ちょっと遅ればせの記事になりますが、
Diekema、Fost両医師他が去年6月に小児科学会誌に成長抑制に関する論文を書き、
早々と一般化する場合のスタンダードを設定しようと試みたことは、
既にいくつかのエントリーにまとめました(詳細は文末にリンク)が、
早々と一般化する場合のスタンダードを設定しようと試みたことは、
既にいくつかのエントリーにまとめました(詳細は文末にリンク)が、
それに対して、去年6,7月のうちに
AARP誌のサイトに反論が3つ寄せられていました。
AARP誌のサイトに反論が3つ寄せられていました。
それぞれの主要な論点について、簡単に以下に。
①Garey Noritz医師:Case Western Univ. School of Med.
・著者らが主張する成長抑制療法の安全性についても効果についても証明されていない。
・3歳段階で選択肢として親に提示せよとの提案は早すぎる。
3歳では障害が将来どういう状態で固まるかを正確に予測することは不能。
・成長抑制目的での小児に対するエストロゲンの大量投与は
著者らが書いているよりもはるかに、これまでの一般的な医療と距離がある。
3歳では障害が将来どういう状態で固まるかを正確に予測することは不能。
・成長抑制目的での小児に対するエストロゲンの大量投与は
著者らが書いているよりもはるかに、これまでの一般的な医療と距離がある。
・新しく過激な医療として、ダウン症児への心臓や腸の手術と
知的障害女性に対するルーティーンとしての不妊手術があったが、
時を経て前者はスタンダードな医療となり後者はすたれることとなった。
成長抑制がどちらになるかはまだ分からない。
知的障害女性に対するルーティーンとしての不妊手術があったが、
時を経て前者はスタンダードな医療となり後者はすたれることとなった。
成長抑制がどちらになるかはまだ分からない。
②Miriam A. Kalichman医師:Division of Specialised Care for Children, Univ. of Illinois
・親は老いていくという事実を考えると、いつまでも介護可能な身長も体重もあり得ず、
可能な選択肢は障害のある成人への集団介護以外にはない。
・この治療は、正常な身体に手を加えるものであり、
それは自分の知る限り他には不妊手術以外に存在しない。
ロボトミーや、障害があることを理由に髄膜瘤をしなかったり
ダウン症児の心臓病を治療しなかったり、など
これまで医師と親とは、偏見やサービスに対する無知から
発達障害のある人たちへの医療について不幸な決断を行ってきたのである。
可能な選択肢は障害のある成人への集団介護以外にはない。
・この治療は、正常な身体に手を加えるものであり、
それは自分の知る限り他には不妊手術以外に存在しない。
ロボトミーや、障害があることを理由に髄膜瘤をしなかったり
ダウン症児の心臓病を治療しなかったり、など
これまで医師と親とは、偏見やサービスに対する無知から
発達障害のある人たちへの医療について不幸な決断を行ってきたのである。
・著者らの「重症認知障害」の定義はあまりにも曖昧であり、
特に3歳段階でコミュニケーション能力について断定的な診断が可能と考えることは
明らかな誤りで、その後の育て方によって変ってくる。
また仮に診断が可能であるとしても、3歳段階で将来のことまで決めるには
親がまだ混乱している。
特に3歳段階でコミュニケーション能力について断定的な診断が可能と考えることは
明らかな誤りで、その後の育て方によって変ってくる。
また仮に診断が可能であるとしても、3歳段階で将来のことまで決めるには
親がまだ混乱している。
・ケアについて言えば、歩かない全介助の重症児よりも、
飛び出して行って攻撃的な行動をとる子どもの方が手がかかる。
そういう子どもこそ10歳になっても成人しても親がケアするためには
成長抑制が有効なのでは?
飛び出して行って攻撃的な行動をとる子どもの方が手がかかる。
そういう子どもこそ10歳になっても成人しても親がケアするためには
成長抑制が有効なのでは?
③Michelle Kuperminc医師: Univ. of Virginia
・この療法によって実際に子どものQOLが向上するというエビデンスはない一方、
重症身体障害のある子どもは遺伝的最終身長まで伸びないというエビデンスはあり、
障害像に応じて、その子の成長を予測することも可能となりつつある。
ただ遺伝的に背が高くなりそうだからと将来に不安を感じる親には
こうした予測も情報提供すべきである。
重症身体障害のある子どもは遺伝的最終身長まで伸びないというエビデンスはあり、
障害像に応じて、その子の成長を予測することも可能となりつつある。
ただ遺伝的に背が高くなりそうだからと将来に不安を感じる親には
こうした予測も情報提供すべきである。
・次のステップは治験であろうが、十分なエビデンスもないまま、
将来を予測したうえでの療法として親に提示するのは時期尚早である。
将来を予測したうえでの療法として親に提示するのは時期尚早である。
------
Noritz医師とKuperminc医師の批判には、
効果があるとのエビデンスがあれば、また知的障害の重さが正確に診断可能なのであれば
許容されるが……との前提があること、
Noritz医師とKuperminc医師の批判には、
効果があるとのエビデンスがあれば、また知的障害の重さが正確に診断可能なのであれば
許容されるが……との前提があること、
そのため、Noritz医師の「時代と経験によって、いずれに振り分けられるか」にしろ
Kuperminc医師の「次のステップはランダムな実験」にしろ
この段階で広く一般化して推奨するのは賛成しないものの
個別に行われるケースはデータ化して効果を検証すべきだとの姿勢になっていることも
成長抑制療法そのものの倫理的検討の必要が認識されていないという点で気になります。
Kuperminc医師の「次のステップはランダムな実験」にしろ
この段階で広く一般化して推奨するのは賛成しないものの
個別に行われるケースはデータ化して効果を検証すべきだとの姿勢になっていることも
成長抑制療法そのものの倫理的検討の必要が認識されていないという点で気になります。
親が老いるという事実が成長抑制正当化の論理からは排除されているというのは
当ブログが以前から指摘してきたことの1つですが
英文での批判としてはKalichman医師の指摘が初めてではないかと思います。
当ブログが以前から指摘してきたことの1つですが
英文での批判としてはKalichman医師の指摘が初めてではないかと思います。
もっとも、その解決には集団介護以外の解決策はないという個所については
議論が分かれるところでしょうが、敢えて施設と言っていないことには含みもあるのかもしれせん。
議論が分かれるところでしょうが、敢えて施設と言っていないことには含みもあるのかもしれせん。
しかし、何よりもほっとするのは、やはり
医師と親の障害者に対する偏見によって間違った医療上の判断がされてきた歴史を
ちゃんと自覚している医師もいるのだ、という事実――。
医師と親の障害者に対する偏見によって間違った医療上の判断がされてきた歴史を
ちゃんと自覚している医師もいるのだ、という事実――。
【関連エントリー】
DiekemaとFostが成長抑制療法で新たな論文(2009/6/6)
成長抑制WGのウラで論文が書かれていたことの怪(2009/6/6)
成長抑制論文にWhat Sortsブログが反応(2009/6/7)
私がDr. Fostをマスターマインドではないかと考える訳(A事件)(2009/6/13)
Diekema&Fostの成長抑制論文を読んでみた(2009/6/14)
Diekema&Fost論文の「重症の認知障害」が実は身体障害であることの怪(2009/6/15)
病院の公式合意を一医師が論文で否定できることの怪(A事件・成長抑制論文)(2009/6/15)
Bad Cripple誌の成長抑制批判から“科学とテクノの催眠術”を考える(2009/7/16)
「一筆ずつ描かれていく絵のように子は成長する」成長抑制批判(2009/7/23)
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2010.04.20 / Top↑
ニュースそのものは、モンタナ州の72歳の元獣医で、
手術不能の脳の癌を患うSteve Johnsonさんが医師による自殺幇助を望んでいる、
というものなのだけれど、
手術不能の脳の癌を患うSteve Johnsonさんが医師による自殺幇助を望んでいる、
というものなのだけれど、
この記事の中で重要だと思う内容が2点あって、
1つはJohnsonさんがC&Cのテレビ・コマーシャルに出演している、という事実。
というか、むしろ、C&CがTVコマーシャルまで流している、という事実。
というか、むしろ、C&CがTVコマーシャルまで流している、という事実。
それから、Monatana州では
去年の大みそかに最高裁が現行法のままでターミナルな病状の人が
医師による自殺幇助を求めることは違法ではないとの判断を下したものの、
その直後から、来年にもPASを違法とする法案を提出するとの声が
州議員らから続出しており、まだまだ先行き不透明である、との記述。
去年の大みそかに最高裁が現行法のままでターミナルな病状の人が
医師による自殺幇助を求めることは違法ではないとの判断を下したものの、
その直後から、来年にもPASを違法とする法案を提出するとの声が
州議員らから続出しており、まだまだ先行き不透明である、との記述。
こちらは、ちょっと、ほっとする内容ではあるけど。
【モンタナ州自殺幇助議論関連エントリー】
裁判所が自殺幇助認めたものの、やってくれる医師がいない?(MT州)(2009/4/6)
合法とされたMT州で自殺幇助受けられず子宮がん患者が死亡(2009/6/18)
自殺幇助を州憲法で認められたプライバシー権とするか、2日からモンタナ最高裁(2009/9/1)
モンタナの裁判で「どうせ死ぬんだから殺すことにはならない」(2009/9/3)
モンタナ州最高裁、医師による自殺幇助は合法と判断(2010/1/2)
MT州最高裁の判決文をちょっとだけ読んでみた(2010/1/5)
合法化判決出ても医師ら自殺ほう助の手続きに慎重(2010/1/11)
モンタナの自殺幇助合法化 続報(2010/1/1)
Montanaで最高裁判決後、少なくとも1人にPAS(2010/4/10)
裁判所が自殺幇助認めたものの、やってくれる医師がいない?(MT州)(2009/4/6)
合法とされたMT州で自殺幇助受けられず子宮がん患者が死亡(2009/6/18)
自殺幇助を州憲法で認められたプライバシー権とするか、2日からモンタナ最高裁(2009/9/1)
モンタナの裁判で「どうせ死ぬんだから殺すことにはならない」(2009/9/3)
モンタナ州最高裁、医師による自殺幇助は合法と判断(2010/1/2)
MT州最高裁の判決文をちょっとだけ読んでみた(2010/1/5)
合法化判決出ても医師ら自殺ほう助の手続きに慎重(2010/1/11)
モンタナの自殺幇助合法化 続報(2010/1/1)
Montanaで最高裁判決後、少なくとも1人にPAS(2010/4/10)
2010.04.19 / Top↑
2008年9月
Stonybrook 大学における認知障害に関するシンポでPeter SingerがA事件に言及
http://www.stonybrook.edu/sb/cdconference/podcasts.shtml(シンポ・サイト)
http://www.youtube.com/watch?gl=JP&hl=ja&v=ncppXrGFCBA(YouTube)
Stonybrook 大学における認知障害に関するシンポでPeter SingerがA事件に言及
http://www.stonybrook.edu/sb/cdconference/podcasts.shtml(シンポ・サイト)
http://www.youtube.com/watch?gl=JP&hl=ja&v=ncppXrGFCBA(YouTube)
それに対する批判
http://whatsortsofpeople.wordpress.com/2008/12/14/singer-on-parental-choice-disability-and-ashley-x/
http://whatsortsofpeople.wordpress.com/2008/12/19/singer%E2%80%99s-assault-on-universal-human-rights/#comment-545
http://whatsortsofpeople.wordpress.com/2008/12/14/singer-on-parental-choice-disability-and-ashley-x/
http://whatsortsofpeople.wordpress.com/2008/12/19/singer%E2%80%99s-assault-on-universal-human-rights/#comment-545
2009年1月13日
Ashleyの父親がブログに3周年のアップデイトを追加
http://ashleytreatment.spaces.live.com/mmm2007-10-25_18.59/mmm2007-10-25_18.59/blog/cns!E25811FD0AF7C45C!1827.entry
Ashleyの父親がブログに3周年のアップデイトを追加
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1月23日
シアトルこども病院が成長抑制シンポ
http://www.seattlechildrens.org/research/initiatives/bioethics/events/growth-attenuation-children-severe-disabilities/
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http://www.seattlechildrens.org/research/initiatives/bioethics/events/growth-attenuation-children-severe-disabilities/
関連ブログ記事
http://badcripple.blogspot.com/2009/01/ashley-treatment-symposium.html
http://badcripple.blogspot.com/2009/02/ashley-x-intrigue-and-ethics-collide.html
http://www.planet-of-the-blind.com/2009/02/miniature-people-on-the-pillow-or-how-to-experiment-on-the-developmentally-disabled-in-broad-daylight.html
http://badcripple.blogspot.com/2009/01/ashley-treatment-symposium.html
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1月29日
Diekema医師ボストン子ども病院でAshley事件について講演
http://www.seattlechildrens.org/research/initiatives/bioethics/events/faculty-and-staff-speaking-engagements/
Diekema医師ボストン子ども病院でAshley事件について講演
http://www.seattlechildrens.org/research/initiatives/bioethics/events/faculty-and-staff-speaking-engagements/
6月
Pediatrics誌にDiekema、Fostらが成長抑制論文
http://pediatrics.aappublications.org/cgi/content/abstract/123/6/1556
Pediatrics誌にDiekema、Fostらが成長抑制論文
http://pediatrics.aappublications.org/cgi/content/abstract/123/6/1556
9月
オーストラリアの法律事務所が成長抑制の法的手続きについて医師らに警告
http://hwlebsworth.ensoconsultancy.com.au/health_sept09/growth-attenuation-therapy.html
オーストラリアの法律事務所が成長抑制の法的手続きについて医師らに警告
http://hwlebsworth.ensoconsultancy.com.au/health_sept09/growth-attenuation-therapy.html
2009年のAshley事件関連ブログ記事
http://severedisabilitykid.blogspot.com/2009/07/coming-of-age-and-growth-attenuation.html
http://severedisabilitykid.blogspot.com/2009/12/working-through-issues-on-ashley.html
http://whatsortsofpeople.wordpress.com/2009/06/06/wake-up-call-growth-attenuation-therapy-principles-for-general-practice/
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http://whatsortsofpeople.wordpress.com/2009/06/06/wake-up-call-growth-attenuation-therapy-principles-for-general-practice/
2010.04.19 / Top↑
The Mental Health Foundationが患者本人に行った調査をもとに英国アルツハイマー病協会から報告書「私の名前は認知症ではありません」。自殺幇助合法化を説いている作家のPratchette氏も加わっているらしい。話し相手がいたり、信仰があることなどによって、認知症の人は一般に考えられている以上に高いQOLを維持することができる。また、環境や人種によっても、QOLで何を重視するかは違っている。認知症だからといってQOLが低いとは限らないし、QOLが下がらないようなケアがされるべきである。:報告書のタイトルがいい。「最先端の技術でどういう支援ができるかの議論を急ぐのではなく、認知症の本人たちはどういう体験をしているのか、まず本人を理解してほしい」と、つい先日、私も認知症ケアの専門家の訴えを聞いたばかりだ。
http://www.alzheimers.org.uk/mynameisnotdementia
http://www.alzheimers.org.uk/site/scripts/download_info.php?downloadID=418
http://www.alzheimers.org.uk/mynameisnotdementia
http://www.alzheimers.org.uk/site/scripts/download_info.php?downloadID=418
世界のワクチン製造企業が9月に中国に集結し、ワクチン開発サミットVacChina201を開催するとのこと。ビッグ・ファーマがこぞって「中国における医療の改善」に乗り出しているらしい。もちろん「予防医学」によって。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/185778.php
http://www.medicalnewstoday.com/articles/185778.php
まだワクチンを打てない新生児の百日咳予防のため、周囲の大人にワクチンを接種することによって予防するCocooning(繭に入れる)という戦略が提唱され始めている。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/185618.php
http://www.medicalnewstoday.com/articles/185618.php
新しい法律により2013年から製薬会社には医師らへの金銭支払いの詳細を明らかにすることが求められるが、すでに会社ごとに独自にディスクロージャーの動きが出ている。それによると、Pfizerは去年6月から12月の間に450人の医師と250の研究機関に3500万ドルを支払っている。ただし個々の医師への支払金額は非常に分かりにくい形態のディスクロージャーとなっている。NYTが詳細な分析を行った結果、最高額は麻酔医で痛みの専門家、Dr. Gerald M. Sacksへの146,500ドル。
http://www.nytimes.com/2010/04/13/business/13docpay.html
http://www.nytimes.com/2010/04/13/business/13docpay.html
しかし、上院の調査では未だに大学の規定に反して、製薬会社からの金銭の授受をちゃんと報告していない研究者がいる、とのこと。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/185381.php
http://www.medicalnewstoday.com/articles/185381.php
もう1つ、製薬会社と研究者の癒着を巡るNYTの記事。糖尿病の治療薬Avandiaについて2007年以降に書かれた論文を分析したところ、その効果を肯定的に書いた論文の著者らの87%にAvandiaの製造元であるGlaxoSmithKline社から資金提供を受けるなど、利益の衝突があった。論文に偏向の疑いがある、との指摘。
http://www.nytimes.com/2010/04/13/health/13diab.html
http://www.nytimes.com/2010/04/13/health/13diab.html
ホルムアルデヒドの発がん性を巡る調査に、妨害工作をした上院議員と企業の癒着。先日、ネットメディアとして初めてピューリッツァを受賞したPropublicaの記事。:Propublicaは米国での調査ジャーナリズムの危機を憂いた有志が集まって始めた、調査報道を旨とするネットメディアで、かなり前に知って以来ずっと覗いているのだけど、1つ1つの記事が長いので、なかなか読み切れない。ピューリッツァを受賞した記事も、ハリケーン・カトリーナの際の高齢障害患者の安楽死を扱ったもので、当時、この事件はちょっと調べたので興味があってブクマしたのだけど、それきりになってしまった。
http://www.propublica.org/feature/how-senator-david-vitter-battled-formaldehyde-link-to-cancer
http://www.propublica.org/feature/how-senator-david-vitter-battled-formaldehyde-link-to-cancer
DNAシークエンスの全体像を分析するテクニックから考えると、個別の遺伝子に特許が設定されることは患者の不利益になる。:こちらのエントリーで取り上げたように、乳がん関連遺伝子を巡って進行中の訴訟もある。この訴訟の続報は、こちらとこちらに。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/185662.php
http://www.medicalnewstoday.com/articles/185662.php
英国の障害児、特に黒人や少数民族の親の場合には、他の子どもたちよりも貧困率が高く、社会的にも個人的にも不利な環境にあることが多い。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/185716.php
http://www.medicalnewstoday.com/articles/185716.php
2010.04.18 / Top↑
1997年に消費者直結の薬のコマーシャルが登場して以来、
「薬のあるところ、病気は(そして患者も)出てくる」を信条としてきたビッグ・ファーマは、
このところ「次はワクチンが儲かりまっせぇ」と当て込んでいたものの、
「薬のあるところ、病気は(そして患者も)出てくる」を信条としてきたビッグ・ファーマは、
このところ「次はワクチンが儲かりまっせぇ」と当て込んでいたものの、
米国人のワクチン不信と、
去年の暮れにはCDCの前センター長Julie Gerberding氏が
Merck社のワクチン部門の責任者に就任したことで
国際的なワクチンを巡る陰謀説への疑念ぬぐいがたく、
去年の暮れにはCDCの前センター長Julie Gerberding氏が
Merck社のワクチン部門の責任者に就任したことで
国際的なワクチンを巡る陰謀説への疑念ぬぐいがたく、
またもや、せっせと新たな病気を作り、患者を作り、啓発にいそしむ、
かつての戦略に逆戻りしている、というのが以下の記事の要旨。
かつての戦略に逆戻りしている、というのが以下の記事の要旨。
で、その記事が挙げている「8つのでっちあげ病」とは、
1. SERM(選択的エストロゲン受容体モジュレータ)不足
薬が売れるための「マジック3」とは「不安、永続、盲信」で
更年期後の骨粗鬆症予防薬には、その3つがそろっている。
更年期後の骨粗鬆症予防薬には、その3つがそろっている。
効いているのやら、そもそも自分に飲む必要があるのやら分からなくても
飲んでいればとりあえず不安が消えるから。
飲んでいればとりあえず不安が消えるから。
これまで治療に使われてきたbisphosphonatesには
顎の骨が溶けたり発がん性があったり、
予防するはずの骨折を引き起こすなど
副作用が指摘されてきたので、
新たにSERM薬の売り込みが狙われている。
顎の骨が溶けたり発がん性があったり、
予防するはずの骨折を引き起こすなど
副作用が指摘されてきたので、
新たにSERM薬の売り込みが狙われている。
2.スタチン不足
FDAは去年、10歳の子どもにアストラゼネカのCrestorを認可。
今年3月にはコレステロールにも心臓にも問題のない650万人への使用も認め、
世の中を上げてスタチンを飲ませよう、という風潮。
しかも、ここでも「不安、永続、盲信」が有効。
今年3月にはコレステロールにも心臓にも問題のない650万人への使用も認め、
世の中を上げてスタチンを飲ませよう、という風潮。
しかも、ここでも「不安、永続、盲信」が有効。
3.Circadian Dysrhythmia(24時間リズムの乱れ)
サーカディアン・ディスリズミア……なんて書くと
恐ろしげな病気のようにも見えるけど
検索してみたら、なんのことはなく、
恐ろしげな病気のようにも見えるけど
検索してみたら、なんのことはなく、
これまた例のサルコぺニアと同じヤリクチ。
この記事の説明では、
不眠症では、製薬会社はもう儲けられるだけ儲けたから、
不眠症マーケットには、これ以上の伸びしろはなく、そこで考えついたのが
夢遊病だとか寝汗だとか、夜勤でリズムを崩して寝つきが悪い人とか、睡眠時無呼吸とか
眠りにまつわるリズムの乱れを病気として扱うこと。
不眠症では、製薬会社はもう儲けられるだけ儲けたから、
不眠症マーケットには、これ以上の伸びしろはなく、そこで考えついたのが
夢遊病だとか寝汗だとか、夜勤でリズムを崩して寝つきが悪い人とか、睡眠時無呼吸とか
眠りにまつわるリズムの乱れを病気として扱うこと。
4.成人における自閉症、ADHD、扱いにくい人であること
かのBiederman医師が2004年にJAMAに書いた成人ADHDの症状は
多動や衝動性や、組織に不向きだったり、時間の管理ができなかったり、
そんな人間なら誰の結婚相手の兄弟にでもいそうなのだけれど、
それでもB医師によれば生涯、薬を飲むべき病気らしい。
多動や衝動性や、組織に不向きだったり、時間の管理ができなかったり、
そんな人間なら誰の結婚相手の兄弟にでもいそうなのだけれど、
それでもB医師によれば生涯、薬を飲むべき病気らしい。
B医師は2008年に議会で指弾されたが、
それでも同年の精神科ニュースには
社交性が乏しく、極端に柔軟性を欠き、癇癪を起こしやすい、
光や熱や痛みに過敏であるなどの症状があれば、
成人自閉症の可能性があり、しかし幸いなことにSSRIで症状を緩和できる……と
書かれている、とのこと。
それでも同年の精神科ニュースには
社交性が乏しく、極端に柔軟性を欠き、癇癪を起こしやすい、
光や熱や痛みに過敏であるなどの症状があれば、
成人自閉症の可能性があり、しかし幸いなことにSSRIで症状を緩和できる……と
書かれている、とのこと。
5.2剤併用が必要なぜんそく
特に黒人ではぜんそくでの死亡率が3倍に跳ね上がるぜんそくの治療薬が
死者が(特に子どもで)沢山出たために中止になった治験データに基づいて
FDAに認可された。
死者が(特に子どもで)沢山出たために中止になった治験データに基づいて
FDAに認可された。
しかもFDAは最後の手段として認可したにもかかわらず、
製薬会社は吸引ステロイドとセットで売りまくろうとしている。
製薬会社は吸引ステロイドとセットで売りまくろうとしている。
6.薬が効かないウツ状態
抗うつ薬を飲んでも効果がない患者向けに
追加薬が認可されている。
追加薬が認可されている。
しかし、それは「薬が効かない病気」なのではなく、
「効かない薬である」または「診断が間違っている」という方が正しいのでは?
と、この記事は疑問を投げかける。
「効かない薬である」または「診断が間違っている」という方が正しいのでは?
と、この記事は疑問を投げかける。
7.男性ホルモン低下症
禿げたり、しわができたり、性欲や視力が低下したり、というのは
老化ではなく、ホルモン低下症。
老化ではなく、ホルモン低下症。
8.ウツ病スペクトラム障害
ウツ病と双極性障害の啓発と同じように
「繊維筋痛症はほんものの病気」啓発が盛んに行われているが
全ての症状に当てはまらない人を治療の対象にすべく
製薬会社は「ウツ病スペクトラム障害」という用語を編み出してきたらしい。
「繊維筋痛症はほんものの病気」啓発が盛んに行われているが
全ての症状に当てはまらない人を治療の対象にすべく
製薬会社は「ウツ病スペクトラム障害」という用語を編み出してきたらしい。
さらにJAMA1月号には、「てんかんスペクトラム障害」なるものも。
―――――――
このエントリーを書くための日本語検索で、
たまたま引っかかってきた市場分析レポートが以下。
たまたま引っかかってきた市場分析レポートが以下。
これらは、いずれも高価な売り物で、
この分野のマーケットのポテンシャルが如何に重視されてきたかが感じられます。
この分野のマーケットのポテンシャルが如何に重視されてきたかが感じられます。
骨減少症は"作られた"病気?でも同じ問題を取り上げましたが、
例えば、最初のレポートのタイトルの
「不十分な認識と患者特定不足による市場成長の阻害」を易しい日本語に翻訳すると、
「不十分な認識と患者特定不足による市場成長の阻害」を易しい日本語に翻訳すると、
「骨粗鬆症は恐ろしい病気ですよという情報を周知徹底させて
骨粗鬆症や予備軍の患者をどんどん見つけないと市場が伸びない」ということでは?
骨粗鬆症や予備軍の患者をどんどん見つけないと市場が伸びない」ということでは?
それにしても、この記事の内容は、当ブログが追いかけてきた情報と、
それによって描いてきた「大きな絵」(世界で進行していること)に、ぴたりと符合します。
それによって描いてきた「大きな絵」(世界で進行していること)に、ぴたりと符合します。
日本でも、最近、あちこちでワクチン、ワクチンと騒がしくなってきた。
去年、朝日のワクチン記事が胡散臭いと思ったら、
今年に入って立て続けに「日本の子どもを守るためにワクチンを」の記事を打っているし
「健康ギャップ」なくても「ワクチン・ギャップ」埋めないと「世界に恥じ」る……と説くワクチン論文も
先日読んで、それは保健施策ではなく経済施策なんですね……と了解したばかり。
今年に入って立て続けに「日本の子どもを守るためにワクチンを」の記事を打っているし
「健康ギャップ」なくても「ワクチン・ギャップ」埋めないと「世界に恥じ」る……と説くワクチン論文も
先日読んで、それは保健施策ではなく経済施策なんですね……と了解したばかり。
そういえば、この前、日本のどこかの自治体が
HPVワクチンに公費助成し学校で集団接種すると決めていたけど、
なんだか、たいそう不思議なことで、
HPVワクチンに公費助成し学校で集団接種すると決めていたけど、
なんだか、たいそう不思議なことで、
感染力が強くて学級閉鎖にもなろうかという季節性インフルエンザも、
豚インフルエンザですら集団接種になっていないのに、
豚インフルエンザですら集団接種になっていないのに、
ゲイツ財団と大の仲良しでワクチン推進論者のDiekema医師ですら
「学校へ行ったらHPVに感染するというわけじゃないのだから」といって
州ごとに義務付けるワクチンの対象としては
HPVワクチンの優先順位は低いと考えているというのに。
「学校へ行ったらHPVに感染するというわけじゃないのだから」といって
州ごとに義務付けるワクチンの対象としては
HPVワクチンの優先順位は低いと考えているというのに。
あ、まぁ、あの発言は2008年段階の話で、
「これからはワクチンが儲かりまっせぇ」の前のことだから
今ではDiekema医師の言うことも変わっているとは思いますが。
「これからはワクチンが儲かりまっせぇ」の前のことだから
今ではDiekema医師の言うことも変わっているとは思いますが。
2010.04.17 / Top↑