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今月初めに英国医師会が反対を確認したばかりですが、

19日付で英国老人医学会から
医師による自殺幇助に関する意見声明が出されています。

一番こういうことを言ってほしかったところから、
非常に的確な声が上がった感じ。

また先週、ずっと考えていた問題(詳細は文末にリンク)に
簡潔ながら核心をついた、頼もしい答えをもらった気持ちになったので、
全文をざっと日本語にしてみました。

自殺を斡旋したり幇助したり、または容易にすることは、医師やその他医療職の役割ではない。最近出されたDPPのガイドラインでも、医療職が関与した場合は起訴ファクターに含められている。患者や患者のアドボケイトに生命を終わらせるように求められ、それに応じるとしたら、老人医療の専門家は法律的義務、専門医としての義務を果たすことができない。

英国の死亡年齢の中間値は80歳を超えており、英国老人医学会の会員は多くの死にゆく患者をケアする中で、患者との間で安楽死についての会話の増加を経験している。多くの場合、「このまま死なせてもらうわけにはいきませんか」という言葉で出てくる。多くの人が安楽死を望む背景には、望みもしないのに負担の大きな治療をされて死を引き伸ばされることへの不安がある。しかし、こうした不安は、医師と患者の間の信頼関係の中で、患者の希望に細やかに耳を傾けることによって、軽減できるものである。

進行性の病気や障害のある人がだんだん自立できなくなり、尊厳を失っていくことに苦しみ、不安を感じることは理解できるが、英国老人医学会は意図的な殺人は正当化されるものではないと考える。むしろ、老人専門医こそ、複合的で進行性の障害のある人々に包括的にアセスメントを行い、前向きなアプローチの計画を立てるスキルを持ち、個々の患者の福祉の改善に大きく資するものである。当学会の会員は緩和ケア医療と緊密な連携関係にあり、終末期の苦痛の軽減に大きく貢献している。

仮に自殺幇助が合法化されれば、弱者の生命が脅かされ、中には自分が他者への負担にならないように自分の命を諦めるようプレッシャーを受ける人も出ることになる。合法化はまた医師の倫理綱領を甚だしく損なうだけでなく、治療する者としての医師の役割とも相容れない。



だいじょうぶ、終末期の苦痛については、
医師と患者の信頼関係の中で個別に十分ケアできるのだから、と。

だから、本当の問題は、
人生の一回性の中で死んでいく患者を全人的に支えることができるかどうか、
以下にすれば、それが可能になるかという「医療の質」の問題で、
「死の質」の問題ではないだろう……というのが、
当ブログの先週とりあえずの結論だった。

Physician-Assisted Suicide – BGS Position Statement
British Geriatrics Society, July 19, 2010


医療現場で、「このまま死なせてもらえんものですか」と
口にする患者さんたちが増えている、というのは
予想はできたことながら、非常に気になる情報。

その背景には、ここに書かれているように、
無益な治療で苦しみながら死のプロセスを長引かされたくない、という不安も
もちろんあるでしょうが、

こう波状攻撃的に、次々と「死の自己決定権」を訴える人たちが事件や訴訟を起こし、
そのいちいちにメディアが偏向報道を行っていれば、

無駄な医療費を使ったり、家族に介護で迷惑をかけるような状態には尊厳がなく、
それよりも、自ら死を選んで、美しく死んでいく権利を主張しましょう、と
せっせと説かれていることの洗脳効果が何よりも大きいのでは?


【先週考えていた「死の質」調査に関するエントリー】
「死の質」は英国が1位だという調査(2010/7/15)
「死の質」は果たして「生の質」の対極にある概念なのか(2010/7/15)
「死の質」について、もうちょっと(2010/7/16)
「ターミナル」診断に対する医療職の意識調査:“生の質”も“死の質”も本当はただ“医療の質”の問題では?(2010/7/17)
2010.07.21 / Top↑
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