前のエントリーでNYTimes掲載のステロイド解禁論と
その中でのNorman Fostのコメントを取り上げたついでに、
それとは別に、かなり前から机の上に置いて眺め暮らしていた
Fost のステロイド解禁論の特集記事があるので。
その中でのNorman Fostのコメントを取り上げたついでに、
それとは別に、かなり前から机の上に置いて眺め暮らしていた
Fost のステロイド解禁論の特集記事があるので。
As controversy swirls, medical ethicist remains a center of calm and certainty
The Chicago Tribune, January 15, 2008
The Chicago Tribune, January 15, 2008
今年1月15日、Norman Fostがニューヨークで行われたドラッグ解禁ディベートに出た日の記事です。
ディベイトへの参戦は、やはりAshley事件で擁護の論文を書いたTHニストのJurian Savulescuと一緒でした。
ディベイトへの参戦は、やはりAshley事件で擁護の論文を書いたTHニストのJurian Savulescuと一緒でした。
記事内容としては、
「米国で最も孤独な男」とか「Wisconsinの変人」などとメディアに揶揄されつつ
1983年の早くからステロイド解禁を訴え続けてきた解禁論の最先鋒
Norman Fostの歩みと主張を紹介し、
彼に同調する科学者や医師が増えてきたと最近の変化を伝えるもの。
「米国で最も孤独な男」とか「Wisconsinの変人」などとメディアに揶揄されつつ
1983年の早くからステロイド解禁を訴え続けてきた解禁論の最先鋒
Norman Fostの歩みと主張を紹介し、
彼に同調する科学者や医師が増えてきたと最近の変化を伝えるもの。
ここで展開される解禁論そのものは
これまでの関連エントリーで紹介してきたのと同じですが、
1つだけ目新しかったのは
Fost自身は頭痛薬すらなるべく飲まないようにしていると書かれていたこと。
これまでの関連エントリーで紹介してきたのと同じですが、
1つだけ目新しかったのは
Fost自身は頭痛薬すらなるべく飲まないようにしていると書かれていたこと。
つまり
「ステロイドの副作用については科学的に実証されていない(だから副作用はないと思え?)」と言いつつ
自分自身は薬物の副作用リスクにはとても敏感・慎重で、
要は「どうせ他人事」のステロイド解禁論だということですね。
(医師なんですけどね、この人。)
「ステロイドの副作用については科学的に実証されていない(だから副作用はないと思え?)」と言いつつ
自分自身は薬物の副作用リスクにはとても敏感・慎重で、
要は「どうせ他人事」のステロイド解禁論だということですね。
(医師なんですけどね、この人。)
その他、この記事のFost発言を読んで、
特にAshley事件との関連で「おや?」と思った点として、
特にAshley事件との関連で「おや?」と思った点として、
①Fostは「治療と強化の境界について」考え始めたのは
米国の水泳選手が金メダルを剥奪された72年のミュンヘン・オリンピックからだと語っています。
米国の水泳選手が金メダルを剥奪された72年のミュンヘン・オリンピックからだと語っています。
去年のシアトル子ども病院生命倫理カンファの講演でも
背の低い男児にホルモン障害があれば成長ホルモン使用が「治療」として認められるが
普通に背の低い男児に成長ホルモンを使おうとすれば「強化」だからダメだというのはおかしい、と
Fostが強く説いて、聴衆がちょっと引いてしまったような場面もありました。
背の低い男児にホルモン障害があれば成長ホルモン使用が「治療」として認められるが
普通に背の低い男児に成長ホルモンを使おうとすれば「強化」だからダメだというのはおかしい、と
Fostが強く説いて、聴衆がちょっと引いてしまったような場面もありました。
この考え方において、
Fostは非常にトランスヒューマニスティックな医師だと言えるでしょう。
Fostは非常にトランスヒューマニスティックな医師だと言えるでしょう。
しかも、ずいぶん前から、治療と強化の境目をなくして
強化のためにも医療技術を利用すべきだと彼は考えていたわけです。
強化のためにも医療技術を利用すべきだと彼は考えていたわけです。
②しかし、その一方、上記の記事の中でFostは
青少年へのステロイド投与には断固として反対だと述べています。
その理由は「成長を抑制するから」。
青少年へのステロイド投与には断固として反対だと述べています。
その理由は「成長を抑制するから」。
「ステロイドの専門家」であるNorman Fostは
ホルモン剤の成長抑制効果についても、もちろん誰よりも詳しいわけですね。
ホルモン剤の成長抑制効果についても、もちろん誰よりも詳しいわけですね。
だたし、彼は「ホルモンが成長を抑制する」がゆえにこそ
若年のスポーツ選手に対しては厳格な検査を行うべきだと、ここで主張しています。
子どもにステロイドを与えるような輩には「公正な裁判の後で絞首刑」だとまで
厳しい言葉で糾弾しているのです。
若年のスポーツ選手に対しては厳格な検査を行うべきだと、ここで主張しています。
子どもにステロイドを与えるような輩には「公正な裁判の後で絞首刑」だとまで
厳しい言葉で糾弾しているのです。
それで、よくも6歳のAshleyに行われたホルモン大量投与による成長抑制を擁護できたものだなと
最初に記事を読んだときには呆れたのですが、
最初に記事を読んだときには呆れたのですが、
その後、この記事を机の上に置いて眺め暮らしながら
よくよくNorman Fostという人物の言動を振り返ってみると、
彼は重症障害新生児の治療は無益だからやめろと説いているし、
“Ashley療法”論争での発言にも障害児への蔑視が大変露骨です。
よくよくNorman Fostという人物の言動を振り返ってみると、
彼は重症障害新生児の治療は無益だからやめろと説いているし、
“Ashley療法”論争での発言にも障害児への蔑視が大変露骨です。
重症障害児をもともと人として認めていないのですから
健常な子どもに使ってはいけないはずのホルモン剤を大量投与しても
別に構わないと考えるのでしょう。
健常な子どもに使ってはいけないはずのホルモン剤を大量投与しても
別に構わないと考えるのでしょう。
それにしても……上記2点から考えると、
そして「治療」以外の目的で「ホルモン治療」を行うことについて
恐らく誰よりも抵抗感のない人物だった──。
恐らく誰よりも抵抗感のない人物だった──。
私にはAshley父のブログを初めて読んだ時から疑問があって、それは、
「いくら頭のいい人でも医療の素人である父親が自分の力だけで独自に
これだけぶっとんだ医療技術の応用を、しかも3点セットで思いつけるものだろうか」
というもの。
「いくら頭のいい人でも医療の素人である父親が自分の力だけで独自に
これだけぶっとんだ医療技術の応用を、しかも3点セットで思いつけるものだろうか」
というもの。
「最終的に考えをまとめたのは父親だったとしても、
少なくとも彼はどこかで“Ashley療法”のアイディアの種を拾ったはず。
それは一体どこだったのか」という疑問です。
少なくとも彼はどこかで“Ashley療法”のアイディアの種を拾ったはず。
それは一体どこだったのか」という疑問です。
Norman Fost――。Ashley事件を考えるに当たって、どうにも気になる人物です。
(ここ最近のDiekema医師の小児科生命倫理分野での華々しい活躍ぶりも
彼が米国小児科生命倫理界のボスであるFostの愛弟子だという事実を思えば、
ただAshley事件で名前が売れたからという単純な理由ではないかも……。)
彼が米国小児科生命倫理界のボスであるFostの愛弟子だという事実を思えば、
ただAshley事件で名前が売れたからという単純な理由ではないかも……。)
2008.08.20 / Top↑
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