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Illionois大学法学部のジャーナルの1月号
Mary Kollという人が“Ashley療法”に関する研究ノートを書いており、
上記リンクから全文が読めます。

タイトルは 
Growth Interrupted: Nontherapeutic Growth Attenuation, Parental Medical Decision Making, and the Profoundly Developmentally Disabled Child's Right to Bodily Integrity

(追記:Mary Koll氏は、「J.D.候補者」と書かれています。
法学の博士論文提出資格認定者のことではないか、と教えていただきました。
全体に、ちょっと論理よりも結論への気持ちが上回っているかなぁ……と感じてはいたのですが、
なるほど大学院生さんだったのですね)

おおむねQuellette論文と同じような論理で、
「重症障害児への非治療医療介入には裁判所の判断が必要。
裁判所も、めったなことでは認めるべきではない」と
Quellette論文よりも、厳しい結論に至っています。

世界中の重症児の親の間から「うちの子にも」という声が上がっていること、
担当医らが「裁判所の介入は不要」と主張したり
対象要件を広げようとしていることなどを憂慮している点は
Quellette論文が書かれた2008年以降の事件の展開を反映していると思われます。

合衆国憲法修正第14条や、いくつかの判例を根拠に
身体の統合性を侵されないことは法で保障された権利であると述べ、

一部哲学者からの反論はあるにせよ、
だいたいにおいて米国の法はこの権利を重症発達障害者にも認めている、と分析。
(根拠がイマイチ十分に提示されていない感じもなきにしもあらず)

子どもの医療決定を巡る親の決定権について分析した後で、
その例外については以下の3点が要件になっている、とまとめます。

①非治療的な医療介入である
②親と子どもとの利益の衝突がありうる
③子どもの基本的人権を大きく侵害する恐れがある

成長抑制療法はこれらのすべてを満たすので、
裁判所が介入し「最善の利益」原則で検討するべきである、と主張。

著者がここで「最善の利益」原則を支持する理由は

①親の決定権が「親は子どもの最善の利益によって行動する」という前提によるもので、
 その決定権に代わって裁判所が介入するなら、同じ原則で。

②子どもの臓器提供と不妊手術での判断で「最善の利益」が通常用いられている。



Quellette論文とKollノートに共通の事実誤認として、
シアトルこども病院がWPASと合意した内容を守っていると思い込んでいる点が挙げられます。

07年5月に合意はしましたが、病院はその合意を守っておらず、
未だに成長抑制についてはセーフガードの方針を作っていません

子宮摘出のセーフガードはできていますが、
成長抑制のセーフガードは病院幹部が起草したものの、最終的にサインされないままになっています。

(昨日、この記事を書くために上記リンクを読み返して気づいたのですが
病院幹部がセーフガード案を起草したのは08年4月。

一方、例の成長抑制WGが第一回の会合を持ったとされるのも08年4月です。
ハワイの小児科学会でDiekema、Fost両医師がパネルを行ったのは08年5月。
学会パネルは、かなり前に申し込まれていたもののはず。

ほぉ……なんとも興味深い話です……)



イリノイ州と言えば、08年に K.E.J.ケースがありました。




【その他、障害者の医療における代理決定原則に関するエントリー】


2010.01.28 / Top↑
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