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顔の部分移植というと、
2005年にフランスで犬に襲われた女性が世界初の顔の移植症例として話題になりましたが、

その後、中国で熊に襲われた男性と、
フランスで顔の腫瘍を患った男性で
ともに顔の部分移植が成功したとのこと。

移植のお陰で、
それまで出来なかった飲食や話も普通に出来るようになったと
担当の移植医らは興奮しておられて、
この手術は既に「倫理論争から外科の現実へと移り変わった」とまで言い放ち、

また英国の医師らを始めとして、あちこちで
「次はフル・フェイスの移植!」と張り切っておられるようなのですが

2005年から倫理問題となっているのは

・症状が命に関るものではない
・顔はアイデンティティに関る部分でもあり心理的な影響
・拒絶反応を抑えるために死ぬまで強い薬を飲まなければならない
 その薬には癌やその他の病気のリスクがある
・ドナーの家族の気持ちの問題

などなどであり、
これらの倫理問題と外科技術としての成功率とは別問題なのであって、
前者から直線的にその延長で後者に移り変わるという性格のものではないのでは―――?




そういえば、世界初の顔移植のIsabelle Dinoireさんのその後は……?
と、気になったので、Wikipedia を覗いてみたら、
New England Journal of Medicineに担当医が2年目の報告を書いていて、
微笑むことが出来るようになったという本人の感想がある一方で、
その2年間に腎臓障害が起き、拒絶反応が2回あったとのこと。

手術の1年後にAP通信が掲載した写真というのがあって、
これは私もはっきり覚えているのですが、
驚いたことに、その後削除されています。
どうやら写真の一部に修整が施されていたことが判明したのがその理由。

ちなみに、万が一拒絶反応を抑える薬をやめたらどうなるかというと、
新しく移植した部分がずり落ちてきて「悲惨なことになる」のだそうです。

そういうことが起きてしまった場合には
患者にはもちろん相当な精神的なダメージがあると思うし、
顔だけでなく身体も副作用でボロボロになっている可能性もあるのだけど、

担当医らはその時に
患者をその「悲惨」から救うために、
どれほど熱心な努力を払ってくれるのでしょうか。



こうした記事を読んでいると私の頭には聞こえてくる。
「千と千尋の神隠し」で「千ほしい…ほしい、千……」とつぶやいていた顔なしの声で

やってみたい……本当は、ただ、やってみたい……
2008.08.23 / Top↑
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