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Pediatricsに発表されたミネソタ大学の研究者らの調査で、

ミネアポリス地区の14歳前後の高校生2700人以上に
筋肉をつけようと食生活を変えたり、プロテイン粉末を摂取したり
ステロイドを使ったり、運動量を増やしたことがあるかをアンケートしたところ、

5.9%の男児、4.6%の女児がステロイド使用の経験があり(処方なしでは違法)、

ティーンの5―10%がクレアチンなど非ステロイド系プロテイン製品を使ったことがある、
と答えた。

また白人に比べてアジア系(ほとんどがモン族)の子どもの方が
ステロイドを使っている確率が3~4倍と高かった。

なお、2006年の研究で、
アナボリック・ステロイドの使用は脳細胞を損傷し、
過興奮を起こして、突然攻撃的になったり興奮する、ということが判明している

著者らは医師や親が子どもたちにステロイドの副作用について
きちんと話をするよう、注意喚起を呼び掛けている。

More Teens Are Turning To Steroids, New Study Reveals
MNT, November 20, 2012



【関連エントリー】
12歳もステロイド使って女の子ゲット(2007/12/10)
ステロイドの副作用は過小に報告されている(2008/6/10)
http://blogs.yahoo.co.jp/spitzibara/39656491.htmlある作家の違法ステロイド体験(2008/6/10)
違法ステロイド体験から思うこと(2008/6/10)


【アシュリー事件とステロイド問題のつながりエントリー】
「選手がステロイド使って何が悪い」とHughes
アシュリー論争にも出てた「ステロイドの専門家」Norman Fost
カフェインだって昔は違法薬物、とSavulescu
A療法擁護の2人ドーピング議論に
2012.11.21 / Top↑
コネチカット州の下院議員と市長として、
25歳の時から精神保健医療の「改革」に力を注いできたPaul Gionfriddoさんが、

統合失調症を発症した息子が
医療からも教育からも司法からも適切な支援を受けられずに
ホームレスに転落していくまでをWashingon Postで語り、

自分たちがやってきた「改革」がなぜ失敗したのかを分析している。

My son is schizophrenic. The ‘reforms’ that I worked for have worsened his life
Paul Gionfriddo
WP, October 16, 2102


著者は、奥さん(後に離婚)とともに4人の人種の違う子どもを養子にして育ててきた人。

そのうちの一人のTimが10歳の頃にADHDを診断され、
さらに後に17歳でやっと正しく統合失調症と診断されるまでには、
異人種間養子縁組という環境や親の育て方や過保護のせいにされたり、
個別指導を保障するはずのIDEAの個別支援計画に障害対応が盛り込まれなかったり、
保険会社にコントロールされる医療に振り回されるなど、

制度やシステムの狭間で翻弄される本人は
問題行動を起こしては刑務所に入ることを繰り返す。

収監されると規則的な生活から症状が改善するものの
出所すれば支援つきの住居からの支援も十分でなく、
いつしかホームレスに転落して行った。

2008年に23歳のTimはサンフランシスコで
所持品はマットレス1枚のホームレスとなり、
父親にとって悲しいことに、その生活に満足していたという。

著者は1980年代に議員として自ら精神病院解体の「改革」を進めた人だ。

当時、人々は病院から地域に返され、
病院の建物も治療プログラムも顧みられず荒廃した。

成人を対象とした地域メンタル・ヘルスと薬物乱用プログラムに予算をつけて、
施設併設の特別学校区から子どもたちを地元の学校に返し、そのための
移行コーディネーターを用意したが、

しかし、それらが失敗とした理由として、著者は以下の3点を挙げている。

① 学校には重症の精神障害のある子どもたちをケアする力がなかったのに、
それが分かっていなかった。

② 地域のメンタル・ヘルス・サービスに新たな役割を課すための予算も十分ではなかった。
その結果、その間隙を埋める役割を担ったのは郡の監獄だった。

③ 重症の精神障害者の地域生活を可能にするためには、
教育者、プライマリー・ケア医、メンタル・ヘルスの専門家、福祉職、さらに
司法制度までを含んだ協働体制の構築が必要だった。


現在、米国の3大「メンタル・ヘルス施設」は
NYとイリノイ州クック郡とカリフォルニア州LA郡の監獄だという。

著者が、もしも自分が今議員だったらこうするのに、と言っているのは

・すべての教師が精神障害の兆候をそれとわかる研修をうけられるように予算をつける。
・小児科医に定期健診の時に精神障害のスクリーニングができるよう研修を行う。
・小児科医や精神科医の意見をIEPに盛り込むよう学校長に求める。
・地域のメンタル・ヘルスの予算を大幅に増やし、精神医療の専門家に運用させて、
そこに慢性的なホームレス状態の人々も多職種協働でカバーさせる。
・さらに、歩きまわったり歩道に座っただけで取り締まりの対象にするような
ホームレスをターゲットにした法律を廃止して、必要な人みんなに
住居と治療が短期、長期に行われる支援を作る。

この記事の最後は以下のように締めくくられている。

Timをそこに追いやったのは、国全体がしたことだ。

それならばTimとTimのような人たちをそこから戻してやるにも
国全体が本気になる必要がある。



米国の地域でのメンタル・ヘルスの取り組みとして
「起動危機チーム」について調べて書いてみたことがあります ↓
米国 精神障害医療の危機起動チーム「介護保険情報」2008年3月号


【関連エントリー】
知的障害者、精神障害者の施設・病院での不審な死に調査(英)(2009/11/17)
今年のシアトルこども病院生命倫理カンファは、貧困層の子どもと知的・精神障害児の医療切り捨てを議論(2011/2/9)
スイスで精神障害者への自殺幇助容認議論(2011/3/1)
2012.11.21 / Top↑
ここ数日、「エヴァ・キテイとセーシャのこと」エントリーのコメント欄で実りの多いやりとりをさせていただいたhijijikikiさんのまとめなど、メモとして以下に。

「どうして障害児を産むことをそんなに恐れるんだろうか」から始まったやり取り

「自分より得・楽している人がいるのは許せない」気分と「国のお世話になっている自分」を責める生活保護受給者の自殺率は平均の2倍であること

岩上さんによる宇都宮健児氏ロングインタビューまとめ

         ------

モンタナ州のThe Montana Board of Medical Examinersが今年出したPASに関する方針が寛容すぎるとして、合法化反対ロビーが取り消しを求めていた問題で、Board側がはねつけた模様。
http://www.sfgate.com/news/article/Board-won-t-change-assisted-suicide-policy-4044442.php

無益な治療による過剰医療の原因を作っているのは代理決定権者じゃなくて、患者の病状を率直に伝えていない医師だった……という調査結果、Thaddeus Popeの「無益な治療ブログ」に。
http://medicalfutility.blogspot.jp/2012/11/physicians-not-surrogates-to-blame-for.html

英Devon州のHNSがアルツハイマー病の人の支援サービスをスタート。
http://www.bbc.co.uk/news/uk-england-devon-20367644

日本語。エルトン・ジョン第2子 代理出産へ:「授かることになった」という表現に抵抗感。
http://news.nifty.com/cs/entame/showbizddetail/nikkansp-f-et-tp0-121111-0009/1.htm

ビル・ゲイツのこの4半期の投資行動の情報と分析があちこちから出ている。有害廃棄物処理関連に新たに積極的に投資。相変わらず一番投資額が大きいのはマックとコーク ⇒ ゲイツ財団がコークとマックに投資することの怪、そこから見えてくるもの(2011/3/9) 。それから有害廃棄物といえば、直接の関係はないけど、思い出すのはTrafigura事件 ⇒ 「象牙海岸で先進国の有害ごみによる死傷者多数」事件:続報(2008/10/24)
http://www.minyanville.com/trading-and-investing/stocks/articles/Top-Insider-Trades253A-Bill-Gates-Shows/11/16/2012/id/45873
http://www.insidermonkey.com/blog/bill-gates-buys-even-more-trash-21233/
http://www.insidermonkey.com/blog/is-waste-management-a-good-stock-to-buy-21269/
http://www.insidermonkey.com/blog/mega-billionaire-bill-gates-bought-a-ton-of-this-stock-last-quarter-28961/

NYT。製造過程での問題で薬が不足して、医療現場で患者が効き目の低い薬や期限切れの薬の使用を余儀なくされている。:ブロックバスターの開発に血道をあげるビッグ・ファーマの熾烈な競争の置き土産的な問題……てなことは?
Drug Shortages Persist in U.S. , Harming Care: A drug crisis caused largely by an array of manufacturing problems is leading health care workers to treat patients with less effective alternative medicines and expired drugs.

NYT。腰痛の治療でステロイドを注射する人が急増しているが、リスクは?
How Back Pain Turned Deadly: The use of steroid injections has skyrocketed, but at what risk?

POSSEというNPO法人のブログの書評で、白崎朝子「介護労働を生きる 公務員ヘルパーから派遣ヘルパーの22年」
http://blog.goo.ne.jp/posse_blog/e/734e9b6065d3f9165fc2148ea19ddd25

福島県:健康調査検討委 秘密会問題で山下座長が謝罪:委員さんたちに向けて「ご迷惑をおかけした」と。
http://sp.mainichi.jp/m/news.html?cid=20121119k0000m040024000c

日本語。ガザ空爆 死者60人超 イスラエル「作戦大幅拡大も」
http://sankei.jp.msn.com/world/news/121119/mds12111900580000-n1.htm
2012.11.21 / Top↑
ゲイツ財団のGAPP早産・死産撲滅プロジェクトのパートナーMarch of Dimesから州ごとの早産ランキング。
http://www.medicalnewstoday.com/releases/252771.php

March of Dimesについては ⇒ 新生児スクリーニングは「精神遅滞のような重大な問題や死」を防ぎ「これからの世代を助ける」ため(2009/12/19)

GAPPについては ⇒ シアトルこども病院・ワシントン大学とゲイツ財団の密接な関係:グローバルな功利主義・優生主義医療の動き(2011/2/9)


日本。新型出生前診断で日本産婦人科学会が13日に公開討論会。
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG13037_T11C12A1CR8000/
http://mainichi.jp/opinion/news/20121114ddm003070117000c.html
http://mainichi.jp/opinion/news/20121114ddm003040108000c.html
http://sankei.jp.msn.com/life/news/121113/edc12111319100000-n1.htm
http://www.47news.jp/47topics/e/236109.php

妊娠中のSSRI服用が、自閉症や流産、早産、周産期のトラブルと関連?
http://www.medicalnewstoday.com/articles/252313.php

妊娠中に飲酒すると産まれてくる子どものIQに影響します。:IQの高い子どもを産むことって、そんなに科学であれこれと方法を探らなければならないほどに大事なことなんだろうか。
http://www.guardian.co.uk/society/2012/nov/14/iq-study-drinking-alcohol-pregnancy

中絶ができないアイルランドで敗血症を起こした女性が死亡。中絶の合法化への機運が高まる。
http://www.guardian.co.uk/world/2012/nov/14/ireland-abortion-law-woman-death

ユーロ圏で一斉に緊縮策への大規模な抗議行動。各地から映像やレポートがインターネットで続々。
http://www.guardian.co.uk/business/2012/nov/14/eurozone-crisis-general-strikes-protest-day-of-action

権利擁護支援フォーラム in Shiga サン・グループ事件から今 ~地域で進める虐待防止~ 12月8日(土)
http://www.pasnet.org/initdoc/report_shiga_201211.pdf

日本にも2010年に立ちあげられていた、全国権利擁護支援ネットワーク。:米国のP&Aシステムのことを考えていて、日本ではどうなんだろう、と思ったら、あった。もっとも米国のシステムは活動費用は連邦政府から出ていて、差別や虐待が疑われる事例には介入や調査の権限もある。
http://www.asnet-japan.net/

権利擁護支援フォーラム in みのかも。上記の全国権利擁護支援ネットワークの主催で、明日。
http://www.pasnet.org/initdoc/report_minokamo_2012103.pdf

日本。なぜ裕福な東京でワクチン接種率が低いか。全国の接種率は、子宮頸がん 75.3%、ヒブ 36,8%、小児肺炎球菌 38.1%。HPVワクチンの接種率が非常に高いことが分かる。
http://robust-health.jp/article/preventive02/000189.php

石原前知事の側近登用に批判。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20121115/k10013526511000.html

橋本代表:「核廃絶誰ができるか」広島で発言。
http://mainichi.jp/select/news/20121111k0000m010094000c.html

<広島市長>橋本大阪市長に苦言 核廃絶巡る発言
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20121114-00000039-mai-soci

橋本氏、広島県知事に再反論「核廃絶訴えるだけでは世界は動かない」
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20121114-00000543-san-pol

時々覗かせてもらっている「夜の死体運び屋さんのブログ」の火曜日のエントリー、「年間25万件もの孤独死予備軍(?)」。深く考えさせられた。
http://blogs.yahoo.co.jp/sougiyaoyaji/46814225.html?vitality
2012.11.21 / Top↑
1時間23分41秒の番組を以下から全編、視聴することができます。

The Suicide Plan
PBS, Frontline, November 13, 2012


前半は主に Compassion & Choiceの活動。

C&Cからの情報提供を受け、薬物を手に入れた肺ガン末期の女性が
夫の負担になりたくないからと、自殺を決意するまでを
娘や夫へのインタビューを含めて詳細に追いかけつつ、
C&Cのディレクターにもインタビューを行っている。

後半はFEN事件。

こちらは
ジョージア州のJohn Celmer氏の自殺幇助事件の発覚から起訴までと、
アリゾナ州のJana Van Voorhisさんの自殺幇助事件の発覚から裁判の結審までを

様々な立場の関係者の証言や、FENボランティアの会合の模様、
おとり捜査のビデオ、裁判での映像などを交えて詳細に描く。

FEN事件は、私も当時リアルタイムで追いかけていたので、
ボランティアの会合や訴訟で実際のヘリウムタンクや頭にかぶる袋が出てくるなど、
ちょっと生々しさに息を飲んでしまう感じでした。

FEN事件の概要については
その後閉鎖されたFENのブログサイトで当時どういう内容が書かれていたかも含め、
「介護保険情報」2009年4月号の連載で書いています ↓
http://www.arsvi.com/2000/0904km.htm


Frontlineの番組は、闇で行われている自殺幇助を探る、という趣旨で
とても丁寧に作られていますが、

1991年にターミナルな患者への自殺幇助を報告して論議を呼んだTimothy E. Quill医師が登場して、
ターミナルな患者に限るべきだと説き、

素人のボランティアが多剤併用やヘリウムによる自殺をサポートしている
C&CやFENの活動が紹介された後で、

ふたたび登場して、彼らのやり方は非常に危険であり、
医師による自殺幇助が合法化されないために闇での危うい自殺幇助がはびこる、と主張.

その主張が説得力を持つような番組構成になっている、という感じ。

          -------

この番組には、
これまで当ブログで追いかけてきた事件や組織や人物がほとんど登場しています。

まず、C&C に関しては、
ものすごい数のエントリーがありますが、
例えば、こういうのだと、どういう存在か分かりやすいかも ↓
C&Cが移植医と一緒に「尊厳死法に参加しましょう」と医師らに呼び掛け(2009/4/16)
WA自殺幇助第2例:またもC&Cが報告、詳細は明かさず(2009/6/4)
OR州の「尊厳死」:97%にC&Cが関与、たった20人の医師がせっせと処方(2010/3/11)

そのC&Cの前身が
番組にも登場している“Final Exit”の著者Derek Humphryが作ったヘムロック・ソサエティ。

でも、C&CとFENにまったく関係がないというわけでもなさそうで、
その辺りの関係については、こちらに ↓
「FENもC&Cも目指すところは同じ、弱者を危険にさらす公共施策」と医療弁護士(2009/4/16)
C&Cの創設者がブログでFEN支援の寄付を呼び掛け(2009/6/17)



その他、多くの事件を含む FEN事件の中でも、
Flontlineの番組に出てくる John Celmer氏の自殺幇助事件については ↓
尊厳死アドボケイト団体の幹部4人を逮捕、他8週も自殺幇助容疑で家宅捜査(米)
FEN創設者GoodwinのAP通信インタビュー


同じく番組で詳細に取り上げられている Janna Van Voorhsさんの自殺幇助事件については ↓
精神障害者への自殺幇助でもthe Final Exit に家宅捜査
精神障害者の自殺幇助で新たにFEN関係者4人を逮捕
FEN事件で精神障害者の自殺を幇助したボランティア、有罪を認める(2010/1/13)


その他、FEN事件関連エントリーは ↓
(番組に登場する Goodwin や Egbert にも何度も言及あり)
Final Exit 自殺幇助事件続報:130人の自殺に関与か?
Final Exit Networkの公式サイトを読んでみた
CA州の自殺幇助事件続報
自殺幇助合法化議論、対象者がズレていることの怪
Final Exit自殺幇助事件、週末の続報
「ホスピスだって時間をかけた自殺幇助」にホスピス関係者が激怒
FENの自殺幇助ガイド養成マニュアル
FENが自殺幇助合法化プロモビデオをYouTubeにアップ
OhioでもFENによる自殺幇助事件か(2009/6/18)
久々に Final Exit Network自殺幇助事件の続報(2009/10/16)
闇の自殺幇助機関FEN事件の4人を起訴(米)(2010/3/10)
FENが「Kevorkian医師の半生記映画見て“死ぬ権利”考えよう」(2010/4/22)

その後、アリゾナでの無罪判決など続報を拾った補遺は以下。
http://blogs.yahoo.co.jp/spitzibara/63118714.html
http://blogs.yahoo.co.jp/spitzibara/63130302.html
http://blogs.yahoo.co.jp/spitzibara/63316841.html
http://blogs.yahoo.co.jp/spitzibara/63337923.html

FENが「GA州法の自殺幇助関連規定は言論の自由を侵す」と訴訟(2010/12/11)
GA州「自殺幇助の宣伝禁じる州法は憲法違反」裁判、FENの勝訴(2012/2/7)


また、父親の自殺幇助で逮捕・起訴されたMA州のBruce Brodigan氏が
思いやりからやったこととして無罪となった事件については、以下の補遺で拾っています。
http://blogs.yahoo.co.jp/spitzibara/62534074.html
http://blogs.yahoo.co.jp/spitzibara/62539901.html
http://blogs.yahoo.co.jp/spitzibara/64471285.html


なお、この番組とは直接の関係はありませんが、
Exoo師とその助手だった女性による闇の自殺幇助については ↓
闇の安楽死つかさどる牧師 George Exoo(2008/5/29)
“闇の安楽死”でNZの女性が自殺(2008/5/29)
NZのうつ病女性の自殺幇助で米女性を起訴か(2009/7/26)
ウツ病女性の“闇の商業安楽死”でNZ警察が米国人女性を起訴(2010/3/27)
2012.11.21 / Top↑
当ブログでも何度か取り上げてきた英国の神経科医Adrian Owen教授が
BBCの番組Panoramaに出演して、

植物状態とされたカナダの患者が、脳スキャンを使ったやりとりで、
意識があり、痛みを感じてはいないことを告げた、と報告。

重症の脳損傷を受けた患者が
臨床的に意味の通った情報を医師に提供できたのは初めて。

患者はカナダ、オンタリオ州ロンドンの Scott Routleyさん。

「スコットは意識があり、ちゃんと思考することができていると
我々に示すことができました。

何度かスキャンを行ってきましたが、
彼の脳活動のパターンから、我々の質問に意識的に答えていることは明らかです。

スコットは自分が誰でどこにいるか分かっていると思います」

スコットさんは警察車両との衝突事故を起こして、
Owen教授が介入するまで12年以上の間ずっと植物状態だと考えられてきた。

10年以上担当してきた主治医は、
スキャンの結果でそれまでのアセスメントが全部ふっとんだ、と言い、

「典型的な植物状態の患者の状態だったんですよ。
感情は見られないし、目で物をじっと見ることも物の動きを追うこともなかった。
意味のある自発的な動きも見せたことがなかったので、
fMRIを使えば、こうした認知反応を見せることができたなんて
本当に驚き、感動しました」

Owen教授が研究している脳スキャンによるコミュニケーションとは
患者にテニスをしているところと家の中を歩き回っているところを頭に描くよう指示して、
それぞれによって脳の血流パターンが異なるため、
片方をYes, もう一方をNoに振り分けて
Yes –Noの質問に答えてもらう、というもの。

Owen教授はこれまでにも
植物状態とされている患者のほぼ5人に1人には意識がある可能性を指摘してきた。

また、もう一人の交通事故の患者 Steven Grahamさんは
2歳の姪っ子Ceiliを知っているかと問われてYes と答えた。
Ceiliが生まれたのはGrahamさんが事故にあって後のことなので
これによって彼が新たな記憶を形成し残すことができることが明らかとなった。

Panoramaチームは1年以上かけて
カナダのthe Brain and Mind InstituteとケンブリッジのAddenbrooke病院で
Owen教授の研究に参加した植物状態と最少意識い状態の患者さんたちを
撮影してきたという。

Brain-damaged man ‘aware’ of scientists’ questions
The Guardian, November 13, 2012


【Owen教授の研究に関するエントリー】
「植物状態」5例に2例は誤診?(2008/9/15)
植物状態の人と脳スキャンでコミュニケーションが可能になった……けど?(2010/2/4))
Hassan Rasouliさん、「植物状態」から「最少意識状態」へ診断変わる(2012/4/26)


以下は、これまで当ブログで拾ってきた回復事例。

【米国:リリーさん】
植物状態から回復した女性(2007年の事件)

【米国:ダンラップさん】
脳死判定後に臓器摘出準備段階で意識を回復した米人男性のニュース(再掲)(2009/7/30)

【ベルギー:ホウベン?Houbenさん】
23年間“植物状態”とされた男性が「叫んでいたのに」(ベルギー)(2009/11/24)
「なぜロックトイン症候群が植物状態と誤診されてしまうのか」を語るリハ医(2009/11/25)

【日本:加藤さん】
「植物状態にもなれない」から生還した医師の症例は報告されるか?(2011/1/19)

【米国:ゴッシオウ? Gossiauxさん】
事故で視力を失った聴覚障害者が「指示に反応しない」からリハビリの対象外……というアセスメントの不思議(2011/2/6)

【NZ: Kimberly McNailさん】
NZで「無益な治療」論による生命維持停止からの回復例(2011/7/17)

【米国: 可逆的脳死】
臓器摘出直前に“脳死”診断が覆ったケース(2011/7/25)

【米国: Sam Schmidさん】
アリゾナで、またも“脳死”からの回復例(2011/12/24)

【豪:Gloria Cruzさん】
またも“脳死”からの回復事例(豪)(2011/5/13)

【世界中で睡眠薬による回復事例】
睡眠薬で植物状態から回復する事例が相次いでいる:脳細胞は「死んで」いない?(2011/8/31)
睡眠薬による「植物状態」からの「覚醒」続報(2011/12/7)

【英国: Steven Thorpeさん】
英国で、またも“脳死”からの回復事例(2012/4/30)

【米: Richard Marshさん】
ロックト・イン症候群からの回復事例(米)(2012/8/9)

【その他、関連エントリー】
「脳死」概念は医学的には誤りだとNorman Fost(2009/6/8)
楳図かずおの脳死?漫画(2008/4/3)
重症障害児・者のコミュニケーションについて、整理すべきだと思うこと(2010/11/21)
2012.11.13 / Top↑
BBCがTerry Pratchettをプレゼンターに作成した自殺幇助のドキュメンタリー Choosing to DieがGrierson英国ドキュメンタリー賞を受賞。:「BBCは合法化のチアリーダーだ」との批判が出ていた、あのドキュメンタリー。
http://www.telegraph.co.uk/culture/film/film-news/9660994/Terry-Pratchett-assisted-suicide-documentary-Choosing-to-Die-wins-Grierson-British-Documentary-Award.html

【関連エントリー】
作家 Terry Partchett “自殺幇助法案”を支持(2009/7/1)
自殺幇助ガイドラインに、MSの科学者とアルツハイマーの作家それぞれの反応(2009/9/23)
作家 Pratchette氏「自殺幇助を個別に検討・承認する委員会を」(2010/2/2)
Pratchett氏の「自殺幇助委員会」提言にアルツハイマー病協会からコメント(2010/2/3)
BBC、人気作家がALS患者のDignitas死に寄り沿うドキュメンタリーを作成(2011/4/15)


日本。「延命治療せず」救命センター6割経験 搬送の高齢者に。この1年に救急搬送された65歳以上の高齢者に、人工呼吸器や人工心肺、人工透析などの積極的な治療を中止したり差し控えたりした経験の有無と件数を尋ね た。この結果、63%にあたる91施設が「ある」と回答した。呼吸器の中止・差し控えは計302件あり、このうち、患者の年齢や病気名など具体的データを 挙げた中止例は14件あった。人工心肺の差し控え・中止は37件あった。:そろそろ「過剰な医療で苦しめられるから死の自己決定を」という前提にはアップデイトが必要では?
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20121111-00000022-asahi-soci

サン・ディエゴ郡医師会の「恩恵のない治療と係争解決に関する病院方針モデル」:いつのまにか「無益な治療」とは言わずに、生命倫理の原則の一つを引っ張ってきて「恩恵にならない治療」と呼ぶことに?
http://www.sdcms.org/publications/model-hospital-policy-non-beneficial-treatment-and-conflict-resolution

John Lantosの引きいるChildren’s Mercy BioethicsがNICUの無益な治療論をめぐってディベイトを企画。新生児生命倫理の専門家、William Meadowと Annie Janvier招き。
http://medicalfutility.blogspot.jp/2012/11/slow-codes-show-codes-and-no-codes-in.html

ゲイツ財団が力を入れてきたマラリア・ワクチン(グラクソ・スミス・クライン製)RTS,Sのアフリカでの治験で、軽症で31%、重症で37%という予防率にとどまり、NYTとForbsその他が報じている。ビル・ゲイツも芳しくない成果だと認めているのだけれど、それがファーマ系のサイトだと、「3割も予防」というタイトルに化ける。
http://www.nytimes.com/2012/11/10/health/malaria-vaccine-candidate-produces-disappointing-results-in-clinical-trial.html?_r=0
http://www.forbes.com/fdc/welcome_mjx.shtml
http://pharmabiz.com/NewsDetails.aspx?aid=72120&sid=2

【マラリア・ワクチン関連エントリー】
ゲイツ財団、英政府と並びマラリラ撲滅に資金提供(2008/9/30)
副作用分かっているのに抗マラリア薬で自殺や障害?(2008/10/14)
マラリア撲滅も新興テクノロジーによる合成薬で(2008/11/21)
ゲイツ財団の資金で開発期待されるマラリア・ワクチン(2008/12/14)
公衆衛生でマラリア死8割減のエリトリアから「製薬会社株主ビル・ゲイツのワクチン開発」批判(2011/8/21)


季節性インフルエンザワクチンの開発でVisterra社がゲイツ財団の資金援助をゲット。
http://blogs.wsj.com/venturecapital/2012/11/09/the-daily-start-up-visterra-gets-gates-backing-to-advance-flu-drug-to-trials/

英国政府、インドへの経済援助2015年までに打ち切り.
http://www.bbc.co.uk/news/uk-politics-20265583

中国政府が今度こそ死刑囚からの臓器摘出を辞めると言っているらしい。:うへぇ。2006年ごろから、何度もそういうこと言ってきたと思うんだけれど。⇒http://www.arsvi.com/2000/0701km.htm
http://www.bioedge.org/index.php/bioethics/bioethics_article/10305

【関連エントリー】
A・Caplanが、死刑囚の臓器に依存する中国の移植医療ボイコットを呼びかけ(前)(2011/10/12)
A・Caplanが、死刑囚の臓器に依存する中国の移植医療ボイコットを呼びかけ(後)(2011/10/12)
政治犯から生きたまま臓器を摘出する「新疆プロトコル」(2011/12/13)


生計を立てるための職業としての代理母業。NYTに。
http://www.nytimes.com/2012/11/04/opinion/sunday/making-babies-just-to-make-ends-meet.html?pagewanted=all&pagewanted=print

代理母として13人も生んだ女性(49)が引退。
http://www.bioedge.org/index.php/bioethics/bioethics_article/10313

日本「がん5年生存率」検索可能に 何を見ればいいのか?:施設別生存率を公開して……で、学校のイジメ問題みたいなことが起こらなければいいけれど。イジメがあっても評価が下がらないように絶対に認めず学校の保身が最優先されるように、生存率のアップに寄与しそうにない患者は引き受けない病院が続出する、とか。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20121112-00000501-san-soci

そういえば米国の11月は介護啓発月間。
http://www.sacbee.com/2012/11/08/4970149/november-is-long-term-care-awareness.html
2012.11.13 / Top↑
ヴァージニア州のRufus McGillさん(19)は
10月14日に交通事故を起こして危篤状態となり、
医師らは脳死である可能性が濃厚だと両親に告げた。

離婚しているが良好な関係にあるRufusさんの両親は
息子の回復を祈りつつ、万が一回復不能な場合には
息子の精子を採取して孫を持ちたいと希望し、
引き受けてくれる泌尿器科医も見つけた。

しかし、Rufusさんが法的には成人であることから
本人の生殖についての意思が明確に確認できない以上、
生殖の自己決定権の中には子どもを生まない権利も含まれるため、
両親には倫理的にも法的にも、息子の精子の採取の許可を裁判所に求める権限がない。

生命維持の停止を決めることはできるが、
息子の精子の採取は認められない。

8日、両親は生命維持の停止を決めて、Rufusさんは死亡。

Clinging to life, man hospitalized in Roanoke may yet become father
The Roanoke Times, October 31, 2012

Parents fail in bid to harvest brain-dead teen’s sperm
BioEdge, November 11, 2012


息子が未成年だったら、可能性はあったみたい……。



【関連エントリー】
「死んだ息子の精子で代理母たのみ孫が欲しい」認められず(NY)(2009/3/5)
「死んだ息子の子どもが欲しい」母に裁判所が遺体からの精子採取を認める(TX)(2009/4/17)
亡き夫の精子は妻の“財産”(豪)(2011/5/24)
2012.11.13 / Top↑
6日のMA州の自殺幇助合法化が阻止されたことの要因を
7日からいろいろなところが分析しているのですが、ほとんど読めていません。

さっきたまたま目についた保守・プロライフのサイトLifeSiteNewsの分析で、
障害者運動からの反対運動が要因の最初に挙げられていたので、とりあえず、これを――。


① 障害者運動の強力な反対。

② 推進派は反対しているのはカトリックだと主張したが、必ずしもそうではない。

③ 医療からの強い反対があった。

New England Journal of Medicinの前編集長、Marcia Angell(ハーバード大)と
同じくハーバード大学の医療倫理学の教授、Can Brockは支持を表明したものの

MA州医師会は反対。↓

MA州医師会が自殺幇助合法化反対を確認(2011/12/6)
MA州医師会が11月住民投票のPAS合法化をめぐる質問に反対を表明(2012/9/18)

④ 選挙直前の州に大物から相次いで反対表明があった。

一人はEzekiel J. Emanuel医師のNYTのOp-Ed。 ⇒ Dr. Emanuel 「PASに関する4つの神話」(2012/11/5)



もう一人は政治コラムニストで、E. J. Dionne Jr.がWPに
自殺幇助が医療費削減と結びつくことのリスクを説いた ↓
http://www.washingtonpost.com/blogs/post-partisan/post/liberals-should-be-wary-of-assisted-suicide/2012/11/01/81971b10-245e-11e2-9313-3c7f59038d93_blog.html

もう一人、故エドワード・ケネディ上院議員の未亡人からの反対投票の呼び掛け ↓
http://www.capecodonline.com/apps/pbcs.dll/article?AID=/20121027/OPINION/210270347&cid=sitesearch

特にケネディ一家はマサチューセッツ州では英国でのウインザー家のような存在で
影響力が大きかった、と分析。

What stopped assisted suicide in Massachusetts?
LifeSiteNews, November 8, 2012


ケネディ上院議員の未亡人の地方紙寄稿からの引用が印象的。

for every complex problem, there’s a simple easy answer. And it’s wrong.

複雑な問題には必ず単純で簡単な答えがありますが、そういう答えは間違っているのです。


それから、記事冒頭に、
今回の大統領選以外の結果について書かれているので
メモとして以下に。

・上院に民主党議員が2人増えた。
・ウィスコンシンでは同性愛者を明言している女性議員が上院に。
・4つの州で同性結婚が支持または合法化された。
・コロラド州とワシントン州でマリファナの娯楽利用が合法化。

別の記事で読んだことをついでに追加しておくと、
CA州の死刑廃止の住民投票は成立せず、死刑は存続することに。


【11日追記】
上記の記事の著者 Michael Cook って、あの、いつもお世話になっているBioEdgeの編集長の……? と
昨日、思いつつも確信が持てなかったのですが、今日、同じ論考がBioEdgeに掲載となり、
同一人物であることが確認されました。
http://www.bioedge.org/index.php/bioethics/bioethics_article/10307
2012.11.13 / Top↑
園との連絡ノートから。


今日、(隣接の養護学校での)文化祭の展示見学に行ってきました。

始めは学齢児さんの教室へ。
「どこ? 何?」という表情で少し緊張気味。
(一応しっかりお伝えして行ったつもりだったのですが……)

次に、保育&成人グル―プの部屋へ。
すると表情が明るくなり、声もしっかり出始めました。
利用者さんの写真を次々に指差して見ていました。

しかし、いよいよミュウさんの成人グループの紹介のところへ来ると、
急に照れくさそうな表情をし、見ようとしません。

幼児さんのコーナーの方に顔を向け、声を出し、
「あっちを見ようよ」と言っているような感じでした。

その後も、他の利用者さんの写真、作品を
しっかり見て帰りました。



あはは。まぁね。
自分の写真を見るのはヤなもんだよね。
2012.11.13 / Top↑
Obama大統領の受諾演説の全文トランスクリプトが出ています。
http://www.washingtonpost.com/politics/decision2012/president-obamas-acceptance-speech-full-transcript/2012/11/07/ae133e44-28a5-11e2-96b6-8e6a7524553f_story.html?wpisrc=nl_cuzheads

埼玉でWY10周年『隣る人』上映&堀越栄子さん講演会:前者が12月2日で、後者が12月8日。後者は日本ケアラー連盟の創設者であり共同代表の堀越栄子さんの講演です。埼玉の方、ぜひ。
http://www.withyou-saitama.jp/view.rbz?cd=885

前にも補遺で拾ったけど、11月30日は英国の「介護者の権利の日」。:6月の介護者週間とはまた別に、こういうのがあるんですね。
http://www.newspostleader.co.uk/community/carers-rights-day-in-stannington-1-5096370

CA州では大統領選と同時に遺伝子組み換え食品の表示義務付けの住民投票が行われたらしいのだけれど、MA州と同じように自殺幇助も住民投票を、という提言、LA Timesに。
http://www.latimes.com/news/opinion/opinion-la/la-ol-assisted-suicide-20121106,0,2108763.story

地球温暖化対策としてジオ・エンジニアリング(地球工学)。:こういう研究にはゲイツ財団から資金が流れているはず、と思って調べてみたら、やっぱり9月6日の補遺にあったけど、このニュースでは、ビル・ゲイツの資金は研究にではなく、科学者らによる各国政府へのロビー活動に。
http://www.washingtonpost.com/national/health-science/geoengineering-is-the-answer-to-climate-change-unless-it-isnt/2012/11/05/aef1c418-073d-11e2-858a-5311df86ab04_story.html

日本。興奮や失神、卒倒… 子宮頸がんワクチン接種で注意呼びかけ。:私は専門家ではないので、この副反応のデータそのものについてはなんとも言えないけれど、ここでも明確に「副反応」とされている失神について、去年8月に朝日新聞でのHPVワクチン推進の全面広告で「子宮頸がん制圧を目指す専門家会議」の専門家が「思春期の多感な女子への接種なので、緊張のあまりドキドキして失神する」と発言していることは、やっぱり妙だと思う。こういう不誠実な言動で推進の旗を振る「専門家」って??? これについては ⇒ 子宮頸がんワクチンでの失神は「ドキドキするから」?(2011/8/5)
http://www.sankeibiz.jp/econome/news/120627/ecb1206271948000-n1.htm

英国で養子縁組週間。養子縁組をする人が不足している問題の啓発が数年前からしきりと行われている。英語圏だけなのかどうかはわからないけれど、07年の第1例以降に“アシュリー療法”をやったことが明らかにされた12人のうちの2人が養子だったことが、私には気にかかっている。
http://www.thesun.co.uk/sol/homepage/woman/4631060/National-Adoption-Week-could-you-adopt.html

インドの4年がかりの医療施策の成果で乳幼児死亡率が半分に。妊産婦の死亡率は4分の3も減少。:これはやっぱりゲイツ財団の尽力のたまものでしょうか。
http://www.medicalnewstoday.com/releases/252384.php

NYT。インドでデング熱。
As Dengue Fever Sweeps India, a Slow Response Stirs Experts’ Fears: Health experts fear that government officials are not acknowledging the scope of a problem that threatens hundreds of millions of people, not just in India but around the world.

日本。障害者虐待防止法: 1カ月 通報・相談、すでに25件 県「施行が効果」/静岡
http://mainichi.jp/area/shizuoka/news/20121107ddlk22010170000c.html

日本。マニフェスト全面謝罪へ…民主、見通し甘さ認め:米国型の弱肉強食社会からヨーロッパ型の包摂的社会に舵を切ろうとしたのだという理念の説明をしっかりするべきなんでは、と前から思うのですが……?
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20121107-00000128-yom-pol

日本。日の丸医療で欧米追走「インフラ」「病院丸ごと」輸出で新戦略:07年に既にアジア各国が力を入れていたグローバル医療ツーリズムを調べた時に、医療を受けられ、治療可能な感染症や下痢で死んでいく自国民をほったらかしにしたままに国策とされている実態に目を剥いたもんだったなぁ、そういえば。その時に書いた記事はこちら ⇒ 医療のネオリベ“医療ツーリズム”(2009/8/3) それにしても「日の丸医療」だって……。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20121106-00000000-fsi-bus_all

【その他の関連エントリー】
インドの生殖医療ツーリズム(2008/8/12)
医療ツーリズムでMRSAより厄介な抗生物質耐性菌(2009/8/13)
AJOB巡るスキャンダルには、幹細胞治療や日本の医療ツーリズムも“金魚のウンコ”(2012/2/15)
2012.11.13 / Top↑
認知症高齢者への抗精神病薬をめぐる動き

英国で衝撃的な裁判のニュースがあった。
ミドル・サセックス州ヘイズのナーシング・ホーム(以下ホーム)の看護師で主任職員のMirela Aionoaei(37)は、夜勤の際に(自分が)眠りたいために、認知症の入所者に抗精神病薬を大量に飲ませていたとして今年1月に起訴された。
8月に開かれた裁判で明らかになったところによると、被告は夜勤の度に2つ並べた椅子をベッド代わりに寝るのを好んでいたという。彼女の夜勤の晩に限って入所者が突然ふらふらになるほどの眠気を催す、薬のワゴンではなくエプロンのポケットから取り出した錠剤を飲ませているなど、不審に思った同僚が通報。警察が入所者の髪の毛サンプルを調べたところ、即効性の睡眠薬や抗ウツ剤など、処方されてもいない抗精神病薬を長期間に渡って飲まされていたことが明らかになった。Aionoaeiは容疑を否認している。判決は9月末とのこと。

問題行動を抑制する目的での認知症患者への向精神薬の過剰投与問題は、英語圏では何年も前から取りざたされてきたが、特に最近になって相次いで副作用エビデンスが報告され、見直しへの機運が高まっているようだ。今年に入って特に目についたニュースとして、例えば以下のようなものがある。

抗精神病薬で死亡リスクが上昇
 ハーバード大の研究者らがブリティッシュ・メディカル・ジャーナルで、抗精神病薬によっては認知症患者の死亡リスクを上げる可能性を報告している。ホームに入所している65歳以上の75000人を対象にした、米国における同種の調査としてはこれまでで最も大規模な調査。
対象者の属性や身体的な病気、環境など広範な要因からの影響を調整して得られたデータから、「常に可能な限り最少量の処方とし、特に治療開始直後は細かくモニターすることが重要」「認知症高齢者へのハロペリドールの使用は害が大きすぎて正当化できない」などと書き、「問題行動には他の介入を試みる必要」があると結論。(2月24日 Medical News Today)

抗精神病薬で心臓発作リスクが上昇
米国医師会の内科ジャーナルで、認知症高齢者では抗精神病薬により心臓発作のリスクが上がる可能性が報告されている。
カナダとフランスの研究者が2000年1月から09年12月の間、カナダ、ケベック州の処方レセプト・データベースを用いて、コリンエステラーゼ阻害剤を使用中の66歳以上の患者37138人を特定。抗精神病薬を使用した患者と使用していない患者のデータを比較したところ、地域在住の高齢者で、抗精神病薬と心臓発作リスクの中等度の上昇との関連が見られた。著者らはさらなる研究が必要としながらも「当面、医師は認知症患者への抗精神病薬の処方を限定し、可能であれば環境や行動を通じた戦略など他のテクニックを用いるべき」と結論している。(4月2日 Medical News Today)

米国政府機関が削減キャンペーン
米国公的医療保険センター(CMS)やホームの経営者団体は、年末までにホーム入所の認知症患者への抗精神病薬の使用を15%削減するキャンペーンを発表した。CMSの報告によれば、2010年に認知症の兆候のある入所者の40%が、適応外処方で抗精神病薬(適応は統合失調症、双極性障害など)を出されており、17%以上が推奨レベルを超える量を毎日飲んでいた。
MCSは7月までに同センターのウェブサイトに、ホームごとのデータを比較できる専用ページを設ける予定(7月19日に新装されたNursing Home Compareサイト内に設けられた)。ホームに対して、患者のことを知りニーズへの理解を深めて対応できるスタッフを置き、音楽療法や体操、交流活動など薬に頼らない対応に時間を割くよう求めている。
しかし、現場からは「問題行動があってコミュニケーションもとりにくい認知症患者への投薬はそれほど単純ではない」「皆さんにサン・ルームまで自分で歩いて行ってもらって、そこで本を読んであげられるほど政府からナーシング・ホームに金が出ているわけではない」「(行動療法が)うまくいく人もいるが、そういう人ばかりではない」などの声も上がっている。(6月4日 Pittsburg Post-Gazette)

ちなみに2月のMNTの記事によると、米国FDAは2005年に「認知症高齢者の行動障害への治療として用いられる第2世代抗精神病薬は、死亡率上昇と関連している」と警告している。

「世界の介護と医療の情報を読む」76
「介護保険情報」2012年10月号
2012.11.13 / Top↑
【8日追記】
今日の報道によると、最終的に 反対51% vs 賛成49% だったとのこと。


【20:40 追記】

以下の通り、
安楽死防止連合のAlex Schadenbergが祝勝記事を書きました。
(最終結果は書いてありませんが)

Boston Globe紙の読み通り、MA州のPAS合法化は通らず!

http://alexschadenberg.blogspot.jp/2012/11/congratulations-to-committee-against.html


BANZAAAAAAAAAI!!



【17・36 追記】
ボストン・グローブ紙の午前1:30段階での記事で
合法化はならない模様、と出たのですが、

その後、別のメディアからは「まだ決まらない」の続報も出ているので、
以下の情報、ちょっと保留に。

最終的に確認してから、再度アップします。

MA州がこけたらドミノ(CA,NJ,NH,HI……)が起こりそうなので、
なんか、もう祈る思い……。

WA州の住民投票をチェックしてみたら賛成 58% vs 反対 42% でした。↓
WA州、自殺幇助合法化決定:Oregonに続き米国で2番目(2008/11/7)


 ------------------


大統領もオバマ再選が確定したようですが、

Boston Globe紙の速報によると

水曜日の午前12:15 85%開票段階で
反対50.6% vs 賛成49.4% の真っ二つ。

この僅差ではまだわからないものの、
合法化はならないのでは、との見通し。

Assisted suicide measure too close to call
The Boston Globe, November 7, 2012



【続報】

午前1:30  90%開票段階で
反対50.4% vs 賛成49.6%

Assisted suicide measure appears headed for defeat
Boston Globe, November 7, 2012


【続報】

午前2時 93%開票段階で、
反対51% vs 賛成49%。

開票数 275万で、合法化成立に38484票の不足。


【関連エントリー】
MA州で自殺幇助合法化めぐり住民投票を求める動き(2011/8/25)
MA州医師会が自殺幇助合法化反対を確認(2011/12/6)
WA州の高齢者施設経営者からMA州住民への手紙「PAS合法化したら滑ります」(2012/5/29)
MA州医師会が11月住民投票のPAS合法化をめぐる質問に反対を表明(2012/9/18)
筋ジスのジャーナリスト「死の“自己選択”は幻想」(2012/11/2)
Dr. Emanuel「PASに関する4つの神話」(2012/11/5)
2012.11.13 / Top↑
英国Janet Traceyさんの一方的DNR指定問題の訴訟で、Addenbrook病院の方針に調査。
http://www.bbc.co.uk/news/uk-england-cambridgeshire-20205925

Grassley上院議員と言えば、ビッグファーマ関連スキャンダルを暴きまくってきた立役者なんだけど、今度は他の2人と一緒になって施設入所の高齢者への向精神薬過剰投与問題に切り込む。イエイ!
http://www.blumenthal.senate.gov/newsroom/press/release/senators-blumenthal-kohl-grassley-seek-to-protect-the-elderly-and-taxpayers-from-abusive-overprescribing-of-antipsychotics

【08年にGrassley議員が暴いたスキャンダル関連エントリー】
著名小児精神科医にスキャンダル(2008/6/8)
著名精神科医ら製薬会社からのコンサル料を過少報告(2008/10/6)
Biederman医師にさらなる製薬会社との癒着スキャンダル(2008/11/25)
Biederman医師、製薬業界資金の研究から身を引くことに(2009/1/1)
抗ウツ剤めぐる研究者と製薬会社の癒着スキャンダル報告書(米国)(2008/11/17)
抗ウツ剤めぐる研究者と製薬会社の癒着スキャンダル報告書 Part2(2008/11/23)
今度はラジオの人気ドクターにスキャンダル(2008/11/23)


サヴレスキュってば、09年に人工内耳は「適応のある子どもには法的に義務付けるべきだ」って書いてた。この人、どこまでも「科学とテクノで簡単解決バンザイ」なんだけど、生命倫理学というのは本来は医学の狭い専門領域の価値意識をその外側から問う役割を持ったものだったはずなのに、いつのまにか医学の価値意識を社会に向けて正当化するための学問になりつつあるという印象が、この論考を読むと改めてくっきりとしてくる。
http://blog.practicalethics.ox.ac.uk/2009/07/refusing-cochlear-implants-is-it-child-neglect/

シアトル・タイムズの社説が、ゲイツ財団はアフリカの小規模農家のためにならないGM農業研究から手を引くべきだ、と。問題視されているのは、7月24日の補遺で拾った「肥料があまり要らないGM農産物の開発で、ゲイツ財団から英国の科学者グループに1000万ドル」。:ほぉ。STってゲイツ財団の御用新聞だとばかり……。これは今日エントリーにしたかったけど残念。
http://seattletimes.com/html/opinion/2019592191_fentbereanoopedxml.html

【関連エントリー】
ゲイツ財団がインドでもくろんでいるのはワクチン普及だけでなくGM農業改革も(2011/4/16)
「アグリビジネス」の後ろにはワクチン推進と同じ構図が見える(2011/10/5)
ビル・ゲイツがダボス会議で「途上国の医療・農業支援はケチるな」(2012/1/26)
“大型ハイテクGM強欲ひとでなし農業“を巡る、ゲイツ財団、モンサント、米国政府、AGRAの繋がり(2011/10/27)
TPP進める経済界のトップ、やっぱりぐるっと廻って“ゲイツつながり”(2011/10/27)


日本語。新出生前診断「適切な規制必要」 米研究者が寄稿
http://www.asahi.com/science/update/1102/TKY201211020196.html

【近刊】利光恵子「受精卵診断と出生前診断 その導入をめぐる争いの現代史」(生活書院):これは必読。上のように新たな出生前遺伝子診断が問題になっている時だけに。
http://www.seikatsushoin.com/bk/103%20juseiran.html

California Advocate for Nursing Home Reform というCA州のナーシング・ホーム入所者のアドボケイト団体。案外に米国では消費者保護の視点から施設入所者のアドボカシーって整備されていたりする印象。CANHRの活動の一環には入所者への過剰投与の問題や、施設を探している人への情報提供、それから面白いところとして、施設に「家族委員会」を設置するための手引きというのがある。この手引きは無料だけどオーダーが必要。オーダーしてみようかな。
http://www.canhr.org/familycouncils/fc_video.html

日本。ワタミに過労自殺遺族が話し合いを申し入れ。
http://blog.goo.ne.jp/19681226_001/e/1da724ca222b71fd72becebd592b333a

NYT. CA州では大統領選に合わせて、死刑廃止の住民投票が行われるみたい。
End the Death Penalty in California: A ballot initiative, Proposition 34, provides the chance to shut down the state’s costly and broken system of capital punishment.
2012.11.13 / Top↑
6日(明日ですね)のMA州のPAS合法化に関する住民投票を前に
10月27日に生命倫理学者のEzekiel J. EmanuelがNYTに
「医師による自殺幇助に関する4つの神話」と題した論考を寄稿。

Four Myths About Doctor-Assisted Suicide
NYT, October 27, 2012


Emanuel医師は1997年にOR州の合法化に際しても批判論を展開した人物。
その際に挙げた理由とは、

① いったん合法化されれば
医師らは患者を死なせる注射をすることに徐々に抵抗感を失いルーティーンとなる。

② 抵抗感がなくなれば、その選択肢は、ターミナルな患者だけでなく、
社会から見て苦しそうで目的のない人生を送っているように見える人に広げたくなる。

③ そこに財政的な問題が加われば、
安楽死はあっという間に例外ではなくルールとなる。 
特に2010年にはベビー・ブーマーが定年を迎え始め、
その人口動態が社会保障とメディケア財政を逼迫させる状況があるだけに。

その他、Dr. Emanuel関連エントリーはこちら ↓
「障害者は健常者の8掛け、6掛け」と生存年数割引率を決めるQALY・DALY(2009/9/8)
自己決定と選択の自由は米国の国民性DNA?(2009/9/8)
米国内科学会の倫理マニュアル“しみったれ医療”を推奨(2012/1/5)


で、今回のNYTで指摘されている4つの神話とは;

① 「耐え難い痛みから死を望む人たち」というのは神話。

数々の調査研究で明らかになっているところとして、例えば、
1998年から2009年の間にOR州で自殺幇助で死んだ人のうち
苦痛があったり、苦痛を恐れていた人は22%にすぎない。

90年代に1年間だけ安楽死が合法化されたオーストラリアで安楽死した7人のうち、
3人については痛みが報告されていないし、
他の4人でも痛みのコントロールは適切にできていた。

オランダで2005年に出た報告では
138人のターミナルながん患者を追跡したところ、
安楽死またはPASを求めた人はウツ状態の患者でそうでない患者の4倍だった。
安楽死を希望した患者の約半数がウツ状態だった。

つまり、一般に耐え難い苦痛がある人がPASを望むと思われているのは神話で、
実際は一般の自殺と同じくウツ状態の人が希望するケースが多い。
ウツ状態で自殺を希望する人への対応ならカウンセリングとケアが常識。

② 「医療がハイテクになったために機械に繋がれて無駄に延命される時代になったから
それを避けるためにPASが必要」というのは神話。

 ギリシャ・ローマ時代から安楽死は説かれてきたし、
英国でも19世紀から、米国でも20世紀初頭から、
つまり抗生物質や透析がない時代から議論になってきた。
ハイテク医療の時代とは無関係。

③ 「死の自己決定権が保障されることで終末期に良いケアを受けられる」は神話。

合法化された国や州でこれまでに自殺幇助を受けてきたのは限られた一部にすぎず、
死にゆく患者の大多数は幇助を求めることなく死んでいる。

合法化で利益を得るのは、
教育レベルが高く何でも思い通りにしたい富裕層の癌患者で
社会のトップ0.2%の人々。

一方、合法化で最も濫用被害を受けやすいのは
貧しくて教育レベルが低く、家族にとって負担となる末期の患者。

④ 「幇助自殺なら苦しまないで死ねる」は神話。

自殺幇助でも予定通りにいかないことは沢山ある。
オランダの調査では17%のケースで患者が毒物を吐いていたし、
15%ですぐに死なず何時間、時には何日もかかって、最後には
医師が介入して、自殺幇助が安楽死に転じたケースも、
(これはOR,WAを始め、MAで提案されている法案でも違法行為)


で、Emanuel医師の結論は以下。

PASを合法化するのではなく、もっと本当に大事なことにエネルギーを使うべきである。それは、死にゆく人へのケアをもっとよいものにすること。具体的には、すべての患者が自分の望みを医師や家族とオープンに話し合えるように、またすべての患者が無用な医療に苦しむ前に質の高い緩和ケア、ホスピスケアを受けられるようにすること。



エントリーが膨大な量になって、すぐにはリンクできないのですが、
だいたいここに挙げられている類似のデータは当ブログでも拾ってきた通り。

ただ、②の点では、私は、
やはり科学とテクノが発達してきた時代ならではの
安楽死・自殺幇助の議論への影響というのはあるような気がする。

一つには、「科学とテクノで簡単解決文化」が社会全体に
「身体も生命もいかようにも操作可能なものになってきた」感覚を根付かせて、それが
社会全体に身体や生命に対して操作的な向かい合い方を促しているところがあるんでは?

次に、医療が高度化して、端的に医療費が増大してきたことが
高齢化に比べるとあまり言われないけれど、事実としてあると思うし、
医療経済の問題として「死の自己決定権」が語られる背景にはこの問題もあるんでは?

それからベルギーの「安楽死後臓器提供」の実例や
その他、当ブログが拾ってきた諸々の情報からしても
安楽死・自殺幇助の問題は臓器移植医療の臓器不足解消の要請と繋がっているのでは?

それらの点で、科学とテクノロジーが発達した時代ならではの
安楽死・自殺幇助合法化に向けた動き加速化の背景というものがあるような気がする。
2012.11.05 / Top↑
「ケアの倫理からはじめる正義論 支えあう平等」を読んで、

これまで、同じ重症障害のある娘をもつ親の立場で、
エヴァ・キテイの個人的な事情や思いについて知りたかったことが
いくらかはっきりしたので、整理してみる。


まず、キテイも私と同様に障害者運動について、
両義的な感情の間で引き裂かれているように見える。例えば、

……これまで、合衆国で障碍者コミュニティが獲得してきたことについて、わたしは本当に素晴らしいと思っています。……
……けれども、障碍者コミュニティで語られる多くのことは、自分たちの声で語ることのできる障碍者に合わせた語られ方をしてきました。たとえば、障碍者運動の有名な標語の一つに、「自分のことは、自分で語る!」があります。だけど、セーシャは、話せないのです。……セーシャは自分の声をもたないのです。
 そうしたこともあり、わたしは、障碍者コミュニティのなかでは、こんなことを発言して、まるで批判的にふるまわざるを得ないのです。「あなた方は、障碍者一般について発言をしておられますが、私の娘のような障碍者もいることを、ぜひとも忘れないでください」と。……私は、障碍者の人々が時々、私は愛情に満ちているが、理解力のない親、つまり、過剰に防衛的だったり、受容力に欠ける、そうした親とみなしているように感じます。障碍者たちは、そうした親に対抗する形で、自分たちのアイデンティティを確立してきたのです。……わたしは、時間をかけてかれらの視点から物事を見ようと努力してきました。とくにかれらは、わたしの娘からは学べないことを教えてくれたからです。しかしながら、かれらもまた時には、理解力に欠けるような親の視点から物事を見ることを学ぶ必要があったのだと思います。というのも、そうした親であっても、自分自身のこと以上に、子どもの世話をしてきたのですから。
(p.94-95)


最後の数行については、障害者運動の側がどのように読むか、
ちょっと聞いてみたい気もするし、中には、そういう親の意識こそが
子どもへの抑圧に向かうのだと反発する人もいるのでは、という気がするけれど、

その辺りも含めて、
障害者運動が築いてきたものに感謝し、またそこから多くを学びつつも、
特に重症障害者の親の立場からは障害者運動に言いたいことが多くありもして、
悩ましく引き裂かれているところが、キテイと私はそっくりだなぁ……と思う。


ところで、
セーシャが生まれたのは著者が「大学院に行く前」のことで、1960年代。
大学院で何を専攻するかに迷っていた著者は、

 セーシャが障碍を抱えていることがわかり始めると、科学の入門的な科目は、セーシャの状況についての苦悩から自分を解放するほど、刺激的ではないように思い始めました。わたしは、セーシャの問題を頭から取り除いてくれるような、なにか強烈なものが必要だったのです。……哲学とは、セーシャについて語らなくてもいい方法、セーシャの抱える困難を考えないでよい道の一つだったのです。
(p.102-103)


この段階でまだ住み込みの介護者ペギーはいないと思うのだけれど、
キテイはセーシャを産んでも、セーシャに障害があると分かっても、なお、
大学院に進み、セーシャから頭を離すために哲学に没頭できるだけの
物理的な環境があった、ということなんだろうか。

セーシャの子育ては一体だれが担っていたんだろう……?

たぶんとても近い障害像のミュウの乳幼児期を考えると、
とてもじゃないけれど子育てをしながら学問ができるような状況ではなく、
私たち夫婦は一日一日をかろうじて生き延びるだけで精いっぱいで、
ひーひー疲労困憊の極地だったのだけれど……。

同じように重症障害のある子どもの子育てでも
子どもが健康でさえあったら、研究生活と両立できるものなんだろうか。

確かに祖父母の協力を得て、
フルタイムで働きながら重症重複障害児を育てている女性は
私の身近にもいないわけではない。

私にはそれを可能とするだけの状況がなったのだと頭では分かっているけれど、
この点では、私の中にはずっと「私の頑張りが足りなかったのか」という
自問、自責がどうしようもなく根深く巣食っている。

それは、もしかしたら子育てや介護を理由に仕事をあきらめざるを得なかった女性に
共通の思いなのかもしれないのだけれど。


それから、2009年のカンファの際に
P・シンガーたちに障害者の生活そのものを見てほしいとキテイが企画したことについて
What Sorts of Peopleブログでキテイがコメントした際に、
「セーシャ達の住むコミュニティ」という表現を使っていて、
その時からセーシャが住んでいるのは施設なのか、そうではないのか、
もしかしたらグループホームのようなところなのか、ということが
私にはずっと気にかかっていたのだけど、

この本でもキテイは「コミュニティ」と「センター」という表現を使い、
「施設」という言葉は使っていない。

けれど、以下のような語りからも、
その他の個所で語られていることからも、
セーシャさんが暮らしているのは「○○センター」という名前の
施設に類する場所であるように想像される。

……セーシャを、いってみれば『隔絶したコミュニティ』に住まわせることについては、正当化が必要だとよく思います。それは、障碍者たちのコミュニティが求め闘ってきたこと、わたしもまた一般的に言えば信じていること、つまり地域での生活に反しています。
(p.116-117)


この個所に続けて、キテイはセーシャのような重症者のニーズに応えるには
いかにGHの小規模な資源では十分でないか、
そのセンターが「逆インクルージョン」を含めて、
いかにすばらしい取り組みをしているかを
熱を込めて語っている。

ミュウのような重症心身障害者のGHでの「自立生活」ビジョンについては
私もまったく同じような懸念を持っているから
語られていることそのものはカンペキに同意なのだけれど
(さらに言葉をもたず無抵抗な重症者のケア空間としては
GHの閉鎖性も私には気にかかっている)

それが一切「施設」という言葉を使わずに語られているところ、
なにか急いで埋めなければならないすきまでもあるかのように
ちょっとリキんで彼女が語っているように感じられるところに、

私は、キテイの
未だ乗り越えられていない罪悪感と痛みを見るような気がする。


それから、同じ重症障害のある子どもをもつ母親でありながら、
キテイのように生きることができなかった私には
彼女への嫉妬がどうしても胸に渦巻いてしまうので、

そのセンターがいかにすばらしいところであるかが力説されればされるだけ、
そのセンターはもしかしたら住み込みの介護者を雇えるような
富裕層の家族しか入ることのできない施設なのでは? と
我ながら醜いことを考えてしまう。


でも、そういう互いの間にある
諸々の前提条件のギャップを別にすれば、大筋、ああ、同じなんだなぁ……と。

特に、キテイが障害者運動に向けて
「ウチの子のような重症重複障害者のことが見えていない」と訴えていること、
同時に「親は敵かもしれないけど、それだけじゃないことを
あなた達も考えて」とも訴えているように見えることは、
私が『アシュリー事件』の12章で書いたこととまったく同じ――。

そのことに慰められる。

それに、インタビューの間の写真が何枚かあるのだけれど、
セーシャのことを語っているキテイの表情が
そこだけはなんとも言えず軟らかい笑顔で、すっごく、いい顔。

どんな生き方をして「今ここ」に至ったのであろうと、
私たち、こんなにも愛する娘がいる「おかあさん」なんですよね、キテイさん。

そう――。

自分自身の人生を生きたい思いをこんなにも捨てがたい私たちだけど、
だからといって私たちが娘を愛していないわけじゃない。

そう――。

もしも苦しみながらも自分なりに誠実に生きようとしてきた一人の人間の中で
「重い障害のある子どもの親であること」と
「自分自身の人生を生きようとする私」とが両立されず、
その人が両者の間で引き裂かれたまま生きるしかないなら、
それはその人自身の責任や問題ではないんじゃないだろうか。

それは、本当は一人ひとりの親の問題ではなく、
その責が親に負わされてしまう社会の側の問題なんじゃないんだろうか。

そのことをエヴァ・キテイは「愛の労働」あるいは依存とケアの正義論で書いたのだと思う。

そして、私も私なりに、そのことを、
「私は私らしい障害児の親でいい」や「海のいる風景」で書いてきたのだと思う。
2012.11.05 / Top↑
MA州の自殺幇助合法化住民投票関連

生命倫理学者のEzekiel J. Emanuelが10月27日にNYTに自殺幇助合法化反対の論考「自殺幇助に関する4つの神話」。:これは近くエントリーに。以下の2009年9月のエントリでも拾っているように、Emanuel医師は1997年にもOR州のPAS合法化を批判している。
http://opinionator.blogs.nytimes.com/2012/10/27/four-myths-about-doctor-assisted-suicide/

【Dr. Emanuel関連エントリー】
「障害者は健常者の8掛け、6掛け」と生存年数割引率を決めるQALY・DALY(2009/9/8)
自己決定と選択の自由は米国の国民性DNA?(2009/9/8)
米国内科学会の倫理マニュアル“しみったれ医療”を推奨(2012/1/5)


法文では①自殺を決めた人の家族に通知することを求められていない、②本人が薬を飲む場に医師が同席することが求められていない、③地域の薬局でも処方薬を買える、などから、漠然と医療現場での自殺幇助をイメージしている人に対する警告。
http://www.wickedlocal.com/cohasset/topstories/x255964409/COMMENTARY-Assisted-suicide-is-public-safety-issue#axzz2BEyCqnYy

急速に支持率が低下しているものの、それでも住民投票は法を通すのでは、との見通し。
http://andover.patch.com/articles/poll-assisted-suicide-ballot-question-losing-support-but-still-expected-to-pass-62eb2594

リベラルのBoston Globe紙が、MA州の自殺幇助住民投票でNOと投票するよう社説で呼び掛けたとのこと。最近反対ロビーにはカトリックからのカネが流れているという情報がしきりに流されていたのは私も気になっていたのだけれど、Wesley Smithが同紙にはカトリックとの繋がりはないぞ、と。
http://www.nationalreview.com/corner/332298/iboston-globei-votes-no-assisted-suicide-wesley-j-smith

ついでに、Nicklionson未亡人がスコットランドでPASが合法化されれば、英国の後押しになる、とスコットランドのMacDonald議員と連携。
http://www.scotsman.com/news/health/assisted-suicide-campaigner-says-scots-can-lead-the-way-1-2612955


その他の話題

コロラド州の無脳症児Nickolas Coke君、3歳で死亡。
http://www.bioedge.org/index.php/bioethics/bioethics_article/10295

一方、BMJには、匿名医師から、それほど重症の障害でなくても親が治療拒絶するケースが増えているが、栄養と水分を引き上げられた新生児が死ぬまでの期間にどのような変化を遂げるか、それを見ているしかない周囲の苦痛を投稿。
http://www.bmj.com/content/345/bmj.e7319

英国で問題になっているLCPの機会的運用、一方的なDNR指定で、保健大臣が医師らに患者と家族との話し合いを求める方向で新たな義務を医師らに課すことに。
http://medicalfutility.blogspot.jp/2012/11/england-to-require-clinicians-to-write.html

豪上院の委員会が障害児者への強制不妊の実態調査へ。:これもエントリーにしたい記事。
http://www.bioedge.org/index.php/bioethics/bioethics_article/10301

NJ州で代理母によって生まれた子どもの母親として依頼者の女性を認めない判決。
http://www.bioedge.org/index.php/bioethics/bioethics_article/10300

日本。都が日比谷公園からのでも出発許可せず 危機にある「集会の自由」
http://www.janjanblog.com/archives/84148

【ライブレポート】阿佐ヶ谷ロフトA「毒母ミーティング2~信田さよ子先生をお迎えして」
http://rooftop.cc/news/2012/11/01193703.php#.UJJXR8DOUgg.twitter

日本語。誘惑から守る…未婚女性の携帯禁じたインドの村
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20121104-00000347-yom-int

災害時にはワイヤレスの通信機器は役に立たない。ハリケーン・サンディから。
http://www.washingtonpost.com/business/technology/wireless-technology-vulnerable-in-emergencies/2012/11/02/ff2b418a-2505-11e2-ba29-238a6ac36a08_story.html

2年前に発売になった抗血栓薬Pradaxaに大量出血との関連。また血液を薄める効果への解毒作用となるものがない、という問題。
A Promising Drug with a Flaw: The anticlotting drug Pradaxa, on the market only two years, is growing in popularity for its ease of use but it has been associated with hemorrhaging, and it has no antidote to reverse its blood-thinning effedts.

米のステロイドの異物混入事件で髄膜炎になった患者の中に、髄膜炎が回復し始めて今度は頭蓋硬膜外膿瘍になる人が多数。
Second Illness Is Infecting Those Struck by Meningitis: People recovering from meningitis in a national outbreak are now being diagnosed with epidural abscesses.
2012.11.04 / Top↑
米国看護師協会が自殺幇助・安楽死反対のステートメント草案を発表。
http://www.lifesitenews.com/news/american-nurses-association-issues-draft-statement-opposing-assisted-suicid/

6日にPAS合法化の住民投票が行われるMA州のWaltham市で、市長と市議全員が合法化反対を表明。:ここへ来て、メディアに反対論がやたら流れ始めている感じがするけど、本当のところ、どうなんだろう。
http://waltham.patch.com/articles/mayor-full-council-oppose-assisted-suicide-question

オレゴン州の調査で、医師に自殺幇助を求めた患者の90%が気持ちを翻した、との結果。JAMAに。アブストラクトはこちら ⇒ http://jama.jamanetwork.com/article.aspx?articleid=195072 読みたいけど、まだ読めていません。
http://www.lifenews.com/2012/10/31/90-percent-of-people-asking-doctor-for-assisted-suicide-change-mind/

アイルランドでMS末期の女性Marie Flemingさん(59)が、自殺幇助は憲法で保障された権利だとして提訴。
http://www.irishtimes.com/newspaper/ireland/2012/1102/1224326035558.html

ハリケーン・サンディで患者を避難させなかった病院の判断をめぐってProPublica。:いずれ読みたい。
http://www.propublica.org/article/in-hurricanes-wake-decisions-not-to-evacuate-hospitals-raise-questions

【関連エントリー】
ハリケーン・カトリーナ:メモリアル病院での“安楽死”事件 1/5: 概要(2010/10/25)
ハリケーン・カトリーナ:メモリアル病院での“安楽死”事件 2/5: Day 1 とDay 2(2010/10/25)
ハリケーン・カトリーナ:メモリアル病院での“安楽死”事件 3/5 : Day 3(2010/10/25)
ハリケーン・カトリーナ:メモリアル病院での“安楽死”事件 4/5 : Day 4(2010/10/25)
ハリケーン・カトリーナ:メモリアル病院での“安楽死”事件 5/5 : その後・考察(2010/10/25)
「現代思想」6月号に、カトリーナ安楽死・死の自己決定権、無益な治療論について書きました(2012/5/25)


ジェネリック製薬会社への規制強化(米)
http://www.nytimes.com/2012/11/01/business/fda-increases-scrutiny-of-some-generic-drugs.html?pagewanted=all&_r=0

英国には National Vitamin D Awareness Week(英国ビタミンD啓発週間)なるものがあるそうな。欠乏症予防のためサプリメントを妊婦と子どもに、と。
http://www.medicalnewstoday.com/releases/252183.php

米国の先生たちは、デジタル機器の使用で生徒たちの集中力と困難な課題に取り組む我慢強さが低下している、と考えている。
http://www.nytimes.com/2012/11/01/education/technology-is-changing-how-students-learn-teachers-say.html?nl=todaysheadlines&emc=edit_th_20121101

日本。新型出生前診断でシンポ開催へ=研究者やダウン症協会が意見交換。11月13日。
http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2012103100900

日本。飲み薬併用、メリット考え処方 美濃の男児死亡で医師見解:タイトルになんで入っていないのか不思議ですが、例の日本脳炎ワクチンの事件です。
http://www.gifu-np.co.jp/news/kennai/20121102/201211021019_18504.shtml

日本「もう疲れちゃった」悩んだ夫婦 (会津若松の無理心中事件):原発事故、失職、息子に知的障害。
http://mytown.asahi.com/fukushima/news.php?k_id=07000001211010001

Tu-ta9さんのブログの「チョムスキー・インタビューの『反グローバル化』批判について」がとても面白かった。なんか次元が違うかもしれないけど、「陰謀論だ」と重なってしまった。
http://tu-ta.at.webry.info/200709/article_20.html

ユーロ圏の失業率が記録的な高さに。
http://www.guardian.co.uk/business/2012/oct/31/eurozone-unemployment-record-high-eurostat

英国の連立政権の予算カットで地方自治体が機能不全に?
http://www.guardian.co.uk/society/2012/oct/30/end-of-local-government

その英国で、高所得層への子ども手当廃止。
http://www.guardian.co.uk/money/2012/nov/01/child-benefit-cut-cost-families
2012.11.04 / Top↑
昨日、園に行かれた保護者の方が、以下のように
昼食時のミュウの様子を知らせてくださった。

今日、ミュウちゃんが昼食時に、ほかの人をしっかり拒否して、
ちょっとハンサムな H大の男子実習生を大きな声で呼んでいる光景を
すごく楽しくみせていただきました。

そして、その学生が食事介助すると、
すごく上手に食べられるのですよね!? 

楽しい楽しいひとときでした。 
テーブルのみんなが和んでいました。


今日、迎えに行った時に
「昨日、イケメンを呼んで食事介助してもらったんだって?」と
ツッコミ入れてみたら、まー嬉しそうな顔して「ハ―」。

「実習生が来てると楽しい?」
「ハ!」 即答。
2012.11.04 / Top↑
MA州で自殺幇助合法化をめぐる住民投票が行われる日(6日)が近づいて
メディアでは議論が沸騰しているけれど、
NYTで筋ジスのジャーナリストのBen Mattlinが、
自己選択は幻想にすぎないと体験を踏まえた重みのある論考を寄せている。

冷静でありながら思いのこもった文章で、できれば全訳したいくらいなのだけれど
そうもいかないので、かいつまんで以下に。

著者は生まれつきの筋ジスで
子どもの頃から歩けず、立てず、両手もあまり使えない。
この症状だと通常は2歳までには死ぬ病気だと言われていたが
6歳の時に劇的に進行が止まり、現在50歳で、
「私は夫であり父でありジャーナリストであり作家でもある」。

とはいえこの歳になると衰えてきて
鉛筆も持てないから口述筆記で原稿を書いているし、
飲み食いは一口ごとに闘いの様相を呈してきた(故多田富雄さんを思い出します)。

数年前に手術を受けて医療ミスから意識不明になった時には
医師らは延命に価値があるのかを検討した、という。
「私の家族のことも私の仕事のことも今後やりたいことも知らないまま」
生きているだけで苦しそうだから、と医師らは考えたようだった。

意見を求められた妻が「あらゆる手を尽くして」と説得してくれて
今の彼がある。

このエピソードから著者は
「医師でさえも、というか医師ならでは特に、誰かのQOLについて
低すぎて生きるに値しないと安易に考えてしまうということを知った」という。

自分のような患者は医療の失敗例でしかないのだろうけれど、
それは理解が足りないというものだ。なぜなら
「私はただの診断名や予後以上の存在」だから。

でももっと見えにくい形の教唆だってある。

愛する家族の目に浮かぶ疲労の色を見たり、
自分のいるところで深刻な病状に看護師や友人がついため息をついたり
そんなちょっとした出来事で楽天的な患者だって気持ちがウツっぽく沈むことはある。

上記のような姿勢の臨床医なら、それを
生きるに値しない生への絶望であり、絶望するのが合理的だと
解釈してしまうかもしれない。

生きるための支援の選択肢が十分でないことを考えれば、
実際、それが合理的な選択肢なのかもしれない。

でも、それこそが自己選択が幻想だということではないのか。
自分がおかれた現実とまったく関係なしに自殺を選択する人がどこにいるだろう?
誰からもいてほしいと望まれていないパーティで
帰ろうとしない人がどこにいるだろう?

合法化推進派は、セーフガードは十分だ、すべり坂は起こらない、自己選択だというけれど、
DVも児童虐待も高齢者虐待も表面化しないケースは多い。
それでもMA州では2010年だけでも高齢者虐待は約2万件報告されているのだ。

医師が処方した薬を飲むのは本人だから大丈夫だ、
私のように自分で飲むことができない人の安全は守られているというけれど、
法律には、本人が飲みこんだことを確認することは義務づけられていない。
飲む場面に誰かが立ちあい確認することは求められていないのだ。
私にはこれはさらなる虐待の温床と見える。

最後に、著者は、

確かに「幇助死」の提案の背景にある意図は尊いものだ。しかし、なぜ死ぬ権利がそんなにも急がれなければならないのかが私には気になってしまう。私たちのように重症で、治すことができない、命にかかわる病気や障害のある人たちが、他のみんなと同じように心から歓迎され心からの敬意を持って遇され機会を与えられる社会では未だないというのに。


Suicide by Choice? Not So Fast
Ben Mattlin
NYT, October 31, 2012



著者が指摘している
「処方された人が薬を飲む場に医療職が立ちあっていない」という問題は
これまでもオレゴンとワシントンの尊厳死法で指摘されてきました。

例えば ⇒ OR州2011年に尊厳死法を利用して死んだ人は71人の最高記録(2012/3/14)
また ⇒ OR州の尊厳死法報告2011についてBioEdge(2012/3/28)


私も、この問題では、家族介護は密室だということを
よく考えないといけないと思うし、

自殺幇助が虐待に繋がる懸念については
私も10月1日のシノドスの論考でちょっと書きました。

それから、医療が捉えるQOLと
そのQOLを現に生きている本人の捉え方とには開きがあること、

後者は揺らぐものであるということも
著者が指摘している通りと思います。
2012.11.04 / Top↑
過去20年間の米国での合法的自殺幇助に関する文献を調査した結果、自殺幇助が合法化されると、その他の自殺も増えていることが明らかに。著者は「自殺は感染する」。
http://www.onenewsnow.com/pro-life/2012/10/31/research-assisted-suicide-increases-other-suicides

米MA州の自殺幇助合法化の住民投票が近づくにつれて、メディアでの論争も激化しているけれど、1か月前には合法化賛成が64%だったのに、現在は47%という世論調査の結果が報告されている。ついでに最近目につくのは、反対ロビーの方がカトリック教会を中心に莫大な資金を集めている、という情報。そうかなぁ。WA州の合法化の際など、どう見たって合法化ロビーの方がカネ持ってるという印象だったけど。
http://www.metrowestdailynews.com/news/x1757123000/Support-plunges-for-assisted-suicide-question

Tony Nicklinsonさんの未亡人がスコットランドに自殺幇助合法化を訴え。
http://www.telegraph.co.uk/health/9642794/Tony-Nicklinsons-widow-to-call-for-Scotland-to-legalise-assisted-suicide.html

【関連エントリー】
“ロックト・イン症候群”の男性が「妻に殺してもらう権利」求め提訴(英)(2010/7/20)
自殺幇助希望の“ロックト・イン”患者Nicklinson訴訟で判決(2012/3/13)
自殺幇助訴訟のNicklinsonさん、ツイッターを始める(2012/7/2)
「死ぬ権利」求めるロックト・イン患者Nicklinsonさん、敗訴(2012/8/17)
Nicklinsonさん、肺炎で死去(2012/8/23)


日立が英国での原発開発に参入。
http://www.guardian.co.uk/environment/2012/oct/30/hiatchi-future-low-carbon-power

ハリケーン・サンディでNYの原発3基が電気系統の問題でシャットダウン。
http://www.washingtonpost.com/business/economy/3-nuclear-power-reactors-shut-down-during-sandy/2012/10/30/7ddd3a94-22b6-11e2-8448-81b1ce7d6978_story.html?wpisrc=nl_cuzheads

ジョージ・ルーカスが自社をディズニーに売却。:巷の関心はスター・ウォーズ・シリーズの行方のようなのだけれど、私が目を引かれるのは、ルーカス監督の「その後はビル・ゲイツのような慈善家になって、教育と医療の問題に取り組みたい」発言。金持ちだということがどうして教育にせよ医療にせよの専門家ということになるのか、前からずっと理解できない。
http://www.guardian.co.uk/film/2012/oct/30/disney-lucasfilm-star-wars-deal
http://www.hollywoodreporter.com/news/george-lucas-next-act-bill-384572

米のTV番組で美しい子どもコンテストが人気だとか。親のエゴで出場させているが、子どもの自尊感情や健康に害がある、という指摘。
http://www.medicalnewstoday.com/releases/252104.php

ロンドンで、母親が産後ウツと思われる精神障害から1歳2カ月と生後10週間の子どもを殺した事件。:妙なのは記事に事件の事実関係がほとんど出てこないまま、「この事件では罰するのは公益にならない」との判断だけが報じられていること。その「妙な」感じが、証拠が明らかな自殺幇助事件での「起訴は公益に当たらない」判断の釈然としない座りの悪さに近い感じ。
http://www.guardian.co.uk/uk/2012/oct/30/woman-admits-killing-two-babies

バリアトリック手術後に肥満の母親から生まれた乳児は、手術前に生まれた子どもよりも心臓が健康。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/252193.php

貧困問題で英国社会の平等の岐路。生活水準コミッションからの報告書で、低賃金と子育てコスト問題に対処するか、さもなくば何百万人もが何世代にもわたって苦境に。
http://www.guardian.co.uk/business/2012/oct/30/economic-growth-commission-on-living-standards

監視カメラ社会として有名な英国。でも監視カメラは人々の不安をあおるだけで、必要なのは治安の悪い地域での安全強化のための人員の増員。
http://www.guardian.co.uk/society/2012/oct/30/cctv-increases-peoples-sense-anxiety

豪で社会的包摂週間、11月24日から12月2日まで。
http://www.socialinclusionweek.com.au/index.cfm?contentID=66
http://www.investinaustralia.com/news/social-inclusion-week-2012

創造性と精神障害の密接な関連。特に物書きと統合失調症。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/251568.php

乳がん検診は、誤診と無用な治療に結びついて、利益よりも害の方が大きい。
http://www.guardian.co.uk/society/2012/oct/30/breast-cancer-screenings-damaging-women

日本。マイコプラズマ肺炎が大流行 過去最高、8割は子ども
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20121031-00000003-asahi-soci
2012.11.04 / Top↑
「ケアの倫理からはじめる正義論 支えあう平等」
エヴァ・フェダー・キテイ 岡野八代 牟田和恵 (白澤社 2011)


2010年のキテイの「愛の労働 あるいは依存とケアの正義論」の出版と
同年11月の来日の後に出版されたもので、

来日時の京都同志社大学での講演録と
監訳者2人によるキテイへのインタビュー、監訳者それぞれの解説と
他3人の「愛の労働」読後感を収録した、いわば「愛の労働」の副読本。


なお、当ブログでは
Ashley療法の批判者としてキテイには注目してきました。
エヴァ・キテイ関連エントリーはこちら ↓
哲学エヴァ・キテイ氏、11月に来日(2010/10/12)
Eva KittayとMichael Berube:障害のある子どもを持つ学者からのSigner批判(2010/10/13)
Eva Kittay の成長抑制論文(2010/11/7)
Eva Kittayさんに成長抑制WGのことを聞いた!(2010/11/12)
「成長抑制でパンドラの箱あいた」とEva Kittay氏(2010/11/23)

また「愛の労働」を読んで書いたエントリーがこちら ↓
サンデル教授から「私の歎異抄」それからEva Kittayへ(2010/11/25)
ACからEva Kittay そして「障害児の介護者でもある親」における問題の連環(2010/12/1)


「愛の労働」は大部の本である上に、背景の哲学議論について知らない私には
本筋は理解したつもりでも、なんとなく「分かったつもりだけど……」という
曖昧さが残っていたのですが、

この副読本を読んで、あれこれ、すっきりした気分なので、
私自身のメモとして、以下に。

 キテイが平等をめぐる「依存批判」と呼んだものは、したがって、じつは、正義に対する依存批判でもある。いま、フェミニズムに突きつけられている問題は、〈等しくない者は、等しくなく扱え〉と考える正義論そのものを見直すことなのである。もっといえば、能力において等しくない者、端的に言えば、男性哲学者が社会的には無能だと考えてきた者と、そうした者に付き添い、気を配り、そこに自分の能力を傾けている者、だからこそ、その人もまた、社会的には無能だとみなされてしまう者たちの視点から、社会を構想することなのだ。
(p.32 岡野)


キテイさんの京都講演は
私はシアトルこども病院成長抑制WGのことについて確認したいことがあって
あわよくば直接に質問できないかと出掛けていったので、下心でギンギンに緊張して
内容を聴くどころの精神状態ではなかったため、今回この本で講演内容を改めて読むと、
上の2つのエントリーで書いた「透明な自己」と「ドゥーリア」の理解で
間違ってはいなかったんだな、と安心した。

そして、「ドゥーリア」の原理とは、
やっぱり介護者支援の理念だなぁ、とも。

その他に、監訳者によるインタビューで面白かった点は、

コミュニタリアニズムと、依存とケアの問題を追及するフェミニストの違いとして、
前者が伝統的なコミュニティや保守的な家族観を前提とするのに対して、
後者はそうした社会が女性やマイノリティに抑圧的であることを批判し
家族の形にはこだわらないこと。

対談の中でキテイが
「ケアの脱ジェンダー化は、一朝一夕にできるようなことではないでしょう。」
それまでの間、ケアワークをする女性を支えなければなりません」と言っている個所は
「今この時」に過大な介護負担を担っている人の
「今ここ」にある痛みのことを言っている、
という点で、とても共感する。

最後の章で、監訳者の牟田和恵さんがとても刺激的な提言をしている。

人は産まれてから死ぬまでの間に
およそ人生の4分の1はケアを受けて過ごすのだと考えれば、

 人間にとって依存が必然であり、したがって、ケアを行なう者の存在も人としての必然ならば、人間とは、ケアを受け、その能力がある限り自らもケアを返していく存在であるのではないだろうか。……(略)……自身の子や親ではなくとも、血縁に依存者がいないとしても、自身がケアを受ける人生の四分の一を返報できるくらいに、ケアの営みにかかわっていく、それこそが「自立」した尊厳ある人間の姿ではないのか。
 そして社会は、誰もが人生の四分の一――単純に一般的な労働時間で考えれば、それは週五日働くうちの少なくとも一日、一日八時間働くうちの少なくとも二時間にあたるが、もちろん、ケアの責任の果たし方は多様であっていい――は、何らかの形でケアを担うことを前提として、法や制度が組み立てられるべきではないのか。……
(p.161)


ここまで大きな視点ではないけれど、もう少し小さな視点で私が考えたのは
「大人なら誰でも基本的な家事・育児・介護ができる社会」というコスト削減策(2009/5/25)

そして牟田さんは最後に
「家族」という神話を批判することの必要性を解く。

「家族の愛」が何かの正当化に使われる時には要注意だというのも、
「親の愛」が「科学とテクノの簡単解決文化」マーケット創出のターゲットとされていることも
当ブログの大きなテーマの一つ。

また、家族神話や母性神話が、以下のような文脈で
再生産・強化されていくような不気味な空気も気にかかっている――。


“ドナー神話”とは“母性神話”の再生産ではないのか?(2009/10/17)
「親から子への臓器提供は賞賛する必要もない当たり前の義務」とA事件を擁護したRoss(2009/10/26)
「ドナー神話」関連での頂きもの情報一覧(2009/10/26)
「腎臓が欲しければ、他人にあげられる腎臓と物々交換で」時代が始まろうとしている?(2010/6/30)
2012.11.04 / Top↑
豪の障害のある子どもを持つ母親が支援サービス充実を訴えている。:こういう記事でいつも思うのは、日本とのベースラインの違い。この母親が「足りない」と言っている状況というのは「町にレスパイト・センターが1つしかなくて、それも高齢者の介護者と一緒に利用するということになっている」「3か月に1回週末に利用できるだけ」。今は受けられなくなったけど、以前は週日は、学校から帰ってくるスクールバスのバス停に迎えに行ってから午後3時半から5時半まで世話をしてくれる人が来てくれていたという。
http://www.frasercoastchronicle.com.au/news/frustrated-mum-pleads-for-better-care-options/1599822/

【英国のベースラインについて具体的な情報を含んでいるエントリー】
レスパイト増を断られた重症児の母の嘆きの書き込みがネット世論動かす(英)(2011/1/21)
介護者の10の心得 by the Royal Princess Trust for Cares(2011/5/12)
英国の障害者らが介護サービス削減に抗議して訴訟、大規模デモ(2011/5/11)

【米国のベースラインについて具体的な情報を含んでいるエントリー】
Ashleyケース、やはり支援不足とは無関係かも(2008/12/8)
Obama大統領、在宅生活支援でスタンスを微調整?(2009/6/25)
米国IDEAが保障する重症重複障害児の教育、ベースラインはこんなに高い(2010/6/22)


英国野党労働党の党首Ed Millibandが与党の障害者に対する差別意識を批判。特に医療における差別解消の必要を訴え。:この記事はなるべくならエントリーにしたいと思いますが。
http://www.guardian.co.uk/society/2012/oct/29/ed-miliband-time-mentally-ill?CMP=EMCNEWEML1355

日本。ADHD薬、成人からでも適応 国内初、米系企業に承認 イーライリリーのストラテラ。
http://www.asahi.com/business/update/1024/TKY201210230796.html

世界腫瘍学フォーラムで、癌治療研究の行き詰まり懸念。数年前には新薬開発や遺伝子研究によるオーダーメイド治療への期待が高かったが、せいぜい数カ月の延命効果どまりで、なによりも治療そのものが高価すぎて先進国でも使いづらい。:最先端医療って、研究開発の国際競争がどんどん激化しては各国ともに生き残りをかけて膨大な資金を投入するしかなくなっていく一方で、そうして開発される治療法はほとんどの民草には利用不能の無縁なものとなっていくことの矛盾。iPS細胞研究も同じだと思うのだけれど、それでも研究資金を投入せず国際競争から撤退するという選択肢はとれない。特許獲得競争に負ければ、今度は技術利用に莫大な金を投入することを迫られるから。でも、そうしてどんどん貧乏になっていく国は社会保障費をカットするしかなくなるわけだから、一般の国民はむしろ通常の医療すら奪われていく方向なんじゃないか……と思うことがある。 ⇒ 事業仕分けの科学研究予算問題から考えること(2009/12/12)
http://www.guardian.co.uk/society/2012/oct/28/targeted-cancer-drugs-expectations-experts

英国労働者のうち約500万人が生活するに十分でなく、5世帯に1世帯は生活水準が「ショッキング」なほど低い。:世界中が既に貧困の連鎖に陥っているような気がする。人口の1%が富を独占し99%にカネが分配されない世界で、各国家とも機能不全に向かっているというのに、世界のさまざまなシステムだけは旧態依然のまま、今だに機能しているようなフリだけ維持されている……みたいな。
http://www.guardian.co.uk/society/2012/oct/29/five-million-britons-living-wage

【関連エントリー】
米英の子どもの貧困(2008/6/13)
子ども達に経済不況の影響、深刻(米国)(2009/4/23)
英国で子どもたちが飢えている(2012/6/20)


国連から児童労働に関する報告書。問題に取り組まなければ、8年後には1億9千万人の児童労働者。
http://www.guardian.co.uk/world/2012/oct/29/un-eliminate-child-labour-2020

【関連エントリー】
子どもたちがこんなにも不幸な時代(2008/5/30)
身の安全も大人も信じられない子どもたち(豪)(2008/6/9)
restavekという名の幼い奴隷(ハイチ)(2008/9/24)
世界の「奴隷労働」を、拾った記事から概観してみる(2011/1/20)


知的障害の関連遺伝子。
http://www.medicalnewstoday.com/releases/252016.php

人生への満足もうつ病にも関連遺伝子。
http://www.medicalnewstoday.com/releases/252018.php

遺伝病のような有害遺伝子にも、ある段階では利益があって、だからこそ進化の過程で生き残っている。
http://www.medicalnewstoday.com/releases/252029.php

日本。講演:「尊厳死」法制化の底流を探る by川口有美子さん。12月4日(火)18:30~20:00 早稲田大学戸山キャンパス33―2号館2階 第1会議室 参加費無料 予約不要
http://www.f.waseda.jp/k_okabe/forum/121204.html
2012.11.04 / Top↑
11月30日は英国の「介護者の権利の日」。
http://www.theambler.co.uk/2012/10/25/carers-rights-day/

カナダ Saskatchewan州の住民世論調査でマジョリティが自殺幇助合法化に賛成。
http://www.cbc.ca/news/canada/saskatchewan/story/2012/10/25/sk-doctor-assisted-suicide-1210.html

しかしカナダの連邦政府は自殺幇助合法化は生命の軽視につながる、と。
http://www.vancouversun.com/news/Assisted+suicide+risky+allowing+demeans+value+life+federal+says/7447066/story.html

米国看護師協会(the American Nurses Association)が自殺幇助・安楽死に看護師が関与することに強く反対する意見表明へ。看護師の倫理綱領に反する、として。
http://www.nationalreview.com/human-exceptionalism/331834/nurses-set-oppose-assisted-suicide

米国の医療制度改革に尽力した故エドワード・ケネディ上院議員の未亡人が、MA州の自殺幇助合法化をめぐる住民投票を批判。"We should expand palliative care, pain management, nursing care and hospice, not trade the dignity and life of a human being for the bottom line.
http://www.southcoasttoday.com/apps/pbcs.dll/article?AID=/20121027/NEWS/210270328

【Edward Kennedy議員関連エントリー】
障害胎児・新生児の親に情報提供を保障する法案(米)(2008/4/1)
周産期に障害・病気情報提供を保障 法案にW・Smith賛同(2008/4/16)
遺伝子情報差別禁止法(米)の不思議(2008/6/4)
出生前後の障害・病気診断に情報提供を義務付け(米)(2008/10/9)


MA州の投票に向け、薬剤師の団体が自殺幇助合法化の是非を問う質問2に反対。
http://www.metrowestdailynews.com/news/x1890066310/Pharmacists-group-opposes-ballot-question-two

オレゴンの鬱病女性がテキサスで幇助自殺か? メキシコで毒物購入した男を拘束(2009/5/21)で取り上げた事件の続報。人間の自殺幇助に使う目的でメキシコから動物用の鎮静剤を輸入したとして、Jeff George Ostfeldに懲役6年の刑。
http://www.themonitor.com/news/local/article_05c7fdd6-1fc4-11e2-9b32-001a4bcf6878.html

「長い心肺蘇生は無益」を否定する調査結果(2012/9/6)の続報ではないかと思うのだけれど、Lancetの最新刊に論文。アブストラクトの結論は、Duration of resuscitation attempts varies between hospitals. Although we cannot define an optimum duration for resuscitation attempts on the basis of these observational data, our findings suggest that efforts to systematically increase the duration of resuscitation could improve survival in this high-risk population.
http://www.themonitor.com/news/local/article_05c7fdd6-1fc4-11e2-9b32-001a4bcf6878.html
http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736%2812%2961182-9/fulltext?elsca1=ETOC-LANCET&elsca2=email&elsca3=E24A35F

日本の森口事件から話を起こして、Lancetに研究の倫理に向けたグローバルな努力として、10月17日にthe global network of science academiesとthe interAcademy Council から責任ある科学研究に向けた方針レポートが刊行された、という話題。
http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736%2812%2961822-4/fulltext?elsca1=ETOC-LANCET&elsca2=email&elsca3=E24A35F

重症の肥満への対応として胃のバイパス手術は子供でも大人と同様に有効。
http://www.medicalnewstoday.com/releases/251865.php

パキスタンで、一夫多妻における代理母問題が最高裁へ。
http://tribune.com.pk/story/454670/wife-or-surrogate-mother-apex-court-takes-up-unusual-child-custody-battle/

凍結卵子も今や国際マーケット。
http://www.bioedge.org/index.php/bioethics/bioethics_article/10290

P. シンガーが胎児が人間であることについてはプロ・ライフと同様に認める立場をとりつつ、女性の権利としても人工抑制の観点からも中絶は倫理的に正当化できる、と。:個人的には、人口抑制が挙げられていることに注目。
http://www.bioedge.org/index.php/bioethics/bioethics_article/10287#comments

看護の質が高い病院では術後の患者の死亡率が低い。
http://www.medicalnewstoday.com/releases/251879.php

統合失調症と自閉症に遺伝子繋がり?
http://www.medicalnewstoday.com/articles/251890.php

子どもたちが早く成熟するようになってきているのだけれど、社会がそれに追いつけていない。
http://www.guardian.co.uk/society/2012/oct/25/early-puberty-growing-up-faster

日本語。エレファント・マン:死後122年、病気解明へDNA鑑定
http://mainichi.jp/select/news/20121024k0000m030104000c.html
2012.11.04 / Top↑
本来は丁寧な終末期のケアのパスであるはずのリヴァプール・ケア・パスウェイ(LCP)が
英国の医療現場で「さっさと脱水・死ぬまで鎮静」という
機会的な高齢者ケアのツールになり果てているという問題は、
当ブログでも以下のエントリーなどで折に触れて追いかけてきました。

“終末期”プロトコルの機会的適用で「さっさと脱水・死ぬまで鎮静」(英)(2009/9/10)
「NHSは終末期パスの機会的適用で高齢患者を殺している」と英国の大物医師(2012/6/24)
英国の終末期パスLCPの機会的手今日問題 続報(2012/7/12)


つい先日も
22もの医学関連団体が連名でLCPは患者が無益な治療で苦しまないために
考案されたパスである、とするステートメントの情報を拾ったばかり。

これについては10月23日の補遺で拾って、以下のように書いています。

英国で丁寧な看取りのプロトコルであるはずのLCPが機械的な鎮静と脱水に繋がっていると指摘されている問題で、メディアにはLCPそのものへの誤解があふれているとして、本来のLCPについてのコンセンサス・ステートメントが9月に出されていた。:パスそのものが悪いわけじゃない。それが機械的に運用されていくことで現場スタッフが思考停止に陥ることの問題。そこには社会に「高齢者や重症障害者の命は丁寧な治療にも、救命にも値しない」という価値意識が共有され広がっていることが関係している。それが本当の問題。
http://ja.scribd.com/doc/110654494/Consensus-Statement-Liverpool-Care-Pathway-for-the-Dying-Patient


Telegraphと一緒にLCPを問題視してキャンペーンを張ってきたDialy Mailは社説で、

When well over 100,000 are dying on the LCP each year, the suspicion inevitably arises that the pathway is being used to hasten death and free up beds.

毎年LCPで10万人をはるかに超える人が死んでいるとなれば、患者の死を早めてベッドを開けるためにLCPが使われているのではないかとの疑惑が出てくるのは避けがたい。


また、上記6月24日のエントリーで取り上げた発言をしている
神経科医のPatric Pullicino医師は

It is self-evident that stopping fluids whilst giving narcotics and sedatives hastens death… The median time to death on the Liverpool Care Pathway is now 29 hours. Statistics show that even patients with terminal cancer and a poor prognosis may survive months or more if not put on the LCP.

麻薬と鎮静剤を投与すると同時に水分の供給を中止すると死が早まるのは自明であり……LCPで死に至る時間の中間値は今や29時間である。統計からは、ターミナルながんで予後がよくない患者ですら、LCPを適用されなければ何カ月も、場合によってはそれ以上も生きているというのに。


そこで、ついにNHSがこの問題で調査に乗り出し、
LCPを適用されて満足な処遇を受けられないで死んだとされる患者の家族に
聞き取り調査を行う、とのこと。

医療現場からは反発の声も。


UK govt agrees to investigate “death pathway”
BioEdge, October 27, 2012
2012.11.04 / Top↑
前のエントリーからの続きです。


『ろう者が見る夢』にも「インフォームド・コンセント」というタイトルで
人工内耳をめぐる親の選択に触れた章があって、

それによると、人工内耳装用者が増加していて、
あるろう学校の3歳児クラスでは、一人を除いて全員が人工内耳だという。

その子の両親はろう者で、人工内耳を知った上で不要だと判断している。
人工内耳を推奨している大学病院の耳鼻科でも頑固者として有名な親だそうで、
病院側も手術を受けさせようと長時間の説得を試みた。
「一応、保護者の意志は尊重すると前置きをしていながら、
どんなに断っても説得をやめなかったそうだ」(p.134)

そして、ついに根負けした医師は、人工内耳の代わりに新しい補聴器を紹介した。
スイスのフォナック社制のデジタル補聴器ナイーダは高性能で、
人工内耳並みに聴力が回復するという。

著者は次のように書いている。

 そのような高性能の補聴器があるのなら、なぜはじめから紹介してくれないのだろうか。…(略)…一度手術をしてしまったら取り外すことのできない人工内耳に踏み切るより、取り外しがきいて効果も高い補聴器の方がどれだけ安心かわからないと、その両親は言っていた。三歳児クラスの人工内耳児たちは、ナイーダのことは聞かされていないに違いない。デジタル補聴器を紹介しても病院に入るマージンはたかがしれている。人工内耳の手術をさせるほうがよっぽどおいしい。人工内耳の是非はともかく、最近の意耳鼻科医はインフォームド・コンセント(説明と同意)の義務違反ではないかと、その親御さんは語っていた。
(p.134-5)


ん―、アシュリー事件みたい……と思った。
他にも非侵襲的な問題解決の方法はあるのに、
それは最初からオミットしたところから話が始まって、子どもの身体に不可逆な侵襲を加えて、
科学とテクノによる極めて操作的なやり方で問題解決を図ろうとするところ、
それを医療の世界が主導していくところが――。

(ついでに、そこにグローバル強欲ひとでなしネオリベ金融(慈善)資本主義の
利権構造が透けて見えてきたりするところも――。)

しかも、興味深いことに、
この2つの事件は、侵襲的な問題解決の方法をめぐって、
一方は親が拒否して裁判所が最終的に親権を尊重したケース、
もう一方は親がやって、親権の及ぶ範囲が問題となったケース。

なるほど、ウ―レットが第4章で人工内耳の問題を
アシュリー療法と並んで取り上げているはずだわい……。

確かに、子どもの医療をめぐる親の決定権の範囲を考えるのにも、
医学モデルと社会モデルの対立を考えるのにも、
どんどん科学とテクノで操作的になって行く世の中や
その背後に繋がる利権の関係を考えるにも
たいへん意義深いケーススタディだ。

その他、この本から関連の事実関係を以下に整理してみると、

1880年のミラノ会議(ろうの出席者はたった一人だったとか)において
口話法が支持されたことから、各国のろう教育の現場から手話やろう教師が排斥され、
ろう教育の暗黒時代が130年も続くことになった。

その後、北欧でバイリンガル教育が始まり、
障害者権利条約は手話で教育を受け、手話で社会にアクセスする権利を掲げた。

2010年夏、カナダで世界ろう教育国際会議が開催され、
7月20日にバンクーバー宣言が出された。
ミラノ会議の決議を撤回し、様々な弊害について謝罪。
ろう教育プログラムは手話を含むすべての言語とあらゆるコミュニケーション方法を受け入れ、
それを各国に呼び掛けることを決議。

この時「会場のろう者は一斉に立ち上がり割れんばかりの拍手を送った」(p.137)という。


なるほど、このミラノ会議からの流れの先に
人工内耳の問題が接続しているわけですね。

たしかに、障害を修正すべき正常からの逸脱とみなす医学モデルと
障害のある人がそのままに生きていける社会を考えようとする社会モデルの対立が
ここにはくっきりとしている。


ついでに、「リー・ラーソンの息子たち」事件の関連情報を
私自身のメモとして、以下に。(順次、増えていくと思います)

まず、事件の概要をまとめて、とても感動的な記事がこちら ↓
http://www.raggededgemagazine.com/1102/1102ft3.html

事件に対する、ろうコミュニティの抗議サイト
http://www.equalaccesscommunication.com/2002GrandRapidsRally/index.htm

その他は、まだロクに読めていないので、リンクのみ。
http://www.ragged-edge-mag.com/extra/deaftrial1.html
http://www.bridges4kids.org/articles/2002/10-02/Globe10-5-02.html
http://www.bridges4kids.org/articles/2002/10-02/GRPress10-5-02.html

NIDCDの関連統計
http://www.nidcd.nih.gov/health/statistics/Pages/quick.aspx

ろう文化を描いて優れた映画 Sound & Fury (2000)
http://www.amazon.co.jp/gp/product/B00005RIY3?tag=hatena-bu-22
http://slashdot.jp/journal/200070/%E6%98%A0%E7%94%BB-Sound-and-Fury
http://www.handsandvoices.org/articles/misc/V8-4_soundfury.htm

障害者の権利条約の国連作業部会草案に対する世界ろう連盟(WFD)の見解(全日本聾唖連盟による仮訳)
2012.11.04 / Top↑
「ろう者が見る夢 続々 日本手話とろう文化」木村晴美 (生活書院 2012)


図書館で目についたので手に取ってめくってみたら
「あなたは夢の中で何語で話しているだろうか」で始まる文章が目について、

ろうの両親から生まれ育ったろう者の著者が
夢の中では手話で話していたり日本語を使っていたりする、
父親は寝手話をしている時がある……などなどを語る話に釣り込まれたので、
そのまま借りて帰ってきた。

面白かった~。

私は手話も知らないし、ろう文化についても何も知らないまま、
日本で使われている手話だから、それは日本語なんだとばかり無意識に思い込んでいた。

ところが、違うんですね。やっぱり言語ってそう単純じゃない。

さらに、一般に聴者が使っている手話はろう者が使っている手話とは異なっていて、
ろう者にはたいそう分かりづらいものなんだという。

だから、以下のようなことになる。

 聴者が手話を表出しても、頭の中が日本語であったら、ろう者には理解されない。しかし、頭の中が日本語の聴者には理解できる。そのため、聴者はろう者も分かっているはずだと思いこむ。……
(p.125)

へぇぇぇぇぇ。

聴者の通訳のどこがどのように分かりにくいのかが
懇切に解説されていて、なるほど、なるほど……と、ごっつう面白い。

あ、それから手話にも方言があるんだとか。ほぇぇぇ。

目からぶっといウロコが何枚も落ちた。
自分はいかにろう文化について知らないかということに、
まずは最初の気付きをくれる本だった。

実は前に
アシュリー事件を最も痛烈に批判した法学者/生命倫理学者
Ouelletteの本 “Bioethics and Disability”を読んだ時に、
第4章でAshley事件と並んで取り上げられていた「リー・ラーソンの息子たち」事件は
人工内耳をめぐる親の決定権の問題で、ろう文化が関わっていることから、
その方面にまったく無知な私には自信がなかったために、
関連エントリーの中でこの事件だけパスしてしまった。

(ウ―レットの本については
こちらに関連エントリーをリンクしてあります ⇒http://blogs.yahoo.co.jp/spitzibara/65111447.html)

この本を一冊読んだからといって、
ろう文化が理解できたわけではもちろんないのですが、すごく勉強になったので、
これを機に「リー・ラーソンの息子たち」事件についても簡単に整理を。
(ラーソンが離婚して息子たちは別姓であるため、こういう事件の名称に)

「リー・ラーソンの息子たち」事件の概要は以下。

米国ミシガン州で2002年に起きた訴訟。

離婚したシングル・マザーで、ろうの女性リー・ラーソンはろう文化に誇りを持ち、
ろうの息子2人との家庭での言語はアメリカ手話だったが、
アメリカ手話を使って教育を行うプログラムに空きがなかったために
息子たちは口話法を使うプログラムしかない学校へ入学することに。

手話で生まれ育った息子たちは周りの人とコミュニケーションが取れず、
学校はラーソンにろうの息子2人への人工内耳手術を受けさせるように勧めた。

ラーソンがいろいろ調べたところ、人工内耳にリスクがないわけではなく、
特に生まれつきのろう者には効果も疑わしかったので、拒否したところ、
ちょっとした事件でラーソンが親権を一時的に州に取り上げられた際に、
その間に任命された法定代理人が裁判所に息子たちの手術の命令を求める請願を起こした。

人工内耳手術は子どもたちの最善の利益かどうか、
このケースでの親による手術拒否は裁判所の介入を許す医療的な緊急事態であるかどうか、を論点に、
全米で大きな論争が巻き起こった。

アシュリー事件と同じく、障害者の保護と人権擁護システムMPASが介入。

裁判所は最終的に、手術は子どもたちの最善の利益としながらも、
緊急事態ではないので裁判所の介入で親の決定権を制限することはできないと判断した。


次のエントリーに続きます。
2012.11.04 / Top↑