米国フロリダ州在住のシングル・マザーGalitさん(仮名 39歳)は
イスラエル人のドナー精子で娘を産んだ。
その時に、5回分の精子サンプルを購入し、
精子バンクに保管してもらった。
この度、次の子どもを産もうと考えたところ、
ドナーの男性が「改宗してから、知りもしない女性に自分の精子を使われて
自分が愛情を感じることのない子どもを産まれたことを後悔するようになった」として
提供への同意を撤回。
Galitさんは怒り心頭で、裁判に訴えた。
「娘にはちゃんと自分と全く同じ血のつながった兄弟を持たせてやりたい、
精子ドナーが心変わりするなんて論外。
私は家族を持とうと計画したのよ。それなのに、
精子を提供しておいて、もう何人の子どもが生まれたかわかったもんじゃないのに、
今になって、ある日突然に気が変わったなんて。
自分が生き方を変えるのは勝手だけど、
私の生き方はどうなるのよ?」
高等裁判所は同情しつつも
ドナーの自律の権利、自己決定権を尊重。
提供した時には考えなかったとしても、
自分が選んだわけでもない女性に繋がりもなければ育てるわけでもない子どもを
産まれたくないという気になるのは理解できる、と。
Galitさんは、
「ドナー男性の気持ちばっかり。
私の気持ちについては誰も何も言っていない。
私は一人で娘を育てている母親なのよ」
上訴する予定だとか。
Israeli sperm donor wants his stuff back
BioEdge, March 2, 2013
イスラエル人のドナー精子で娘を産んだ。
その時に、5回分の精子サンプルを購入し、
精子バンクに保管してもらった。
この度、次の子どもを産もうと考えたところ、
ドナーの男性が「改宗してから、知りもしない女性に自分の精子を使われて
自分が愛情を感じることのない子どもを産まれたことを後悔するようになった」として
提供への同意を撤回。
Galitさんは怒り心頭で、裁判に訴えた。
「娘にはちゃんと自分と全く同じ血のつながった兄弟を持たせてやりたい、
精子ドナーが心変わりするなんて論外。
私は家族を持とうと計画したのよ。それなのに、
精子を提供しておいて、もう何人の子どもが生まれたかわかったもんじゃないのに、
今になって、ある日突然に気が変わったなんて。
自分が生き方を変えるのは勝手だけど、
私の生き方はどうなるのよ?」
高等裁判所は同情しつつも
ドナーの自律の権利、自己決定権を尊重。
提供した時には考えなかったとしても、
自分が選んだわけでもない女性に繋がりもなければ育てるわけでもない子どもを
産まれたくないという気になるのは理解できる、と。
Galitさんは、
「ドナー男性の気持ちばっかり。
私の気持ちについては誰も何も言っていない。
私は一人で娘を育てている母親なのよ」
上訴する予定だとか。
Israeli sperm donor wants his stuff back
BioEdge, March 2, 2013
2013.03.07 / Top↑
老い(エイジング)について語る際に、
「ノーマルな」「健康な」「サクセス」などの形容をすることは
高齢者に対する社会の捉え方を捻じ曲げる、との問題提起がカナダから。
カナダの高齢者アドボケイト、
the Seniors Association of Greater Edmontonの前会長さん。
「ノーマルな老いと考えられるのはどういうものなのか、私にはわかりません。
45歳の人にとって何がノーマルなんですか?
80歳の人にとって何がノーマルなんですか?
そういう表現は使うべきではないと私は思います。
私自身の考え方は、
できるだけ多くを、できるだけ長く、できるだけ良くやりたい、というだけ」
またアルベルタ大学の看護学科の博士課程の学生で
認知症患者のQOLについて研究している看護師のHannah O’Rourkeさんは、
在宅で自立生活を送っているカナダの高齢者の8割には慢性病があるというのに、
サクセスフル・エイジングの責任を個々の選択に負わせるような表現は
誤ったメッセージを送り、
「高齢期に慢性病がある人は、
慢性病にならないエイジングというゴールを達成できなかった失敗者のように思わせるが、
そういうのは現実的なゴールではない」と問題提起。
ノーマルな、またはヘルシーなエイジングといった言い方をしては、
医療職が高齢者にいかに老いるべきかを説き、生活スタイルについて指導するけれど、
そこでは慢性病はノームに含まれておらず、
そうした表現が使われることによって、がんや糖尿病、心臓病など
慢性病のある高齢者に対する社会の捉え方に影響してしまう、と指摘する。
「ノーマルな老いというのは簡単に定義できることではなく、
慢性病があっても生活をエンジョイしているという高齢者は沢山います。
老いが単に「健康」で「病気がないこと」と定義されてしまうと、
慢性病を抱えて老いていく人たちは、そこには含まれないことになってしまう。
慢性病の治療法はなかなか見つからないし、
医療チームは実際そういう患者もケアしています。
私たちが考えなければならないのは、
慢性病のある高齢者が自分自身の健康や正常の定義に基づいて
良く生きることをいかに支えるか、ということです」
また、2026年までにカナダの総人口の5分の1が65歳以上の高齢者となる、といった
推計を持ち出して高齢者のことを語ることについても、
そうした統計そのものが、老いることを修正すべき問題という枠組みで捉えており、
そうした捉え方が、我々が高齢者をどのような目を向けるかに影響する、とも。
“Normal,” “Healthy” Or “Successful” Aging Can Prejudice Our Views of Seniors
MNT, March 1, 2013
【関連エントリー】
「現代医学は健康な高齢者を病気にしている」(2009/3/8)
「老い」は自己責任で予防すべき「病気」であり「異常」であるらしい(2009/9/21)
「ノーマルな」「健康な」「サクセス」などの形容をすることは
高齢者に対する社会の捉え方を捻じ曲げる、との問題提起がカナダから。
カナダの高齢者アドボケイト、
the Seniors Association of Greater Edmontonの前会長さん。
「ノーマルな老いと考えられるのはどういうものなのか、私にはわかりません。
45歳の人にとって何がノーマルなんですか?
80歳の人にとって何がノーマルなんですか?
そういう表現は使うべきではないと私は思います。
私自身の考え方は、
できるだけ多くを、できるだけ長く、できるだけ良くやりたい、というだけ」
またアルベルタ大学の看護学科の博士課程の学生で
認知症患者のQOLについて研究している看護師のHannah O’Rourkeさんは、
在宅で自立生活を送っているカナダの高齢者の8割には慢性病があるというのに、
サクセスフル・エイジングの責任を個々の選択に負わせるような表現は
誤ったメッセージを送り、
「高齢期に慢性病がある人は、
慢性病にならないエイジングというゴールを達成できなかった失敗者のように思わせるが、
そういうのは現実的なゴールではない」と問題提起。
ノーマルな、またはヘルシーなエイジングといった言い方をしては、
医療職が高齢者にいかに老いるべきかを説き、生活スタイルについて指導するけれど、
そこでは慢性病はノームに含まれておらず、
そうした表現が使われることによって、がんや糖尿病、心臓病など
慢性病のある高齢者に対する社会の捉え方に影響してしまう、と指摘する。
「ノーマルな老いというのは簡単に定義できることではなく、
慢性病があっても生活をエンジョイしているという高齢者は沢山います。
老いが単に「健康」で「病気がないこと」と定義されてしまうと、
慢性病を抱えて老いていく人たちは、そこには含まれないことになってしまう。
慢性病の治療法はなかなか見つからないし、
医療チームは実際そういう患者もケアしています。
私たちが考えなければならないのは、
慢性病のある高齢者が自分自身の健康や正常の定義に基づいて
良く生きることをいかに支えるか、ということです」
また、2026年までにカナダの総人口の5分の1が65歳以上の高齢者となる、といった
推計を持ち出して高齢者のことを語ることについても、
そうした統計そのものが、老いることを修正すべき問題という枠組みで捉えており、
そうした捉え方が、我々が高齢者をどのような目を向けるかに影響する、とも。
“Normal,” “Healthy” Or “Successful” Aging Can Prejudice Our Views of Seniors
MNT, March 1, 2013
【関連エントリー】
「現代医学は健康な高齢者を病気にしている」(2009/3/8)
「老い」は自己責任で予防すべき「病気」であり「異常」であるらしい(2009/9/21)
2013.03.07 / Top↑
去年、以下のエントリーを書いた時に、
ビッグ・ファーマのビッグな賠償金(2012/7/4)
メルク社が
鎮痛剤 Vioxx がリューマチで認可される前から治療薬として違法なプロモを行い、
その後、心筋梗塞リスクが判明し、04年に市場から引き上げられた件で
売り上げのために心臓病リスクについて説明を偽った疑いに対して、
同社が11年11月に9億5000万ドルの賠償金を支払って
政府と和解したことについて書きました。
エントリーはその他のビッグファーマのスキャンダルも含めて
ProPublicaの記事を紹介した者ですが、
メルクの和解単独では、当時のNYT記事はこちら ↓
Merck to Pay $950 Million Over Vioxx
NYT, November 22, 2011
で、そのメルク社、
今度はコレステロールを下げる薬 Vytorinを巡って、
またぞろ巨額の賠償金で和解した、というニュースがあったので、
同じような話なんだろうなと思いながら、
目を通してみたら……、びっくりしたなぁ、もう。
Vioxxのスキャンダルなんかとは、
また一味違う訴訟の話だった。
スキャンダルそのものは、
治験データを隠ぺいしたまま2002年にFDAの認可を受け、
スタチンよりも効くという触れ込みでVytorinを大々的に売り出して
ぼろ儲けしながら、実際に使ってみた医師らからそれほどの効果がないと
苦情が出て初めて治験データを明かした、という
昨今では「あら、ビッグファーマがまたやったのね」といった類のもので、
ここまでについては
メルク社はとっくの昔に消費者と保険会社から集団訴訟を起こされて、
09年に4150万ドルの賠償金で和解しているし、
同じく09年に消費者保護違反で調査を始めた検察とも
5400万ドルで和解しているんだとのこと。
それなのに、なんで今回また訴訟かというと、
なんと、この訴訟、メルクの株主たちが
そのスキャンダルで株価が下がったために
損害を被ったとして起こした訴訟だということ。
刑法違反の疑いや政府の調査とも関係ないのに、これだけ巨額の和解金というのは、
どうやら、前代未聞の話らしい。
このままゆくと3月には陪審員裁判になってしまうため、
「この件は済んだこととして
世界中の健康改善のための科学イノベーションに集中する方が
メルクにとっても株主にとっても最善の利益というもの」(メルクの関係者)と
6億8800万ドルを支払って和解することに同意。
Merck Settles Suits Over Cholesterol Drug
February 14, 2013
08年から相次いで明らかになったビッグ・ファーマのスキャンダルについては
冒頭にリンクした「ビッグ・ファーマのビッグな賠償金」のエントリー末尾に
リンク一覧がありますが、
最近のものでは、↓
米国の“鎮痛剤問題”(2012/10/19)
“オピオイド鎮痛剤問題”の裏側(米)(2012/10/20)
製薬会社資金に信頼性を失っていく治験データ……Avandiaスキャンダル(2012/11/30)
これらから見えてくるのは、なんというか、もう
治験データの隠ぺい、ねつ造は当たり前、みたいな……。
それで足りなきゃ自分たちのカネと自分たちでツバつけた学者に
自分たちでデザインした治験をやらせて、思い通りのデータを出させるわ、
その報告論文だってゴーストライターに書かせて羞じないわ、
プロモのためなら、どんなにゼニばらまいて、どんな汚いことだって……みたいな……。
それでバレて、訴訟を起こされたって、
相手が消費者だろうと政府だろうと株主だろうと、
それぞれに大枚のゼニさえ払えば「済んだことに」できるし……みたいな……。
でもって、プロモでばらまかれる大金も、
賠償金として支払われる大金も、みんな、みんな、薬を買う消費者につけ回されるわけで、
ビッグ・ファーマが本来の使命とはズレたところで
こうして湯水のように使うゼニの話を読むたび、考えてしまう。
医療費を押し上げている要因の一端は、実はここにあるのでは……?
それから、
もうひとつ、どうしても考えてしまうのは、例えばこういう「大きな絵」のこと ↓
事業仕分けの科学研究予算問題から考えること
「必要を創り出すプロセスがショーバイのキモ」時代と「次世代ワクチン・カンファ」(2010/5/29)
“プロザック時代”の終焉からグローバル慈善ネオリベ資本主義を考える(2011/6/15)
AJOB巡るスキャンダルには、幹細胞治療や日本の医療ツーリズムも“金魚のウンコ”(2012/2/15)
ビッグ・ファーマのビッグな賠償金(2012/7/4)
メルク社が
鎮痛剤 Vioxx がリューマチで認可される前から治療薬として違法なプロモを行い、
その後、心筋梗塞リスクが判明し、04年に市場から引き上げられた件で
売り上げのために心臓病リスクについて説明を偽った疑いに対して、
同社が11年11月に9億5000万ドルの賠償金を支払って
政府と和解したことについて書きました。
エントリーはその他のビッグファーマのスキャンダルも含めて
ProPublicaの記事を紹介した者ですが、
メルクの和解単独では、当時のNYT記事はこちら ↓
Merck to Pay $950 Million Over Vioxx
NYT, November 22, 2011
で、そのメルク社、
今度はコレステロールを下げる薬 Vytorinを巡って、
またぞろ巨額の賠償金で和解した、というニュースがあったので、
同じような話なんだろうなと思いながら、
目を通してみたら……、びっくりしたなぁ、もう。
Vioxxのスキャンダルなんかとは、
また一味違う訴訟の話だった。
スキャンダルそのものは、
治験データを隠ぺいしたまま2002年にFDAの認可を受け、
スタチンよりも効くという触れ込みでVytorinを大々的に売り出して
ぼろ儲けしながら、実際に使ってみた医師らからそれほどの効果がないと
苦情が出て初めて治験データを明かした、という
昨今では「あら、ビッグファーマがまたやったのね」といった類のもので、
ここまでについては
メルク社はとっくの昔に消費者と保険会社から集団訴訟を起こされて、
09年に4150万ドルの賠償金で和解しているし、
同じく09年に消費者保護違反で調査を始めた検察とも
5400万ドルで和解しているんだとのこと。
それなのに、なんで今回また訴訟かというと、
なんと、この訴訟、メルクの株主たちが
そのスキャンダルで株価が下がったために
損害を被ったとして起こした訴訟だということ。
刑法違反の疑いや政府の調査とも関係ないのに、これだけ巨額の和解金というのは、
どうやら、前代未聞の話らしい。
このままゆくと3月には陪審員裁判になってしまうため、
「この件は済んだこととして
世界中の健康改善のための科学イノベーションに集中する方が
メルクにとっても株主にとっても最善の利益というもの」(メルクの関係者)と
6億8800万ドルを支払って和解することに同意。
Merck Settles Suits Over Cholesterol Drug
February 14, 2013
08年から相次いで明らかになったビッグ・ファーマのスキャンダルについては
冒頭にリンクした「ビッグ・ファーマのビッグな賠償金」のエントリー末尾に
リンク一覧がありますが、
最近のものでは、↓
米国の“鎮痛剤問題”(2012/10/19)
“オピオイド鎮痛剤問題”の裏側(米)(2012/10/20)
製薬会社資金に信頼性を失っていく治験データ……Avandiaスキャンダル(2012/11/30)
これらから見えてくるのは、なんというか、もう
治験データの隠ぺい、ねつ造は当たり前、みたいな……。
それで足りなきゃ自分たちのカネと自分たちでツバつけた学者に
自分たちでデザインした治験をやらせて、思い通りのデータを出させるわ、
その報告論文だってゴーストライターに書かせて羞じないわ、
プロモのためなら、どんなにゼニばらまいて、どんな汚いことだって……みたいな……。
それでバレて、訴訟を起こされたって、
相手が消費者だろうと政府だろうと株主だろうと、
それぞれに大枚のゼニさえ払えば「済んだことに」できるし……みたいな……。
でもって、プロモでばらまかれる大金も、
賠償金として支払われる大金も、みんな、みんな、薬を買う消費者につけ回されるわけで、
ビッグ・ファーマが本来の使命とはズレたところで
こうして湯水のように使うゼニの話を読むたび、考えてしまう。
医療費を押し上げている要因の一端は、実はここにあるのでは……?
それから、
もうひとつ、どうしても考えてしまうのは、例えばこういう「大きな絵」のこと ↓
事業仕分けの科学研究予算問題から考えること
「必要を創り出すプロセスがショーバイのキモ」時代と「次世代ワクチン・カンファ」(2010/5/29)
“プロザック時代”の終焉からグローバル慈善ネオリベ資本主義を考える(2011/6/15)
AJOB巡るスキャンダルには、幹細胞治療や日本の医療ツーリズムも“金魚のウンコ”(2012/2/15)
2013.02.19 / Top↑
堤未果の「ルポ貧困大国アメリカ」を思い出す記事がProPublicaに――。
思いだすのは、例えば、
08年に読んだ時のエントリーで以下のように書いたこと。
詐欺同然の口車で軍にリクルートしては真っ先にイラクの前線に送り込む恐ろしいカラクリ。
貧困が徴兵装置として機能する格差社会。不法移民も貧困層も兵士として使い捨てにする分にはまだしも使い道があるといわんばかりに。
しかも戦争まで民営化されて民間の会社が“社員”を雇って“派遣”するのだから、国には責任は全くないし、給料だって条件だって無法地帯みたいなもので、どんなに非人間的な条件であろうと不満があれば辞めればいい、それ以外に生きていけないからやるという代わりの人間はいくらでもいる、と。まさに「使い捨て」。
宅配ドライバーさんと「ルポ貧困大国アメリカ」(2008/4/8)
これを思い出させられたのは、
そんなふうにイラクへの戦争要員を派遣している民間の警備会社が
「労働者」30人が死んだことを法で定められている通りに迅速に報告しなかったとして、
米国労働省から75000ドルの罰金を科せられた、という7日のニュース。
The Sandi Group という
ワシントンDCに本部を置く民間企業の「従業員」が
03年から05年の間にイラクで働いている間に「殺された」ことが迅速に報告されなかった。
(”殺される be killed”という表現そのものは、英語では
事故など、自然な死に方でない場合には普通に使われているものですが
ここで言われる「労働者」「従業員」の方々の死に方が
普通の事故死ではなかっただろうことも
また容易に想像されるわけで……)
Sandi Goup は05年以降、
少なくとも米国政府から8090万ドルの契約を請け負って
多くのイラク人をセキュリティ・ガードとして雇っているという。
米国政府はイラクとアフガニスタンの戦争地域で働いている派遣企業の民間人に
医療費や死亡保障などを労災として提供する事業を作ってはいるものの
ProPublicaは一連の報道で、その不備を指摘してきたところ。
多額の税金がその事業につぎ込まれているというのに
派遣会社は支払いを渋るのが常で、特に外国人社員には
何の補償も受けられていないケースが多い。
そうした報道を受け、
米国労働省は派遣要員の死傷者数の公開を始め、
派遣企業がそれらを報告する迅速さを評価するようになった。
今回のSandi Groupへの罰金も、
そうした派遣企業への規制強化の一環と見られる。
昨年12月段階で、
イラクでの派遣要員の死者は 3,258人。
負傷者は 9万人。
Iraq War Contractor Fined for Late Reports of 30 Casualties
ProPublica, February 7, 2013
思いだすのは、例えば、
08年に読んだ時のエントリーで以下のように書いたこと。
詐欺同然の口車で軍にリクルートしては真っ先にイラクの前線に送り込む恐ろしいカラクリ。
貧困が徴兵装置として機能する格差社会。不法移民も貧困層も兵士として使い捨てにする分にはまだしも使い道があるといわんばかりに。
しかも戦争まで民営化されて民間の会社が“社員”を雇って“派遣”するのだから、国には責任は全くないし、給料だって条件だって無法地帯みたいなもので、どんなに非人間的な条件であろうと不満があれば辞めればいい、それ以外に生きていけないからやるという代わりの人間はいくらでもいる、と。まさに「使い捨て」。
宅配ドライバーさんと「ルポ貧困大国アメリカ」(2008/4/8)
これを思い出させられたのは、
そんなふうにイラクへの戦争要員を派遣している民間の警備会社が
「労働者」30人が死んだことを法で定められている通りに迅速に報告しなかったとして、
米国労働省から75000ドルの罰金を科せられた、という7日のニュース。
The Sandi Group という
ワシントンDCに本部を置く民間企業の「従業員」が
03年から05年の間にイラクで働いている間に「殺された」ことが迅速に報告されなかった。
(”殺される be killed”という表現そのものは、英語では
事故など、自然な死に方でない場合には普通に使われているものですが
ここで言われる「労働者」「従業員」の方々の死に方が
普通の事故死ではなかっただろうことも
また容易に想像されるわけで……)
Sandi Goup は05年以降、
少なくとも米国政府から8090万ドルの契約を請け負って
多くのイラク人をセキュリティ・ガードとして雇っているという。
米国政府はイラクとアフガニスタンの戦争地域で働いている派遣企業の民間人に
医療費や死亡保障などを労災として提供する事業を作ってはいるものの
ProPublicaは一連の報道で、その不備を指摘してきたところ。
多額の税金がその事業につぎ込まれているというのに
派遣会社は支払いを渋るのが常で、特に外国人社員には
何の補償も受けられていないケースが多い。
そうした報道を受け、
米国労働省は派遣要員の死傷者数の公開を始め、
派遣企業がそれらを報告する迅速さを評価するようになった。
今回のSandi Groupへの罰金も、
そうした派遣企業への規制強化の一環と見られる。
昨年12月段階で、
イラクでの派遣要員の死者は 3,258人。
負傷者は 9万人。
Iraq War Contractor Fined for Late Reports of 30 Casualties
ProPublica, February 7, 2013
2013.02.19 / Top↑
ドイツ政府の研究で犯罪者の脳を調査してきたDas Bild医師が、
Daily Mail 紙のインタビューで、
凶悪犯の脳スキャンではほぼ全例で中心葉の下部に黒い塊が見られ、
その部位こそが「邪悪帯(evil patch)」だと。
そうした部位に腫瘍ができたり損傷を負うことから犯罪行為が起きているもので、
腫瘍摘出手術を行えば、その人物は正常となった、
またはセロトニンなどの一定の物質がきちんと働いていないために
器質的な欠陥が起きている可能性もあるが、
いずれにせよ悪が生まれ宿るのは脳のその部分であることは間違いない、などと発言。
「もちろん、自動的にそうなるというのではなく、
暴力的な傾向を脳が補うこともあり、
そのメカニズムははっきりしない」と言いつつも、
「若い人の脳の前下部に発達障害があれば
その人は66%の確率で犯罪者になる。
ごく小さい頃から反社会的行動を予測することは簡単」とも。
Roth医師の研究とは、犯罪者を以下の3グループに分けたという。
① 心理的には健康でありながら、暴力や盗みや殺人が許容される環境で育った人。
② 世の中を脅威とみなし、精神に問題を抱えた犯罪者。
③ ヒットラーやスターリンのようなサイコパス。
同医師は
すべてのサイコパスが生まれつきのものではなく、
多くは環境によって悪化したものだとしながら、
「幼稚園の時から精神的な衰退は始まるので
社会は彼らが犯罪者となる前に
そうした子どもたちと親に広く支援を行うべき」だとして、
刑法改革を呼び掛けている。
Where evil lerks: Neurologist discovers ‘dark patch’ inside the brains of killers and rapists
The Daily Mail, February 5, 2013
この話題に関するBioEdgeの記事はこちら ↓
http://www.bioedge.org/index.php/bioethics/bioethics_article/10382#comments
この記事によれば、Roth医師は
我々の行動の3分の1は遺伝子によって決定づけられている、と主張しているとのこと。
また、上記Mail紙のインタビューについては
Daniel Rettingというブロガ―が
「これはまたも、科学ジャーナリズムにつきものの問題。
単純化と愚ろかさを画す一線が超えられてしまうことが時にあり、
この記事は残念ながら、それが起こった事例」と書いたとのこと。
私はこの話には科学ジャーナリズムの「愚かさ」というよりも、
むしろ世の中にじわじわと広がっていくメディカル・コントロールの
不気味な匂いを感じるけれど。
例えば、以下の話題に漂っているのと同じような。
「ハイリスクの親」を特定することから始まる児童虐待防止プログラム:Norman Fostが語る「メディカル・コントロールの時代」:YouTube(2011/2/21)
SavulescuとSingerが「犯罪者は脳が決める。科学とテクノで犯罪予防を」1(2012/2/4)
SavulescuとSingerが「犯罪者は脳が決める。科学とテクノで犯罪予防を」2(2012/2/4)
SavulescuとSingerが「犯罪者は脳が決める。科学とテクノで犯罪予防を」3:リアクション(2012/2/5)
Daily Mail 紙のインタビューで、
凶悪犯の脳スキャンではほぼ全例で中心葉の下部に黒い塊が見られ、
その部位こそが「邪悪帯(evil patch)」だと。
そうした部位に腫瘍ができたり損傷を負うことから犯罪行為が起きているもので、
腫瘍摘出手術を行えば、その人物は正常となった、
またはセロトニンなどの一定の物質がきちんと働いていないために
器質的な欠陥が起きている可能性もあるが、
いずれにせよ悪が生まれ宿るのは脳のその部分であることは間違いない、などと発言。
「もちろん、自動的にそうなるというのではなく、
暴力的な傾向を脳が補うこともあり、
そのメカニズムははっきりしない」と言いつつも、
「若い人の脳の前下部に発達障害があれば
その人は66%の確率で犯罪者になる。
ごく小さい頃から反社会的行動を予測することは簡単」とも。
Roth医師の研究とは、犯罪者を以下の3グループに分けたという。
① 心理的には健康でありながら、暴力や盗みや殺人が許容される環境で育った人。
② 世の中を脅威とみなし、精神に問題を抱えた犯罪者。
③ ヒットラーやスターリンのようなサイコパス。
同医師は
すべてのサイコパスが生まれつきのものではなく、
多くは環境によって悪化したものだとしながら、
「幼稚園の時から精神的な衰退は始まるので
社会は彼らが犯罪者となる前に
そうした子どもたちと親に広く支援を行うべき」だとして、
刑法改革を呼び掛けている。
Where evil lerks: Neurologist discovers ‘dark patch’ inside the brains of killers and rapists
The Daily Mail, February 5, 2013
この話題に関するBioEdgeの記事はこちら ↓
http://www.bioedge.org/index.php/bioethics/bioethics_article/10382#comments
この記事によれば、Roth医師は
我々の行動の3分の1は遺伝子によって決定づけられている、と主張しているとのこと。
また、上記Mail紙のインタビューについては
Daniel Rettingというブロガ―が
「これはまたも、科学ジャーナリズムにつきものの問題。
単純化と愚ろかさを画す一線が超えられてしまうことが時にあり、
この記事は残念ながら、それが起こった事例」と書いたとのこと。
私はこの話には科学ジャーナリズムの「愚かさ」というよりも、
むしろ世の中にじわじわと広がっていくメディカル・コントロールの
不気味な匂いを感じるけれど。
例えば、以下の話題に漂っているのと同じような。
「ハイリスクの親」を特定することから始まる児童虐待防止プログラム:Norman Fostが語る「メディカル・コントロールの時代」:YouTube(2011/2/21)
SavulescuとSingerが「犯罪者は脳が決める。科学とテクノで犯罪予防を」1(2012/2/4)
SavulescuとSingerが「犯罪者は脳が決める。科学とテクノで犯罪予防を」2(2012/2/4)
SavulescuとSingerが「犯罪者は脳が決める。科学とテクノで犯罪予防を」3:リアクション(2012/2/5)
2013.02.12 / Top↑