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WPASの調査報告書を読み返していたら、 「医者も知らない”乳房芽”?」に関連して、面白い発見がありました。

Exhibit Lとして報告書に添付されている2004年5月5日の倫理委員会の記録では、「乳房芽」という言葉は一切使われていないのです。ここでは「発達する前に乳房を取り除く」となっています。それから、たとえば乳がんなどで乳房を取り除いてしまう場合の手術と同じmastectomyという言葉が使われています。

シンポでDiekema医師の「今だったら小さな乳房芽の切除で済むが、将来病気になってからだとmastorectomyとなって手術のリスクも大きくなるから医学上の必要があってやったこと」との発言と矛盾しますね。倫理委が開かれた時点で、彼らの捉え方は、「乳房芽の切除」などではない。あくまで「乳房の切除」であり、mastorectomyだったのです。

さらに興味深いのは、親が望んでいることとして3つ挙げられた3点目である「発達する前に乳房を取り除く」の部分には「倫理委に提出された親の提案書を参照のこと」と括弧で付け加えられていること。(親の提案書は調査報告書には添付されていません。)親の提案書を読む以外に、理解のすべがなかったということでしょうか。

乳腺芽という組織があって、それを取り除けば乳房が大きくなることを防げるというのは、あくまで「理論上はそうなるはずだ」との両親のリサーチから出てきたアイディアに過ぎなかったのではないでしょうか。そして実は医師らは、乳房芽にせよ乳腺芽にせよ、そんなものを取り除くという発想そのものを、医学的に認めていなかったのではないでしょうか。だから彼らにとっては親の言っていることは「乳房の切除」でしかなかったし、mastectomy でしかなかった。「医者も知らない”乳房芽”?」で既に疑問を呈したように、やはり親が提案している目的での mastectomy など、とうていconvensional な医療行為ではなかったのではないでしょうか。だからこそ、彼らは医師として、この点については論文に書けなかったのではないでしょうか。

しかし、それならば、そこからは、もっと大きな疑問が生じます。それほど医師らにとっても奇異だった「乳房芽の切除」を、なぜ倫理委が認めたのかという疑問です。いや、それ以前に、なぜ倫理委にまで話が行くほど、医師らがまともに相手にしたのかという疑問です。

親がこんな突飛なことを独自にリサーチして思いつき、アイデアとして持ち込んできた場合に、通常、医師は相手にするでしょうか? 普通ならば倫理委でプレゼンさせてもらうどころか、診察室で切り出したとたんに、ろくに話すら聞いてもらえず追い返されるのがオチなのでは?

この点は、にわかにこの事件の本質に迫ってきたように思います。  
2007.06.04 / Top↑
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