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オーストラリアの生命倫理学者 Megan―Jane Johnstoneが
“Alzheimer’s disease, media representations and the politics of euthanasia: constructing risk and selling death in an aging society” という本を出し、

メディアによるアルツハイマー病の否定的なイメージ操作で
安楽死の対象としていこうとする「安楽死の政治」に警告を発している。

アルツハイマー病は
人口の高齢化に伴って世界中の医療システムにほぼ壊滅的な影響を与える
「今世紀最大の病気」として描かれてきた。


このような描き方は、
「生きながら死んでいるようなもの」「終わりのない葬式」「死んだ方がまし」などの表現と共に、
自分もかかるのでは、そういう姿になるのでは、と人々の恐怖を煽って、
アルツハイマー病を暗黙のうちに安楽死のターゲットとしている。

そうした立場は、アルツハイマー病を解決策の必要な問題とみなしており、
その解決策として予防的で思いやりある安楽死が考えられるようになってきている。


しかし、メディアと安楽死推進の立場の団体が持ち出してくるような
個々の患者のケースだけから問題を「選択の問題」へと単純化することは
世論を一方へ誘導することにしかならない、と。

安楽死は決して単純な選択の問題ではないし、
選択それ自体がもともと単純な問題でもない。
安楽死はきわめて複雑な現象。

アルツハイマー病も
メディアが盛んに流しているような個別のケースで適切に描けるような病気ではない。


Alzheimer’s and the euthanasia debate
BioEdge, May 25, 2013


アンジェリーナ・ジョリーが「予防的両側乳房切除」をブレークさせたところに、
今度はしぶる医師を説得して「予防的前立腺切除」を強行した
53歳の英国人男性のニュースもあった ↓
http://www.bioedge.org/index.php/bioethics/bioethics_article/10528

で、こういう科学とテクノで簡単に“プロアクティブな予防”文化が浸透していった先に
やってくる流行が「アルツハイマー病を予防するための思いやりに満ちた安楽死」……?


しかし、なんにせよ、
「安楽死のポリティックス」という表現は、どんぴしゃ。



【関連エントリー】

英国
英国著名哲学者、認知症患者に「死ぬ義務」(2008/9/29)
Pratchett氏の「自殺幇助委員会」提言にアルツハイマー病協会からコメント(2010/2/3)

オランダ
「IC出せない男児包皮切除はダメ」でも「IC出せない障害新生児も認知症患者も殺してOK」というオランダの医療倫理(2011/11/12)

ベルギー
ベルギーで「知的障害者、子どもと認知症患者にも安楽死を求める権利を」(2012/5/5)
ベルギー社会主義党「未成年と認知症患者にも安楽死を」(2012/12/22)

米国
「認知症末期患者のビデオを見せて延命治療拒否の決断を促そう」とMGHのお医者さんたち(2009/6/5)

09年のSacks vs Mitchell論争
「認知症患者の緩和ケア向上させ、痛みと不快に対応を」と老年医学専門医
「認知症はターミナルな病気」と、NIH資金の終末期認知症ケア研究
NYTもMitchell、Sacksの論文取り上げ認知症を「ターミナルな病気」(2009/10/21)
2013.06.07 / Top↑
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