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ドイツの最高裁から、
患者の事前の要望に基づいた行為であれば
「自殺幇助」は必ずしも罰せられない、との判断。

2007年にクライアントに勧めて
25年間、反応のない昏睡状態にあった母親Erika Kuellmerさんの
経管栄養を中止させた医療弁護士Wolfgang Putzの裁判で、
下級裁判所がvoluntary manslauter で9カ月の執行猶予の判決を下していた。

事件の概要としては
弁護士に相談した娘が、そのアドバイスで栄養チューブをカット。
(接続部分をはずした、という意味?)

たまたまケアホームの職員が見つけて介入し、
Kuellmerさんは2週間後に自然死した、というもの。

最高裁が重視したのは、その71歳の母親は昏睡に陥る前に
そういう状態になったら生かされていたくないとの希望を娘に表明していたこと。

ドイツでは94年に連邦裁判所が患者の同意があれば治療は停止できるとの判断を下しており、
それが今回の判断の根拠となった。

2005年には、連邦裁判所が
本人の意思に反してケアホームなどの施設が患者に経管栄養を強制する権利はない、とし、
また昨年は、死にいたるまで常に患者の意思が考慮されなければならないとの規則もできた。

Putz氏は、この判決を受けて無罪放免に。

ドイツの法務大臣は、個人の自由意思の尊重に向け大きな一歩だと歓迎。

Germany: Assisted suicide OK if patient consents
AP, June 25, 2010

German court rules in favor of passive assisted suicide
DW-world. de, June 25, 2010



考え方の基本は、英国のDPPのガイドラインと同じ方向のものだと思うけれど、
「自殺幇助」という言葉で表わされているものの内容は、全く別物。

この2つの記事が「最高裁が自殺幇助は本人意思ならOKと」とか
「積極的自殺幇助はドイツでは今なお違法」とか
「消極的自殺幇助は不可逆な死のプロセスが始まった後は合法」などと
書いているのが非常に紛らわしくて、

ここでは、現在あちこちで(特に英国で)拡大解釈されつつある「自殺幇助」ではなく
「安楽死」という用語を使うべきなんじゃないでしょうか。

その辺りが混乱しているので、
今回の「本人の意思であれば、呼吸器を外すのも栄養を中止するのも合法」との判断が
ターミナルな状態に陥った人に限っての延命中止なのか、
それとも、ターミナルな状態でない人まで含むのか、今一つはっきりしない。


それから、この娘の行為が問われた判断なら、まだ分かるのだけど、
どうして娘に栄養停止をアドバイスした弁護士の行為が「自殺幇助」なのか
裁判の詳細が分からないので、イマイチよく理解できない。


もう1つ、あれ? と、ちょっと引っかかったのは、後者の記事が
Kuellmerさんのことを「5年間昏睡状態にあった70代のターミナルな患者」と
書いていること。

確かに、娘がカットしたチューブを職員が元に戻しても
2週間後に自然死したのであれば、この人はターミナルだったのかもしれないけど、
それはもしかしたら、ただの結果論かもしれないし、

娘の行為が死を早めた可能性だってあるかもしれないし、

本当に死がそれほど差し迫った状態だったのであれば、
逆に娘さんが手を下す必要の方がなかったことにもなる気がするし、

5年間昏睡状態のあげくに、本当にターミナルな状態に陥った人だったのか、

実は栄養と水分さえ供給されれば生き続けられる状態の人だったにもかかわらず、
どこかのメディアのように「反応がない昏睡状態」で「死んだも同然だから」と
勝手な解釈がさしはさまれて、「ターミナルな」という表現が
うっかり使われてしまったのか。

その辺り、メディアはもうちょっと厳密な言葉の使い方をしてほしいと、いつも思う。
それとも、わざとやっている……?
2010.06.26 / Top↑
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