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間違えて双子のうち障害がない方を堕胎してしまったから、残ったダウン症の胎児も堕胎した……という話が6月にイタリアで。

母親は38歳。妊娠18週目に双子のうちの一人がダウン症であると知らされ、その子について堕胎を希望。ところが医師が誤って障害がない胎児の方を堕胎してしまった。「間違い」に気づいたのはどうやら母親で、もう一度病院に行き、もう一人の方を堕してもらった。その上で彼女が警察に通報し、病院スタッフは現在警察の取調べを受けている。病院側は、超音波検査と実際の手術の間に双子の位置が入れ替わっていたための“misfortune(不幸な出来事)“だ、と。

ちなみにイタリアでは1978年に中絶が合法化され、妊娠90日目までの中絶が認められている。母体に危険がある、または胎児に奇形がある(malformed)場合はそれ以降でも可。

6月に起こったことが翌月になって明るみに出たもの。報道を受け、キリスト教民主党議員が「人命軽視から起こった赤ん坊殺しだ」と非難。ヴァチカンに近い上院議員からは、保健省の調査と中絶法の見直しを求める声も。ヴァチカンの新聞は、選択的中絶はナチスの優生思想に相似した完璧を求める文化がもたらしたものだと批判。

夫婦は「双子だと聞いた時の喜びが失望に変わった」、「このむちゃくちゃなミスには大きな打撃を受けており弁護士に相談している」、「人生を台無しにされた」、「2人とも夜も眠れない」と。

……というニュースなのですが、よく分からないのは、

母親が病院スタッフを警察に通報して、警察が取調べを行っているという、その嫌疑は一体なんなのか?

「人生を台無しにされた」というのは、この出来事のどの部分によって、なのか?

彼らは恐らく最初の予定通りの堕胎が行われていた場合には「夜も眠れない」ことはなかったのでしょうから、そういう意味ではダウン症の胎児は「堕ろした」のだけど、障害のない胎児については「殺された」と受け止めているのでしょうか?

また上院議員が保健省の調査を求めるのは、どういう嫌疑なのか? 90日以内の中絶ではなかったから? ダウン症の胎児の中絶が違法だから? 

夫婦が怒っている点と、キリスト教保守の議員さんたちが怒っている点とは、ほとんど絶望的に食い違っているようにも思えるのですが……?

このモヤモヤ、上院議員の次の言葉が多少はすっきりさせてくれるでしょうか。

「ここで失敗が問題にされているのは、選別なのです」

                 


上記の事件の関連記事は以下。




the Star “Culture of Perfection” destroying us, Helen Henderson Sept.8, 2007

Helen Hendersonは障害のあるカナダのコラムニストで、“アシュリー療法”でもパンチの効いたコラムを書いていました。今回は「バイオテクや遺伝子診断を通じて完璧を求める文化によって、多様性がどんどん許容されなくなっていくが、社会が多様性を許容し、普通という枠からはみ出した人々を無条件に快く迎え入れる努力をしない限り、内面的にも外的にも平穏は得られない」といったことを書いています。
2007.11.02 / Top↑
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