安楽死のすべり坂を転げ落ちているとしか思えないニュース(詳細は文末にリンク)が相次ぐ
ベルギーから、またもイヤ~なニュース。
コトの起こりは去年10月、
カトリック系大学の精神科教授で性科学と摂食障害の世界的権威、
Walter Vandereycken医師に長年ささやかれてきた患者への性的虐待の疑惑が
テレビ番組で事実と暴かれた。
教授自身も複数の患者と不適切な性的関係を持ったことを認めて、
大学は同教授を停職処分とした。
その時の記事がこちら ↓
Leuven University psychiatrist admits improper sexual relations
Ecpatica.com, October 10, 2012
このスキャンダルを暴いたのは
彼の患者の一人である Ann G. さんだった。
Ann G.さんは番組に登場し、
自分を含め複数の患者が被害に遭ったと訴えた。
Ann G.さんには2007年に早くも自殺したいと語った事実があり、
昨年、番組に登場した際にも既に安楽死希望の手続きを済ませているようだった。
被害をカムアウトしたことで一旦は心が安らいだようにも思えたが、
その後、加害者がさほどの懲罰を受けなかったことに、いたく失望し、
番組に出た数カ月後に、別の心優しい精神科医によって安楽死した。
Ann G.さんの死によって
Vandereychken医師に不当なスティグマが負わされている、と
報道などに抗議する向きもあるようだけれど、
BioEdgeのCookは、以下のように書いている。
斜め目線の人なら、ベルギーの精神科医は利益の相反に鈍感だと言いたいことだろう。一人の精神科医が心を病んだ女性に手を出し、崖っぷちに立っている人の背を押すようなことをする。その女性が法廷で彼に不利な証言をできないように、別の精神科医が手を貸す。Vandereychken医師は仕事に復帰してプライベートな患者(開業したという意味?)を診察し始めている。その一方でAnn G.さんは死んだ。しかしベルギーの国民は、こういう出来事に慣れていかねばならない。
Another speed bump for Belgian euthanasia
BioEdge, February 8, 2013
【関連エントリー】
ベルギーで2年前にロックトインの女性、「安楽死後臓器提供」(2010/5/9)
ベルギーの医師らが「安楽死後臓器提供」を学会発表、既にプロトコルまで(2011/1/26)
ベルギーの「安楽死後臓器提供」、やっぱり「無益な治療」論がチラついている?(2011/2/7)
「安楽死後臓器提供」のベルギーで、今度は囚人に安楽死(2012/9/15)
ベルギー社会主義党「未成年と認知症患者にも安楽死を」(2012/12/22)
ベルギーの安楽死10年のすべり坂: EIB報告書 1(2012/12/28)
ベルギーの安楽死10年のすべり坂: EIB報告書 2(2012/12/28)
ベルギーで、ろう者の双子(45歳)に安楽死(2013/1/14)
【12日追記】
その後、Ann G.さんに行われた安楽死は
それ自体の合法性もどうなのか、という気がしてきたので、
ベルギーの安楽死法の対象者要件を
去年4月のEIBの報告書から抜粋した以下のエントリーで確認してみました。
ベルギーの2002年安楽死法の対象者要件 概要(2012/12/28)
ベルギーの安楽死法の対象者要件は
a) 意識のある患者 と b) 意識のない患者 に分かれていて、
Ann G. さんの場合は明らかにa) に当たるわけですが、
その部分に書かれているのは、
In the case of a patient in the final stages of his/her illness, euthanasia may take place if
(自分の病気の最終段階にある患者の場合に安楽死が行われてもよいのは……)
として、終末期にある患者の場合に安楽死が認められるための条件が
9件ほど挙げられているのみ。
したがって、終末期ではなかった Ann G. さんに行われた安楽死は
EIBの報告書が指摘している安楽死委員会による「法の文言の拡大解釈」によって許容されているだけで、
厳密には違法な性格のものなのでは?
ベルギーから、またもイヤ~なニュース。
コトの起こりは去年10月、
カトリック系大学の精神科教授で性科学と摂食障害の世界的権威、
Walter Vandereycken医師に長年ささやかれてきた患者への性的虐待の疑惑が
テレビ番組で事実と暴かれた。
教授自身も複数の患者と不適切な性的関係を持ったことを認めて、
大学は同教授を停職処分とした。
その時の記事がこちら ↓
Leuven University psychiatrist admits improper sexual relations
Ecpatica.com, October 10, 2012
このスキャンダルを暴いたのは
彼の患者の一人である Ann G. さんだった。
Ann G.さんは番組に登場し、
自分を含め複数の患者が被害に遭ったと訴えた。
Ann G.さんには2007年に早くも自殺したいと語った事実があり、
昨年、番組に登場した際にも既に安楽死希望の手続きを済ませているようだった。
被害をカムアウトしたことで一旦は心が安らいだようにも思えたが、
その後、加害者がさほどの懲罰を受けなかったことに、いたく失望し、
番組に出た数カ月後に、別の心優しい精神科医によって安楽死した。
Ann G.さんの死によって
Vandereychken医師に不当なスティグマが負わされている、と
報道などに抗議する向きもあるようだけれど、
BioEdgeのCookは、以下のように書いている。
斜め目線の人なら、ベルギーの精神科医は利益の相反に鈍感だと言いたいことだろう。一人の精神科医が心を病んだ女性に手を出し、崖っぷちに立っている人の背を押すようなことをする。その女性が法廷で彼に不利な証言をできないように、別の精神科医が手を貸す。Vandereychken医師は仕事に復帰してプライベートな患者(開業したという意味?)を診察し始めている。その一方でAnn G.さんは死んだ。しかしベルギーの国民は、こういう出来事に慣れていかねばならない。
Another speed bump for Belgian euthanasia
BioEdge, February 8, 2013
【関連エントリー】
ベルギーで2年前にロックトインの女性、「安楽死後臓器提供」(2010/5/9)
ベルギーの医師らが「安楽死後臓器提供」を学会発表、既にプロトコルまで(2011/1/26)
ベルギーの「安楽死後臓器提供」、やっぱり「無益な治療」論がチラついている?(2011/2/7)
「安楽死後臓器提供」のベルギーで、今度は囚人に安楽死(2012/9/15)
ベルギー社会主義党「未成年と認知症患者にも安楽死を」(2012/12/22)
ベルギーの安楽死10年のすべり坂: EIB報告書 1(2012/12/28)
ベルギーの安楽死10年のすべり坂: EIB報告書 2(2012/12/28)
ベルギーで、ろう者の双子(45歳)に安楽死(2013/1/14)
【12日追記】
その後、Ann G.さんに行われた安楽死は
それ自体の合法性もどうなのか、という気がしてきたので、
ベルギーの安楽死法の対象者要件を
去年4月のEIBの報告書から抜粋した以下のエントリーで確認してみました。
ベルギーの2002年安楽死法の対象者要件 概要(2012/12/28)
ベルギーの安楽死法の対象者要件は
a) 意識のある患者 と b) 意識のない患者 に分かれていて、
Ann G. さんの場合は明らかにa) に当たるわけですが、
その部分に書かれているのは、
In the case of a patient in the final stages of his/her illness, euthanasia may take place if
(自分の病気の最終段階にある患者の場合に安楽死が行われてもよいのは……)
として、終末期にある患者の場合に安楽死が認められるための条件が
9件ほど挙げられているのみ。
したがって、終末期ではなかった Ann G. さんに行われた安楽死は
EIBの報告書が指摘している安楽死委員会による「法の文言の拡大解釈」によって許容されているだけで、
厳密には違法な性格のものなのでは?
2013.02.12 / Top↑
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