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昨日の以下のエントリーで取り上げた論文について、
某MLで神戸の新城拓也医師からご解説をいただき、
いただいた情報をエントリー末尾に追記しました。

「ガンで死が差し迫った段階を“診断”するツールは未だ存在しない」として、そこで起こる現象の整理を試みた調査(2013/5/22)


新城先生は10年間ホスピスに勤務の後、
昨年8月に神戸に在宅ケアのしんじょうクリニックを開業された緩和ケア医。

ブログとツイッターは時々読ませていただいていたのですが、
この論文に関連して先生ご自身がリンクしてくださった
予後予測についてのお考えが書かれたものが以下の2本。

僕が、尊厳死法案に反対する理由(2012年8月29日)
http://drpolan.cocolog-nifty.com/blog/2012/08/post-b8eb.html

今どきの在宅医療14 在宅医療の患者さんは長生き?「経験の檻」(2013年4月16日)
http://drpolan.cocolog-nifty.com/blog/2013/04/14-ce20.html


私も昨日のエントリーの論文を読んだ時に
改めて「うへぇ」と思ったのは、

「死の直前7日間でも、そこで起こる様々な現象には
指標とするにはこんなにも科学的なエビデンスが示されておらず“診断”が難しいとしたら、
余命6カ月なんて、正確に予測できるわけがないのに……」だったのだけど、

新城医師は、上記8月のエントリーで、

昨日、尊厳死の法制化を認めない市民の会 に参加しました。かねてよりこの法案には不備が多いと感じていました。僕が法案に反対するのは、医師が患者が終末期と判断することに科学的根拠が乏しいという理由からです。


それに続いて、いつぞや「平穏死」推進の長尾和宏医師の
「いつが終末期かは患者が死んだ後に振り返ってからでなければ分からない」
という趣旨の発言と同様のことが書かれていて、

臨床医は自分が治療を行っている現在の時間においては
それが延命なのか過剰医療なのかは判断できない、と。

そして、

現時点ではまだ、医師による終末期の判定、すなわち予後の予測は占いの域を出ないというのが自分の臨床経験からの実感です。もしも、目の前の患者に対して、「終末期である」という診断を臨床医が下せるとしたら、命の線引きもうこの人は死んだと同然だ、生きている価値はないだろうという、一方的で個人的な価値観から判断しているに過ぎません。


ここで指摘されている感覚こそ、
末尾にリンクした長尾和宏医師が「植物状態ではない人」を「植物状態のような人」と称する時の
「どうせ」という感覚であり、

それは「平穏死」の対象者が長尾医師の著書でジワジワと広げられていっても、
この「どうせ」が無意識に共有されている限り、読者には気づかれないように、
とても危険なことなのでは……?

目の前の患者が終末期であるという、精度の高い、どこでも実施可能で、再現性のある診断技術が確立されないまま、この法案が適用されるのには、僕は反対です。


ここのところ、
昨日のエントリーで紹介した論文の考察でも、
最後に重要な課題として指摘されていた1つに、
「そんなツールは実現不可能なままになる可能性だってある」ということを考えさせられる。


また新城医師は、
今年4月16日のエントリーでは、

予後の予測はとても緩和ケアにとっては重要で、ケアの対応、今後起こりうることの想定も含めて、計画の目標の基礎になる。しかし、最近はこの予後の予測を繰 り返すことで違和感も感じている。それは予言者の様に患者さんの今後を占うことができるという、不遜のようなものが心に宿ることだと思う。

…(略)…実は、僕が在宅を始めて8ヶ月で発見した大きな見落としとは、言葉にすると小さな事に思えるけど、相手の力を信じることだ。

自分が今までの経験から見切った余命が全く当たらない。もうこれ以上は時間はないだろうと、苦痛なく穏やかに亡くなる様に治療を組み立てても、そこからなお 力をその身体に宿し、立ち上がり、笑顔で話しかけてくる患者さんを何人もみてしまった。

控えめに言うなら、今の僕には、患者さんの余命は分からない。医者には余命を的確に指摘することは出来ない、それが僕の経験からの真理である。


だから、在宅の患者さんは長生きで痛みもそれほど感じていないと主張し、
「経験の檻」に閉じこもる在宅医になり、そんな在宅礼讃で
在宅医療をイデオロギーにすることには加担したくない、との
新城医師の主張については、上記リンクから元エントリーへどうぞ。

そこに書かれていることは、昨日のエントリーで読んだ論文で
「理論と経験が相互に補完していることを考慮した理論構築が必要」とされていたことを、
一人の臨床家としての実践において誠実に模索していこうとする医師の努力の姿勢として
spitzibaraは読みました。


【関連エントリー】
「平穏死」提言への疑問 1(2013/2/11)
「平穏死」提言への疑問 2(2013/2/11)
「平穏死」提言への疑問 3(2013/2/11)
長尾和宏医師「平穏死」のダブル・スタンダード 1(2013/2/12)
長尾和宏医師「平穏死」のダブル・スタンダード 2(2013/2/12)

『シリーズ生命倫理学 第4巻 終末期医療』メモ 1(2013/1/17)
『シリーズ生命倫理学 第4巻 終末期医療』メモ 2(2013/1/17)
『シリーズ生命倫理学 第4巻 終末期医療』メモ 3(2013/1/18)
『シリーズ生命倫理学 第4巻 終末期医療』メモ 4(2013/1/28)
『シリーズ生命倫理学 第4巻 終末期医療』メモ 5(2013/1/29)
『シリーズ生命倫理学 第4巻 終末期医療』メモ 6:「新しい医療の文化」とは「重心医療の文化」だった!!(2013/2/5)
2013.05.23 / Top↑
16日の補遺のトップに拾った論文を
kar*_*n28さんがゲット・シェアしてくださったので、読んでみた。

(ただ使用されているDelphiテクニックなるものがさっぱりわからず
メソッドの個所に書かれた詳細はパスしたため、理解できたのは概要のみです)

論文タイトルは
International palliative care experts’ view on phenomena indicating the last hours and days of life
Supportive Care in Cancer
June 2013, Volume 21, Issue 6, pp1509-1517

著者はスイス、ドイツ、NZ、イタリア、アルゼンチン、
英国、スウェーデン、スロベニア、オランダの研究者13人。

アブストラクトその他はこちら ↓
http://link.springer.com/article/10.1007%2Fs00520-012-1677-3

まず、この調査の背景として書かれていることの中に
興味深い指摘がいくつかあるので拾っておくと、

・がん患者への無益な治療がQOLを下げている問題が広く注目されるにつれて
 死を予測するファクターに興味が集まってはいるものの、

……no valid tool has yet been developed to recognize the dying phase in a cancer disease trajectory.
がんの領域では、死のプロセスが始まった段階をそれと知るための有効なツールは今なお開発されていない。

・Palliative Prognostic Score(Pap)とPalliative Prognostic Indexは
終末期のがん患者の生存を正確に予測するための指標ではあるが、
死があと数日または数時間に差し迫った段階を知るためのツールではない。

・リヴァプール・ケア・パスウェイ(LCP)は
死が差し迫った患者へのLCPの適用基準の枠組みを示してはいるものの
その枠組みに厳密な科学的エビデンスがあるわけではない。

【関連エントリー】
“終末期”プロトコルの機会的適用で「さっさと脱水・死ぬまで鎮静」(英)(2009/9/10)
「NHSは終末期パスの機会的適用で高齢患者を殺している」と英国の大物医師(2012/6/24)
英国の終末期パスLCPの機会的適用問題 続報(2012/7/12)
LCPの機械的適用でNHSが調査に(2012/10/28)


・そこで、死が数日後、数時間後に差し迫った段階の患者に適切なケアを提供するためには、

…… tools to diagnose dying must be developed for clinical use.
臨床で死のプロセスが始まった段階を診断するためのツールが開発されなければならない。

として、
死が数日または数時間後に差し迫った段階を知るために
その段階で起きる現象について、専門家の間でのコンセンサスを元に整理することがこの調査の目的。

この調査では「死のプロセスが始まった段階(dying phase)」を「死の直前7日間」と定義。

調査では、

① 医療専門職、ボランティア、一般人252人へのアンケートで
194種の現象と気付きや観察を出してもらった。

② その中から専門家のコンセンサスが80%以上得られた58種の現象を抽出し、
9つのカテゴリーに分類した。

③ その58の現象を緩和ケアの専門家78人(医師、看護師と
心理・社会・スピリチュアル支援の専門家)が
患者が数時間/日以内に死亡することを臨床的に予測できるかという視点で
ランク付けし、50%以上が「非常に適している」とみなしたのは21の現象。

最終的に以下の7つのカテゴリーに整理した。

・呼吸状態(breathing)
・全身状態の悪化 (general deterioration)
・意識/認知状態 (consciousness/cognition)
・肌の状態 (skin)
・水分、食物その他の摂取状況 (intake of fluid, food, others)
・情緒の状態 (emotional state)
・その他 (non-observation/expressed opinions/others)

現象は各カテゴリーに3つずつ。
これらのカテゴリーに変化が見られることが
臨床家が死のプロセスが始まった段階を見極めるのに最も適した指標、と
調査からは結論されるが

アンケートの回答の中には
問いの文言の曖昧さや特定の現象を著わす文言への誤解から回答を拒否したものや
また含めるべき現象が漏れているとの指摘もあり、

緩和ケアの専門家のカンも決して無視できず、
理論と経験が相互に補完していることを考慮した理論構築が必要となるなど、

今後、臨床で使えるものとするためには、
これらの現象についてさらに研究し、明確にしていく必要がある。
この調査結果は、その端緒とすべきものである。

なお、この調査のいくつかの限界の他にも
以下の2点が重要な問題として指摘されている。

① 死のプロセスで起こることの段階や現象について共通の定義は存在しないが、
言い伝えられてきたことと実際に観察可能な現象があいまって
アプローチが今後さらに高度化されたとしても、
死が差し迫った段階を詳細に「診断」することは不可能なままに留まる可能性がある。

② 死のプロセスが正確に診断されるようになることが
実際に具体的なメリットをもたらすとのエビデンスは未だに示されていない。

一方、エビデンスが出てきているのは、
コミュニケーションを改善することの重要性である。

Clear and compassionate communication focused on the individual needs of patients and families can help to deliver high quality care at the end of life.
終末期の良質なケアを提供するためには、患者と家族個々のニーズを重視した明瞭で思いやりに満ちたコミュニケーションが必要である。


【23日追記】

某MLで神戸の緩和ケア医、新城拓也先生からご解説をいただきましたので、
エントリー段階ではよく分からないまま放置した点について、補足。

・この調査は、
EU 第7 のフレームワークプログラムによって融資された
OPCARE9と呼ばれる最近完了された3 年の国際的なプロジェクトの成果の一環。

・緩和医療については米国よりもヨーロッパで国際的な連携で研究が行われている。
・それ以上に最近成果を上げているのはオーストラリアの D. Currow教授のグループ。

Currowの研究についてはこちらに ↓
http://academic.research.microsoft.com/Author/18279212/david-christopher-currow

・Delphiテクニックとは、早く言えば多数決のこと。
 話し合いの中でその問題を取り上げることの妥当性(relevanceのことだと推測)を
0―9のスコアで付けることによって、平均点が例えば7以上ならOK,
それ以下なら話しあうか、それ以上話しあっても合意できないとして却下する、
といった方法。

・この研究では Cycle3まであることから、
つまりは、そうして3回ふるいにかけた、という意味。

・この研究で面白い点として新城医師が挙げておられるのは
「医療職の直感、家族の直感を項目として検討したことです。
本人の予感も助けになることもあります」
2013.05.23 / Top↑
女性の人権を尊重する政治を! 橋下発言に抗議する緊急院内集会 5月22日(水)15:00~17:00 参議院議員会館 講堂:協賛団体の数がすごい。
http://ajwrc.org/jp/modules/bulletin2/index.php?page=article&storyid=226

英国でFalconer議員が議会にPAS合法化法案を提出。医師会の大物医師らから連名で支持声明がTimes紙に。
http://www.lifenews.com/2013/05/20/lord-falconer-introduces-bill-to-legalize-assisted-suicide-in-uk/
http://www.onmedica.com/NewsArticle.aspx?id=bba39fe1-2285-4749-8cbf-e6595ddc20fb

【Falconer議員関連エントリー】
自殺法改正案提出 Falconer議員 Timesに(2009/6/3)
英国上院、自殺幇助に関する改正法案を否決(2009/7/8)
英国上院に自殺幇助に関する検討委員会(2010/11/30)
Falconer委員会「自殺幇助合法化せよ」提言へ(2012/1/2)
Falconer議員、5月に自殺幇助合法化法案提出へ(英)(2013/3/2)

去年9月にはこういうニュースもあったんだけど ↓
英国議員6割がPAS合法化に反対「不況で、弱者に圧力かかる」(2012/9/15)

VT州のPAS合法化を受け、Wesley Smithが自殺幇助・安楽死合法化は政治的操作だと糾弾するブログ記事。:私にもそういう印象はある。
http://www.firstthings.com/onthesquare/2013/05/euphemisms-as-political-manipulation

テキサスの無益な治療法の改正、またも潰える。
http://medicalfutility.blogspot.jp/2013/05/texas-medical-futility-no-change-again.html

英国の子ども177000人以上がヤング・ケアラー。中には5歳の子も。:日本も実態把握くらいは政府がやったらどうなのかと思う。
http://www.guardian.co.uk/society/2013/may/16/thousands-children-caregivers-family-data

病院は患者にとって決して安全なところではない、という調査をProPublicaが取りまとめている。Video見てエントリーにと思っていたのだけど、ちょっと身辺がバタついて棚上げに。
http://projects.propublica.org/graphics/slideshows/hazardous_hospitals

国連の第64回 World Health Assemblyでビル・ゲイツが講演、ポリオ撲滅を最優先に、と。講演後にワクチンのヴァイアルを手にしているゲイツ氏の写真、最初に見た瞬間、悪意あるパロディ写真なのかと思った。
http://www.washingtonpost.com/blogs/wonkblog/wp/2013/05/17/bill-gates-death-is-something-we-really-understand-extremely-well/

ビル・ゲイツ氏、世界で一番のお金持ちに返り咲き。:彼が世界で有数のお金持ちなのは決してマイクロソフトで儲けたからじゃない。彼はCascadeという投資会社を持っている投資家。しかも慈善(資本)家。第2位、第3位の方々とGiving Pledgeで資産をもちよっての、グローバル慈善資本主義。
http://www.washingtonpost.com/bill-gates-named-richest-man-in-the-world/2013/05/17/411456fa-bf24-11e2-b537-ab47f0325f7c_video.html

ランセットがまたゲイツ財団特集をやっている。もちろんゲイツ財団の名前はどこにも出てこないけど、以下他ずらり同財団の関心事ばかり。
http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736%2813%2960999-X/fulltext?elsca1=ETOC-LANCET&elsca2=email&elsca3=E24A35F

中でも気になるのはこれ。GAVIがHPVワクチンの値下げを実現させて、さらに途上国を中心に世界中に広げようと力を入れている。そうなれば、日本でも被害者がどれだけ出ようとこれが既定路線。厚労省の幹部が「反作用事例は針刺しのせい」と強弁するはず。いったい誰のためのワクチンか。
http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736%2813%2961058-2/fulltext?elsca1=ETOC-LANCET&elsca2=email&elsca3=E24A35F

<原子力協定>日本、インドが交渉再開 首脳会談で合意へ:インドかぁ……。TerraPowerは?
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130520-00000075-mai-pol

DSM-5論争。
http://www.washingtonpost.com/national/health-science/updates-to-psychiatrys-guidebook-change-criteria-for-adhd-autism/2013/05/16/dee4de0c-bd87-11e2-97d4-a479289a31f9_story.html

イスラエルの障害女性が代理母に子どもを産んでもらったところ、社会保障サービスが法的親権がないとして子どもを保護、養子サービスに登録。女性が親権を要求して提訴。
http://www.bioedge.org/index.php/bioethics/bioethics_article/10516#comments

日本。腎移植後に提供者死亡=34日目、60代男性―埼玉医大 「日本移植学会に匿名の情報提供があり、同学会からの照会に、詳細なデータと経緯を報告した」ということは、照会がなければ口を拭って知らん顔を決め込んでいたということ? 「手術と肺炎との因果関係は不明という。同センターは、術中の処置などに不適切な点はなく、「医療過誤ではない」と結論」というのだけど、ドナーの病気治療のための手術ではないのだから、ドナーを死なせたら、それだけで十分「医療過誤」なんでは?
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130518-00000078-jij-soci

性犯罪者が自己決定すれば去勢手術を受けてもらおう、とドイツとチェコの政府。:それは、でも「自己決定」という名の強制にしかならない。でも、そういう類の「自己決定」「自己選択」がどんどん蔓延していく昨今。貧しくて医療を受けられないから安楽死や自殺幇助を「自己選択」したって、貧しいから代理母しか生きていく選択肢がなくたって、それは「自己決定」なわけだし。
http://www.bioedge.org/index.php/bioethics/bioethics_article/10519#comments

日本語。米高校生男子の2割がADHDと診断、薬剤誤用・乱用の懸念も 報告
http://www.afpbb.com/article/life-culture/health/2936910/10530970?amp=&=

日本。「通級」児童生徒7万人超 発達障害の原因究明を
http://www.worldtimes.co.jp/wtop/education/data/dt130520.html

日本。産科補償 問題繰り返しの5機関に改善要求「問題とされたのは、胎児の心拍数の異常を見落としたか、陣痛促進剤の使い方が学会のガイドラインを逸脱していたかのいずれか」
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130517/k10014638021000.html

英語ニュース。タイと日本の政府が高齢者の介護サービス開発で提携。
http://www.pattayamail.com/news/thai-japanese-care-service-for-elderly-initiated-26110

日本語。<ドイツ>生きたユダヤ人「展示」 尊厳批判も「対話」狙い
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130520-00000015-mai-eurp

日本。二刀流に挑む女子たちをためらわせる「現実の壁」「職場の理解」…無意識の甘えに女子たちは自戒「真剣に続けたいなら、男性と同様、仕事に甘えがあってはならないとの意見」:それなら、男性も子どもを持ちたいなら、女性と同様、育児と家事に甘えがあってはならないとの意見。を出しておきたい。「甘えは禁物」。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130519-00000503-san-life

大阪市が小中「学校案内」発行…学テ成績も掲載
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20130520-OYT1T00233.htm

日本語。子どもの貧困 対策法「元年」にしよう
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2013051302000126.html

日弁連 生活保護の利用を妨げる「生活保護法の一部を改正する法律案」の廃案を求める緊急会長声明
http://www.nichibenren.or.jp/activity/document/statement/year/2013/130517.html

日本語。巨大竜巻で51人死亡=小学校直撃―邦人3家族と連絡取れず・米オクラホマ州
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130521-00000034-jij-n_ame

実は20日にも、米4州で26個の竜巻発生 1人死亡 10数人が負傷:地球環境だけでなく、人間の愚かさという点で人間の社会も、もう何もかもが崩壊に向かって、すべり坂を転がり落ちているんでは……という絶望的な気分がどんどん色濃くなっていく。
s
2013.05.23 / Top↑
14日に自殺幇助合法化法案が議会を通過したVermont州で
Peter Schumlin知事が20日、法案に署名。

即日、施行となった。
(実際には保健局の制度導入の準備に数週間かかる)

名称は the End of Life Choices law。
「終末の選択法」。

同州の医療コミッショナーは
年間10から20の処方箋が出され、
その中のわずかな患者が実際に致死薬を使用するのでは、と。

Vermont is 4th state to legalize assisted suicide
Seattle Pi (AP), May 20, 2013


Seattle Post-intelligencer紙の記事の元記事はAP通信。
APはこの問題に限らず、偏向している印象があるのだけど、
この記事でも、米国でPAS合法化された「第4の州」として、
モンタナ州をカウントしている。

MT州は最高裁の判決は出たものの、
それをもって「合法化された」と解釈する推進派と
それだけでは合法化されたとは言えないと解釈する慎重派が
それぞれの立場への法の明確化を求めて議会でせめぎ合っている。


【VT州のPAS関連エントリー】
「自殺幇助は文化を変える、医療費削減とも結びつく」とVT州でW.・Smith講演(2011/1/17)
VT州、自殺幇助合法化せず、公費による皆保険制度創設へ(2011/5/10)
Vermont州の自殺幇助合法化法案が上院を通過(2013/5/12)
VT州の“尊厳死法”成立へ(2013/5/14)
2013.05.23 / Top↑
緩和ケアの専門家が死の数日前から数時前に起こる現象を詳細に研究した論文。:尊厳死や平穏死が云々されて、まるで終末期医療そのものが包括的に「無意味な延命」であるかのような言論操作がされているけど、こういう研究によって終末期そのものを理解することって、実はまだまだ必要なんでは?
http://link.springer.com/article/10.1007%2Fs00520-012-1677-3

米VT州の自殺幇助合法化は「ルールなし」だとWesley Smith.
http://www.nationalreview.com/human-exceptionalism/347821/vermonts-coming-no-rules-assisted-suicide

CT州の障害者から「障害者が全てPAS合法化に反対なわけじゃない」と。:英国でも有名な障害学者のトム・シェイクスピアは賛成派。エントリーもありますが、気力がないのでリンクはパス。
http://www.theday.com/article/20130512/OP05/305129962/1044

Nicklinson訴訟を引き継いだPaul Lamb訴訟で、判事が個々の障害者や患者の苦境ではなく法の原則が判断基準、弁護士は世論調査を引き合いに出すが、世論はいつどのようにでも変わる、と。
http://www.telegraph.co.uk/news/uknews/law-and-order/10054106/Lord-Chief-Justice-wont-allow-personal-sympathy-to-sway-decision-on-assisted-suicide.html

英国でFalconer議員が提出する予定の自殺幇助合法化法案は、なんでも一定の要件を満たしているかどうかの判断をGPに託すものなのだとか。:それなら通らないだろうと、ちょっと安心。
http://www.publicservice.co.uk/news_story.asp?id=22946

英国で論争になっているリヴァプール・ケア・パスウェイはQOLを上げるんだという調査結果。:問題はLCPそのものじゃない。それを適用する側の「どうせ先のない高齢者」という意識。これもエントリーいくつもあるけど、気力がないのでリンクはパス。
http://www.medicalnewstoday.com/releases/260390.php

メディケアでの薬の処方が十分に規制監督されていないため、高齢者や障害者に過剰投与で危険が及んでいる、と、ProPublica。:読もうと思ってプリントアウトしたまま数日が経過……。気になる記事。
http://www.propublica.org/article/part-d-prescriber-checkup-mainbar

将来どういう病気にかかる可能性があるかというゲノム情報を医師は求めていない患者に伝えてはならない。その情報のコントロール権は患者にある。
http://www.medicalnewstoday.com/releases/260363.php

アンジェリーナ・ジョリーの両側乳房切除を巡り、予防的乳房切除のジレンマに関する記事。:一昨日NYTでジョリーの記事を読んだ時、日本でこの話題がどのように報道されていくのかが想像されて、途中で読み続ける気力がなくなってしまったのだけれど、日本のメディアはその時の予想通りの反応をしている。そこではあまり報道されないのだろう否定的な見方や懸念の声も紹介されているので、エントリーにしようと3分の2ほど書いたのだけれど、最後に近づくにつれ科学とテクノで簡単解決バンザイのアメリカ文化の匂いが濃厚になっていくのにメゲて、原稿はゴミ箱へ入れた。
http://www.nytimes.com/2013/05/15/health/angelina-jolies-disclosure-highlights-a-breast-cancer-dilemma.html?pagewanted=all&_r=0

アンジェリーナ・ジョリーの担当医が手術の詳細を明かしている。「女性が予防的治療を理解する一助に」と。
http://www.guardian.co.uk/society/2013/may/15/angelina-jolie-mastectomy-doctor-blog

定期的に低容量のアスピリンを飲むと乳がん予防になる、という研究結果も。:アスピリン、スタチン、ビタミンDは予防医学の万能薬。いくらでもマーケットを創出できるという意味でも“万能”薬。これもエントリーは多いけど、同じくパス。ttp://www.medicalnewstoday.com/articles/259480.php

脳卒中や心臓発作などのスクリーニングを行う会社と病院とが提携して、ほとんどの人には必要ない検査を売り歩いている、との非難。:上の両側乳房切除に関するジレンマの記事でも、ジョリーは非常にまれなケースで、大半の女性はそんな検査を受ける必要などない、と専門家が語っている。「病気予防で正常な人体組織を切除しなければならないなんて、改めて考えたらグロテスクなことですよ」とも。
http://www.washingtonpost.com/national/health-science/hospitals-promote-screenings-that-experts-say-most-people-should-not-receive/2013/05/13/aaecb272-9ae2-11e2-9bda-edd1a7fb557d_story.html

<子宮頸がんワクチン>副反応 未報告例も調査 「子宮頸がんワクチンの副反応は09年12月の販売開始から昨年末まで計約340万人(推計)が接種して1926人。このうち重い障害が残るなど重篤なものは861人に上る」。それでも「厚労省の幹部は「ワクチン成分による副反応の他に筋肉に注射するため神経が針で傷ついた可能性もある」:どうかしてないか?
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130516-00000007-mai-soci

新出生前診断、1か月で441人=9割が高齢妊婦、9人異常疑い/実は陰性のケースも
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130510-00000140-jij-soci
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130515-00001693-yom-sci

モンサントがGM作物の種子を買った農家に作物から取れた種子の利用を禁じていることは農夫側の権利の侵害だと農夫が訴えた訴訟で、米最高裁は全員一致でモンサント側の言い分を認めた。その理由とは、もし農夫側の作物から採取した種子を使う権利が認められたら「発明技術による最初の種子が最初に売られた後は、特許の価値が急落する」から。
http://www.nytimes.com/2013/05/14/opinion/soybeans-and-the-spirit-of-invention.html

ロックフェラー財団の慈善の歴史、100年に。:慈善資本主義を云々すると、陰謀説だと言われるけれどね。何かというとすぐに「陰謀説だ」と全否定するのも思考停止。
http://www.washingtonpost.com/business/rockefeller-foundation-marks-100-years-of-achievement-and-controversy-as-global-do-gooder/2013/05/12/eaeaf3dc-bb1e-11e2-b537-ab47f0325f7c_story.html

人クローンES細胞作製…日本人研究者ら世界初
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20130515-OYT1T01708.htm

日本。クローズアップ2013:「卵子提供」へ賛否 「見切り発車」に不安
http://mainichi.jp/opinion/news/20130514ddm003040123000c.html

ストーカー、治療でも予防へ…警察庁が方針転換:日本にも、モラル・エンハンスメントに向かう芽は潜んでいる。
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20130503-OYT1T01065.htm

日本。18歳未満で4人目の脳死判定 広島:もうあまり話題にもならなくなった……。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130511/k10014504541000.html

英国オックスフォードで何年にも渡って11歳から15歳の少女らを監禁し、薬とアルコール漬けにして売春させていた組織犯罪が発覚。多くは養育や愛情に欠ける家庭の、行方がしれずとも誰にも心配されないような境遇の少女たちが狙われていたという。7人を逮捕。何度か警察や児童局への通報があったにもかかわらず、今まで発覚することがなかった。
http://www.guardian.co.uk/uk/2013/may/14/oxford-gang-groomed-victims-hell
http://www.guardian.co.uk/society/2013/may/14/oxford-abuse-ring-social-services
http://www.guardian.co.uk/uk/2013/may/14/oxford-child-sex-ring-police-investigation

上の事件を受け、レイプや性的虐待について正面から語ろうとしない男性や社会に向け、ええ加減にせえよ、と怒る女性ジャーナリストたちの声。
http://www.guardian.co.uk/commentisfree/2013/may/15/we-have-to-listen-to-abused-children
http://www.guardian.co.uk/commentisfree/2013/may/15/angry-men-wont-discuss-rape-abuse

で、それと同じ憤りを覚える、日本の政治家の発言。東京新聞【コラム】筆洗「 性の営みという最も私的な領域まで管理、利用されるのが戦争だ。「慰安婦制度は必要だった」と明快に言い切る政治家には、兵士を派遣する立場の視点しかない。自らが一兵士として列に並び、妻や娘が慰安婦になる姿など想像できないのだろう」引用されている詩が心に痛い。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2013051602000135.html

生活保護法がとんでもないことになりつつある。
http://seikatuhogotaisaku.blog.fc2.com/blog-entry-123.html

日本。行方不明の身分を売った「被災者ゴースト」たちのいま
http://www.excite.co.jp/News/column_g/20130512/Spa_20130512_00421152.html

英国労働党員が、貧困の原因は個々人にあり、社会や政治政策にあるわけではない、という見方を強めている。
http://www.guardian.co.uk/politics/2013/may/14/labour-voters-poor-
2013.05.23 / Top↑
80代前半のスイスの女性Alda Grossさんが、
医師による自殺幇助を希望したものの、何の病気もないために
致死薬を処方してくれる医師を見つけることができず、
このまま老いて弱っていくよりも死ぬことを選ぶ権利があると訴えていたケースで、

欧州人権裁判所は、
スイスの自殺幇助に関する法律は曖昧であり、
どのような場合に致死薬の処方が認められるのかについて明確化が必要、と判断。

EU court finds Swiss assisted suicide laws vague
AP, May 14, 2013



【関連エントリー】
相強制障害者の自殺希望に欧州人権裁判所「自殺する権利より、生きる権利」(2011/1/28)

欧州人権裁判所に「死の自己決定権」提訴(独)(2010/11/23)
欧州人権裁判所「ドイツ政府が自殺幇助希望を検討しなかったことは欧州人権条約違反(2012/7/30)
2013.05.14 / Top↑
オランダ政府が、入所型介護支援を最重度者に限定し、
約3万人のリストラを含め介護予算を40%カットして
介護提供責任を地方自治体に移し、
10億ユーロの支出削減を予定していることを受け、

オランダの地方自治体連合から、
それなら介護を必要とする人はまず家族と友人に助けを求めることを
義務付ける権限を地方自治体に与えよ、

さもなければ政府のナーシング・ホーム改革は不可能、と
副保健大臣に申し入れ。

Families must be forced to help elderly relatives, say councils
Dutch News.nl, May 14, 2013


頼るべき家族も友人もいなかったり、
家族や友人に介護を担うだけの余裕がなければ、

……そこは、ほら、オランダのことですゆえ……?
2013.05.14 / Top↑
先ごろ上院が尊厳死法案を可決したVermont州で、
下院も賛成75 vs 反対65で可決し、

Schumlin知事は署名を明言しているため、成立することに。
(もともとこの人はPAS合法化を選挙公約にして当選した方で)

PASの合法化では米国で3番目の州となるものの、

これまでのOR、WAが住民投票で決まったのに対して、
こちらは議会で決まった最初の州ということに。

C&Cはこれを受けて、
マサチューセッツ、ニュージャージー他でも合法化するよう呼び掛け。

VT州は米国でも施策の先進性で知られ、
2009年に同性婚を合法化、
2004年にマリファナの医療利用を合法化。

Vermont legislators approve assisted suicide bill
AFP, May 13, 2013


OR州と同じタイプの法案でありながら
OR州の尊厳死法ほどの規制が盛り込まれていないという情報があったのですが、
この記事からはその辺りは分からないので、
そこのところは、とりあえず、ペンディング。

これで、ドミノ現象が起こらなければいいのですが。


なお、CT州では4月に委員会で否決されているので ↓
CT州の自殺幇助合法化法案、委員会で潰える(2013/4/6)

以下のエントリーによると、
他に現在、法案が審議されているのは、
ニュージャージー、カンザス、ハワイ、マサチューセッツ。

世界中で相次ぐ、PAS合法化に向けた動き(2013/2/10)


【VT州のPAS関連エントリー】
「自殺幇助は文化を変える、医療費削減とも結びつく」とVT州でW.・Smith講演(2011/1/17)
VT州、自殺幇助合法化せず、公費による皆保険制度創設へ(2011/5/10)
Vermont州の自殺幇助合法化法案が上院を通過(2013/5/12)
2013.05.14 / Top↑
英国のGP学会(RCGP)から、
自分自身のニーズを後回しにし、自分の健康のことを忘れがちなケアラーに
医療資源を回すべき、との声が上がっている。

記事のタイトルと冒頭の1文だけを見ると、
まるで介護者のメンタル・ヘルスの定期チェックだけが言われているみたいで、
なんだ、またも薬への誘導か……? とちょっと警戒心が動くのだけれど、

記事をちゃんと読んでみると
GP学会が言っているのはそういうことでは全然なくて、

ケアラーがストレスから心身の健康を損ないやすく、
介護を続けていれば早晩、自身も病気になる可能性が高いにもかかわらず、
自分がケアしている相手のことで精いっぱいになってしまって、
なかなか健康診断すら受けられずにいる現状と、

それなのにNHSやGPの医療現場では
財政のひっ迫を始め多数の問題が山積していて、
ケアラーの健康管理に目が向けられていないことを
本当に案じての提言。

医療資源は本当に必要とされているところに振り向けられるべきであり、
その「本当に資源を必要としている」中にはケアラーが入っているぞ、と。

「ケアラーが倒れたら、GPは患者を2人失うことになるんですよ。
介護を受けている人も失うし、ケアラーも失うわけだから、
財政の面から言っても、ケアラーには健康でいてもらわないと」と
BBCの番組で、RCGP会長。

財源について問われると、

健康な人をターゲットに、例えば心臓病のような
「起こす確率が低い病気」への検診を実施するなどの

「効果がないことをやるのは、いいかげんにやめて、
時間と資源を最も医療を必要としている人に振り向けなければ。
そして、最も必要としているのはケアラー達です」

GPs say carers neglect their own health and are at greater risk of depression
The Independent, May 11, 2013


高齢者への予防医学はむしろ有害、という指摘は
09年の以下のエントリーその他、いろいろ拾っているし ↓
「現代医学は健康な高齢者を患者にしている」(2009/3/8)

各種健診については
放射線被ばくリスクや誤診リスクの方が
実は検診の利益よりも大きい、という指摘だって、
ここ数年、あちこちから出てきている。
(補遺にいくつも拾っているのですが、
探すのが面倒なのでパス)

要するに、GP学会の会長さんが本当に言いたいのは、
ビッグファーマや医療機器会社に利益がもたらされるようなところばっかりに
限られた資源を無節操に振り向けるのではなく、
ちゃんと本当に患者への利益になるところに使え、ということであり、

経済活性化の問題が保健医療の問題に化けるようなところに
資源を無節操に振り向けるのではなく……ということなんじゃないかしら。
2013.05.14 / Top↑
標題の件について多くの記事が出ているものの、
ちゃんと読めていないのですが、

なんでもオレゴン州の尊厳死法と類似の法案でありながら、
オレゴンの尊厳死法の規制が全て盛り込まれておらず、
緩やかな内容になっているとか。

http://guardianlv.com/2013/05/assisted-suicide-may-soon-be-legal-in-vermont/
http://www.burlingtonfreepress.com/article/20130508/NEWS03/305080025/Senate-OKs-altered-end-life-bill


The Vermont Alliance for Ethical Healthcareから
10日付で反対声明が出ています。

この法案が通ったら、
セーフガードが不十分で、
医師による自殺幇助が法の枠組みの範囲で行われたかどうか
見極めることは不可能、と。

Statement from Vermont Alliance for Ethical Healthcare on “Unrestricted” Assisted Suicide Bill Being Considered by the Vermont Legislature
Dr. Mahoney: It is Oregon-style assisted suicide 2.0


The Vermont Alliance for Ethical Heathcareのサイトはこちら ⇒ http://www.vaeh.org/

VT州における終末期の倫理的な医療のあり方を推進し、
PASと安楽死の合法化に反対する趣旨の団体。

オレゴン州の尊厳死法関連のデータや情報を
取りまとめてアップしてあるようです。


               -----

ちなみに、英国関連でも、
3月に以下の情報を拾いましたが、

いよいよ提出されるようです。

Falconer議員、5月に自殺幇助合法化法案提出へ(英)(2013/3/2)
2013.05.14 / Top↑
これもまた、09年10月に書いたものなのですが、
ここしばらく集中的に考えていることに関連するので、発掘してきました。

訴える言葉を持たない人の痛みに気づく

 もう何年も前のことだけど、重症重複障害のために言葉を持たない娘が腸ねん転の手術を受けたことがある。術後、本人は必死に目で訴え、声を出して助けを 求めていたし、親も痛み止めの座薬を繰り返し強く求め続けたにもかかわらず、外科医は娘の痛みに対応してくれなかった。回腹手術直後の痛みを、娘は痛み止 めもなしに放置された。ただ口で「痛い」と言えないというだけで──。

 以来、私は、言葉で訴えることのできにくい患者の痛みに対して、医療はあまりにも鈍いのではないか、という強い疑念を抱えている。

アルベルタ大学作業療法学科が認知症の人の痛み行動ワークショップ

 Medical News Todayの記事「認知症の人の痛みはしばしば見過ごされている」(9月3日)によると、認知症の人で見過ごされがちなのは、関節炎、糖尿病神経障害、骨折、筋肉の拘縮、打撲、腹痛、口腔潰瘍の痛みだそうだ。

 「アルツハイマー病または認知症の人に痛みがある時に、あなたは気づけますか?」 こんな問いを投げかけて、認知症と痛みに関する情報を提供し、認知症の人の痛みに気づくためのツールを紹介するオンライン・ワークショップが、その記事で 紹介されている。カナダ、アルベルタ大学作業療法学科のキャリー・ブラウン准教授が主催するプログラム、Observing & Talking About Painである。

 オンラインでブラウン准教授の講義を聴くことができる他、痛み行動について、認知症の人を介護する家族向けに半日コースのワークショップを開催する場合 のツールキットもダウンロードできる。プレゼン内容や開催までの準備手順を詳しく解説した文書、当日の配布資料、パワーポイントのシートまで、懇切丁寧な 資料となっている。

 プログラムでは、池の水面に散り敷いた落ち葉の写真が、あちこちにシンボルとして使われている。「水面下で起きていることが落ち葉に覆い隠されているように、認知症の人々が経験している痛みの深さを知ることも難しい」と、ブラウン准教授は言う。

 例えば、認知症の人が熱いコーヒーで口の中にやけどをしたとしよう。言葉で伝えられなければ家族には分からないし、本人が痛みの原因を忘れてしまうこと もある。ものを食べようとしない理由が理解されないため、周囲は食べさせようとし、本人はそれに抵抗する。拒絶が攻撃的な行動や閉じこもりに至ると、それ は脈絡のない問題行動とみなされてしまう。痛みが見過ごされることの影響は決して小さくないのだ。

 プレゼンの内容は5つの章に分かれており、①「痛みはない」との神話について。なぜ認知症の人の痛みは理解されないのか? ②認知症の人に痛みがある理由、③痛みを見つけるヒント、④痛みを見つけるためのツールPAINAD、⑤痛みへの対応。

 ③では認知症の人が一般的に見せる痛み行動について、顔の表情、言葉や音声、身体の動き、行動や感情の変化などを詳細に解説。認知症の人を定期的に観察 し、項目ごとに0点から2点でチェックできる痛み行動のアセスメント・シートがPAINADである。米国老年医学会やオーストラリア痛み学会が作った「高 齢者入所施設での痛みのマネジメント戦略」(右に仮訳を掲載)を元に、アルベルタ大学作業療法学会が提唱しているもの。⑤では家族介護者が日ごろ配慮した い注意点をアドバイスする。

「医療の無関心が知的障害者を死に至らせた」とオンブズマンの報告書(英国)

 英国では、2007年に知的障害者のアドボケイト団体Mencapから、知的障害者に対する無理解、無関心から適切な医療が行われないために、救えるはずの命が奪われていると訴える声が上った。

 医療オンブズマンの調査が行われ、今年3月に刊行された調査報告書では、医療サイドの偏見から、障害がなければ当たり前に行われるはずの痛みへの基本的 ケアが行われず、不幸にも死に至ったケースの存在が確認された。オンブズマンは関係者らに患者家族へ賠償金の支払いを命ずると同時に、NHSと社会ケア組 織、ケアの質コミッション、平等と人権コミッション、保健省のそれぞれに対して、システムの見直しや改善計画の策定を命じた。

 言葉で訴えることができない人たちが経験している痛みの深さを知ることは難しい──。日本でも、まず、その難しさを知り、「痛みはない」との神話を疑ってみることから始めて欲しい。

ワークショップのサイトはこちら
http://www.painanddementia.ualberta.ca/
連載「世界の介護と医療の情報を読む」
「介護保険情報」2009年10月号


【関連エントリー】
「認知症の人の痛み気づく」ワークショップ(2009/9/9)
高齢者入所施設における痛みマネジメント戦略(2009/9/9)
「認知症患者の緩和ケア向上させ、痛みと不快に対応を」と老年医学専門医(2009/10/19)


「医療における障害への偏見が死につながった」オンブズマンが改善を勧告(2009/3/31)
オンブズマン報告書を読んでみた:知的障害者に対する医療ネグレクト(2009/3/31)
Markのケース:知的障害者への偏見による医療過失
Martinのケース:知的障害者への偏見による医療過失
「NHSは助かるはずの知的障害者を組織的差別で死なせている」とMencap(2012/1/3)
助かったはずの知的障害児者が医療差別で年間1238人も死んでいる(英)(2013/3/26)
2013.05.14 / Top↑
へースティング・センターのガイドラインについては、
どこかで言及されているのを読んだ記憶があるかなぁ……という程度だし、
Ashley事件からこちらのあれこれから、へースティング・センター自体に対しても、
思うことはいろいろあるのだけれど、

Thaddeus Popeがブログで紹介してくれている
改訂ガイドラインの目次を眺めてみただけでも、

一口に生命維持、終末期医療といっても
議論すべきことはこんなにも多岐に渡るんだなぁ……ということを、改めて認識させられる思い。

全部コピペしようと思ったら文字数オーバーになったので
興味ある方には以下にリンクしたPopeのブログへ行ってもらうことにして、

障害者とのコミュニケーション関連の個所だけ紹介すると、

パート3、セクション2
「障害のある患者とのコミュニケーションと協働」では

A. 生命維持治療と固まった障害または進行性の障害への配慮
B. 患者の障害が発話に関わっている場合のコミュニケーション
C. 患者の障害が認知に関わっている場合のコミュニケーション
D. 障害を負って間もない患者との生命維持治療に関するコミュニケーションと協働

NEW Hastings Center Guidelines for Decisions on Life-Sustaining Treatment and Care Near the End of Life
Medical Futility Blog, May 7, 2013


もちろん、内容をちゃんと読んでみれば、
目を剥くようなことが書かれていないとも限らないのだけれど、

ざっと目を通して、やっぱり頭に浮かぶのは、
メディアに流れている米国の自殺幇助議論や無益な治療論との距離感――。

それから、翻って、
日本の医師による、尊厳死・平穏死議論のあまりの粗雑さ――。
2013.05.08 / Top↑
以下の昨日のエントリーに、
今朝Moritaさんからコメントをいただき、
そのコメントに誘発されてお返事を書いていたら、
頭のグルグルが止まらなくなったので、

【論文】研修医は<説得の儀式>や<希望つぶし>で誘導する(2013/5/6)

いま一つ、きちんと整理できていないのが申し訳ないのですが、
今の段階で考えたことのメモとして。

-------------------

おはようございます。いろいろありがとうございます。
いただいた引用から既に頭がグルグルし始めているのですが、
私はなんでもまず卑近な自分の体験を連想することから始まるので、
子どもの障害を知らされた直後の親の混乱した心理状態を思い浮かべました。

生まれた直後に「将来、障害が出ますよ」と言われても、
いったいどういう種類の、どの程度の障害になるかということは誰にもわからない。
だから、その先の「この子の人生はどうなるんだろう」とか
「私はちゃんと育てられるんだろうか」という問いにも、
いくら考えても、ちゃんと考えてみるための、とっかかりすら、どこにもない。

何もかもが未知で不透明で、ただ「たいへんなことになった」と。
確かなことなど誰にもわからない中で将来への不安と怯えばかりが膨らんでいく――。
それはただただ恐ろしい、暗い穴の中に一人でどんどん沈み込んでいくような気分だった。

だから、多くの親は
「この子は治る」と言ってくれる人を求めてドクター・ショッピングをしたり、
「奇跡の療法」にのめり込んだりする。その心理って、ある意味、
確かなものを求めてオウムにすがった信者と似ているかもしれない。

でも本当の意味で生きていくための希望って、
確かなもの、すがりつけるものを探しているうちは見つからなかった……と、
あの頃のいろんな親たちの姿を思い返して、思う。

確かなものなどどこにもない、先がどうなるかなんて誰にもわからない。
それを事実として受け入れられた時に、初めて、
その先が全く見通せない不安に耐えながら、
目の前の「今日ここにある現実」と向かい合い、
その現実を生きていくことができ始めた。

そして希望は、
そんなふうに毎日を自分の身体で生きてみることの中にしか
見いだせなかった、と思う。

「今ここにいる、この子」という目の前の現実と向かい合うことによって、
そこには障害があろうとなかろうと愛おしい我が子がいて、
その子のためにしてやれることが自分にあり、親子それぞれの笑顔や泣き顔があり、
日々の雑事にジタバタしながら共に暮らす生活の時間がある。

そんな日常を身体で生きることを通して、
幸不幸は障害の有無だけで短絡的に決められるものじゃないということを、
私たちは「身体で知って」いったのだと思う。そして、
「この子の障害は治らないのかもしれない」「寝たきりになるのだろうな」というふうに、
受け入れがたい現実が、不思議なことに、少しずつ受け入れられていった。
受け入れながら、共に生きていこう、と思えるようになっていった。

もちろん、そう思えるようになったからといって、
もう迷いがないとか不安がない、辛いことなどなくなった、というわけじゃない。
いつも悩ましいことを抱え、何度も深く傷つきながら、
それでも心の奥底に悲しみや傷を抱えたままでも、
日々を楽しく幸せに生きていくことはできる、と
私たちは少しずつ知っていった。

日々を幸せに生きていながら、ある時ほんのわずかなことを機に、
人の心は一瞬にして暗く閉ざされてしまうことがあるんだ、ということも知った。

子どもの障害を受容できたと思っては、
また何かが移り変わるたび、何かが起こるたびに、
新たな受容を迫られては苦しみ、ぐるぐると同じところを巡りながら、
少しずつ障害のある子どもの親として成長していった。

そうして、人が生きている日常も人の気持ちも、
単純な幸・不幸で割り切れるような単色ではなく、常にいろんな色が混じり合っていて、
色だけじゃなく微妙なグラデーションとシェードの間で常に移ろっているものなんだ、
ということを知った。

昨日の補遺で拾った中に、
英国の障害者運動の活動家が、自殺幇助合法化推進ロビー団体のトップに向けて書いた
公開書簡があって、その中で「あなたがやっていることは
未知なるものへの恐怖をかきたてるキャンペーンだ」
という意味の一節がとても印象的だった。

「未知なもの」「見通せないもの」「自分でコントロールできないもの」は怖い。
「分からない」まま生きるということは、不安定な足場の上に立っているのと同じで、
その不安定な感じは、誰にとっても、たまらなく恐ろしい。だから人は
その不安定さに耐えられなくて、確かなものを求めようとする。
不安定なものを排除してしまおうとする。

「治る」のでなければ、いっそ「終わりに」してもらえれば、
不安定なところに立ち続けている恐ろしさも終わる。
崖っぷちに立ち続ける恐ろしさに、自ら飛んでしまう人のように――。

その気持ちは、私も自分の中に抱えている
「どうせ」であり「いっそ」という自棄的な気分でもある。

でも、本当は一番怖いのは、その不安定さに魅入られて、
そこから目を離せなくなること、そこに立ちすくんで動けなくなってしまうことじゃないんだろうか。

障害の問題に限らず、人間が生きていることにまつわる問題は
「Aか否か」や「AかBか」とはっきり答えが出せるところにあるのではなく、
「AでもありBでもありCでもあるけれど、AのみでもBのみでもCのみでもないなかで、
どうするか」というところにあって、その問いの答えは、
曖昧で不安定で分からないことだらけであることの恐怖に耐えながら、
目の前の個々の現実と惑いつつ、取り乱しつつ、向かい合い続け、
その現実の一回性を自分の身体で生きることからしか
見つからないのではないか、と思う。

たぶん、希望も、強引に割り切ろうとすることからは見つけられなくて、
そんなふうに答えが簡単に見つからなくて、見苦しくグルグル・ジタバタしながら、
矛盾だらけの割り切れなさを生きることの中にしか
見つけられないのだろう、とも思う。

説明はできにくいのだけれど、
「割り切れなさ」というものが、実は「かけがえのなさ」というものと
とても密接につながり合っているんじゃないか、という気がする。

科学とテクノロジーが
何もかもを「分かるもの」「コントロール可能なもの」にしてくれそうな幻想に
多くの人が操られ始めている今の世の中だからこそ、逆に
未知なもの、不安定なもの、割り切れないものへの恐怖心が
より一層高まっていくのかもしれない。

「身体も命もいかようにも操作・コントロール可能なもの」という
“コントロール幻想”がはびこっていく今の世の中の、
最も大きな不幸の一つが、その幻想の反作用としての、
「分からないこと」「自分でコントロールできないもの」への許容度の低下と、
未知なものへの恐怖心の増悪なのかもしれない。

それが「どうせ治らないなら、いっそ」というような、
一方の極端から一気にもう一方の極端に簡単に振れてしまうような
短絡的なものの考え方を広げているんじゃないだろうか。

でも、たぶん人が生きるということは、
その両極端の間のどこかを見苦しく右往左往することでしかないんじゃないだろうか。
希望も生きることの豊かさも、その右往左往の中にしか見いだせないんじゃないんだろうか。

“コントロール幻想”の世界の救いのなさは
何もかもが整合して割り切れすぎていて、だからそこには
かけがえのないものがないこと――。

そこには人知を超えるものが存在しない。
人知を超えるものへの畏れがない――。

かけがえのないものがない、人知を超えるものがない、そこは
「祈りをなくした世界」なんじゃないだろうか。

そんな気がする。

だから、
人の世が向かう先にあまりに希望が見出せなくて、
「どうせ」「いっそ」と、今にも崖から飛んでしまいたい気分に駆られそうになっては、
なんとか踏みとどまろうと自分に言い聞かせつつ、

信仰というものを持たない私なりの精いっぱいの祈りを込めて、
こんなエントリーを書いてみる。
2013.05.08 / Top↑
日本。「胃ろう=悪」というイメージの果てに起きていること
http://apital.asahi.com/article/kasama/2013042600011.html

日本。地域包括ケアのコスト 猪飼周平の細々と間違いを直すブログ
http://ikai-hosoboso.blogspot.jp/

自殺幇助合法化を訴えて最高裁で敗訴したアイルランドのMarie Flemingさんが、「政府は私に死ぬなと言う一方で、社会福祉の予算をカットしては、そのたびに私のQOLを奪って行くではないか」と。:だから「自殺させろ」という理屈はどうかとは思うけど、この発言は、ある意味、コトの本質を見事に突いている一面がある、という気もする。だから、本当は「生きさせろ」と言いたい人達が、生きられない、生きづらい世の中に絶望して、「死なせろ」と言っているんじゃないか、という気が私はしている。
http://insideireland.ie/2013/05/05/terminally-ill-woman-says-while-government-does-not-want-her-to-die-its-cuts-chips-away-at-her-quality-of-life-98805/

一方で、Marieさんは「自分はどっちにしたって絶対に自殺するんだ」と宣言。
http://www.independent.ie/irish-news/terminallyill-marie-has-already-decided-on-way-to-end-her-life-29241457.html

英国でまた著名人が「80歳になった時にアルツハイマーの兆候があったら、自殺する」と公言して、メディアが次々に取り上げる騒ぎに。73歳の元テレビキャスター? Melvyn Bragg氏。母親がアルツハイマーで亡くなったのを見て、そう決めたんだとか。
http://www.express.co.uk/news/showbiz/397365/Melvyn-Bragg-vows-to-commit-suicide-rather-than-be-destroyed-by-dementia

米国で過去10年間に中年層の自殺者が急増。ブーマー世代の自殺増が危ぶまれている。:こういう記事が自殺増を憂う一方で、上記のように「自殺する」と公言する人の発言が美化され、支持されてメディアによって広められていくことの不思議。
http://www.nytimes.com/2013/05/03/health/suicide-rate-rises-sharply-in-us.html?_r=0

英国の障害者運動の活動家 Nikki Kenwardさんが、Dignity in Dyingの会長、Sarah Woottonさんに向けて、公開書簡を送り、正面から論争を挑んでいる。トーンがbitterながら、この一節、特に「未知なものへの恐れ」は突いている、と思う。You’re hooking in to people’s worst fears and using them for a campaign that will generate only more hatred and visceral fear of the unknown.
http://www.indcatholicnews.com/news.php?viewStory=22451

日本語。オンデマンド殺人 中国の「死刑囚」臓器奪取の実態(一)~(三)
http://www.epochtimes.jp/jp/2013/03/html/d63728.html
http://www.epochtimes.jp/jp/2013/03/html/d47347.html
http://www.epochtimes.jp/jp/2013/04/html/d80930.html

【関連エントリー】
A・Caplanが、死刑囚の臓器に依存する中国の移植医療ボイコットを呼びかけ(前)(2011/10/12)
A・Caplanが、死刑囚の臓器に依存する中国の移植医療ボイコットを呼びかけ(後)(2011/10/12)
「囚人を臓器ドナーに」は実施面からも倫理面からもダメ、とCaplan論文(2011/10/14)
政治犯から生きたまま臓器を摘出する「新疆プロトコル」(2011/12/13)


コソボの大規模な組織的臓器売買で5人に有罪。
http://www.bioedge.org/index.php/bioethics/bioethics_article/10497#comments

ペンシルベニア大学の犯罪学の教授、Adrian Raineが、4年間の監獄での心理職としての経験をもとに、the Anatomy of Violenceという本を出版。「悪い脳が悪い行動に帰結する」として、脳科学による犯罪予防、「犯罪神経学」の必要を説く。
http://edition.cnn.com/2013/05/03/health/biology-crime-violence/index.html

【関連エントリー】
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脳刺激法のエンハンスメント利用を巡ってSavulescu(2012/2/2)
「将来の凶悪犯は幼児期から分かる」と刑法改革を提唱するドイツの脳神経科医(2013/2/10)
「道徳エンハンスメント」論文一覧(2013/4/25)


インドの生殖補助センターで性別により中絶が行われていることが明らかに。
http://articles.timesofindia.indiatimes.com/2013-05-01/hyderabad/38956766_1_ivf-centre-test-tube-baby-centre-female-foetus

2011年にノバルティスの元社員Oswald Bilottaが同社を訴えた訴訟で、同社が架空のイベントを設定しては医師らに違法なキックバックを払っていた実態が明らかに。Bilotttaは“Novartis corrupted the prescription drug dispensing process with multi-million dollar ‘incentive programs’ that targeted doctors who, in exchange for illegal kickbacks, steered patients toward its drugs” ProPublicaのDollars for Docsシリーズ。
http://www.propublica.org/article/pay-to-prescribe-two-dozen-doctors-named-in-novartis-kickback-case

ノバルティスと言えば、2日の補遺でも詳細記事を拾ったけれど、日本でもドル箱降圧剤の論文撤回事件が問題となっているところ。なので、もう一度その記事を拾っておく。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/35629

BBCに「ワクチン忌避は根拠のない不安によるもの」と「グローバル・ヘルスの主要な専門家」による論考が掲載されていると思ったら、なんだ、GAVIのCEO、Seth Berkleyが書いたものだった。世界中のワクチン推進の大元締めがこれを言えば、余計に信憑性がなくはないか? 逆に言えば、GAVIがこんな記事を書く必要があるほど、世界中にワクチン忌避が広がっているということでもありそう。
http://www.bbc.co.uk/news/health-22384788

日本。政府、10代から「女性手帳」導入 骨太の方針で調整 何歳で妊娠? 人生設計考えて 「子宮頸がん予防ワクチンを接種する10代前半時点や、20歳の子宮がん検診受診時点での一斉配布を想定している」
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130505/plc13050511030006-n1.htm

改憲バスに乗る前に (江川紹子): 必読。
http://bylines.news.yahoo.co.jp/egawashoko/20130503-00024690/

日本。新人市職員を自衛隊体験入隊へ:自民の圧勝からこちら、この国はもう崖を転がり落ちるような勢いでおかしくなりつつあるという気がするんですけど、先の衆院選で自民に投票した人達、本当にこれでいいと思っておられるのでしょうか。
http://www3.nhk.or.jp/kansai-news/20130430/4178431.html
2013.05.08 / Top↑
またまた医師による自殺幇助(PAS)に、
新たなパターンが登場。

ペースメーカー、ICD(埋め込み型除細動機)、LVAD(左室補助装置)を埋め込んでいる患者さんが、
それらがまだ機能しているのにスイッチを切ってほしいと
医師に要望するケースが増えているんだとか。

フロリダ大学の法学者、Lars Noahが法学ジャーナルに論文を書き、
法的検討の必要を問題提起している。

医療倫理学者らはこうした装置の停止について、
その他の外からの医療介入で既に中止を認められているものと同じとみなしているが、

心臓補助装置の停止は、
生命維持処置を最初から拒否することと、
一旦始めた後になって中止を求めることを同じとみなすことそのものに、
重大な疑義を呈する問題である、として、

こうした形態の医師による死の幇助の合法性について
今なお曖昧なままになっている問題の数々に、法的な議論が必要、と。

Noahの論文アブストラクトはこちら ⇒http://papers.ssrn.com/sol3/papers.cfm?abstract_id=2250471

Legality of Deactivating Implanted Cardiac-Assist Devices
Medical Futility Blog, May 5, 2013
2013.05.08 / Top↑
ある方から、大変興味深い論文をお知らせいただきました。
(Mさん、ありがとうございました)

研修医は医療行為をすべきか悩み、誘導する - ポートフォリオ相談事例の質的分析から
副士元春、名郷直樹
日本プライマリ・ケア連合学会誌 2012, vol. 35, no. 3, p. 209-215


インターネットで全文が読めますが、アブストラクトは以下。

目的:後期研修医から相談された事例を分析することで,研修医が直面する臨床上の問題を分析・構造化し,ポートフォリオを用いた指導・評価のための方法論を模索する.

方法:ポートフォリオ作成支援のための個別面談でのやりとりを音声記録したものをデータとし,Steps for Coding and Theorization(SCAT)を一部改変した方法にて質的分析を行った.

結果:研修医は<医療行使主義>と<医療虚無主義>の両極端の間に立たされ迷う場面に遭遇する.その両極端に悩みながら,<説得の儀式>や<希望つぶし>といった,どちらかの極端に誘導するための方法を用いる傾向がみられる.

結論:ポートフォリオを介した研修医との面談から,臨床現場で起きている問題構造の一端を明らかにできた可能性がある.臨床上の決断の傾向を構造化することで,臨床現場での指導に役立つ可能性が示唆された


研修医の指導に「ポートフォリオ」?? と
まず基本的なところでspitzibaraと同じ疑問を持たれた方は、こちらへ ↓

研修医ポートフォリオ
http://www.igaku-portfolio.net/ken/ken.htm

ポートフォリオについて(砂川市立病院)
http://www.med.sunagawa.hokkaido.jp/training/clinical01/clinical17.html


この論文が言う<医療行使主義>とは、

「早くから介入しといたら」「気管切開を選んでもらう」「診断を下すっていうことが,医学的に何か,私ができることなんじゃないか」などのテキストデータに代表されるように,患者本人や家族の希望に関わらず,治療や診断行為などの医療的介入は行われることが前提であるという研修医の傾向が,抽出されたやりとりの中では頻繁に垣間見られた.…(中略)…そこで、どんな医療介入も行使されることが前提, という研修医の傾向を<医療行使主義>と言い換えた。

<医療虚無主義>とは

「してもしょうがない」「ここまでしなくても」「もしその場にいたら, おそらく「挿管しよう」って, 私は言わなかった」などのテキストデータに代表されるように, 患者本人や家族の希望に関わらず、治療や診断行為などのどんな医療介入も行われないことが前提であるという研修医の傾向が、一部のやり取りの中で垣間見られた。<医療行使主義>とは対極に位置づけられるこのような特徴的な現象は、解析には重要であると考えられたため、<医療虚無主義>と言い換えた。


その上で、以下のように概念化。

……研修医が記述に困難さを感じる局面では、<医療行使主義>と<医療虚無主義>の【両極端の間に立たされ迷う】という現象が見られていると概念化した。
 本来、治療方針の判断は最終的に決定されるべきことではあるが、患者本人や家族の意向なくしてあらかじめ方向性が示されていることは、研修医にとっては葛藤や不安感を軽減する作用が期待されているのだろう。


<説得の儀式>とは

……治療方針を協議するプロセスであるはずの家族カンファレンスの場面における相談では、在宅医療の準備をして退院、精査のため広報病院へ紹介など、研修医がすでに決められた方針へ積極的に誘導しようとする言動がうかがえた。……やりとりからは研修医が日常的に慣習化した手順として誘導していることが推察された。このような無意識に慣習化した現象をグループ化して<説得の儀式>と言い換えた。

<希望つぶし>とは

 また、患者や家族が治療や今後の予後に対して過度の期待を持っている事例における相談では、「人間の死亡率は100%」「ちょっと厳しい感じで言って」など、期待を諦めさせようとする言動が見られた。このような現象をグループ化して<希望つぶし>と言い換えた。


で、先ほど指摘された【両極端の間に立たされ迷う】場面に直面した研修医は、
<説得の儀式>や<希望つぶし>という【いずれかの極端に誘導するための方法】を
用いる傾向がある、と分析。

しかし、この論文のデータが非常に興味深いのは、一部の例外で、
患者に<振り回されてみよう>と【両極端の間に耐える】という行動へ至った事例があること。

それから、結論の以下の部分。

特に治療方針の決断については、倫理的な葛藤として取り扱われることがあるが、さらに視野を広げ、医師や医療従事者の行動全般を構造化することによって、医療現場で起きている問題を異なる次元で記述することができるのでは何かという可能性も示唆された。


これ、次元の違いというよりも、
「倫理的な葛藤」という哲学的な問いであるとされる問題の背景に
実際は潜んでいるものを解明することのような気がする。

「倫理的な葛藤」への答えを見つけようと試みられるのではなく、
医療職側の「葛藤や不安を軽減する」ために、
どちらか一方に誘導して決めてしまおうという心理が働いている、と。

この論文を読んで私が思い出したのは、
ワイルコーネル大の脳神経科医、Joseph J. Finsが
植物状態や最少意識状態の患者で、医師らが最悪の予後を予測して
家族に治療の中止を勧めがちなことについて言っていた、

「早いところさっぱり決着をつけてしまおうと、
分からないことが沢山あるのに無視してしまっているが、
そんなに早くから一律に悪い方に決めてしまうのは間違っている」という発言。

睡眠薬による「植物状態」からの「覚醒」続報(2011/12/7)
(このエントリーの中では上記の発言は訳していませんが、このNYT記事での発言)


Fins医師は、時間をかけて待ち、様子を見るべきだと言っているのだけれど、
希望とも絶望とも、どちらとも先が見えない状態で「待つ」のは苦しいこと。
それが、この論文の「耐える」という言葉によく表現されていると思う。

実際、この論文の言葉を使えば
日本の尊厳死・平穏死議論を含め、安楽死・自殺幇助議合法化議論は
<医療行使主義>を批判しつつ、包括的な<医療虚無主義>へと
短絡的に誘導しているという気がするし、

また日本の「平穏死」本の著者らによる誘導の方法が、まさに、
この論文の著者が絶妙なネーミングを与えているように
<希望つぶし>による、医師の権威に基づいた<説得の儀式>。

でも、仮に<医療行使主義>が行き過ぎているのだとしても、
それに対する問題解決の解は、決して、一気に<医療虚無主義>へと振れることじゃない、と思う。

解は、その両者のどちらでもないところで、
「早いところさっぱりと決着をつけてしまいたい」衝動に耐えて、踏みとどまり、
「さっぱりしない」悩ましさや重苦しさを引き受けつつ、
個々のケースの個別性の中で、関係者みんなが尊重されつつ
丁寧に考えて判断すること、なのでは?


【関連エントリー】
日本の尊厳死合法化議論を巡る4つの疑問(2010/10/28)
「平穏死」提言への疑問 1(2013/2/11)
2013.05.08 / Top↑
Daily Mailがソースみたいなのだけれど、
どこのサイトからもMailのリンクが効かなくなっているので、
こちらのサイトから。


アルツハイマー病を患っていたフロリダ在住のRichard Floraさん(76)。
娘のEllen Wilsonさんの家でガラガラヘビ(Eastern Diamondback Rattlesnake)に噛まれた。

Floraさんの側にレンガがあったことから、
ヘビを殺そうとしたのではないか、と。

「何かおかしいと思っていたんです。
症状が揃っていました。……心拍が早かったし、汗をかいて吐いて」とEllenさん。

家族は病院へ運んだ。
医師らが家族に解毒剤を打って救命しますか、と尋ねる。

この事件の数日前に家族はDNR(蘇生無用)オーダーに署名していたのだ。

Ellenさんは他の姉妹と電話で相談。

父親はアルツハイマー病の最終段階にあり、
アルツハイマー病になったことを苦々しく思っていたから、
もし本人に選べるなら、アルツハイマー病で死ぬよりも
ヘビ毒で死ぬ方を選んだはずだ、と決めた。

Floraさんは噛まれてから11時間後に死亡。

Ellenさんは、
「私たちは祈りました。そして、
神様が、父に尊厳のある死に方ができるようにと
この事故を起こしてくださったように感じました」

Family Lets Alzheimer’s sufferer Richard Flora Die Of Snake Bite So He Can ‘Die With Dignity’
Opposing Views, May 01, 2013


Medical Futility Blogには、
作為の可能性はないのか、というコメントが入っている。

http://medicalfutility.blogspot.jp/2013/05/alzheimers-sufferer-dies-from-snake.html?utm_source=feedburner&utm_medium=feed&utm_campaign=Feed:+MedicalFutilityBlog+%28Medical+Futility+Blog%29
2013.05.08 / Top↑
アイルランドのMarie Fleming訴訟の上訴審で、Flemingさん敗訴。「自殺する明示的な権利などというものは存在しない」。
http://www.upi.com/Top_News/World-News/2013/04/29/Irish-court-rules-woman-has-no-right-to-be-assisted-in-ending-her-life/UPI-63081367251179/

今日のエントリーで書いた英国の世論調査について、ちょっと面白い記事。「どうせ終末期医療に期待できないから自殺幇助に賛成」というけど、新しい心臓病の知見も有望だし、乳がんの薬だって効いてるんだから希望を棄てないで……。:いや、でも、そんなふうに「治る」ことにしか希望が見いだせない、医療的操作万能主義みたいな文化そのものに、限界があるんでは??
http://www.pulsetoday.co.uk/news/daily-digest/support-for-assisted-dying-novel-trial-for-heart-treatment-and-tamoxifen-can-reduce-breast-cancer/20002803.article#.UYJc1krOeJI

日本。<終末期を考える> 認知症に「末期」の定義 尊厳死協会が提案:病態ごとに「末期」を定義するという発想って、欧米の安楽死議論でも、少なくとも私は見たことない気がする……。
http://iryou.chunichi.co.jp/article/detail/20130424145828793

生活書院のHPでの福井公子さんのWeb連載、5月分4本。最初の「心配」は新型出生前遺伝子診断について。悩ましさも違和感も丁寧に、しかし果敢に書かれている。
http://www.seikatsushoin.com/web/fukui08.html

日本。障害者に寄り添い治療 おおやま歯科医院 大山吉徳さん:Mencapの知的障害者への医療差別ビデオを見た直後に見つけたこの記事に、ものすごく救われた。
http://iryou.chunichi.co.jp/article/detail/20130424150159138

日本。ドル箱降圧剤の論文撤回「有名教授(京都府立医大)と製薬会社(ノバルティスファーマ)の闇」:この記事、必読と思う。米国の「ファーマゲドン」は既に海の向こうの話ではなくなっている。英語圏のファーマゲドンの実態が手近に分かりやすい最近の話題は、当ブログではAvandiaスキャンダル。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/35629

ちなみに、こちらのエントリーで拾ったWPの記事によると、昨今、科学論文「撤回エピデミック」が起こっていて、不正を理由に撤回される論文の数は1975年に比べて10倍。デジタル画像の時代にはデータ操作が簡単なのと、成果主義やグラント獲得競争の熾烈化。
http://blogs.yahoo.co.jp/spitzibara/66167499.html

米国の大学でADHDの治療薬のスマート・ドラッグ仕様が問題となっている件で、大学の保健室を通じた規制強化。これ、10年以前から問題になっていた ⇒ ADHD治療薬の“スマート・ドラッグ”利用を解禁せよ、とNorman Fost(2010/12/28)
http://www.nytimes.com/2013/05/01/us/colleges-tackle-illicit-use-of-adhd-pills.html?pagewanted=all

アラブの首長さんや王族やチャリティや財団が続々とゲイツ財団のワクチン・プログラムに資金提供を約束。:これみんな単純素朴な善意の行い、アラブのお金持ちがいきなりこぞって途上国の子どもたちのポリオ撲滅の必要に目覚めたんだなって考える人、いるだろうか。
http://www.sacbee.com/2013/04/29/5380484/alwaleed-foundation-supports-global.html
http://www.arabianbusiness.com/abu-dhabi-crown-prince-pledges-120m-in-polio-drive-499478.html
http://www.arabianbusiness.com/prince-alwaleed-pledges-30m-bill-gates-fight-polio-499949.html

ザッカ―バーグ、ビル・ゲイツらのロビー団体の最初のターゲットは、IT分野で移民労働者が働きやすい方向での規制緩和。
http://www.usatoday.com/story/news/nation/2013/04/29/tech-companies-lobbying-immigration-facebook-family-visas/2121179/
http://www.infopackets.com/news/business/industry/2013/20130429_ballmer_gates_help_push_for_immigration_reform.htm

でも、その一方でビル・ゲイツとゲイツ財団の幹部は、グローバルな貧困を大幅に削減する、と言っている。移民労働に出ていかなくても、みんなが自分の国でそこそこの暮らしができるように、してくださるんでしょうか。そうしたら、米国がITビジネスで国際競争力を維持できるように移民法の改正をめざすザッカ―バーグさんとの活動とは齟齬をきたしますが?
http://www.radioaustralia.net.au/international/radio/program/pacific-beat/gates-foundation-executive-upbeat-about-dramatic-poverty-reduction/1123426

また新手のビルダーバーグ会議? ブレア元英国首相、ルワンダ大統領、ビル・ゲイツ、マジック・ジョンソン他がビバリー・ヒルズに結集して、Milken会議。
http://beverlyhills.patch.com/articles/tony-blair-bill-gates-magic-johnson-to-attend-milken-conference-in-beverly-hills

シカゴの貧困地域から人を集めて最低賃金以下で大企業に送り込む、raiterosと呼ばれる労働者ブローカーについて、ProPublicaが。:う―。読みたい。けど、たぶん読めない。
http://www.propublica.org/article/taken-for-a-ride-temp-agencies-and-raiteros-in-immigrant-chicago

オレゴン・ヘルス・プランと呼ばれるOR州のメディケイドの効果について、受給できた人とそうでない人を2年間かけて比較研究したOregon Health Studyの結果がNEJNに。身体的な健康度が特に上がっているわけではないが、鬱状態は改善されていることと、経済的に安定度が高くなったことは成果。この先は、まだ読めていない。
http://www.nytimes.com/2013/05/02/business/study-finds-health-care-use-rises-with-expanded-medicaid.html

英国の介護者週間、今年は6月10日から16日。テーマは「介護の準備は?」。ブーマー世代の老いと介護に、英国の介護制度は対応できるのか、と問う。
http://southdownsliving.blogspot.jp/2013/04/prepared-to-care-carers-week-asks-can.html

カナダの看護師らがナーシング・ホームの人員配置基準は70年代のままで、アップデイトが必要、と訴え。
http://www.cbc.ca/news/canada/nova-scotia/story/2013/04/30/ns-long-term-staffing.html

1609年にヴァージニア州の飢饉でカニバリズムがあったという記録があるらしいのだけれど、このほど発掘された当事のゴミ捨て場から14歳の少女の骨が見つかり、カニバリズムが実証された、とのこと。
http://www.washingtonpost.com/national/health-science/skeleton-of-teenage-girl-confirms-cannibalism-at-jamestown-colony/2013/05/01/5af5b474-b1dc-11e2-9a98-4be1688d7d84_story.html
http://www.nytimes.com/2013/05/02/science/evidence-of-cannibalism-found-at-jamestown-site.html

日本語。インドでまた集団レイプ事件、母と娘が6人から 家族のトラブルで報復か
http://www.xinhua.jp/socioeconomy/photonews/343362/2/

安倍普三首相の「天皇陛下万歳」、中国CCTVがその意味探る「日本政府は公式ウェブサイトでこの式典の模様を公開したが、最後に会場の人々が万歳三唱をしたシーンでは「天皇陛下」と叫ぶ音声が消され、「万歳」しか聞こえない。日本政府は「マイクのトラブルであり、意図したわけではない」と釈明」
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130502-00000011-xinhua-cn

上の件、ガウタマ・シンラン・ソリドゥスさんがビデオをアップしてくださっている。
http://blogs.yahoo.co.jp/solidussolidarity/37042526.html

日本。定期接種化は大問題!子宮頸癌ワクチンは打たないで! 日本消費者連盟。
http://nishoren.net/flash/4352
2013.05.08 / Top↑
インターネットを通じた4000人以上への世論調査で、
10人に7人が「不治」の病気の人への近親者の自殺幇助は許されるべきだ、として
英国の法改正に賛成、と答えた。

反対したのは16%で
どちらとも分からないと答えた人が14%。

宗教など個人的な信条による違いは見られなかった。

自殺幇助を支持する理由としては
82%があげたのが、いつどのような死に方をするかを決める「権利」。
77%があげたのが、苦しみが長引くよりも死んだ方がよい。
35%があげたのが、NHSではちゃんとした終末期ケアは受けられそうにないから。

合法化推進の立場がやった調査なんだろうなぁ、と思われ、
その点で気になるのは、

質問が(少なくともこの記事の書き方だと)
「医師による自殺幇助」ではなく「近親者による自殺幇助」について聞いていながら、
記事の解説部分ではその違いが明確にされていないこと。

「終末期」の人について聞いているのではなく
「不治」の人について聞いていること。

(「不治」=「末期」ではないのに、
合法化推進派は意図的にそこを混同させようとする傾向があると思う)

質問設定が
「自殺幇助を支持するか」「生命の神聖を支持するか」というふうに、
推進派が描いて見せる「死の自己決定」か「なにが何でも延命か」という
現実的でない二項対立の構図を描くものとなっている。

(慎重派が主張しているのは必ずしも「なにが何でも延命」ではなく、
個々のケースについての過不足のない丁寧な判断であり、
例えば、アグレッシブな症状コントロールとしての緩和や全人的サポートなど、
推進派の描く対立の中間を丁寧に模索しようとの姿勢だろうと個人的には思うのだけれど、
単純化した両極端の対立の構図を描くことで、それが見えなくなってしまう)

NHSで現在問題になっている
リヴァプール・ケア・パスウェイの機会的適用問題が
35%の「どうせ丁寧なケアなんか受けられないんだから」と
記事タイトルにあるように「NHSへの不安が自殺幇助への支持を後押し」する
事態となっている。

LCPの機会的適用問題についてはこちらに ⇒http://blogs.yahoo.co.jp/spitzibara/65742574.html

これは私自身、
日本で尊厳死合法化に賛成だという人たちの理由も
実際はそういう辺りにあるのではないか、と感じてきたし、

平穏死を説いている医師らの中心的な主張についても、実は
現在の医療の在り方に対して、個々の患者に丁寧な医療ができていない、との批判だという
疑問があったので、すごく気になるところ。

もとGPのSarah Wollaston議員は
現在の終末期医療は劇的に改善されてきているとして、

If that is major concern it doesn’t mean we should go down the road of saying people are worried about that, let’s give them a pill.

もし、それが大きな不安なんだとしても、
だからといって、合法化して不安な人には致死薬を上げましょうということにはならない。


NHS fears fuelling support for assisted suicide, poll suggests
The Telegraph, April 30, 2013


LCPの機会的適用問題というのは、
医師による自殺幇助が合法化されていないにもかかわらず、
医療現場で機会的なLCPの適用で事実上の安楽死となっているとしたら、
ゆゆしき事態であり、そちらの現状を正すべきだ、という話だろうと思うのに、

そういう問題までが
「どうせ機会的にLCPに乗せられて、まともにケアしてもらえないなら」という
合法化への動機づけとして作用していくのか……。

こういう世の中になってくると、
ありとあらゆるものが、ある一定の方向に向かおうとする
時代の力動に取り込まれてしまう……みたいな……?

時代の不寛容な空気が、
不当なことに対して憤る力を人々から削ぎ取り、
諦めて自ら身体や命を捧げようとするところへと誘導していく……。

やっぱり思うのは、
世界がどんどん「虐待的な親のような場所」になってゆく――。


……世界で起こっていることや、
人間の社会がどっちに向かって行こうとしているかとか、
その中で日本がこの先どっちに行くのかとか、

そういう大きな絵に目を向けてばかりいると、つくづく希望がなくて、
「どうせ」とか「いっそ」とかいう自棄的な気分になってしまうから、

目の前の、あの人やこの人との繋がりのことを、
しばらく考えていよう。

少なくとも、そういうところには希望はまだいっぱいある――。
2013.05.02 / Top↑
Russel Border さんは12年3月に
Reading Hospital and Medical CenterのICUに入院。

ICUの患者として人工呼吸器その他の延命治療が施されたが、
担当医らはその間に法廷代理人のSharon Grayさんに連絡し、
Borderさんの状態はターミナルで無益なので、
生命維持の中止を勧めた。

その他の家族はみんな病院の勧める通りでよいと言い、異議はなかったが、
Sharonさんのみが反対。

それはBorderさん本人の事前指示に、
現在の状態になった場合には生命維持を望むと書かれていたため。

すると病院側は係争解決の手段として
裁判所に法廷代理人の解任を申し立てた。

Borderさんの事前指示書には
本人の希望は「一般的な参考」に過ぎず、最善の利益によって変更可能とも
指示されていたことから、

裁判所も
生命維持の中止を認めないのは
SharonさんがBorderさんの最善の利益に応じた行動をとっていないこととみなし、
代理人の交代を命じた。

この決定はペンシルベニア州の最高裁でも認められた。

Thaddeus Popeは
「無益な治療」係争解決の手段として代理人交代を支持してきたんだとか。

このケースは好例だ、と。

Reading Hospital Resolves Futility Dispute by Replacing Guardian
Medical Futility Blog, April 30, 2013


11年にヴァージニア州であった同様の事件がこちら ↓
延命停止に不同意の家族からは決定権はく奪、病院推薦の代理人が同意(2011/3/6)
2013.05.02 / Top↑
なるべく前のエントリーとセットで読んでいただければ。

以下の憲章は
Mencapが医療専門職や各種学会と協力して作ったものです。


医療差別をなくす憲章

障害ではなく、その人を見てください。

・知的障害のある人はみんな、医療を受ける平等な権利があります。
・すべての医療専門職は知的障害のある人々に提供する医療に
合理的な配慮(? Reasonable adjustment)をする義務があります。
・すべての医療専門職は知的障害のある人々に高い水準のケアと治療を提供し、
その命の価値を重んじなければなりません。

この憲章に署名することによって、私たちは以下を実行することを誓います。

○病院案内(? hospital passport)を用意し、実際に使ってもらっていることを確認します。

○私たちの病院の全スタッフが知的障害関連の法律の原則理念を理解し、実際に応用できるようにします。

○私たちの病院に知的障害のある人のためのリエゾン・ナースを置きます。

○知的障害のあるすべての人が、対象となる健康チェックを毎年受けられるようにします。

○すべてのスタッフに知的障害の啓発研修を継続して提供します。

○家族と介護者の言うことに耳を傾け、敬意を払い、一緒に考えます。

○家族と介護者に実際的な支援と情報を提供します。

○知的障害のある人々に分かる情報を提供します。

○Getting it rightの原理理念を誰もが見れる場所に掲示します。

(○のところにチェックを入れる形式になっています)


翻訳はとりあえずざっとやってみた仮訳です。
ご了解ください。

原文はこちらです ⇒ http://www.mencap.org.uk/campaigns/take-action/getting-it-right


Mencapでは
憲章に書かれた内容を実施するための医療職向けの具体的なアドバイスについても
HPやリーフレットやブックレットなど様々な形で提供しています。詳細は以下から ↓
http://www.mencap.org.uk/campaigns/take-action/getting-it-right/resources-professionals

関連サイトには、
医療専門職にも、知的障害者への配慮についての支援と情報提供が必要であること、
また一般社会の人々からも医療職に対して平等な医療を求める声が上がる必要があること、が
Mencapの信じるところとして明記されています。
2013.05.02 / Top↑
もう何年もかけて知的障害児者に対する医療差別の問題と取り組んできた
英国のMencapが、以下のGetting it right キャンペーンのサイトに、
とても分かりやすい、そして胸が痛くなる医療差別のビデオをアップしています。

http://www.mencap.org.uk/campaigns/take-action/getting-it-right


「医療差別」といっても、
それは障害のある人と家族や介護者、支援者なら
誰しも経験のある、ちょっとした場面のことなのです。

そして、その日常的な医療のちょっとした場面で
医療職の対応が差別的であったり、知的障害への配慮を欠いていることが
障害児者の命を直接的に脅かすのです。

以下にトランスクリプトを全訳してみました。
それぞれ、母(母親) M(ミッシェル) 医(医師)です。

どうぞ、一人でも多くの人にビデオを見ていただけますよう、
拡散にご協力いただけると幸いです。

よろしくお願いいたします。


(ミッシェルは病院にいる。痛みに苦しんで落ち着かない)

母:大丈夫よ、ママがついているから。

M:おなか、ここが痛い。すごく痛い。

医:はい。ラクにして、どうしたのか言ってごらん。言わないと治療できないよ?

母:いま言いました。おなかだって。

医:そんなの本当かどうか分からないでしょう?

母:前の受診の時には骨盤の慢性痛だって言われました。

(医師が聴診器を手にミッシェルに近づく。
なにをしようとしているのか説明しない)

M:なにするの? そんなの嫌。

母:だいじょうぶよ、だいじょうぶ。

医:この子の名前は?

母:本人にお聞きになったら?

医:君の名前、言えるかい?

母:大丈夫よ、言ってごらん。

M:ミッシェル。

(医師はミッシェルに向かい、大きな声でゆっくりと)

医:ミッシェル、動かずにじっとしていてくれるね。

母:知的障害なんです。耳が聞こえないわけじゃありません。

(医師が聴診器を持って再びミッシェルに近づく。
怯えさせ、ミッシェルはパニックする)

M :いやだって言ったのに。おなか。痛いのは。

医:ミッシェル、診てあげようとしているのに
協力しないんだったら、他の人に代わるよ。

母:なにをするのか本人に説明してやってください。
いいですか。これって、ものすごく恐ろしい状況なんですよ。
この子だけじゃなくて、私にだってそうです。
でも、この子は苦しんでいるんです。
すぐに治療してもらわないと。

ナレーション:
ミッシェルのように、知的障害のある人たちは
平等な医療を受けることができずにいます。
NHSでのコミュニケーションのお粗末、
障害への理解の低さ、そして差別によって、
知的障害のある人々の命は危険に晒され、
健康が損なわれています。

今すぐ、この事態を止めましょう。
今すぐ、医療差別をなくしましょう。
Mencapの医療キャンペーンに賛同し、
行動への参加リンクをクリックしてください。


Mencapは私が06年に英語ニュースを読み始めた頃から
NHSでの知的障害者への医療差別の問題に取り組んでいました。

そして、2007年に“Deaths by Indifference”で
医療職の無関心と差別によって命を落とした知的障害者6人のケースを報告。

それを受けて調査に入った医療オンブズマンから
09年3月に報告書が出ています。

オンブズマンは2例を医療過誤事件として認定し、
事態の深刻を認め、関係各所に向けた改善の勧告を出しました。

「医療における障害への偏見が死につながった」オンブズマンが改善を勧告(2009/3/31)
オンブズマン報告書を読んでみた:知的障害者に対する医療ネグレクト(2009/3/31)
Markのケース:知的障害者への偏見による医療過失
Martinのケース:知的障害者への偏見による医療過失


Mencapはその後も医療差別との闘いを続け、
Getting it right(医療差別をなくそう)キャンペーンを行っています。
そのキャンペーンから出てきたメッセージのいくつかは以下のエントリーに ↓。

「NHSは助かるはずの知的障害者を組織的差別で死なせている」とMencap(2012/1/3)
助かったはずの知的障害児者が医療差別で年間1238人も死んでいる(英)(2013/3/26)


今年4月には、
医療機関と医療職に向けて、
このキャンペーンの趣旨への賛同と具体的な努力を謳うよう
Getting it right charter (医療差別をなくす憲章)を発表しました。

この憲章の全訳は次のエントリーに。
2013.05.02 / Top↑