「レスパイト・ケアラー求む!」介護シェア週間
英国のサウスウォーク在住のペドラー夫妻には子どもはいない。が、家には色とりどりのオモチャや絵本が入った大きな箱がある。夫婦は日頃はしまってあるそのオモチャ箱を、月に1度か2度、日曜日の朝になると出してくる。11時にやってきて一日を共に過ごす小さな女の子を迎えるためだ。障害のあるその子とコミュニケーションが取れるよう、パソコンには意思伝達のためのスイッチを繋ぐ。夫婦はボランティアのレスパイト・ケアラーなのである。
3月9日から16日はthe Shared Care Networkが主催するShare the Care Week(介護シェア週間)だった。The Shared Care Networkは1990年創設の全国チャリティ。毎年3月にShare the Care Weekでキャンペーンを行い、親のレスパイトのために障害のある子どものケアを1日か2日、主として週末に定期的に引き受けるボランティアを募っている。
自治体が提供するデイ・サービスだけでは、24時間介護を要する障害のある子どもたちの親は、なかなか十分な休息を取ることができない。そこで養子縁組を担当する部局を中心に自治体がFamily Linkプログラムを実施し、レスパイト・ケアラー(short-break carer)の登録、養成、研修、利用者とボランティアのマッチングなどの運営を行っている。
オックスフォードシャーでは現在、26人(組)のレスパイト・ケアラーが23家族の子どもを引き受けている。そのうちの1組、ベイツ夫妻は2009年からレスパイト・ケアラーをやっている。共に30代で2人の子どもがいる。特に理由はなく、ただ社会に何か還元できることをやりたいと思って始めたという。「親御さんが感謝してくれたり、お世話をする子どもさんたちから好い反応が返ってくると、こういうことをやっていてよかったなぁ、とすごく嬉しいですね」。
冒頭のペドラー夫妻はもうちょっと年配。レスパイト・ケアラーになった動機は、余暇を使って子どもと関わるボランティアをしたいと思いつつ、里子を引き受けるのはちょっと荷が重いと感じたことだった。しかし、こちらも責任の大きな役割であるため、登録には自治体の審査が必要で時間もかかる。ただ子育ての経験があることは必須条件ではないので、子どもがいないペドラー夫妻でもOK。登録すると、障害のある子どものケアについて、しっかり研修がある。マッチングは、登録している子どもたちについて自治体の担当者とボランティアの間で十分な相談をしながら、養子縁組と同じ手法で行われる。子どもの家族に紹介され、何度も訪問したり一緒に過ごしながら互いに知り合い、子どもがどういう生活を送っているか、好きなもの嫌いなものなどを聞いていく。
ペドラー夫妻はそうして2年前から幼い女の子のレスパイト・ケアラーになった。彼女がやってくると、まずはパソコンでゲームをするなどして、のんびり過ごす。お昼を食べて午後は、お天気が良ければ近所の公園に行き、車椅子のまま使えるブランコで遊んだり、他の子どもたちと一緒に遊んだりして楽しむ。近くの美術館の庭に魚を見に行くこともある。外出せず、本を読んだり音楽を聞いて過ごす週もある。
夕方お母さんが迎えに来ると、その日あった出来事を話し、お昼をどのくらい食べたかなどを記録したノートを渡す。撮った写真を見せたりあげたりもする。お母さんの方も、もう一人の子どもを映画に連れて行って楽しく過したことなどを話してくれる。そういうことを聞かせてもらうと、役に立てているな、家族に喜んでもらえているなと感じて、やりがいになる。女の子が帰っていくと、夫妻は後片付けをしながら、その日の出来事を振り返り、うまくいったこと、次にやってみたいことなどを語り合う。女の子の家族ともだんだんと信頼関係ができているので、できればそのうちに一泊で引き受けてもいいよと提案してみようかと考えている。
この仕組みは、親のレスパイトになるだけでなく、障害のある子どもたちが地域の人々と知り合い、つながるきっかけにもなる、とShare the Care Weekではボランティア参加を呼び掛けた。
介護者支援ラジオ
上記週間について検索していて偶然見つけたのが、Carers World Radio。ケアラ―に関連する時事問題に特化したラジオ番組だ。収録日時とテーマを予め告知し、ケアラーと支援関係者の参加を促している。これまでの番組10本の一部と、YouTubeを通じて聴ける1時間34分の最新番組は以下のサイトから。
http://www.carersworldradio.com/
「世界の介護と医療の情報を読む」
『介護保険情報』2013年5月号
英国のサウスウォーク在住のペドラー夫妻には子どもはいない。が、家には色とりどりのオモチャや絵本が入った大きな箱がある。夫婦は日頃はしまってあるそのオモチャ箱を、月に1度か2度、日曜日の朝になると出してくる。11時にやってきて一日を共に過ごす小さな女の子を迎えるためだ。障害のあるその子とコミュニケーションが取れるよう、パソコンには意思伝達のためのスイッチを繋ぐ。夫婦はボランティアのレスパイト・ケアラーなのである。
3月9日から16日はthe Shared Care Networkが主催するShare the Care Week(介護シェア週間)だった。The Shared Care Networkは1990年創設の全国チャリティ。毎年3月にShare the Care Weekでキャンペーンを行い、親のレスパイトのために障害のある子どものケアを1日か2日、主として週末に定期的に引き受けるボランティアを募っている。
自治体が提供するデイ・サービスだけでは、24時間介護を要する障害のある子どもたちの親は、なかなか十分な休息を取ることができない。そこで養子縁組を担当する部局を中心に自治体がFamily Linkプログラムを実施し、レスパイト・ケアラー(short-break carer)の登録、養成、研修、利用者とボランティアのマッチングなどの運営を行っている。
オックスフォードシャーでは現在、26人(組)のレスパイト・ケアラーが23家族の子どもを引き受けている。そのうちの1組、ベイツ夫妻は2009年からレスパイト・ケアラーをやっている。共に30代で2人の子どもがいる。特に理由はなく、ただ社会に何か還元できることをやりたいと思って始めたという。「親御さんが感謝してくれたり、お世話をする子どもさんたちから好い反応が返ってくると、こういうことをやっていてよかったなぁ、とすごく嬉しいですね」。
冒頭のペドラー夫妻はもうちょっと年配。レスパイト・ケアラーになった動機は、余暇を使って子どもと関わるボランティアをしたいと思いつつ、里子を引き受けるのはちょっと荷が重いと感じたことだった。しかし、こちらも責任の大きな役割であるため、登録には自治体の審査が必要で時間もかかる。ただ子育ての経験があることは必須条件ではないので、子どもがいないペドラー夫妻でもOK。登録すると、障害のある子どものケアについて、しっかり研修がある。マッチングは、登録している子どもたちについて自治体の担当者とボランティアの間で十分な相談をしながら、養子縁組と同じ手法で行われる。子どもの家族に紹介され、何度も訪問したり一緒に過ごしながら互いに知り合い、子どもがどういう生活を送っているか、好きなもの嫌いなものなどを聞いていく。
ペドラー夫妻はそうして2年前から幼い女の子のレスパイト・ケアラーになった。彼女がやってくると、まずはパソコンでゲームをするなどして、のんびり過ごす。お昼を食べて午後は、お天気が良ければ近所の公園に行き、車椅子のまま使えるブランコで遊んだり、他の子どもたちと一緒に遊んだりして楽しむ。近くの美術館の庭に魚を見に行くこともある。外出せず、本を読んだり音楽を聞いて過ごす週もある。
夕方お母さんが迎えに来ると、その日あった出来事を話し、お昼をどのくらい食べたかなどを記録したノートを渡す。撮った写真を見せたりあげたりもする。お母さんの方も、もう一人の子どもを映画に連れて行って楽しく過したことなどを話してくれる。そういうことを聞かせてもらうと、役に立てているな、家族に喜んでもらえているなと感じて、やりがいになる。女の子が帰っていくと、夫妻は後片付けをしながら、その日の出来事を振り返り、うまくいったこと、次にやってみたいことなどを語り合う。女の子の家族ともだんだんと信頼関係ができているので、できればそのうちに一泊で引き受けてもいいよと提案してみようかと考えている。
この仕組みは、親のレスパイトになるだけでなく、障害のある子どもたちが地域の人々と知り合い、つながるきっかけにもなる、とShare the Care Weekではボランティア参加を呼び掛けた。
介護者支援ラジオ
上記週間について検索していて偶然見つけたのが、Carers World Radio。ケアラ―に関連する時事問題に特化したラジオ番組だ。収録日時とテーマを予め告知し、ケアラーと支援関係者の参加を促している。これまでの番組10本の一部と、YouTubeを通じて聴ける1時間34分の最新番組は以下のサイトから。
http://www.carersworldradio.com/
「世界の介護と医療の情報を読む」
『介護保険情報』2013年5月号
2013.06.07 / Top↑
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