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前回のエントリーで13歳の少女に裁判所が中絶を命じたケースを紹介しましたが、アメリカ・フロリダ州では2005年に、裁判所が13歳の少女に中絶の意思決定を認めています。

9歳から州によって監護されている(custody)13歳の少女は、暮らしているグループホームから何度も逃走しているが、最後の逃走時に妊娠。年齢と育てる経済力がないことを理由に、本人は中絶を希望。親権のある州の子どもと家族局が、少女は自分で中絶の決断をするには若すぎる、未熟であると主張したが、彼女の代理となったthe Florida American Civil Liberties Unionは、フロリダの州法は未成年に中絶を選ぶ権利を認めているとして対立。

少女の精神鑑定が必要だとして、いったん中絶を差し止めた裁判所は、その後、少女は「意思決定の能力があり(competent)、既に決断しており、その決断に従って行動する権利がある」と裁定した。

「あくまでも本人の最善の利益を考えて行動している」と主張する子どもと家族局は上訴しない予定。

Abortion Stopped for 13 Year-Old Florida Girl
LifeSiteNews.Com May 2, 2005

Florida judge approves abortion for 13 year-old
MSNBC.com May 3, 2005

ちなみにthe American Civil Liberties Union(ACLU)のホームページを覗いてみると、1920年代に創設され、最初は市民権運動の活動家の集まりだったものが現在では会員と支援者が50万人を超えるとのこと。ほぼ全ての州にオフィスがあり、年間6000件の訴訟を手がけている。

このHPの説明によると、アメリカ政府のシステムは、

①多数派が民主的選挙による議会制を通じて統治する。
②民主的多数の力でさえ個人の権利の保障のためには制限される。

という、相反する2つの原理によってできているのであり、ACLUのミッションはアメリカの憲法で保障された自由や権利を守ること。また伝統的に権利を否定されてきた人々(ネイティブ・アメリカン、有色人種、ゲイ、バイセクシュアル、トランスセクシュアル、女性、囚人、障害者、貧者)の権利を拡大することも。

アメリカには個人の権利を守るための組織や制度がこのように多様に存在しているのだなぁ……ということを改めて思います。「こういう社会で、なぜAshleyの権利は、あんなに簡単に無視されてしまったのか」という疑問が改めて強く意識されるわけですが。


          ―――――――

イタリアのケースでは、中絶が本人の最善の利益だというのが両親の主張であり、フロリダのケースでは中絶しないことが本人の最善の利益だというのが州の主張だったようです。同じ13歳でも全く逆のことが最善の利益として主張されたことになるのですが、

イタリアのケースとこのアメリカのケースの違いを生むのは、13歳という年齢に対する捉え方の違いなのでしょうか。

それとも2人の少女の境遇の違いが実は影響している?

フロリダの少女の妊娠が分かってから、直接彼女の養育に携わっている関係者がどのような対応をしたのか。そこにどういう立場の人たちが関り、どういうプロセスがあって裁判所に判断が求められたのか。どういう経緯でACLUが本人の利益を代理することになったのか。そのあたりに興味が動くところです。

【追記】
International Debate Education Associationというサイトに、未成年の中絶について親の法的関与の是非をめぐるディベートがありました。2002年12月に立ち上げられ、最後の書き込みは2005年8月ですが。(中絶は合法との前提で親の関与の是非のみを議論するものです。)


このページの説明によると、未成年の妊娠と中絶は親に知らされることと親の同意が必要との法律が43の州に存在するが、実際に施行されているのは32の州だとのこと。(2005年以降に変わっている可能性もありますが。)たいていは18歳未満を対象とし、親の関与が無理な場合に a court bypass procedure が提供されるとのことなのですが、この意味するところがはっきりわかりません。フロリダのケースは同様の法案が州議会で議論されているタイミングで起こったことのようですが。
2007.10.29 / Top↑
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