, 2012
他に同じ話題の記事としては以下も。
Newly-appointed minister attacks assisted suicide law
The Independent, September 8, 2012
The rules that we have about who we won’t prosecute とは、
例のDPPのガイドラインのことですね。
これまでの動きの方向性も私にはそう見えたし、
今回の副大臣の発言の方向もそうですが、
オランダ、ベルギー、ルクセンブルク、米国のオレゴン、ワシントンと違って、
英国は、医師による自殺ほう助を違法としたまま
近親者による自殺幇助を合法化していく……という流れ??
【Nicklinson訴訟関連エントリー】
“ロックト・イン症候群”の男性が「妻に殺してもらう権利」求め提訴(英)(2010/7/20)
自殺幇助希望の“ロックト・イン”患者Nicklinson訴訟で判決(2012/3/13)
自殺幇助訴訟のNicklinsonさん、ツイッターを始める(2012/7/2)
「死ぬ権利」求めるロックト・イン患者Nicklinsonさん、敗訴(2012/8/17)
Nicklinsonさん、肺炎で死去(2012/8/23)
【DPPのガイドライン関連エントリー】
DPPの自殺幇助に関する起訴判断のガイドラインを読む 1(2010/3/8)
DPPの自殺幇助に関する起訴判断のガイドラインを読む 2(2010/3/8)
英国の自殺幇助ガイドライン後、初の判断は不起訴(2010/3/26)
警察が「捜査しない」と判断する、「英国自殺幇助基礎ガイドライン」の”すべり坂”(2011/7/15)
自殺幇助関連法規を「バカげている」と批判。
先ごろ、医師による自殺幇助を求めたTony Nicklinsonさんが
法の明確化の判断は議会の仕事だとして敗訴した直後に
食を断ち、肺炎で死亡したケースについては意見を保留し、
医師は人を殺すよう求められるべきではないとしながらも、
「死ぬのに手助けを必要とするターミナルな病状の人たちが
海外へ行かなければならないのは言語道断」
「どういう時に起訴しないかというルールはあるし、
それで認められていることもあるけれど、
それについて、もうちょっと正直に、しっかり議論をするべき」
Minister slams assisted suicide law
UKPA, September 8, 2012
他に同じ話題の記事としては以下も。
Newly-appointed minister attacks assisted suicide law
The Independent, September 8, 2012
The rules that we have about who we won’t prosecute とは、
例のDPPのガイドラインのことですね。
これまでの動きの方向性も私にはそう見えたし、
今回の副大臣の発言の方向もそうですが、
オランダ、ベルギー、ルクセンブルク、米国のオレゴン、ワシントンと違って、
英国は、医師による自殺ほう助を違法としたまま
近親者による自殺幇助を合法化していく……という流れ??
【Nicklinson訴訟関連エントリー】
“ロックト・イン症候群”の男性が「妻に殺してもらう権利」求め提訴(英)(2010/7/20)
自殺幇助希望の“ロックト・イン”患者Nicklinson訴訟で判決(2012/3/13)
自殺幇助訴訟のNicklinsonさん、ツイッターを始める(2012/7/2)
「死ぬ権利」求めるロックト・イン患者Nicklinsonさん、敗訴(2012/8/17)
Nicklinsonさん、肺炎で死去(2012/8/23)
【DPPのガイドライン関連エントリー】
DPPの自殺幇助に関する起訴判断のガイドラインを読む 1(2010/3/8)
DPPの自殺幇助に関する起訴判断のガイドラインを読む 2(2010/3/8)
英国の自殺幇助ガイドライン後、初の判断は不起訴(2010/3/26)
警察が「捜査しない」と判断する、「英国自殺幇助基礎ガイドライン」の”すべり坂”(2011/7/15)
2012.09.10 / Top↑
Planned Parenthoodの幹部だった人が、自殺幇助ロビーC&Cで活動中。:やっぱり繋がったかぁ。ここのところは、つながりがいつか表面化すると思っていました。しかも、他ならぬWA州のPP幹部だった人物。PP―産児制限―中絶―高齢者・重症者への死への圧力……そこにはもちろんアシュリー療法や障害者への強制不妊も繋がっている。
http://www.lifenews.com/2012/09/05/planned-parenthood-insider-now-works-for-assisted-suicide-group/
地球規模で気候を操作して温暖化に歯止めをかけようと試みるgeoengineeringの研究へと、ビル・ゲイツらの資金提供受け、科学者らが各国政府にロビー活動。
http://www.guardian.co.uk/environment/2012/feb/06/bill-gates-climate-scientists-geoengineering
IVFの胎児は凍結したものの方が生まれてから健康かも?:それなら凍結して使いましょう……て?
http://www.guardian.co.uk/science/2012/sep/04/ivf-embryos-frozen-healthier-babies?CMP=EMCNEWEML1355
メタボは子どものIQを下げますよ~。:こういう研究がPediatricsに発表されるというのが、そもそも私にはよく分かりませぬ。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/249799.php
日本。フェイスブックで意思表示=臓器提供、日本でも
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120905-00000074-jij-soci
ハイテクセンサーで監視し、毎日のルーティーンが崩れたら介護者センターに連絡してくれる「ビッグ・ブラザー介護システム」の治験。豪。
http://www.theaustralian.com.au/news/breaking-news/trial-for-big-brother-care-system/story-fn3dxix6-1226465483454
十分に食べるものも冬服もない子どもたちが増えて、チャリティSave the Childrenが50万ポンドを目標に募金活動を開始。:英国では、社会福祉の機能をチャリティが担うしかなくなりつつある? でもチャリティの伝統のない国は?
http://www.guardian.co.uk/society/2012/sep/05/save-the-children-uk-campaign
でもCameron首相は内閣改造でさらに右寄りに。
http://www.guardian.co.uk/politics/2012/sep/04/david-cameron-government-reshuffle-cabinet
日本。全盲男性はねられ死亡=山手線ホームから転落―JR新橋駅
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120906-00000092-jij-soci
日本語。白い杖をよろしく! (視覚障害者に会ったら)
http://www.kyoto-lighthouse.or.jp/knowledge/read/id/4#home
病院・入所施設の敷地可へ 障害者の共同住宅設置【岐阜】
http://www.chunichi.co.jp/article/gifu/20120904/CK2012090402000030.html
日本。「カタカナ語と漢字どっちが分かり易い?」(ブログ A Spoonful of Osatou):ジェネリックへの強引な切り替えに、制度誘導でもあるのか?? じゃなくて、あるのよね。
http://blogs.yahoo.co.jp/yukari_aoyama_2009/38729323.html
2週間前に鉱山労働者のストライキに警官隊が発砲し34人が死亡した南アで、またも警察の発砲で4人が負傷。
http://www.guardian.co.uk/world/2012/sep/03/four-miners-shot-south-africa?CMP=EMCNEWEML1355
日本語。インドで少数民族対象に「人間サファリ」、ツアー運営者に逮捕状
http://jp.reuters.com/article/worldNews/idJPTYE80C02O20120113?rpc=122
日本語。アマゾン先住民虐殺か、ベネズエラ政府は「証拠発見できず」:すみません。こんなイヤな話題ばっかり拾って……。自分でも嫌になってきた……。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120904-00000059-reut-int
http://www.lifenews.com/2012/09/05/planned-parenthood-insider-now-works-for-assisted-suicide-group/
地球規模で気候を操作して温暖化に歯止めをかけようと試みるgeoengineeringの研究へと、ビル・ゲイツらの資金提供受け、科学者らが各国政府にロビー活動。
http://www.guardian.co.uk/environment/2012/feb/06/bill-gates-climate-scientists-geoengineering
IVFの胎児は凍結したものの方が生まれてから健康かも?:それなら凍結して使いましょう……て?
http://www.guardian.co.uk/science/2012/sep/04/ivf-embryos-frozen-healthier-babies?CMP=EMCNEWEML1355
メタボは子どものIQを下げますよ~。:こういう研究がPediatricsに発表されるというのが、そもそも私にはよく分かりませぬ。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/249799.php
日本。フェイスブックで意思表示=臓器提供、日本でも
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120905-00000074-jij-soci
ハイテクセンサーで監視し、毎日のルーティーンが崩れたら介護者センターに連絡してくれる「ビッグ・ブラザー介護システム」の治験。豪。
http://www.theaustralian.com.au/news/breaking-news/trial-for-big-brother-care-system/story-fn3dxix6-1226465483454
十分に食べるものも冬服もない子どもたちが増えて、チャリティSave the Childrenが50万ポンドを目標に募金活動を開始。:英国では、社会福祉の機能をチャリティが担うしかなくなりつつある? でもチャリティの伝統のない国は?
http://www.guardian.co.uk/society/2012/sep/05/save-the-children-uk-campaign
でもCameron首相は内閣改造でさらに右寄りに。
http://www.guardian.co.uk/politics/2012/sep/04/david-cameron-government-reshuffle-cabinet
日本。全盲男性はねられ死亡=山手線ホームから転落―JR新橋駅
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120906-00000092-jij-soci
日本語。白い杖をよろしく! (視覚障害者に会ったら)
http://www.kyoto-lighthouse.or.jp/knowledge/read/id/4#home
病院・入所施設の敷地可へ 障害者の共同住宅設置【岐阜】
http://www.chunichi.co.jp/article/gifu/20120904/CK2012090402000030.html
日本。「カタカナ語と漢字どっちが分かり易い?」(ブログ A Spoonful of Osatou):ジェネリックへの強引な切り替えに、制度誘導でもあるのか?? じゃなくて、あるのよね。
http://blogs.yahoo.co.jp/yukari_aoyama_2009/38729323.html
2週間前に鉱山労働者のストライキに警官隊が発砲し34人が死亡した南アで、またも警察の発砲で4人が負傷。
http://www.guardian.co.uk/world/2012/sep/03/four-miners-shot-south-africa?CMP=EMCNEWEML1355
日本語。インドで少数民族対象に「人間サファリ」、ツアー運営者に逮捕状
http://jp.reuters.com/article/worldNews/idJPTYE80C02O20120113?rpc=122
日本語。アマゾン先住民虐殺か、ベネズエラ政府は「証拠発見できず」:すみません。こんなイヤな話題ばっかり拾って……。自分でも嫌になってきた……。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120904-00000059-reut-int
2012.09.10 / Top↑
入院中の患者が心停止になった時に、
どれだけの長さ心肺蘇生(CPR)を続けるべきかについては
明確なエビデンスベースのガイドラインはなく、
これまでは一般に、長く続けることは
それで蘇生できても患者が永続的な神経障害を負う確率が高いために無益である、と
考えられてきたが、
Lancetに発表された
同種としてはこれまでで最大規模で、唯一CPRの長さと救命率をリンクさせた調査により、
平均して現在行われているよりも9分間長く続けるほうが
救命率が良い、との結果が出ている。
The American Heart Associationの世界最大のデータベースから
2000年から2008年までに米国435の病院で心停止を起こした64339人の患者を特定。
救急救命室の患者と、治療中に心停止に至った患者を除き、
通常病棟とICUの成人入院患者を対象とした。
病院によりCPR続行の時間には
最短の病院では中央値で16分、
最長の病院では中央値が25分というバラつきがあり、その差は50%以上。
最長の病院群で患者が救命され退院できる確率が
最短の病院群よりも12%上がることが分かった。
また神経機能は、CPRの長さを問わず、だいたい同じだった。
時間の延長で最も利益があるのは
除細動に反応しない症状の患者。
CPRの時間が長くなることで
医師らが状況分析ができ、様々な介入を試みられるからではないか、と著者ら。
論文にコメンタリーを書いた英国NHSの医師は
「30分以上もCPRで血流を確保し酸素を送り続けて、なお救命できて、
それだけではなく神経的にも良い状態で救命できる患者がいる可能性がある、ということ」
また別の医師からは
終末期の患者の場合や、その他の理由で長くCPRを行うことが不適切なケースもある、との指摘。
論文著者らも、
どの患者でもCPRを今より長くやった方がいいということではない、と。
Prolonged CPR Holds Benefits, a Study Shows
NYT, September 4, 2012
どれだけの長さ心肺蘇生(CPR)を続けるべきかについては
明確なエビデンスベースのガイドラインはなく、
これまでは一般に、長く続けることは
それで蘇生できても患者が永続的な神経障害を負う確率が高いために無益である、と
考えられてきたが、
Lancetに発表された
同種としてはこれまでで最大規模で、唯一CPRの長さと救命率をリンクさせた調査により、
平均して現在行われているよりも9分間長く続けるほうが
救命率が良い、との結果が出ている。
The American Heart Associationの世界最大のデータベースから
2000年から2008年までに米国435の病院で心停止を起こした64339人の患者を特定。
救急救命室の患者と、治療中に心停止に至った患者を除き、
通常病棟とICUの成人入院患者を対象とした。
病院によりCPR続行の時間には
最短の病院では中央値で16分、
最長の病院では中央値が25分というバラつきがあり、その差は50%以上。
最長の病院群で患者が救命され退院できる確率が
最短の病院群よりも12%上がることが分かった。
また神経機能は、CPRの長さを問わず、だいたい同じだった。
時間の延長で最も利益があるのは
除細動に反応しない症状の患者。
CPRの時間が長くなることで
医師らが状況分析ができ、様々な介入を試みられるからではないか、と著者ら。
論文にコメンタリーを書いた英国NHSの医師は
「30分以上もCPRで血流を確保し酸素を送り続けて、なお救命できて、
それだけではなく神経的にも良い状態で救命できる患者がいる可能性がある、ということ」
また別の医師からは
終末期の患者の場合や、その他の理由で長くCPRを行うことが不適切なケースもある、との指摘。
論文著者らも、
どの患者でもCPRを今より長くやった方がいいということではない、と。
Prolonged CPR Holds Benefits, a Study Shows
NYT, September 4, 2012
2012.09.10 / Top↑
2月にオーストラリアでスキー中に雪崩に巻き込まれて
重症の脳損傷を負い、
英国の病院に運ばれたオランダのFrisco王子(43)をめぐって、
オランダの政治家から「連れて帰って、生命維持装置を切るべき」との声が上がり、
「死ぬ権利」議論が再燃している。
王子はこの6カ月間、昏睡状態で、
妻がずっと付き添っており、母親のBeatrice女王も
毎週末にはロンドンに飛んでいるとのこと。
Heleen Dupuis 上院議員は
「王子が再びノーマルな生活を送れるようになるか疑問。
もしオランダの病院に運ばれていたら
回復の可能性がこれほど小さい以上、
医師らは生命維持を切っていたはず」
ロイヤル・ファミリーは王子を自国に連れ帰りたがっているとも言われ、
もしも生命維持が切られて王子が死ぬということになれば、
安楽死法ができて以来の大物人物への適用となる。
Dutch coma prince ‘should leave UK so he can die’ in Netherlands
The Evening Standard, August 31, 2012
その他の報道は以下。
http://www.theaustralian.com.au/news/world/debate-leaves-prince-in-limbo/story-fnb64oi6-1226462703107
http://medicalfutility.blogspot.jp/2012/08/prince-friso-dutch-royal-family-been-in.html
http://www.bioedge.org/index.php/bioethics/bioethics_article/10213
ちなみに王子が事故当時、英国の病院に運ばれたのは、
自国オランダには25歳以上の重症脳損傷患者の治療機関がないため。
その情報については、こちらのBioEdgeの記事に ↓
http://www.bioedge.org/index.php/bioethics/bioethics_article/9958
オランダの国民は、
自分たちは無益な治療論が制度化された医療によって
受けることがかなわない「25歳以上の重症脳損傷」の治療を
王子だけは他国へ運んでもらって受けられている事態に、
疑問を持たないんでしょうか。
また、今回の上記記事を読んで、
いつも「無益な治療」論に思うことをやはり思います。
もともとの無益な治療論というのは
「救命可能性がない」「にも拘らず本人に苦痛を強いている」治療を無益とするものだったはずなのに、
ここで「生命維持を停止すべき」理由として挙げられているのは
「ノーマルな生活を送れるようになる見込みがない」。
ノーマルな生活を送れないなら、
救命は可能であっても死んでもらいましょう……?
重症の脳損傷を負い、
英国の病院に運ばれたオランダのFrisco王子(43)をめぐって、
オランダの政治家から「連れて帰って、生命維持装置を切るべき」との声が上がり、
「死ぬ権利」議論が再燃している。
王子はこの6カ月間、昏睡状態で、
妻がずっと付き添っており、母親のBeatrice女王も
毎週末にはロンドンに飛んでいるとのこと。
Heleen Dupuis 上院議員は
「王子が再びノーマルな生活を送れるようになるか疑問。
もしオランダの病院に運ばれていたら
回復の可能性がこれほど小さい以上、
医師らは生命維持を切っていたはず」
ロイヤル・ファミリーは王子を自国に連れ帰りたがっているとも言われ、
もしも生命維持が切られて王子が死ぬということになれば、
安楽死法ができて以来の大物人物への適用となる。
Dutch coma prince ‘should leave UK so he can die’ in Netherlands
The Evening Standard, August 31, 2012
その他の報道は以下。
http://www.theaustralian.com.au/news/world/debate-leaves-prince-in-limbo/story-fnb64oi6-1226462703107
http://medicalfutility.blogspot.jp/2012/08/prince-friso-dutch-royal-family-been-in.html
http://www.bioedge.org/index.php/bioethics/bioethics_article/10213
ちなみに王子が事故当時、英国の病院に運ばれたのは、
自国オランダには25歳以上の重症脳損傷患者の治療機関がないため。
その情報については、こちらのBioEdgeの記事に ↓
http://www.bioedge.org/index.php/bioethics/bioethics_article/9958
オランダの国民は、
自分たちは無益な治療論が制度化された医療によって
受けることがかなわない「25歳以上の重症脳損傷」の治療を
王子だけは他国へ運んでもらって受けられている事態に、
疑問を持たないんでしょうか。
また、今回の上記記事を読んで、
いつも「無益な治療」論に思うことをやはり思います。
もともとの無益な治療論というのは
「救命可能性がない」「にも拘らず本人に苦痛を強いている」治療を無益とするものだったはずなのに、
ここで「生命維持を停止すべき」理由として挙げられているのは
「ノーマルな生活を送れるようになる見込みがない」。
ノーマルな生活を送れないなら、
救命は可能であっても死んでもらいましょう……?
2012.09.10 / Top↑
補遺で追いかけてきた(なぜか見つけられないんだけど)、事故で重症の脳損傷を負ったオランダの王子(まだ英国の病院に入院中。なにせ自国には25歳以上の重症脳損傷患者の治療機関が存在しないため)に尊厳死議論。:これ、明日できたらエントリーにしたいですが。
http://www.theaustralian.com.au/news/world/debate-leaves-prince-in-limbo/story-fnb64oi6-1226462703107
http://medicalfutility.blogspot.jp/2012/08/prince-friso-dutch-royal-family-been-in.html
http://www.standard.co.uk/news/london/dutch-coma-prince-should-leave-uk-so-he-can-die-in-netherlands-8099209.html
http://www.bioedge.org/index.php/bioethics/bioethics_article/10213
11月に自殺幇助合法化の住民投票が予定されているMA州で、障害者団体が再考を呼び掛けている。:日本の尊厳死法案に対して障害者が言っていることと非常に似ている。というか、同じ。
http://www.thebostonpilot.com/article.asp?ID=15055
当然ながら議論が激化しているMA州で、「モンタナでも合法化されている」との発言をめぐり、モンタナ州の上院議員が「合法化はされていない、最高裁のBaxter判決の判例があるだけ」と訂正。
http://www.massagainstassistedsuicide.org/2012/08/assisted-suicide-is-not-legal-in-montana.html
父と母の介護をする6歳のヤング・ケアラー。こういう子どもたちをテーマ・パークに招待して息抜きを、という支援。
http://www.chad.co.uk/news/local/helping-hand-for-six-year-old-carer-ruby-who-looks-after-mum-and-sister-1-4877185
6月27日の日本ケアラー連盟フォーラム2012 「ケアラーの暮らしを地域で支える」の概要、HPにアップされました。spitzibaraも最後に5分ほどしゃべっています。よかったら、覗いてみてくださいね。
http://carersjapan.com/forum2012report.html
米国小児科学会が包皮切除に対するスタンスを変更したことについて。へースティング・センターのフォーラムで、変節の過程がたどられているらしい。1971年に「医学的には無用」、89年に「利益があるかも」、99年に「たぶん利益なかったみたい」。で、今回「やっぱ利益の方が害より大きい」。
http://www.bioedge.org/index.php/bioethics/bioethics_article/10212#comments
NYTのOp-Edで、このまま生殖技術が発達すれば、健康度が低くて犯罪率が高い男は不要の世の中が来る、と生命倫理学者/犯罪学者。:私はどこかのエントリーで書いたと思うけど、逆に女が生殖に不要となって、男の世界で男のニーズに奉仕する役割に必要な女だけが存在することを許される世界を思い描いていたし、今もそう考えている。だって世の中の定義権を握っているのは男だからね。
http://www.bioedge.org/index.php/bioethics/bioethics_article/10216
健常者がスポーツでドーピングをやるように、障害者のスポーツでは自分の体を傷つけて感覚刺激としてエンハンスすることが行われているらしい。パラリンピックでピトリウスが負けて、勝った人のブレードが長すぎるとかイチャモンつけているらしいけど、科学とテクノで障害者スポーツの精神が損なわれているみたいな気がしないでもない。
http://www.bioedge.org/index.php/bioethics/bioethics_article/10220
ピトリウスの記事はこちら。
http://www.guardian.co.uk/sport/2012/sep/03/paralympics-oscar-pistorius-angry-loss
日本。芸人の母の生活保護受給報道、BPOに審議要請へ:注目したい。
http://www.asahi.com/national/update/0831/TKY201208300744.html
日本。新しい出生前診断をめぐる議論について( ブログ「関わり合いの場から」)
http://blog.zaq.ne.jp/yshibata1958/article/461/
http://www.theaustralian.com.au/news/world/debate-leaves-prince-in-limbo/story-fnb64oi6-1226462703107
http://medicalfutility.blogspot.jp/2012/08/prince-friso-dutch-royal-family-been-in.html
http://www.standard.co.uk/news/london/dutch-coma-prince-should-leave-uk-so-he-can-die-in-netherlands-8099209.html
http://www.bioedge.org/index.php/bioethics/bioethics_article/10213
11月に自殺幇助合法化の住民投票が予定されているMA州で、障害者団体が再考を呼び掛けている。:日本の尊厳死法案に対して障害者が言っていることと非常に似ている。というか、同じ。
http://www.thebostonpilot.com/article.asp?ID=15055
当然ながら議論が激化しているMA州で、「モンタナでも合法化されている」との発言をめぐり、モンタナ州の上院議員が「合法化はされていない、最高裁のBaxter判決の判例があるだけ」と訂正。
http://www.massagainstassistedsuicide.org/2012/08/assisted-suicide-is-not-legal-in-montana.html
父と母の介護をする6歳のヤング・ケアラー。こういう子どもたちをテーマ・パークに招待して息抜きを、という支援。
http://www.chad.co.uk/news/local/helping-hand-for-six-year-old-carer-ruby-who-looks-after-mum-and-sister-1-4877185
6月27日の日本ケアラー連盟フォーラム2012 「ケアラーの暮らしを地域で支える」の概要、HPにアップされました。spitzibaraも最後に5分ほどしゃべっています。よかったら、覗いてみてくださいね。
http://carersjapan.com/forum2012report.html
米国小児科学会が包皮切除に対するスタンスを変更したことについて。へースティング・センターのフォーラムで、変節の過程がたどられているらしい。1971年に「医学的には無用」、89年に「利益があるかも」、99年に「たぶん利益なかったみたい」。で、今回「やっぱ利益の方が害より大きい」。
http://www.bioedge.org/index.php/bioethics/bioethics_article/10212#comments
NYTのOp-Edで、このまま生殖技術が発達すれば、健康度が低くて犯罪率が高い男は不要の世の中が来る、と生命倫理学者/犯罪学者。:私はどこかのエントリーで書いたと思うけど、逆に女が生殖に不要となって、男の世界で男のニーズに奉仕する役割に必要な女だけが存在することを許される世界を思い描いていたし、今もそう考えている。だって世の中の定義権を握っているのは男だからね。
http://www.bioedge.org/index.php/bioethics/bioethics_article/10216
健常者がスポーツでドーピングをやるように、障害者のスポーツでは自分の体を傷つけて感覚刺激としてエンハンスすることが行われているらしい。パラリンピックでピトリウスが負けて、勝った人のブレードが長すぎるとかイチャモンつけているらしいけど、科学とテクノで障害者スポーツの精神が損なわれているみたいな気がしないでもない。
http://www.bioedge.org/index.php/bioethics/bioethics_article/10220
ピトリウスの記事はこちら。
http://www.guardian.co.uk/sport/2012/sep/03/paralympics-oscar-pistorius-angry-loss
日本。芸人の母の生活保護受給報道、BPOに審議要請へ:注目したい。
http://www.asahi.com/national/update/0831/TKY201208300744.html
日本。新しい出生前診断をめぐる議論について( ブログ「関わり合いの場から」)
http://blog.zaq.ne.jp/yshibata1958/article/461/
2012.09.10 / Top↑
Zach McDanielくん(12)をめぐるテキサスの無益な治療事件の続報で、Zachくん、治療を受けられる病院へ転院。:よかった。
http://medicalfutility.blogspot.jp/2012/08/update-mcdaniel-v-cook-childrens.html
FEN事件があったGA州で、自殺幇助禁止法が上院を通過。
http://www.ajc.com/news/news/state-regional-govt-politics/assisted-suicide-ban-passes-senate/nQSZt/
病気の妻の自殺幇助で逮捕されたCA州の男性Alan Purdyさん、立証不能で不起訴に。
http://www.huffingtonpost.com/huff-wires/20120822/us-assisted-suicide/
包皮切除の是非論争をGuardianが取り上げている。:米国小児科学会がこのたび包皮切除のメリットとして認めた中には、尿路感染やHIV感染予防の他にもHPV感染予防も含まれているというから、その内には日本でもHPVワクチン接種と一緒に包皮切除を、という掛け声が起こってくるかも? そういえばビル・ゲイツが軽井沢に別荘を立てているという噂もあったな。そういえばGuardianはゲイツ財団のパートナーでもあったな。
http://www.guardian.co.uk/world/2012/aug/28/circumcision-the-cruellest-cut?CMP=EMCNEWEML1355
認知症の患者さんの家族が目覚まし時計に仕込んだ隠しカメラで、ケアホームの2人の職員による虐待が明らかとなり、有罪に。:こういう事件が後を絶たない。
http://www.guardian.co.uk/society/2012/aug/29/care-home-worker-hidden-camera?CMP=EMCNEWEML1355
英国で精神科の閉鎖病棟に入院治療中の15歳の少年を、介護人が外部の生活に慣れさせると称して売春宿に3回連れて行ったことが明らかに。その後で少年の状態が悪くなったとして、親は訴えると言っている。少年の相手をしたとされる売春婦の一人は日本人だとか。
http://india.nydailynews.com/business/1ead69eac9a13fc322bd5f053ac1c778/carer-takes-boy-from-mental-health-unit-to-brothel
日本。胎児のダウン症新型検査「精度99%」に賛否―命の選別につながらないか
http://www.j-cast.com/tv/2012/08/30144480.html
ミシガン医大の研究で、ガン細胞の増殖を抑える薬が学習障害のリスクを軽減するのに有効だ、と。:この研究は「だから学習障害リスクのある子どもに、ガンの治療薬を」という方向に向かおうとでも??
http://www.medicalnewstoday.com/articles/249645.php
インターネット中毒も遺伝子変異によるんだとか?:じゃぁ、私もそう?
http://www.medicalnewstoday.com/articles/249641.php
極端にカロリーを落とせば長生きできるというのは、もう何年も前から流通している説だけれど(特にHTニスティックな人たちの間で)、どうもそういうわけでもないみたい。:だから、「○○したら長生きできる」情報に飛びついたり、そういうのに振り回されたりしない方がいいんでは?
http://www.medicalnewstoday.com/articles/249649.php
日本。がんの要因は過剰鉄分か=ヒトと同様の染色体変化―名古屋大
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120830-00000026-jij-soci
日本。乙武洋匡さんがツイッターで暴露「24時間テレビのメインパーソナリティを断った」
http://woman.infoseek.co.jp/news/entertainment/rbbtoday_93616
http://medicalfutility.blogspot.jp/2012/08/update-mcdaniel-v-cook-childrens.html
FEN事件があったGA州で、自殺幇助禁止法が上院を通過。
http://www.ajc.com/news/news/state-regional-govt-politics/assisted-suicide-ban-passes-senate/nQSZt/
病気の妻の自殺幇助で逮捕されたCA州の男性Alan Purdyさん、立証不能で不起訴に。
http://www.huffingtonpost.com/huff-wires/20120822/us-assisted-suicide/
包皮切除の是非論争をGuardianが取り上げている。:米国小児科学会がこのたび包皮切除のメリットとして認めた中には、尿路感染やHIV感染予防の他にもHPV感染予防も含まれているというから、その内には日本でもHPVワクチン接種と一緒に包皮切除を、という掛け声が起こってくるかも? そういえばビル・ゲイツが軽井沢に別荘を立てているという噂もあったな。そういえばGuardianはゲイツ財団のパートナーでもあったな。
http://www.guardian.co.uk/world/2012/aug/28/circumcision-the-cruellest-cut?CMP=EMCNEWEML1355
認知症の患者さんの家族が目覚まし時計に仕込んだ隠しカメラで、ケアホームの2人の職員による虐待が明らかとなり、有罪に。:こういう事件が後を絶たない。
http://www.guardian.co.uk/society/2012/aug/29/care-home-worker-hidden-camera?CMP=EMCNEWEML1355
英国で精神科の閉鎖病棟に入院治療中の15歳の少年を、介護人が外部の生活に慣れさせると称して売春宿に3回連れて行ったことが明らかに。その後で少年の状態が悪くなったとして、親は訴えると言っている。少年の相手をしたとされる売春婦の一人は日本人だとか。
http://india.nydailynews.com/business/1ead69eac9a13fc322bd5f053ac1c778/carer-takes-boy-from-mental-health-unit-to-brothel
日本。胎児のダウン症新型検査「精度99%」に賛否―命の選別につながらないか
http://www.j-cast.com/tv/2012/08/30144480.html
ミシガン医大の研究で、ガン細胞の増殖を抑える薬が学習障害のリスクを軽減するのに有効だ、と。:この研究は「だから学習障害リスクのある子どもに、ガンの治療薬を」という方向に向かおうとでも??
http://www.medicalnewstoday.com/articles/249645.php
インターネット中毒も遺伝子変異によるんだとか?:じゃぁ、私もそう?
http://www.medicalnewstoday.com/articles/249641.php
極端にカロリーを落とせば長生きできるというのは、もう何年も前から流通している説だけれど(特にHTニスティックな人たちの間で)、どうもそういうわけでもないみたい。:だから、「○○したら長生きできる」情報に飛びついたり、そういうのに振り回されたりしない方がいいんでは?
http://www.medicalnewstoday.com/articles/249649.php
日本。がんの要因は過剰鉄分か=ヒトと同様の染色体変化―名古屋大
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120830-00000026-jij-soci
日本。乙武洋匡さんがツイッターで暴露「24時間テレビのメインパーソナリティを断った」
http://woman.infoseek.co.jp/news/entertainment/rbbtoday_93616
2012.09.10 / Top↑
死体は見世物か ― 「人体の不思議展」をめぐって
末永恵子 大月書店 2012
この問題は当ブログでも08年から
折に触れて以下のエントリーで取り上げてきたもの。
死体の展覧会(2008/2/22)
「人体の不思議展」中止要望書への緊急署名(2008/5/5)
2011年5月30日の補遺(京都府警が立件見送り)
2011年2月26日の補遺(京都地裁、訴えを棄却)
著者は 「『人体の不思議展』に疑問を持つ会」の中心となって
批判活動を続けてこられた末永恵子氏。
以下の論文を書いておられて、
「『人体の不思議展』の倫理的問題点について」「生命倫理」20 (2009)
私も、11年5月の補遺にこの論文をリンクした際に読んでいたので、
この本が出たことを知った時に、お名前には記憶があった。
福島県立医科大学講師。
日本の植民地における医学史を研究しておられるとのこと。
当ブログの問題意識も同じような方向だったから、
京都での訴訟の結末に釈然としないものを感じて以来、
いつか誰かがこういう本を書いてくれるのを待っていたけれど、
これは実に骨太の告発の書です。
また驚いたのは、なんと、著者にこの本の執筆を勧めたのが
あの「重い障害を生きるということ」の高谷清先生だったということ。
高谷先生は昨今のパーソン論の広がりを危惧しておられる
元・びわこ学園園長。なるほどなぁ……。
人は、強い思いを抱えて
どうしてもやらないでいられないことと取り組んでいると、
会うべき人と巡り会うんだなぁ、と、ちょっと感動してしまった。
そして、医療の世界の中にも、
科学とテクノの簡単解決文化とその利権構造が突き動かしていく世の中に疑問を抱き、
様々な形で異議申し立てを続け闘っている方々があるのだということ、
著者や高谷先生をはじめとして、思いを同じくする各界の人たちが集まって、
人体の不思議展を中止に追い込んだということ、
そして、そういう粘り強い闘いの成果として、
この本が生まれたということが、
何よりとてもすばらしいと思う。
それだけに、
著者が詳細に調べ上げてこの本に取りまとめている、
人体の不思議展の背景の根深さ、医療界、行政、マスコミの余りの恥知らずには、
ほとんど茫然としてしまうのでもある。
なにしろ、問題のプラスティネーション技術を開発し、
その後BODY WORLD展でショーバイに精を出しているのは
ドイツのグンター・フォン・ハーゲンスだけれど、
その標本を展示公開した世界で最初の国は、実は日本だったとは……。
1995年、日本解剖学会がハーゲンス作成の標本を借りてきて
一般市民を対象に展示を行った「人体の世界」展。
言いだしっぺは、あの養老猛司先生。
展覧会の目的は、将来日本でもプラスティネーション標本を作りたくて、
そのための献体者を得るための、いわば宣伝、啓蒙、地ならしだったという。
そしてこの時に既にプラ標本は様々なポーズを取らされたり、
胎児や妊婦の身体がスライスされたりしている。
興味深いのは、この2年後の97年に臓器移植法が成立している当時の時代背景。
その後、世界中で最も誠実にこの問題における遺体の尊厳について正面から検討し、
最高裁が最終的に違法と判断したフランスでの議論で、主催者側が
臓器提供の推進のためにも死体に対するタブーを打ち破るべきだと
主張した(p.146)と書かれているのも、興味深い話だ。
さらに私が目を引かれた一致は、
織田敏次という医師が書いた「『人体の不思議展』に関心とご理解を」という文章で
「ありのままの人体に触れるのも、先人が子孫に残した心暖まる贈り物」と書いている点。
「科学とテクノの簡単解決」文化時代の医学の世界では、臓器提供も代理母も、
同意なき遺体の加工や展示という、こんなあからさまないのちの冒涜までが
こんなにも簡単に「贈り物」に祭り上げられてしまう。
ともあれ日本解剖学会による「人体の世界」展の大成功に目をつけて
金儲けを考えついた人たちがドイツからハーゲンス作成の標本を買ってきて
翌96年から始めたのが「人体の不思議展」。これも大成功。
99年にハーゲンスと金銭問題でトラブルとなると、
主催者らが目をつけたのが中国の、似て非なる(ならぬのかも?)技術でプラストミック標本。
死刑囚や政治犯からの臓器摘出で名を馳せた中国のこととて、
標本に使われている死体の出所は誰が考えたって怪しいのだけれど、
その買い付けにも医師がかかわっていたし、
各地の医師会が共催したり広告塔役や各会場での解説役など、
直接的・積極的に協力し、巡回展示を支えた医師らが少なくない。
監修委員会には、日本の医学、歯学、看護分野の重鎮がずらりと並んで
死体の展覧会に箔をつけた。
日本赤十字社、日本医学会、日本医師会、日本歯科医師会、日本看護協会が後援。
地方での展覧会では地元の医師会、歯科医師会、看護協会が後援。
つまり日本の医学会は、解剖学会の展示から始まり、その後、商業展示として
どんどん恥知らずな“興行”(著者の表現ではなくspitzibaraの印象)と化していく間、
「医学会を挙げて応援していたと言っても差支えない」(p.101)。
その後、全国的な批判の広がりを受けて、
こうした団体は後援をやめるのだけれど、そこには一切の説明も謝罪もない。
(ここで私の頭に浮かんだのは731部隊に所属していた人たちが
終戦後に日本の医療界の重鎮に居座ったという話だった。
この本の中でナチスはちょっと言及されているのだけど
731部隊についてはまったく言及がないのが私にはちょっと不思議)
一方、04年、05年と、
主催者から東京大学へ合計8400万円の寄付が行われている。
著者はレイチェル・カーソンの
「餌をくれる飼い主の手を噛む犬などいない」という言葉を引用し、
「利益相反を見事に比喩したこの言葉が、
『人体の不思議展』の主催者と研究者との関係をも言い当てているだろう」(p.100)と書く。
重大な倫理問題が、
いかにももっともな理屈と名目をつける「専門家の権威」によってスル―され、
巧妙に言い抜けられていく様は、まさに現在の生命倫理の各種問題とそっくりで、
当ブログで散々追いかけてきた、ビッグ・ファーマと研究者の癒着、
慈善資本主義の利権に群がる科学とテクノの研究者と企業の利益相反……。
そこでも医学会だけでなく、行政もマスコミも同じ穴の狢で……。
これらはアシュリー事件の議論や背景の構図にもそのまま通じている。
どの問題でも、実はさほど「巧妙に」言い抜けてなどいないのに通ってしまうのは、
彼ら権力と利権の側が、一般の我々のゲスな欲望を食い物にすることで、
我々一般人の方も自分の中にある欲望をどんどん肥大化させられて抑制が利かなくなり、
倫理問題や法律問題をなし崩しに不問にすることに
一緒に加担していくからではないんだろうか。
「どうせ」と思っているゲスな自分をみんなで一緒になって解放すれば
一般人はそれぞれに自分よりも弱い存在を踏みつけて
自分だけが美味しい思いをできる(したと錯覚させられる)し
一般人がそっちに雪崩を打ってくれれば、それでがっぽりと稼ぎつつ
メディカル・コントロールをさらに根付かせて
グローバル支配を確実にしてゆける人たちがいる。
この死体の展覧会をめぐって
米国があくまでも個人の選択権重視に動き、
フランスが死体の尊厳にこだわり違法とみなしたことは象徴的でもある。
もっとも、グローバルな科学とテクノの利権の前にはフランスの生命倫理も
結局は英米の後追いを強いられていくしかないのだろうという気はするし、
その点で、あとがきにあるように
「弱者からの搾取と身体の商品化という問題は表裏一体」(p.197)は
グローバル強欲ひとでなしネオリベ金融(慈善)資本主義そのものを
ズバリと言い現わしている。
人体の不思議展に関わった医療界の団体や個人を実名で批判したことについて
著者は「医学界がレッドマーケットの搾取性と決別するため」と書いている。
「レッドマーケット」とは、スコット・カーニーの命名で
人骨、臓器、卵子、血液、代理母、毛髪、養子縁組などを扱う市場のことで、
カーニーは「レッドマーケットには、人体が必ず
社会の下の階層から上の階層へと動いていく、という
不愉快な社会的側面がある」と書いているという。
死体の尊厳の問題は、
レッドマーケットで搾取される社会的弱者の尊厳にも繋がっているし、
アシュリー事件であからさまに否定された重症障害者の尊厳にも、
尊厳死をめぐる議論でなし崩しに否定されていく「生きるに値しない命」の尊厳にも
そのまま通じていく。
つまり今の世界で起こっていることは、みんな一つのこと。
だからこそ
行政やメディアを巻き込んでメディカル・コントロールが敷かれていく事態の恐ろしさに
そろそろ私たち一般人も気付かないと、と思うのだけれど、
この頃は、もう
ポイント・オブ・ノー・リターンはとうに過ぎてちゃったよね……という気がしている。
末永恵子 大月書店 2012
この問題は当ブログでも08年から
折に触れて以下のエントリーで取り上げてきたもの。
死体の展覧会(2008/2/22)
「人体の不思議展」中止要望書への緊急署名(2008/5/5)
2011年5月30日の補遺(京都府警が立件見送り)
2011年2月26日の補遺(京都地裁、訴えを棄却)
著者は 「『人体の不思議展』に疑問を持つ会」の中心となって
批判活動を続けてこられた末永恵子氏。
以下の論文を書いておられて、
「『人体の不思議展』の倫理的問題点について」「生命倫理」20 (2009)
私も、11年5月の補遺にこの論文をリンクした際に読んでいたので、
この本が出たことを知った時に、お名前には記憶があった。
福島県立医科大学講師。
日本の植民地における医学史を研究しておられるとのこと。
当ブログの問題意識も同じような方向だったから、
京都での訴訟の結末に釈然としないものを感じて以来、
いつか誰かがこういう本を書いてくれるのを待っていたけれど、
これは実に骨太の告発の書です。
また驚いたのは、なんと、著者にこの本の執筆を勧めたのが
あの「重い障害を生きるということ」の高谷清先生だったということ。
高谷先生は昨今のパーソン論の広がりを危惧しておられる
元・びわこ学園園長。なるほどなぁ……。
人は、強い思いを抱えて
どうしてもやらないでいられないことと取り組んでいると、
会うべき人と巡り会うんだなぁ、と、ちょっと感動してしまった。
そして、医療の世界の中にも、
科学とテクノの簡単解決文化とその利権構造が突き動かしていく世の中に疑問を抱き、
様々な形で異議申し立てを続け闘っている方々があるのだということ、
著者や高谷先生をはじめとして、思いを同じくする各界の人たちが集まって、
人体の不思議展を中止に追い込んだということ、
そして、そういう粘り強い闘いの成果として、
この本が生まれたということが、
何よりとてもすばらしいと思う。
それだけに、
著者が詳細に調べ上げてこの本に取りまとめている、
人体の不思議展の背景の根深さ、医療界、行政、マスコミの余りの恥知らずには、
ほとんど茫然としてしまうのでもある。
なにしろ、問題のプラスティネーション技術を開発し、
その後BODY WORLD展でショーバイに精を出しているのは
ドイツのグンター・フォン・ハーゲンスだけれど、
その標本を展示公開した世界で最初の国は、実は日本だったとは……。
1995年、日本解剖学会がハーゲンス作成の標本を借りてきて
一般市民を対象に展示を行った「人体の世界」展。
言いだしっぺは、あの養老猛司先生。
展覧会の目的は、将来日本でもプラスティネーション標本を作りたくて、
そのための献体者を得るための、いわば宣伝、啓蒙、地ならしだったという。
そしてこの時に既にプラ標本は様々なポーズを取らされたり、
胎児や妊婦の身体がスライスされたりしている。
興味深いのは、この2年後の97年に臓器移植法が成立している当時の時代背景。
その後、世界中で最も誠実にこの問題における遺体の尊厳について正面から検討し、
最高裁が最終的に違法と判断したフランスでの議論で、主催者側が
臓器提供の推進のためにも死体に対するタブーを打ち破るべきだと
主張した(p.146)と書かれているのも、興味深い話だ。
さらに私が目を引かれた一致は、
織田敏次という医師が書いた「『人体の不思議展』に関心とご理解を」という文章で
「ありのままの人体に触れるのも、先人が子孫に残した心暖まる贈り物」と書いている点。
「科学とテクノの簡単解決」文化時代の医学の世界では、臓器提供も代理母も、
同意なき遺体の加工や展示という、こんなあからさまないのちの冒涜までが
こんなにも簡単に「贈り物」に祭り上げられてしまう。
ともあれ日本解剖学会による「人体の世界」展の大成功に目をつけて
金儲けを考えついた人たちがドイツからハーゲンス作成の標本を買ってきて
翌96年から始めたのが「人体の不思議展」。これも大成功。
99年にハーゲンスと金銭問題でトラブルとなると、
主催者らが目をつけたのが中国の、似て非なる(ならぬのかも?)技術でプラストミック標本。
死刑囚や政治犯からの臓器摘出で名を馳せた中国のこととて、
標本に使われている死体の出所は誰が考えたって怪しいのだけれど、
その買い付けにも医師がかかわっていたし、
各地の医師会が共催したり広告塔役や各会場での解説役など、
直接的・積極的に協力し、巡回展示を支えた医師らが少なくない。
監修委員会には、日本の医学、歯学、看護分野の重鎮がずらりと並んで
死体の展覧会に箔をつけた。
日本赤十字社、日本医学会、日本医師会、日本歯科医師会、日本看護協会が後援。
地方での展覧会では地元の医師会、歯科医師会、看護協会が後援。
つまり日本の医学会は、解剖学会の展示から始まり、その後、商業展示として
どんどん恥知らずな“興行”(著者の表現ではなくspitzibaraの印象)と化していく間、
「医学会を挙げて応援していたと言っても差支えない」(p.101)。
その後、全国的な批判の広がりを受けて、
こうした団体は後援をやめるのだけれど、そこには一切の説明も謝罪もない。
(ここで私の頭に浮かんだのは731部隊に所属していた人たちが
終戦後に日本の医療界の重鎮に居座ったという話だった。
この本の中でナチスはちょっと言及されているのだけど
731部隊についてはまったく言及がないのが私にはちょっと不思議)
一方、04年、05年と、
主催者から東京大学へ合計8400万円の寄付が行われている。
著者はレイチェル・カーソンの
「餌をくれる飼い主の手を噛む犬などいない」という言葉を引用し、
「利益相反を見事に比喩したこの言葉が、
『人体の不思議展』の主催者と研究者との関係をも言い当てているだろう」(p.100)と書く。
重大な倫理問題が、
いかにももっともな理屈と名目をつける「専門家の権威」によってスル―され、
巧妙に言い抜けられていく様は、まさに現在の生命倫理の各種問題とそっくりで、
当ブログで散々追いかけてきた、ビッグ・ファーマと研究者の癒着、
慈善資本主義の利権に群がる科学とテクノの研究者と企業の利益相反……。
そこでも医学会だけでなく、行政もマスコミも同じ穴の狢で……。
これらはアシュリー事件の議論や背景の構図にもそのまま通じている。
どの問題でも、実はさほど「巧妙に」言い抜けてなどいないのに通ってしまうのは、
彼ら権力と利権の側が、一般の我々のゲスな欲望を食い物にすることで、
我々一般人の方も自分の中にある欲望をどんどん肥大化させられて抑制が利かなくなり、
倫理問題や法律問題をなし崩しに不問にすることに
一緒に加担していくからではないんだろうか。
「どうせ」と思っているゲスな自分をみんなで一緒になって解放すれば
一般人はそれぞれに自分よりも弱い存在を踏みつけて
自分だけが美味しい思いをできる(したと錯覚させられる)し
一般人がそっちに雪崩を打ってくれれば、それでがっぽりと稼ぎつつ
メディカル・コントロールをさらに根付かせて
グローバル支配を確実にしてゆける人たちがいる。
この死体の展覧会をめぐって
米国があくまでも個人の選択権重視に動き、
フランスが死体の尊厳にこだわり違法とみなしたことは象徴的でもある。
もっとも、グローバルな科学とテクノの利権の前にはフランスの生命倫理も
結局は英米の後追いを強いられていくしかないのだろうという気はするし、
その点で、あとがきにあるように
「弱者からの搾取と身体の商品化という問題は表裏一体」(p.197)は
グローバル強欲ひとでなしネオリベ金融(慈善)資本主義そのものを
ズバリと言い現わしている。
人体の不思議展に関わった医療界の団体や個人を実名で批判したことについて
著者は「医学界がレッドマーケットの搾取性と決別するため」と書いている。
「レッドマーケット」とは、スコット・カーニーの命名で
人骨、臓器、卵子、血液、代理母、毛髪、養子縁組などを扱う市場のことで、
カーニーは「レッドマーケットには、人体が必ず
社会の下の階層から上の階層へと動いていく、という
不愉快な社会的側面がある」と書いているという。
死体の尊厳の問題は、
レッドマーケットで搾取される社会的弱者の尊厳にも繋がっているし、
アシュリー事件であからさまに否定された重症障害者の尊厳にも、
尊厳死をめぐる議論でなし崩しに否定されていく「生きるに値しない命」の尊厳にも
そのまま通じていく。
つまり今の世界で起こっていることは、みんな一つのこと。
だからこそ
行政やメディアを巻き込んでメディカル・コントロールが敷かれていく事態の恐ろしさに
そろそろ私たち一般人も気付かないと、と思うのだけれど、
この頃は、もう
ポイント・オブ・ノー・リターンはとうに過ぎてちゃったよね……という気がしている。
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