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こんな言葉があることすら知らなかったのだけど、
初めて聞いた瞬間に、いかにも合点されるネーミングだった。

デジタル・ネイティブ──。

英語を母国語として育った人を英語の「ネイティブ・スピーカー」というように
物心ついた時からネットがあるのが当たり前の世界で
インターネットを使いこなして成長した若者たちのことを
「デジタル・ネイティブ」と呼ぶんだそうな。


今朝、検索してみたら、名付け親はこの人で、2006年からあった言葉らしい。↓



番組で一番印象に残ったのが
15歳のベンチャー企業のCEOだという少年。

化学元素の特性をネットで調べて学習し、
SNSを使って世界中のデザイナーや編集者に仕事を発注して
科学の学習ゲームを作成、会社を立ち上げて好調に売り上げているという
実に怖いもの知らずの15歳。

(上記NHKサイトの予告動画に、この少年が登場しています)

その他にも
エイズ撲滅運動のボランティア活動をネットワーキングして
ついにはエイズ撲滅世界会議にまで招かれたウガンダの青年など
(ネットワーキングそのものが自己目的化して、
どこがエイズ撲滅活動なのかよく分からなかったけど)

こうしたデジタル・ネイティブたちが、やがて世界を支配するのだとか。

デジタル・ネイティブは人種・年齢・肩書き・性別・宗教など
これまでのオトナたちが差別の理由にしてきた属性にこだわらずに
誰とでもフラットに繋がれるんだと、
番組は彼らの民主性を強調していたけど、

私は逆に、
彼らデジタル・ネイティブ、というかデジタル・エリートたちは
人種や年齢や肩書きでは人を差別しないかもしれないけど、
彼らの、いわば「デジタル・リテラシー」による差別は
人種や肩書きや性別による差別よりもはるかにタチが悪いかもしれない……という気がして。

人種や年齢や肩書きや性別や宗教による差別は
少なくとも相手の存在を意識しているけれど、
コンピューターやネットを使いこなす能力・デジタル・リテラシーが低くて
自分たちデジタル・エリートの世界に繋がってくることのない人間は
彼らには最初からまるで見えていなんじゃないだろうか。

例えて言えば、
彼らは町で車椅子の人を見かけて
面と向かって「ジャマだ」と指差すような差別はしないかもしれないけれど、

特に悪意からではなく、ただ何も考えずに
車椅子マークの駐車場を平気で占拠してしまう健常者や、
最初から駐車場に車椅子用のスペースを設ける必要なんて
全く頭にも浮かばない公共施設・商業施設の関係者のような、

無関心で相手の存在そのものが意識にないから
疎外していることにも踏みつけていることにも気がつかない……という差別を、

デジタル・エリートの世界に属することのできない人間は
全く悪意のカケラもなく天真爛漫な世界の支配者たる彼らから
受けることになるのでは──?


もう1つ、番組でデジタル・ネイティブの姿を見ながら考えたのは、
今おおいに気炎を上げているトランスヒューマニストらの
自分たちほど科学やテクノを理解できない人間に対する優越意識や特権階級意識は
案外、デジタル・ネイティブの先駆みたいなものかもしれないなぁ……ということで、

THニストたちは、彼らに比べれば
まだしもアナログ時代の倫理意識を多少は引きずっているんだよなぁ……ということ。

例えばJames Hughesが
いかにTHニズムが民主的でありうるのかを理論構築してみたり
THニストの親玉Nick Bostrumが
THニズムの視点から今後の未来に潜在する人類滅亡の危機を考察してみたり……
などという七面倒くさいことを、
デジタル・ネイティブたちはきっと一切やらないし
それも意識して「やらないことを選択する」というのではすらなく、
ハナから意識にも上らないからやらないだけ、なんじゃないかなぁ……という気がする。

きっと彼らは自分が面白いと思ったことがネットを使って実現できるのなら
ただスピード感を持って、それを次々に実現していくだけで、
立ち止まって倫理的・哲学的・社会的にその行為を考えてみるとか
周囲に向かってわざわざ正当化してみせるなどという
かったるいことをするつもりもなく、
彼らの世界にはそんな必要もないんじゃないのか、と。

やがてデジタル・ネイティブたちが世の中を支配すれば、
MicrosoftもGoogleも終焉を迎えるのかもしれないし、
その時には、このブログが危機感をもって眺めている
慈善資本主義もトランスヒューマニズムも、
「あの頃はまだ良かった」という話になるのかも???

まぁ、所詮はアナログ人間のタワゴトかもしれませんがね。
2008.11.11 / Top↑
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