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Cambridge大学の脳科学ユニットのAdrian Owen医師ら
英国とベルギーの研究者らによる調査で、

03年に交通事故で脳を損傷し、永続的植物状態に陥った29歳の男性に
脳スキャンで調査を行ったところ、彼が言われていることを理解しており、
質問にYes-Noで応えることも意思決定を行うことも可能であると分かった。

植物状態と診断されて外見からは意識があるとは見えない患者の
5人に1人は語りかけられる内容を理解しており、
脳スキャンを使えば簡単な質問にYes,―Noで意思疎通ができる可能性がある、と。

当ブログでも「植物状態」5例に2例は誤診?(2008/9/15)で紹介していますが、
Cowen教授らのチームはこれまでにもこうした研究を続けてきており、
この5年間で初めて、コミュニケーションに成功した。

この成果は、今後、哲学的、倫理的な問題を投げかけるだろう、と。




私は、このチームの研究については何度か記事を読むたびに、
「分かっていると証明できないこと」は「分かっていないと証明された」のと同じではないとの
自分の持論を思い、

「どうせ分かっていないのだから死なせてもいい」という論理に歯止めをかけてくれる、
こうした方向の研究がもっと盛んに行われてほしい……と、
そちらの方向でばかり眺め、期待を寄せていたのですが、
もしかしたら、これ、まったく私の勘違いだったかも……。

というのが、ですね。
上記のTelegraph記事(私が読んだのはこれのみ)は、

「英国にはいつの日か意識を取り戻すかもしれぬと
医師によって生かされている(kept alive)永続的植物状態の患者が約1000人いる。
なかには、Hillsborough 事件の被害者 Tony Blandのように
家族が治療を中止して死なせる権利を勝ち取ったケースもある」
と述べて、

しかし、
医師らはこの技術は患者に苦痛があるかどうかを知るためには使えるが、
だからといって『じゃぁ患者本人に生きるか死ぬかを決めさせましょう』という話には
距離がありすぎると言っている……と書いているのです。

これは、そうした質問をしたうえで、それに対する答えの部分を引用しているものでしょう。

Dr. Cowenらの意図は、もう少しまっとうなように思うのですが、
どうもメディアを始め、社会がこの技術に抱いている期待は、
もしかしたら「意思疎通ができたら自己決定で死んでもらえる」という方にあるとか……?

まさか、そういう方向に話をもっていかれるなんて、
まったくもって想像の外でした……。

なんだか知らないけど、もう、すべてが
「適当にうまいこと辻褄を合せて、死んでもらいましょう」という方向に
向かっていくのか……そんな気がしてきた……。

              ――――――

ちなみにTony Blandさんとは、こちらのWikipediaの記事によると
1989年4月15日のLiverpool 対 Nottingham Forestのサッカーの試合で
サポーターが入口のトンネルに殺到してクラッシュを起こした事件(Hillsborough事件)で
負傷し、植物状態となった男性。

両親の同意を受けた病院が「尊厳のある死」をと裁判所に訴え(1993年)、
英国で生命維持装置を取り外して死なされた最初の患者となった。
2010.02.04 / Top↑
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