トム(仮名)は赤ちゃんの時にベトナムから養子にもらわれてきた。
現在12歳。重い脳性マヒがある。
認知能力は生後2カ月程度で、生活は全介助。
8歳の誕生日を前に08年10月に始めた成長抑制療法を間もなく終える。
現在の体重は32キロ。身長は134センチ。
世界で初めて“アシュリー療法”を受けた男児と推測されている。
母親は50歳で、
息子に思い障害があることを知ったのはトムが2歳の時。
生涯、座ることも歩くことも食べたりしゃべることもなく、
けいれん発作で命を落とすこともあり得ると知らされ、
この子のためなら何でもやってやろうと誓ったという。
成長抑制は、その誓いの一端でもある。
「8歳児ががんになったら、迷うことなく化学療法をやるでしょう?
医療はどんなものだって神を演じることですよ。自然に逆らうのだから。
そういう問題ではなく、助けを必要とする者を尊重するということ」
一家は両親とトムと妹。ヨーロッパに在住。
(国名は明かしたくないとのこと)
トムは家族といて、家族に抱かれている時が一番ハッピーで、
自分では移動できないので、ベッドから床に敷いたマットに、外の庭へと
母親が抱いて連れて行く。
こういう子は緊張が激しくて
異動させる時には体重以上の負担がかかる、と母親。
(この点は私も同意。アテトーゼ型のミュウは逆にぐにゃぐにゃで
頭部、上体、下肢がそれぞれ付いてこないため、ひと固まりの重さにならず、
背が高くなってからは介護者一人でトランスファーは無理)
成長抑制を望んで訪ねた内分泌医の初診は1時間程度になった。
障害児への成長抑制の経験はないが、
背が伸び過ぎる子どもの抑制はやったことがある、という医師に
ホルモン剤でけいれん発作が増えないか?
眠気が来るのでは? 栄養摂取に影響は?
など聞いてみたが、答えはすべて「わからない」だった。
が、前にやった背の高い子どもへの経験で問題は起こらなかったし、
服用中は副作用のチェックをするので安全だと保障された。
エストロゲンの副作用で
胸が膨らんで乳房芽が形成されるのでは、との懸念には
医師は、もしそうなったら摘出すればよい、と。
なぜ男児なのにテストステロンでなくエストロゲンなのかを聞くと、
前者を使うと思春期が前倒しになり、ホルモンバランスが崩れる、との答え。
母親は通常なら病院の倫理委の承認なしには行わないことだと聞かされたが、
公式な許可があったかどうかについては知らないという。
「担当医の話では、まだ公式のプロトコルはないから
個々のケースでアセスメントを行う、ということでした」
トムの担当医に同じ療法を要望したアイルランド出身の母親もいたが、
自分たちの特命を望む理由には、医師が誰かを特定されたくないとの理由もある。
アシュリー・ケースで起きたバッシングのひどさがショックだったからだ。
「子どもを尊重していないという批判は当たらないと思います。反対ですよ。
矢面に立ったアシュリーの両親には辛かったと思います。
この療法を実現させるために勇敢に戦ってくださったのだから。
おかげでトムも恩恵にあずかれて、アシュリーの両親には私は生涯感謝します。
一番批判しているのは自己意識のある障害者で、
そういう人は自分の権利を意識しているけど、トムはそうじゃないんです。
アシュリーもそうじゃない。こういう子には誰かが代理で決めてやらないといけないし
代理で決めるなら、その子を愛する親以上にふさわしい人はいないでしょう」
Growth attenuation treatment: Tom, the first boy to undergo procedure
The Guardian, March 20, 2012
現在12歳。重い脳性マヒがある。
認知能力は生後2カ月程度で、生活は全介助。
8歳の誕生日を前に08年10月に始めた成長抑制療法を間もなく終える。
現在の体重は32キロ。身長は134センチ。
世界で初めて“アシュリー療法”を受けた男児と推測されている。
母親は50歳で、
息子に思い障害があることを知ったのはトムが2歳の時。
生涯、座ることも歩くことも食べたりしゃべることもなく、
けいれん発作で命を落とすこともあり得ると知らされ、
この子のためなら何でもやってやろうと誓ったという。
成長抑制は、その誓いの一端でもある。
「8歳児ががんになったら、迷うことなく化学療法をやるでしょう?
医療はどんなものだって神を演じることですよ。自然に逆らうのだから。
そういう問題ではなく、助けを必要とする者を尊重するということ」
一家は両親とトムと妹。ヨーロッパに在住。
(国名は明かしたくないとのこと)
トムは家族といて、家族に抱かれている時が一番ハッピーで、
自分では移動できないので、ベッドから床に敷いたマットに、外の庭へと
母親が抱いて連れて行く。
こういう子は緊張が激しくて
異動させる時には体重以上の負担がかかる、と母親。
(この点は私も同意。アテトーゼ型のミュウは逆にぐにゃぐにゃで
頭部、上体、下肢がそれぞれ付いてこないため、ひと固まりの重さにならず、
背が高くなってからは介護者一人でトランスファーは無理)
成長抑制を望んで訪ねた内分泌医の初診は1時間程度になった。
障害児への成長抑制の経験はないが、
背が伸び過ぎる子どもの抑制はやったことがある、という医師に
ホルモン剤でけいれん発作が増えないか?
眠気が来るのでは? 栄養摂取に影響は?
など聞いてみたが、答えはすべて「わからない」だった。
が、前にやった背の高い子どもへの経験で問題は起こらなかったし、
服用中は副作用のチェックをするので安全だと保障された。
エストロゲンの副作用で
胸が膨らんで乳房芽が形成されるのでは、との懸念には
医師は、もしそうなったら摘出すればよい、と。
なぜ男児なのにテストステロンでなくエストロゲンなのかを聞くと、
前者を使うと思春期が前倒しになり、ホルモンバランスが崩れる、との答え。
母親は通常なら病院の倫理委の承認なしには行わないことだと聞かされたが、
公式な許可があったかどうかについては知らないという。
「担当医の話では、まだ公式のプロトコルはないから
個々のケースでアセスメントを行う、ということでした」
トムの担当医に同じ療法を要望したアイルランド出身の母親もいたが、
自分たちの特命を望む理由には、医師が誰かを特定されたくないとの理由もある。
アシュリー・ケースで起きたバッシングのひどさがショックだったからだ。
「子どもを尊重していないという批判は当たらないと思います。反対ですよ。
矢面に立ったアシュリーの両親には辛かったと思います。
この療法を実現させるために勇敢に戦ってくださったのだから。
おかげでトムも恩恵にあずかれて、アシュリーの両親には私は生涯感謝します。
一番批判しているのは自己意識のある障害者で、
そういう人は自分の権利を意識しているけど、トムはそうじゃないんです。
アシュリーもそうじゃない。こういう子には誰かが代理で決めてやらないといけないし
代理で決めるなら、その子を愛する親以上にふさわしい人はいないでしょう」
Growth attenuation treatment: Tom, the first boy to undergo procedure
The Guardian, March 20, 2012
2012.03.30 / Top↑
昨日のGuardianの関連報道については
以下のエントリーに。
論争から5年、アシュリー父ついに動く(2012/3/16)
「アシュリー療法」やった6ケースのうち、2人は養子(2012/3/16)
今朝の段階で、アラートが拾って来たものを、
とりあえず以下にピックアップしておきます。
Tomのケース
http://www.guardian.co.uk/society/2012/mar/16/growth-attenuation-treatment-toms-story?newsfeed=true
Ericaのケース
http://www.guardian.co.uk/society/2012/mar/16/ashley-treatment-ericas-story?newsfeed=true
シンガーの擁護論
http://www.guardian.co.uk/commentisfree/2012/mar/16/ashley-treatment-profoundly-disabled-children
SE Smithさんのシンガーへの反論
http://www.guardian.co.uk/commentisfree/2012/mar/16/ashley-treatment-disabled-people
(ここまで全てGuardian)
Daily Mail
http://www.dailymail.co.uk/health/article-2115904/Ashley-treatment-Should-parents-stop-disabled-children-growing-up.html
障害者運動のサイト
http://www.disabilityscoop.com/2012/03/16/rise-ashley-treatment/15198/
医療系サイト
http://www.care2.com/causes/surgery-to-keep-disabled-children-small-on-the-rise.html
ブロガ―からの批判
http://benefitscroungingscum.blogspot.jp/2012/03/ashley-x-pillow-angel-speaks-out.html
http://elizabethaquino.blogspot.jp/2012/03/pillow-angels-growth-attenuation-and.html
まだ、いずれも読んでいません。
今の段階で、すごく大きな疑問が渦巻いているのだけど、
なにゆえに英国のメディアばかりが――?
それから、書いておきたいこととして、
ここで(しかも今回は英国を舞台に)論争が再燃するのは、
その再燃そのものが5月以降の動きへの布石として仕掛けられたものだとすれば、
誰が何を言うかということは本当は問題じゃない。
本当の問題は
そうしたシナリオ通りにメディアその他もろもろが動いていること。
以下のエントリーに。
論争から5年、アシュリー父ついに動く(2012/3/16)
「アシュリー療法」やった6ケースのうち、2人は養子(2012/3/16)
今朝の段階で、アラートが拾って来たものを、
とりあえず以下にピックアップしておきます。
Tomのケース
http://www.guardian.co.uk/society/2012/mar/16/growth-attenuation-treatment-toms-story?newsfeed=true
Ericaのケース
http://www.guardian.co.uk/society/2012/mar/16/ashley-treatment-ericas-story?newsfeed=true
シンガーの擁護論
http://www.guardian.co.uk/commentisfree/2012/mar/16/ashley-treatment-profoundly-disabled-children
SE Smithさんのシンガーへの反論
http://www.guardian.co.uk/commentisfree/2012/mar/16/ashley-treatment-disabled-people
(ここまで全てGuardian)
Daily Mail
http://www.dailymail.co.uk/health/article-2115904/Ashley-treatment-Should-parents-stop-disabled-children-growing-up.html
障害者運動のサイト
http://www.disabilityscoop.com/2012/03/16/rise-ashley-treatment/15198/
医療系サイト
http://www.care2.com/causes/surgery-to-keep-disabled-children-small-on-the-rise.html
ブロガ―からの批判
http://benefitscroungingscum.blogspot.jp/2012/03/ashley-x-pillow-angel-speaks-out.html
http://elizabethaquino.blogspot.jp/2012/03/pillow-angels-growth-attenuation-and.html
まだ、いずれも読んでいません。
今の段階で、すごく大きな疑問が渦巻いているのだけど、
なにゆえに英国のメディアばかりが――?
それから、書いておきたいこととして、
ここで(しかも今回は英国を舞台に)論争が再燃するのは、
その再燃そのものが5月以降の動きへの布石として仕掛けられたものだとすれば、
誰が何を言うかということは本当は問題じゃない。
本当の問題は
そうしたシナリオ通りにメディアその他もろもろが動いていること。
2012.03.18 / Top↑
前のエントリーからの続きです。
‘Ashley treatment’ on the rise amid concerns from disability rights groups
Ed Pilkington and Karen McVeihg in NY
Guardian, March 15, 2012
この記事は、
父親が語った「すでに終了した6家族」のうち2人の母親に取材しているが
驚くことに、両方とも養子。
恐らくはA療法を受けた世界で初めての男児とされるのは、12歳のTom(仮名)。
7歳でやった、というから07年の論争直後からということになる。
ベトナムから赤ん坊の時に養子にもらわれ、ヨーロッパ在住。
重症脳性マヒで、てんかん発作があり、
座ることも話すことも歩くことも食べることもできない。
母は公式な許可みたいなものがあったかどうか知らないと言い、
「主治医に聞いたところでは、まだ公式なプロトコルはないから、
ケースごとのアセスメントになるという話でした」
もう一人は米国中西部の北寄りに住む14歳のErica(仮名)。やはり養子。
10歳時に成長抑制療法を始めたというから、
こちらも07年の論争から間もなくに始めたことになる。
担当したのはミネソタ大学の医師ら。
成長抑制と子宮摘出が行われた。
母は「批判する障害者は自分たちまでやられると誤解している。
対象が1%程度の重症児だということが分かっていない」。
この5年間に成長抑制が行われたケースは100例を超え、
関心を持っている家族は何千とあると、この記事では推測。
一方、the National Disability Rights Networkは、
4月に報告書を出し、連邦議会や州政府や個々の病院に向けて、
障害児への成長抑制療法を禁じる法律を作れと呼びかける予定とのこと。
こちらの記事は最後のあたりで
「WPASの報告書の終わりで、(アシュリーへの)治療を行った病院は
裁判所の許可なしにはやらないと約束している」と書いているが、
その「約束」がこの5月をもって一旦期限切れになることには触れていない。
合意期限については、こちらに書いている通り ↓
シアトルこども病院は、5年の合意期限が切れるのを待っている?(2010/11/8)
WPAS調査報告書の最後にある合意事項の6「期間」の箇所に書かれているのは以下。
This Agreement will commence on May 1, 2007, and continue for an initial term of five years. Thereafter, this Agreement will automatically renew on its anniversary date for additional terms of one year unless after the expiration of the initial term, either party gives at least 60 days prior written notice of termination.
5月1日で当初の5年間の合意期限が切れた後には、
自動的に毎年5月1日に1年間の更新となるが、
シアトルこども病院かWPAS(現在はDRW)のいずれかが最初の期限後に、
合意終了を少なくとも60日前に通知した場合にはこの限りではない。
たぶん、これをやってくると私はずっと前から睨んでいた。
アシュリー事件を単なる倫理論争と考える人は大きな間違いを犯している。
なぜ、この事件にはこんなにも不可解なことが多々起こってきたのか、
なぜメディアが、この事件に限って、こんなにも機能できないのか、
なぜネットのあちこちで、こんな怪現象までが起きるのか、
今回も、このインタビューが流れる数日前に、例の怪現象が起きていた。
そのことの重大さを考えてみるべきだと思う。
アシュリー事件は倫理論争であるというだけではなく、政治的な事件であり、
単なる重症児をめぐる医療や介護の問題をはるかに超えて、
この事件には、もはや国家もメディアも機能しなくなった
今の世の中の「大きな絵」がそっくりそのまま映し出されている。
今の段階で拾った反響は、
http://www.telegraph.co.uk/health/healthnews/9147793/Up-to-100-undergo-controversial-Ashley-treatment-to-keep-disabled-children-forever-small.html
http://www.theblaze.com/stories/controversial-hormone-therapy-keeps-permanently-unabled-individuals-in-child-like-state/
http://www.democraticunderground.com/1002428867
なお、TomとEricaのケースについて
ガーディアンが今日、改めて詳細を掲載するとか。
‘Ashley treatment’ on the rise amid concerns from disability rights groups
Ed Pilkington and Karen McVeihg in NY
Guardian, March 15, 2012
この記事は、
父親が語った「すでに終了した6家族」のうち2人の母親に取材しているが
驚くことに、両方とも養子。
恐らくはA療法を受けた世界で初めての男児とされるのは、12歳のTom(仮名)。
7歳でやった、というから07年の論争直後からということになる。
ベトナムから赤ん坊の時に養子にもらわれ、ヨーロッパ在住。
重症脳性マヒで、てんかん発作があり、
座ることも話すことも歩くことも食べることもできない。
母は公式な許可みたいなものがあったかどうか知らないと言い、
「主治医に聞いたところでは、まだ公式なプロトコルはないから、
ケースごとのアセスメントになるという話でした」
もう一人は米国中西部の北寄りに住む14歳のErica(仮名)。やはり養子。
10歳時に成長抑制療法を始めたというから、
こちらも07年の論争から間もなくに始めたことになる。
担当したのはミネソタ大学の医師ら。
成長抑制と子宮摘出が行われた。
母は「批判する障害者は自分たちまでやられると誤解している。
対象が1%程度の重症児だということが分かっていない」。
この5年間に成長抑制が行われたケースは100例を超え、
関心を持っている家族は何千とあると、この記事では推測。
一方、the National Disability Rights Networkは、
4月に報告書を出し、連邦議会や州政府や個々の病院に向けて、
障害児への成長抑制療法を禁じる法律を作れと呼びかける予定とのこと。
こちらの記事は最後のあたりで
「WPASの報告書の終わりで、(アシュリーへの)治療を行った病院は
裁判所の許可なしにはやらないと約束している」と書いているが、
その「約束」がこの5月をもって一旦期限切れになることには触れていない。
合意期限については、こちらに書いている通り ↓
シアトルこども病院は、5年の合意期限が切れるのを待っている?(2010/11/8)
WPAS調査報告書の最後にある合意事項の6「期間」の箇所に書かれているのは以下。
This Agreement will commence on May 1, 2007, and continue for an initial term of five years. Thereafter, this Agreement will automatically renew on its anniversary date for additional terms of one year unless after the expiration of the initial term, either party gives at least 60 days prior written notice of termination.
5月1日で当初の5年間の合意期限が切れた後には、
自動的に毎年5月1日に1年間の更新となるが、
シアトルこども病院かWPAS(現在はDRW)のいずれかが最初の期限後に、
合意終了を少なくとも60日前に通知した場合にはこの限りではない。
たぶん、これをやってくると私はずっと前から睨んでいた。
アシュリー事件を単なる倫理論争と考える人は大きな間違いを犯している。
なぜ、この事件にはこんなにも不可解なことが多々起こってきたのか、
なぜメディアが、この事件に限って、こんなにも機能できないのか、
なぜネットのあちこちで、こんな怪現象までが起きるのか、
今回も、このインタビューが流れる数日前に、例の怪現象が起きていた。
そのことの重大さを考えてみるべきだと思う。
アシュリー事件は倫理論争であるというだけではなく、政治的な事件であり、
単なる重症児をめぐる医療や介護の問題をはるかに超えて、
この事件には、もはや国家もメディアも機能しなくなった
今の世の中の「大きな絵」がそっくりそのまま映し出されている。
今の段階で拾った反響は、
http://www.telegraph.co.uk/health/healthnews/9147793/Up-to-100-undergo-controversial-Ashley-treatment-to-keep-disabled-children-forever-small.html
http://www.theblaze.com/stories/controversial-hormone-therapy-keeps-permanently-unabled-individuals-in-child-like-state/
http://www.democraticunderground.com/1002428867
なお、TomとEricaのケースについて
ガーディアンが今日、改めて詳細を掲載するとか。
2012.03.18 / Top↑
きた、きた、きた。やっぱり、きたっ!
11日の”怪現象”で何かデカいのが来るとは思ってたけど、
ガーディアンからアシュリー父のインタビューが出た!!
The Ashley treatment: 'Her life is as good as we can possibly make it'
Ed Pilkington, Guardian, March, 15, 012
こちらはインタビューで言及された2人の子どもの母親への取材を中心に、
この問題について書かれた記事。
‘Ashley treatment’ on the rise amid concerns from disability rights groups
Ed Pilkington and Karen McVeihg in NY
Guardian, March 15, 2012
インタビューはメールで数週間かけて行われたもの。
(ちなみに、ガーディアンはグローバル・ディベロップメントでは
資金提供を受け、ゲイツ財団とパートナーシップを組んでいます)
長いやり取りですが、
特に印象に残った点を読みながらツイートしたので、
2番目の記事からの情報も補いつつ、以下に。
・もうすぐ15歳になる現在のアシュリーは、身長137センチ、体重34キロ。
07年段階で、135センチ、30キロだった。
成長抑制は成功している、とアシュリー父。
・Gardian側が、まずアシュリーについて聞いた後、次の質問で
「シアトル在住である以外には匿名であり続けている理由は?」と聞いているのが興味深い。
インタビュアーは07年の論争についてかなり調べているようなのに、
当初の3日間だけ出ていた「ソフトウェア会社役員」情報を、まさか知らないか?
・アシュリーは心身とも乳児と同じだから、成長抑制によりQOLを維持向上させるとの主張は
5年たってどうか、と問われ、5年前とほぼ同じ回答。
この間にアシュリーができるようになったのは、
首を上げていることができるようになった、
口に親指を突っ込む、耳から上まで手を伸ばして頭を触る、の3つ。
・この2年間で、6家族がそれぞれのピロウ・エンジェルにアシュリー療法を行い、
終了している。その他に現在治療中のケースが6家族。
それら家族とは連絡をとり続けているが、やり終えた人は、
けいれん発作と筋力低下の軽減にも効果があったと言っている。
アシュリーは、成長抑制により側わんの進行が止まった、とも。
「効果」が07年から追加されている。
・やった6家族は、07年以降に連絡してきた人たち。
論争でたたかれたシアトルこども病院はやらないので
私的な話し合いの場を作って助け合った。
(このプランについては父親は08年に書いていた)
・そういう家族がコンタクトをとりあっているというのは、
いわば「アシュリー療法クラブ」みたいなものを作ったということか、との問いに。
プライベートな議論の場が"pillow angel quality of life support group"になっていった、と。
・6人のうち4人は米国在住。1人はヨーロッパ、1人はオセアニア。
2人が男児。手術を受けたのは3人で、残りの3人は成長抑制のみ。
・けいれん発作や筋緊張が軽減された、というのは
6人の中の一人(女児)の母親から聞いた話。
エストロゲンで骨密度が上がっていると
整形外科医から聞いたという(男児の)母親もいる、と。
・07年の論争で多くの病院はやろうとしないから、
”family with means”(父親の表現。それなりの手段のある家族)だけしか
やることができない現状だが? と問われ、
米国内外にやってくれる医療機関も医師もある。
他の州や国へ逝かないとできないケースもあるが。
・A療法のコストは4万ドル以下で、ほとんどが手術関連で、保険で全額カバーされる。
自分が知る限り、手術以外も保険で出る。
(07年当初に言っていたより、金額が上がっている)
・尊厳と人権に関する障害者運動からの批判については?
(メディアはここでも単純な対立の構図に持ち込む。
批判しているのは障害者運動だけじゃないっ)
父が言うに、本人に尊厳の概念がなく、乳児と同じニーズがあるのだから、
親がQOL向上のための治療で本人の尊厳を守るのであり、
優生思想になぞらえたり包括的に禁じようといった姿勢は、個人を害するもの。
・どんな支援やテクノロジーをもってしても、この療法の利益には及ばない。
そんなもので大きな胸の不快や生理痛はどうにもできないのだから。
・人の方ではなく社会の方を変えよとの障害者らの主張には同意。そうすべきである。
しかし、社会の変革はあらゆる障害像の人のために変革は行われるべきだ。
この療法は議論や批判ができる彼らを対象としたものではなく
障害者の中でも1%にもならない重症児を対象にしたものだということが
彼らには分かっていない。
・WPASが指摘した違法性については?
自分たちの雇った弁護士の見解と違う。
不妊はアシュリー療法の目的ではなく、副作用のようなもの。
・親の決定権と、子どもを保護する行政の責任との関係については?
子どものことは親が決める。医療についてはそこに病院内倫理委が関与する。
そういうメカニズムができているなら、行政がそこに余計な価値を追加する必要はない。
(Norman Fostの声がうっすらと聞こえてくる。
ずいぶん準備をして受けたインタビューであることは間違いないし、
2010年には腰を低くして父親と連携姿勢を見せていた医師らが
今回の動きには全く姿を見せないというのも、なにやら、あざとい)
・この5年間でざっと5000通のEメールが届いた。
95%が支持する内容で、そのうち1100通が(重症児の)直接体験を持つ親と介護者だった。
・「そちらのブログに寄せられた親の言葉を読むと、
子が成人し親が介護できなくなって施設に入れるときの悲しみを語る多くの家族に、
施設もまた人権侵害だと考えさせられます」とインタビュアー。
こうして、施設入所という人権侵害を避けるために、という
筋違いの正当化の路線が引かれてしまう。
Yes, you're right, institutionalization is a form of human violation, especially when treatments exist to make institutionalization less likely.
・それに続いて、「論争で激しい批判が起こったために医師がやりたがらず、
金と権力のある人間だけの療法となってしまっている」。
(だから解禁しよう、とここで説いておいて、
5月の合意期限切れに向かおうというシナリオ?)
・最初の質問で to start with, can we please focus on Ashley herself.、最後の質問でも
what matters overwhelmingly in all this is Ashley herself. So we should end with her.
07年にCNNがDiekemaに「初めて会ったアシュリーは、どんな感じでしたか?」と問い、
Diekemaが「とても素晴らしい御両親なんです」と答えていたことを思い出す
下の方の記事の主内容は
既にやった6家族のうち2人の母親への取材。次のエントリーで。
11日の”怪現象”で何かデカいのが来るとは思ってたけど、
ガーディアンからアシュリー父のインタビューが出た!!
The Ashley treatment: 'Her life is as good as we can possibly make it'
Ed Pilkington, Guardian, March, 15, 012
こちらはインタビューで言及された2人の子どもの母親への取材を中心に、
この問題について書かれた記事。
‘Ashley treatment’ on the rise amid concerns from disability rights groups
Ed Pilkington and Karen McVeihg in NY
Guardian, March 15, 2012
インタビューはメールで数週間かけて行われたもの。
(ちなみに、ガーディアンはグローバル・ディベロップメントでは
資金提供を受け、ゲイツ財団とパートナーシップを組んでいます)
長いやり取りですが、
特に印象に残った点を読みながらツイートしたので、
2番目の記事からの情報も補いつつ、以下に。
・もうすぐ15歳になる現在のアシュリーは、身長137センチ、体重34キロ。
07年段階で、135センチ、30キロだった。
成長抑制は成功している、とアシュリー父。
・Gardian側が、まずアシュリーについて聞いた後、次の質問で
「シアトル在住である以外には匿名であり続けている理由は?」と聞いているのが興味深い。
インタビュアーは07年の論争についてかなり調べているようなのに、
当初の3日間だけ出ていた「ソフトウェア会社役員」情報を、まさか知らないか?
・アシュリーは心身とも乳児と同じだから、成長抑制によりQOLを維持向上させるとの主張は
5年たってどうか、と問われ、5年前とほぼ同じ回答。
この間にアシュリーができるようになったのは、
首を上げていることができるようになった、
口に親指を突っ込む、耳から上まで手を伸ばして頭を触る、の3つ。
・この2年間で、6家族がそれぞれのピロウ・エンジェルにアシュリー療法を行い、
終了している。その他に現在治療中のケースが6家族。
それら家族とは連絡をとり続けているが、やり終えた人は、
けいれん発作と筋力低下の軽減にも効果があったと言っている。
アシュリーは、成長抑制により側わんの進行が止まった、とも。
「効果」が07年から追加されている。
・やった6家族は、07年以降に連絡してきた人たち。
論争でたたかれたシアトルこども病院はやらないので
私的な話し合いの場を作って助け合った。
(このプランについては父親は08年に書いていた)
・そういう家族がコンタクトをとりあっているというのは、
いわば「アシュリー療法クラブ」みたいなものを作ったということか、との問いに。
プライベートな議論の場が"pillow angel quality of life support group"になっていった、と。
・6人のうち4人は米国在住。1人はヨーロッパ、1人はオセアニア。
2人が男児。手術を受けたのは3人で、残りの3人は成長抑制のみ。
・けいれん発作や筋緊張が軽減された、というのは
6人の中の一人(女児)の母親から聞いた話。
エストロゲンで骨密度が上がっていると
整形外科医から聞いたという(男児の)母親もいる、と。
・07年の論争で多くの病院はやろうとしないから、
”family with means”(父親の表現。それなりの手段のある家族)だけしか
やることができない現状だが? と問われ、
米国内外にやってくれる医療機関も医師もある。
他の州や国へ逝かないとできないケースもあるが。
・A療法のコストは4万ドル以下で、ほとんどが手術関連で、保険で全額カバーされる。
自分が知る限り、手術以外も保険で出る。
(07年当初に言っていたより、金額が上がっている)
・尊厳と人権に関する障害者運動からの批判については?
(メディアはここでも単純な対立の構図に持ち込む。
批判しているのは障害者運動だけじゃないっ)
父が言うに、本人に尊厳の概念がなく、乳児と同じニーズがあるのだから、
親がQOL向上のための治療で本人の尊厳を守るのであり、
優生思想になぞらえたり包括的に禁じようといった姿勢は、個人を害するもの。
・どんな支援やテクノロジーをもってしても、この療法の利益には及ばない。
そんなもので大きな胸の不快や生理痛はどうにもできないのだから。
・人の方ではなく社会の方を変えよとの障害者らの主張には同意。そうすべきである。
しかし、社会の変革はあらゆる障害像の人のために変革は行われるべきだ。
この療法は議論や批判ができる彼らを対象としたものではなく
障害者の中でも1%にもならない重症児を対象にしたものだということが
彼らには分かっていない。
・WPASが指摘した違法性については?
自分たちの雇った弁護士の見解と違う。
不妊はアシュリー療法の目的ではなく、副作用のようなもの。
・親の決定権と、子どもを保護する行政の責任との関係については?
子どものことは親が決める。医療についてはそこに病院内倫理委が関与する。
そういうメカニズムができているなら、行政がそこに余計な価値を追加する必要はない。
(Norman Fostの声がうっすらと聞こえてくる。
ずいぶん準備をして受けたインタビューであることは間違いないし、
2010年には腰を低くして父親と連携姿勢を見せていた医師らが
今回の動きには全く姿を見せないというのも、なにやら、あざとい)
・この5年間でざっと5000通のEメールが届いた。
95%が支持する内容で、そのうち1100通が(重症児の)直接体験を持つ親と介護者だった。
・「そちらのブログに寄せられた親の言葉を読むと、
子が成人し親が介護できなくなって施設に入れるときの悲しみを語る多くの家族に、
施設もまた人権侵害だと考えさせられます」とインタビュアー。
こうして、施設入所という人権侵害を避けるために、という
筋違いの正当化の路線が引かれてしまう。
Yes, you're right, institutionalization is a form of human violation, especially when treatments exist to make institutionalization less likely.
・それに続いて、「論争で激しい批判が起こったために医師がやりたがらず、
金と権力のある人間だけの療法となってしまっている」。
(だから解禁しよう、とここで説いておいて、
5月の合意期限切れに向かおうというシナリオ?)
・最初の質問で to start with, can we please focus on Ashley herself.、最後の質問でも
what matters overwhelmingly in all this is Ashley herself. So we should end with her.
07年にCNNがDiekemaに「初めて会ったアシュリーは、どんな感じでしたか?」と問い、
Diekemaが「とても素晴らしい御両親なんです」と答えていたことを思い出す
下の方の記事の主内容は
既にやった6家族のうち2人の母親への取材。次のエントリーで。
2012.03.18 / Top↑
07年当初のアシュリー療法論争が終息した後にも
事件に何らかの展開がある前後になると、ネット上の
たいていはテクノと科学系のサイトに07年当時の記事がコピペされる、という
怪現象が起こっていることについては、以下のエントリーなどで指摘しました。
“ A療法”批判が出るとネット上で起こること(2009/2/13)
また出たぞ、“A療法”批判が出るとネットで起こる怪現象(2010/2/3)
他にも、こんな現象が起こったことも ↓
“Ashley療法”にオープンな態度を呼び掛けるナースの動画YouTubeに(2010/8/9)
とはいえ、長い間、この現象を見ることもなくなっていたのですが、
いきなり今日、以下のようなものが出てきました。
Pillow Angel: Daughter Frozen In Time
THE DISCLOSURE PROJECT, March 10, 2012
コピペされているのは、
以下のIndependent紙の07年1月5日の記事。
http://www.independent.co.uk/news/world/americas/parents-who-froze-girl-in-time-defend-their-actions-430852.html
ちょっと擁護の立場に傾斜した印象の記事です。
長いこと、起こらなかった怪現象が、
ここへきて、復活したのだとすると、
私の頭に浮かぶのはやはり、こういうこと ↓
シアトルこども病院は、5年の合意期限が切れるのを待っている?(2010/11/8)
その「合意期限」がくるのは、今年の5月――。
事件に何らかの展開がある前後になると、ネット上の
たいていはテクノと科学系のサイトに07年当時の記事がコピペされる、という
怪現象が起こっていることについては、以下のエントリーなどで指摘しました。
“ A療法”批判が出るとネット上で起こること(2009/2/13)
また出たぞ、“A療法”批判が出るとネットで起こる怪現象(2010/2/3)
他にも、こんな現象が起こったことも ↓
“Ashley療法”にオープンな態度を呼び掛けるナースの動画YouTubeに(2010/8/9)
とはいえ、長い間、この現象を見ることもなくなっていたのですが、
いきなり今日、以下のようなものが出てきました。
Pillow Angel: Daughter Frozen In Time
THE DISCLOSURE PROJECT, March 10, 2012
コピペされているのは、
以下のIndependent紙の07年1月5日の記事。
http://www.independent.co.uk/news/world/americas/parents-who-froze-girl-in-time-defend-their-actions-430852.html
ちょっと擁護の立場に傾斜した印象の記事です。
長いこと、起こらなかった怪現象が、
ここへきて、復活したのだとすると、
私の頭に浮かぶのはやはり、こういうこと ↓
シアトルこども病院は、5年の合意期限が切れるのを待っている?(2010/11/8)
その「合意期限」がくるのは、今年の5月――。
2012.03.14 / Top↑