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昨日のエントリーで掘り出してきた過去の補遺の断片を見ていたら、
読みたいと思ってそのままになっていた去年12月のProPublicaの記事が
とても気になってきたので、読んでみた。

これまで向精神薬や骨減少症や心臓ステントなどを巡って報じられてきたスキャンダルの構図と全く同じで、
具体的な名前や数字をイチイチ挙げるのも空しい気分なのだけれど、我慢して一応整理してみる。

なお、鎮痛剤関連のこれまでのエントリーは以下 ↓
“薬の自動販売機”医師が被害者の親から訴えられて「法制度を悪用するな」と逆訴訟(2011/8/28)
ビッグ・ファーマのビッグな賠償金(2012/7/4)


今回の記事で問題になっているのはオピオイド鎮痛剤の過剰処方と、
その背景にある製薬会社のえげつないマーケティング。

ビッグファーマ自前の患者支援団体と、
ファーマと癒着した専門家とによる……。

(オピオイドと麻薬とは違いがあるようなのですが
記事では表現が混在しており、私には区別して使うことが難しいので
ここではオピオイドで通しますので、あしからずご了解ください)

まず問題の深刻さを記事から拾ってみると、

米国でオピオイド鎮痛剤の過剰摂取で死ぬ人は年間15000人に近く、
ヘロインとコカインによる死者を合わせてもこれには及ばない。
州によっては年間の交通事故死より多い。

去年1年間で、米国では85億ドルものオピオイド鎮痛剤が売れた。
全アメリカ国民が1日中、1カ月間に渡って使っていられる量だという。

そのうち31億ドル分が OxyContin。
2006年の7億5200万ドルから売上が急増していることが分かる。

他では、Vicodin, Percocetなど。

CDC(米国疾病予防管理センター)のディレクターは
「今現在、医療全体がオピオイド漬けになっている。
オピオイドは依存性があって、依存症を起こす薬なのに」

2005年にVI州で、薬の違法売買で50の罪で起訴されたWilliam Hurwitz医師の裁判がすごい。
一人の患者に1日に1600錠もの Roxicodone鎮痛剤を処方したという。

また、過剰処方で依存症になった患者からの集団訴訟や
Purdue社がOxyContinのリスクを隠したとして患者が訴えたことも。

こうした訴訟で、法廷の友の意見書を出したり、
関係者である医師に専門家として証言させるなどして介入し、

また米国議会が規制に乗り出そうとするたびに、それら専門家を使ったロビー活動で
「痛みに苦しんでいる患者が困ることになる」と訴えて抵抗してきたのが

記事が問題にしている the American Pain Foundation(APF)。

APFは、痛みに苦しむ患者の米国最大のグラス・ルーツのアドボケイトを謳い、
依存リスクは大げさに言われ過ぎている、
鎮痛剤はまだ十分使われていない、と主張する。

公式サイトの患者へのガイドでは、
やはりオピオイドのリスクは控えめに、利益が過大に書かれている。
慢性痛に効くエビデンスは少ないという情報はどこにもない。

その著者は、上記、訴訟やロビー活動で大活躍の疼痛専門医。
このガイドの内容については、APFそのものが
「最先端の知見からは遅れているのでアップデイトが必要」と認めているそうな。

活動資金の約9割が製薬会社から出ている。
理事の中には製薬会社との金銭繋がりがある研究者や医師が含まれており、
そのうちの一人は、製薬会社Cephasonの資金で研究をして
癌患者にのみ認可されている同社の鎮痛剤が癌患者以外にも安全であると
同社社員と共著論文を書いていたりする。

しかし、その一人で、APFのトップだったScott Fishman医師は
退任することになったとたんに「私はずっとAPFの主張と同じ意見だったわけではない。
オピオイドは使われ過ぎているし、依存性もあると思う」。

Physicians for Responsible Opioid Prescribing
(責任をもってオピオイドを処方する医師の会)という組織があるというのもすごいけど、
その会を率いる医師は、議会が操作されてしまう背景に、
APFはオピオイドを作っている製薬会社そのものだということを
政治家が知らないからだ、と指摘。

ついでに追記しておくと、FDAの薬の安全とリスク管理諮問委員会の委員長は
「製薬会社のカネをもらっていて、患者のアドボカシー団体として活動していれば、
必然的にバイアスがかかっている。そういうところの言うことは私は全部マユツバで聞きますね」

以下、2つ目の記事には、
オピオイド鎮痛剤のプロモで、向精神薬でのBiederman医師のような役割を担ってきた
Scott Fishman、Perry Fine 両医師の製薬会社との金銭繋がりと、
それらの製薬会社のプロモへの貢献活動の詳細が報告されている。

The Champion of Painkillers
ProPublica, December 23, 2011
Two Leaders in Pain Treatment Have Long Ties to Drug Industry
ProPublica, December 23, 2011


【いわゆる“Biedermanスキャンダル”関連エントリー】
著名小児精神科医にスキャンダル(2008/6/8)
著名精神科医ら製薬会社からのコンサル料を過少報告(2008/10/6)
Biederman医師にさらなる製薬会社との癒着スキャンダル(2008/11/25)
Biederman医師、製薬業界資金の研究から身を引くことに(2009/1/1)

【その他、08年のGrassley議員の調査関連】
抗ウツ剤めぐる研究者と製薬会社の癒着スキャンダル報告書(米国)(2008/11/17)
抗ウツ剤めぐる研究者と製薬会社の癒着スキャンダル報告書 Part2(2008/11/23)
今度はラジオの人気ドクターにスキャンダル(2008/11/23)

最近のものでは例えば、↓
「製薬会社に踊らされて子どもの問題行動に薬飲ませ過ぎ」と英国の教育心理学者(2011/1/18)
ジェネリックを売らせないビッグ・ファーマの「あの手この手」が医療費に上乗せられていく(2011/11/15)

あと、この問題を一貫して調査し報道しているProPublicaのシリーズの一つがこちら。↓
(ここにも鎮痛剤関連のスキャンダルが出てきています)
ProPublicaが暴く「ビッグ・ファーマのプロモ医師軍団の実態」(2010/11/2)


【骨減少症関連エントリー】
骨減少症も“作られた”病気?……WHOにも製薬会社との癒着?(2009/9/9)
更年期は、ビッグ・ファーマの提供でお送りしました……(2009/12/14)
ビッグ・ファーマが当てこむ8つの“でっちあげ病”(2010/4/17)

【米不整脈学会、高血圧学会を巡るスキャンダル関連エントリー】これもGrassley議員の調査で明らかに
学会が関連企業相手にショーバイする米国の医療界(2011/5/11)
1つの病院で141人に無用な心臓ステント、500人に入れた医師も(2011/5/15)
2012.10.21 / Top↑
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