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Baby P事件の余波がなかなか収まらない英国で
学校と自治体を監督する監査官(教育水準監査院との訳も)Ofstedが
事件の起きた自治体Haringeyを高く評価する報告書を出していたことへの批判を受け、

来年から、児童虐待に対する地方行政の対応の不備について
ソーシャルワーカーなど第一線のスタッフが直接Ofstedに告発できるよう
ホットラインを設ける、と。

Baby P case sparks hotline pledge
The BBC, December 10, 2008

じゃぁ、現場の職員から地方行政の対応が鈍いという通報を受けたら
中央政府の機関である Ofsted が直接介入するということなのでしょうか。

それって何だか筋が違うような……。

自治体の児童保護部局が虐待の事実を把握もし、
要注意案件リストに登録もしていたし、
医療と福祉の関係者が本人に60回も接触していたというのに
それでも救えず、
母親と恋人ら大人3人がよってたかって殴る蹴るの暴行で
死なせてしまったBaby P事件──。

(Baby P事件についてのエントリーはこちら)

その衝撃が大きいことは想像できますが
世論とメディアからの激しい非難をかわすためだけに
行政が原理原則を踏まえることをすっ飛ばして
その場限りの対応をしているんじゃないかという気がして。

もちろん不幸な事件の反省に立って必要な改善を行うのは大切なことなのだけれど、

Baby P事件の動揺の中で慌てふためいて自分たちに向けられた世論の指弾をかわすためだけに、
こんなホットラインを設けて現場の第一線と中央の監督局をダイレクトに繋いでしまったら
これまでの英国の児童虐待への対応システムは却って混乱するのでは?


このホットラインの話、
ドイツ人医師の永住希望を巡る先日のオーストラリア政府の対応
なんとなく重なってしまった。

ダウン症の息子にコストがかかるといって医師の永住希望を却下したら
医師不足のオーストラリアでこれまで働いてくれた医師に失礼だと
世論の批判をわっと浴びたものだから
移民大臣があわてて直接介入して現場の決定を撤回してしまった。

家族の障害を理由に永住権を拒否したことを
国連障害者人権条約を批准した国として遺憾だと判断したわけでもなければ
それは障害者差別だとの認識による撤回でもなく、

それが今後のオーストラリアへの永住希望の可否にどういう意味を持つか、
原理原則をきちんと整理したうえでの“修正”でもなく、

ただ、
このケースでは当該医師は確かにオーストラリアに貢献してくださっているし、
ご家族もダウン症のご子息も地域で立派に受け入れられておられることだから、
まったく世論のおっしゃる通りでござい、といって。


それとも、
政治が場当たり的なポピュリズムに陥っているのは
日本だけじゃないということに過ぎない──?
2008.12.11 / Top↑
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