2ntブログ
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
--.--.-- / Top↑
前のエントリーで触れたように、
「ドナー神話」や男女間の臓器提供の差やドナーの自発性などについて、
このたび、いろんな分野の方々に教えていただきました。

その情報がいずれも大変貴重なものなので、
メモとしてまとめておこうと思います。

まず、その理由はともかく、
ドナーになるのは男性よりも女性が多いことは
日本でも欧米でも事実のようです。

日本の臓器移植におけるドナー、レシピエントの男女数は
日本移植学会のサイト内で腎臓、肝臓、すい臓について報告されているとのこと。
(ざっと試みたのですが、私はすい臓に関するデータしか見つけられませんでした。
今の段階では、差があるという事実が確認できたことで私には十分なので、当面、放置)

海外の論文はこちら。

Roger Dobson, More women than men become living organ donors IN British
Medical Journal, 325: 19 (2002) 851

Kayler, Liise K et. al. Gender Imbalance in Living Donor Renal Transplantation,
Transplantation, 27 January 2002 - Volume 73 - Issue 2 - pp 248-252

         ―――――

その他、この問題に関連するドナーの心理については

「臓器移植のメンタルヘルス」川野雅資 (中央法規出版、2001)

② 日本家族社会学会第12回大会のテーマセッションC
「家族愛」の名のもとに - 生体肝移植をめぐって -
武藤香織、鈴木清子、細田満和子

③ 生体肝移植ドナー調査から見えてきた移植医療における研究課題
倉田真由美、武藤香織
滋賀医科大学看護学ジャーナル5巻1号

④ 小特集2 「「家族愛」の名のもとに:生体肝移植をめぐって」『家族社会学研究』14(2)
武藤香織2003「「家族愛」の名のもとに――生体肝移植と家族」『家族社会学研究』14(2)
鈴木清子2003「患者・家族からみた生体肝移植医療」『家族社会学研究』14(2)
細田満和子2003「生体肝移植医療――不確実性と家族愛による擬制」『家族社会学研究』14(2)
清水準一2003「生体肝移植におけるトピックはドナー調査にみる今後の課題」『家族社会学研究』14(2)
(この特集へのリンクも見つけたのですが、どうも既に切れているようでした)


臓器提供決意後の腎ドナー心理
http://www6.plala.or.jp/brainx/2006-5.htm#20060531

夫婦間腎移植で自発性に疑義
http://www6.plala.or.jp/brainx/2006-11.htm#20061127

遺族に対するグリーフケアとしての移植の効能を調査した日本の資料は
同じく守田氏のサイトから、こちらに。
http://www6.plala.or.jp/brainx/2004-9.htm#20040910B


守田氏からは
「移植医療により延命できQOLが向上する」との主張そのものが神話である、という
目からウロコのご指摘と共に、

欧米では「臓器提供が遺族のグリーフケアになる」といわれている事に触れた日本の資料があり、
日本ではまず、こうした脳死からの提供についてのグリーフケア神話があって、
その先に生体間の移植におけるドナーの心理的利益神話がくっついていくのではないかとの
ご指摘をいただきました。

欧米の「グリーフケア神話」については、私は全く知らなかったのですが、
脳死提供ルールは既に心臓死後提供(DCD)プロトコルの導入で揺らいでいて、
さらに死亡提供ルールを見直して植物状態でも臓器をとってもいいことにしようと
生命倫理学者らが言い始めていることや、

「無益な治療」概念・「死の自己決定権」概念の広がりが
そうした移植医療における動向と重なっていく可能性を考えると、
たしかに尊厳死と移植医療が繋がっていく接点のところで
この「グリーフケア神話」は、とても都合よく機能するよなぁ……と。

みなさん、ありがとうございました。
2009.10.26 / Top↑
Secret

TrackBackURL
→http://spitzibara.blog.2nt.com/tb.php/327-639f72ff