2ntブログ
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
--.--.-- / Top↑
英国医事委員会GMCから
守秘義務に関する新たなガイドラインが出され、

たとえ患者本人が拒んだとしても、
その患者の親族を守るためであれば
個人情報である患者の遺伝子情報を明かしてもかまわない、と。

例えば、遺伝性の癌になった患者の場合に、
その人の家族に対して、その癌が遺伝する可能性を伝えてもよい。

Doctors Told To Warn Patients Of Their Genetic Risks
The Medical News Today, September 29, 2009

ガイダンスの原文はこちら


これ読んで、ものすごく素朴な疑問がわいてきた。

いろんな病気を引き起こす原因に関与しているとされる遺伝子の変異が同定されてきている中で、

ここで言われている「遺伝性の癌」というのは、
これまで言われていた「遺伝性の病気」というのとは、
ちょっと違う……んじゃないのかな。

今まで言われていた「遺伝病」というのは、
かなりの高率で遺伝するもの、というイメージだったのだけど、

今、次々に遺伝子の変異が同定されているのは
「この変異があると、今後何十年もの間に、この病気になる確率が、低いにせよ、ある」
というものまで含まれているような気がするのですが。

それとも、今までの「遺伝病」と、
話のタチそのものは変わらないんだけど、遺伝子が解明されるにしたがって
「遺伝病」の範囲がどんどん広がっているだけ、ということなのか……。

私に分からないのは、例えば、
Googleの創設者が遺伝子を調べてみたら当該変異が出てきたというパーキンソン病
発病率は20~80%で、発病しない可能性もあるというのだけど、
じゃぁ、パーキンソン病も、もう「遺伝病」なんでしょうか……というようなこと。

この人の親族にも
「パーキンソン病に関与している遺伝子の変異が出てきましたから、
あなたにも可能性がありますよ」と伝えてあげることが
「親族を守る」行為ということになるのかな。

でも、パーキンソン病を発症する確率が、
どの程度か分からないし、発症しないかもしれないけど、ある、と分かったところで、
その病気の予防方法も治療方法も定かには分かっていないのだとしたら、
その情報伝達は、一体どういう意味を持つのだろう。

それから、「親族を守るためなら患者の遺伝子情報を明かしてもいい」という中の、
「親族を守る」というのは、今の“予防医学”のどこまでを射程に言っているんだろう。

例えば、乳がんの患者さんで、BRCA1とかBRCA2といった遺伝子があったとして、
その人に娘がいたら、娘にそれを伝えるのが、「娘さんを守る」ことになるのか。

じゃぁ、その「守る」というのは、
だから、ちゃんと定期健診を受けなさいよ、ということなのか、
だから、あなたも遺伝子を調べてみなさい、ということなのか、

まさか、遺伝子を調べて、BRCA1とか2があったら、
予防的乳房切除を検討しなさいよ……なんて──?


あ……それとも、ここで想定されているのは、実は、

ずっと後になって、その娘の方が乳がんになった時に、
「あの時に母親の遺伝子情報を教えてくれていたら、
私はもっと検診も受けたし、遺伝子診断だって受けたし、
こんなことになるくらいなら予防的に乳房切除していたのに」と言って
母親の主治医を訴える可能性とか、そういうこと……?

つまり、医師自身を守る方策として患者の親族を守るために
患者の個人情報である遺伝子情報を明かすことは
医師としての守秘義務から外しましたよ、という
免罪符としてのガイドライン……?

            ―――――――

と、上までを書いてアップしようと思って、
ふと数日前のエントリーを思い出してチェックしてみたら、

今年5月にEU議会が出した科学とテクノ・アセスメント報告書によれば、
英国では、乳がんの遺伝子に関する胚の着床前遺伝子診断が認められています。

……ということは、乳がんは英国では既に
「生まれる前から排除しなければならない重大な遺伝病」なのでした。

そういえば、英国では去年、”乳がん遺伝子ゼロ保障”つきの赤ちゃんが生まれてたっけ。
(詳細は以下のリンクに)



2009.10.01 / Top↑
Secret

TrackBackURL
→http://spitzibara.blog.2nt.com/tb.php/379-b781ac2f