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Gates財団が中国で始めたエイズ対策キャンペーンに批判が起きている。

感染率そのものは低いものの
なかなか対策が進んでこなかった中国では去年から感染者が急増している。

官僚組織が機能しない中国でエイズの蔓延を食い止めようと
Gates財団が中国の保健省と提携して目下進めているのは、
まず治療の必要な感染者を見つけ把握するプログラム。

2007年から、中国の14都市で
飲み屋や風呂屋やアパートなどに臨時の採血センターを設置して、
淋病とH.I.V.の検査を行うキャンペーンが行われている。

もちろん資金はGates財団から。
今後5年間で5000万ドルをつぎ込むという。

他のキャンペーンと決定的に異なっているのは
金銭支払いをインセンティブとしていること。

検査を受ける人は1回の採血で9ドルもらえる。
もしも検査結果が陽性だった場合には追加で44ドルとあって、
採血センターの前には手軽に金を手にしたい若者が列を成す。
これまでに11万人が検査を受けたという。

そのため、金集めだけを目的とした被験者や採血グループが出てきて、
人口1100万人の町に1年間で24もの組織が新たに出来たケースもある。
多くは飲み屋の経営者や政府の官僚がたちあげたもので
中には検査に来る人にカウンセリングもせず、
陽性と出た人を治療に結びつけることもしない団体もある。

毎年30億ドルもの資金を慈善事業で動かすゲイツ財団には
もともと外部の意見を聞かず独善的なプログラム運営に批判もあるが、

中国でこうしたキャンペーンを行うやり方についても、
これまで草の根でやってきたエイズ対策団体の間に格差を作り、
地元の保健医療のあり方を組み替えてしまうとの批判が起きている。

また保健省とタイアップしていることについても、
将来にわたって財団が中国に影響力を及ぼし、
中国社会をもっと根本的に変えるための布石との見方も。

確かにGates財団の資金を使って政府もエイズに取り組む組織にテコ入れし、
2007年には国内に数10しかなかった活動団体が現在では400以上に増えてはいるが、

これまで中国でエイズの問題に関わってきたベテラン活動家で
このたびのプログラムについてもゲイツ財団にアドバイスしたTong Geさんは
財団の活動は歓迎しつつも、検査よりも政府の官僚への教育にもっと資金を回して欲しい、と。

「今回のプログラムで財団の援助資金が政府を迂回することになったために
これまでなかったところにまで汚職がはびこってしまった。
でも、ゲイツ財団を責めるわけにはいかない、もともと悪いのは中国なんだから」とも。

このたびのキャンペーンを中国での責任者として取り仕切る
Dr. Ray Yipの発言がとても象徴的で

「(確かに実施状況に問題がないわけではないが)、
町々に提供した助成金のすべてが素晴らしい成功を収めるなんて思っていません。
そんなのは30社の株を買って、どれもが値上がりすることを期待するようなものです」

この人、医師みたいなんだけれど、保健医療施策についての考え方が
ゲイツ財団のビジネス・モデルに毒されてない……?

H.I.V. Tests Turn Blood Into Cash in China
The NY Times, December 3, 2009


ある国に、ある健康問題が起きておりました。
でも、その国のお役人たちは無能な上に腐敗していて役に立ちません。

ある日、それを見かねたGates財団という愛と正義の人たちが
華々しいファンファーレと共にその国に出張ってきました。

(別の国に比べて、この国の健康問題が特に深刻だというわけでもありませんし
もちろん、もっと政府が機能していない国だって地球上には沢山あるのですが、
この国は、目下ビジネスチャンスの宝庫という意味でオイシイのかもしれません)

ゲイツ財団の愛と正義の人たちは
その国の政府の目の前に大金をドカッと積み上げて言いました。

「さぁ、これで問題を解決しようじゃないか。
やり方は、我々が承知しているから任せてくれたまえ。
なにしろ我々はグローバル・ヘルスの専門家だからね」

お役人たちは、目の前に積まれたお金のきらめきにヨダレを垂らし、

「え? ゼニも含めて一切合財お任せでいいんですかい……? うっそー!
んだば、委細お任せしますで、よろしくおねげーいたしますだぁ。
わ~い。ありがたや。ありがたや」

へへ~っ……と這い蹲って、主権国家の責任も誇りも擲ってしまいました。

Gates財団の愛と正義の騎士たちは、
「よし、よし。任せておきなさい。悪いようにはしないから」。

そして、コスト・パフォーマンス計算DALYマーケッティング技法といった
ビジネス・モデルの保健医療施策を自由に展開していくのでした……。


ゲイツ財団の“愛”で「めでたし、めでたし」と、みんな納得してしまうけど、
この話、どっか、とても根本的なところが、恐ろしくヘンなのでは……?


2009.12.15 / Top↑
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