2006年に英国でも Not Dead Yet UK が立ち上げられていました。
リーダーは自殺幇助合法化に抵抗し続けている Baroness Jane Campbellさん。
去年、議会が合法化法案を否決したのは
直前の彼女のスピーチが功を奏したからだという声もあります。
Not Dead Yet UK の公式サイトはこちら。
そのNot Dead Yet UK が
英国内で自殺幇助合法化を求める動きに対して、
6月2日、レジスタンス・キャンペーンを始めました。
英国の議員たちに向け、
以下のレジスタンス憲章に署名するよう呼びかけています。
“レジスタンス”憲章2010
1. 障害者とターミナルな病気の人は他の皆さんと同じ法的保護を受けるに値し、また、受ける資格があります。
2. 私は障害者とターミナルな病気の人たちすべての生命と、彼らの社会に対する貢献を価値あるものと考えます。
3. 私は私の選挙区の障害者とターミナルな病気の人たちが尊厳のある生を生きるために必要な医療、社会ケアその他のサービスを受けられるよう保障する機会を作るよう努めます。
4. 私は、命を断つために支援を希望している障害者とターミナルな病気の人たちには、自殺念慮のある他の人たちと同じ支援をして、生きるように励ますべきだと信じます。
5. 私は自分の選挙区で、緩和ケアと自立生活サービスを支援し、それらのサービスが必要な人に確実に届くよう尽力している人たちと協働します。
6. 私は自分の選挙区で自殺幇助に関する法改正に不安を感じる障害者とターミナルな病気の人たちと会い、彼らの意見を考慮します。
7. 私は自殺幇助を違法と定めた現行法による法的保護が維持されるよう努めます。
また、Campbellさんは、このキャンペーン立ち上げに際し、
「障害者に必要なのは死ぬ手伝いではなく、生きる手伝い」と題する一文を
Guardianに寄稿し、その趣旨を説明しています。
Disabled people need help to live, not die
The Guardian, June 3, 2010
ごく、大まかにまとめてみると、
これまで、障害者はずっと運動してきました。
その運動が訴えてきたものは人々に受け入れられ、
我々の運動は障害者差別法など多くの勝利を挙げてきました。
そして、社会は変わり、誰もが平等を大切だと考えるようになりました。
これまで社会を変えようと運動してきた自分たち障害者が
今、変えまいと闘っています。
障害者もターミナルな病気の人たちは
不安だけでなく、偏見や差別にもさらされてきました。
「ああなるくらいなら死んだ方がマシ」と言われ価値なきものとみなされ、
最近では自殺幇助を合法化しようとの声が上がっています。
そういう人たちは不安、不安と、そればかりを言います。
苦しむことへの不安、尊厳を失うことへの不安、誰かの重荷になることへの不安。
そして、そう、本当は、
愛する人がそんな不安に苦しむ姿を目の当たりにしなければならないことへの不安も。
だから、障害と病気への不安への解決策として、自殺はどうかというのです。
しかし、障害も病気もない人の自殺は思いとどまらせようとするのに、
自分で死ねる人は自殺してはいけないという一方で、
人の手を借りなければ死ねない人の自殺は認められるなら
そこに平等はありません。
それでも多くの人が、
そう考えるのが思いやりというもので、
その考えは反駁の余地がないほど論理的だというのです。
一旦、合法化されてしまったら、基準は広げられていきます。
そして、家族や医療職を始め社会の人々の考え方にも作用して、
障害者に対する見方、扱いやケアまで根底から変えてしまいます。
社会を変えるために運動することと違って、
変えないための運動は、運動することも説明することも難しいけれど
これは私たちの安全を守るための運動です。
合法化へ向かう動きを、声を上げずに黙って見ていることはできません。
我々にはNothing about us, without us というスローガンがあります。
ここに抵抗の声を上げましょう。
この度立ち上げたキャンペーンの名前は、レジスタンス――。
これまでの実践に裏付けられた自信を背景に、凛と澄んだ上品な声が、
理路整然と批判し、堂々と訴え、高らかに呼びかける――。
本当に、すばらしい文章。胸打たれます。
なお、同日のBBCの記事はこちら。
http://news.bbc.co.uk/2/hi/health/8718581.stm