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「介護保険情報」誌の連載8月号に掲載することになったため
仮訳そのものは9月まで一旦閉じさせていただいていますが、

今年の英国のケアラーズ・ウィーク(介護者週間)のテーマ
「介護者の本当の顔」について7月5日のエントリーで取り上げた際、

そこで、このテーマのココロを、なんとも見事な“身勝手な豚”の語りで
描いてみせてくれたのは、ハンチントン病の妻の介護をしているHugh Marriottさんでした。

そのエントリーを機に、Marriottさんが
「“身勝手な豚”の介護ガイド」というタイトルの本を出していることを知り、
さっそく取り寄せて読んでみました。

思った以上に厚かったけど、良い本でした。

良いとかどうとかいうよりも、なによりも、
こんなにも介護者のホンネを正直に書いてくれた人が今までいただろうか……。

表紙には、英国で一番老舗の介護者支援チャリティ
the Princess Royal Trust for Carers の幹部の推薦の言葉があり
「20年も前から欲しかった本。初めて介護者になった時に私はこの本を読みたかった」

なにしろ、
ちゃんと1つの章を割いて書かれているテーマの一部を挙げてみると、

お役所(専門家)の世界
セックス
介護者の身体
燃え尽き
自立のジレンマ
キタナイもの(主としてウンコ)
階段から突き落としてやりたい気持ち (誰をって、そりゃ自分が介護している相手を、です)


妻がハンチントン病を発病したと分かった時、
Marriott氏は経営していたPR会社をたたみ、家を売って帆船を買い、
2人で世界放浪の旅に出たと言います。

妻を介護しながらの旅も9年に及び、
とうとう妻の身体が航海に耐えられなくなってきた時、
2人は英国に戻り、本格的な介護生活を始めたとのこと。

なぜMarriott氏が自らを含めた介護者を“身勝手な豚”と称するのかについて、
本書を通じて書かれている、そのワケを、私自身の言葉で大まかに取りまとめてみると、

誰かを介護していると、
「もっとしてあげたい」ことと「でも現実には自分の苦しさでそこまでできない」現実との
板ばさみになって、自分はなんて酷い人間なんだろう、と罪悪感を覚える。

それに介護者としての役割だって最初から進んで引き受けたわけではなく
自分がこんなハメに陥るなんて想像したことすらなかった。
だから、どこかで「こんなはずじゃなかった」という思いがぬぐいきれないし、
本人のせいじゃないと分かっていても、こいつの障害さえなければ……と、
つい頭の中をつぶやきがよぎっていくこともある。

かつて人並みに働いて、それなりの収入を得ていた自分と
介護のために仕事をやめて無収入になり、家事労働みたいなことに明け暮れる今の自分を引き比べると、
なんだか「自分の人生も失敗に終わっちまった」観が強いし、自尊感情がどうしても下がってしまう。

前だって、そんなに大した人生だったわけでもないけど、
でも、自分の人生ですらない、結局は他者の人生だもんね、これって。

ただ、目の前の妻をつくづくと見やれば、
こいつだって思いがけない障害を負うことになり、
辛いのは自分よりも相手の方だと分かってもいるし

だから、また、
こんなにグズグズとネガな考えに囚われる自分は
なんて身勝手なイヤな人間なんだ、まるで豚みたいな奴だと嫌気がさしてしまう……


冒頭、読者に向かっても彼は、
「この本を手に取ったということは、
あなたも自分を“身勝手な豚”だと感じてるんだよね?」と語りかけ、

「でも実はそれは勘違い。だって、
本当に“身勝手な豚”なら、こんな本を手に取ったりしない」と。
2011.07.24 / Top↑
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