2ntブログ
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
--.--.-- / Top↑
米国のAging Careという高齢者介護の支援組織が
高齢者の介護者らは医師による自殺幇助(PAS)合法化についてどう考えているのか
調査を行ったところ、

・5月の調査に参加したのは老親または家族を介護している1200人以上の介護者。

・PASを合法化すべきと考えているのは 65%。反対は 35%。

・PAS支持の51%は、その時には介護している家族が薬を飲む時にはその場にいる、と回答。
 16%は薬を飲ませることによって自分も参加する、と。

・もしも立場が逆で、自分が介護される方だったら、との問いには63%以上がPASを求める、と回答。
 そのうち72%の人が、その場合には家族も自分の決定を支持してくれるだろう、と回答。

・立場が逆だったとしたら自分はPASを選択肢の一つとして求めない、と回答したのは37%。
 そのうちの78%が道徳的または宗教的な理由を挙げた。


NPRが12年に行った世論調査では
PAS合法化を支持したのは55%だったので、

今回の調査になった介護者は高齢者の終末期の苦しみを目の当たりにしていることが
支持率が高い要因だと、Aging Care では分析。

もっとも、Aging Care のHPでの意見交換フォーラムでも、
この問題に関する議論は真っ二つに分かれている。

ちなみに、この記事によると
現在米国の7州でPAS合法化に関連した法案が審議されているとのこと。

More Than 65% of Family Caregivers Support the Legalization of Physician-Assisted Suicide
PR Newswire, June 5, 2013


気になるのは、
「致死薬をadministerして自分も参加する」という回答は
「自殺幇助」の概念とか既存の法律が理解できていないとしか思えないし、

また記事の冒頭では
終末期で回復の見込みがない人のみを対象にした調査のように書かれていながら、
読み進んでいくにつれて、「終末期のstruggle」という表現が出てきたり、
「終末期」が非常に広く捉えられているという印象もあったり。

この辺りはAging Careのサイトで元情報を読んだ方が良いかもしれないけれど、
当面ちょっと余裕がなさそうです。


それにしても、ショッキングな調査。

結果もショッキングだけど、
こういう調査を介護者支援団体がすることそのものが――。
2013.06.07 / Top↑
いつもお世話になっているBioEdgeのニュース・レターで
Michael Cookがとてもよい論考を書いている。

インドの貧しい靴職人Abdul Rahimが
サラセミアという貧血のある3人の息子(9歳、14歳、16歳)の
治療費を出してやれないので、3人を安楽死させる許可を裁判所に求めた、
というニュースを受けて、

Cookは
こうしたニュースがインドからは繰り返し報道されており、
安楽死が合法化されていないインドではそのつど司法は要望を却下していることに触れ、

こうした事例を
病気の息子の苦しみを見かねて親が安楽死を希望するという文脈で解釈してはならない、
これらは十分に熟考した上での患者の自律や自己決定ではなく、
息子には生きてほしいのに、それ以外にどうしてやることもできなくなった親の
絶望からの叫びなのだ、と。

そして、以下のように書いている。

Similarly, in our societies the demand for euthanasia seems strongest where the social fabric is weakest. Care is expensive, time-consuming and exhausting. But the real solution is not euthanasia, but more support, both financial and social. If we were to legalise euthanasia, the poor and the isolated would eventually be the ones who take most advantage of it.

同様に、我々の社会でも、社会機構が最も脆弱なところで安楽死を求める声は最も大きい。
医療も介護もお金と時間がかかり、周囲を消耗させる。

しかし真の解決は安楽死ではなく、
財政的・社会的な支援をもっと整備することだ。

もし我々が安楽死を合法化すれば、
結局は安楽死をもっとも利用するのは、最も貧しく、最も孤立させられた人々ということになる。


私はちゃんと読めていませんが、インドの父親に関する元記事はこちら ↓
http://www.hindustantimes.com/India-news/Guwahati/Father-seeks-euthanasia-for-3-sons/Article1-1068077.aspx

【関連エントリー】
父親が知的障害のある3人の息子の慈悲殺を希望(インド)(2009/2/16)
2013.06.07 / Top↑
米国メイン州の議会でも
医師による自殺幇助合法化法案が審議されていたみたいですが、

昨日30日に否決。

反対 95 vs 賛成 43 だったとのこと。

Maine overwhelmingly rejects physician-assisted suicide
LifeSiteNews, May 31, 2013
2013.06.07 / Top↑
83歳の英国人男性が
認知症の初期であることを理由にDignitasで自殺。

家族はみんな本人の決定を支持し、
妻がスイス行きの手配をした。

……と発表したのは、英国のDr. Deathこと、Michael Irwin医師。

Irwin医師によると、
今年1月に家族から接触があり、ディグニタスでの自殺に向けて
アセスメントをしてもらうための精神科医の紹介を求められた。
精神科医が本人の意思決定能力を認めた後に妻が旅行の手配をした。

Irwin医師は

I’ve been campaigning since the mid-1990s. I was a chairman of what is now called Dignity in Dying from 1996 to 1999 and from 2001 to 2003. I’m a retired GP, so I think it should be every person’s right to have the option of a dignified death. In four European countries it is possible for terminally ill, disabled and unwell, elderly people to have a dignified doctor assisted suicide – are we so different to the Dutch? I don’t think so.


いつのまに
ヨーロッパの4カ国で「尊厳ある医師による自殺幇助」が受けられる対象者が
「終末期の人、障害者、病気の人、高齢者」になったんです……?

それとも、and だから、
ここは「終末期で障害も病気もある高齢者」と読むべきなのか?

例えば、「この83歳の男性のような人々」という意味で?
でも、この人は「終末期」ではないですし。

First Briton ends life through assisted suicide at Dignitas because of dementia
The Independent, May 30, 2013


認知症の英国人がディグニタスで自殺するのは初めてのケースだとかで
他にもニュースは続々出てきていますが

もうなんだかメディアの騒ぎに付き合うのが嫌になってきたので、
とりあえず以下2つだけ。

http://www.bbc.co.uk/news/health-22715363
http://www.dailymail.co.uk/news/article-2333133/Man-83-Briton-Dignitas-assisted-suicide-dementia.html


ちなみに、Dr. Irwinというのは
ディグニタスが自殺者の遺灰をチューリッヒ湖に投棄していたことが明らかになった時に、
以下のように発言したことがなによりも私には忘れがたい人物――。

「Dignitasで死んだ人の遺灰がどこでどうなっていようと別に」(2011/5/15)


【追記】
Irwin医師はTimes紙で
認知症の患者の幇助自殺はこれから増えていくだろう、と語っている ↓
http://www.thetimes.co.uk/tto/news/uk/article3779005.ece

つい3日前にアップした以下のエントリーが頭に浮かびます ↓
メディアのイメージ操作でアルツハイマー病の“予防的安楽死”への誘導する「安楽死の政治」(2013/5/28)



【Dr. Irwin関連エントリー】
スイスで自殺幇助に付き添ったパートナー逮捕(英)(2009/7/19)
英国で患者の自殺を幇助した医師が「証拠出すから逮捕に来い」と(2009/7/28)
英国で、自殺幇助容疑で元GP逮捕へ(2009/9/28)
自殺幇助ガイドライン後、初の起訴か(英)(2010/4/25)
英国のDr. Death「元気な高齢者にも医師による自殺幇助を」(2010/8/16)
中高の授業でDr. Deathが自殺装置を披露する「教育ビデオ」(英)(2011/4/17)
Dr.Deathの手引きでケア・ホームの入所者がDignitasへ(英)(2011/9/13)
2013.06.07 / Top↑
23日の補遺で拾った
オーストラリアのニュー・サウスウェールズ(NSW)州のPAS合法化法案ですが、

上院の投票で否決されたとのこと。

反対 23 vs 賛成 13 。

棄権 5 。
欠員による無投票が 1 。

Australia State Soundly Rejects Bill to Legalize Assisted Suicide
LifeNews.com, May 27, 2013


米国VT州の合法化の後だけに、
ほっとするニュース。
2013.06.07 / Top↑