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英国で、50代と見られるダウン症の男性AWAさん(仮名)が、
入院した2つの病院で立てつづけに、障害を理由に、
本人にも家族にも無断で、DNR(蘇生無用)指定にされて、

男性の親族が、
2つ目の病院を訴えている。


AWAさんは両親が50年間世話をした後に
2010年暮れに入所施設に入った。

2011年8月に胃ろうの修正で入院し、
9月にも同じく胃ろうの不具合で再入院。

退院時に、カバンの荷物に紛れ込んでいたDNR指定用紙を
介護職員が見つけた。

施設が「地域の知的障害看護師」に通報し、
看護師が病院に電話をして担当医を問い詰めたところ、
医師の返事はだいたい;

この年齢のダウン症候群の人だと、限られた資源でもあり、
ダウン症の人は一般よりも早く老化するし、心臓にも問題があるし……といったものだった。

その後、AWAさんはKentの別の病院に肺炎で入院。
ここでもDNR指定を取り消してもらうには
先の看護師が交渉しなければならなかったという。

今回、訴えられているのはこちらの病院。

AWAさんのDNR指定の用紙には理由として
「ダウン症候群」「嚥下不能(AWAさんは胃ろうだった)」「寝たきり」「知的障害」が
挙げられていたという。

担当医はAWAさんには十分な知的能力がないと判断したため
この指定について患者本人とは話をしておらず、
「連絡がつかない(unavailable)」と理由で近親者にも知らせていなかった。

(記事に一か所、「認知症もある」との記述があるのだけど、
それ以外のところでは一切言及がなく、上記の「理由」にも含まれておらず
その辺りの事情が、ちょっと、よく分からない)

DNR指定を家族に連絡したかどうかを記入する欄は、空欄のままだった。

なお、AWAさんは現在も生きていて、
入所施設で暮らしている。


担当の弁護士事務所では
「ダウン症と知的障害を理由に
救命治療を差し控えるなんて、もう明らかな差別です」

以前、知的障害者への医療差別についてオンブズマンの報告書をまとめたMencapでは、
「深刻な問題です。……組織的差別です」

なお、2カ月後には
Addenbrooke病院で亡くなったJanet TraceyさんのDNR指定をめぐる訴訟で、
ロンドンの高等裁判所が法的調査を行うことになっているとのこと。

Janet Traceyさんの事件についてはこちらに ↓
「本人にも家族にも知らせず“蘇生無用”はやめて一律のガイドライン作れ、と英国で訴訟(2011/9/15)


Family of Down’s patient sue hospital over DNR order
The Guardian, September 13, 2012


英国では、ここ数年、
本人にも家族にも知らせずに一方的にDNR指定がされるケースが激増している ↓
“終末期”プロトコルの機械的適用で「さっさと脱水・死ぬまで鎮静」(英)(2009/9/10)
肺炎の脳性まひ男性に、家族に知らせずDNR指定(英)(2011/8/3)
高齢者の入院時にカルテに「蘇生無用」ルーティーンで(英)(2011/10/18)
高齢者には食事介助も水分補給もナースコールもなし、カルテには家族も知らない「蘇生無用」……英国の医療(2011/11/14)
ケアホーム入所者に無断でDNR指定、NHSトラストが家族に謝罪(英)(2012/5/8)


Mencapの調査と批判についてはこちら ↓
「医療における障害への偏見が死につながった」オンブズマンが改善を勧告(2009/3/31)
オンブズマン報告書を読んでみた:知的障害者に対する医療ネグレクト
Markのケース:知的障害者への偏見による医療過失
Martinのケース:知的障害者への偏見による医療過失
「NHSは助かるはずの知的障害者を組織的差別で死なせている」とMencap(2012/1/3)


米国の実態はこちら ↓
障害者への医療の切り捨て実態 7例(米)(2012/6/26)


心肺蘇生をめぐる生命倫理の議論についてはこちら ↓
「無益な心肺蘇生は常に間違いなのか?」とTroug医師(2010/3/4)
「医師は患者本人の同意なしにDNR指定してもよいか」Bernat論文(2012/4/11)
加藤太喜子「『医学的無益』はいかなる場面で有効な概念か」メモ(2012/5/9)
2012.09.15 / Top↑
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