2ntブログ
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
--.--.-- / Top↑
月刊誌『介護保険情報』の冒頭に「風速計」というコラムがあって、
これは、いわば同誌の「社説」。

3月号の「風速計」(p.4)によると、

患者が生活保護受給者の場合に、
医師がジェネリック薬の使用が可能だと判断した場合には
医療機関が後発医薬品の使用を促すことを法制化することが
生活保護受給者の医療扶助の適正化の一環として検討されているとのこと。

理由としては、
生活保護受給者のジェネリック使用割合が低いこと。

けれど、もともとのジェネリックの使用割合そのものが
例えば米国では数量ベースで約89%に対して日本では23%、
ヨーロッパ5カ国は日本と米国の中間と、
格段に日本の使用率そのものが低いことを考えると、

「生活保護受給者に限定するといった、了見の狭いことはやめて」、
全国民を対象に法制化してはどうか、と「風速計」は提言している。

これを読んで、
ちょうど、生活保護の捕捉率そのものが
日本では圧倒的に低いという問題にはほっかむりしたままで、
国民の権利であるはずの生活保護をバッシングの対象とし、
まるで受給することを恥辱や罪悪であるかのように感じさせていくような方向で
世論操作が行われることと同じではないか……と思った。

「風速計」の次の一節に、まったく同感――。

少なくとも、全国民を対象に法制化できないならば、
生活保護受給者に限定して法制化する、ということはあってはならないのではないか。
2013.03.11 / Top↑
4日の補遺で拾った
国連のHuman Rights Councilの医療現場での虐待に関する報告書を
BioEdgeが紹介している。

報告書本文はこちら。

アルゼンチンの人権問題の専門家 Juan Mendez氏が、
国連 Human Rights Councilに答申したもの。

「拷問に相当する、または
残虐で非人道的、侮蔑的な扱い」として挙げられているのは、例えば、

痛みの治療の差し控え、
非任意の精神科医療、
刑務所でのメタドン(オピオイド鎮痛剤)の拒否、
レイプ後の中絶へのアクセス拒否、
強制的生殖器正常化手術、
強制不妊手術
非倫理的実験、
強制的なプライベートな身体部位の診察(intimate medical examinations)。

UN report reframes bioethics as ant-torture ethic
BioEdge, March 9, 2013



【強制不妊関連エントリー】
世界医師会が「強制不妊は医療の誤用、医療倫理違反、人権侵害(2011/9/12)
障害者人権擁護ネットから報告書「“A療法”・強制不妊・生命維持停止は人権侵害」(2012/6/20)

知的障害・貧困を理由にした強制的不妊手術は過去の話ではない(2010/3/23)

ナミビアでHIV感染女性への強制不妊手術に抗議デモ(2010/6/2)
コンドーム生産国日本の家族計画国際協力がペルーの強制不妊に繋がった?(2010/8/17)
英国で知的障害女性に強制不妊手術か、保護裁判所が今日にも判決(2011/2/15)
ウズベキスタンで強制不妊:人口抑制と周産期死亡率を落とす手段として(2012/4/23)
インドの「強制不妊手術キャンプ」と家族計画ロンドン・サミット(2013/3/3)
2013.03.11 / Top↑
新たな調査によると、英国人は他のヨーロッパ諸国に比べて
寿命が短く、なおかつ健康度が低い、という結果が出たことを受け、
Guardianに出ている「長生きする10の方法」という記事が面白い。

なんせ、その第1が「日本に移住しましょう」。

健康寿命が世界一長いところだから、
そのライフスタイルから学ぶためにも。

以下に、その他9つと共に。

1.日本に移住しましょう。

2.血圧を測りましょう。

3.ジャンクフードを避け、果物、野菜、ナッツ、種を食べましょう。

4.ほどほどのアルコールを。

5.ゴロゴロしないで身体を動かしましょう。

6.禁煙を。

7.病気をもらわぬよう病院は避けて。

8.ストレスをためないように。

9.車の事故死を避けるために電車を利用しましょう。

10.英国北部よりも南部に住みましょう。


Ten ways to live longer
The Guardian, March 5, 2013


トランスヒューマニストは、
こんなことを考えていたりもする ↓

Dvorsyの「永遠に生きる確率を劇的に向上させる8つのヒント」(2009/5/26)
2013.03.07 / Top↑
もちろん、あくまでも少数に過ぎないけれど、
命令し、怒鳴り、わめき、暴言を吐き、キレる医師というのはいる。

専門家によると、
米国の医師のだいたい3~5%ではないか、とのこと。

例えば記事の冒頭に出てくるのは、
手術中に手渡された器具が正しく設定されておらず使えなかったことでカッとなり、
テーブルに叩きつけて助手の指を骨折させた外科医。

他に、例えば
患者のことで看護師が夜中に電話すると怒鳴りつける、
手術室で研修医がとろいとメスを投げつける、
他の職員を愚弄するようなものの言い方をする、
次々に質問する患者を途中で遮る……などなど。

(ちなみに私は、ミュウの腸ねん転の手術直後に
痛み止めの座薬を入れてもらえないので、
入れてやってほしいと訴えていた時に、その言葉途中で、
ハエでも追い払うような手ぶりで会話を一方的に途絶され、
そのまま医師に立ち去られた経験があります)

文中にあるすごい事例では
手術中に麻酔科医と口論になった外科医が
「ちょっと外に出ろ」と麻酔科医を引きずり出してったまま
患者を放置した、とか。

しかし、医師はなんといっても病院の職種ヒエラルキーのトップだし、
病院にとっては稼いでくれる立役者なわけだから、
そういうお医者さんたちはこれまで「そういう人だから」とか、
ストレスや責任の大きさで許してもらってきた。

が、ここへ来て、
そういう時代が終わりを告げようとしているらしい。

米国では09年にできた新規制により、病院には、
例えばページング(病棟からの呼び出しなど)に応じないとか
会議に出てこないといった消極的なものを含め、
問題行動への対応策が義務付けられたのだとか。

しかも、その姿勢は「ゼロ・トレランス」。

なんとなれば、医師の迷惑行動は単に不愉快なだけに留まらず、
職員の士気を低下させ、患者の命にすら関わることが
データとして明らかになっているのだそうな。

2011年に842の病院を調査したところ、
71%が、迷惑行動が少なくとも毎月起こると回答。
毎日あると答えた病院も11%もあった。

99%がこうした迷惑行動は患者のケアに悪影響があると答え、
21%は患者に害を及ぼすと答えた。

例えば、カリフォルニアでは
看護師が医師から叱責を受けたりバカにされることを恐れて
モニターに出た気になる数値を報告しなかったために、
母子が死亡した事例が、調査の対象となっている。

IUCの患者が誤嚥性肺炎を起こしているのではないかと案じた看護師が
医師の自宅に電話をかけたところ「勉強が足りない」と相手にせず、
患者が死亡した事例も。

こうした医師の態度が、看護師を現場から遠ざけ、
看護師不足の一因ともなっている。

しかも、今はチーム医療の時代。

問題行動のある医師を対象に、
アンガー・マネジメント(怒りのコントロール)講座がお目見えし、
病院から命じられた医師らが受講している。

3日間の講座の後、
6カ月の間に3回のフォローアップ。
一人4500ドルなり。

なんで自分がここへ送られたのか理解できないという参加者の一人に、
講師は「あなたが傲慢で嫌な奴だと、みんな思ってるからですよ」。

受講者について講師は
「IQは高いけど、情緒的知性は really pathetic」。

専門家によると、そうした問題行動は
パーソナリティに根があって、それが子どもの時の体験で強化されていることが多いが、
上が下を押さえつける医学教育のあり方にも問題がある、とのこと。

Anger management courses are a new tool for dealing with out-of-control doctors
WP, March 5, 2013


読んでいたら、なにやら、
女子柔道界の指導者による暴力問題とそっくりな構図のように思えてきたり……。
2013.03.07 / Top↑
ずいぶん前から断片的に目にしていた
英国のNHS病院での高齢患者へのネグレクト問題。

英国の病院で高齢患者が食事介助をされず低栄養状態になっているとか、
自分の汚物にまみれたまま放置されているといった告発は
私が英語ニュースを読み始めた2006年から既に繰り返し報道されていたけど、

今回問題になったのは
ウースターシャー急性期NHS病院トラストの、
アレクサンドラ病院と、ウースター・ロイヤル病院の2つ。

ことの発端は、昨年3月に
ケアの質コミッションがアレクサンドラ病院に抜き打ち監査を行ったこと。

その結果、同病院のケアは最低水準に達しておらず
トラストは法を侵しているとの結論を出した。

その報告書を受けて、
患者や家族、遺族から続々と告発の声が上がり、

1年3か月前に
アレクサンドラ病院について35件、
ウースター・ロイヤル病院について3件
トラストに対する集団訴訟が起こされた。

最も酷い中では
2009年に84歳の男性が病院で餓死した、というケースがあるほか、

喉が渇いたまま放置されている患者の手の届かないところに飲み物が置かれていたり、
トイレ介助をせずに患者が自らの汚物にまみれたまま座らされていたり、
自分で食べられない患者の手つかずの食事トレイを職員が平然と下膳したり、
職員が患者を抱えようとして肋骨を骨折させたり、
ナース・コールを無視したり。

トラストでは
集団訴訟に取り上げられたケースの大半は2002年から2009年に起きた古い事例で、
11年の監査以降、病院のケアの質は改善されていると主張しているが、

集団訴訟の38ケースの家族・遺族とは和解が成立し、
それぞれに謝罪の書簡を送るという。

[http://www.guardian.co.uk/society/2012/dec/23/hospital-trust-apologises-neglect NHS
Hospital trust apologises for ‘appalling’ neglect]
The Guardian, December 23, 2012


この問題については
何度か以下の連載で触れていると思うのですが、
現在ネット上で読めるのは、病院ではなくケアホームのネグレクトに関する以下のもの。

「ケアホームの劣悪な介護実態を 消費者団体の潜入調査が暴く【英国】
「世界の介護と医療の情報を読む」『月刊介護保険情報』2011年6月号


知的障害者へのネグレクト関連エントリーはこちら。
2003年から2005年に亡くなった6人のケースが取り上げられています。 ↓

「医療における障害への偏見が死につながった」オンブズマンが改善を勧告(2009/3/31)
オンブズマン報告書を読んでみた:知的障害者に対する医療ネグレクト(2009/3/31)
Markのケース:知的障害者への偏見による医療過失
Martinのケース:知的障害者への偏見による医療過失
2013.01.04 / Top↑