……といっても、実はこの本は
後に「ルポ貧困大陸アメリカ」に結実する著者のナマ体験がつづられた2006年の本で、
先に「ルポ」を読んでしまうと、ちょっとかったるい感じもあるのだけど
書かれていることは「ルポ」と基本的には同じで、
後に「ルポ貧困大陸アメリカ」に結実する著者のナマ体験がつづられた2006年の本で、
先に「ルポ」を読んでしまうと、ちょっとかったるい感じもあるのだけど
書かれていることは「ルポ」と基本的には同じで、
米国では2002年に作られた「おちこぼれゼロ法」によって
高校に生徒の個人情報を軍のリクルーターに渡すことが義務付けられ
格差を超えるためには大学進学しか手段のない貧困層が
奨学金の可能性で釣り上げられては兵士に仕立て上げられていく、
つまり貧困が徴兵装置として利用され、
社会的弱者がその弱みに付け込まれて
いいように使い棄てにされている、という現実。
高校に生徒の個人情報を軍のリクルーターに渡すことが義務付けられ
格差を超えるためには大学進学しか手段のない貧困層が
奨学金の可能性で釣り上げられては兵士に仕立て上げられていく、
つまり貧困が徴兵装置として利用され、
社会的弱者がその弱みに付け込まれて
いいように使い棄てにされている、という現実。
ただ、サブプライム問題やリーマンショックを挟んで
「ルポ」を読んだ時とは状況が違っているために
ぎくりと思い至ることがあった。
「ルポ」を読んだ時とは状況が違っているために
ぎくりと思い至ることがあった。
米国型資本主義の暴走の限界や行き詰りを指摘したり、
新自由主義は失敗だったとか、この辺りでどうにか考えなければいかん……という話を
サブプライム問題を機に見聞きすることが増えているように感じて、
新自由主義は失敗だったとか、この辺りでどうにか考えなければいかん……という話を
サブプライム問題を機に見聞きすることが増えているように感じて、
個人的にちょっと気になっているベーシックインカム構想などというのも
そういう行き詰まり感の中で「じゃぁ、どうすればいいのか」を考える1つの方策として
位置づければいいのかな……と考えたりしていたのですが、
そういう行き詰まり感の中で「じゃぁ、どうすればいいのか」を考える1つの方策として
位置づければいいのかな……と考えたりしていたのですが、
この本を読んで初めて思いが至ったところというのは、
あ、でも、「行き詰っている」とも「どうにかしなければ」とも
全然考えていない人もいるんだよね……ということ。
全然考えていない人もいるんだよね……ということ。
弱肉強食の新自由主義で切り捨てられた人たちを
「どうにかしなければならない」という方向で考えると話は難しくなるけど、
そういう人間を兵士に仕立て上げれば「どうにかする必要」などないどころか
逆に、厳しい社会で生き残れない弱者の有効活用であり、
「どうにかしなければならない」という方向で考えると話は難しくなるけど、
そういう人間を兵士に仕立て上げれば「どうにかする必要」などないどころか
逆に、厳しい社会で生き残れない弱者の有効活用であり、
「社会に無駄なコストをかけるジャマな人間」がそれによって
「社会にとって利益となる人間」に逆転しコスト効率も格段に改善する──。
「社会にとって利益となる人間」に逆転しコスト効率も格段に改善する──。
今のままの方向で突き進むことに、なんら問題はない──。
(日本の場合、報道から目につくのは派遣切りされた人たちを介護職に振り向けようとの動きですが、
雨宮さんは派遣切りにあった人たちに自衛隊の勧誘が行われていると書評で書いていました。)
雨宮さんは派遣切りにあった人たちに自衛隊の勧誘が行われていると書評で書いていました。)
そして、もちろん
堤さんが書いている
貧困が徴兵装置になるカラクリを
科学とテクノロジーでの国際競争に当てはめてみれば、
障害者・病者・高齢者というコスト高な医療弱者についても
”有効利用”の方法ならいくらでもある。
堤さんが書いている
貧困が徴兵装置になるカラクリを
科学とテクノロジーでの国際競争に当てはめてみれば、
障害者・病者・高齢者というコスト高な医療弱者についても
”有効利用”の方法ならいくらでもある。
手っ取り早いところでは臓器の確保。
移植用だけでなく実験用の臓器も。
移植用だけでなく実験用の臓器も。
もちろんES細胞を作るのに必要な卵子も無尽蔵に供給できる。
植物状態の女性患者を代理母として利用することも可能。
様々な年齢や病歴を持つ、生きた人体を丸ごと実験利用できれば、
今は不治や難治とされる病気の治療研究だって飛躍的に進む。
老化のメカニズム研究やアンチ・エイジングの実験も思うままだ。
今は不治や難治とされる病気の治療研究だって飛躍的に進む。
老化のメカニズム研究やアンチ・エイジングの実験も思うままだ。
重症の知的障害者も脳死者や植物状態と大して変わらないし
どうせ抵抗・抗議する能力も言葉も持たないのだから、
知的障害者はもちろん、意思疎通が出来にくい人間もみんな含めてしまえば、
さらに、どうせ治療コストをかけたところで死が近い人間が自ら死を選んでくれれば、
社会的コストが大幅に削減されるだけでなく、
人類の進歩に結びつく利用資源が大量に確保できる一石二鳥──。
どうせ抵抗・抗議する能力も言葉も持たないのだから、
知的障害者はもちろん、意思疎通が出来にくい人間もみんな含めてしまえば、
さらに、どうせ治療コストをかけたところで死が近い人間が自ら死を選んでくれれば、
社会的コストが大幅に削減されるだけでなく、
人類の進歩に結びつく利用資源が大量に確保できる一石二鳥──。
障害児・者にかかる「社会的コスト」がしきりにあげつらわれ、
高齢者への医療と介護が「金がかかるもの」の代名詞となり、
その一方で「死の自己決定権」が喧伝されていく。
高齢者への医療と介護が「金がかかるもの」の代名詞となり、
その一方で「死の自己決定権」が喧伝されていく。
テレビやワイドショーが取り上げる一つ一つの事件やニュースだけを
バラバラに見ていたら、なかなか感じられないけれど、
実はあまり報道されないところで起きている事件やニュースを介して
実はみんな繋がって、一つの大きなうねりの一部なのかもしれない……
バラバラに見ていたら、なかなか感じられないけれど、
実はあまり報道されないところで起きている事件やニュースを介して
実はみんな繋がって、一つの大きなうねりの一部なのかもしれない……
Ashley事件との出会いをきっかけに
事件の背景や周辺を調べていくにつれて
それまで想像すらできなかったことが世界では現実に起こっているのだ……と
愕然とするような事件やニュースを目の当たりにして、
もうずっと、そんなことを懸念している。
事件の背景や周辺を調べていくにつれて
それまで想像すらできなかったことが世界では現実に起こっているのだ……と
愕然とするような事件やニュースを目の当たりにして、
もうずっと、そんなことを懸念している。
だから
この本のプロローグの、こんな箇所にとても共感した。
この本のプロローグの、こんな箇所にとても共感した。
政治家や大企業には勝てっこない。
どれだけ社会が変わるように願っても、一人ができることなんてたかが知れている。
みんなそう思ってあきらめちゃうんだ。
でも、俺たちみたいな普通の市民が力を手にする方法がたったひとつある。
それは真実を知ること。そしてそれをできるだけ多くの人に手渡すことだ。
ニュースからだけじゃわからないことがたくさんある。
(2004年に、抗議のハンスト行いながら大統領選の不正を訴えて歩いた男性の語り)
「報道が教えてくれないアメリカ弱者革命」P.13
どれだけ社会が変わるように願っても、一人ができることなんてたかが知れている。
みんなそう思ってあきらめちゃうんだ。
でも、俺たちみたいな普通の市民が力を手にする方法がたったひとつある。
それは真実を知ること。そしてそれをできるだけ多くの人に手渡すことだ。
ニュースからだけじゃわからないことがたくさんある。
(2004年に、抗議のハンスト行いながら大統領選の不正を訴えて歩いた男性の語り)
「報道が教えてくれないアメリカ弱者革命」P.13
2009.03.02 / Top↑
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