Fost や Paris がもしも移植医だったら、こういうことをしていただろうな……という
米国カリフォルニア州の事件。
米国カリフォルニア州の事件。
New Zeal in Organ Procurement Raises Fears: Donation Groups Say They Walk a Fine Line, but Critics See Potential for Abuses
USA TODAY (7月30日)
the Washington Post (9月13日)
Doctor charged in transplant inquiryUSA TODAY (7月30日)
の2本の記事から事件の概要をまとめると、
重症の心身障害があるRuben Navarro(25歳)の脈がなくなって、
暮らしていたナーシング・ホームから病院に送られ、呼吸器をつけられたのは2006年1月29日。
ただし、わずかながら脳の機能が見られ、不可逆的な脳損傷を受けてはいるものの脳死とはみなされていなかった。
医師に回復の望みはないと告げられた母親は臓器提供に同意。
そこで病院側は地域の臓器移植ネットワークに連絡し、
ネットワークからはNavarroの臓器を保存するためのチームが派遣された。
ところが、呼吸器をはずしてもNavarroは予想に反して死なない。
30分以内に死ななければ臓器は使えなくなる。
手術室でジリジリする派遣チームの移植医Hootan Roozrokhは何度もモルヒネとアチバンの投与を指示。(その際、それらの薬物をジョーク交じりに「キャンディ」と。)
通常なら死後のドナーにしか投与しない抗生剤まで、栄養摂取の管を通じてNavarroの胃に入れたとの疑惑もある。
医師らがついに諦めてNavarroを部屋に戻した時、Navarroは口から泡を吹き、震えていたという。
そして翌日に亡くなる。
その場にいた看護師らの訴えにより捜査が始まり、
Roozrokh医師はNavarroの死を早めようとしたとして、
臓器移植ケースでアメリカで初めて刑事罰に問われる医師となった。
それが7月のこと。
罪状は3つで、
dependent adult abuse (非自立の?成人に対する虐待)
administering a harmful substance(有害薬物の投与)
unlawful controlled substance prescription(規制薬物の違法な処方)
解剖所見は死因を自然な原因によるものとしており、
医師の処置が死の原因となったわけではないので殺人罪での起訴は見送られたとのこと。
【追記】
「・・・脳死とはみなされていなかった」の部分はUSATODAYの記事にある情報なのですが、
家族が臓器提供に同意したら脳死じゃない人の呼吸器をはずしてもいいのか……。
アップした後で疑問になってきたのですが、その辺りは報道からははっきりしません。
昨日13日のUSATODAYの記事も確認してみたところ、
病院側は裁判で呼吸器をはずすことについては母親の同意を得たと主張し、
母親はそれを否定している、との記述もあります。
暮らしていたナーシング・ホームから病院に送られ、呼吸器をつけられたのは2006年1月29日。
ただし、わずかながら脳の機能が見られ、不可逆的な脳損傷を受けてはいるものの脳死とはみなされていなかった。
医師に回復の望みはないと告げられた母親は臓器提供に同意。
そこで病院側は地域の臓器移植ネットワークに連絡し、
ネットワークからはNavarroの臓器を保存するためのチームが派遣された。
ところが、呼吸器をはずしてもNavarroは予想に反して死なない。
30分以内に死ななければ臓器は使えなくなる。
手術室でジリジリする派遣チームの移植医Hootan Roozrokhは何度もモルヒネとアチバンの投与を指示。(その際、それらの薬物をジョーク交じりに「キャンディ」と。)
通常なら死後のドナーにしか投与しない抗生剤まで、栄養摂取の管を通じてNavarroの胃に入れたとの疑惑もある。
医師らがついに諦めてNavarroを部屋に戻した時、Navarroは口から泡を吹き、震えていたという。
そして翌日に亡くなる。
その場にいた看護師らの訴えにより捜査が始まり、
Roozrokh医師はNavarroの死を早めようとしたとして、
臓器移植ケースでアメリカで初めて刑事罰に問われる医師となった。
それが7月のこと。
罪状は3つで、
dependent adult abuse (非自立の?成人に対する虐待)
administering a harmful substance(有害薬物の投与)
unlawful controlled substance prescription(規制薬物の違法な処方)
解剖所見は死因を自然な原因によるものとしており、
医師の処置が死の原因となったわけではないので殺人罪での起訴は見送られたとのこと。
【追記】
「・・・脳死とはみなされていなかった」の部分はUSATODAYの記事にある情報なのですが、
家族が臓器提供に同意したら脳死じゃない人の呼吸器をはずしてもいいのか……。
アップした後で疑問になってきたのですが、その辺りは報道からははっきりしません。
昨日13日のUSATODAYの記事も確認してみたところ、
病院側は裁判で呼吸器をはずすことについては母親の同意を得たと主張し、
母親はそれを否定している、との記述もあります。
9月13日のWPの記事は、Roozrokh医師が3つの罪状のうち2つについて否認したことを伝えていますが、
記事の主要テーマは、
このような事態が起こった背景として、
2003年に始まった連邦政府の提供臓器獲得キャンペーン”Breakthrough Collaborative”によって
臓器獲得機関(OPO)の機能が強化されたことにあるとの問題提起。
2003年に始まった連邦政府の提供臓器獲得キャンペーン”Breakthrough Collaborative”によって
臓器獲得機関(OPO)の機能が強化されたことにあるとの問題提起。
提供臓器の数はキャンペーン開始から増えている一方で、
OPOのスタッフが病院スタッフや終末期カウンセラーを装って家族に接触したり、強引に提供に同意させるなど、
「あいつらは病院を飛び回るハゲタカ」だと言われるような事態も起きているとのこと。
OPOのスタッフが病院スタッフや終末期カウンセラーを装って家族に接触したり、強引に提供に同意させるなど、
「あいつらは病院を飛び回るハゲタカ」だと言われるような事態も起きているとのこと。
――――――
このような事件の報道に直面すると暗澹とした気持ちにもなるのですが、
シアトル子ども病院の生命倫理カンファレンスでのFostやParisらの発言を振り返ると、
彼らがもしも移植医だったら、Roozrokhと同じタイプの移植医になったであろうことは容易に想像されます。
OPOはこのたびの事件が例外中の例外だと主張しているようですが、果たして本当にそうなのか……。
シアトル子ども病院の生命倫理カンファレンスでのFostやParisらの発言を振り返ると、
彼らがもしも移植医だったら、Roozrokhと同じタイプの移植医になったであろうことは容易に想像されます。
OPOはこのたびの事件が例外中の例外だと主張しているようですが、果たして本当にそうなのか……。
上記2つの記事では、
Navarroに重い障害があったことと、医師らのこうした処置との関係には特に触れられていませんが、
関係がなかったとも思えません。
Navarroに重い障害があったことと、医師らのこうした処置との関係には特に触れられていませんが、
関係がなかったとも思えません。
実際、障害者運動関連のHPや障害者らのブログはこの事件に非常に敏感に反応しているのですが、
メディアはぬるい。
これは果たして、
当事者とメディアとの間に温度差があるという単純な問題なのでしょうか。
メディアはぬるい。
これは果たして、
当事者とメディアとの間に温度差があるという単純な問題なのでしょうか。
WPの記事で気になるのは、この長い記事のいよいよ終わりの部分までは、
Navarroの障害について、ほとんど触れられていないこと。
Navarroの障害について、ほとんど触れられていないこと。
記事の最初のセンテンスは、
「長いdegenerative な病気との闘いの末に、Ruben Navarroは死に瀕していた」と。
「体に変形をもたらす病気」という意味でしょうか。
なぜWPはこんな曖昧な表現だけで、その後の記事の大半を書いたのか。
なぜ最後の部分でやっと「重症の障害」と書くまで、「障害」という言葉を使わなかったのか……?
なぜWPはこんな曖昧な表現だけで、その後の記事の大半を書いたのか。
なぜ最後の部分でやっと「重症の障害」と書くまで、「障害」という言葉を使わなかったのか……?
(ちなみに、USATODAYの記事は、副腎脳白質ジストロフィー、脳性まひ、てんかん発作と、Navarroの障害を具体的に説明しています。9月13日の記事でも、USATODAYは最初から「障害のある男性」と書いています。)
【Navarro事件 関連エントリー】
臓器ほしくて障害者の死、早める?
Navarro事件で検察が移植医の有罪を主張(2008/2/28)
臓器移植で「死亡者提供ルール」廃止せよと(2008/3/11)
Navarro事件の移植医に無罪:いよいよ「死亡提供ルール」撤廃へ? (2008/12/19)
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2007.09.14 / Top↑
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