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今日の午後、スイスの住民投票の日本語ニュースを検索していた際に、

「妙なもの」というべきか「面白いもの」というべきか、
なにしろ「おや? おやおや、おや~ぁ?」と尻上がりに語尾が伸びそうな文書に
行き当たってしまいました。

インターネットってな、いろいろと、まさに“お宝”の宝庫ですね。

今回、全くの偶然に掘り当ててしまった“お宝”はこちら ↓
http://www.kals.jp/kouza/igakubu/news/pdf/2010/A.2.3.pdf

2ページ。タイトルは、シンプルに「A.2.3」。
内容は、世界のPAS(医師による自殺幇助)の概要を取りまとめたもの。

ただ、検索でPDF文書に行き当たるとよくあるように、
どこの誰が出した、どういう性格の文書であるかの情報が
そのページ内に含まれていない「名無しのゴンベさん文書」。

でも、内容が尊厳死法なので、気になって読んでみると、まず、その詳細なことに驚く。
例えば、こんな一見どうでもよさそうなことまで書いてある。

前ワシントン州知事、ブース・ガードナーは、パーキンソン病で、この病気自体は尊厳死法のもとでは、末期的疾患とは考えれていないが、法案を発議し、キャンペーンの陣頭に立ち、大口の寄付者にもなった。



それから、オレゴンの尊厳死法の実態について

1998~2007 年の間に医師等は致死量の薬剤投与の処方箋を総計541 枚書いたが、そのうち341 名が薬剤の摂取により死亡している。処方箋を受け取っても13名の患者は2007年末の時点で生存しており、処方箋を受け取った残りの患者は、結局、本来の病気が原因で亡くなっている。致死量の薬剤を摂取した後に、亡くなった患者グループの年齢中央値は69 歳であり、ほとんどすべてが白人で比較的、教養のある人達であった。ODHS のデータによると、グループの構成は男性のほうがやや多くなっている。約86%がホスピスに在院しており、81.5%が末期癌患者であった。

自ら行う医療の本質からか、あるいは個人的に(自殺幇助に)関わることに反対しているために、オレゴン州の多くの医師はこれまで致死量の薬剤を投与する処方箋を書いてはいない。2007 年に、45 人の医師が85 枚の処方箋を発行している(医師によって1枚から10 枚の幅がある)



こういう詳細を見ると、
毎年オレゴン州の保健当局から出される報告書の
たぶん2008年当たりの内容から拾っていると思われ、
「お、本気ね、あなた……」と唸るわけですが、

そのくせ、オレゴン州とワシントン州の対象者要件については、
詳細がなくて、ごく雑駁な説明で済まされていたりする。

なので、最初の印象は「なんだか、まだらに詳細だなぁ……」というものだった。

たぶん書いた人がたまたま手に入れた何本かの情報から
さささっと取りまとめて書いたもので、手元にたまたま詳細があった情報だけが詳細、
それで「まだらに詳細」という印象になるのかなぁ……と勝手な推理をしつつ、
読み進んで後半にさしかかると、

オレゴン州の尊厳死法施行は成功しているが、2007 年に致死量の薬剤を処方された85 人の患者が誰一人として、精神科医の評価を受けるように指図されていないということに対しては、懸念を覚える。



と、「名無しのゴンベ」さんが「懸念を覚える」と、いきなり個人の声になって力む。

この段落ではこの後も引き続き精神障害者に処方されたケースがあることが述べられていて、
じゃぁ、「懸念を覚える」あなたは、どういう立場の、いったい誰・・・?

不当な処方がされたケースがあると指摘し「懸念がある」と力みつつ
それでも「尊厳死法施行は成功している」って、どーゆーこと?

更に、それに続く結論部分では、

医師達は、自ら死を早めることを願う末期患者へ致死量の薬剤を処方するということに反対し続けるだろう。それにもかかわらず、ワシントン州の発議案が支持され、他州でも同様の法的な変更が起きる可能性があることで、医療関係者には、末期医療を改善し続けるために為しうることを見極める機会が与えられるのである



ここ、「ワシントン州の」から「与えられるのである」まで下線が引かれている。
(ここではゴチックにしてみました。)

この下線部、文脈から考えて、その意味するところは、要するに
「ワシントン州以外にも広がって行くなら、
医療職は末期医療の改善策として考えてみましょうね」ですね……。

ふ~む。興味深い結論だなぁ……。

そう思って振り返れば、真ん中あたりに
オレゴンで尊厳死法が出来たのは緩和ケアが改善されたからだ、と主張する段落もある。

そこには具体的なデータや情報は一切、全くないんだけど、
オレゴンでは医師が終末期の緩和ケアや在宅医療に秀でていて
死にたいと考えるような劣悪なケアを受ける患者が減ったから尊厳死法を作れたのだと
たぶん言いたいんだろうな……という感じの段落。
この段落が一番説得力に乏しいんだけどね。

これって……「まだらに詳細」なだけじゃなくて、「偏ってる」のか……?

だって、緩和ケアについていうなら、
オランダでは合法化以降、緩和ケアは崩壊していると前の保健相が言っているし、
「抗がん剤はダメだけどPASはOK」というのはオレゴンについては有名な話。
そういうのを全部はしょって、「成功している」って?

で、この文書、2ページめまで行くと、「回答例」なるものに出くわす。
ただし、問そのものは存在しない。

問1の回答例は面倒くさいから省いて、
問2と問3の回答例は、

問2 オレゴン州においては、医師による致死薬の処方が合法化されることによって、緩和治療の内容が改善されるという効果を生んだ。効果的な緩和治療やホスピスサービスは、患者が医師に自殺幇助を求める理由の多くに対応し、ひいては患者の自殺意思さえも変えうるということ。

問3  患者が法的判断をできる状態にあること、自発的に判断していること、十分な説明を受けた上で判断していること。



実は問2の回答の前半は、本文の内容の逆なんですわ。

本文は「緩和ケアが良くなったから尊厳死法が出来た」という趣旨なのに
回答例は「尊厳死法が出来たら緩和ケアが良くなった」と答えている。
さらに言えば、回答例の前半と後半の因果関係がムチャクチャ。
これ、本当ならペケ回答のはずなんだけど、なぜかこれが「回答例」。

で、問4のところには「訳例参照」とあるので、
ああ、さっきの下線部のことか……。

なに、これ? まさか、どこかの大学の医学部の試験問題とか……?
え、でも、それじゃぁ医学部の教育って、こんなに情報が偏向しているの……?
これで医学生に「米国の尊厳死法」とかって教育されたら、それって情報操作では……?

……と気になったので、
先のPDFのアドレスから、あれこれ検索してみたところ、
どこの医学部でもなくて、なんと河合塾! でした。

河合塾の中に「医学部学士編入コース」ってのがあるみたい↓
http://www.kals.jp/kouza/igakubu/index.html

Web講座とか公開実力テストとか通信講座とか公開模試とか、
いろいろあるみたいだから、上の「A.2.3」もそんな中の文書だったのでは?

訳例とあるから、もしかしたら英文の長文問題の日本語訳だったのか?

しかし、そういうことかぁ……と了解して改めて読み直してみると、
つくづく妙な解説文だと首をかしげてしまう。

どんなふうに妙か……というのが、
なかなか言葉で説明しにくいのだけど、

例えていうならば、Biedermanスキャンダルについて
以下のような問題文が作られているのを見せられた、みたいな……。

巨額のカネが顧問料として支払われたのは事実である。Biederman先生が2歳児だって双極性障害は診断できる、抗精神病薬を多剤投与して構わない、と論文や講演で言いまわったために、そういうのが流行になって子どもへの処方量が跳ね上がったことに懸念はある。

しかし、それでもBiederman先生の功績と権威は揺るがない。もちろん、それを疑う声は続くだろう。にもかかわらず、他の多くの著名児童精神科医が幼児期から双極性障害を診断し多剤投与を続ける可能性によって、医療関係者には、子どものメンタルヘルスを改善するために為し得ることを見極める機会が与えられるのである。

2011.05.17 / Top↑
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