先天性筋無力症症候群(CMS)の1歳男児 Baby RBの治療を巡って、
QOLが低すぎて救命は本人の利益にならないので「穏やかに静かに尊厳のある死に方を」と
基本的な生命維持の停止を求める病院側と母親に対して、
QOLが低すぎて救命は本人の利益にならないので「穏やかに静かに尊厳のある死に方を」と
基本的な生命維持の停止を求める病院側と母親に対して、
RBは呼吸器こそ必要としているが脳そのものに損傷はなく、
絵本の読み聞かせや遊びに反応している、
気管切開さえしてもらえれば家につれて帰ってケアできると
救命を主張する父親とが対立し、訴訟となっている。
絵本の読み聞かせや遊びに反応している、
気管切開さえしてもらえれば家につれて帰ってケアできると
救命を主張する父親とが対立し、訴訟となっている。
夫婦は既に「友好的に」離婚。
裁判所は当面、
病院に対して気管切開に関するアセスメントを命じた(土曜日の予定)。
来週、5日間の審理が予定されている。
病院に対して気管切開に関するアセスメントを命じた(土曜日の予定)。
来週、5日間の審理が予定されている。
英国のCMS患者は約300人で、
出生後まもなく亡くなる人もあるが薬でほぼ正常な生活を送れるようになる人も。
出生後まもなく亡くなる人もあるが薬でほぼ正常な生活を送れるようになる人も。
この事件に関して、
Telegraph紙の宗教欄の編集長で、
ジャーナリズム教会として名前を売っているロンドンの英国教会の司祭さんが
奇妙に中立的ではあるものの、非常に正鵠を得た警告でもあるエッセイを書いています。
Telegraph紙の宗教欄の編集長で、
ジャーナリズム教会として名前を売っているロンドンの英国教会の司祭さんが
奇妙に中立的ではあるものの、非常に正鵠を得た警告でもあるエッセイを書いています。
ざっと、こんな感じ。
この状況は両親のいずれにとっても病院職員にとっても苦しく、
裁判の結果がいずれの判断を行ったとしても関係者は重い荷を背負うことになろう。
しかし、英国の看護(nursing)が意図的に誰かの命を奪ったことは未だかつていない。
もはや無益だと判断された時に薬や治療を中止してきただけだ。
Baby RP のケースでも、治療の有益・無益の判断が行われなければならない。
彼の命に他の我々と同じ価値があるかどうかの判断になってはならない。
裁判の結果がいずれの判断を行ったとしても関係者は重い荷を背負うことになろう。
しかし、英国の看護(nursing)が意図的に誰かの命を奪ったことは未だかつていない。
もはや無益だと判断された時に薬や治療を中止してきただけだ。
Baby RP のケースでも、治療の有益・無益の判断が行われなければならない。
彼の命に他の我々と同じ価値があるかどうかの判断になってはならない。
裁判所が気管切開のアセスメントを命じ、
それが、この土曜日に行われるということは
病院側はそのアセスメントを行うことなく、つまり
他の選択肢の可能性をすべて検討しないまま生命維持停止を求めている
と思えることも気にかかるのですが
それが、この土曜日に行われるということは
病院側はそのアセスメントを行うことなく、つまり
他の選択肢の可能性をすべて検討しないまま生命維持停止を求めている
と思えることも気にかかるのですが
記事には「基本的な生命維持」とあるので、呼吸器の取り外しだけではなく
栄養と水分の供給停止も含まれているものと思われます。
その場合、気管切開が可能だとしても、争点そのものは
大きく変わらない可能性があるのではないか、という点が気になるところ。
栄養と水分の供給停止も含まれているものと思われます。
その場合、気管切開が可能だとしても、争点そのものは
大きく変わらない可能性があるのではないか、という点が気になるところ。
万が一、気管切開が出来ず呼吸器を外された後に、
あのカナダのKayleeちゃん(文末にリンク)のようにRB君が自力で呼吸できたとしても、
栄養と水分を断たれてしまったら、彼は死ぬほかないのでは?
あのカナダのKayleeちゃん(文末にリンク)のようにRB君が自力で呼吸できたとしても、
栄養と水分を断たれてしまったら、彼は死ぬほかないのでは?
また、「無益な治療」論とは
「救命の可能性がないのに本人に苦痛を強いる」治療を「無益」としていたはずなのに、
それが「救命」の可能性ではなく「一定のQOL」の可能性に
いつのまにか摩り替わってしまっていることも要注意。
「救命の可能性がないのに本人に苦痛を強いる」治療を「無益」としていたはずなのに、
それが「救命」の可能性ではなく「一定のQOL」の可能性に
いつのまにか摩り替わってしまっていることも要注意。
つまり、「QOLが低いこと」が本人利益に反する点で「死」と同一視されている。
そして、何より、不思議でならないのは、
どうして父親が「この子はちゃんと分かっているんだ、知的には遅れていないんだ」と
証明する必要を感じているのか、ということ。
どうして父親が「この子はちゃんと分かっているんだ、知的には遅れていないんだ」と
証明する必要を感じているのか、ということ。
いったい全体、RB君の救命治療の停止の根拠は
救命可能性の低さなのか?
可能性の低い救命による本人の苦痛なのか?
それともQOLに置き換えられた彼の障害の重さなのか?
それとも、その障害の重さも、実は知的能力の低さなのか?
救命可能性の低さなのか?
可能性の低い救命による本人の苦痛なのか?
それともQOLに置き換えられた彼の障害の重さなのか?
それとも、その障害の重さも、実は知的能力の低さなのか?
「いずれにせよ救命できない」なら無益な治療……から
「救命できてもQOLが低すぎる」なら無益な治療……に摩り替わる時、
そのQOLとは、暗黙のうちに一定レベルの知的機能・能力のことだからこそ、
父親側が「救命に値するだけのQOLはある」と主張しようと、
「絵本を読んでやったり音楽をかけてやると喜ぶんだ」と強調しているのだとすれば、
「救命できてもQOLが低すぎる」なら無益な治療……に摩り替わる時、
そのQOLとは、暗黙のうちに一定レベルの知的機能・能力のことだからこそ、
父親側が「救命に値するだけのQOLはある」と主張しようと、
「絵本を読んでやったり音楽をかけてやると喜ぶんだ」と強調しているのだとすれば、
「無益な治療」とは「一定の知的レベルに達することのない人を救命する治療」なのか?
いつのまに、そんな概念の飛躍がまかり通るようになったのだろう?
いつのまに、そんな概念の飛躍がまかり通るようになったのだろう?
さらに、これはAshley事件を始め、多くのところで起こっている認識不足なのだけれど、
この記事に寄せられたコメントでも非常に気になることとして、
この記事に寄せられたコメントでも非常に気になることとして、
しかし、重い障害があることそのものは、
本人にとって生きている一刻一刻が苦痛であることを意味するわけではありません。
本人にとって生きている一刻一刻が苦痛であることを意味するわけではありません。
CMSであっても薬によって通常の生活を送れる人もいるように
RB君がCMSに生まれついたという事実がそのまま彼が生きている一刻一刻が苦痛に満ちていることを
意味するわけではありません。
RB君がCMSに生まれついたという事実がそのまま彼が生きている一刻一刻が苦痛に満ちていることを
意味するわけではありません。
また、病院が「QOLが低すぎる」と主張する時、
QOLが一体何を意味するのか曖昧ですが、
「QOLの低さ」と、本人が生きていることを苦痛と感じるかどうかとも、また別問題。
QOLが一体何を意味するのか曖昧ですが、
「QOLの低さ」と、本人が生きていることを苦痛と感じるかどうかとも、また別問題。
それなのに「QOLの低さ」が救命・生命維持停止の法的根拠とされるなら
その「QOL」は、まず、きちんと定義されなければならないし、
その「QOL」は、まず、きちんと定義されなければならないし、
定義されたQOLの低さが、一体どういう論理で救命・生命維持停止を正当化するのかも、
きちんと明示されていなければならないと思う。
きちんと明示されていなければならないと思う。
【12日追記】
その後、Telegraphにこの司祭さんの記事があり、
どうやら専門家のアセスメントで治療は無益だとの判断が出て、
父親の方が訴えを取り下げたようです。詳細はよく分かりませんが、この記事を以下に。
その後、Telegraphにこの司祭さんの記事があり、
どうやら専門家のアセスメントで治療は無益だとの判断が出て、
父親の方が訴えを取り下げたようです。詳細はよく分かりませんが、この記事を以下に。
【16日追記】
このケースについて、
筋ジス・キャンペーンというアドボカシー団体からプレス・リリースが出ています。
このケースについて、
筋ジス・キャンペーンというアドボカシー団体からプレス・リリースが出ています。
結果的に父親が呼吸器のスイッチを切ることへの反対を取り下げたが、いずれの側にも大きな傷を残した、と
筋肉の病気の患者と家族に向けて、無料相談窓口の情報を付記。
筋肉の病気の患者と家族に向けて、無料相談窓口の情報を付記。
Statement On The Baby RB Case – Muscular Dystrophy Campaign
The Medical News Today, November 15, 2009
The Medical News Today, November 15, 2009
【17日追記】
日本語版CNNにニュースが出たようです。
父親がどうして訴えを取り下げたのか、その理由が昨日まで分からなかったのですが、
RB君の肺に水がたまって窒息の原因になっていることが明らかになったとのことなので、
それが理由だったのでしょう。
http://www.cnn.co.jp/world/CNN200911160009.html
日本語版CNNにニュースが出たようです。
父親がどうして訴えを取り下げたのか、その理由が昨日まで分からなかったのですが、
RB君の肺に水がたまって窒息の原因になっていることが明らかになったとのことなので、
それが理由だったのでしょう。
http://www.cnn.co.jp/world/CNN200911160009.html
【19日追記】
この人の書くものは、いつも長いので、まともに全部を読めていませんが、
当ブログでおなじみの障害当事者ブロガーのBad Crippleさんが
RB事件でエントリー2本書いています。
この人の書くものは、いつも長いので、まともに全部を読めていませんが、
当ブログでおなじみの障害当事者ブロガーのBad Crippleさんが
RB事件でエントリー2本書いています。
どうも、彼も、やっぱり判事に
「重い障害のある生は苦痛に満ちて生きるに値しない」との偏見があったのでは、と
懸念している様子です。
「重い障害のある生は苦痛に満ちて生きるに値しない」との偏見があったのでは、と
懸念している様子です。
【26日追記】
chiemimamaさんのブログに、関連記事がアップされていました。
RB君は16日に亡くなっていました。
chiemimamaさんのブログに、関連記事がアップされていました。
RB君は16日に亡くなっていました。
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同じく「助かってもQOLが低すぎるから」という理由で
危うく心臓ドナーにされかけたのだけど、呼吸器を外しても生き続けた
カナダのKayleeちゃん事件について、以下に。
危うく心臓ドナーにされかけたのだけど、呼吸器を外しても生き続けた
カナダのKayleeちゃん事件について、以下に。
2009.11.06 / Top↑
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