カーツワイルの「ポスト・ヒューマン誕生」の中でHughesやBostromらと同じく引用されている人物に、Ramez Naamという人がいます。やはりthe Institute for Ethics and Emerging Technologies(IEET) のディレクターの一人で、同じく世界トランスヒューマニスト協会(WTA)のメンバー。
「神を演ずること」は人間性のもっとも高度な表現である。われわれ自身を改良し、周囲の環境に打ち勝ち、子孫に最善の将来を用意しようとする衝動は、人間の歴史を突き動かす力の源であり続けている。このような「神を演ずる」という衝動がなければ、今日あるような世界は存在しなかったろう。いまだにわずか数百万の人間がサバンナや森林に暮らし、狩猟と採集によってかろうじて生計を立てていたはずだ。書物や歴史や数学はなく、自分たちの属する宇宙や自身の内なる働きといった複雑な事柄を理解することもなかっただろう。
ラーミズ・ナム (P.382)
ラーミズ・ナム (P.382)
上記はカーツワイルの著書に引用されている箇所ですが、Naamも2005年に著書を出版しており、その著書More than Human: Embracing the Promise of Biological Enhancementによるトランスヒューマニズムへの貢献に対して、WTAから表彰されています。(TWAのキャッチはBetter Than Well ですが、この本のタイトルは More Than Human。「もっと」というのが大好きな人たちなのです。)
この本も 「超人類へ!バイオとサイボーグ技術がひらく衝撃の近未来社会」と題して翻訳されています。
私がこの本を読んだのは、アシュリー事件の背景にある事情が見えてきた、確か3月ごろだったと思います。両親のブログに引用されていたDvorsky → DvorskyとHughesの繋がり → 世界トランスヒューマニズム協会……とたどっていった先で出てきたのがこの本。実はガザニガよりもカーツワイルよりも先に読んだ本で、トランスヒューマニズム系ではこの本が初めてでした。まだトランスヒューマニズムが一体どういう思想なのか全貌が見えていない状態で読み、いわば私にとっては入門書になったものです。そのためか、Naamの論理は“アシュリー療法”論争で耳にしたリーズニングと非常に近似しているのではないかと、読み始めてすぐに、ほとんど驚愕する思いでした。(その後もう一度読み返してみると、トランスヒューマニズム系の本はどれもこれも同じことを無個性に繰り返しているだけのように感じられ、退屈ですらあるのですが。)
書かれている内容については、ちょっと先になりますがエントリーを改めて書きたいと思っています。ここで取り急ぎ触れておきたいのは著者Ramez Naam のプロフィール。訳書の帯から。
科学技術者。世界中で活用されているマイクロソフトのInternet ExploreとOutlookの開発者のひとり。バイオテクノロジーやナノテクノロジーなどの最先端技術と近未来社会について洞察する若きリーダー。ナノテク企業のCEOを務め、また現在、マイクロソフトのインターネット検索テクノロジーのプログラム・マネージャーとしても活躍している。
2007.10.06 / Top↑
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