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カナダの作家 Craig Davidsonのステロイド体験記の中から、
個人的に非常に気になった点をいくつか。

①冒頭、彼が「油っぽい尿」のような液体が入った注射器をかざして逡巡する場面で、
この液体が2種類のステロイドであることが書かれているのですが、
その1つの Equipoiseという薬物は
「通常は肉牛に注射される獣医科の薬物」と書かれています。
1頭当たりから取れる肉の量を増やすためにステロイドが使われている、
ということですね。

ということは、アメリカ産の牛肉を食べると、
必然的にステロイドを体内に取り込んでいるということになるのでは?

②そろそろ肉体的にも精神的にもステロイド生活に疲れてきたある晩、
Davidsonがたまたま目にするテレビ番組があります。
ニュースになった事件を元にドラマを作る、という番組で、
病的な肥満に陥った男性が自分の肥満はあるスナックが原因だとして
スナックの会社を訴える物語をその晩はやっていました。
そのスナックの主原料である果糖濃度の高いコーンシロップには
脳に満腹感を伝えるホルモン、レプチンを抑える働きがある、というのです。

食べても食べても満腹感がなくて、いくらでも食べられる菓子が売られていた、と。

食品を製造する会社が営利のためにこんなことをするのだとしたら……。
背筋が冷えます。

③ステロイドを使う場合にどうしても避けがたい副作用として
胸が乳房のように膨らんでくる、と書かれています。
長期に使うボディ・ビルダーの中には
あまりに大きくなりすぎて外科手術で切除するしかなくなる場合もある、と。

Ashley事件でも、父親のブログに乳房芽の切除の正当化として
同じようなケースが引き合いに出されていました。
背の低い男の子に成長ホルモン療法をする時にやはり胸が膨らんで
外科手術で切除する場合がある、と。

Davidsonの体験談のこの部分を読んで、
改めてAshleyの父親の正当化は前提がおかしいと思うのは、
ボディ・ビルダーにせよ男児の成長ホルモン療法にせよ、
「起こるべきでないこと」が起こってしまっているのを外科的に切除するという話であって、
胸が膨らむのが女性の自然であり、もともと「起こるべきこと」であるAshleyと重ねてしまうのは
筋が違う、全然正当化になっていない。

いわゆる”Ashley療法”は technical fix だという批判を浴びましたが、
「強くなりたければステロイドを使えばいいし、胸が膨らめば手術すればいい」とばかりに
薬物とテクノロジーで何でもお手軽に解決してしまう時代だからこその
また、恐らくは父親がそうした動きの最先端に関与する人物だからこその思い付き。
Ashley事件については、こうした社会の動向の中に据えて考えるべきでしょう。
2008.06.10 / Top↑
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