2ntブログ
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
--.--.-- / Top↑
記事の書き出しが、まず
「あまたある恐ろしい慢性病の中で、たった一つ、
重症の腎臓病だけが連邦政府の特別扱いを受けている」。

年齢や支払い能力を問わず腎臓不全の患者にはタダ同然の医療をと、
39年前に法律が作られた時には、

その後に高齢者がこんなに長生きするようになるなんて想定外だったし、
もともとは若い人やせいぜい中年が人工透析によって元気になり
働いて生産的な人生を長く送ることができるようにと意図されたものだった。

それなのに、多くの高齢者が長生きするようになって、
そのためにあっちもこっちも合併症だらけで
人工透析をしたからといって、治るわけでもなければ
さほどの延命効果があるわけでもないのに
患者の自己選択だからというだけで高価な人工透析が行われている。

今年、米国が重症の腎臓病患者の人工透析に費やすコストは
400億から500億ドルと言われる。

今では毎年100万人に400人以上の割合で人工透析患者がおり、
その3分の1は65歳以上の患者で、そこに経費の42%がつぎ込まれている。
75歳以上の透析患者も増える一方だが、彼らは高齢者の常で
糖尿病、心臓病、脳卒中、進行した認知症すら抱えている。

そういう重症な慢性合併症を抱える高齢患者は
透析をしたところで長くは生きられない。

透析をやっても余命が1年そこそこと見られる、そういう高齢患者には
人工透析をやらずにホスピスを選択しろというのが言いにくければ
「人工透析なしの医療マネジメント」という新たな名称を使ってはどうか。

それによって
何もせずに死なせるためにホスピスに送るわけじゃないですよ、
ちゃんと緩和ケアをしてあげますよ、というメッセージを送ってはどうか。

When Ailments Pile Up, Asking Patients to Rethink Free Dialysis
The NYT, March 31, 2011


例えば、どういう経緯でかターミナルになって、
人工透析が本人にとって負担にしかならないから
やめておいた方が本人のためだというケースがある……というのは分かる。

そういう患者さんにも、病院の利益だとか、家族の無理解その他なんらかの理由で
本人を苦しめるだけの過剰医療が行われているなら、それは止めた方がいいと私も思う。

だけど、それは、以下のエントリーで書いたように、
日本の尊厳死合法化議論を巡る4つの疑問(2010/10/28)

「個別の判断をもっと丁寧にして過剰医療はやめましょう」という筋の話であって、
「コストがかかるから、どうせ長生きしない合併症のある高齢者には諦めてもらおう」と
線引きの話とは、本来筋が違うだろう、と思う。

それに、この記事を読んで単純に疑問に思うのは
そういう患者に人工透析をしてもせいぜい1年ほどのことなのなら
彼らを切り捨てて浮くコストというのも全体に占める割合は小さいはず。

この点は、シアトルこども病院のWilfond医師が
障害児への医療切り捨てを主張するFostらへの反論として
「医療費全体で考えれば、大した額ではないのだから
コストを主たる問題にして子どもの医療を考えるのは止めよう」と
提案していたことに通じていくのでは。

(もっとも、それは07年の話であって、その後の展開を考えると
今のWilfond医師が同じことを言うとも思えない節はあるけど)

もちろん、この記事のような話が次々に出てくることで
「それでも私はやりたい」とは言いにくい空気が広がっていくだろうし、
現場のあれこれや、担当医師の説明姿勢も当然影響されてくるだろうから、
間接的なコスト削減効果はそれを上回って大きくなるんだろうし、
狙われている効果は、むしろそちらなのかもしれないとも考えてみたりするけども。


【関連エントリー】
「功利主義はとらない」……南アフリカの人工透析患者選別委員会の模索(2010/12/17)

この12月17日のエントリーの最後に触れているNHKの
クローズアップ現代の「ある少女の選択」での人工透析拒否については、
こちらの補遺に、ちょっとだけ書いています ↓
http://blogs.yahoo.co.jp/spitzibara/62289982.html


このケースを巡るNHKの表現の選択に見られるように、

「人工呼吸器や胃ろうや人工透析によるケアを受ければ
それなりのQOLで生きていくことができる」ことをもって
乱暴にひとくくりに「延命」と称する場面が日本でも
目についてきたのはとても危険なことではないかと
私は感じています。
2011.04.08 / Top↑
Secret

TrackBackURL
→http://spitzibara.blog.2nt.com/tb.php/2387-05344ce5