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9月14日、英国内務省から「ヘイト・クライム行動計画」が発表されています。
政府内の部局をまたいで、こうした行動計画が策定されたのは初めてとのこと。
計画の表紙にも、わざわざ cross governmentと銘打たれています。

この計画について報じたMencapのサイトでは、
10年にも渡るギャングの嫌がらせで障害のある娘を連れて母親が自殺した先日の痛ましい事件に触れて
ちょうど、この事件の捜査が進められている最中の行動計画の発表だったと述べています。

行動計画の原文はこちら。
Hate Crime – The Cross Government Action Plan


計画では主要な目標として3点を挙げていて、

1)被害者と地域の人たちの犯罪司法に対する信頼を高める。
2)ヘイト・クライムが起こること、エスカレートすることを予防する。
3)被害者支援と、そうした支援へのアクセス

これらの目標は、以下のような現状の課題に対応するべく設定されたもの。

・ヘイト・クライムは通報されにくい。
・加害者が捕まって罰せられることが少ない。
・インターネットで差別感情があおられている。
・介入と予防。
・ヘイト・クライムの性質と程度に関するエビデンスが少ない。
・対応部署が複数の分野にまたがっていること。
・被害者へのエンパワメントと支援。

なぜヘイトクライムが通報されにくいのかという問題について
行動計画の分析では

・あまりにも頻繁に起こるので、いちいち通報できない。
・起こっていること自体はさほど深刻でなかったり、犯罪でない。
・通報すると仕返しされたり、エスカレートする。
・警察には何も出来ない、または
・出来ることがあったとしても、警察サイドに偏見があったり、
被害者の気持ちを理解しなかったり、信頼に足る仕事ぶりでなかったりする。

行動計画の冒頭、内務大臣の序文があって、
その一部でゴチック体を用いて強調しつつ、以下のように書かれています。

我々は皆さんに通報してもらえるだけの信頼と、
被害者へのエンパワメントを目指します。

通報するにはどうすればよいか誰でもわかるように、
また誰にでも通報するための手段があるようにします。


Mencapのニュースレターによると、
この行動計画策定の準備段階で、上院議会で、 Di Lofthouseという知的障害のある人が
以下のような体験を語ったとのこと。

ギャングの一団に、自宅の郵便受けに犬の糞を詰め込まれた。
窓ガラスを割られ、
お前のような人間は生まれてもその場で殺すべきだと書いた手紙が送られてきた。

とうとう夜も眠れなくなり、うつ状態になった。
最後には自殺しようとまでした。

そうした犯罪を通報できなかったのは、
誰も私の言うことなど聞いてくれないと思ったから。

行動計画が出てきたことそのものは当然、高く評価すべきことだとは思うのだけど、

Diさんの体験を読んで、改めて内務大臣の序文を振り返ると、
「皆さんに通報してもらえるだけの信頼」という言葉は、なんだか空々しい。

ギャングがDiさんに送ってきたメッセージこそ、
米国に並んで“科学とテクノ簡単解決万歳”文化の最先端を行く英国社会が
その文化が内包する「能力、なかんずく知能が何よりも大事な価値」との価値観を通して
障害のある国民に向かって送っているメッセージそのものではないのか。

お前のような障害者は、
生まれてきてはいけないんだよ──。

生まれてきても、殺されるべきなんだ。
生きるに値しない命なんだから──。


2009.10.03 / Top↑
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