The American Journal of Public Healthに発表された新たな研究で、
製薬会社からカネをもらって、マーケティングに一役買っているのは
著名医師や研究者ばかりではないことが明らかに。
米国糖尿病協会や、
精神障害のアドボカシー団体 National Alliance on Mental Illness(NAMI)など
保健・医療アドボカシー団体(HAO)も製薬会社からグラント(助成金)をもらい、
そのすべてをディスクローズしていない。
2007年前半にビッグ・ファーマのイーライ・リリー社から
グラントをもらった160以上のHAOを調査したところ、
自分の団体のウェブ・サイトで同社からの資金提供を明らかにしているのは25%。
07年の年次報告でリリー社からの資金を明らかにしているのは18%。
企業スポンサーのページでリリー社の名前を挙げているのは1%。
リリー社のグラント一覧には出ているにもかかわらず、
HAOの方でグラントのスポンサーがリリー社であることを認めているのは10%。
これらHAOは特定の疾患や障害に関する情報源として信頼されており、
啓発活動だけでなく研究や新薬の認可を求めて声を上げたりもするだけに、
もっと詳細なディスクロージャーが必要なのでは?
もっとも、この問題が指摘されたのは今回が初めてというわけではなく、
09年にGrassley上院議員が大規模な調査を行った際にも
NAMIが06年から08年にかけて製薬会社から230万ドル近い寄付をもらっており、
その金額は寄付金全額の4分の3にも上っていることが判明。
それを受けてGrassley議員は33のHAOに
製薬会社と医療機器会社との金銭関係の詳細を明らかにするよう求める書簡を送った。
その返事は公開されていない。
しかし、この度の研究でも
HAOが実際にリリー社の売上向上に寄与する活動を行っていることが指摘されている。
例えば
リリー社はNAMIの「アメリカの心キャンペーン」に45万ドルを提供しているが、
NAMIは精神障害者への処方の際にコストは度外視すべきだと主張し、
官僚主義によって最新のブレークスルーを医師が生かせない事態を批判しつつ
最新の非定形向精神薬、抗ウツ薬へのアクセスを求めてきた。
リリー社のマーケットはそれにつれて拡大していった。
医師への金銭支払いについては2013年までに
詳細なディスクロージャーを義務付ける法整備が行われることが決まっているが、
そこにはHAOへの規制は含まれていない。
Health Advocacy Groups Take Drug Company Cash – Often Without Full Disclosures, Report Says
ProPublica, January 13, 2011
元論文はこちら ↓
Health Advocacy Organizations and the Pharmaceutical Industry: An Analysis of Disclosure Practices
Sheila M. Rothman, PhD, et. al., Health Policy and Ethics
【いわゆる“Biedermanスキャンダル”関連エントリー】
著名小児精神科医にスキャンダル(2008/6/8)
著名精神科医ら製薬会社からのコンサル料を過少報告(2008/10/6)
Biederman医師にさらなる製薬会社との癒着スキャンダル(2008/11/25)
Biederman医師、製薬業界資金の研究から身を引くことに(2009/1/1)
【その他、08年のGrassley議員の調査関連】
抗ウツ剤めぐる研究者と製薬会社の癒着スキャンダル報告書(米国)(2008/11/17)
抗ウツ剤めぐる研究者と製薬会社の癒着スキャンダル報告書 Part2(2008/11/23)
今度はラジオの人気ドクターにスキャンダル(2008/11/23)
【その他、09年の製薬会社のマーケティングやスキャンダル関連エントリー】
FDAの科学者ら「認可審査あまりにも杜撰」と内部告発(2009/1/15)
ファイザー製薬ナイジェリアの子どもに違法な治験、11人が死亡(2009/2/1)
インターネットの医薬品情報、その陰にいるのは?(2009/2/14)
Harvardの医学生が医療倫理改革を起こそうとしている(2009/3/4)
FDAと製薬会社の訴訟つぶしに待った(2009/3/5)
ICなしの外傷患者臨床実験、死亡者増で中止に(2009/3/30)
HPVワクチン普及目的で保健当局が学校に女児の個人情報を要求(NZ)(2009/4/3)
マラリアやエイズ撲滅キャンペーンの影で子どもの死因第1位の肺炎が無視されてきた不思議(2009/5/10)
抗ウツ薬の自殺リスクを警告したら、処方だけじゃなくて診断そのものが激減?(2009/6/4)
FDA委員会を前に精神障害当事者らから声明(2009/6/9)
製薬会社がゴーストライターに書かせた論文でエビデンス作り(2009/8/8)
巨大ファーマがかつてのゼネコンなのだとしたら・・・・・・(2009/9/29)
英米の医療スタッフから豚インフル・ワクチン接種に抵抗が出ている(2009/10/13)
中流の子なら行動療法、メディケアの子は抗精神病薬・・・・・・?(2009/12/13)
【2010年の関連エントリー】
「次世代ワクチン・カンファ」の露骨(2010/5/28)
「米国のワクチン不信と、そこから見えてくるもの」を書きました(2010/7/5)
ProPublicaが暴く「ビッグ・ファーマのプロモ医師軍団の実態」(2010/11/2)
製薬会社からカネをもらって、マーケティングに一役買っているのは
著名医師や研究者ばかりではないことが明らかに。
米国糖尿病協会や、
精神障害のアドボカシー団体 National Alliance on Mental Illness(NAMI)など
保健・医療アドボカシー団体(HAO)も製薬会社からグラント(助成金)をもらい、
そのすべてをディスクローズしていない。
2007年前半にビッグ・ファーマのイーライ・リリー社から
グラントをもらった160以上のHAOを調査したところ、
自分の団体のウェブ・サイトで同社からの資金提供を明らかにしているのは25%。
07年の年次報告でリリー社からの資金を明らかにしているのは18%。
企業スポンサーのページでリリー社の名前を挙げているのは1%。
リリー社のグラント一覧には出ているにもかかわらず、
HAOの方でグラントのスポンサーがリリー社であることを認めているのは10%。
これらHAOは特定の疾患や障害に関する情報源として信頼されており、
啓発活動だけでなく研究や新薬の認可を求めて声を上げたりもするだけに、
もっと詳細なディスクロージャーが必要なのでは?
もっとも、この問題が指摘されたのは今回が初めてというわけではなく、
09年にGrassley上院議員が大規模な調査を行った際にも
NAMIが06年から08年にかけて製薬会社から230万ドル近い寄付をもらっており、
その金額は寄付金全額の4分の3にも上っていることが判明。
それを受けてGrassley議員は33のHAOに
製薬会社と医療機器会社との金銭関係の詳細を明らかにするよう求める書簡を送った。
その返事は公開されていない。
しかし、この度の研究でも
HAOが実際にリリー社の売上向上に寄与する活動を行っていることが指摘されている。
例えば
リリー社はNAMIの「アメリカの心キャンペーン」に45万ドルを提供しているが、
NAMIは精神障害者への処方の際にコストは度外視すべきだと主張し、
官僚主義によって最新のブレークスルーを医師が生かせない事態を批判しつつ
最新の非定形向精神薬、抗ウツ薬へのアクセスを求めてきた。
リリー社のマーケットはそれにつれて拡大していった。
医師への金銭支払いについては2013年までに
詳細なディスクロージャーを義務付ける法整備が行われることが決まっているが、
そこにはHAOへの規制は含まれていない。
Health Advocacy Groups Take Drug Company Cash – Often Without Full Disclosures, Report Says
ProPublica, January 13, 2011
元論文はこちら ↓
Health Advocacy Organizations and the Pharmaceutical Industry: An Analysis of Disclosure Practices
Sheila M. Rothman, PhD, et. al., Health Policy and Ethics
【いわゆる“Biedermanスキャンダル”関連エントリー】
著名小児精神科医にスキャンダル(2008/6/8)
著名精神科医ら製薬会社からのコンサル料を過少報告(2008/10/6)
Biederman医師にさらなる製薬会社との癒着スキャンダル(2008/11/25)
Biederman医師、製薬業界資金の研究から身を引くことに(2009/1/1)
【その他、08年のGrassley議員の調査関連】
抗ウツ剤めぐる研究者と製薬会社の癒着スキャンダル報告書(米国)(2008/11/17)
抗ウツ剤めぐる研究者と製薬会社の癒着スキャンダル報告書 Part2(2008/11/23)
今度はラジオの人気ドクターにスキャンダル(2008/11/23)
【その他、09年の製薬会社のマーケティングやスキャンダル関連エントリー】
FDAの科学者ら「認可審査あまりにも杜撰」と内部告発(2009/1/15)
ファイザー製薬ナイジェリアの子どもに違法な治験、11人が死亡(2009/2/1)
インターネットの医薬品情報、その陰にいるのは?(2009/2/14)
Harvardの医学生が医療倫理改革を起こそうとしている(2009/3/4)
FDAと製薬会社の訴訟つぶしに待った(2009/3/5)
ICなしの外傷患者臨床実験、死亡者増で中止に(2009/3/30)
HPVワクチン普及目的で保健当局が学校に女児の個人情報を要求(NZ)(2009/4/3)
マラリアやエイズ撲滅キャンペーンの影で子どもの死因第1位の肺炎が無視されてきた不思議(2009/5/10)
抗ウツ薬の自殺リスクを警告したら、処方だけじゃなくて診断そのものが激減?(2009/6/4)
FDA委員会を前に精神障害当事者らから声明(2009/6/9)
製薬会社がゴーストライターに書かせた論文でエビデンス作り(2009/8/8)
巨大ファーマがかつてのゼネコンなのだとしたら・・・・・・(2009/9/29)
英米の医療スタッフから豚インフル・ワクチン接種に抵抗が出ている(2009/10/13)
中流の子なら行動療法、メディケアの子は抗精神病薬・・・・・・?(2009/12/13)
【2010年の関連エントリー】
「次世代ワクチン・カンファ」の露骨(2010/5/28)
「米国のワクチン不信と、そこから見えてくるもの」を書きました(2010/7/5)
ProPublicaが暴く「ビッグ・ファーマのプロモ医師軍団の実態」(2010/11/2)
2011.01.15 / Top↑
| Home |